「ホドロフスキーのDUNE」鑑賞

【映画「DUNE」の分厚いストーリーボード集】

SNAKEPIPE WROTE:

ドキュメンタリー映画というジャンルについてはあまり詳しくない。
例えば70年代オリジナル・パンクについて、数十年経った後で、その時代活躍した人が「あの時は…」という感じで語るような記録としての映像は何度か鑑賞したことがある程度である。
大抵の場合は、名前も顔も知らない人ばかり出演して語っているばかりになってしまい、途中で眠くなるのがオチである。
SNAKEPIPEやROCKHURRAHが選んで観ているのが、たまたまそういうタイプの映画だっただけで、世界にはもっと感動的だったり手に汗握るようなドキュメンタリーは存在しているんだろうね。(笑)

敬愛する映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーについては、今までに何度も当ブログに登場しているし、2014年4月22日に来日した監督の講演を聞くことができて感激した話も書いているよね。
この監督の来日は、7月12日公開予定の自伝的作品「リアリティのダンス」と、未完に終わった映画「DUNE」についてのドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」の宣伝のためだったんだよね。
「リアリティのダンス」はその講演会の時に鑑賞したけれど、「ホドロフスキーのDUNE」は6月14日から公開のため、その日をじっと待っていたSNAKEPIPE。
ついに6月に入り、お待ちかねの映画公開の日になったのである!

ホドロフスキー監督についての説明があった場合、必ず紹介されるのが「未完に終わったDUNE」について。
そうそうたるメンバーが集結し、実現していたらどんなに壮大なSF映画になったことだったろうと結ばれていることが多い。
確かにもしその映画が完成していたら、と想像すると興奮するんだよね!
サルバドール・ダリとミック・ジャガーが俳優として、ピンク・フロイドが音楽を、ギーガーが美術を担当する、なんて聞いただけでワクワクしちゃうよ。(笑)


SNAKEPIPEと同じように話だけでも興奮した人が、今回の「ホドロフスキーのDUNE」の監督、クロアチア系アメリカ人、フランク・パヴィッチである。
お蔵入りとなった「DUNE」のことを知り驚き、ドキュメンタリーを作らなきゃと思ったそうだ。(笑)
早速ホドロフスキーのエージェントにメールをすると、ホドロフスキー本人から
「パリにおいで。話をしよう」
と返信があったというからホドロフスキーも乗り気だったんだね。
ホドロフスキーと話をしたことがある人は皆「ホドロフスキーは、とてもオープンに話してくれた」と語る。
先日の講演会で、ホドロフスキーご本人を目の前にすることができたSNAKEPIPEには、それはよく解るなあ。
ホドロフスキーは相手に対峙する時、1対1で真剣に向き合っていると思うから。
もちろん話をするのに値する人物だった場合、だけどね!(笑)

「ホドロフスキーのDUNE」は都内でも、ほんの数カ所しか上映されていない。
新宿か渋谷か有楽町。
今回は初めてヒューマントラストシネマ有楽町に行ってみることにした。
有楽町駅から徒歩1分の好立地!
方向音痴のSNAKEPIPEでも迷わない、安全な場所だね。(笑)
映画上映開始から1週間が過ぎた梅雨の晴れ間を利用して、ROCKHURRAHと共に出かけたのである。

座席を予約した段階で埋まっていたのは、ほんの5、6席程度。
実際行ってみると、もう少し入って30名〜40名くらいだろうか。
およそ3/4は空席でガラガラ状態。
空いている映画館は好きだけど、このままではいつ打ち切りになってもおかしくない状況だよね。
鑑賞できて良かった〜!(笑)

予約当日の朝、何気なくヒューマントラストシネマのHPを見ていると、ラジオ番組で「ホドロフスキーのDUNE」が紹介されることになった記念に、その日の初回鑑賞をするお客さんに非売品プレスをプレゼントしてくれるという。

当日、対象回のチケットをお求めの際に劇場窓口にて
「タマフルの予習にきた」と伝えて頂ければ、
その場でプレスをプレゼント致します。

非売品のプレスが何なのか「タマフル」の意味も分からないけど、とりあえず対象回に当っているので言ってみた。
「タマフルの予約に来ました」
「予習の間違いだよ」
ROCKHURRAHに指摘されるまで気付いてなかったけど、言い間違えてたみたいね。
窓口の女性がプッと吹いていたのは、間違いを笑っていたのか!
一応キーワードらしい言葉は言ったと理解してもらえたらしく、すぐに小冊子を袋に入れて渡してくれた。
それが写真左の白いほう。
そのまま中身を確認せずバッグにしまい、鑑賞後に購入したのが右のパンフレット。
「表紙が違うだけで中身が同じ!」
気付いたのは帰宅後よ!
非売品プレス2冊にパンフレット1冊、合計3冊同じ物を所持するとは!
1冊は長年来の友人Mにプレゼントしよう。(笑)

映画はほとんどホドロフスキー監督自身が語り、その合間に当時の関係者が補足説明をする、というスタイルだった。
途中でホドロフスキー監督の愛猫が登場して、猫を抱きながら喋ってたよ。
猫好きで、いつも猫と一緒というのは以前どこかで読んだことがあるけど、それを知った時には親近感がわいたものだ。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも猫が大好きだからね!(笑)

バンド・デシネ作家のメビウス、画家のサルバドール・ダリ、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとの出会いは、偶然にしては出来過ぎていて、フィクションみたいな逸話だった。
ホドロフスキーは精神修行や精神の拡張について真面目に取り組んでいるから、きっと偶然を呼びこむ力があるんだろう、ホドロフスキーには必然的なできごとだったんだろうなと思ってしまう。
ダリとの会話が面白かった。
ホドロフスキーをテストするかのようにクエスチョンを投げかけるダリ。
「私は砂浜でいつも時計を拾うんだけど、君はどう?」
「私は時計を拾いませんが、いつも時計を失くしています」
ほおっーーっ。
なんでしょうか、このシュールな会話はっ!
このテストでホドロフスキーは合格点をもらったようで、ダリが出演を承諾したとのこと。
ポール・エリュアールから奪ったガラ・エリュアールはのちにダリの奥方になる女性だけど、そのガラ夫人公認の愛人がいたというから驚きね。

右の写真の女性がそのダリの愛人だったアマンダ・レアね。
ブライアン・ジョーンズ、デヴィッド・ボウイ、ブライアン・フェリーなど数々のロック・スターと恋仲になったファム・ファタール的女性なんだって!
ダリとも愛人関係にあり、「DUNE」ではイルーラン姫としてキャスティングされていたらしい。
最もこれはダリが出演の条件として、アマンダを姫にするように申し入れたみたいだけどね。(笑)
アマンダも映画の中でインタビューに応えてるんだけど、その顔を見た時に
「似てる!」と思ってしまったのが Dead or Aliveのピート・バーンズ!(写真左)
活躍していた80年代とは違った顔になってるんだよね。
現在は同性婚もしているようで、かつての眼帯姿とは全然違うんだけど、昔の整形前のほうが綺麗だったように感じるのはSNAKEPIPEだけかしら?
そしてその整形後の顔がアマンダ・レアに似てるというのは、失礼にあたるのかしら?
えっ、どっちに対して?(笑)

最高のキャスト、スタッフを集めたホドロフスキーは、映画の製作のために「こんな感じの映画ですよ」というストーリーボードを製作する。
それが冒頭画像の分厚い本なんだけど、中にはメビウスが描いたスケッチやギーガーによるセットのイメージ画などが収められている。
スケッチもイメージ画像も本当に素晴らしくて、すぐに撮影開始できる状態だったことが良く解るんだよね。
映画は12時間の大作になる予定だったという。
企画は素晴らしいし、キャストやスタッフも良いんだけど、監督がホドロフスキーなのが問題だと映画会社が口を揃えたという事実を知る。
一部の人からは絶大な支持を集めたホドロフスキーだけど、やっぱり大衆には受け入れられなかったみたいだね。
当然といえばそうなんだけど、「DUNE」を完成させるには、その点がネックになったみたい。
未完に終わってしまった原因の一番は、監督がホドロフスキーだったことだったなんて、かなりショックだな…。
いやいやSNAKEPIPEよりもホドロフスキー自身が一番ショックだったろうね。

その後これまた敬愛する映画監督デヴィッド・リンチが「DUNE」を監督する。
ホドロフスキーは息子から「観なきゃダメだ」と言われ、重たい体をひきずりながら映画館に向かい、悔し涙を流しながら映画を鑑賞。
ところが観ていくうちに
「これは駄作だ!全然ダメだ!」
と感じて元気になったと言う。
デヴィッド・リンチは良い監督だから、失敗はリンチのせいではなくて製作者側の問題だろう、とも語っていたので、ホッとしてしまった。(笑)
リンチもあまり思い出したくない経験の1つだろうからね。

ホドロフスキーは300歳まで生きたいと語っていた。
まだまだやりたいことがやりきれていないんだろう。
そりゃそうだよ!
「リアリティのダンス」はまだ少年時代しか撮ってないし。
青年時代がもっと面白くなるんだもん。
是非またプロデューサーのミシェル・セドゥーと組んで「リアリティのダンス〜青年編」を作ってもらいたいからね!

「ホドロフスキーのDUNE」ではエネルギッシュなホドロフスキーを観られて良かった。
ドキュメンタリー映画、面白いな!(笑)

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