好き好きアーツ!#16 DAVID LYNCH—Hand of Dreams

【リンチ自身が登場する個展の案内用映像!愛・平和が最高!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが二人揃ってオープンしたての流行の場所に出かけることはほとんどない。
今回は非常に珍しく今年の4月に開業したばかりの渋谷ヒカリエに行くことになってしまった。
理由はデヴィッド・リンチのリトグラフ展の鑑賞のためである。
なんとリンチの日本における個展開催は21年ぶりとのこと!
そ、そんなに前のことだったのか、とびっくりする。
更に驚くべきことはその21年前の個展にもリンチ・フリークであるSNAKEPIPEはちゃーんと出かけていることだ。(笑)

その時の話は以前「かもめはかもめ、リンチはリンチ」の中で軽く語っていたSNAKEPIPEだったけれど、もう少し詳しくその時の話を書いてみようか。
21年前、それは1991年のことである。
「デヴィッド・リンチ展開催のためリンチ本人が来日!
同時に日本初公開のリンチの実験映画も公開します。
観覧希望の方は○月×日までに往復はがきでお申し込みください。
希望者多数の場合は抽選にて云々・・・」
リンチ、来日、初公開映像、などなど魅力的な単語に目が釘付けになるSNAKEPIPE。
だけど「○月×日までに」と「抽選」の2文字が引っかかる。
その記事に気付いたのが、締め切りのわずか2日くらい前だったんだよね。
郵送していては間に合わないかもしれない!
気付いたのが遅かったのが悪いけれど、どうしても抽選に当たりたい!
ということでなんとその翌日、会場でもあり、往復はがきの宛先であった東高現代美術館に直接出かけることにした。
長年来の友人Mも一緒に表参道へと向かったのである。

「美術館の職員を見つけ、直接往復はがきを渡す」
という体当たり作戦を考えていたのである。
今から思い返すとかなり無謀だったけれど、その時の2人は真剣なのであった。
従業員用の出入り口を見つけ、見張ること数10分。
まんまと思惑通りに男性職員がドアから出てきたのである!
これはチャンス!(笑)
Mと2人で職員に走り寄り
「お願いしますっ!どうしても観たいんですっ!千葉から来たんですっ!」
と口々に叫びながら往復はがきを職員に手渡そうと必死の形相で詰め寄ったのである。
今から考えれば、表参道と千葉なんて大した距離じゃないんだけどね。(笑)

「わ、わかりましたからぁ・・・」

なんとか職員に往復はがきを手渡し、2人揃ってぺこぺこおじぎ!
「お願いしまーす!」
「ありがとうございまーす!」
何度も頭を下げ続けるせいで、職員はもしかしたら用事があって外に出るつもりだったのかもしれないけれど、中に入ってしまった。
ひとまず作戦は成功、職員にもお願いしたし、とすっかり満足したSNAKEPIPEとMなのであった。

それから数日後。
往復はがきが返信されてきたのである。
見事抽選が当たった!!!
リンチ本人が来日し、インタビューもある時に会場入りができるほか、日本初公開の映画も鑑賞できるのである。
なんてウレシイ話なんでしょ!
そしてびっくりしたのは、抽選に当たった人としてナンバリングされていたのがSNAKEPIPEとMが0001番と0002番だったこと!
きっとあの時の職員の方が何かしらの魔法を使ってくれたんだろうなあ。
今からでもお礼が言いたいよ!
あの時は本当にありがとうございました!(笑)

待ちに待った当日。
SNAKEPIPEは確か「SKIN TWO」と刺繍されたキャップをかぶって行ったように記憶している。
これ、SM用語だからきっとリンチなら解ってくれるかなと期待を込めてね。(笑)
整理券を持つ人の列とは別の場所で
「私も観たい~!入れてよー!」
と叫んでる女性がいる。
誰かと思ったらなんと桃井かおり!
映画上映前にトイレに行ったら、一生懸命アイシャドウ塗ってる桃井かおりが!
整理券持ってなくても特別に入れてもらったんだろうね。(笑)

映画はアルファベット(原題:THE ALPHABET  1968年)とグランドマザー (THE GRANDMOTHER  1970年)を上映。
リンチの原点ともいえる作品を鑑賞することができたのは嬉しかった。
もちろん個展も素晴らしかったな。
モノトーンの油絵がとても新鮮で、ちょっと子供の落書き風のタッチのように見えるのに実は内容が怖い。
リンチは映画もそうだけど、相反するような2つ以上の要素を組み合わせることで、より恐怖を作り上げていくのが得意なんだよね。

そしてこの時の一番の目玉はリンチご本人の登場だった。
白いシャツのボタンを一番上まで留め付けるいつものスタイル。
とても紳士的な人物に見えた。
リンチ評論家の滝本誠氏と今は亡き今野雄二氏がインタビュアーとして登場!
確かこの時滝本誠氏はリンチの絵を大枚はたいて購入しているはず。
インタビューの内容は失念しているけど、あの時の個展用図録は今でも大事な宝物だよ!

と、長い長い昔話を書いてしまった。(笑)
やっとここからが今回の、21年ぶりの個展の話になる。
渋谷ヒカリエでのリンチ個展を知らせてくれたのはROCKHURRAHだった。
たまたま何かの記事を検索している時に発見したらしい!
そして冒頭の文章につながるように、渋谷に出かけたのである。

渋谷ヒカリエは「大人の女性のための○○」というコンセプトだと、確かめざましテレビで言ってたような?(まためざましか!)
そしてそれが記憶違いじゃなかったようで、各フロア共ほとんどが女性が喜びそうな ショップばかりだった。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHが気になったのは4Fのアウトドアファッションコーナー。
なんとここにはアークテリクスのレディスショップが入ってるんだよね!
ちらっと見に行ったけど、「ROCKHURRAH視察団/ARC’TERYX編」に書かれているように、銀座と金町行ったあとだからねー!
イマイチになっちゃったかな。
それにしてもヒカリエは全体的に店員の質が低いのが気になった。
もうちょっと「大人の女性のため」に接客できるような店員を確保できないもんかね?

そしていよいよ8Fにある8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Galleryへ。
このフロアはいくつものギャラリーが併設されているようで、Tomio Koyama Galleryはその中の3番目になるのかな。
他にも大学生の作品(?)を展示しているようなコーナーがあったり、催事場みたいに何か商品を売ってるようなスペースもあったな。
入り口入ってすぐにあの独特のリンチの声が聞こえてくる。
「トミオ・コヤマギャラリーへようこそ」
とリンチ自身が出演し、観客に呼びかけているこの映像に笑ってしまう。
ツインピークスを思わせる赤いカーテン(モノクロだったけど、恐らく赤だろうね)に、重厚な音。
1967年の作品「SIX MEN GETTING SICK」を思わせる、遊び心満載のリンチらしい映像に加えて、最後に空中に書き殴る「愛」「平和」の文字。
確認してみるとどうやらちゃんと漢字をなぞっている様子。
やっぱりリンチ、最高だよね!(笑)

21年前に鑑賞したリンチの個展はほとんどが油絵だったはずだけど、今回は油絵は1点のみ。
それ以外はリトグラフの作品だった。
リトグラフって何?という方のために簡単に説明すると、クレヨンの独特のテクスチャや、強い線、きめ細かい線、筆の効果、インクの飛ばした効果など、描写したものをそのまま紙に刷ることができる版画の一種だそうで。
ということは、描いた通りの線の複製ができるということか。
そして今回のリンチのリトグラフは和紙に印刷しているようなので、にじみの効果が加わり、偶然性が出て面白い作品に仕上がっていた。

リンチの絵画を鑑賞するのが初めてのROCKHURRAHが
「こんなにすごい作品とは思ってなかった!」
と感想を言う。
かなり気に入った様子だったので、とても良かった。
確かに黒の使い方が力強くてとても迫力がある。
そしてほとんどの作品の中にタイトル文字を書いているところも特徴的。
この文字がまたとても良いんだよね!
「ただの絵も良いけど、文字が入るとポスターっぽくなってカッコいい!」
とタイポグラフィ大好きなROCKHURRAHも大満足。
そうなんだよね、リンチの文字に味があるというか、独自のフォントといっても良い仕上がりなんだよね!

今回の展示は鑑賞するためのものだけじゃなくて、なんと販売もされてたんだよね。
リトグラフ一枚225,000円だったかな。
お金があったら複数枚購入したくなっちゃうよー!
ちょっと無理をすれば買える金額だもんね。
壁一面リンチの作品、なんて夢のようじゃない?
やっぱりサマージャンボ買うか。(笑)

リンチは平面の作品だけじゃなくて、立体作品も制作しているのを海外のサイトで知った。
その作品もまた稚拙な雰囲気だけど怖いんだよね。(笑)
そんな作品群も鑑賞できたらいいなあ。
今回の個展でSNAKEPIPEがどれだけ長い間リンチのファンを続けているのか、そしてやっぱり好きだと改めて認識することができた。
まだまだ追っかけ続けないとね!(笑)

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