存在感抜群!作家女優たち

【お線香の束を手にする岩井志麻子と傷を確認している内田春菊】

SNAKEPIPE WROTE:

何年前のことだっただろうか。
何かお薦めの本ない?と聞いたSNAKEPIPEに「こういうの好きなんじゃない?」とROCKHURRAHが手渡してくれたのが岩井志麻子の「ぼっけえ、きょうてえ」だった。
ヘンなタイトル、と思いながら読み進めるとその毒の強さに圧倒されてしまった。
いわゆる禁忌の部分に触れた、おどろおどろしい猛毒小説だったのである。
しかも全編岡山弁だけで綴られている。
そのおどろおどろが岡山弁になると更に効果倍増、怖い、怖い!
4つの短編からなる「ぼっけえ、きょうてえ」は強烈な印象を残し、それ以降の岩井志麻子の小説をほとんど全て読んでしまったほどファンになったSNAKEPIPE。
残念なのは「ぼっけえ、きょうてえ」よりも強い毒を持った小説にはお目にかかれなかったことかな。

その「ぼっけえ、きょうてえ」が映画になっている、と知ったのは随分前のことだ。
調べてみると2005年とのことなので、もう5年も前になる。
アメリカ映画で日本では公開の予定もDVD発売の予定も未定、なんてことだったので非常に悔しかったように記憶している。
「映画は鑑賞不可能」と勝手に思い込んでしまったまま時は流れ、簡単に手に入ることが分かったのはつい先日のことだ。

「マスターズ・オブ・ホラー」(原題:Masters of Horror)というアメリカのテレビ用オムニバスシリーズで、世界の13人のホラー映画監督の中に唯一日本人として参加した三池崇史監督。
ホラー好きのROCKHURRAHにはよだれタラタラの監督が揃い踏み!
そんな世界のホラー界の巨匠に並んで選出されるとはすごいね、三池監督!
そして三池監督の作品が「インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ〜」(原題:Imprint)。
あの岩井志麻子の原作をどこまで映像化できるのか、期待しながら鑑賞したのである。

映画が始まりすぐに日本人に混じって見慣れぬアメリカ人が登場。
これはきっとアメリカ映画のため、そして全編英語のためか。
原作には出てこない人物のためちょっと戸惑いを覚える。
そして映画開始後5分もしないうちに女の土左衛門が出てくる。
このあたりの雰囲気は非常に原作の「おどろおどろ」を上手く表現してるな。
そんな死を感じる川を通って遊郭に行くあたりも志麻子風。
遊郭の様子はちょっと過剰なまでの「和テイスト」を盛り込んでいるため、外国人の目から見るとよりエキゾチックに映ることだろう。
ロケ地はほとんど日本国内だったようだけれど、異国情緒溢れた雰囲気が出ていたのはやっぱり色彩とセリフが英語だったからだろうか。
赤の色がよく表現されていたように思う。

映画全体の中で一番インパクトが強かったと思うのは拷問シーン。
原作にも書いてあったけれど、女が拷問したほうが惨たらしいんだって?
女郎が女郎を拷問する。
みんな赤い髪に赤い着物を着て、同じ色の女を皆で責める。
その拷問執行人代表として登場するのが、なんと原作者の岩井志麻子ご本人!
初めはお線香の小さい火を肌に当て、次には15本くらいの束のお線香になり、ついには針で拷問をする。
その一つ一つの道具を愛しむような目つきでゆっくり見てから、
「ごめんなさいね、お線香ちゃんが言うこときかなくて。」
なんて感じのちょっと困った笑みを浮かべながら、でも嬉しそうに拷問していく志麻子女史。
ハマリ役過ぎ!(笑)
工藤夕貴にも根岸季衣にも負けてない存在感!
これだけでもかなりの見ものだと思う。

アメリカ人の登場以外はかなり原作に忠実に作られた映画だった。
特別大幅に脚色された部分はなく、その意味では安心して観られた。
ただ、それが逆にアメリカでは問題だったようで。
放映禁止になってしまったとは残念である。
昔の日本の風習と海外の宗教では事情が全く違ってくるので、それを理解してもらうことは難しいのかもしれないね。

今まで三池監督の他の作品はあまり観たことがないように思う。
そのため前述の「世界のホラー映画監督13人」に選出されるほどの実力とは知らなかった。
調べてみると三池監督ってものすごい量産型!
1年に何本も撮影、漫画や小説が原作の様々なジャンルを手がけているようだ。
先日たまたま観たのが「ビジターQ(2001年)」で、これも三池監督の作品だったのである。

実験映画のような雰囲気で始まる「ビジターQ」は映像が粗く、音声も良く聞き取れないようなホームビデオ感覚にちょっとびっくりする。
父親と娘、母親と息子と出演者が揃い、ある一家の物語なんだなとわかってくる。
そこに不思議なくらい当たり前のように家に上がりこんでくる第3者、ビジターの登場である。
その他数人の出演者はいるけれど、主要な人物は家族4人とビジターだけ。
ほとんどが家かその周りの場所だけを使った映画で、その意味ではこじんまりしている。

この映画でのインパクトはなんといっても母親役の内田春菊だろう。
えっ、内田春菊って女優だったっけ?
80年代に一世を風靡した女流漫画家として記憶していたSNAKEPIPEが勘違いするのも仕方なかろう。(笑)
小説も書いてるし、女優もやっていたとは驚きね。
しかもこの映画の中では堂々とヌードまで披露!
調べてみると当時40歳くらいだったのかな。
とても勇気のある体当たり演技だったよ!

映画はジャンルでいうとカルトになるのかもしれないね。
かなりB級度が感じられ、ストーリーに飛躍があり、常識では考えられないような事象が発生する。
映画の印象としては以前このブログで紹介したことがある「逆噴射家族」のような雰囲気か。
SNAKEPIPEの勝手な解釈ではテーマは「大きな母の愛」なんだけどね。(笑)
プロセスはどうあれ、結果オーライだったからハッピーエンドということで良しとしようか?(笑)

三池監督にはまだまだカルト的な映画やホラー映画があるようなので、観てみたいと思う。
機会があったらまとめてみようかな。

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