シリーズ現代の作家 横尾忠則/ピーター・ドイグ展 鑑賞

20200802 top
【国立近代美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「見つけてしまった!これは行かねば!」
長年来の友人Mからメッセージが届く。
何を見つけたんだろう、とメッセージに貼ってあるリンクを開いてみる。
そこには横尾忠則の版画展が載っていた。
2009年5月の「好き好きアーツ!#07 横尾忠則」や2019年6月の「B29と原郷-幼年期からウォーホールまで」などで熱く語っている横尾忠則。
確かに観てみたい展覧会だよね!
場所はどこだろうと目を走らせる。
えー!町田なのー?
かなり遠い場所なので、数年前にも諦めた美術館だったことを思い出した。
あの時も横尾忠則展だったような?

今まで一度も行ったことがない町田。
せっかくなので出かけてみようか、ということになった。
そして友人Mとは定番になりつつある、展覧会のハシゴは今回も実行する予定。
かなりの距離を移動することになりそうだね。(笑)

梅雨がまだ明けていないけれど、少し気温が低い曇天は、歩くのには丁度良いね。
小田急線の快速に乗ると代々木上原から町田まで約30分。
そこまで遠くはないのかな?
友人Mも町田は初めてだという。
展覧会が開催されている町田市国際版画美術館は、町田駅から徒歩15分とのこと。 
方向音痴のSNAKEPIPEとは違い、地図が読める友人Mにとっては、初めて歩く場所も怖くないんだよね。(笑)

いくつかの大通りを渡りながら歩くこと約10分。
こっちの方角だと思う、と友人Mが指す道を見てびっくり!
立っている場所から、完全なつま先下がりの急勾配が広がっているじゃないの!
山を切り拓いて宅地にしたような場所で、ここを毎日歩く人は登山しているみたいな感じだろうな。
足腰が鍛えられること間違いなし。(笑)
「ひーーー!」
叫びながら転げるように坂を下り切ると、ようやく美術館の入り口が見えてきた。
森の中にひっそりと佇むような外観に「いいねー!」と声を上げる。
帰宅後調べて知ったけれど、美術館は芹ヶ谷公園という大きな公園の一角にあったんだね。
天気が良い時には、公園の散策も楽しそうだよ。

いよいよ美術館へ。
その前に看板を撮影する。
インスタグラムで画像をアップしている友人Mも撮影。
以前は撮影するのはSNAKEPIPEだけだったのに、最近では場所取りの順番を待つことがあるんだよね。(笑)
展覧会は企画展と常設展という構成になっていて、横尾忠則は常設展だった。
企画展はインドネシアの版画家の作品が展示されていたよ。

お客さんは友人MとSNAKEPIPEだけという完全な貸切状態!
これは前回友人Mと鑑賞した「森山大道展」と同じ状況じゃないの!
しかも、横尾忠則の作品は撮影オッケー。
しかもしかも!なんと無料だったんだよね!(笑)
横尾忠則の作品は、ほとんどが観たことがあったけれど、遠路を来た甲斐があったよ。
画像は「W Wonderland Ⅱ」 。
ショッキングピンクに目を奪われる。

「入れ墨男」と題された作品は、同じスクエア型の3作品と共に「風景」として組まれていた。
それぞれの作品にはクローズアップされた人物が一人だけ登場する。
朝日なのか夕日なのかは定かではないけれど、太陽を背にした入れ墨男の輪郭が光に包まれている様が美しい。 
横尾忠則は高倉健のポスターも作成していたので、「紋々系」をテーマにするのは得意という印象があるよ。
「入れ墨男」は1969年の作品というので、高倉健の作品と同時代じゃないかな?

インドをテーマにした作品も展示されていたよ。
1977年から1979年に放映されていたドラマ「ムー」や「ムー一族」のタイトルバックを思い出すね。
ROCKHURRAH RECORDSではつい最近「ムー」を観終わって「ムー一族」にしようかって時に、Netflixに入会しちゃったもんで。(笑)
Netflixには面白そうなドラマがいっぱいあるんだよね。
またいつかチャンスがあったら、70年代のドラマも観てみようかな。
画像は「水其天」(だったと思う)で1974年の作品だよ。
上下に海が配されているシンメトリー構図で、3つの円が描かれた中央には交合しているような男女の姿。
横尾忠則の魅力はコラージュの面白さと色彩だなあ、と改めて認識する。
行って良かった展覧会だったよ!

ランチを済ませてから、続いて向かったのは東京国立近代美術館
昨年末にも友人Mと「窓展」を鑑賞した美術館だね。
この美術館は、他では観たことがない企画を立てることが多い印象があって、いつも楽しみなんだよね!
今回はスコットランドの画家、ピーター・ドイグの展覧会だという。
実はピーター・ドイグの名前を耳にするのは初めてのSNAKEPIPE。
経歴について調べてみようか。 

1959年 スコットランドのエジンバラに生まれる
1962年 カリブ海の島国トリニダード・トバゴに移る
1966年 カナダに移る
1979〜80年 ウィンブルドンスクールオブアートで学ぶ
1980〜83年 セントマーチンズスクールオブアートで学ぶ
1989〜90年 チェルシースクールオブアートで修士号を取得
1994年 ターナー賞にノミネート
2000年 友人であるクリス・オフィリと共にトリニダード・トバゴに戻る
2002年 活動拠点をポート・オブ・スペイン(トリニダード・トバゴ)に移す

テート(ロンドン)、パリ市立近代美術館、スコットランド国立美術館(エジンバラ)、バイエラー財団(バーゼル)、分離派会館(ウィーン)など、世界的に有名な美術館で個展を開催し、ドイツのデュッセルドルフにある美術アカデミーの教授にも就任している。
作品はクリスティーズやサザビーズなどで高額取引されている、世界的に有名な画家だという。

年表を見て気が付くのは、スコットランドで生まれてからトリニダード・トバゴ、カナダに行き、再びロンドンで学んだ後、またトリニダード・トバゴに戻っていること。
友人としてクリス・オフィリの名前が出てきたことにも驚いた。
2015年5月に「SNAKEPIPE MUSEUM #32 Chris Ofili」として紹介していた画家だったからね。
クリス・オフィリには注目していたのに、ピーター・ドイグは全く知らなかったのが残念ですな!(笑)

ピーター・ドイグについて少し勉強したところで、展覧会の感想をまとめていこうか。
「撮った写真をシェアしよう!」などと看板があったほど、作品撮影に対して寛容なのが嬉しい。
もちろんバシバシ撮らせてもらったよ!
たくさん撮った割には、曲がった写真が多かったのが玉にキズだけど!(笑)

「Swamped(のまれる)」は1990年の作品。
年表で確認するとチェルシーの学校に行っていた頃に描いていたことになるのかな?
湖だろうか、水面に映る木々の様子が描かれているように見える。
夜なのかもしれない。
枯れた木が骨のよう。
なんとも言えない魅力的な絵で、今回SNAKEPIPEが一番気に入ったのはこの作品だよ!
所蔵しているのは「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」で、素晴らしいコレクションを見せてくれたヤゲオ財団!
ちなみに落札額は約30億円らしいよ。(笑)

ピーター・ドイグは年表にもあったように、少年期に国をまたいで引っ越しているんだよね。
そのせいなのか、年代によって絵の雰囲気が違い、同じ画家の作品に見えないことがあったよ。
「Canoe-Lake(カヌー=湖)」は1997〜98年の作品だという。
緑色のカヌーに乗っている女性も緑色。
生きていないように見えてしまうのはSNAKEPIPEだけかな?
13日の金曜日(原題:FRIDAY THE 13TH 1980年)」の第1作目に、よく似たシーンがあるのをROCKHURRAHが教えてくれたよ。
この作品もヤゲオ財団の所蔵品だって。
もしかして好みが似てるのかも。(笑)

「この絵が一番!」
と興奮していた友人M。
「ラペイルーズの壁」は2004年の作品で、ドイグが撮影した写真をもとに描かれているという。
日傘から暑い日だということは想像できるけれど、陽気な明るさよりも物悲しさを感じるんだよね。
遠い記憶を呼び起こされるような、甘ったるい懐かしさも同時に味わう。
もうあの時には戻れない、という悔しい気持ちも入り交じる。
様々な感情が噴出する作品に巡り合うことは稀な経験だったよ。

作品のタイトルは「影」。
改めてじっくり鑑賞しても、この作品の人物がよく分からないんだよね。
顔だけ横向きの後ろ姿なのか?
「ギターを持った渡り鳥」(古い!)がテーマではないと思うけど?(笑)
彼方に見える船はおぼろげで、杭も本当に存在しているのか不明な描かれ方だよ。
SNAKEPIPEには、ギターの男が埠頭をさまよっている魂のように感じるんだけどね。
もしくはもぬけの殻になった男の心情なのか。
東京国立近代美術館では「ドイグ作品で物語を作ろう!」という子供向けの夏休み企画を立てているようだけど、この作品からはどんな物語ができるだろう?
入選作品はHPに掲載されるというので、楽しみに待っていよう。

ピーター・ドイグは自分のスタジオで映画の上映会を行っているという。
「スタジオ・フィルム・クラブ」は2003年から、誰でも無料で参加できるプロジェクトとして始まったんだって。
その開催を告知するポスターが多数、展示されていたのが興味深かった。
恐らくピーター・ドイグによってセレクトされた映画が上映されるだろうから、映画の好みも分かるってことだよね。
デヴィッド・リンチの「ブルーベルベット(原題:Blue Velvet 1986年)」も上映されたようで、これはそのポスター。
デニス・ホッパーやイザベラ・ロッセリーニを描かずに耳だけとは!(笑)
この思い切りの良さには脱帽だね。

ストレンジャー・ザン・パラダイス(原題:Stranger Than Paradise 1984年)」もチョイスされたんだね。
まるで一冊の写真集のような映画だったことを思い出す。
いとこのエヴァが描かれているね。
映画の上映後は、作品について話し合ったりするらしい。
文化サロン的な役割を担っているという上映会には、どんな人が参加するんだろうね?
トリニダード・トバゴについてよく知らないSNAKEPIPEなんだけど、アート関係の方が多いのかな。
楽しそうだよね!

こっ、これはっ!
「ZATOICHI」って書いてあるから、まさかと思うけど「座頭市」?
キャプションを確認すると間違いないみたい。
ということは、描かれているのは勝新太郎か。
このぞんざいにも見える絵に思わず笑ってしまったよ。(笑)
ドイグは日本映画にも興味があるようで、小津安二郎の映画にも影響を受けていると話しているという。
いや、それにしてもこの座頭市はどうだろう、、、。

ピーター・ドイグは初めて知ったアーティストだったけれど、とても面白かった!
作品のほとんどが大型なのも迫力があったよ。
年代や描いた場所によって全く印象が違う作品の存在を知ることができるのも、個展ならでは。
鑑賞できて良かったよ!

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