SNAKEPIPE MUSEUM #57 Kim Joon

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【2015年の作品、crash-white day】

SNAKEPIPE WROTE:

「ちょっとこれ見て」
ROCKHURRAHから示されたのは、極彩色の画像だった。
手足がバラバラになって配置されている。
猟奇趣味的な美しさに圧倒される。
これは一体誰の作品なんだろう?

調べてみると「Kim Joon」というアーティストの作品だと分かった。
漢字でどう書くのか分からなかったけれど、読み方は「キム・ジュン」で良いみたいだね。
ここからはキム・ジュンと書いていこう。
サイトに載っている経歴を紹介しようか。
1966年韓国ソウル生まれ。
弘益美術大学絵画学科美術学修士取得。
韓国の大学事情に詳しくないので検索してみると、この大学は韓国を代表する美大のようだね。
日本でいったら藝大みたいな感じかな?
大学卒業後、兵役に就く。
韓国は徴兵制があるため、21ヶ月以上軍隊に入隊することが義務とのこと。
日本の自衛隊とは性質が違うよね。

1994年、初の個展を開催。
この時点で28歳、ということは順当に大学に入り26歳で軍隊に入隊したんだね。
軍隊への入隊は好きな時期に設定できるのかな。
SNAKEPIPEの勝手な想像だけど、軍隊に入るなら強靭な肉体創造のために、なるべく若いうちのほうが良いように思うんだけどね?
20代後半だと訓練がキツくなりそうだし。(笑)
キム・ジュンは初個展以降、年に2,3回のペースでコンスタントに展覧会を開催しているみたい。
現在もソウル在住で、国立公州大学校にて教授職に就いているという。

韓国出身のアーティストについてブログで特集するのは、今回で2回目。
2012年に森美術館で鑑賞した「イ・ブル展~私からあなたへ、私たちだけに~」の感想にも、韓国人アーティストについて詳しくない、と書いているね。(笑)
韓国映画やドラマは観ているけれど、アートに関しては未だに未知の世界かも。
Kポップと呼ばれる音楽の世界でも人気がある韓国なので、きっとアートも盛んなんだろうね。

では初期の作品から紹介していこうか。
1995年の作品「tattoo-guys」。
タトゥーをほどこした男性の腕を切り取って並べたように見える。
これは「ミクストメディア」と「針」を使用した作品とされているよ。
この「ミクストメディア」という表記は、非常に曖昧なので、実際のところ何を材料にしているのか分からないんだよね。
もしかしたら本当に人の皮膚かもしれないわけだ。(笑)
それやっちゃったらシリアル・キラーだけど!
ヘルス・エンジェルスのようなバイク乗りが好みそうなタトゥーだよね。
ドアーズのジム・モリソンもあるよ!

キム・ジュンはタトゥーの意味を社会現象として考察しているという。
タトゥーや刺青は、最近ではファッション的な意味合いが多いけれど、古代から身分や所属などを示す個体識別の手段として用いられてきたもの。
犯罪者を表すための刺青や兵士が血液型を彫る場合もあったという。
禁止と執着の二元論とミッシェル・フーコーが「力と喜びのゲーム」と表現する「強制、威圧、強迫、制約」などを例に、キム・ジュンの刺青を語っている専門家の文章がサイトに載っていたよ。
言ってる意味よく解るよね?(笑)
SNAKEPIPEは、刺青と聞くと単純に「反社会性」という単語が浮かぶ。
日本では未だに刺青禁止の温泉施設が多いしね。
載せた画像は「hell」で1997年の作品ね。
この肉片(に見えるもの)がぎっしりと詰め込まれた作品は、猟奇としか言いようがないよ。
体のどの部位なのか想像するだけで怖いよね。

「kiss-mac」は2007年の作品。 
どういった経緯で、キム・ジュンがデジタル・アートに転向したのか不明なんだけど、ミクストメディアを使用した立体作品から8年後にはパソコンを使った制作を始めている。
顔面全体に刺青が描かれているので、キム・ジュンの考察は続いているんだね。
この2人の顔が、2019年に「つないでみる/ユーモアてん。」で鑑賞した「機械人間オルタ」に似て蝶!
そのため「機械人間が育む愛」のように見えてしまったSNAKEPIPEだよ。

鮮やかな色合いに目が覚めるよね!
「bird land-chrysler」 は2009年の作品だよ。
一体何人の女性が描かれているんだろうね?
左のバスト以外は全身刺青の裸体と赤い腕を見ていると、まるで江戸川乱歩の「盲獣」に出てくる触感芸術の部屋みたいじゃない?
ミクストメディアで肉片を詰め込んだ作品とは、まるで別物になっているよね。

2009年に発表した3Dアニメーションを載せてみたよ。
サイトには2017年の作品があって、本当はそっちのほうが「うねうね」した動きが不気味で良かったんだけどね。
国立公州大学校で教えているのがアニメーションだというので、これを専門にしているのかも?

「drunken-romanee conti」は2011年の作品で、この頃から磁器と人体をモチーフにしたデジタル・アートに取り組んでいるんだよね。
テーマは「記憶、欲望、若さ」だって。
3ds Maxという3次元コンピュータグラフィックス作成用のソフトを使用しているらしい。
ツヤツヤした質感と色合いの美しさで、人体がバラバラになっている残酷さを忘れてしまいそうだね。

「island-alligator」では、ついに刺青ではなくて、全身をワニ革で包んだ女性が登場してるね。
これも何人分の体なのか分からなくなる、人体パーツの組み合わせ。
SNAKEPIPEは、キム・ジュンの立体作品があったら観てみたいよ!
前に書いた人体磁器シリーズも、ワニ革の女体アイランドもね!

キム・ジュンのサイトでは、何故だか2017年までの作品しか載っていなくて、その後の消息もつかめなかった。
展覧会も2016年までの情報しかなかったし、現在はどんな活動をしているのか気になるところだね。
韓国人アーティスト情報も、調べていきたいと思う。 

STARS展 鑑賞

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【STARS展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

友人Mと一緒に出かけたのは、森美術館で開催されている「STARS展」である。
これは「多様な地域や世代から高い評価を得るアーティスト6名を選び、その活動の軌跡を初期作品と最新作をつなぐかたちで紹介する」という企画物。
世界的にも有名な日本人現代アーティストというと、当然のように知った名前が並んでいることは予想できる。
そんな「超大物アーティストが一堂に会する、壮観かつ圧巻の展覧会」を鑑賞できるのは、お得な感じだよね?(笑)

午前中に用事を済ませ、六本木でランチを食べる。
少し早い時間だったせいか、レストランが空いていたのは良かった。
お腹を満たしてから、森美術館のある53階へ。
「カレーパン」の袋を持った人を多く見かけて謎だった。
帰宅後調べてみると、どうやら嵐の大野智作品展が開催されていたんだね。
「智のカレーパン付きチケット」なんていうのもあったみたい。
そういうことだったのか、と納得したよ。(笑)
エレベーター待ちの人のほとんどは嵐目的だった、ということだね。

それでは展覧会の感想をまとめていこうか。
森美術館はいつも通り、作品の撮影オッケーだったよ。
やっぱりいいね、森美術館!(笑)

会場に入ると最初に登場したのは村上隆の作品だった。
「チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN」を背景にした「Ko²ちゃん(プロジェクト Ko²)」がお出迎え。
高さが180cmを超える、村上隆のフィギュアタイプを観るのは初めてのこと。
アニメや漫画などでは当たり前になっている女の子の、異常なまでの大きなバストや足の長さを強調したプロポーションを再現した作品である。

載せた画像は「マイ・ロンサム・カウボーイ」で、2008年にサザビーズのオークションで、約16億円で落札されたことが話題になった作品なんだよね。
2015年11月に鑑賞した「村上隆 五百羅漢図展」の感想にも同様の内容を書いているSNAKEPIPE。
実物を観ていないので感想は言えない、とも書いているね。
ついに今回、ご対面となったわけだ。(笑)
男女のキャラクターに共通して感じたのは「おちょくってる」のかな、ということ。
好き嫌いは別として、賛否両論の感想がある作品というだけで、現代アートとして成り立っているのかもしれない。
ジェフ・クーンズの「ラビット」なども同じ理由で高額になるのかな、と想像する。
SNAKEPIPE MUSEUMだったら何十億も払って、この作品買わないけどね。(笑)

続いては李禹煥(リ・ウファン)。
SNAKEPIPEは初めて聞く名前だよ。
1936年韓国慶尚南道生まれで、1956年に来日。
日本を拠点に活動しているアーティストだという。
石、木、紙、綿、鉄板、パラフィンといった〈もの〉を単体で、あるいは組み合わせて作品とする「もの派」を理論的に主導した人物とされている。
「もの派」というのは哲学や老荘思想などの影響を受けた「あるがままの世界との出会い」を目指す、作らないアートだったという。
確かに「関係項 ー 不協和音」はステンレスの棒と石が、床に固められた玉砂利に置かれている状態の作品だったからね。
なんとも静謐な空間で、日本庭園の一つである枯山水のイメージだったよ。
ステンレスという金属が使用されているところが、SNAKEPIPEの好み!

つい先月、草間彌生美術館に行ってきたばかりだけど、世界的に有名な日本人アーティストで外せないからね。
画像は、「女たちの群れは愛を待っているのに、男たちはいつも去っていってしまう」で2009年の作品である。
相変わらずタイトル長いなあ。(笑)
連なる横顔は、「わが永遠の魂」シリーズでよく見かけるモチーフだよね。
きっと何か意味があるんだろうな。
絵画以外に立体作品の展示もあり、こじんまりしていたけれど、草間彌生の過去と現在を知ることができる内容だったよ。

草間彌生ブースから次に向かうと、突然暗闇になる。
「スマートフォンを落とさないように」
と係員から注意があった。
目の前には暗い空間が広がり、その中に何やら光る物がある。
柵から身を乗り出すようにして確認すると、それらは数字だった。
なるほど!
だから「落とさないように」なんだね。(笑)
これは宮島達男の「時の海 ー 東北」プロジェクトだという。
LEDを水の中に設置し、3.11で被災した人々3000人に参加を呼びかける作品になるそうだ。
現在の参加者が719名なので、あなたも参加しませんか?という葉書が置かれていたよ。
遠くまで続いているように感じる暗い黒い海の中にある光は、海に沈んだ魂のように見える。
おごそかな気持ちになると同時に、とても美しい作品だなと思ったよ。

奈良美智の作品は今まで何度か目にしているけれど、無愛想な表情をした女の子に全く魅力を感じることがなかった。
どうして評価を受けているのか分からないアーティストなんだよね。
今回展示されていた中で、唯一「かわいい」と思ったのは、この作品。
「Lonely Moon / Voyage of the Moon」は金沢 21 世紀美術館の所蔵作品とのこと。
奈良美智の愛用品も展示されていたけれど、あまりピンとこなかったな。

最後は杉本博司だった。
杉本博司はコンセプトに基づき、写真を使用した表現で評価されているアーティストなんだよね。
SNAKEPIPEが一番最初に知ったのは「劇場」シリーズで、映画館で上映中の映画を撮影した作品だった。
映画上映時間と同じ露光時間を設定し、映画の終了でやっとシャッターを切り、一枚の写真を撮るんだよね。
長い露光時間では動いている物が写らないため、映画館の内部を撮影した写真にしか見えない。
時間を写す、というところがポイントなんだけど、難解だよね。(笑)
「Revolution 008 カリブ海、ユカタン」は、本来は横位置の写真を縦にして展示されている。
「水平線は地球の輪郭線の一部へ転換され、意識は大いなる宇宙へ放たれます」と森美術館の説明に書いてあるけど、どうだろう?
SNAKEPIPEは純粋にモノクロームのグラデーションが美しいと感じたよ。

30分ほどのビデオ作品「時間の庭のひとりごと」は、2017年に小田原に開館した「小田原文化財団 江之浦測候所」を紹介している。
この測候所に今まで2度足を運んでいる友人Mは、食い入るように映像を鑑賞していたよ。
「とても素敵な場所」と友人M のお墨付きなので、いつか行ってみたいね!(笑)

日本の現代アートを代表する面々の作品が一堂に会する展覧会は初めてかも。
名前と作品が一致し、ある程度の予備知識を持って鑑賞したため、新鮮な驚きが少なかったとも言えるかな。
感想をまとめるにあたってアーティストについて調べる機会を得た。
韓国生まれの李禹煥は日本に向かったけれど、他の面々は日本を飛び出し、海外に活動拠点を持ったり生活していることが分かった。
世界的に有名になるには、グローバルな視点が必要なんだなと改めて思ったよ。
1957年に渡米した草間彌生は先駆けということになるんだね。

次回の森美術館も楽しみにしていよう!(笑)

鴻池朋子 ちゅうがえり 鑑賞

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【会場入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSにとって特別な日が10月にある。
この日はお祝いをかねて、何かしらのイベントを計画するのが毎年恒例なんだよね。
「ここに行ってみない?」
とROCKHURRAHから提案されたのが、アーティゾン美術館の展覧会だった。
初めて聞く美術館だよ!

調べてみると2019年にブリヂストン美術館から、ART(アート)とHORIZON(ホライゾン)を合わせた造語であるアーティゾン美術館に改称したという。 
そもそもブリヂストン美術館に聞き覚えがないし、訪れたこともないんだよね。
もしかしたら今まで興味を引く展覧会がなかったのかもしれない。
アーティゾン美術館は日時指定の予約制で、WEB予約での受付と当日窓口での受付では料金が異なるという。
早い時間に予約し、ゆっくりランチを楽しむことにしようか。

当日は台風が関東地方を直撃か、という予想が外れた雨空だった。
それほど雨風は強くなかったので、展覧会の鑑賞には丁度良かったかもしれない。
日本橋から徒歩5分という案内通り、駅からそんなに遠くない場所に「BRIDGESTONE」の文字がガラス越しに見える。
そういえば高校時代は自転車通学をしていたSNAKEPIPE。
買ってもらったのは赤い車体に黒文字で「BRIDGESTONE」のロゴが入った自転車だったことを思い出す。
他の自転車より高い位置に展示され、お値段も高めだったけれど、一度の故障もなかった優秀さ!
さすがブリヂストンだな、と思ったっけ。(笑) 

ビルの建替えが2019年7月に完了し、2020年1月からオープンしたというアーティゾン美術館は、さすがに新築でピカピカ!
手指の消毒や体温測定に加え、入場は一人ずつ間隔を空けるなど、コロナ対策も行われている。
それにしても美術館のスタッフの方々が制服として着用しているのが、まるで作務衣のようで見慣れない感じ。
「こちらへ」
なんて手招きされると、美術館にいるというよりは旅館かと錯覚しちゃう。(笑)

今回は「3展覧会同時開催」として3フロアの展覧会を1枚のチケットで鑑賞できる企画だった。
「6Fからご鑑賞ください」
6F→5F→4Fと下っていくことになるんだね。
最初は鴻池朋子の「石橋財団コレクション×鴻池朋子 ちゅうがえり」。
展覧会名の前に「ジャム・セッション」という言葉が付いている。
どうやら石橋財団のアート・コレクションとのコラボ企画ということらしいけど、いまいち意味不明だよ。
それにしても鴻池朋子というアーティストは初めて聞くなあ。
少し調べてみようか。

1960年秋田県生まれ。
1985年東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業後、玩具、雑貨などのデザインに携わる。
現在もその延長で、アニメーション、絵本、絵画、彫刻、映像、歌、影絵、手芸、おとぎ話など、様々なメディアで作品を発表している。
場所や天候を巻き込んだ、屋外でのサイトスペシフィックな作品を各地で展開し、人間の文化の原型である狩猟採集の再考、芸術の根源的な問い直しを続けている。(オフィシャルサイトより)

1960年生まれといえば今年60歳、還暦?
とてもお若い見目姿に、うそでしょーと驚いてしまう。
芸大の日本画といえば、松井冬子の先輩にあたるんだね。
国内外で数多くの展覧会に参加しているようだけど、今まで一度も出会ったことがないみたい。
一体どんな作品なんだろう?
会場入口で撮影に関しての文章があった。
「撮影禁止」と表示されている以外はすべてオッケーとのこと!
アーティゾン美術館いいねー!
バシバシ撮らせてもらおう。(笑)

会場に入ってすぐ、目に飛び込んできたのは「皮トンビ」という大型作品だった。
横12m、高さ4mという大きさは、少し離れないと全体を鑑賞することが不可能だね。
遠目から、更に近付いて鑑賞してみる。
タイトル通り、レザーを革紐でつなぎ大きな一枚の皮にしている。
その上にアクリル絵の具とクレヨンで描いているという。
この作品は瀬戸内国際芸術祭 2019で発表されたらしい。
オフィシャルサイトに載っていたその時の様子をROCKHURRAHが観て、展覧会行きを決めたらしい。
面白そうだと感じた直感は正しかったね!
瀬戸内国際芸術祭で展示されていた森の中に静かに佇むトンビ、迫力あっただろうな。
その時に観たかったな、と思う。
レザーをキャンパスとして使用する作品を観たのは、初めてじゃないかな。

「竜巻」は2020年の作品だという。
作者の趣向なのか、タイトルが作品の近くに提示されてなかったため、タイトルを知ったのは帰宅後なんだよね。
鑑賞している時点では、何を表しているのか不明だった。
複数枚の謎の黒いラインが並んでいる様は、とても好みだよ。
これらの作品は、石版石を用い伝統的な方法で制作したリトグラフ版画とのこと。
「皮トンビ」とは違った雰囲気だったね。

「ドリームハンティンググランド」も大型作品だったよ。
シナベニヤに水彩で描かれているのは、原始の森のような不思議な情景だった。
その上に毛皮が貼り付けられているんだよね。
調べてみると「クマ、オオカミ、シカ、テン他」の毛皮を使っていたようだけど、全部は確認できなかった。
色合いが美しくて、存在感があったね!

「カレワラ叙事詩」はオオカミとヒグマの毛皮を使用した作品だった。 
上の作品にも毛皮を貼り付けていたけれど、鴻池朋子は毛皮やレザーを使用することが多いみたいだね。
キャンバスに毛皮を貼り付けたといえば白髪一雄を思い出すよ。
どうやら鴻池朋子は「害獣として駆除」された獣の毛皮を入手して、作品に取り入れているらしい。
大きなヒグマの毛皮を広げ、お腹の部分にオオカミをお腹合わせに合体させているんだね。
これもいわゆるキマイラか?
タイトルの「カレワラ」は、フィンランドの民族叙事詩のことみたいね。

会場の中央に設置されていた円形の展示は、襖絵と滑り台だった。
滑り台の意味は不明だったけれど、ROCKHURRAHと共に子供さながらに滑ってみたよ。(笑)
そして襖絵を鑑賞する。
石が貼り付けられたもの、地球が描かれたもの、竜巻が描かれたものなど、いくつかのパターンがあった。
鴻池朋子が芸大の日本画出身と聞くと、襖絵は納得しちゃうね。
いわゆる日本画とは違う襖絵といえば、爆撃の様子を描いた会田誠の「たまゆら(戦争画RETURNS)」があったね。
伝統的なイメージとは、かけ離れて新鮮に映るよ。

「影絵灯篭」は自転車の車輪を組み合わせた仕掛けに、紙でつくったモチーフを吊り下げ、ライトを当てグルグル回した作品なんだよね。
次々と形を変える影絵が面白い。
どの瞬間を捉えたら良いのか迷いながら、複数回撮影する。
人間から動物に移り変わっていくかのような奇妙さ。
また人間に戻り、そして動物になる無限ループ状態なのか?
奇妙なモチーフを影絵で見せたクリスチャン・ボルタンスキーの作品を思い出す。
ボルタンスキーの場合は、風で揺らぐことで影の大きさを変化させていたね。
影絵をモーターで回す鴻池朋子の作品、とても良かったよ!

「こっ、これはっ!」
思わず声を発してしまったSNAKEPIPE。
本物のオオカミの毛皮が天井から吊り下げられているんだもん。
2015年に横浜美術館で観た「蔡國強展」を彷彿させる作品だよね。
会場の入り口に「毛皮が肌に触れる作品があります」といった注意書きがあったのは、この作品のことだったのかと納得。
この「毛皮カーテン(SNAKEPIPE命名)」をくぐらないと、通路は通れないからね。
好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、インパクトが強かったよ。

順路を進んでいくと、まるで別の作家のような作品群が登場する。
これは様々なエピソードを、布で立体的に作った絵本なんだよね。
人から聞いた話をもとに、鴻池朋子が下絵を担当。
その下絵から話をした本人が手芸で立体絵本を制作したプロジェクトだという。
一つの絵にそれぞれ物語があるので、全部を読むことはできなかったよ。
どちらかというと他愛のない、子供時代のお話なのかな。
立体の絵本がとてもかわいらしくて、それまで観てきた作品とは全く違う雰囲気に驚く。
このシリーズは、とても女性的で一般受けしそうなんだよね。(笑)

例えば狩猟時代に男が狩りをして獲物を捕らえて帰ってくる。
獲物の皮を剥ぎ、肉を焼いて食べる。
家を守る女は毛皮で衣服を作り、肉を調理する。
人間が自然の一部として、循環の中に組み込まれ共存していた時代を、アートとして提示しているのが鴻池朋子なんじゃないか、という感想を持ったSNAKEPIPE。
そう考えると「害獣として駆除」された動物の毛皮の意味も違ってくるように思う。
何が一番の「害」なんだろうね?

鴻池朋子の作品に満足しながら5Fに降りる。
次のフロアは「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示 Cosmo-Eggs|宇宙の卵」の展示だった。
2019年に日本館のパビリオンで発表された作品の帰国展とのこと。
大きなスクリーンに映し出されるモノクロの風景映像に、音楽や効果音(?)が加わる。
会場の中央には、オレンジ色の丸いソファ(?)があり、座ることができた。
少しの間鑑賞していたけれど、あまり意味が分からなかったよ。
とても静かな空間だったね。

続いて4Fへ。
このフロアでは「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」が展示されていた。
ここでも撮影が許可されていて驚く。
モネやルノワールの作品までオッケーとは。
ROCKHURRAH RECORDSの好みとは違うけれど、石橋財団太っ腹だよねー!
載せた画像はカンディンスキー、1924年の「自らが輝く」。
 同じ並びにはジャコメッティ、ポロックと続き、石橋財団お金持ち!(笑)

石橋財団コレクションからスポットを当てて特集されていたのが、パウル・クレーだった。
パウル・クレーといえば、ROCKHURRAH RECORDSが大好きなドイツの美術と建築に関する総合的な教育を行った学校、バウハウスで教鞭を取った人物だよね! 
今年2020年7月に鑑賞した「開校100年 きたれ、バウハウス」の記事にも書いているよ。
ROCKHURRAHと「これが一番だね!」と声を揃えたのが、1929年の作品「羊飼い」だった。
その時期は丁度、バウハウスの時代ということになるんだね。 
クレーの作品については、そこまで詳しくなかったので、今回鑑賞することができて良かった!

初めて訪れたアーティゾン美術館の3つ展覧会はボリューム満点!
これでチケット代金が1,100円とは驚きだよ。
入場者数を制限していることもあり、ゆっくり鑑賞することができたのも良かった点だね。
素敵な企画があったら、また足を運びたい美術館だよ! 

オラファー・エリアソン ときに川は橋となる 鑑賞

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【東京都現代美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週、草間彌生美術館鑑賞についての記事を書いたよね。
実は草間彌生の後、長年来の友人Mと美術館のハシゴをしようと計画していたSNAKEPIPE。
ところが先週の記事にも書いたけれど、その日の湿度が非常に高く、少し歩いただけでも不快になってしまう天気だった。
そのため予定を変更して、美術館に行くのをとりやめたのである。

計画していたのは、東京都現代美術館で開催されているオラファー・エリアソン「ときに川は橋となる」と「おさなごころを、きみに」だった。
友人Mとは断念してしまった鑑賞計画だったけれど、せっかくなので行ってみたいと思ったSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHと出かけることにしたのである。

東京都現代美術館を訪れたのは2019年5月のこと。
百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして」は、3年のリニューアル後に鑑賞した展覧会だったね。
「リニューアルの意味がなく非常にガッカリした」と感想を書いているSNAKEPIPE。
あの時からすっかり足が遠のいてしまった東京都現代美術館。
今年に入ってからは自粛期間があったから余計だよね。
本来は2020年3月から6月だった開催期間が、6月から9月に変更された展覧会。
秋晴れの少し気温が高い平日に出かけたのである。

展覧会を鑑賞する時は、大抵の場合午前中に鑑賞を終えて、ランチを食べながら感想を述べ合うことが多い。
今回は午前中に外せない用事があったため、午後からの鑑賞になった。
久しぶりに行く東京都現代美術館は、コロナ対策のため正面入口以外は封鎖されていた。
入り口から見える風景に驚く。
広い通路に人が溢れかえっているじゃないの!
「チケット購入まで20分待ち」「入場まで20分待ち」などの看板が立てられている。
2019年に訪れた時には、どちらかというと空いていたように記憶しているけど?
なんでこんなに人気になっているのか不思議に思いながら、チケット売り場に並ぶ。

コロナ対策のため、間隔を空けて並ぶ必要があるのも原因だろうけど、並んでいる顔ぶれをさり気なく観察すると理由がなんとなく分かってきた。
高校生くらいから20代くらいの世代が多いので、SNSに写真をアップしたいがために来館しているのかもしれない。 
普段見かけるような「アート好き」やSNAKEPIPE命名の「国立系」 (年配の鑑賞者グループ)は、ほとんど見当たらない。
この様子で思い出すのは、2018年3月に森美術館で鑑賞した「レアンドロ・エルリッヒ展」 かな。
大雪の中出かけたのにもかかわらず、チケットを購入するまでに30分以上並ぶほどの大混雑、大人気ぶりだったからね。
あの時に近い印象があるよ。
ということは、今回も「参加型」っぽい作品があるのかも?

待ち時間を利用して、オラファー・エリアソンについて調べてみようか。

1967年 コペンハーゲン(デンマーク)生まれ
1989年~95年 デンマーク王立美術アカデミーで学ぶ
1995年 ベルリンに渡り、スタジオ・オラファー・エリアソンを設立
2003年 テート・モダン(ロンドン)にて《ウェザー・プロジェクト》を発表
2008年 滝のインスタレーション「ニューヨークシティ・ウォーターフォール」を発表
2009年〜14年 ベルリン芸術大学の教授を務める
2014年 建築家のセバスチャン・ベーマンと共同でスタジオ・アザー・スペーシズを設立
ウルフ賞芸術部門を受賞

科学とアートを融合させた作品により、世界的に有名なアーティストなんだね。
日本でも東京の原美術館で展覧会が開催されていたり、金沢21世紀美術館に作品が所蔵されているとのこと。
今回初めて名前を知ったSNAKEPIPEなんだけど。(笑)

ようやくチケット購入後、今度は入場するために並ぶ。
うーん、並ぶのが苦手なROCKHURRAH RECORDSにとっては、我慢の時間だよ。
どうしても観たかったわけじゃないから余計かな。(笑)
やっと入場できるようになったけれど、会場も人でごった返していた。
ほとんどの作品は撮影可能だったので、誰もがスマホを片手にしていたね。
当然SNAKEPIPEも撮ったよ!(笑)

円形に、なにやら黒い線が描かれている。
説明を読まないと意味が分からないよね?
「クリティカルゾーンの記憶」は、ドイツ→ポーランド→ロシア→中国→日本へと鉄道と船を使って作品を運んだ時の揺れや動きを記録した線描だという。
空輸しなかった理由は「CO2排出削減のため」とのこと。
エリアソンは、エコロジー関連にも注目しているアーティストなんだよね。
旅の記録をこうした形で表現するとは、なかなか難解ですな!(笑)

続いて「太陽の中心への探査」というインスタレーションを鑑賞する。
広い空間の真ん中にキラキラ光る物体が浮かんでいるよ。
少し鑑賞していると、その物体がゆっくり回転していることが分かる。
せっかくなので動画にしてみようか。

「キレイ!」というだけの作品ではなくて、エリアソンの意図があるんだよね。
動きはソーラーエネルギーによるもの、そして行きていくために不可欠な太陽とこの世界を成り立たせている構造や法則を表しているらしい。
これまた難解じゃのう。(笑)

「あなたに今起きていること、起きたこと、これから起きること」は、何もない空間に光が投射されている作品なんだよね。
黄色、緑色、青色のハロゲンランプにより、部屋に入った人の影が壁に映る。
その影の「うつろい」を楽しむ作品ということなんだよね。
こうした「参加型」の作品が人気の秘密のようで、夢中でシャッターを切る人続出!
この装置が仕掛けなんだけど、見た瞬間「え?これだけ?」と思ってしまうのはSNAKEPIPEだけかな。
エリアソンの言葉によると「あなたが動いているときだけ物事が見える」とのこと。
これは「蝶の効果」みたいな感じなのかな。
ホドロフスキーがあやつるタロットカードでも、カードを引くという行為自体が運命を変える意味があると読んだ記憶が。
恐らくそういうことを言いたいんだろうな、と解釈してみたけどどうだろう?(笑)

続いては「人間を超えたレゾネーター」という作品ね。
これまた観ただけではさっぱり意味不明なんだけど、まあいいか。(笑)
どうやら灯台の光の仕組みを取り入れた作品だという。
観た瞬間にカルト映画「リキッド・スカイ」や「ホーリー・マウンテン」を思い出したSNAKEPIPE。
なんとなくサイケデリックな印象だったもので。(笑)

次の作品も光を使っているんだよね。
「おそれてる?」は赤、黄、緑のエフェクターガラスに光を当てている。
モーターによって照射位置が変化しているのか、様々な色が出現するんだよね。
これってまるで「光の三原色」の立体版だよ!
3色が重なると「何かが壁に現れる」と説明されていたけど、この画像が正解なのかどうかは不明だね。(笑)

展覧会のタイトルである「ときに川は橋となる」は、シャーレに張られた水に反射した様々な光の形を見せる作品だったよ。
これもまた動画にしてみようか。

「世界との新しい向き合い方を提示する」のが目的なんだって?

アイスランド系デンマーク人のエリアソンにとって、アイスランドは生まれ故郷になるんだね。
子供の頃の夏はアイスランドで過ごしていたらしいので、慣れ親しんだ土地ということか。
アイスランドといえば、氷河。
地球温暖化に伴い、氷河が溶けているニュースは聞いている。
溶けていく様子を1999年から撮影しているシリーズが「溶ける氷河のシリーズ」。
子供の頃に見た風景が変化していくのを目の当たりにするのは、辛いだろうね。
こうした経験がエコロジーとアートを融合させた作品制作に反映されるんだろうな。
アイスランドと聞いて真っ先に思い出したのは、ウィル・フェレルの「ユーロヴィジョン歌合戦」だけど、やっぱりあの映画でもアイスランド愛にあふれていたもんね。(笑)

環境問題をアートによって提起する、という作品といえば2015年8月に鑑賞した「ここはだれの場所?」のヨーガン・レールや2019年11月に記事にした「陸の海ごみ」を思い出す。
作品として鑑賞することで、問題を知り、自分ができることは何かを考えることが必要だと思っている。
テーマについては理解できるけれど、説明文を読まないと分からないアートというのは少々苦手!
エリアソンの代表作と言われる「ウェザー・プロジェクト」を観たかったな。
きっと文章や言葉がなくても、圧倒的なイメージだったと思うからね。
こうした感想も観たから言えるので、行って良かった展覧会だよ。