SNAKEPIPE MUSEUM #04 Cindy Sherman

【どんな役でも成り切っちゃう!デ・ニーロ顔負けのシンディ・シャーマン】

SNAKEPIPE WROTE:

ジム・ジャームッシュ
監督の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(原題:Stranger Than Paradise)という80年代に大ヒットした映画がある。
当時には珍しくモノクローム映像、お洒落系としてもてはやされた。
SNAKEPIPEも当時観たはずだけれど、特別な事件が起こるわけでもなく淡々とした時間の流れに退屈してしまった。

当時仲良くしていた映画好きの年長の女性は
「ストレンジャー・ザン・パラダイスは写真集を観る感覚でずっと部屋に流しておきたいくらい素敵」
と評価しているのを聞きびっくりした。
なんであんなに退屈な映画を?と思ったからだ。
それからかなり後になって父親(写真家)から似た話を聞くことがあった。
「ストレンジャー・ザン・パラダイスはロバート・フランクなんだよ」
この時には既に写真を始めていたSNAKEPIPEなので、父親が言わんとすることが解った。
ロバート・フランクは「アメリカ人」という写真集が有名な、後の写真家に多大な影響を与えた大御所の写真家!
納得したSNAKEPIPEはもう一度あの映画を鑑賞してみた。
そしてやっと当時の年長の女性の言葉と父親のロバート・フランク発言を理解することができたのである。

ストレンジャー・ザン・パラダイスは、全てのシーンが一枚写真として完成している、言うなれば連続スチール写真映画だったんだ!
写真集を観ている感覚という言葉が大正解、と気付かされたのである。
一枚でバッチリ決まる写真を連続させて映画を作るという大胆な試みを成功させたジャームッシュ。
そしてこれから紹介するのはジャームッシュを逆転させた手法を使った写真家なのである。

シンディ・シャーマンの写真を初めて目にしたのはいつだったろうか。
やっぱり「ストレンジャー・ザン・パラダイス」の時期と同じくらいだったのかもしれない。
映画の中のワンシーンをシンディが自作自演で撮影するシリーズは衝撃的だった。
映画の中のひとコマを作る写真、ということでジャームッシュとは逆なのである。
例えば上の写真は怯えた表情と暗闇の表現から恐らく恐怖映画をイメージしてるんだろうな、と想像する。
何者かの気配を感じ取り、これからどうしたらいいのか様子を伺っている感じ。
そして学生服のように見えるので、少女を設定しているようである。
他の写真でも様々な人物に成り切り、いろんな映画のワンシーンを演じるシンディ。
全部の写真が同一人物とは思えないほどの変貌ぶりに驚かされる。

変身願望や自己愛が強いのか。
当時はあまり使われなかったと思うけど、いわゆる「コスプレ」好きとも言えるよね。(笑)
映画のあの人の役をやってみたい、というような。
SNAKEPIPEはあまり深く意味を考えなかったけど、写真そのものがとても好きだった。
元々スチール写真が好きだから余計にね。
調べてみるとどうやらかなり思想を持った写真だったようで、写真家というよりは現代アートとして分類されるのかもしれない。
非常に詳しい説明はこちらの評論家の方には負けちゃうのでSNAKEPIPEが今更どうこう言うまでもないね。(笑)

現代美術館で開催されたシンディ・シャーマン展を観に行ったのが1996年とは。
もうすでに14年も前だったのね。(とほほ)
上述のスチール写真のシリーズの次には死体を演じ、その次にはもう自分自身ではなく人形を使った写真へと移っていた。
そしてその人形も更に解体されて行き、物(ぶつ)化していく。
どんどん壊れていってるなあ、と感じた。
ここまでくると「性」の問題ではなくて「生」とか「死」になってくるのかもしれないね。

2003年の木村伊兵衛賞を受賞した澤田知子もシンディ・シャーマンと同じ手法を使っていたなあ。
本人がいろんな役に成り切るってことでね。
シンディがシリアス写真だとすると澤田知子はさすが関西出身、「お笑い系」だったけどね。(笑)
20年以上経ってもまだまだ影響力大のシンディなんだね。

その後のシンディ・シャーマンの活動については不明だけれど、作品がかなり人気で高額らしいのできっと今頃はお金持ちなんだろうな。(笑)
物となった肉体の次の世界をどう表現していくのか。
こうなったらもう輪廻転生しかないかも?!
スペルは違うけど、名前からしてシャーマン(祈祷師)だしね!

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