好き好きアーツ!#55 鳥飼否宇 part22−官能的-

【増田米尊の視線はこんな感じ?Tバックはダメだったね!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSに衝撃が走ったのは、先月のことだ。
大ファンの作家、鳥飼否宇先生の新作が発売されるニュースを知ったからである!
タイトルは「パンダ探偵」、発売予定日は5月22日だという。
狂喜乱舞しながらも、すぐにネット予約をするSNAKEPIPE。
これで発売と同時に発送、もしくは発売日の前日には手元に到着するかも、などとほくそ笑む。
ひとまずは安心、安心!(笑)
 
予約完了で胸は撫で下ろしたけれど、5月22日発売予定だからね。
もう少しの辛抱と分かっていても、待ちきれない!
そこで今週は鳥飼先生の著作を振り返る企画「トリカイズム宣言」を書いてみよう。

2016年11月「逆説的」について感想をまとめた時、

「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。
また再読してみよう!

と書いているSNAKEPIPE。
そうなのよ、感想を書いていない過去の鳥飼先生の著作は残り2冊だけなんだよね。
発表された順番とは逆になってしまうけれど、 今回は「官能的」について書いていこうかな!

「官能的」は、「綾鹿市」という架空の場所が舞台になっている4つの連作短編集なんだよね。
主人公は増田米尊(ますだよねたか)。
名を訓読みではなく音読みにすると、本質がはっきりする「名は体を表す」抜群の命名法!
ちょっと「なまるように」発音すると、あーら不思議。
意味のある言葉に聞こえてくるじゃない?(笑)
増田米尊については、「絶望的」をまとめた際、詳しく説明をしたSNAKEPIPEだけれど、今一度紹介しておこう。

綾鹿科学大学大学院数理学研究科(長い!)の助教授(現在は准教授?)という肩書を持つ増田米尊だけれど、研究内容に難がある。
「月経周期が性的欲求に及ぼす影響のフーリエ解析によるアプローチ」のような、増田米尊が個人的に興味を持つ題材について論文を発表しているんだよね。 
フィールドワークと称して、論文を書くための証拠固めをする。
つまり「覗き」や「女性宅のゴミを漁ったりする」ような犯罪者スレスレ(犯罪確定?) の行動を取るのである。
増田米尊の特徴はそれだけではない。
性的に興奮するとアドレナリンが脳内をかけめぐり、天才的頭脳の持ち主に(生物学的)変態するんだよね!
その変態(メタモルフォーゼ)のおかげで、 綾鹿市で起きた事件を解決へと導くのである。
(性的)変態が(生物学的)変態をするのが増田米尊、ということになるね。(笑)
では「官能的」の章ごとに感想を書いてみよう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

夜歩くと……漸変態に関する考察

フィールドワークに関しても少し語られただけなので、「これぞ増田米尊!」という変態行為が少なかったのもファンとしてはちょっと物足りない。

前述した「絶望的」の感想の中でこのような発言をしているSNAKEPIPE。
増田米尊は変態だ、という公式ができあがっているからね。
「官能的」は1ページ目の1行目から、変態性が露出している。
そうよ、これ、これ!(笑)
増田米尊は研究対象として女性のあとをつけまわす、いわゆるストーカー行為に及んでいるのである。
ターゲットにした理由は、女性のヒップが好みだったから!(笑)

増田米尊には好みに関する明確な基準があるようで、女性の下着はシンプルで色は白が望ましいとのこと。
そして下着で最も重要なのはクロッチで、その線(縫い目?)を偏愛していると聞くと、本物だわ!と感心してしまうSNAKEPIPE。
ここまで「こだわり」を持っている人こそ、変態と呼ぶにふさわしい!(笑)
増田米尊が夜な夜な、本当の意味での尻を3日もかけて追いかけた後、殺人事件が起こってしまう。
なんとターゲットにしていた女性が殺されてしまうのだ!

「綾鹿市シリーズ」ではお馴染みの谷村警部補と南巡査部長が登場する。
「逆説的」で語り部だった五龍神田巡査部長もいるね。
見覚え(聞き覚え)のある名前を発見すると、昔からの知り合いって気分になるのが不思議だよ。
そして容疑者となってしまった増田米尊、綾鹿署で取り調べを受けてしまう。
谷村警部補と増田米尊って同類だったっけ?(笑)

「官能的」の登場人物は他に、千田まり(血溜まり?)という、増田助教授の応用数理学を選択している学生がいる。
千田は「増田米尊の変態様式論」を書き上げるため、増田米尊の取材を続けているという変わり者なんだよね。
増田米尊を知り尽くしている女学生がいるとは!
そして千田といつも行動を共にしているのが、マクロリンコスという日本人ではない研究生待遇、通称クロちゃんである。 
増田米尊の変態による謎解きに加え、千田とクロちゃんの手助けにより事件は解決するのである。

孔雀の羽に……過変態に関する研究

増田米尊が双眼鏡を覗いている。
もちろん言葉通り「覗き」のためである。
「知り合いのバードウォッチャー」から勧められたスワロフスキー社製の双眼鏡だって?
その記述から思い当たる人物は「観察者シリーズ」の鳶さんしかいないよね。(笑)
ちなみにEL42 SWAROVISION WB(8.5×42)の定価325,000円(税別)ね。
かつて写真撮影が趣味だったSNAKEPIPEなので、カメラにもピンきりの値段があることは重々承知している。
双眼鏡も同様なんだろうね。
やっぱり高いのには理由があるったい。(笑)
調べてみるとスワロフスキーの双眼鏡、動画があったので載せておこうね。 

こんなに素晴らしい双眼鏡を研究費で購入できるとは、大学教授(もしくは助教授)って、良い身分だよね。
本来の目的とは別の増田米尊の趣味のためなのにね。
一文に何度も「の」 を書いてしまったよ。(笑)
筒井康隆の小説「大いなる助走」に登場する山中道子みたいだね。

そして増田米尊は偶然、向かいのビルにいる初恋の相手を発見してしまうのである。
高校の同級だった都美也子(段田男、みたいな命名法?)を執拗に追いかけ、「ミヤコちゃんに関する調査と研究」と題した「ミヤコちゃんレポート」を作成していたという。
その傾向は助教授になった今と同じだよね。(笑)
増田米尊は50代の設定なので、およそ30年以上前に想いを寄せた女性との再会は、胸ときめくものだったはず。
それにしても…。
30年以上前の同級生に会って、分かるかな?
見目姿がすっかり変わってしまうのではなかろうか。
増田米尊は特殊な嗅覚を持っていそうなので、ミヤコを見間違うことはなかったんだね!

そしてまたミヤコを追いかける行動に出た増田米尊は、殺人事件に巻き込まれてしまうのである。
谷村、南の警察関係者が登場、千田とクロちゃんのヘルプにより増田米尊が変態後、事件の鍵を発見するという構図は同じで、事件は無事解決。
あんなにご執心だったミヤコを失ったのに、増田米尊がさほど悲しんでいないことに違和感があったかな。
最後のセリフは「いかにも増田米尊!」だから、これで良いんだろうね。(笑)

この章の中で印象的だったのは「インスペクション・パラドックス」と、「6人の人間を介すると世界中の人につながる」という「六次の隔たり」について言及しているところ。
まるで松井冬子の代表作「世界中の子と友達になれる」みたいだけど、SNSはこの理論をもとにしているんだって?
Facebookで実際に検証が行ったところ、4.74人で世界中の人とつながることが判明したとか。
こういう学問、非常に興味深いよ!

囁く影が……完全変態に関する洞察

増田米尊のパソコンに添付ファイル付のメールが送られてくる。
添付されていたのは増田米尊の同僚(というのか)で、同じ大学に助教授として勤務している島谷香織の性交中画像だったのである!
ここで増田米尊が、相手の男が写っている画像には見向きもせず、自らの妄想を発展させることができる画像のみに集中しているところに「増田米尊らしさ」を感じるね。(笑)

添付ファイルで痴態を晒された島谷香織が、自殺を図ろうと高所に上る。
それを下から見上げていた増田米尊、下着の色について説教を始めるのである。
ブラック・ユーモアというのか、このシーンは秀逸だよね!
的外れに聞こえるけれど、気をそらすには「もってこい」の話題だったはず。
ところが島谷香織は身を投げてしまうのだ。
果たして本当に自殺だったのだろうか?

この章で注目したいのは「ハイパーソニック・サウンド」について説明されているところ。
環境省のページによると、人間の耳では聴き取れない超高周波を体感することにより、リラックス効果を得ることができるという。
楽器ではガムランや尺八、場所では熱帯雨林に超高周波成分が含まれているんだって。 
ジャワ島のジャングルに行ったことはあるけれど、リラックス効果を得た覚えはないな。(笑) 
昨年ROCKHURRAHと一緒に西東京方面に出かけて、アウトドアの真似事(?)を経験した時には開放的な気分になり、心身ともにリフレッシュできたっけ。
あれが「ハイパーソニック・エフェクト」なのかもしれないね?
1 / fゆらぎ、また体験したいなあ!(笑) 

この章で衝撃的だったのは、増田米尊を興奮状態にさせるために、千田自らスカートをたくし上げ、下着とヒップを見せつけるところ!
さすがに増田米尊を研究しているだけあって、ツボを心得てるよね。(笑)
千田の作戦は見事に成功し、 増田米尊は「変態ちゃん」と呼ばれながら天才科学者に完全変態する。
そしてまた事件の謎を解き明かすのである。
完全変態した増田米尊が、同類と思しき谷村刑事を「たわけ!」呼ばわりし、変態レベルに差があることを叱責するシーンが印象的だね。
なんだかこれってジョン・ウォーターズ監督の映画「ピンク・フラミンゴ(原題:Pink Flamingos 1972年)」で、「お下劣世界一」を競い合っている感覚に近いような?(笑)

四つの狂気 無変態に関する補足

最終章で、突然探偵である星野万太郎が登場する。
星野万太郎は「爆発的」や「逆説的」でお馴染みのキャラクターなんだよね。
このチャプターで大団円、一件落着なのでキモには触れないことにしよう。
SNAKEPIPEもクロちゃんと友達になりたいな、と思ったことだけ書いておこうかな。(笑) 

「官能的」は、 増田米尊が天才科学者へ変態することにより、謎解きする趣向なんだけど、その解き方がなんとも奇天烈なんだよね。
数学的な理論に加えダジャレや「こじつけ」から解答を得る、前代未聞の方法が素晴らしい!
そして今中、三沢、牛島、都、小松、李、藤波、正岡、木俣という登場人物の名前が、全て中日ドラゴンズに関係した名前のようなんだけど、違うかな?

久しぶりに「官能的」を読み返し、 改めて増田米尊という濃いキャラクターに魅力を感じたよ。
ということはやっぱりSNAKEPIPEも「変態」の仲間なのかもしれないね。(笑)

好き好きアーツ!#52 鳥飼否宇 part21−天災は忘れる前にやってくる-

【タイトルに因んだ映像。音が出るよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

「ゔぁっ!」
何やら言葉にならない声でROCKHURRAHが叫ぶ。
一体どうしたの?何があったの?
「鳥飼先生の新作が出るよっ!」
「ええーっ!」
きちんとした言葉で大反応するのはSNAKEPIPE。
いつも同じパターンだけど、ROCKHURRAH RECORDS内での事実なんだよね。(笑)

大ファンの作家・鳥飼否宇先生の新作とは、なんというビッグ・ニュース!
2018年に刊行された「隠蔽人類」以来の作品になるんだね。
およそ1年間、待ち望んでいた鳥飼先生の新作とご対面できるとは嬉しい限り!(笑)
明日にでも本屋に行くか、と鼻息を荒くしたSNAKEPIPEだったけれど、今の御時世、通信販売が一番早いよね。
その日の注文で、翌日には新作を手にすることができたよ!

今回のタイトルは「天災は忘れる前にやってくる」だという。
天災って自然災害のことだよね?
光文社の紹介ページからあらすじを紹介させて頂こう。

眉唾の噂やホラばなしをネット配信して生計を立てている「特ダネ ゴーダニュース」の目玉企画は、社長の郷田とバイトの智己の災害現場への突撃ルポだ。
しかし、二人の行くところ、なぜかいつも災害の陰に怪しい事件が待っている!
ブラックなギャグとダークな欲望が軽快に展開し、意表を突くトリックと鋭い推理もたっぷり盛り込んだ、サービス満点の傑作。

有料会員向けのネット配信だけで生計を立てる人物が主人公とは、今どきだよね。(笑)
「眉唾の噂やホラばなし」とは、例えば「目から鱗、夜尿症にはナマズエキスが効く!」や「不忍池に半魚人が出現!!」といった類のものらしい。
「絶対うそでしょ」と思ってしまうヘッドラインだけど、お金払っても読む人がいるみたいなんだよね。
この手の会員費って月額いくらなんだろう。
例えば月額100円で3万人の会員なら月収300万円!
「特ダネ ゴーダニュース」には、それくらいの読者が存在しているとの記述があるので、そこまで違った数字ではないよね。
取材費とアルバイト代を支払ったとしても、良い収入になりそうだよ。
よし、これから当ブログも有料にしてみるか。(笑)

冗談はさておき、鳥飼先生の新作に話を戻そう。
「特ダネ ゴーダニュース」の社長である郷田俊男とアルバイトの三田村智己が、災害地域を取材中、事件に遭遇する。
それらの事件を連作短編にした小説が、「天災は忘れる前にやってくる」なんだよね!
さて、彼らはどんな事件に遭遇したのか?
小説の順番通りに感想をまとめていこう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

天網恢々疎にして漏らさず

いきなり難しい文章から始まったけど、「天災は忘れる前にやってくる」では、タイトルに名言や格言が採用されている。
最初のタイトルは中国の思想家である老子の言葉だという。

天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕らえる。
天道は厳正で悪事をはたらいた者には必ずその報いがある。

こんな意味だったんだね。
恥ずかしながらSNAKEPIPEは初めて知った言葉だよ。
鳥飼先生のデビュー作「中空」でも老子や莊子の思想について触れられているので、特に違和感もなくすんなり本文を読み進めることができた。
画像は牛に乗った老子だよ。(笑)

第1インシデントは地震!
震度7の地震が発生、死者・行方不明者合わせて約2,300人、負傷者は7,000人以上の甚大な被害が報告されたのである。
そんな被災地にネタ探しに乗り込む「郷田プロダクション」の郷田とアルバイトのトモミ。
ボランティアとして活動するため、ではないんだよね。
あくまでも「特ダネ ゴーダニュース」のネタを探すため、ジャーナリストとしての使命だ、と主張する郷田だけれど、実態は行き当たりばったり。
眉唾もののフェイク・ニュースで、読者の興味を煽る文章を捏造するのが得意な郷田は、地震からどんなニュースを創り出すんだろうね?
胡散臭い人物だけれど、何万人もの人が食いつく記事を書くことができるというのは、やっぱり才能だろうなあ。(笑)

2人が足として使用しているのは「ジムニー」だという。
SUZUKIのジムニーって名前は聞いたことあるけど、どんな車だったかな?
おお、改めて検索してみると、とってもカワイイじゃない!(笑)
色によっては軍用車両にも見えそうで、ちょっとジープっぽい感じ。
ミリタリー好きのROCKHURRAH RECORDSでは大好評だよ!
ただし大の男2人、しかも少し太り気味の郷田が隣では、窮屈になるかもしれないね。

郷田の年齢は50代のようだけど、トモミはいくつなんだろう。
郷田にコキ使われているアルバイトなので、20代から30代だと思われる。
南国生まれで、現在は一人暮らしをしているとのことだから、アルバイトでもそれなりの収入を得ているんだろうね。
こんなデコボココンビだけど、一応「阿吽の呼吸」で行動しているみたいだよ。

郷田の小さな「気付き」から犯人が割れる。
タイトルの「天網恢々疎にして漏らさず」と絡んで、見事にまとまったよ!
それにしても郷田が探偵役とはね?
己の欲を優先させる、いかにも人間臭い人物で、今までの鳥飼先生の著作では見かけなかったタイプなんだよね。

大山鳴動して鼠一匹

事前の騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さいこと

これよくあるよね!
鳴り物入りで登場したけど、結果はまるでダメダメっていう話ね。
ラテン語のことわざが元になっているようだけど、この文言も初めて知ったSNAKEPIPE。
こんなところで無知を自慢してどうする。(笑)
ROCKHURRAHが「ことわざ」を分かりやすく画像にしてくれたよ。
あの山からこのネズミが!
なんてキュートなんでしょ。(笑)

第2インシデントは浅間山の噴火!
浅間山と聞いて連想するのは「浅間山荘事件」だね。
1972年2月、長野県北佐久郡軽井沢町にある河合楽器の保養所「浅間山荘」において連合赤軍が人質をとって立てこもった事件(Wikipediaより)である。 
あまり事件について詳しくないSNAKEPIPEは、だいぶ前にROCKHURRAHと一緒に「光の雨(2001年)」という映画を観て、連合赤軍について少し知ったくらい。
私刑による支配での団結は難しいこと、そして人間の残酷さを見たことを覚えている。
そんな浅間山が噴火し、その現場にネタ探し目的で訪れる郷田とトモミ。
命の危険を顧みず、よく頑張るよね。(笑)

郷田は一応(?)ジャーナリストなので、ドキュメンタリー映画も観ているんだね。
感銘を受けた映画としてヴェルナー・ヘルツォークの「ラ・スフリュール(原題:La Soufrière 1977年)を挙げる。
ヘルツォークといえば、2019年5月に「デヴィッド ・ リンチ_精神的辺境の帝国展 鑑賞」の中で、「狂気の行方(原題: My Son, My Son, What Have Ye Done (2009年)」の感想をまとめたっけ。
デヴィッド・リンチが製作総指揮だったために鑑賞したんだけどね。(笑)
記事にも「そんなに詳しくない監督」と書いているヘルツォークなので、「ラ・スフリュール」も知らなかったよ。
映像があったので、載せておこうか。(29分)

郷田とトモミ以外にも、命知らずの登山家がいる。
台風で波が大荒れの時にサーフィンやるような人がいるけど、似た感じかな?
そこで事件が起きるのである。

まさかそんな動機だったとは!
あっさり郷田が解き明かしたのは、年の功か?
そしてあんな結末とは、ね。
それにしても特に女性にとって、1歳の年齢間違いは大問題よねっ!(笑)

我が物と思えば軽し笠の雪

自分の利益になることならば、苦労を苦労と思わない。

これは松尾芭蕉に弟子入りした其角の句「わが雪と思へば軽し笠の上」からできた「ことわざ」だという。
この画像が其角のようだけど、ほとんど漫画だね。(笑)
酒豪だったという俳人だけれど、芭蕉からも才能を認められていたという。
なんだかドラマの主人公になりそうなタイプじゃない?

第3のインシデントは豪雪!
雪で閉ざされた地域での事件といえば、やっぱり映画「シャイニング」を思い出してしまうね。
建物に取り憑いている霊的な存在もさることながら、精神に変調をきたしたジャック・ニコルソンが怖くて!
あ、ジャック・ニコルソンの演技が素晴らしくて、に変えないとおかしな文章になってしまうね。(笑)

新年早々、豪雪地帯に取材に行く郷田とトモミ。
孤立した集落を目指して、雪道を車で移動する。
いわゆるジャーナリズムの精神を持つ人であれば、「眼の前にある現実」を報道したい、いやしなければならないという正義感が原動力になり、どんなに危険な場所にでも赴くだろう。
郷田の場合は動機が不純で、災害をネタにした記事を書き、会員数を増やし利益アップを狙っているにもかかわらず、目的地は正統派ジャーナリストと同じように危険な地域、というところにギャップを感じるんだよね。
ガセネタを書くなら、そこまでやらなくても良いような?(笑)

「我が物と思えば軽し笠の雪」は、またもや郷田が犯人を特定し、事件としての決着はついているけれど。
犯人の心境が腑に落ちないんだよね。
珍しく「おあとがよろしくなかった」作品かな。

善人なおもて往生をとぐ

善人でさえ救われるのだから、悪人はなおさら救われる。

親鸞の「歎異抄」に出てきた、非常に解釈が難しい言葉なんだよね。
タイトルでは「善人なおもって往生を遂ぐ」までだけれど、親鸞は「いわんや悪人をや。」と続ける。
意味を調べると「逆じゃない?」と感じてしまう不思議な言葉、どうやら「善人」と「悪人」の定義から勉強したほうが良さそうね。
しっかり文章にする力がSNAKEPIPEにはなさそうなので、親鸞について詳しい方のサイトをご参照くだされ!(笑)

第4のインシデントは離島での台風と火事。
郷田とトモミの当初の目的は、島で目撃されたジュゴンを撮影する、というものだった。
ジュゴンは人魚のモデルとされているので、眉唾もののニュースを発信している「特ダネ ゴーダニュース」では、格好のネタだろうと容易に推測できるよね。
ところが予想に反して、ジュゴンは現れず、郷田とトモミは火事の現場を撮影することに成功するのである。

臨場感あふれる動画をアップロードすると、たちまちアクセス数が増える。
「特ダネ ゴーダニュース」のフェイクではないニュースも人気があるんだね。(笑)
現場にいたからこその成果だけど、災害と聞くと「ほいきた!」とばかりに喜ぶ郷田は、非人道的とも言える。
そしてまた事件に遭遇するのである。

人それぞれに理由があるので、コメントが難しい事件だったね。
なんともやりきれない気分になってしまったよ。

株を守りて兎を待つ

古い習慣にとらわれて、時の変化に適応しないこと。
また、偶然の幸運を当てにする愚かさ。

中国春秋時代、ひとりの農夫が目前で木の切り株にぶつかって死んだウサギを手に入れ、それから毎日その切り株のところで見張りをしたという故事からできた中国のことわざみたいだね。
こういうタイプの人、今でもいるだろうな。
そんな話をしていると、急にROCKHURRAHが歌い出すではないの!

北原白秋作詞、山田耕筰作曲の歌だったとは!
静止画像がうさぎになってるし。
それにしても子供の頃の記憶により、ROCKHURRAHが2番まで歌い続けることに驚いたよ。(笑)
SNAKEPIPEは習った全く覚えがないんだけど、九州地方とは音楽の教科書が違ってたのかもね。

第5のインシデントは豪雨による川の氾濫である。
災害を取材し、有料サイトの会員数を増やすことで収入をアップさせた実績を持つ郷田は、新たな災害ネタを求めて水害に見舞われた地域に赴いていた。
自然災害が利益を生み出すことってあるんだけど、これを特需と言ってはバチが当たるよね。
郷田のような「人の不幸をネタにした記事を書く」タイプは気にしないどころか「ラッキー」くらいに思っているんだろうけど。

人間的には疑問を感じることが多い郷田だけど、推理力はあるんだよね。(笑)
かなり複雑なシチュエーションだったのに、今回の事件も見事に解決!
郷田はここまででいくら稼いだんだろう?

前門の虎、後門の狼

一つの災いを逃れても別の災いにあうたとえ。

中国の元代の学者である趙弼が記した書「評史」に書かれている「ことわざ」だという。
「ことわざ」に因んだ画像をROCKHURRAHが用意してくれたんだけど、なんてカワイイんでしょ!(笑)
こんな虎と狼だったら、大歓迎じゃない?
子供の頃から一緒にいたら、ずっと仲良しのままなのかな。
なんでこんなにカワイイ画像を選ぶか、ROCKHURRAH?(笑)

第6のインシデントは竜巻!
銀行強盗事件を取材するために訪れたのに、竜巻に遭遇する郷田とトモミ。
竜巻を間近で撮影した緊迫の動画だったら、かなりのアクセス数を稼げるだろうね。(笑)
郷田とトモミが乗っているジムニーまで、竜巻で車体が浮くほどの威力だったというから、自然の力は本当に恐ろしいよ。

この章では、なんと猟奇殺人を連想させる死体が登場する。
現場を想像すると、かなり怖い状態だよ。
郷田とトモミは平然と観察しているようなので、肝が据わってるのかな。

郷田の推理により、いくつかのパーツがカチッとはまりパズルが解けた。
人は土壇場になると、思いもよらない大胆な行動に出るのかもしれないね。
SNAKEPIPEにはできないだろうな。(笑)

同じ穴の狢

一見関係がないようでも実は同類・仲間であることのたとえ。
多くは悪事を働く者についていう。

さすがにこの「ことわざ」は聞いたことも、使ったこともあるよ。
「ことわざ」は知っていても、ムジナってどんな動物なの?
どうやらアナグマのことをいうんだね。
画像で見る限りでは、ハクビシンと区別がつかないよ。
「ことわざ」に動物が入っていることが多くて、今回の記事の画像だけみると何の記事を書いているのか不思議に思うかもね。(笑)

第7のインシデントは台風。
丁度この記事を書いている頃、台風6号が関東地方を直撃すると予想されていた。
現在では熱帯低気圧に変わったため、局地的な大雨に警戒する必要があるという。
ほとんど東京近辺から出たことがないSNAKEPIPEは、台風による被害という経験がないんだよね。
もちろん台風直撃で電車が動かない、ということはあるけれど、家の屋根が飛んだり窓ガラスが割れるというレベルの被害はないね。 
北九州出身のROCKHURRAHも、ほとんど被害に遭ったことがないという。

小説本文中の台風は猛威を振るっていて、傘が全く役に立たないほどの大雨と暴風の中、撮影に挑む郷田とトモミ。
「郷田が歩けば二次災害が起きる」じゃないけれど、 土砂崩れまで経験することになる。
これをまた好機と考え、取材を開始する郷田の根性は見上げたものだよ。

スクープを物にするために危険と隣合わせの行動をするジャーナリストといえば、戦場カメラマンなども同じだろうね。
SNAKEPIPEも写真の勉強をしている頃、その手の本を読んで刺激を受けたことがあるので、気持ちは分かる。
実際に行動に移すことができるかどうかが、ジャーナリストとしての資格だろうから、郷田は合格だね。(笑)

ペットのヨークシャーテリアが機動隊員によって助け出されるシーンがある。
ヨークシャーテリアといえば、鳥飼先生の「人事系シンジケート―T-REX失踪」 にも社長夫人のペットとして登場しているね。
好き好きアーツ!#44 鳥飼否宇 part18−激走&T-REX失踪−」 として感想をまとめているので、ご参照あれ!

まさかそんな展開になるとは!
そして「同じ穴の狢」がそういう意味で使われることになるとは思ってもみなかったよ。
「そんな」とか「そういう」といった「濁した」物言いしかできないのが歯痒いけど、仕方ないね。(笑)

鳥飼先生の新作は、今までの先生の著作である「逆説的」、「ブッポウソウは忘れない」や「激走」と上にも登場した「人事系シンジケート―T-REX失踪」などと同様、「実際に起こり得る状況」を背景にした小説だったね。
語り部であるトモミに関する記述があまりなかったので、特徴を捉えることが難しかったかな。
ROCKHURRAH RECORDSが得意としている、マニアックなミュージシャンから名付けた登場人物当てや、アート系の話題を見つけることができなかったのは残念。

天災をキーワードにした小説とはどんな感じだろう、と少し不安を感じながら読み進めた。
どうして不安だったかというと日本で実際に起こっている災害なので、被害状況を生々しく感じてしまうのではないか、と想像したからなんだよね。
郷田の視点が、有料会員獲得に向けスクープを狙っているという、ヒューマニズム寄りではないのは前にも書いたよね。
それが冷静なカメラのレンズ的な役割を果たしていたようで、被害が甚大であっても重たい文章になっていなかったように感じる。
読むのが辛い小説になっていなかったのは、さすがに鳥飼先生だよね!
最近の鳥飼先生の著作は「〜シリーズ」ではないので、また懐かしい登場人物に再会したいと思ってしまうのはSNAKEPIPEだけかな?(笑)

好き好きアーツ!#50 鳥飼否宇 part20−隠蔽人類−

20180506 top
【「隠蔽人類」映画版(想像)のポスターをROCKHURRAHが作成】

SNAKEPIPE WROTE:

NHKスペシャル「人類誕生」第1集が放映されたのが2018年4月8日のこと。
ヒトはどのように進化していったのかを探る全3回のシリーズである。
録画しておいた番組を鑑賞し、CGとは思えないほどのリアルな映像に驚く。
「人類誕生」第2集の放映も楽しみだね!

「人類誕生」を鑑賞して、しばらく経ったある日、ROCKHURRAHが興奮気味に叫んだのである。
「鳥飼先生の新作が出るよ!」
電子書籍「ジャーロ」に連載されている時は我慢して、1冊にまとまるのを待っていた小説の刊行である。
待ちかねていた、その時がやってきたのだ!
タイトルは「隠蔽人類」。
前述のNHKスペシャルとのシンクロを感じてしまうよね。
NHKスペシャルは恐らく多くの人が目にする番組だと思うし、日頃から人類について考えたり、思いを馳せる人ばかりではないはず。
大勢の人が日頃ほとんど耳にすることがないであろう「ホモ・サピエンス」という単語を意識した後、鳥飼先生の「隠蔽人類」が発売されるなんて、まるでNHKスペシャルとのコラボみたいじゃない!(笑)
鳥飼先生に追い風が吹いているように感じて嬉しくなる。
嬉しいサプライズにより新作を入手したことは、先週の冒頭でも書いていたね。
本当にありがとうございました!(笑)

鳥飼先生の新作「隠蔽人類」はどんなお話なんだろう?
光文社の紹介ページに載っていたあらすじを引用させて頂こう。

形質人類学者の日谷隆一率いる日本人学者の調査団は、アマゾン奥地の未接触民族キズキ族の村で世紀の大発見をした。
DNA分析から、彼らがホモ・サピエンスではない別種の人類、隠蔽種の可能性が見つかったのだ。
しかし沸き立つのもつかの間、調査団メンバーの一人が首を切断され、発見された。
調査団以外の全員にアリバイが。
犯人は──!? 
さらに、隠蔽人類と殺人の「秘密」は日本へ。
殺戮の連鎖が巻き起こり、探偵役が次々に死んでいく。
ことごとく読者の予想を裏切り、皮肉と逆説をはらんで疾走していく事件の展開。
誰にも結末を読ませない、圧倒的に面白い驚愕ミステリー!

アマゾン奥地で大発見、なんてワクワクするよ。(笑)
ROCKHURRAHは、タイトルと冒頭のシチュエーションから香山滋の「オラン・ペンデクの復讐」や昔の探偵小説でいう「魔境冒険物」を連想したらしい。 
SNAKEPIPEが思い出したのは、 鳥飼先生の「桃源郷の惨劇」。
外国を舞台にしていて、新種の鳥「ミカヅキキジ」を追うミステリーだったからね!
それにしても「隠蔽種」ってなんだろうね?

隠蔽種とは本来は別種であるが、外見上の区別がつかず、同一種として扱われていた種。
遺伝子の塩基配列などを調べる分子系統学的な手法で、別種の存在が明らかになることが多い。

似ていたから気付かなかったけど、よく調べてみたら別物だったということだね。 
簡単に説明し過ぎ?(笑)
本当はDNAやRNAやヌクレオチドとか遺伝子が、などと書くべきなんだろうけどね。
詳しく知りたい方は専門家の文章を参照してちょ。
「隠蔽人類」とは、人のように見えるけど、実は「ホモ・サピエンス」ではなかった人類ということなんだね。

「隠蔽人類」は5章からなる連作短編。
章ごとに感想をまとめていこうと思うんだけど、果たしてうまく書けるかどうか。(笑)
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

隠蔽人類の発見と殺人
綾鹿科学大学の形質人類学者である日谷隆一教授他、4人の日本人がアマゾンに行くところから話が始まる。
ということは「隠蔽人類」は「綾鹿市シリーズ」ってことで良いんだろうね?
「綾鹿市」という架空の地域で起こるミステリーは「綾鹿市シリーズ」と呼ばれ、鳥飼先生の代表的なシリーズとして有名なのである。
鳥飼先生のWikipediaがまだ更新されていないようなので確認できなかったけれど、新作は「綾鹿市シリーズ」だね!
綾鹿市は架空の都市だけど、地図が欲しくなるほどだよ。(笑)
何故、綾鹿科学大学の学者がアマゾンに行くことになったのか?
それはアメリカ人冒険家クリス・グロールの手記により、未接触部族の存在が明らかになったためである。
クリス・グロールにより、その部族はキズキ族と名付けられていた。
クリス・グロールが濁流に飲まれ不慮の死をとげたことにより、キズキ族についての詳細は不明なまま。
世界各国の人類学者がこぞってアマゾンに向かい、調査を開始するも発見には至っていなかったのである。

クリス・グロールというのはニルヴァーナだね、ROCKHURRAHが言う。 
アメリカのバンド、ニルヴァーナのメンバーだったクリス・ノヴォセリックとデイヴ・グロールの名前を組み合わせるとクリス・グロールになっちゃうよ! (笑)
よく分かったね、と感心するSNAKEPIPEに「初心者レベル」との返答!
鳥飼先生の小説には、名前の由来を解く楽しみも隠されていて、「痙攣的」や「爆発的」では夜な夜な謎解きに明け暮れたっけ。
「隠蔽人類」の登場人物も試行錯誤して考え続けていたけれど、日本の城や半島の名前が多い、ということしか見いだせなかった。
全員が城の名前じゃなかったので、恐らく不正解だろうな。(笑)

世界中の調査団はキズキ族を発見することができなかったのに、日谷チームは見事に発見し接触に成功する。
これだけでも充分な成果だけれど、日谷チームはキズキ族のDNAサンプルの入手にも成功し、驚くべき結果を目にするのである。
あらすじにもあるように、そこで事件が起こってしまうんだよね。

キズキ族は白人のような容姿で、アスリートのような引き締まった体型をしているという。
菜食主義で性格は温厚、富を蓄えるという概念がないなんて、それだけでもう人間じゃないかも。(笑)
部族の全員がお釈迦様みたいだよね。
キズキ族の一員になりたいかと聞かれたら迷ってしまうかもしれない。
ええ、SNAKEPIPEは欲にまみれて生きてますから。(笑)

綾鹿科学大学の准教授である尾崎が殺されてからの展開には驚いた!
まさかそんな秘密が隠されているとは。 

隠蔽人類の衝撃と失踪

日谷教授は、キズキ族の女性・ミラを伴って帰国した。
未接触部族というだけでも衝撃的なのに、ミラは美しくモデル並のスタイルの持ち主。
衣服を身に着ける習慣がないため真っ裸だというのもセンセーショナルだよね。
学術目的以上に、男性陣がこぞって見物にやってくるのも仕方ないかもしれないね?(笑)

そんなミラをイメージしてROCKHURRAHが作成してくれたのが一番上の画像。
「隠蔽人類」が映画になったら、という想定なので真っ裸にはしなかったという。
ジャングルと塩基配列をバックにした半裸体美女とはニクい演出だね。(笑)
いつも作成してくれてありがとう! 

第2章は密室に関するトリックが使われる。
完璧に思われたセキュリティを突破することができたのは何故か、という点がポイントかな。
第1章でも予想外の展開に付いて行かれるか不安になりながら読み進めてきたけれど、第2章でまたもや先が全く分からない展開になっていく。
SNAKEPIPEの頭で理解できるだろうか?(笑)

隠蔽人類の絶滅と混乱

混乱してしまったSNAKEPIPEは第3章を読んで安心する。 
第2章の顛末が説明されていたからだ。
内容を理解しないと読み進めることができないという、当たり前のことを改めて認識したよ。(笑)
これですっきりした気分で第4章に進むことができるね!

第3章にはロバート・ハンダという外国人留学生が登場する。
日本語が堪能な日系アメリカ人で、形質人類学を専攻している。 
日谷教授を紹介する時にも何気なく形質人類学と書いてしまったけれど、やっぱり調べてみようね。

人類やチンパンジーやゴリラなどヒト科の共通祖先からどのように原生人類が進化してきたのかを解明する学問である。
主に発掘された霊長類や人類の化石を対象に、その形態を分析する。
骨や歯の形態からその古人類の運動様式・食性・性・生活環境・社会構造などを明らかにする。

まさにNHKスペシャルの「人類誕生」なんだね。
どうしてロバート・ハンダが日本の大学に籍をおいているのかは不明だけど、第3章では大活躍する。
片言の日本語かと思いきや、かなり長いセリフを喋ってるんだよね。
ロバートのパートはカタカナ表記されているので、いつの間にか変なアクセントを付けて読み進めていることに気付く。
ケント・デリカットが喋ってるみたいな、ね。(笑)

いやはや、こんなにハチャメチャになってしまうなんて!
「芸のためなら女房も泣かす」(浪花恋しぐれ!古い!)
じゃないけど、善悪は後回しになっちゃうものなのかなあ?
成果を求めるあまり、行き過ぎた行動に出るジャーナリストを描いた映画「ナイトクローラー」を思い出したSNAKEPIPE。
「ナイトクローラー」のジャーナリストには共感する部分もあったから、そう考えると「隠蔽人類」での行動も納得できるかもしれない。
そうだよね、自分なりの目的あったら普通じゃないこともやっちゃうかもね。(笑)

隠蔽人類の発掘と真実

舞台は再びアマゾンへ。 
スペイン語が堪能で、生物に詳しい宮路司という翻訳家が登場する。
元・形質人類学教授だった父親と共に、キズキ族の村を探すためである。
恐ろしい鳴き声の正体をホエザルだと見抜いたり、飛んでいる鳥の名前を言ったりするシーンはまるで「観察者シリーズ」のトビさんが出てきたようで嬉しくなるね。
「観察者シリーズ」は2015年の「生け贄」が最後の刊行なので、3年前になるんだね。
またトビさんやネコに会える日が来ると良いな!(笑)

手がかりを得て帰国した宮路親子は驚愕の事実を知ることになる。
いや、驚いたのは宮路親子ばかりではない。
読んでいるSNAKEPIPEも顎が外れるほどだった。(大げさ)

ここまで「どんでん返し」が繰り広げられる鳥飼先生の作品は初めてだよ!

隠蔽人類の絶望と希望

最終章では綾鹿市を離れて、世界規模にまで広がりを見せる壮大なストーリーになっていた。
この章で、今までの疑問が解決することになる。 
まさかそんな事実が隠蔽されていたなんて!
「隠蔽人類」は章ごとの殺人事件と共に「DNA」に関するミステリーを合わせ持った小説だったんだね。
 生物学meetsミステリー、最後はSFになった感じかな?

実際に「ホモ・サピエンス」ではない、別種の人類が隣にいたらどうなるんだろう。
想像しようとしてもできないのは、全く経験がないからだろうね。
世界中の人が温和なキズキ族のようだったら、何の問題もなく全ての人類を受け入れるだろうけど。(笑)
隔離したり殲滅させようとする意見が出るのも納得できる。
前から虫が好かなかったとしたら尚更だろうね。

次々と探偵役がいなくなってしまう(光文社のあらすじより)「隠蔽人類」は、鳥飼先生の作品では初の試みかも?
アマゾンから始まり綾鹿市に移って、最終章ではインターナショナルな舞台に発展するなんて思いもよらなかったよ。

ROCKHURRAHが連想していた「オラン・ペンデク」や「魔境冒険物」とは全く違う作品だったね。
読み進める程に混乱し、死体はどんどん増えていく!
分かったと安心するのも束の間、新たな疑問にぶつかる、どんでん返しの連続だったね。
展開は急だったけれど、決して奇想天外ではない。
本当にこんな状況が訪れたら、と想像してROCKHURRAHとの議論が白熱したのは言うまでもない。(おおげさ)
驚愕しながら一気に読み進めた鳥飼先生の新作、楽しかった! (笑)

好き好きアーツ!#45 鳥飼否宇 part19−紅城奇譚−


【「紅城奇譚」のイメージ画像をROCKHURRAHが作成。よくできてるなあ】

SNAKEPIPE WROTE:

よく夢を見て、それを記憶しているSNAKEPIPE。
先日の夢は疑似体験ができるゲームに参加している、というもの。
体験しているのは恐竜ティラノサウルス(実物大と思われる)から逃げる、というバーチャル・ゲームだった。
背後に気配を感じたので、目を合わせないように壁にへばりつき、じっと耐える。
荒い鼻息が聞こえてくる。
震えを抑えながらティラノサウルスが行き過ぎるのを待つ。
この時間の長いこと!
ゲームだと分かっていても、本当に怖かったよ。(笑)
なんでこんな夢を見たのか?と考えて、思い当たった。
大ファンの作家、鳥飼先生の新作をまとめさせて頂くことを考えていたため、前回の感想文を読み返したのが原因ではないかと思われる。
鳥飼否宇先生の作品を紹介していくシリーズである「トリカイズム宣言」で前回書いたのが「T-REX失踪」だったからではないだろうか。
夢は不思議なことが多いけど、チラッと思考を横切っただけの事柄がSNAKEPIPEの脳内で、おかしな物語を制作してしまったみたいだね。(笑)

前フリが長くなってしまった!
そう、鳥飼先生の新作なんだよ!(笑)
タイトルは「紅城奇譚」。
「紅城」と聞くとROCKHURRAHが大好きな国枝史郎の「神州纐纈城」 を連想してしまう。
纐纈城に出てくる纐纈布が真紅だからね。
もしくは「クリムゾン・キングの宮殿」からの連想かな?
「奇譚」と聞けば「パノラマ島」と、つい答えてしまうね。(笑)
こんな条件反射をしてしまうのはROCKHURRAH RECORDSだけかな?
鳥飼先生の新作「紅城奇譚」は、タイトルだけでも「おどろおどろしい」「凶々しい」イメージを感じてしまうね。
新作の紹介ページからあらすじを引用させて頂こう。

織田信長が天下統一をもくろみ、各地の戦国大名を次々と征伐していた16世紀中頃。
九州は大友、龍造寺、島津の三氏鼎立状態となっていた。
そんななか、三氏も手を出せない国ー勇猛果敢で「鬼」と恐れられた鷹生氏一族の支配地域があった。
その居城、血のように燃える色をした紅城で、次々と起こる摩訶不思議な事件。
消えた正室の首、忽然と現れた毒盃、殺戮を繰り返す悪魔の矢、そして天守の密室……。
眉目秀麗な、鷹生氏の腹心・弓削月之丞が真相解明に挑む!

なんと!鳥飼先生が今回舞台設定されたのは戦国時代とは!
戦国時代のミステリーなんて読んだことないよ。
SNAKEPIPEは時代小説ですら、吉川英治の「宮本武蔵」と「新書太閤記」、「三国志」や「水滸伝」くらいしか読んだことないんだよね。
ROCKHURRAHからの勧めで読んだ、前述の「神州纐纈城」は伝奇小説になるらしい。
どちらにしても古い時代を舞台にした小説だけど、ミステリーものは初めてだよ。
これは期待しちゃうね!(笑)

発売日当日、ROCKHURRAHが鳥飼先生の新作を入手してくれていた!
本屋に面出しされていた最後の1冊だったという。
手に入って良かった!(笑)
感想を担当するのはSNAKEPIPEなので、最初に読んで欲しいと言われる。
あらま、済みませんね、いつも。(笑)
読み進めようとするけれど、「序」でつまずく。

戦国時代の力関係は、相関図などで武将の名前、地理や地位などの位置を把握しないと、なかなか理解できないんだよね。
何度か読み返して、ある程度理解する。
最近好きで観ている番組がNHK BSプレミアムの「英雄たちの選択」 。
学校の歴史の授業では習っていない、今まで知らなかった歴史上の出来事を知り、驚いたり感心している。
その番組でも戦国時代の武将やら「○○の戦い」を深く掘り下げて考察するのを観たことがある。
そのおかげで、以前よりは多少歴史に対しての興味や想像力は持っているはずなんだけどね。(笑)
SNAKEPIPEみたいな「つまずく」人には、「紅城奇譚」の家系図あったら良いなあ。
そう話すと、ROCKHURRAHが作成してくれた。
さすが、ROCKHURRAH!やるなあ!(笑)
クリックで大きくなるので、見てみてね。

鳥飼先生の小説といえば、登場人物の名前に、何かしらの符号があることが多いよね?
今回はどうだろう。
龍政の側室である「雪」「月」「花」は、会田誠の「犬」シリーズに登場する美少女達の名前と同じかも!(笑)
かなり物議を醸した会田誠の作品だけど、この記事に画像を載せている。
鳥飼先生からのコメントも頂戴しているね。(笑)
他には何かないだろうか?
ROCKHURRAHが「利賀野」と「弓削」は「リガーノ」と「ユーゲン」と読めそうで、怪しいと言う。
そう聞けば「椎葉」も「シーヴァ」とか?
あっ、ヒンズー教のシヴァはどうだ!
などと勝手に想像しまくる始末。(笑)
急にヒンズー教が入ってくるわけないよねえ。
「鶴」「鳰」「鷹」「龍」「熊」「牛」と並べると生きものの名前だね。(「龍」は伝説上での生きものだけど)
何も符号や「もじり」が見いだせない!
こうして悶々としながら考えるのも、鳥飼先生の小説の楽しみ方なんだよね。(笑)

「紅城奇譚」はSNAKEPIPEがつまずいた「序」から始まり、4編から成る「破」、そして最後に「急」という章で構成されている。
「破」の章にある4編について、それぞれの感想を書いてみよう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

破の壱 妻妾の策略
紅城主である鷹生龍政の正室、鶴と三人の側室の間での確執が題材になっている。
鶴の首なし死体が発見された直後に、龍政の子を宿す側室である雪が櫓から落下して命を落としているところを発見されるのである。
正室、側室という呼び方では分かり辛いので、本妻と妾に置き換えたほうが良いかもね?
「大奥」と呼ばれる女だらけの場所が江戸城にあったことは、歴史に詳しくない人でも知っているよね。
戦国時代にも側室がいて、家系を絶やさないようにしていたんだね。
ハーレム状態で跡取りを作ることが目的と聞くと、まるで女性は子供を作るためのマシーンみたいだけど、当時の女性にとっては「選ばれし者」という感じでエリート意識があったのかもしれないね?

「紅城奇譚」の城主である龍政にも3人の妾がいて、そのうちの1人、雪が妊娠しているのである。
すでに龍政には、本妻・鶴との間に熊千代という息子がいるけれど、雪から生まれる子供に期待をよせている。
何故ならば熊千代は武芸よりも虫や花に興味を示す、優しい心の持ち主だったため、世継にしては頼りないと考えたからである。
ここでSNAKEPIPEは思い出す。
BSプレミアム「英雄たちの選択」で観た春日局の回のことを。
徳川家光の幼名は竹千代、幼い頃は病弱で内気だったため、世継候補からは外れていたという話を思い出したのである。
この設定はそのまま「紅城奇譚」の熊千代にもあてはまりそうじゃない?(笑)

本妻と妾1人がほとんど同時に死亡する不思議な事件は、「紅城奇譚」での探偵役となる龍政の家臣・弓削月之丞と龍政の妾である花を助手として解明されるのである。
弓削月之丞は椎葉氏の兵だったけれど、その美貌に惹かれた龍政が側近にすることを決めたという。
容姿端麗なだけではなく、月之丞は武芸にも秀で知恵者でもあったため、龍政から信頼されるようになった人物である。

この事件、タイトルは書けないけど、横溝正史の小説を思い出したよ! (笑)

破の弐 暴君の毒死
龍政には弟・龍貞がいる。
冷酷無比と恐れられている龍政が呆れてしまうほどの残忍さと、女と見ればすぐに手を出す獣のような男。
戦で負傷したせいで右半分は醜い傷跡があり、右目は潰れているというから、女は悲鳴を上げるに違いない。
そんな龍貞が宴会の席で酒を飲んだ途端、急死してしまうのである。

その宴で龍貞は、龍政の家臣である牛山武兵衛の妹にちょっかいを出し、龍政の娘・鳰(にお)を舌なめずりしながら見つめる。
鳰はまだ幼女だよ!
龍貞の好色ぶりには、読んでいるSNAKEPIPEまで腹が立ってしまった。
誰もが「こんなヤツいなくなれば良いのに」と思ってしまう龍貞の毒殺!
一体誰が起こした犯行だったのか?

いつの間にか探偵役になってしまった月之丞と、これまた側室でありながら助手の役割を果たしている花はここでも事件を解決する。
のだけれど…。
仰天の展開に「えっ、ちょっちょっと待って」 と誰に言うでもなく声を上げ、付いていかれないSNAKEPIPE。
もう少し整理しないと。
再び数ページ戻り、もう一度読み返す。
読みながら自分の体の「ある部分」をしっかり押さえていることに気付く。
うっ、痛い、、、。
戦国時代だからねえ。
どうなんだろう、「あり」だったのかなあ?

この話でギリシャ映画「籠の中の乙女」を思い出したSNAKEPIPE。
ある一部、似たところがあるんだよね。
あの映画、とても不思議だったなあ。
結局分からず仕舞だったっけ。(笑)

破の参 一族の非業
毎年紅城では「弓比べ」という行事があるという。
その「弓比べ」で自分の息子・熊千代が紅城の跡取りに相応しいことを見せつけたいと考える龍政。
ところが、そんな父親の期待に応えられそうにない熊千代。
熊千代は体育会系ではなく、勉学を得意とする文化系の子供だったからね。
それでも紅城主であり封建的な父親には逆らえないので、やるっきゃない!(笑)
ライバルとして龍政の家臣・利賀野玄水の息子・彦太夫があてがわれる。
熊千代と同い年の彦太夫は弓の腕前に優れていて、昨年は堂々と優勝しているほどである。
彦太夫に負けるな、という龍政の叱咤にも関わらず、散々な結果しか残せない熊千代。
龍政は自分の父親・龍久に弓術を伝授してもらうよう熊千代に命じる。
今ではすっかり隠居してしまった龍久だけれど、鷹生家を一代で築き上げたのはこの龍久。
武芸に秀でた息子の龍政ですら、弓術に関してだけは龍久には及ばなかったという。
その弓の達人に教えを乞うため、熊千代が龍久の元を訪れるのである。

熊千代の境遇には同情してしまうSNAKEPIPE。
それでもこの時代は、世継として生まれたなら学業よりも武芸だったんだろうね。
まあ、今でも世襲制を採っている職業や家筋はあるだろうけど。
そして「ふふん」とばかりに弓の腕前を披露するライバル・彦太夫が、少し憎らしく感じてしまったのも事実。
SNAKEPIPEが文化系だから余計かもしれないね。(笑)

この章では、龍久と熊千代が弓で射られて死亡する事件が発生してしまう。
「破の壱」に続いてのダブル殺人事件!
おお、これはタイトル通り一族の非業だよ。
だってもう鷹生家は…。

「破の参」の中で印象的だったのは、銀杏の葉が風に舞い、幻想的な光景を見せるシーン。
SNAKEPIPEは京極夏彦の「絡新婦の理」にある桜吹雪の場面を思い出したよ。
どちらも映像化されたら美しいだろうなあ!
ROCKHURRAHが「紅城奇譚」のイメージ画像を作成してくれるというので、銀杏の葉をリクエストした。
トップにあるのがその画像なんだけど、とてもキレイに仕上がっているよね!

破の肆 天守の密室
猛将と恐れられていた龍政が、その姿を想像できない程げっそりやつれている。
これまでの事件に加えて、龍政自身も寝込みを襲われたのである。
命の危険を感じた龍政は天守閣に立てこもる。
籠城戦に適していると言われる紅城の中で、最も安全な場所だからである。
ところが事件は起きてしまうのである。
密室殺人事件なんだよね!

なんともスケールが大きく、驚愕してしまった。
SNAKEPIPEの脳内には、完全に映像が映し出されている。
思いもよらない展開にはびっくり仰天!
まさか、そんな!ねえ?(笑)

それにしても一番驚いたのは、命の危険にさらされてげっそりしているのにも関わらず、妾の花に挑むいつもと変わらない龍政の精力旺盛なところ!
「甘い物は別腹」のような感覚だろうか。
そっちに気が回るなら、もっと別のこと考えれば良いのに。(笑)

この新作は、今まで読んでいた鳥飼先生のどの作品とも違っていた。
動植物に関する記述もなく、音楽的な要素もなく、プッと吹いてしまう笑いの要素もない。
鳥飼先生らしさが表れていたとすると、花のセリフかな。
ネコ(観察者シリーズ)にも宮藤希美(妄想女刑事)にも通じるタイプなんだよね。(笑)
側室だけあって、したたかさを秘めていながらも、少しボケが入るキャラクター。
あまりお色気ムンムンな雰囲気は感じなかったけれど、龍政からの寵愛を受けているんだよね。
花が妊娠することはなかったのかなあ?
そうしたら世継ができたかもしれないのにね。(笑)

鳥飼先生の新たな一面を見せてもらったように思う。
この小説、映像化して欲しい。
実写では難しいシーンがあると思うので、アニメでいかがでしょう!
もちろんリアルな絵柄で、大人っぽいアニメでね。

将来的に、また別の鳥飼先生の新しい引き出しが見られるんじゃないか、という期待と共に、今まで読み進めてきたいつも通りの「鳥飼節」も楽しみに待っていよう!
鳥飼先生、いつも応援しています!