SNAKEPIPE MUSEUM #59 Eva Redamonti

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【マス目に区切られた美しい色合いの「wander」】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはEva Redamontiというイラストレーターを紹介しよう。
読み方はエヴァ・レダモンティで良いのかな?
どんな人物なのか、まずは経歴を調べてみよう。 

1995年 コネチカット州生まれ
2015年〜 グループ展に参加
2017年 バークリー音楽大学作曲学士
2021年 ニューヨークのEquity Galleryにて初個展

1995年生まれということは、現在26歳くらいなのか?
バークリー音楽大学は超難関大学らしいので、その大学を卒業したというだけでも輝かしい経歴だよね。
渡辺貞夫やゴタイゴのミッキー吉野も卒業しているみたいだよ。(笑)
エヴァ・レダモンティが作曲の勉強をしていたところに注目してしまう。
絵画は独学なのかもしれないね?
絵画と音楽の二刀流、という器用なアーティスト。
まるで敬愛するデヴィッド・リンチ監督みたいだわ。(笑)
早速作品を紹介していこう。

「Like My Father」は2019年の作品。
「私の父のよう」ってどういうことなんだろうね?
NHKの番組「英雄たちの選択」に出てくる、「心の内に分け入ってみよう」みたいな感じで、脳内の様子が描かれているんだけど。
特に何もないんだよね。(笑)
浮かない表情で、頭の中は空っぽ。
中央辺りに倒れ込むような人物が、助けを求めているように声を上げている様子が描かれている。
色調も控えめなので、精神状態が心配になっちゃうよ。
お父さん共々エヴァも暗かったのかなあ。
インクだけで描かれているモノクロタイプは$1,000、日本円で約105,000円で販売されているけど、この絵をずっと眺めていたら気分が滅入るかも。

上の作品と対になる「Like My Mother」(私の母のよう) も同じく2019年の作品なんだね。
中央にいる人物の目線が上向きなので、こちらの絵には希望の光が感じられるよ。
えっ、単純過ぎ?(笑)
様々な要素が描かれていて、一つ一つに意味が込められているんだろうけど、勝手に想像するしかないんだよね。
この作品は$900、日本円で約95,000円だって。
14 x 11インチということは、横幅約35cmの小さめな作品なんだね。

「If You Don’t See Me Ahead」は直訳にすると「あなたが私を先に見ないのなら」になるのかなあ。
意訳なら「私を一番最初に見つめて」ということになるのか。
骸骨が上から迫ってくる構図といえば歌川国芳の「相馬の古内裏」を思い出すけれど、どことなく雰囲気が似てるよね?
そしてタイトルを作品の中に書いてるところはリンチを思わせる。(笑)
タイトルとモチーフの関連は分からないね。
自分でストーリーを考えるのも面白いかも。
SNAKEPIPEが考えたのは、親子の愛情についてかな。
子供時代に愛情に飢えた経験から、悪夢や幻をみるようになってしまったという物語。
陳腐か?(笑)
この作品も14 x 17インチと小さめ。 
お値段は$450、日本円で約47,000円とはお手頃だよね!

まるでコロナ下の現在を表しているような作品。
タイトルは「Desire」(欲望)とのことだけど、トゲトゲした物体がまるでウイルスのように見えるんだよね。
目から口から鼻から悪い物が入ってくるようで。
どちらにしても「邪悪な存在」として題材にされているんだろうな。
それにしても耳の数、多いよね?(笑)
ここでもまたリンチを思い出すSNAKEPIPE。(笑)
縦が25cmというから、これも小さめの作品だね。
プリントはエヴァのサイトで$40(約4,200円)で入手可能だよ!

縦長の作品は目を引くね。
色合いもキレイだし、エヴァが女性のヌードを描くのも珍しい。
「Hard Pill to Swallow」(飲みにくい薬)も、タイトルとモチーフの関連が不明だね。
女性とか魚が泳いでいる、このカプセル自体がピルなのかも?
一体、誰がこれを飲むんだろうか。
またお話を作ってみようかな。(笑)
エヴァの作品には、ヒモ状のモチーフが描かれることが多いのが気になるんだよね。
へその緒だったり、人との「つながり」や「しがらみ」を表しているのかなと想像する。
SNAKEPIPEの連想なんて、こんな程度さ!

初個展のためにアニメーション作品も制作したようで、YouTubeにアップされている動画を載せてみよう。

アニメーションの音も担当しているようだよ。
「What Happens at Night」(夜に何が起こるの?)というのが個展のタイトルとのこと。
シンプルな線で表現されているせいか、 おどろおどろしい雰囲気ではない。
メッセージ性は感じるけれど、言葉にするのは難しいよ。
これも個人がそれぞれ感じることができれば良いのかな。

平凡で面白みのない田舎町で、一人の時間を過ごすことが多かったというエヴァ。
インタビューによれば、どうやら家庭環境が不健康だったらしく、エヴァ自身も学校ではなく家で勉強していたようで。
その時間が長かったせいで、創造性が身に付いたみたいだよ。
現在はニューヨークのブルックリンに生活と仕事の場を置いているというので、刺激的で面白い光景を毎日楽しんでいるんじゃないかな?
これからの活躍に期待だね!

映画の殿 第42号 サイコキネシス -念力-

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【念力で人を吹き飛ばすソッコン】

SNAKEPIPE WROTE:

Netflixを堪能している話は、前回の「映画の殿 第41号 Netflixドラマ編」で語っている。
ドラマを鑑賞することが多いけれど、映画も観てるんだよね。 
今回紹介するのは日本未公開で、Netflixだけで公開されている「サイコキネシス -念力-(原題:염력 2018年)」 という韓国映画。
今までにもポン・ジュノパク・チャヌクなどの作品をはじめ、俳優であるソン・ガンホが出演している韓国映画はかなりの本数観ている。
ROCKHURRAH RECORDSでは、韓国映画がスペイン映画の次に来たブーム、という感じかな?(笑)
タイトルだけ見るとオカルト系の話なのかなと思いながら観始めた「サイコキネシス」は、SNAKEPIPEの予想を大きく裏切ってくれた。
もちろん良い意味で、ね。(笑)
どんな映画なのか、トレイラーを載せてみよう。 

簡単にあらすじを書いておこう。

突然超人的な能力に目覚めた父親と、大切なものを守るため必死で戦う娘。
頼りない中年男はスーパーヒーローになれるのか。
すべてを賭けた戦いがいま幕を開ける。(Netflixより)

ここからは感想をまとめていこう。
ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください!

警備員として生計を立てている、しがない男やもめのシン・ソッコン。
出勤前、公園で水を飲むのが習慣のようで、その日も水を口にする。
映像だけが流れ詳しい説明がないけれど、どうやら宇宙から落ちた隕石から出た何かが混ざった水だったようで。
ソッコンは飲んだあと、「腐っている」と表現している。
その水が不思議な力を習得する原因になるんだよね。

これが主人公シン・ソッコン。
寝起きの村上龍か蛭子能収か、といった雰囲気なんだよね。(笑)
演じているのはリュ・スンリョン
この俳優が出演している他の作品は観たことないかも。
勤務先で備品をちょろまかしたりする、器の小さい男。
ひとり暮らしを良いことに布団は敷きっぱなしで部屋は荒れ放題。
こういう生活送ってる人、多いのかな?
横着して寝たままタバコを吸おうとした時、初めて自らの超能力に気付く。

 シン・ソッコンの娘、ルミ。
演じているのは、まるですっぴんの荻野目洋子かといった風貌のシム・ウギョン
両親は離婚しているので、母親と一緒に暮らしている。 
激辛チキンの店を成功させ、テレビ取材を受けるほどの人気なんだよね。
ところが、ルミの店がある商店街一帯が、再開発地域に指定されてしまう。
中国人観光客向けの免税店を作る、というのがいかにもありそうな話だよね。
立ち退きを迫る建設会社と、反対する商店街の人たちとの攻防が繰り広げられることになる。 
その攻防の真っ只中、母親が巻き込まれて死亡してしまう悲劇が起こる。

地上げ屋を雇っている建設会社の社長と部下。
利益を得るためなら何でもやる、といったズルそうな人相なんだよね。
左にいる社長は、間延びした五木ひろしといった雰囲気だよね。(笑)
社長なのに小心者。
汚れ仕事は人任せ、自分は動かないんだよね。
こういうタイプも現実にいそうだよ。

母親が死亡したことを知らされ、葬式に顔を出したシン・ソッコンとルミは何年ぶりの対面だったのやら。
ルミは父親に対して、自分を捨てた人という認識を持ち、今更父親面をされることが許せない様子。
それでもソッコンは、ルミの状況を知り、商店街の攻防に力を貸すことにする。
暴力を振るう地上げ屋に対して、超能力を使っているシーンがこれ。
見て、この顔!
思わず吹き出してしまうほどの面白さよ。(笑)
ルミの驚いた顔も良いよね。

続いての念力シーンがこれ。
リュ・スンリョンの顔芸とでも言おうか、 変顔の連発に大笑いしちゃうんだよね!(笑)
このシーンでは、手にとどまらず、膝や舌まで使って物を動かしている。
手からパワーを出すのは漫画だったり、Netflixのドラマ「ストレンジャー・シングス」でも見るけれど、ここまでおバカな方法を使うのは初めてだよ。
いや〜、最高!(笑)

おバカな顔ばかりじゃなくて、娘のために闘う決意の表情がこれ。
この時にはニコラス・ケイジに似てるな、と思ったSNAKEPIPE。
ニコラス・ケイジもおバカなキャラクターからハードボイルドな役までこなす俳優だから、雰囲気が近いのかもしれないね。
リュ・スンリョンの他の作品も観たくなったよ!

ソッコンの超能力はなんでもアリで、自分が欲したことができちゃうみたい。
人や物を投げ飛ばすし、空を飛ぶことも可能!
こんな能力あったら良いだろうね。(笑)
ルミを救うため、スーパーマンのように飛んで助けるシーンがこれ。
父と娘に絆が戻った瞬間といえるだろうね。

建設会社や地上げ屋の執拗な立ち退き話は現実的なのに、ソッコンの超能力が加わると途端に荒唐無稽になるところが秀逸だと思ったよ。
筋自体は単純なのに、強い印象を残すのはやっぱりリュ・スンリョンの顔芸のおかげだね。(笑)
ウィル・フェレルのおバカ映画が大好きなSNAKEPIPEなので、「サイコキネシス」も非常に気に入ったよ!

監督は「新感染 ファイナル・エクスプレス(原題:부산행 2016年)」のヨン・サンホ
「新感染」は鑑賞済で、電車の中というシンプルな設定なのに、スリルのある目が釘付けになる映画だったことを思い出す。
元がアニメーション監督だというので、「何でもアリ」の発想ができる人なのかなと推測する。
ソウル・ステーション/パンデミック」 はこれから鑑賞するので、とても楽しみ!
「新感染」の続編である「新感染半島 ファイナル・ステージ」もいつか観たいと思う。
楽しみが増えて嬉しいね! 

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか 鑑賞

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【東京都現代美術館とgggの正面を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

東京都現代美術館で開催されている石岡瑛子の「血が、汗が、涙がデザインできるか は、以前より長年来の友人Mと話題にのぼっていた展覧会だった。
別会場で同じアーティストを特集するのが最近の流行なのか、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでも「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」も開催されているんだよね。
せっかくだから両方鑑賞して、その日を「A子デー」にしようと目論む。
まずは東京都現代美術館から行くことにする。

当日は晴れていたけれど、とても風が強く寒い日だった。
駅から歩いて美術館に向かったSNAKEPIPEだけれど、友人Mは寒さのためタクシーを使ったらしい。
なんともリッチですな。
そしてSNAKEPIPEの分まで足用ホカロンを準備してくれるとは、ありがたや~!(笑)
石岡瑛子展は昨年11月から始まっているはずだけれど、会場には意外と多くのお客さんがいたよ。
会場内は一切撮影禁止!
森美術館などは動画も含めてオッケーなのに、非常に残念だよね。 
東京都現代美術館の次に向かった会場である、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)で撮影した画像を使って紹介していこう!

まずは石岡瑛子の年表を書いておこうか。

1938年 東京に生まれる
1961年 東京芸術大学美術学部卒業後、資生堂入社
1970年 独立し、パルコや角川書店の広告を担当する
1980年 ニューヨークに拠点を移す
1983年 「石岡瑛子風姿花伝EIKO by EIKO」を出版
1987年 マイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケットデザインでグラミー賞受賞
1993年 フランシス・コッポラ「ドラキュラ」でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞
2000年 ターセム・シン「ザ・セル」で衣装デザインを担当する。
その後、ターセム・シンの作品3本にも衣装デザインとして参加する
2002年 紫綬褒章を受ける
2012年 死去。享年73歳

駆け足で書いてみたけれど、石岡瑛子の偉業はこんなに簡単には語り尽くせないよ。
資生堂の宣伝部に所属する時に「男性と同じ仕事と待遇」を希望したというエピソードから、エネルギッシュな石岡瑛子が良く分かる。
世間をあっと言わせた仕事が前田美波里を起用したポスターで、力強い女性像を打ち出したというのが、石岡瑛子自身を象徴していたように感じる。
載せた画像はパルコの広告で、「あゝ、荒野」。
写真は藤原新也なんだよね。
アートディレクターとして強いメッセージ性のある広告作りをする石岡瑛子像が見えてくる。

かつて目にしていたであろうポスターの数々が展示されている。
沢田研二との仕事が多かったのかもしれないね。
パルコのポスター以外にも沢田研二の写真集や、日本未公開の映画「Mishima」 での美術監督、そしてザ・タイガースのレコード・ジャケットにも携わっていたようで。
石岡瑛子がポスター制作の時、仕上がった原稿に赤文字で修正箇所を指示している展示に目が釘付けになる。
モデルの目に力がない、顔の輪郭がぼやけているからシャープにするように、フォントを大きく、などの細かい指示内容が書かれているんだよね。
プロフェッショナルな仕事を垣間見た気がするよ。
グラフィックを目指す人じゃなくても、勉強になる展示なんじゃないかな。

会場にはずっと石岡瑛子の声が流れていたんだよね。
仕事をする上での信念だったり、デザインの世界で生きていくためには何が必要か、みたいな話をしていたよ。
gggではその言葉を切り取って展示していたので、撮影してみたよ。
・Timeless(時代にとらわれず)
・Originality (真似ではない)
・Revolutionary(革新的な作品作り)
この3つの言葉をマントラのように唱えていたという石岡瑛子。
アスリートのように厳しい鍛錬を自らに課し、闘っていた女性だったんだね。

ポスター類は見ていたのかもしれないけれど、石岡瑛子という存在を知らなかったSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHも同様にポスターには見覚えがあるという。
初めて石岡瑛子を認識したのは、映画の衣装デザインだった。
2000年の時点で石岡瑛子は62歳だけど、パワフルな仕事ぶりが素晴らしいね!
ターセム・シン監督の「ザ・セル(原題:The Cell 2000年」や「落下の王国(原題:The Fall 2006年)」 は、映像の美しい映画で、石岡瑛子の衣装デザインが印象的。
映画で使用された衣装も展示されていて、興味深かったよ。
撮影禁止だったのが、本当に残念でならない。
また改めてターセム・シンの映画を鑑賞したいね、と友人Mと話す。
映画にとどまらず、オペラやシルク・ドゥ・ソレイユ、オリンピックのユニフォームまでデザインしていたというから驚いた。
ビョークから仕事を依頼されたという「コクーン」のミュージック・ビデオは、シンプルなのに不思議な世界が広がっていて、強烈な印象を残していたよ。
映像が見つからなかったので載せられないのが残念!

デザインと名のつく仕事はほとんど手がけているんじゃないか、というほどありとあらゆる展示があった。
えっ、これも?と驚いたのが山本海苔のパッケージ・デザイン!
尾形光琳の描いた波をモチーフに、日本のグラフィックデザイナーの草分けであった父、石岡とみ緒が商品名の書を、妹で同業の石岡怜子がグラフィック・デザインをしたという家族総出のアートワークだったという。
父親も妹も同業者だったという事実を初めて知ったよ。
当ブログには「ROCKHURRAH紋章学」というカテゴリーがあって、デザインに関する特集記事を書いているけれど、日本のデザインについては書いていなかったからね。

東京都現代美術館の展示は素晴らしくて、友人Mと興奮気味に会場を後にする。
ランチ後、gggに向かう。
すでに現代美術館で鑑賞した作品が、撮影可能な状態で展示されているんだよね。
この違いは一体なんだろう?
納得がいかないよね。
画像は「EIKO by EIKO」。
ターセム・シンがバイブルにしていたという作品集だよ!
SNAKEPIPEも見てみたいと思い、中古価格を調べてみる。
Amazonの中古品で51,999円だって。
すぐには手が出せないなあ。

日本の広告業界において第一線で成功していたのに、マンネリを嫌い、渡米するエピソードにグッと来たSNAKEPIPE。
その時、石岡瑛子42歳なんだよね。
そしてニューヨーク大学に入っているのを美術館の年表で知る。
「年だから」
「女だから」
そんな言い訳を一切しない強い精神力と行動力!
いつまでも挑戦し続ける、パワフルな女性だったんだね。
会場に流れていた石岡瑛子の言葉、もう一度聞きたいと思う。
パワーをもらえそうで。
73歳の死は早過ぎるよ。 
2つの会場で、石岡瑛子の作品を鑑賞することができて大満足だった。
世界に通用するアートワークの創造者の実像に触れられる機会はそうそうないからね。
稀代の逸材だった石岡瑛子の3つの言葉、SNAKEPIPEも記憶しておきたいと思う。

SNAKEPIPE MUSEUM #58 Fritz Kahn

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【フリッツ・カーン「腺の洞窟に入る」1924年】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはフリッツ・カーンを特集してみよう。
たまたまROCKHURRAHが作品を目にして、これはすごい、と教えてもらったのがきっかけである。
初めて知る名前だよ!
少し調べてみようか。 

1888年 ドイツのハレに生まれる
誕生直後、一家はアメリカに移住
その後再びドイツに戻る
1907年 ベルリン大学で医学を学び、州の試験に合格して医学博士号を取得
1914-22年 産科助手として働く
「Die Milchstraße」(天の川)を出版
1922年 図解された5巻シリーズ「Das Leben des Menschen」(人間の生活)を出版し、ベストセラー作家となる
1930年 パレスチナと北極圏への地質探検に出かける
1932年 砂漠を研究するためにサハラ砂漠に旅行
1933年 家族と一緒にパレスチナに移住
1937年 最初の妻と離婚後、2度目の結婚をしてパリに移る
1940年 敵国人としてフランスで抑留されるも、夫婦はスペインとポルトガルに逃げる
1941年 アインシュタインの助けを借りて、米国に移住
1948-50年 ヨーロッパでの生活後、ニューヨークに定住
1960年 スイスに住み、出版を続ける
1968年 スイスのロカルノで死去。

フリッツ・カーンの情報はそれほど多くなかったので、苦労してしまった。
経歴を調べていると、あまりに様々な国名が出てきて驚いちゃうよ。
フリッツ・カーンがユダヤ系ドイツ人だったため、迫害を受け亡命する必要があったことも理由なんだよね。
ここに書いていない国名もまだあるんだけど、主要な部分だけにとどめたよ。(笑)
そしてフリッツ・カーンを一躍有名にしたのが、1922年の図解された科学書「Das Leben des Menschen」(人間の生活)や、1926年に制作された等身大のポスター「Der Mensch als Industriepalast」(工業宮殿の男)だという。
全ての作品の邦題が分からないので、SNAKEPIPEが勝手に訳して使用するのでよろしくね。(笑)
画像がフリッツ・カーンのトレード・マークになったポスターね!
人間の体内を工場に見立てて、どんな働きをしているのか可視化したもの。
非常にユニークで、勉強にもなる一石二鳥の作品だよね。
このポスターを更に発展させ、アニメーションにしたのがHenning Lederer。
2009年の作品だというから、 80年以上の時を経てもフリッツ・カーンの影響力が強いことが分かるね。

とても面白い!
きっとフリッツ・カーンが観たら喜んだだろうね。

「70年で、人間は自分の体重の1,400倍を食べる」。 
上の「工業宮殿の男」と同じ1926年の作品だという。
これだけの量を食しているということをわかりやすく描いているんだけど、かなりシュールな絵だよね。(笑)
この年代といえばドイツではバウハウス真っ盛りじゃないの!
バウハウスの名付け親であるヴァルター・グロピウスやバウハウスの教官だったヘルベルト・バイヤーなどがフリッツ・カーン信奉者だったということを知り、ゾクゾクしちゃうよ。
新しいことを始めようとする人々の交流は当然だったのかもしれないね。
ROCKHURRAH RECORDSが憧れている時代を生きていた先進的な人たちは、どんな会話を楽しんだんだろうなんて想像するだけで嬉しくなっちゃう!(笑)

少し時代が遡って、1924年の作品「Support Structures」。
フリッツ・カーンの作品、と書いているけれど、どうやらフリッツ・カーン自身が描いたものではないらしいんだよね。
アイディアを提供し、フリッツ・カーンの指示に従って、出版社のデザイン部門で作成されたとのこと。
より複雑な画像の場合は、フリーランスの画家、建築家、グラフィックデザイナーに依頼し、独自のスタイルでアイデアを実装したという。
きっと頭の中には絵が完成していたんだろうね。
それを形にしてもらうためには助けが必要だったということだろうから、やっぱりフリッツ・カーンの作品と断言しちゃって良いんだろうね。
人体をテーマにしているだけではなく、シュールレアリズムの作品としての鑑賞も可能!
左右の隅にアルファベットが描かれているところに注目してしまったよ。
教材として活用していたのかな? 

「人間の生活」の第5巻は1931年に出版された。
第1巻が1922年だというから約9年かけてシリーズが完結したことになるね。
これは5巻にある作品で、視覚に関する説明をしているという。
美女として誉れ高い第18王朝エジプト王妃、ネフェルティティの写真を観ているシーン。 
網膜について勉強するための資料のようで、 桿体と錐体の働きを図解しているとのこと。
人体についてほとんど知識がないSNAKEPIPEだけど、「人間の生活」を教科書にして勉強したら知識が身につきそうじゃない?(笑)

「Die Entfaltung der Insektenflügel (The unfolding of insect wings)」(昆虫の翅の展開)は1952年の作品だという。
パラシュートの広がり方と、脱皮後のトンボの羽を比較して見せているんだね。
昆虫についての説明に、落下傘部隊が登場するとは思わなかったよ。(笑)
教材としてだけではなく、ポスターにして飾りたくなる美しい作品だよね!

グロテスクになりがちな体内組織の図だけど、フリッツ・カーンのグラフィックではアート作品になっているよね。
まるでサイケデリック・アートみたいだもん。
2010年1月に記事を書いた「医学と芸術展 MEDICINE AND ART」 に出品されていなかったのか確認すると、残念ながら展示されていなかったみたい。
フリッツ・カーンの作品を観てまっさきに思い浮かんだのが、まさに医学とアートのミクスチャーだったんだけどね。 
フリッツ・カーンの著作を手に入れて、全ての挿絵を鑑賞したくなってしまう。
手に入れることができるのかな、と調べてみるとお手頃価格で販売されていることが判明!
すぐに購入してしまったよ。
到着が楽しみだ。(笑)