好き好きアーツ!#31 鳥飼否宇 part9–生け贄–

【アルビノ大集合!おや、一文字違いも入ってるぞ?】

SNAKEPIPE WROTE:

鳥飼否宇先生の第4弾は「生け贄」!
2014年12月から、毎月鳥飼先生の新作が刊行されているのである。
全て別のシリーズで、それぞれの新作に拙い感想を書き、そしてその感想に対して鳥飼先生ご本人からコメントを頂戴する、というファン冥利に尽きる経験をさせて頂いた。
鳥飼先生、本当に感謝しています!

ついに観察者シリーズ最新作「生け贄」を読了!
スペシャルなディナーを堪能したように、読了後は大満足で自然に笑みがこぼれてしまう。
あー!美味しかった!(笑)
早食いのSNAKEPIPEは、あっという間に平げてしまった。
同じようにご馳走を堪能したROCKHURRAHと、食後のコーヒーを飲みながら感想を話し合う。

それでは「生け贄」についての感想を書いていこう。
2週連続で鳥飼先生の作品を取り上げることができるのは初めてのことだよね!
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意下さい。

観察者シリーズとは、大学サークルの野生生物研究会に所属していた4人が、卒業後して20年近く経っても連絡を取り合い、奇妙な事件に巻き込まれる話なのである。
4人のプロフィールについては、以前書いた記事「好き好きアーツ!#12 鳥飼否宇 part3 –物の怪–」で説明させて頂いているので、ご参照あれ!

「生け贄」はメンバーの中での紅一点、ネコこと猫田夏海が仕事をしているところから始まる。
ネコは一体いくつになったんだろう。
シリーズを通して読んでいるので、今ではすっかり知り合いの気分になっているSNAKEPIPE。
恐らく40歳を過ぎているはず。
それでも一番初めに登場した時から、雰囲気が変わっていない感じ。
SNAKEPIPE自身もそうだけど、精神年齢が高校生だった頃とあまり違いがないんだよね!
良く言えば若い。
成長していない、とも言える。(笑)
ネコも恐らく似たタイプと推測する。
勝手に思い込んでるだけかもしれないけど、共感を覚えることが多いキャラクターである。

植物写真家であるネコは、トサシモツケ(左の画像)を撮影するために高知県にいた。
撮影に成功したため緊張が緩んだのか、川に転落!
更にじん帯を切ってしまい、近くの民家でお世話になるのである。
その家は明神といい、白崇教という新興宗教の本部だったのである。

明神家は高知県南西部でカツオ漁船の網元として名高く、漁船を所有し、なんと明神港という私有の漁港まで持っている大金持ちである。
その明神家に、アルビノの男の子が生まれる。
その子が海に転落し、海中で白いサメからお告げを受けたことから、白いサメを「タイガ様」として崇める白崇教が始まる。
そして明神家の広大な敷地内に、「白崇御殿」と呼ばれる白崇教の施設が建設されるのである。

白いサメを崇める宗教とは!
実際白い動物を神の使いと考え、その姿を見ると縁起が良いとされる言い伝えは世界各国にあるよね。
例えば白いヘビは、パッと思い浮かぶし。
夢で見ただけでも幸運が舞い込んだり、金運が上がるとされているらしいね。
あれ?実は白いヘビの夢を見たことがあるSNAKEPIPEだけど、金運上がってないなあ!(笑)

アルビノについての説明はWikipediaによると

メラニンの生合成に係わる遺伝情報の欠損により
先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある個体である

ということになる。

白い動物は、その希少性や見た目の美しさから、
神の使いや吉凶の前ぶれなどとして畏れられ、
古くから信仰の対象として地元の人たちに
大切にされてきた

という記述もあるね。
「続日本紀」に赤い眼をした白い亀の記述があって、それが「宝亀」という元号の由来になったそうだ。
768年の出来事らしいけど、「鳴くよウグイス平安京」の794年より前のことになるんだねえ。
昔から白い動物が珍重されていたことが分かるよね!

アルビノは神の化身として明神家では優遇される。
現在、ネコこと猫田夏海がお世話になっている明神家にいるアルビノの女性、雅も例外ではない。
現在の白崇教の二代目教主から可愛がられ、副教祖の身分を与えられている。
雅には双子の妹がいて、その名前が、純!
おおおっ!純とはっ!(笑)
二卵性双生児のため、純はアルビノではない。
同じ双子でも雅のような扱われ方をしていないため、被害妄想気味である。
普段から夢見がちで追憶趣味のある28歳の純、さすがにツインテールは子供っぽいと思うけど、何故だか妙にシンパシーを感じてしまうSNAKEPIPE!
「名は体を表す」は本当のことだと思うな!(笑)
この純が、ギプスで動けないネコの面倒を見てくれるのである。

実はネコが居候している時、明神家は喪中だったのだ。
明神純の祖父が漁船沈没により亡くなってしまったのである。
「明神家は白崇教に全く関わっていない漁業一筋の家族もいるところが珍しいし、閉鎖的な空間だけれど、横溝正史の作品にあるような古い因習や香山滋の『怪異馬霊教』とは違うんだよね」
とROCKHURRAHが言う。
なるほど!大抵宗教関係というと、一族全てが信仰しているパターンがほとんどだろうね。
純の祖父は漁業を生業としていたため、事故に遭ってしまったんだね。
そんな明神家が更なる悲劇に見舞われるのである。

行った先々で見事に事件に遭遇してしまうネコは、つくづく災難だよね。
えっ、そうじゃないとお話にならないって?(笑)
「生け贄」ではギプス姿だったので、一人で動き回ることができないのはもどかしかったに違いない。
でもそのおかげで鳶さんが禁を破り、珍しい体験ができたのは良かったのかな?(笑)
鳶さんとは、ネコの大学時代の3学年上の先輩、現在は自称「観察者(ウォッチャー)」、「観察者シリーズ」の由来でもある鳶山久志のことね!
決して鳶職人の鳶さんではないので、お間違えなく!(笑)
ヘルプを求めた時、鳶さんは音信不通。
やっと来てくれた時には泣きそうになったり、鳶さんがびっくりするような嘘をついた時には大慌てするネコは、とってもかわいいね!
ネコにとっての鳶さんは先輩であり師匠であり、最も信頼を寄せている男性だと思うから一喜一憂しちゃうんだろうね。
ネコと鳶さんの関係は、とても微笑ましい。(笑)

「生け贄」の設定は2009年となっていたので、現在より過去の出来事になるんだね。
携帯電話からスマートフォンに移行する人が増え始めたのは、これより少し後のことだと記憶している。
ギプスで身動きが取れず、調査もままならないネコが「使い勝手の良い検索ツール」として頼ったのがジンベーだった。
電話でだけの登場だったけど、偽博多弁が聞けたのは嬉しい。(笑)
以前も書いたことがあるけれど、実はSNAKEPIPEが「観察者シリーズ」の中で友達になりたいと思っているのがジンベーなんだよね!
ちなみにROCKHURRAHは、今回登場しなかった神野先輩のファンだって。
自分の持っているバーで好きな音楽聴きながら仕事している身分が羨ましいらしい。(笑)
ジンベーは個展で忙しそうだけど、次回作では是非奇抜なファッションを見せて欲しいよね!

鳶さんはネコから事件の話を聞いた段階で、結論を弾き出していたみたいだね。
実はROCKHURRAHも、読んでいる途中で
「わかった!」
と叫び、「ある推理」を言葉にしていたんだよね。
そしてなんとそれはピッタリ的中!
もちろん鳶さんみたいな合理的な説明はなかったけれど、命中には恐れいった。
聞いた時SNAKEPIPEは、「そうかなー?」って答えてたからね。

鳶さんは生物に関する知識の豊富さと博識から、土着的な部分に科学的なメスを入れ、難題を軽々と解いてしまった。
まさかそんな話だったとは!
何度もページを行きつ戻りつ、読み返しちゃったよ。(笑)

「生け贄」は、予想していたよりも遥かにスケールの大きな、ちょっとやそっとじゃ思いつかない「すごい話」だったよ!
土着的な部分の解明というと京極堂を思い出すけれど、鳶さんは飄々と簡潔に説明してくれるのでわかりやすい。
これが鳥飼先生の持ち味なんだよね!
ネイチャーミステリー「生け贄」、大満足だよ!
「観察者シリーズ」最高だよね!(笑)

ここでふと気付いてしまった。
毎月新作メニューを楽しんでいたけれど、もう来月はないんだよね!
少しガッカリするSNAKEPIPE。
いや、まてよ。
今まで何度も食べている大好きなメニューを、また食べれば良いんだ、と気付く。
そうだ、鳥飼先生の旧作を再読しよう!
今まで書いていなかった感想が書けたら良いな。

2 Comments

  1. 鳥飼否宇

    2週連続で感想をアップしていただき。ありがとございます。今回もつぶさに読んでいただき、作家冥利に尽きます。香山滋先生まで引き合いに出していただけるなんて! しばらく間が空きますが、今後ともよろしくお願いいたします。
    “A mulato An albino A mosquito My libido YAY!”
    https://www.youtube.com/watch?v=hTWKbfoikeg

  2. SNAKEPIPE

    鳥飼先生、いつもコメントありがとうございます!
    当ブログを気にかけて頂いて嬉しいです。

    ニルヴァーナの歌詞、気にしていませんでした。
    入っていたんですね、アルビノ!(笑)

    ブログにも書きましたが、旧作を再読します。
    また感想を書かせて頂きますね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です