SNAKEPIPE MUSEUM #54 Michelle Avery Konczyk

【制作中の様子が分かる映像】

SNAKEPIPE WROTE:

数日前、就寝のため横になった時、SNAKEPIPEを襲ったのは猛烈な「めまい」だった。
体が180度回転するような感覚に悲鳴を上げてしまう。
SNAKEPIPEの身に一体何が起こったのか?
靴紐を結ぶためや目薬をさすためなど、頭の位置を変えることで「めまい」が起こることが判明。
早速耳鼻科に行き、検査してもらうことにする。
視界を完全に塞ぐゴーグルをあてがわれ、椅子の背もたれが少しずつ倒されていく。
「うぎゃあ〜!目が回る〜!気持ち悪い〜!」
あまり耳鼻科で叫ぶ患者はいないのではないだろうか。 
SNAKEPIPEは、ぎゃーぎゃーうるさかったけどね。(笑)
そして診断結果は「良性発作性頭位めまい症」とのこと。
簡単に言うと「耳石の移動」が原因らしい。
デスクワークなどで体が一定の状態に固定され、首(頭部)を回す運動をしていないのが良くないんだとか。
最近増えている病気とのことなので、皆様もお気を付けくだされ!
処方された薬に加え、「エプリー法」という耳石を戻すための運動を並行して行うのが一般的な治療法なんだって。
完全な治癒には少し時間がかかりそうだけど、SNAKEPIPEは頑張ります!(笑)
そしてそんな病にも負けず、今週もブログを書いているよ!

前置きが長くなったけれど、今週は「SNAKEPIPE MUSEUM」をお届けしよう。
今回紹介するのは、自らを「Watercolorist」(水彩画家)と呼ぶ「Michelle Avery Konczyk」だよ!
毎度ながら人名をカタカナ表記するのが難しいんだけどね。
ミッシェル・エイブリィ・コンチックで良いのかな。
コンチックという名前は東欧系なのかもしれないけれど、現在ミッシェルはペンシルベニア州ピッツバーグにお住まいのようだよ。
どうやらミッシェルは独学で水彩画をマスターしたらしい。
そのためなのか、アーティストにある「◯◯美術大学卒業」などの経歴が、検索しても出てこないんだよね。
何年生まれで年齢はいくつなのか、なども不明な状態。
唯一出ているのがトップに載せた制作中の動画だけなので、勘弁してね!
それでは早速作品を観ていこうか。

ミッシェルの作品は、シュールレアリスムということになるのかな。
「暗闇のない光、醜さなしの美しさはあり得ない」
この言葉を心に刻み、制作をしているというミッシェル。
この作品のタイトルである「And They Drip Red」は、直訳すると「そして彼女たちは赤く滴る」。
蓮の葉のように見える植物の上に、ゴロゴロと少女の首が転がっている。
花のように咲くはずだったのに、両頬から血を流し、固く目を閉じている。
よく観察すると、2人の少女が描かれているみたい。
もしかしたら、金髪の少女はミッシェル自身かもしれないな。
眠っているのか、それとも?
中央に佇んでいる首なしの人物には手が3本あり、1人には多く、2人分には足りない数なんだよね。
2人の少女に一体何があったんだろう。

切り取られた少女の頭部。
あらぬ方向を見つめている目には、生命の光が感じられないね。
タイトルは「Asphyxiate」、訳すと「窒息」だって。
口からはみ出しているのは、人間の指だよね?
どんな心象を描いているのか想像するのが難しいよ。
不気味だけど惹かれてしまう、ミッシェルの思惑通りかな。(笑)
作品の縁取りがアール・ヌーヴォー風で、より一層不気味さを引き立てているように感じる。

この作品もまたアール・ヌーヴォー風に縁取っているよね。
「Until You’re Nothing」は2019年の作品だという。
直訳すると「あなたがなくなるまで」だよ。
正面に座り、こちらを挑戦的に見つめるのは、恐らくミッシェル本人だろうね。
そしてその手に持つのもミッシェル自身の首。
目から出ているのは一体何だろう。
周りの植物にも目が付いているんだよね。
タイトルをヒントにすると、ミッシェルと「あなた」との間に何か嫌なことがあって、消そうとしても消せない記憶として残っているわよ、という執念を描いているのではないかと想像する。
いつまでも恨んでいるわ、あなたが消え去るまでね!
という宣言をしているのかもしれないね。
怖いなあ、ミッシェル。(笑)
ちなみに「Until You’re Nothing」は$350、日本円で約4万円で購入可能だよ!

「The Gatekeepers」は2019年の作品で、訳すと「門番たち」だね。
どうやら心に深い闇を抱えているように見えるミッシェル。
きっとタイトルにある「門」とは閉ざしている心、なんだろうね。
まるでホラー映画のワンシーンのように見える、森の様子はとても好きだよ。
この作品も購入可能で、$975、日本円で約10万5000円ほど。
縁がユニークにカットされていて、雰囲気も良いので、SNAKEPIPE MUSEUMで購入してみようか。(笑)

この写実的な作品を観てよ!
これが水彩画とは驚いちゃうよね。
2019年の作品、「Until Nothing」ってまたもや「なくなるまで」ってタイトルだけどさ。
絵だけ観てると、そこまでネガティブな感情を引き起こさないように思うけど、どうだろう。
女性にとって手というのは「年齢が出る部分」として認識されることも多いけどね。
そうして観てみると、この手の持ち主は決して若くないかもしれない。
ミッシェルの経歴が不明のため、この手がミッシェル本人かどうかも分からないんだよね。
ただ、この絵からは「今後生きていくための決意」のような、前向きな姿勢を感じるSNAKEPIPEだよ!
お値段は$1,000、日本円で約10万7000円だって。
この絵は手元に置いて、じっくり観てみたいな!

女流アーティストというのは、ネガティブな感情をエネルギーにして創作することが多いよね。
フリーダ・カーロ、(結婚前の)松井冬子、塩田千春など、ブログで取り上げたことがある女性たちは、皆どこか闇を抱えて生きているように見える。
今回特集したミッシェル・エイブリィ・コンチックにも同様の傾向が感じられて、ちょっと心配になってしまう。
トップに載せた制作中のミッシェルが、にこやかにしているので安心したよ。
更に年齢を経て、ミッシェルがどんな作品を描いていくのか。
モチーフの変化にも注目だね!

河口洋一郎 生命のインテリジェンス 鑑賞

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【いつも通りgggの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称:ggg)で3月19日まで開催されていた「河口洋一郎 生命のインテリジェンス THE INTELLIGENCE OF LIFE」を鑑賞した。 
gggでの企画展は興味深いものが多いので、なるべく出かけることにしているROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今回は会期終了間際に出かけることになってしまった。

実をいうと、河口洋一郎というアーティストの名前を聞いたのは今回が初めてなんだよね。
近くまで行くから、ちょっと寄ってみようかという軽い気持ちで出かけた展覧会。
およそ3ヶ月おきに足を運んでいる会場なので、撮影可能なことは知っていたけれど、念の為受付にいた女性に声をかける。
「あのー、撮影しても大丈夫ですか?」
「あー、写真大丈夫ですよ、どうぞ撮ってくださいっ!」
質問をしたSNAKEPIPEの後方から、男性が答えるじゃないの!
とっさに振り返り、お礼を言ったSNAKEPIPEの目に飛び込んできたのは、画像の男性。
えっ、まさか河口洋一郎氏ご本人?(笑)

鑑賞しているフリをしながら、その男性に注目するSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
どうやら知人(?)と思われる女性と記念撮影をしたり、作品の説明をしているんだよね。
ついそちらに目がいってしまう。
「ゆっくり観ていってくださいね!近くの店でウチワもらえるから、それももらっていってね」
とわざわざSNAKEPIPEに話しかけてくれるじゃないの。
しかも女性との記念撮影はすべてピースサインを出し、ここは照明が暗いからこっちにしよう、などと撮影に指示を出すなどサービス精神旺盛!(笑) 

軽い気持ちで寄っただけだったのに、アーティスト本人に遭遇するなんてラッキーだよね!
本当は一緒に写真をお願いしたい気持ちはあったけれど、最初に書いたように初めて聞いたアーティストだからね。
前から作品知ってて、大ファンなんです!だったら良かったんだけど。
では河口洋一郎氏について、今から調べてみようか。 

1952年 鹿児島県種子島に生まれ
1976年 九州芸術工科大学画像設計学科を卒業
1978年 東京教育大学大学院を修了
1979年〜 SIGGRAPHに参加
1982年  「グロースモデル(The GROWTH Model)」を発表しCG関係者から絶賛される
1992年〜 筑波大学芸術学系の助教授を務める
1995年 ベネチアビエンナーレ日本館代表
1998年〜 東京大学大学院工学系研究科・工学部人工物工学センター教授を務める
2000年〜 東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授を務める
2010年 ACM Siggraph’10でディスティングイッシュト・アーティスト・アワード受賞
2013年 芸術選奨文部科学大臣賞、春の紫綬褒章を受章
2018年 フランスBNN Prix D’Honneur栄誉賞
Siggraph Academy殿堂入りを果たす

年表に書ききれないほどの国際的な賞を多数受賞されている、すごいお方だったんだよね!
この年表だけ見ていたら、眉間にシワを寄せた堅苦しい人物を想像してしまいそうだけど、ご本人はいたって気さくで親しみやすい雰囲気だったから驚いちゃうね。

コンピュータグラフィックによるアートの世界的先駆者、河口洋一郎。
生物の形の発生・成長・進化をプログラミングし、数理的シミュレートをすることで、5億年後のはるか未来を生きる芸術生命体を創り続けてきました。
半世紀にわたるこの取り組みは、永遠のように長い時間の中で、環境に適応し命を繋いできた生命へのリスペクトに溢れています。

gggのHPより展覧会概要を転記させてもらったよ。
プログラミングされた進化の過程をアートとして表現する、ってどういうことなんだろう?

作品を鑑賞することにしようか。
会場には、河口洋一郎氏ご本人とその知人女性、もう一人秘書(?)のような若い女性がいるだけだったので、ゆっくり鑑賞することができたよ。
壁には恐らく色鉛筆で描かれた絵画が展示され、前に鎮座ましますのは???
足部分はカニのようだけど、頭部はリボンみたいなんだよね。
不思議な生物だけど、5億年後にはいるんだろうね、こういうの。
現在のどんな生物がこの形に進化を遂げるのか、会場にいた河口洋一郎氏本人に質問すれば良かったか?

海の生物をモチーフにした未来の生命体と思われる作品群。
これはオウム貝かな?
他にも「宇宙蟹」や「宇宙魚」が色鮮やかに表現されていた。
ということは、これは「宇宙貝」だね。(笑)
会場の壁にも生命体が描かれていて、とても気に入ったよ!
あの壁紙売ってたら欲しいなあ。(笑) 

地下では主にCGの映像作品が展示されていた。 
恐らく最も初期の頃の作品がこれ。
1975年にコンピューターってあったの?
その時代は、河口洋一郎氏がまだ九州芸術工科大学に在学中のはず。
大学にコンピューターがあったのかもしれないね?
インベーダーゲームが1978年とのことなので、それよりも前ということになる。
一番最初の作品から7年後に、国際的に評価を受けることになる作品を創作できるってすごいよね。

評価を受けた作品である「Growth:Tendril 1981」。
5億年前の古代生物であるハルキゲニアが動き回っているような、流動的で想像力を掻き立てられる映像作品だった。
途方もない時間の流れだよね。
大胆な色使いに目を奪われる。
この作品を今から38年前の1982年に観たらびっくりするだろうね!

「Growth:Tendril」をバックに、立体作品を撮影してみたよ。
なめらかな曲線が非常に美しい作品は、他のカラフルな作品の中で特異に映り、SNAKEPIPEはとても気に入ってしまった。
タイトルを撮影したはずなのに、完全にピンぼけで読めず、、、。
残念ながら画像検索しても詳細不明だよ。
シンプルなのに躍動感があるんだよね。
これ、SNAKEPIPE MUSEUMのコレクションにしたいな。(笑)

「人工生命都市」と題された作品。
コンピュータによって生まれた人工生命が、自律的自己増殖を続けている様子だという。
深宇宙の重金属をイメージしているという色合いは、インダストリアル好きには垂涎物!
サイエンスとアートの融合というと、2019年12月に記事を書いた「未来と芸術展」が近いんだろうね。
展覧会の最後に展示されていた「データモノリス」について、「観るというより流れを体感するアート」と感想を書いたSNAKEPIPE。
河口洋一郎氏の映像作品にも同様の感想を言いたいね!(笑)

立体作品が展覧会入り口付近に展示されていた。
不気味でかわいい雰囲気の3体。
一番奥は、まるでウルトラシリーズに登場したカネゴン! 
真ん中はケロヨン?もしくはケロちゃんか?
一番手前はタコなのか?
河口洋一郎氏には、ポップなタイプの作品もあるんだね。

会場を出て、隣の建物に向かう。
gggには何度も足を運んでいるのに、この場所は初めて!
メゾン・デ・ミュゼ・デュ・モンド、通称MMMというらしい。 
世界のミュージアム・グッズを扱っているショップなんだね。
ショップは3フロアあり、3階で河口洋一郎氏関連商品の展示がされていた。
レジの方に声をかけると、快くウチワを手渡してくれたよ!
今年の夏は、このウチワ使って涼むことにしよう。
河口洋一郎氏とのご対面や、作品を思い出しながらね!(笑)

白髪一雄 a retrospective展 鑑賞

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【白髪一雄展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WTOTE: 

2019年5月に書いた「百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして 鑑賞」 の中で、2020年1月に開催予定の白髪一雄について触れた文章がある。
ついにその時が来たのだ!
とても楽しみにしていた展覧会の鑑賞をする、その時が!(急に倒置法?)

会場になっているのは東京オペラシティアートギャラリー。 
このギャラリーは2019年6月に「トム・サックス ティーセレモニー」で訪れて以来になるのかな。
ROCKHURRAHは初めての訪問だね!
東京オペラシティアートギャラリーでは、1月11日より白髪一雄展を開催している。

白髪の没後10年以上を経て開催する本展は、東京で初の本格的な個展として、初期から晩年までの絵画約90点をはじめ、実験的な立体作品や伝説的パフォーマンスの映像、ドローイングや資料も加え、総数約130点で作家の活動の全容に迫ります。

展覧会HPから抜粋した文章を載せてみたよ。
それにしても一文が長いね。(笑)
没後10年以上って書いてあるけど、白髪一雄はいつ亡くなったのかな。
年表を調べてみようか。 

1924年 兵庫県尼崎市に生まれる
1942年 京都市立絵画専門学校(現・京都市立芸術大学)日本画科に入学
1948年 京都市立美術専門学校(1945年4月改称)を卒業し洋画に転向
1954年 初めて足で描く
1955年 吉原治良率いる「具体美術協会」(具体)の会員となる
1958年 批評家で「アンフォルメル芸術」の提唱者ミシェル・タピエと、絵画を欧州に送る契約を結ぶ
1971年 比叡山延暦寺で得度、天台宗の僧侶となる
1999年 文部大臣から地域文化功労者を表彰
2008年 敗血症のため尼崎市にて死去

この年表の中で、一番驚いたのは1971年の僧侶になる、の部分かな。
荒々しい絵画を描く人が僧侶になるというのが、SNAKEPIPEにはイメージし辛いんだよね。
そして洋画に転向して10年で、批評家の目に留まっている点にも注目だよ。
50年代に、どれだけの日本人アーティストが海外で評価されていたのかは分からないけれど、決して多くはないだろうね。
生前は全く評価されず、亡くなってから評価されるアーティストの話はよく聞くけれど、バイタリティ溢れ脂が乗っている活きが良い時に、ドンピシャのタイミングで評価を受けるのは、素晴らしいことだと思うよ。
そんな白髪一雄の個展、非常に楽しみだよね!(笑)

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが会場に向かったのは、展覧会開催からおよそ3週間後のこと。
白髪一雄の展覧会が注目されている、という情報をROCKHURRAHが仕入れていたので、混雑を避けるために少し間を置いていたんだよね。
その甲斐あってか(?)選んだ日にちが良かったのか、会場は驚くほど空いていて、全くストレスなく作品を鑑賞することができた。
ストレスを感じたことは、撮影できる作品が制限されていたこと。
何を基準に許可がされたり、されなかったりするのか不明だけど、もう少し緩めてくれても良いのになあと思ってしまった。
今回は自分で撮影できた作品に加え、気になった作品についても画像と共に紹介していくよ!

展覧会は8つの章で構成されていたようだけど、章のキャプションや説明文が一切展示されていない。
HPに簡単な説明はあるけれど、こんなにあっさりした展覧会は観たことないかも。
SNAKEPIPEは不親切に感じたけれど、このギャラリーの方針なのかな?
最初の章は初期の作品が展示されていて、キュビズムの影響を受けたものや、モチーフを決めて描かれた油絵などを鑑賞することができる。
初期作品の中で気になったのは「文B」(1954年)かな。
まるでゲルハルト・リヒターの絵画を部分的に切り取ったように見えるんだよね。
夜の水辺を連想させる静謐さに加え、風や波のような動きも表現されているのかもしれない。

初期作品のエリアを抜けると、現れるのは「天異星赤髪鬼」(1959年)。
来た来た〜!(笑)
このどす黒い赤色が厚みを持って盛り上がったり、血飛沫のようにうねっている様は迫力満点!
日本人離れした大胆さが素晴らしいんだよね。
これは確かにフランス人批評家ミシェル・タピエが気に入るのも納得しちゃうよ。

「地暴星喪門神」(1961年)も上の作品同様、「水滸伝豪傑シリーズ」とされている。
どうやらタピエの依頼で制作されたらしいんだけど、108点の作品を区別するために「水滸伝」の登場人物の名前を作品名にしたという。
だから長い漢字が連なるタイトルになっているんだね。(笑)
「地暴星喪門神」は赤、黒、緑、紫という4色が使用されている。
間の取り方が日本画的だし、SNAKEPIPEには絵画というよりは書道的な構成美を感じるよ。
驚くほどの躍動感、観ていると心がウキウキしちゃうよね!

白髪一雄が足で描く「フット・ペインティング」という技法を編み出しているためか、床に直置きする展示方法も採られていた。
「貫流」(1973年)は、まるで大きな滝が流れ落ちているかのような動きを感じる作品。
白から黒へのグラデーションは、スキージという長いヘラを使って描いていたらしい。
アクション・ペインティングの様々な可能性を探っていたことが分かるね。
それにしても床置の展示方法については、意図は理解するけれど、鑑賞には不向きじゃないかな?

白髪一雄が密教に傾倒し、天台宗の僧侶になったのは1971年。
「密呪」はそれから4年後、1975年の作品である。
実は白髪一雄の経歴については何の知識も持たずに参上した展覧会だったけれど、この作品を観た時に「曼荼羅っぽいね」とROCKHURRAHと語り合っていたんだよね。
この作品を鑑賞したエリアでは、呼応する作品がシンメトリーになって展示されていた。
「密呪」と対になっていたのは「あびらうんけん」だったかな?
胎蔵界と金剛界という2つを表現した作品のようだったよ。
2枚は別の美術館に所蔵されているようなので、同時に鑑賞できたのはラッキーだったね!(笑)

2008年11月東京都現代美術館で鑑賞した、森山大道とミゲル・リオ=ブランコの写真展について「大道・ブランコ・コーヒー」というブログ記事を書いた。
「ダイドー・ブレンド・コーヒー」をもじった、失笑もののタイトルは良しとして。(笑)
そのブログの中に白髪一雄についての記述があるんだよね。 
常設展を観た後の感想を以下のように述べている。 

SNAKEPIPEが非常に気になったのは「白髪一雄」という画家。
前にも観ていたのかもしれないけれど、今回観た中では一番迫力を感じた好みの画家だ。
日本でのアクションペインティング創始者とは!
猪の毛皮の上に赤黒い絵の具を塗りたくった絵が素敵だった。
もっとたくさんの作品を観てみたいな!

昔から好みが変わっていないと自覚していたけれど、12年前に書いた記事に自分でびっくり!
はい、12年経ってその願いは叶ったよ。(笑)
そしてやっぱり今回の展覧会でも「ピカイチ!」と思ったのは、猪の毛皮の上に赤黒い絵の具を塗りたくった「猪狩壱」だった。
目にした瞬間に「うわっ!」と驚く作品だからね。
かなり猟奇的なので、好き嫌いが分かれるかもしれないけど。
この作品は東京都現代美術館に所蔵されているのを知って安心したよ。
海外に出ていたら、なかなかお目にかかれないもんね。
ありがとう!東京都現代美術館!(笑)

白髪一雄が実際、どのように作品を制作していたのかを紹介するビデオ上映もあったんだよね。
同じものではないけれど、似たタイプの動画がYouTubeにあったので載せておこうか。
これはフランスで制作された「具体美術協会」を紹介するビデオのようなので、白髪一雄以外のメンバーも映っているのかな?

まるで曲芸師のように、ロープにつかまり、キャンバス上をつるつる滑る白髪一雄!
会場でビデオを観ながら、思わず笑ってしまったSNAKEPIPE。(笑)
制作する時は、元画家だった白髪一雄の奥さんがサポートしていたというから驚いてしまう。
富士子夫人は着物姿だったり、白髪一雄と同じように黒い全身タイツのような姿で、絵の具を渡したりする。
作品は夫婦の共同作業によって生まれていたことを知り、50年代の日本も進んでいたなあと感心してしまったよ。

姓が白髪なので、SNAKEPIPEは勝手に「よかいち」の莫山先生みたいな風貌だと思っていたんだよね。(笑) 
わざわざ画像載せなくても良いんだけど。
他の連想としては、江戸川乱歩の「白髪鬼」 かな。
恐らく珍名さんになるんじゃないかと思ったけど、調べてみると岡山県や兵庫県など全国で約900人はいるらしいね。

白髪一雄ご本人は、まるで自衛官を演じた「野性の証明」の時の高倉健かといった雰囲気で、アーティストには見えないよ。
猟友会にも入っていたようで、銃の手入れをしている写真もあったし。
恐らく「猪狩壱」の猪も、ご本人が仕留めたんじゃないかと予想する。
調べてみると、どうやら猪を仕留めることができず、買ってきた皮を使用した作品だという。
猪の皮、買えたんだ?
真相が分かってスッキリ!(笑)

白髪一雄の作品は海外でも大人気のようで、2014年の記事によればサザビーズのオークションで5億4,590万円で落札されたという。
これが5億円超えの「激動する赤」(部分 1969年)。
赤、白、黒、黄色という4色を大胆に使用したインパクトのある作品だよね。
展示されたのは大阪万博のみだというので、ずっと大事に保存されていたのかな。
一体誰が購入したんだろう。
気になるところだよね。(笑)

今回の白髪一雄展はボリュームがあり、大満足の展覧会だった。
人が少なかったのも、ゆっくり鑑賞できて良かったよ。
残念だったのは、展覧会の図録が後日発送になってしまったこと。
3月初旬になるというので、予約してきたんだよね。
図録の到着を楽しみにしていよう。

いつか白髪一雄のオマージュ作品にチャレンジしたいと思ってしまうのは、SNAKEPIPEだけではないだろう。
足を絵の具まみれにして制作するのってどんなだろう?
ぎっくり腰に注意が必要だけどね!(笑)
 

SNAKEPIPE MUSEUM #53 Caitlin McCormack

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【この作品を見ると横溝正史の小説「悪霊島」を連想してしまう】

SNAKEPIPE WROTE:

朝の出勤前に時刻と天気予報を確認するために、テレビをつけている。
何かしらせわしなく動いているため、テレビの音を聞いている、というのが正確な言い方になるのかな。
この時間だけは民放チャンネルなんだよね。(笑)
そのためCMが入り、宣伝文句がなんとなく聞こえている状態である。
「はじめてのレース編み」という雑誌の宣伝も耳に入ったことを覚えている。
最近、レース編みやってる人いるのかなあ。
昔は電話機のカバーか応接室のガラステーブルの上に敷いたり、ドアノブのカバーとして大人気だったっけ。
などとすっかり昭和の気分に浸ってしまった。
あらっ、ウチでは今でもレースよ!というご家庭もあると思うけど、これはSNAKEPIPEのイメージだからね。(笑) 

そんなプチブル(死語!)のレース信仰をぶち壊す作品を発見したよ。
どうやら2016年にヴァニラ画廊でも作品を鑑賞することができたようで、日本でも全く知名度がないアーティストではないみたい。
今頃知ったSNAKEPIPEが遅いのかもしれないね。(笑)
早速アーティストを紹介していこう!

アーティストの名前はCaitlin McCormack、ケイトリン・マコーマックの表記で良いのかな。
そういえばマコーミックって昔、スパイス・メーカーあったよねえ。
最近聞かないなあ、と思って調べてみると、ライオンと合弁後ミツカンに販売委託、現在はユウキ食品に事業譲渡している関係で、名前がユウキMCに変わってるんだって。
どうりで聞かないと思ったよ。
って関係ない話だったので、元に戻ろう。(笑)

ケイトリン・マコーマックは1988年のアメリカ生まれ、ということは今年32歳かな。
2010年にフィラデルフィア芸術大学でイラストレーションの学士号取得。
当初はイラストレーターを目指していたようだけど、路線変更したみたいだね。
フィラデルフィアを拠点に活動している繊維アーティスト、とのこと。
繊維アーティスト、なんて呼び方初めて聞いたよ。(笑)
大学卒業後より個展を開催したり、グループ展にも参加しているみたい。
あまり詳しい情報がなかったので、これだけで許してね!
では早速作品を紹介していこうか。

マコーマックは綿素材の糸を使った、いわゆるレース編みで作品制作を行っているという。
左の作品からレース編みは想像し辛いけど、編んでることは分かるよね。
そのレース編みを接着剤で固めているらしい。
骨の標本を形にしているようだけど、お花と骨というなんとも不思議な雰囲気だよ。
「Granny」は2019年の作品で、サイズは101.6 × 71.1 cmというからかなり大きめだよね。
こんなタペストリーが部屋にあったら、印象がガラリと変わりそう。
作品は販売されていて、$3,500とのこと。
日本円で約38万5000円。 
そこまで手が出せない金額じゃないね。
どれどれ、他の作品も購入候補で考えていこうか。(笑) 

「Storm of Uncles」が気に入ってたんだけど、調べてみたら売り切れだった!
2015年の作品で、大きさが94 × 64.1 × 7.6 cmと書いてあるよ。 
奥行きが7.6cmあるということは、かなり盛り上がった厚みのある作品なのかもしれないね?
直訳すると「おじさん達の嵐」って意味不明だけど、トカゲの骨格のような謎の生物は擬人化されてるってことなのかな。
マコーマックは「時間の経過や自らの視覚的偏見による記憶の歪みを修正し、再構築することが目標」なんだとか。
分かるような分からないような言葉だよね?
例えばマコーマックが子供の頃に、親戚のおじさんが突如暴れだした時の記憶を基に作品になっている、というようなことなのか。
そうして見ると、荒れ狂ったおじさんの姿に見えなくもないよね。(笑)

「A Thing I Said (Fuck You, You Motherfucking Fuck)」という、Fから始まる放送禁止用語連発のタイトルがついている2019年の作品はいかが?
よく見ると、作品に文字がレース編みされてるじゃないの!
ちゃんと「fuck you」って書いてあるよ。(笑)
34.3 × 26.7 × 8.9 cmという小さめの作品なので、家に飾るには丁度良さそう。 
マコーマックは、それぞれのパーツをかぎ針編みしてから、何度も何度も秘密の接着剤で固めていき、最終的に硬化したパーツを縫い合わせているという。
その「秘密の接着剤」というのが非常に気になるよね。(笑)
そしてこの作品は、一体どんな状況だったのかも想像しちゃうよ。
お値段は$2,500、日本円で約27万5000円!
自宅でじっくり鑑賞しながら、ストーリーを考えるのも楽しそうだね。

アンティークの時計ケースに入った「Boy Now」という作品。
そのまま直訳すると「少年は今」なんだけどね。(笑)
2段構えなので、非常に単純に考えると上が過去の少年で、下が現在なのか。
大きくなって背中が丸まった?
開いてた口が塞がった?
快活だった子供が、現在は物思いにふける思慮深い少年に変化した、と見るのは安直過ぎるかな。(笑)
マコーマックの作品はほとんどがモノクロームなので、額やケースが変わると印象が違ってくるんだよね。
アンティーク時計のケースも、ドーム状のガラスケースも、見え方が違って良いね。
「Boy Now」は69.9 × 39.4 × 10.2 cmの大きさで、お値段は$1,700、日本円で約18万7000円だって。
東京駅近くのKITTE内にある「インターメディアテク」に、そっと置かれていても誰も気付かないかもしれないよ。
博物館に展示されている標本みたい、って意味なんだけどね。(笑)

「Chicken」は、今まで観てきた「謎の生物」とは様子が違うよね。
ほとんど人間なのに、タイトルでは「にわとり」だって。
外国では「チキン」というと、「臆病者」や「腰抜け」と言った、かなり相手をバカにしたような単語としても用いられるからね。
作品では心臓部分が透けているから、余計にそう見えるのかもしれない。
SNAKEPIPEは、この作品はマコーマック自身、つまりは自画像かなと勝手に想像する。
腕は曲がり、手先も使えない状態。
八方塞がりで出口が見えないような、陰鬱な精神状態を表しているように見えるよ。
ROCKHURRAHの解釈では、頭と心臓部分が欠落していることから、思考と運動機能が停止している様子を表現してるのではないか、という。
そしてそんな状態を人間ではなく、「チキン」と呼んでいるのではないか、と推測するらしい。
なるほど、それも説得力あるなあ!(笑)
26.7 × 34.3 × 8.9 cmという大きさで、販売価格は$1,200、日本円で約13万2000円とのこと。
マコーマックの心象を伝えているような作品、他にも紹介してみようか。

「See You All in There」は、マコーマックに珍しく黒糸を使っているんだよね。
本に絡みつくように糸が増殖し、ついには塔が立ってしまったのか。
直訳すると「これらの中に全てがある」 というタイトル、本はメタファーだろうね。
SNAKEPIPEの勝手な想像を続けると、本は記憶や人生、つまりはその人の魂を表現しているのではないか。
糸を使って心象を作品にしているので、2019年9月に鑑賞した「塩田千春展:魂がふるえる」を思い出す。
マコーマックも塩田千春と同じように、苦しみに囚われているんだろうか。
トラウマや苦しみを作品にする女性アーティストって多いんだね。
35.6 × 27.9 × 20.3 cmというサイズの「See You All in There」は$1,800、日本円で約19万8000円だって。

どの作品もアート作品としてはお手頃価格じゃないかな。
ちなみにトップに載せた作品「Morgellons」が$10,000、日本円で100万を超すんだよね。
サイズも横幅が162cmという大型作品。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!(笑)

レース編みという伝統的な手法を用いながら、アート作品を作るマコーマック。
ヨーロッパでは家庭的な要素があり、日本では先にも書いたように昭和には「ちょっとお上品」の象徴だったレースが不気味なモチーフに変身しているところがポイントかな。
どれほどまでに細かい作業なのか、そして「秘密の接着剤」の正体を知るためにも、実物をじっくり間近で鑑賞してみたいね!