SNAKEPIPE MUSEUM #40 Mariel Clayton

20161127 top【アルモドバル監督の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」に出てくるCMみたい!】

SNAKEPIPE WROTE:

2010年に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #02 Bernard Faucon」では少年のマネキン人形を使って作品を制作していたベルナール・フォーコンについて特集した。
SNAKEPIPE MUSEUM #04 Cindy Sherman」で特集したシンディ・シャーマンも女優シリーズの後の展開は、死体から更に発展(?)し、解体された人形の撮影になっていったことを思い出す。

人形についての考察は「SNAKEPIPE MUSEUM #26 Carla Trujillo」の中で書いていたっけ。
江戸川乱歩の「人でなしの恋」、港かなえの「贖罪」、押井守の「イノセンス」、四谷シモン、ハンス・ベルメール。
人形と聞いただけでスラスラと作品や作家名が出てくるんだよね。
SNAKEPIPEは人形がアート作品として成立していることに興味があるみたい。
今回の「SNAKEPIPE MUSEUM」は、少女のおままごと用に存在していたはずの人形を使って制作しているアーティストに焦点を当ててみよう!

Mariel Claytonは1980年、南アフリカのダーバン生まれ。
マリエル・クレイトンの作品の主人公はバービー人形なんだよね。
「破壊しているユーモアの感覚を持つ人形写真家」と自らを称しているマリエル。
彼女の作品は単なる「少女たちの憧れ」であるバービー人形ではないところがポイント!
清く正しく美しく、の正反対を目指しているようなモチーフで作品の制作をしているからね。
販売元であるアメリカのマテル社からクレームが来ないか、と心配してしまうほどだよ。(笑)
小道具には日本製が混ざっているようで、たまに見える日本語に親近感を覚えてしまうんだよね。
そんなところにも注目してマリエル・クレイトンの作品を観ていこうか!

マリエル・クレイトンの日本趣味(?)がよく出ている作品。
いわゆる「女体盛り」だよね。(笑)
女性の体を皿代わりにして、寿司を並べるなんてなかなかやるなあ!
エロスというよりは猟奇なのは、やっぱり首チョンパだからだろうね。
こんなにたくさんの寿司ネタがミニチュアとしてあることにも驚くけれど、丁寧に並べていくのも根気がいるだろうなあ。
女の子だったら、「おままごと」の延長で楽しむのかもしれないね?
この作品を観て、まっさきに思い浮かべたのが、タイトルもずばり「スシガール」(原題:SUSHI GIRL 2012年)だね。
このまんまのポスターだから、それも載せておこうか。
「スシガール」で最も印象に残っているのは、「スター・ウォーズ」でルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルの体重増加!
あの体型じゃパイロットは無理でしょう。(笑)
非常に残酷な拷問シーンが続いていたように記憶しているので、痛いのが苦手な人にはお勧めしない映画だね!

食べ物つながりで選んだのがこちら!
ぎゃっ!今度は「うどん」の具にされてるよ。
これも日本だよね。
マリエル、日本大好きなのかなあ?
バービーの大きさから考えて、この「うどんセット」はそこまでのミニチュアじゃないのかもしれない。
それにしても箸まで添えちゃって、日本を良く研究してるよね!(笑)
この作品を観て思い出したのが会田誠の「食用人造少女・美味ちゃん」。
食用に造られたという設定の美少女たちが、食材として皿にもられている様子を描いた作品ね。
右の画像はまさに「うどん」の具材になっているので、マリエルの世界と同じだよね。
会田誠も美少女を題材にした残虐なシーンを題材にすることが多いので、マリエルと雰囲気が近いのも納得しちゃうね。

これもバービー人形のイメージとはかけ離れた怖い作品だよね。
どういう経緯で蜘蛛の巣やホコリまみれになってしまったのか?
巨大蜘蛛が出て来るようなホラー映画というよりは、拉致監禁され犯罪の被害者になってしまうようなサスペンス映画のように感じるね。
マリエルはどんなシーンを想像して作品を制作したんだろうか?
背景がシンプルだとお話を想像し易いね。(笑)
この作品を観て、ROCKHURRAHが似た画像を探してくれた。
ケン・ラッセル監督の「マーラー」(原題:Mahler 1974年)に出てくるシーンだという。
女性が拘束されている様子は、確かに似てるかも。
実はSNAKEPIPE、ケン・ラッセルの映画って一本も観てないみたいで!(笑)
「トミーも観てないの?」
とROCKHURRAHに驚かれてしまった。
どうやらケン・ラッセルはハチャメチャで変態的な作品で有名なイギリスの監督のようで、いかにもSNAKEPIPEが好きそうなタイプだという。
ただし面白そうな作品が現在入手困難になっているので、ROCKHURRAHも未鑑賞の作品が多いとのこと。
イエスのリック・ウェイクマンによる「リストマニア」(原題:Lisztomania 1975年)のサントラを持っていたんだって。
この映画も面白そうなのに、DVD化されていないなんて!
過去の作品で観たいものが観られないことが多くて、悔しい思いをするんだよね。

この作品も犯罪の臭いがプンプンするよね。
乱暴されて殺害された後、ゴミとして捨てられたといったところか。
「もえるゴミ」「ビン・カン」と書いてあるのが見えるよね。
マリエルはこの手のミニチュアをネット通販で買ってるのかな?
調べてみると確かにある、ある!
ドールハウス、とかミニチュア家具で検索するといっぱい出てくるんだよね。
どうやら100均にも取扱いがあるみたい。
SNAKEPIPEが子供だったら楽しく遊んだかも。(笑)
マリエルの作品に話を戻すと、女性をゴミみたいに捨てるという映画をいつか観た記憶があって。
恐らく三池崇史監督の「DEAD OR ALIVE 犯罪者」(1999年)だったみたいなんだけど、はっきり覚えてない。
これもまた確認のために観ないとね!

そしてこのマリエルの写真から思い出したのが、今から9年前にSNAKEPIPEが撮影した右の画像。
あれはクリスマスが終わり、年末が近い底冷えのする晴れた日じゃった。
買い物に出かけた道端に、女性の首がゴミとして捨てられているではないか!
ギョッとして思わず立ちすくむSNAKEPIPEとROCKHURRAH!
「ぎゃ〜〜〜〜〜っ!猟奇!」
「乱歩だったら本物を一つ混ぜるかも!」
もちろん良くみればなんのことはない、美容院で使用するマネキンなんだけどね。
ここまで重なるように首が大量に廃棄されているのは、恐怖を感じてしまうよ。
当時はまだスマートフォンじゃないからね。
慌てて自宅に走り、カメラを手に現場に舞い戻り、無事に撮影したというエピソードがある秘蔵の1枚である。
「いつでもカメラは携帯していないと」
とROCKHURRAHから注意を受けたなあ。(笑)
今はスマートフォンに当時のデジタルカメラよりはずっと高感度のカメラ付いてるからね。
取り逃しがなくて良いよね。(笑)

 この作品もまるで映画の中のワンシーンだよね。
どうしてバービーが後手にタバスコ持ってるのか謎なんだけど。
相手の男性にふりかけるため?
自分が使用するため?
意味不明なので想像するしかないね。(笑)
こんな18禁系のバービー画像、撮影しているマリエルに興味が湧いてくるよ。
どんなイメージで毎回テーマを決めているのか。
SNAKEPIPEはこの作品を観て思い出したのが、敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの「ロスト・ハイウェイ」の中のワンシーン。
なんかよく分からないけど、絶対に悪いことやってるボスの前に突き出され、銃で脅され服を脱いでいくアリス役のパトリシア・アークエット。
びくびく怯えながら脱いでいき、ヒモパン一丁になった途端に態度が一変!
「私キレイでしょ」とばかりに堂々とボスに歩み寄り、椅子に座っているボスの前にひざまずくのである。
そのシーンを思い出したんだよね。
もちろん、「ロスト・ハイウェイ」にタバスコはなかったけど!(笑)

最後はモノクロームの作品で締めようか。
これもまるでスチール写真だよね。
「よくも裏切ってくれたわね」
違うかな。
「愛してるのよ。私だけのものになって!」
うーん、これも陳腐か。(笑)
人によって作るお話は違ってくるだろうから、それがマリエル・クレイトンの作品の面白さかもしれないね。
このモノクロームのシリーズと似た雰囲気の「ザ・日本」みたいなシリーズもあるんだよね。
和装のバービーが鍋の支度をした「こたつ」を背景に窓から雪景色を眺めているような写真ね。
なんで南アフリカのマリエルがここまで日本にこだわるのか聞いてみたいよね。(笑)

例えば江戸川乱歩だったりアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の「気狂いピエロの決闘」にもあったように、人を笑わせるはずのピエロが殺人鬼、というような相反するイメージで恐怖心を煽る手法(?)。
マリエルの場合には、それが美少女と猟奇なんだろうね。

「こんなことをするはずがない」
という固定観念を打ち砕くからこそ、余計に鑑賞者が驚愕する。
バービー人形がいつでも笑っているところも含めて怖いんだよね。(笑)
マリエル・クレイトンの情報があまりないのが残念だけど、こんなに日本贔屓のマリエルの展覧会、日本で開催して欲しいよ。
ずっとバービー人形にこだわって創作を続けているマリエルの全貌を鑑賞したいね!

時に忘れられた人々【26】同名異曲編3

【もうマンネリとしかいいようのないトップ画像。ネタが尽きた!】

ROCKHURRAH WROTE:

他に書ける題材もあるにはあるんだが、書いていてなぜか筆が重いような企画が多くて中断してるネタが多数。ん?パソコンのキーボードだから筆が重いとは言わないか? キーがヘヴィで・・・ますます変か?
まあ書きやすいかどうかは気分次第なので、いずれスラスラと仕上がる時も来るでしょう。
今日は割と簡単そうだったからこれ。
まさかパート3まであるとは思わなかったが「同じタイトルなのに全く別の曲」というシリーズにしてみよう。

毎度毎度書いてる事だけど、ROCKHURRAH RECORDSではどんな時代でも”気分はいつも80年代ニュー・ウェイブ”なので、その手の選曲しかしないという姿勢を貫いてる。

時代の流れで完全に息絶えたかと思ってたレコードやカセットテープが復活して、これを知らない若い世代に人気だという。
レコードはまあ復活して当然だと常々思っていたが、まさかカセットまでリバイバルとは予想もしなかったよ。 「80年代を現在進行系のまま」などというテーマでずっと取り組んでたウチのサイトだが、思わず「懐かしい」などと現在進行系を無視した言葉が出てきてしまう。
個人的に言えば大昔の小倉(北九州市)、ベスト電器やデオニーという今あるのかどうかわからん家電屋に行くと、毎回バカのように3本セットになったカセットテープを買い漁っていたなあと思い出す。
TDKやソニー、そしてスキッズのリチャード・ジョブソンがイメージ・キャラクターだったBASFのテープなどなど。
自分で聴くのもあったけど、友達に自分が選曲したベスト盤みたいなカセットを贈るのが大好きだったよ。
音量レベル調節とか頭出しとか難しかったけど、時間があればずっと飽きもせずレコードを録音してるような子供だったな。

温故知新と言うべきか、そういうのがまた注目されるなら、ROCKHURRAHが毎回書いてる80年代満載のこのブログもいつの日か大注目される可能性もあるかもね。え?そんなことはあり得ない?

ちょっと書いたら懐かしくなって関係ない事を延々と書いてしまった。 だから今回も70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブばかりを当たり前のように選曲するよ、というひとことが言いたかっただけだ。 長々と綴った回想は全然意味なしだったな。

相変わらずよくわからん前置きばかりで前にも読んだ人だったらうんざりだろうけど、そういうわけで今回も始めてみよう。

「バナナスプリット」というのは「トムとジェリー」や「原始家族フリントストーン」「チキチキマシン猛レース」などでおなじみのハンナ・バーベラ・プロダクションによるアメリカのTV番組だとのこと。

子供の頃はTVアニメや漫画が大好きで再放送もしょっちゅうやってたから、知らず知らずのうちにかなり多くのものを観ているな。特にこの頃は外国アニメやTVドラマが大変に多かった時代。
同じ作者なんて認識はこの頃にはまるでなかったけど、同世代の人なら誰でもいくつかの番組がスラスラ思い出せるはず。

試しに調べてみたら「出て来いシャザーン!」で有名な「大魔王シャザーン」や「ドボチョン一家の幽霊旅行」もハンナ&バーベラ作なんだね。二つとも大好きだったのにこいつは知らなかったよ。
ちなみに「幽霊城のドボチョン一家」という別物のアニメも同時代にあったそうで、ROCKHURRAHが観ていたのがどっちだったか実は全然覚えてないよ。何じゃそりゃ紛らわしい。

さらに詳しく調べてみたら好きだったのはハンナ&バーベラ作の方じゃなくて「幽霊城のドボチョン一家」の方だと判明した。 全く別のスタジオが作った作品なのにタイトル(邦題)やテーマソングがほとんど同じってすごくない?
制作した方には(たぶん)全く責任がなく、日本語吹き替え版のテレビアニメ独自のテーマソングらしいが、これは完全にどっちかが盗作したとしか思えないレベル。
しかもちょっと「Munsters」まで入ってるよ。
あまりの事に仰天して腰を抜かしたので今の記事とは関係ないけど特別に両方貼っておくよ。

仰天から立ち直ったので続きを書くが、どっちも作詞作曲が同じ人で同じ局の放映、つまり盗作ではなくて替え歌を流用したらしい。あービックリした。
がしかし、歌くらいもう1曲作り直せよ。
「ドボチョン一家の幽霊旅行」の方はドボチョン伯爵がなぜか「はけしゃけ」に聴こえるのが気になって仕方ない。

で、話は「バナナスプリット」に戻るが、この番組は実は全く観た事がなくて、単に歌を知ってるというだけに過ぎない。日本で放映してたのかな? どうやらアニメではなく着ぐるみ動物たちによるバンドのコメディらしいが、内容を知らなくてもこの歌はとても有名だから知ってるよ。

本来のタイトルは「Banana Split」ではなくて「The Tra La La Song」というらしいが、これを70年代にパンクでカヴァーしたのが米国ロサンゼルスのディッキーズ(The Dickies)によるもの。 関係ないが90年代には助平なオルタナ・クイーンと呼ばれたリズ・フェアもカヴァーしてるな。

ディッキーズと言えばチノパン?と誰もが連想してしまうが、70年代後半から活動してる長寿バンドだ。 アメリカのパンクはロンドン・パンクとはやや違うものも色々あるんだが、このディッキーズとかは普通にロンドン・パンクに近い音楽。
ちょっとコミック系が入ったスタイルのようで、全員がちっちゃくなってしまった(「だからどうしたの?」と言いたくなる)レコードジャケットでも有名だったな。
ブラック・サバスの「パラノイド」をパンク風にアレンジした曲とかが有名だけど、もっとバカっぽくコミカルな曲調のものが個人的にはお気に入りだった。
「プードル・パーティ」なんかは同じコミック・パンク・バンド系のトイ・ドールズの元祖みたいだもんね。

この 「Banana Split」も同じ路線のもの。 誰もが「この曲のパンク風はこんな感じ」と想像した通りの典型的な演奏と歌で軽快、コミカルな内容。
バナナがマイクになってるね。
ヴォーカルの前髪パッツンの髪型もすごい。前にこの記事でも同じような事を書いたな。 コミカルな雰囲気のバンドは多いけど、本当にコミック・バンドを目指してるわけじゃなかろうから、この映像見て実際に笑う人はいないだろうと思えるのが苦しいところだね。

その「Banana Split」と同じタイトルなのがこちら、ポルトガル出身の美少女シンガー(当時)、リオ(Lio)の代表曲。 育ちはベルギーで主にフランスで活躍してたらしいが、1979年にデビューした時にまだ若干16歳。

フレンチ・ロリータという言葉がある通り、フランスでは伝統的な系譜だったのがこういうアイドル系美少女によるフレンチ・ポップスだ。
リオはそういう中で(時代的に)ニュー・ウェイブ世代のフレンチ・ロリータというような路線でデビューした。 邦題もズバリ「美少女リオ」。ここまであけすけだと誰も文句が言えないね。
たぶんそこそこ人気はあったに違いないが、日本ではそこまで知名度はなかったのかな?

ベルギーからフランスの音楽界で大活躍したという例では、ROCKHURRAHが大好きなプラスティック・ベルトランを想像してしまうが、その手の路線とも違っていた。
ピンク色の服装でただ踊ってるだけという手抜きプロモの作りは一緒だけど。
それにしてもこの衣装は一体?光沢のない竹の子族みたいなもんか。

同じくベルギーのB級テクノで有名なテレックス(マルク・ムーラン)がバックバンドをやっていて、リオの曲もこの当時のテクノ、エレポップと呼ばれた音楽の延長線にある。
まだユーロビートなんてなかった時代だからね。
途中の「う、きゅん、う、きゅん(以下リフレイン)」というような電子音がいかにもで、こんなんでも当時はノリノリだったよ。
リオが自分自身で入れる合いの手みたいな「ぅんー」もピコ太郎の元祖みたいなもんか。

彼女はただの軽薄テクノだけじゃなく、フランスの初期パンク・バンド、スティンキー・トイズのファンだった事でも知られる。
アルバムにも確か彼らのカヴァー曲が収録されて向こうでは大ヒットしたはず。
スティンキー・トイズ、ROCKHURRAHも好きだったんだよね。
このバンドの紅一点、ヴォーカルのエリ・メディロスはきつい目つきで無愛想な雰囲気なんだが、80年代アイドル風の明るいリオとどこで接点があったんだろうか?
睨まれたりしてないだろうか、こっちが心配になるよ。

レコードには「Dedicated To Kevin Ayers (ソフト・マシーンの初期メンバー)」などとも書いてあり、只者じゃないアイドルを目指してたと見える。

このプロモではまだ子供っぽかったリオだが、90年代になってまたしても「Le Banana Split」を新たなミックスで発表して、その時は結構お色気路線になっていた。
コンスタントに活動はしてたようだが、ROCKHURRAHが初期と90年代のリオしか知らないというだけの話。 写真で見るとずっとお色気路線だった事がわかる。
その90年代のは何と同じ曲のヴァージョン違い5曲も入っててげんなりしてしまうが、一過性のアイドルで終わらなかったところが見事だね。

本当はなるべく長いタイトルが見事に一致した曲について書きたかったんだが、ROCKHURRAHの捜索能力がイマイチなので勘弁してやってね。

実にありふれたタイトルだが「Jealousy」。 このタイトルがついた曲もわんさかあるんだが選んだのは井上陽水・・・ではなくて。
今回よりによって選んだのがこちら。
ロンドンの下町、イーストエンド出身のバンド、ウェステッド・ユース(Wasted Youth)だ。
何か同じような名前のバンドが複数存在するのでややこしいが、同名バンド特集ではないので説明は抜きにするよ。

イーストエンドと言えばかつては犯罪の巣窟とか貧民街とか言われていたが、今はおしゃれな街に変身してるとの事。彼らが活動してた70年代後半くらいはまだ治安が悪かったんだろうな。

ウェステッド・ユースは1979年頃からわずか2〜3年しか活動してないバンドで知名度も低いし、ヒット曲もほとんどない。
ネオサイケと呼ばれる音楽にドップリという人は現在ではほとんどいないだろうが、そういうジャンルのファンでも「聴いたことないよ」って人も多かった。
オリジナルで出たアルバムはわずか1枚のみで、解散後に何枚かライブやコンピレーションみたいなのが出てるだけ。
シングルやオリジナル・アルバムはブリッジハウスというパブが作ったインディーズ・レーベルから細々(あくまで想像)と出てただけ。
これじゃカルト的扱いのバンドになるのも仕方ないだろうな。
このパブのハウスバンドみたいなもんだったのか?その辺は見てきたわけじゃないから不明だけど、パブ自体は立派でロリー・ギャラガーなど大物も出演してたらしい。

同郷だったオンリー・ワンズのピーター・ペレットがお気に入りのバンドで確か数曲プロデュースしてるはずだが、そのピーター・ペレット本人が80年代にはもはや「消えたミュージシャン」の筆頭に挙げられていたもんなあ。

ROCKHURRAHはこんな不遇な彼らが好きだったが、曲もその辺の「なんちゃってネオサイケ」とは全然違う本格派。
見た目も声も良かったのに大して話題にならなかったのは何で?と思っていたもんだ。
アルバムのジャケットがカーキ色みたいな薄く目立たない色で何を表現してるかさっぱりわからないとか、よりによってノリの悪い曲(結構サイケ)ばっかり選んでアルバムに収録したんじゃない?とか、ラフ・トレードみたいに大手インディーズに販売を委ねず宣伝活動を全然しなかったんじゃないかとか、売れなかった原因がさっぱりわからないよ。
コンピレーションに収められた未発表曲は名曲揃いなのにね。

この曲「Jealousy」は1980年のデビュー曲なんだけど、そんな彼らの動いてる映像が見れる唯一の曲。 うーん、第一印象が大事なデビュー曲でこんな地味なスローテンポの曲を選ぶか・・・。
しかしシド・バレットとルー・リードが出会ったかのような気怠い鼻声はあらゆるネオサイケの中でもトップクラスの表現力。今見てもカッコイイと思えるよ。
この前髪、これこそ80’sの極みだね。
しかし最後のあたり、みんなで肩を組むシーンがこの手のバンドではありえない展開。ジャニーズか?とツッコミたくなってしまうよ。

このバンドはインディーズ界でもあまり表に出て来なかったけど、ギタリストのロッコー・ベイカーが後にフレッシュ・フォー・ルルでちょいとばかし有名になったな。
キーボードのニック・ニコルはペルシアン・フラワーズというバンドやってたが、これまた幻と言えるほどの地味な活動。偶然シングルを持ってたが、たぶん昔に売ってしまったな。
ヴォーカリストのケン・スコットは後にスタンダード曲「ストーミー・ウェザー」を歌ったり、相変わらず誰にも知られないような活動してたな。
同時期に元スキッズのリチャード・ジョブソンが同じ曲を歌っていたのでジャズに疎いROCKHURRAHでも知ってるよ。なぜか関係ないのに2回もリチャード・ジョブソンが登場してしまった。

今はインターネットで何でも検索出来る、などと思ってる人が多いが、例えばこのバンドについて日本語で語ってるのがROCKHURRAH以外にはほとんどいないと推測される寒い状況。
まあ希少な内容のサイトをやってるという点で、ウチにも存在価値くらいはあるかな。

何か今回は横道にそれた発言ばかり多くて先に進まないな。

さて、その「Jealousy」と同じタイトルの曲をやってて、人があまり語らないバンドがこれ、ブートヒル・フット・タッパーズ(The Boothill Foot-Tappers)だ。

1980年代半ばのイギリスのバンドだが、カントリー&ウェスタンやブルー・グラス、フォークにトラッド、スカなどの音楽性がミックスされたアコースティックな音楽性が特徴。

ちょうど同時期にデビューして大人気となったポーグスあたりとパッと見には似てるが、聴いた感じあまりアイリッシュは感じなかった。
楽器編成もバンジョー、アコーディオンなど共通する部分はあるけど、ポーグスにあるマンドリン、笛がこちらにはなく、ポーグスにないウッドベースとウォッシュボード(洗濯板)がこっちにはある。

この頃はニュー・ウェイブが一段落して、ハードだの暗黒だの暴力だのエレキだの化粧だの、この辺の路線に皆が飽いていた時代。
それでなのか何なのか、大昔からあるような音楽を引っ張り出してきて、それに「ネオなんとか」と付けて新ジャンルにするのが流行っていたよ。
大まかに言えばこのブートヒル・フット・タッパーズもネオ・アコースティックの一種には違いないんだけど、カウパンク以外でイギリス人があまりしないカントリー系統への傾倒は割と斬新だったね。

まだこの時代にはそんな言い方はなかったけど、後に東京スカンクスのダビすけが提唱した「ラスティック」という総称(?)に当てはまるような音楽。
ウェスタン・スウィング、カントリー、ブルーグラス、ケイジャン、テックス・メックス、アイリッシュ・トラッド、ヒルビリー、ロカビリー(サイコビリー)、マカロニ・ウェスタンのテーマソングなどなど、上に挙げた一般的にはあまり馴染みのない音楽をうまい具合にミックスさせたようなバンドが後には続々出て来るが、このバンドとかもその先駆けみたいな感じかな。

女性3人がいて2人がヴォーカル(1人は洗濯板)かと思いきや、実は男ヴォーカルもいて曲によって使い分ける柔軟な構成。
「Jealousy」はスカ要素が強い名曲だが、他の曲ではかなり履いてテンション、じゃなかったハイテンションのバンジョーが炸裂するようなのもあり、この手のジャンルとしては素晴らしい完成度だったよ。
個人的に好きだった「Get Your Feet Out Of My Shoes」などはジョン・デンバーのファンに聴かせても「いい曲だね」と言われるくらいのエバーグリーンな名曲(ウソ)。
そしていい味出してるアコーディオンのキャラクター。
同時代に活躍した百貫デブばかりによるサイコビリー(ネオ・ロカビリーっぽいけど)&ラスティックの伝説的バンド、The Blubbery Hellbelliesのスリムが参加してるのもファンにとっては見逃せない。
大好きだったんだよね。

ブートヒル・フット・タッパーズはいわゆるクラブ・ヒッツなどでは欠かせない名曲を残してるが、レコードの時代は結構入手困難だったし同時代にはたぶん日本でレコードは出てなかった。
こんなに完成度高いのにね。
そういう意味ではちょっとマイナーな存在だけど、後に再評価されてCD化もしたな。

もうひと組、つまりあと2曲書こうと思ってたけど、案外長くなってしまったので今日はここまで。
ということでまだまだパート4までありそうな雰囲気だな。
もう飽きた?うん、ROCKHURRAHも。

それではまたチョムリアップ・リーア(クメール語で「さようなら」)。

好き好きアーツ!#43 鳥飼否宇 part17−逆説的−

【作中に登場するエンジェル友清の作品をROCKHURRAHが再現!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のブログは、本格ミステリ大賞受賞作家である鳥飼否宇先生の著作を読み返して感想をまとめていくトリカイズム宣言
以前読んでいても、再読して新しい発見をするSNAKEPIPE。
何度読んでも楽しいんだよね!(笑)

鳥飼先生の作品には、「観察者シリーズ」の他にもいくつかのシリーズがある。
綾鹿市(あやかし)という架空の地域で起こる事件シリーズ、その名もズバリ「綾鹿市シリーズ」も、鳥飼先生の代表作の一つだ。
今までトリカイズム宣言の中で、「綾鹿市シリーズ」の中から「太陽と戦慄」「痙攣的」「爆発的」「このどしゃぶりに日向小町は」について拙い感想を書かせて頂いている。
そして鳥飼先生ご自身から、コメントまで頂戴するファン冥利に尽きる体験をさせて頂いた。
鳥飼先生、いつもありがとうございます!
今回はその「綾鹿市シリーズ」から「逆説的」について書いてみよう。

「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」は2005年に刊行された時には「逆説探偵 13人の申し分なき重罪人」だったらしい。
改題されて「逆説的」になったのね!
SNAKEPIPEの手元にあるのは「逆説的」だから改題後ということなんだね。
文庫版のあとがきで知ったけれど、「逆説的」は「小説推理」という月刊誌に毎月掲載されていた短編だったという。
それをまとめた13編それぞれに別の事件が起こる、連作短編集なのである。
今まで読んできた鳥飼先生の短編より短めな印象なのは、そのせいだったのね。(笑)

いつもは短編毎の感想を書く手法(というほどのものではないけど)だったけれど、「逆説的」に関しては1編が短いのでネタバレしないように書いていくのは難しいかもしれないな。
今回は主に「逆説的」の登場人物についてまとめてみよう。
鳥飼先生らしい、魅力的な人物が多かったからね!

「逆説的」は綾鹿署に勤務する、五龍神田(ごりゅうかんだ)の語りで進行する。
五龍神田の階級は巡査部長、年齢は43歳。
本人曰く「冴えない風貌の中年」という設定で、本人が語り部なので、あまり詳しい描写はない。
五龍神田の目で見た他の人物評には詳細な記述があるんだけどね。
鳥飼先生の著作「妄想女刑事」の主人公である宮藤希美のような妄想癖があるけれど、宮藤希美とは正反対の結果をもたらすのが特徴か。(笑)
それにしても五龍神田って名前、ものすごくインパクトあるよね?
鳥飼先生の創作なのかと思ったら、本当に存在する姓みたいだね。
うそっ?って思うような仰天名字って意外と多いことに驚くよ。

五龍神田巡査部長のことを「リュウの旦那」と呼んでいるのが、「たっちゃん」である。
「たっちゃん」こと田中辰也は、「逆説的」第1話冒頭から登場するホームレスだ。
西野中央公園を根城にして、およそ10年「公園の主」として君臨しているベテランのホームレスなのである。
「たっちゃん」はまるでギリシャの哲学者のような容姿で、五龍神田に様々な有益な情報をもたらしてくれる貴重な協力者なんだよね!
ギリシャの哲学者みたい、ということでエピクロス画像をチョイスしてみたよ!
この風貌ならスーツも似合いそうだもんね。(笑)
SNAKEPIPEが「逆説的」の中で一番興味を持ったのが「たっちゃん」かな。
「『太陽と戦慄』にも登場してるよ」
なんとROCKHURRAHから情報が!
SNAKEPIPEの貴重な情報源はROCKHURRAHだね。(笑)
鳥飼先生の著作「太陽と戦慄」も「 綾鹿市シリーズ」だから西野中央公園が登場して「たっちゃん」も出てきたわけね。
鳥飼ワールドには揺るぎない「綾鹿市」があって、地名や生活する人が確実に存在していることがよく分かる。
「 綾鹿市」のマップ欲しいなあ。(笑)

西野中央公園に出入りするようになった新入りホームレスが登場する。
「たっちゃん」の弟子みたいに行動を共にする、十(つなし)徳次郎、通称「じっとく」である。
それを聞いた五龍神田は、拾得(じっとく)を思い出す。
拾得とは中国、唐代の僧で普賢菩薩 の化身とされ、禅画にも描かれる人物だという。
右がその描かれた禅画で、左側のほうきを持っているのが拾得、右側が寒山(かんざん)という僧。
西野中央公園にいる「じっとく」は猫背で、もじゃもじゃの蓬髪をした薄汚れた男。
いわゆるホームレスらしい男だけれど、僧の拾得と同じように愚者のフリをしているだけなのだろうか?
「じっとく」の発する不思議な言葉が五龍神田にヒントを与えるところが面白いね!(笑)

五龍神田の同僚、綾鹿署に勤務する面々も他の鳥飼先生の著作に登場している。
五龍神田が主役として登場する「逆説的」は「綾鹿市シリーズ」のスピンオフ作品という認識で良いのかな?
五龍神田の上司である谷村警部補と南巡査部長のコンビはほとんどの「綾鹿市シリーズ」に登場している常連だからね。
谷村警部補はキューピー人形のような童顔なのに、ダミ声で下品、という特徴がある。
こんなギャップがある人、本当にいそうだよね!
あえて例えれば「Ted」みたいな感じかな?(笑)
そして南巡査部長は谷村警部補の腰巾着で、特徴は赤ら顔だという。
この2人組と五龍神田が競うように事件を解決していくのである。

もう一人、探偵として登場する星野万太郎についても書いておこうか。
星野万太郎も他の「綾鹿市シリーズ」でお馴染みの人物なんだよね。
黒縁メガネをかけた、特徴のない男とされる。
この特徴の無さが探偵にはもってこい、ということなんだけど…?(笑)
星野万太郎という名前は、元中日監督の星野仙一から来ているのでは?と推測。
仙を千として万に置き換え、一を太郎にして。(笑)
鳥飼先生の作品中に出てくる名前には、ヒネリがあることが多いので、勝手に深読みしちゃうよね!

「逆説的」にある13編はそれぞれ、非常に興味深い事件を扱っている短編なんだけど、その中でも特に印象に残った作品について書いてみよう。
SNAKEPIPEは鳥飼先生の作品中に現代アートが登場するのが大好き!
今回は「堕天使はペテン師」に現代アートが出てきたよ。
エンジェル友清というアーティスト名からして、「ちょっといかがわしい」雰囲気がよく表れているし、その作品も「いかにもありそう」で嬉しくなってしまった。(笑)
あやか市美術館(美術館もある!)の学芸員による「贋作/パロディ/オマージュ」に関する説明は、「痙攣的」の「闇の舞踏会」にもあった「盗用と流用」にも通じていて現代アートの核心に迫る話だよね!
そして結論は好き嫌いで良いのでは?で落ち着いていた。
これにはSNAKEPIPEも大賛成!
何回読んでも分からない難解な文章を理解せんでも、よかと!(笑)
己の直感で楽しめたらそれで良いもんね。
エンジェル友清の師匠である杉田悪鬼(すごい名前)が住んでいる双頂山は「本格的」「太陽と戦慄」にも出てきたよ、と再びROCKHURRAHからの指摘があったよ。(笑)
そしてROCKHURRAHがエンジェル友清の作品を動画にしてくれた。
TOP画像に載せてあるんだけど、こんな感じじゃないかな?
非常によく再現できているように思うよ!

敬虔過ぎた狂信者」は、事件現場がまるで作品のようで、脳内に映像が再現できるようだった。
事件の現場はカトリック綾鹿教会、被害者がその教会の神父だという。
つい最近読んだ小栗虫太郎の「後光殺人事件」を思い出してしまったSNAKEPIPE。
宗教絡みだからね!
この短編の中で面白かったのは、教会に住む遊佐という軽度の知的障害がある男が「うう」としか喋らないのに、「じっとく」が通訳として完璧に遊佐の言葉を翻訳するところ。
しかも「じっとく」はそれまでは、ワンフレーズ程しか喋らなかったのに、通訳になった途端ペラペラ喋り出すんだよね。(笑)
谷村警部補が看破した謎も秀逸!
鳥飼先生らしいトリックだよね。

探偵の星野万太郎が初登場した「目立ちたがりなスリ師」は変わった動機を扱っていたね。
虫が好かないテロリスト」は、これまでにないスケールの大きな作品で、まるで「相棒」や「踊る大捜査線」のような刑事ドラマみたいだった。
短編だけど、この映像化された作品を観たかったな!(笑)

前述したように月刊誌に連載されていたというだけあって、短編は5月から順番に月日の経過が共に描かれていた。
綾鹿市ではこんなに事件が起こるんだね。(笑)
毎回の構成として、「じっとく」がヒントをボソリと呟き、それを五龍神田が早とちりしてしまうところが「逆説的」というタイトルに絡んでいる部分なんだよね!
読んでいるこちらまで踊らされてしまわないように注意!(笑)

毎月締め切りが決まった中で、書き続けていくことの難しさが「あとがき」に記されていたけれど、鳥飼先生の作品には苦し紛れで完成させた感じは全くなかったね。
どの短編もとても楽しく読ませて頂いた。
「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。
また再読してみよう!

秋は何色ハ◯ドコア色?

【タイトルに反して全然秋っぽくないぞ】

ROCKHURRAH WROTE:

ROCKHURRAHとは思えないタイトルで書いた本人が一番ビックリしているが、もう6年も前に色にまつわるブログ記事を書いていて(これ)、そのヴァリエーションのひとつとして今回また書いてみようと先程考えたのだ。

タイトルはイマドキ誰も知らないと思えるが、70年代に「マーガレット」という少女漫画雑誌で描いていた富塚真弓のコミックス「冬は何色ココア色」より拝借した。
いや、別にファンというわけじゃなくて、言い訳するならROCKHURRAHは過去に二回も古本屋稼業の時代があって、少女漫画に限らず漫画や小説のタイトルを驚くほど覚えているに過ぎない。
毎日のように背表紙を眺めたり棚入れとかやってたらそりゃ覚えるわな。
ちなみにこの人は他にも「風は何色ポエム色」とか「恋は何色イチョウ色」とか、ああいかにも70〜80年代少女漫画という恥ずかしいタイトルが目立つ漫画家だったな。
個人的に80年代の「マーガレット」ではくらもちふさこの大ファンだった。男兄弟しかいなかったのになぜか読んでたんだよね。

さて、前の記事の時はレコード・ジャケットの配色でコーディネートとバンドを同時に語るという高尚な切り口で、今読み返しても斬新だったが(自画自賛)、今回は単に色の名前がついたバンドにテキトーなコメントつけるだけという手抜き手法でやってみよう。そこまで毎回こだわった手法は出来ないのじゃ。
しつこいようだが今回もROCKHURRAH RECORDSのお約束として「70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブ限定」のセレクトしかしないからね。

まずは三原色の筆頭である赤。
ROCKHURRAHは誕生石がルビーということもあって赤が大好き人間。このブログのバックでも赤が効果的に使われているしね。部屋の服を見回しても黒の次に多い色が赤だよ。

この赤をつけたバンド名はいっぱいあるけど、うーん、今回は人があまり書かないようなのを敢えて選びたかったのでこれにしてみよう。中堅マイナーというところ。
Red Lorry Yellow Lorryだ。ん?赤だけじゃなくて黄色まで入っててバンド名だけ聞くとメデタさ満開な感じがするけど、実は全然明るくない系統のバンドだよ。

カタカナで書くと情けないがレッド・ローリー・イエロー・ローリーは1980年代初頭に英国リーズで結成されたバンド。
リーズと言えば「ゴスの帝王」と呼ばれるシスターズ・オブ・マーシーとか、リズムマシーンによる攻撃的なポジティブ・パンクを推進したマーチ・ヴァイオレッツとかがいて、このレッド・ローリー・イエロー・ローリーを加えて「リーズ三兄弟」などとROCKHURRAHが勝手に命名していたもんだ。
このレッド・ローリー・イエロー・ローリーはポジティブ・パンクやゴシック系のような化粧っ気、毒気はまるでないが、ソリッドな音とジョイ・ディヴィジョンもどきの低音ヴォーカルが魅力のバンドだった。音はなかなかいいんだけど(あくまで個人的感想です)見た目がちょっと・・・なために人気知名度はイマイチなのが残念。

つばが広い帽子に長髪、レイバンのサングラス、魔界から来たかのようなルックスで驚異の人気を誇ったアンドリュー・エルドリッチ(シスターズ・オブ・マーシー)。
ものすごいヒゲとグシャグシャの髪型、遭難した宣教師みたいな風貌(近年はものすごく太ってしまったが)で唯一無二の個性を放っていたサイモンD(マーチ・ヴァイオレッツ)。

この二人と比べるとレッド・ローリー・イエロー・ローリーのクリス・リードはかわいそうなほどカリスマ性に乏しいルックス。どこか、アジアの山奥にある寒村の老人みたいな風貌でかなり損をしている。映像では寄り目に見えるしね。

次は青色。ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも鮮やかなブルーなどは絶対にコーディネートの端くれにも選ばないけど、濃紺くらいなら持ってるかな。家具にしろ身の回りのものにしろ、ウチの中を見回してもブルーの品物は歯ブラシくらいしか見当たらない。
そんな話はどうでもいいが、ちょっと変わり種でこんなバンド選んでみたよ。

Tijuana In Blue、うーん読めんけどティファナ・イン・ブルーでいいのかな?
Tijuanaはメキシコの都市名らしいがしかし、このバンド名にも関わらずスペインのバンドらしい。紛らわしいな。
熊本が誇るガールズ・ガレージ・パンクのポルトガルジャパン、あるいは巣鴨が誇るパンク・バンド、イギリス人みたいなもんか?

Tijuana In Blueについては日本語で書かれた記事が皆無だったので実は全然わからずに書いてるんだが、スペインのパンプローナ出身のバンドで80年代半ばから90年代にかけて活動していたらしい。2002年くらいに短い間、再結成したがヴォーカルが死亡したために活動をやめたらしい。
何かやたら「らしい」ばかりの推測文章で申し訳ないが、ウチにはLacieのハードディスクが3台もある、ますます関係ないか。

田舎のバンドということでなめてたが、案外好みの音楽性でパンク、スカ、ラテン、そしてカウパンク〜ラスティックな部分までうまくミックスされた馬鹿騒ぎ系バンドのようだ。
この映像が何年くらいのものかはわからないが、曲は調べによると1985年のもの。近い音楽性で言えばドイツのウォルトンズとかスイスのヒルビリー・ヘッドハンターズとかをちょっと思い浮かべるもの。時代を考えると先見の明があったのじゃないか?と評価出来るよ。この手のカウパンクだけじゃなくて馬鹿騒ぎミクスチャーだと考えれば、フランスのマノ・ネグラとかワンパスの先輩と言えなくもない。ティファナ・イン・ブルーの方はずっとB級テイストだけど。
映像はヴォーカリストの片割れが猫を抱えているのがかわいいね。立ち上がった時はどこに行ったんだろう。音楽よりも猫の行方の方が気になるニャン。

おっと、いきなりピンクに飛んでしまって「他の色が見つからなくて苦しいんじゃない?」と推測されても仕方ない。
最近はさすがにあまり着ないがSNAKEPIPEが昔は好んでこの色をアクセントにして着てたな。

ピンクと言えばROCKHURRAHはいつもだったら即座にリヴァプールのピンク・ミリタリーを思い出すんだけど、確か割と最近にもジェーン・ケーシーについて書いてしまったから今回は封印したよ。
で、苦し紛れに思い出したのがこのレジェンダリー・ピンク・ドッツだった。

何が伝説的なのかよくわからんが、1980年にデビューして、たぶん現代もまだやってるバンドらしく、一体どんだけレコード出しゃ気が済むの?というほど多作なところがレジェンダリーなシロモノ。
Wikipediaを真に受けてそれが真実ならば、10種類にも渡る音楽ジャンルにまたがって活動してるようで、さらに中心人物のエドワード・カスペルのソロやコラボまで合わせると膨大な量の音楽を作りまくってるという印象。
大ファンで全部持ってるよ、というディープなファン(勝手にカスペルスキーと命名)はそりゃ探せばいるだろうけど、大半の人にとっては数枚聴けばいいくらいの音楽だと個人的には感じた。
かつてレコード屋巡りを生きがいとしていたROCKHURRAHだが、中古盤屋であまりの遭遇率の高さに驚いたものだった。

正直言ってどの曲をピックアップすればいいのか全然見当もつかなかったが、たぶん初期作品のこのあたりを選んでみた。
10分で作れるような垂れ流しの音楽とは思わないし、音楽的素養の深さは明らかだけど、そこまで才能有り余ってるのだろうか?
今まで作った曲のメロディとか歌詞とか全部ちゃんと覚えてるのかね?

今回は割と多岐のジャンルにまたがって語っていてROCKHURRAHの音楽的素養の深さも明らかだけど・・・え?誰もそんなこと言ってない?

さて、ディープ・パープルやジミヘンやプリンスの代表曲を挙げるまでもなく、紫はロックの歴史において重要な色だが、実生活でこれを「我がメインの色」にしてる人はいるんだろうか?かなり主張が強そうな色で並みの人間にはうまく着こなせそうにないね。
ずっと前に何を血迷ったかユニクロで薄紫のフリースを買って冬の部屋着にしていたことがある。ウチではSNAKEPIPEが黒を選んだら敢えて別の色を選ぶという傾向にある(見分けがすぐにつくように)ので、たぶんそういう時に買ったんだろうな。しかしよりによってこの色を選ばなくても、と思えるチョイス。どうせ家の中だけだから、などと思ってたが洗濯物を干す時にベランダに出るのが恥ずかしいというシロモノ。書いてて情けないが紫体験はそれくらいか。
「いや、もっと紫のたくさん持ってるよ」というSNAKEPIPEの声が聞こえたが空耳だろう。

パンク以降の生活スタイルにまで影響を与えた音楽と言えばOi!(スキンズ)、2トーンに代表されるネオ・スカ、ネオ・ロカビリー、そしてネオ・モッズなどが代表的なもの。
しかし全部昔に元ネタがあって単なるリバイバル、世紀の大発明といった斬新な音楽(およびライフスタイル)は新たには生み出されてないのが情けないけどね。

パープル・ハーツは映像観てもらえばわかる通り、ジャム以降に現れたネオ・モッズの人気バンドだった。60年代にポピュラーだったパープルハートなるLSDからとったバンド名だとの事だ。

ネオ・モッズのジャンルはシークレット・アフェア、ランブレッタズ、コーズ、メイキン・タイムとかそれ系のバンドも続々出てきたけど、スカやロカビリーほどには定着しなかった気がする。
ジャムが偉大すぎてそれを凌駕するほどの大物が出なかったというのが最大の原因だろうけど。
そしてやっぱりモッズの重要アイテムであるベスパは誰でも気軽に手に入れられるものではなかったからかな?普通に考えてもごちゃごちゃバックミラー取り付けた自慢のベスパを、アパートの駐輪場や駅前に置いておくだけですぐに盗まれそうだしね。

映像の方はなかなか元気の良い音楽を聴かせてくれて、確かにネオ・モッズの中では有望株だとは思えるけど、他のバンドとあまり区別がつかないという点でやはり決定打不足。紫要素も特になし。

最近はそこまでじゃないけどミリタリー好きのROCKHURRAHにとって緑は避けて通れない色のひとつだった。いわゆるビリジアンとかパステル・グリーンとか、その手の色は着ることはないけど、ミリタリーの服でオリーブドラブは必須だし迷彩でも緑は重要なポイントだしね。
ここまで書いてきてやっと気付いたが、無理やり色と自分の嗜好を書く前フリ、必要ないよね?

「グリーンだからよーし、グリーンデイ」などと安易に書けたらすごく簡単なのに、敢えて多くの人が知らないようなバンドを見つけてしまうひねくれ者だな。
しかも80年代ニュー・ウェイブ限定、などと書いた割にはこのパーマネント・グリーン・ライトは90年代のバンドだった。まあ、80年代に活動してたスリー・オクロックというバンドのマイケル・クエシオによるものなのでテイストは80年代、という事で許してやって。

スリー・オクロックは80年代初頭に米国ロスアンゼルスでちょいと流行った、ペイズリー・アンダーグラウンドというような音楽でデビューしたバンドだ。ペイズリー、という言葉でわかる通り、やや60年代のサイケデリックを感じさせる音ね。
イギリスで発生したネオ・サイケはいわゆる60年代サイケをあまり感じないバンドが初期には多かったが、アメリカはやはりサイケの本場。服装もレコード・ジャケットもモロに60年代サイケっぽいバンドの方がより本格派っぽいわけで、このスリー・オクロックもレコードだけ見れば60年代再発モノだと勘違いするような雰囲気がプンプンしていた。
音の方もド・サイケなのかと思ったら、そこまでではなくて割と耳障りの良いポップなものだった。
このクエシオ、かなりナヨッとしたひょろひょろの女受けするルックスで声も甘くて繊細。女の子のような声とよく評されるが、むしろイギリスに渡って活動した方が大成出来たかも。アメリカにはこの下↓のヴィデオに出てるような凶暴な奴らがウヨウヨいて、インネンつけられる可能性があるからね。

で、そのクエシオが後に作ったのがパーマネント・グリーン・ライトなのだ。
80年代のバンドとしては映像が結構残ってるスリー・オクロックに比べて、悲しいほどに動いてる映像がほとんどない。つまりは全然人気出なかったんだろうな。
スリー・オクロックのようにサイケデリックな要素はあまりなく、これぞ米国産ギター・ポップという正統派な音楽。ヴォーカルも相変わらず甘えた声で澄み切ってるね。レコード・ジャケットは何かプログレみたいな感じなのにこの音は予想外、しかもグリーン要素まるでなし。

何か重要な色をすっ飛ばしてる気がするが、もう疲れてきたので今日はここまで。最後はシメの色で最もロックっぽい色、黒にしよう。

黒がついたバンド名はたぶん数多く存在してるとは思うが、今日はたまたま思いついたこれにしてみる。
米国カリフォルニアのハードコア・パンク代表格、ブラック・フラッグだ。

個人的にはビッグ・ブラックでもいいかな、と思ったけど・・・。
敬愛する作家、鳥飼否宇先生がかつて「爆発的」という傑作ミステリーで色にまつわるバンド(または曲名)が散りばめられた作品を発表されてるので、敢えてそこに書かれてないようなのを実は今回のブログでチョイスしていたのだ。おお、最後に明かされる真実。
このことについてはSNAKEPIPEが詳しく感想を書いてるので、こちらの記事を参照あれ。

ブラック・フラッグは1976年にデビューしたパンク・バンドで86年の解散まで、アメリカン・ハードコアの大人気バンドだった。
ハードコアといってもエクスプロイテッドとかGBHとかのイギリス物とは違ってて、ハードロックやヘヴィ・メタル、後のグランジにも続いてゆくオルタナティブな部分も含めたのがアメリカンなところ。厳密に言えばこのオルタナティブの解釈もイギリスとアメリカでは違ったものなんだけど、今日は関係ない話なのでまた今度。
ヴォーカルもメンバーもどんどん替わってゆくようなバンドだったが、一番有名なのは後のロリンズ・バンドを率いる筋肉男、ヘンリー・ロリンズが加入した81年以降のもの。
このロリンズ、もうとにかく惚れ惚れするような筋肉と入れ墨(だんだん増えてゆく)、いかにも強そうな見た目と動きでカリフォルニア・ハードコア(そんな言葉あるのか?)の頂点に上り詰めてゆく。
映像の時はまだそこまでの体格ではないが、この後も肉体改造を続けてマッチョを極めた男だ。
後のロリンズ・バンドの時は鍛え抜かれた肉体と入れ墨を見せるために基本的にパンツ一丁の裸体だったもんなあ。
服は着てたけどデヴィッド・リンチ監督の映画「ロスト・ハイウェイ」にも出演してたな。
たしかにあの顔と肉体、獰猛そうな役にはピッタリだもんね。

最近はシリーズ記事のパートいくつ、みたいなのしか書いてなかったから、単発の記事は実に久しぶり。
とは言ったものの、ROCKHURRAHがいつも書いてる他のシリーズと、ほとんど内容的に変わらないという結果に終わってしまったけど。
ではまた、マアッサラーマ(アラビア語でさようなら)。