映画の殿 第37号 ベルヴィル・ランデブー

20191208 top
【ベルヴィル・ランデブーの登場人物をコラージュ】

SNAKEPIPE WROTE:

2019年1月以来、久しぶりに更新するカテゴリー「映画の殿」!
古い映画を鑑賞し、感想を記録するのが目的なんだよね。
備忘録の意味もある。
だってほら、書いておかないと忘れちゃうから。(笑)

長年来の友人Mから「この映画知ってる?」と連絡を受けたSNAKEPIPE。
友人Mは海外のインスタグラムから様々な情報を得ているようで、その中に気になる画像があったそうだ。 
ネットで検索してみるとフランスのアニメ映画「ベルヴィル・ランデブー(原題:Les Triplettes de Belleville 2003年)」だと判明した。
早速DVDを借りて観ることにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今回は「ベルヴィル・ランデブー」について感想をまとめてみよう!
※ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください

まずはトレイラーを載せようか。

簡単なあらすじをシネマトゥデイから転用させて頂こう。

内気で孤独な少年シャンピオンは自転車レーサーに憧れていた。
やがて、成長して世界最高峰の自転車レース、ツール・ド・フランスの出場選手となるまでに至った彼は、晴れのレースの最中、謎のマフィアに誘拐されてしまう。

少年シャンピオン。
全く説明はされないけれど、どうやら両親は亡くなっているようだ。
おばあちゃんと2人暮らしのようで、大事に育てられている。
まるまる太っているので、あまり外では遊んでいないのかもしれない。
おばあちゃんから子犬をプレゼントされ、ずっと一緒にいるんだよね。
シャンピオンが一番喜んだのは、自転車をプレゼントされた時。
両親の写真に自転車が写っていたのが、理由なのかもしれないね?

シャンピオンの相棒である、犬のブルーノ。
子犬の状態から、月日が流れて登場した時には、こんなに大きなサイズに大変身!
家の近所を走る電車に向かって吠えるのが日課、というバカ犬。(笑)
ただし時計が読めるようで、時間に正確なところはエライのかな。
映画の後半では大活躍しているので、主人思いの良い犬ともいえる。
ブルーノは、パルム・ドールならぬパルム・ドッグ賞を受賞しているんだよね!

シャンピオンと共に暮らすおばあちゃん。
おばあちゃんに名前はなかったのかなあ。
ほとんどセリフがない映画の中で、おばあちゃんは表情すら、ほとんど変えない。
老眼鏡を直したり、編み物したり、シャンピオンの世話をしているシーンも、すべて淡々を行っている。
シャンピオンを可愛がる気持ちが一番のようで、愛する孫のためなら危険を顧みず行動に出る。
こんなおばあちゃんがいたら心強いだろうね!

映画の冒頭で登場するシンガー、トリプレット。
スウィング・ジャズは軽快で、気分がウキウキしてくるよ!
このサントラは、ブノワ・シャレのオリジナルだという。
音楽がより一層映画を効果的にしていて、素晴らしかったよ。
トリプレットの歌声に合わせて、有名人がカメオ出演しているのも面白い演出だよね。

「あっ!ジャンゴ!」 
と声を出したROCKHURRAH。
昔からファンだったというジャンゴ・ラインハルトがアニメになっているんだよね。
まだパンク少年になる前に、兄からギター教材代わりに勧められ、練習したけれどジャンゴのようにできるわけもなく(笑)今に至っているそうで。
これを教材にしようとする発想が、最初から違っているように感じてしまうけどね?
ジャンゴの曲を聴かせてもらうと、ギターは運指がなめらかで、とても表現力が豊かだなと驚いた。 
やっぱり教材にはならないね。(笑)

時は流れ、成長したシャンピオンとおばあちゃん。
ありゃ?シャンピオンの様子が子供時代とはかけ離れているよ!
どうやら自転車にのめりこみ、ツール・ド・フランスの選手になるために猛特訓を積んでいるようなんだよね。
ストイックな生活を送り、すべて自転車のために生きている。
そんなシャンピオンを支えるおばあちゃん。
おばあちゃんの風貌は全然変わってないんだね。(笑)

ついに憧れのツール・ド・フランスに出場するシャンピオン。
おばあちゃんとブルーノが何故、救護車の屋根にいるのかは不明だけど、応援にかけつけているんだよね。
ツール・ド・フランスについて詳しくないSNAKEPIPEなので、少し調べてみよう。

毎年7月にフランスおよび周辺国を舞台にして行われる自転車ロードレース。
23日間の日程で行われるステージレースで距離にして3300km前後、高低差2000m以上という起伏に富んだコースを走り抜く。
賞金総額は2015年の場合で約203万ユーロ、うち総合優勝者に45万ユーロとなっている。

23日間、自転車で走り続けるレースとは!
FIFAワールドカップ、オリンピックと並んで、世界3大スポーツイベントとされるだけあって、街をあげてのお祭り騒ぎになるのも納得。
上の画像を観ても、観客が大騒ぎしてるもんね! 
ツール・ド・フランスといえば、この曲を忘れちゃならないよ。
クラフトワークの「ツール・ド・フランス」お聴きください!

レースの最中、シャンピオンはマフィアに誘拐されてしまう。
元々セリフがほとんどない映画だけど、特にシャンピオンは何を考えているのか分かりづらかった。
誘拐された後も、拉致の境遇に対して不満を持っているようには見えなくて、黙々と指示に従っていたのが不思議だよ。
それでもおばあちゃんにとっては、大事な愛しい孫なんだよね。

シャンピオンに比べて、活発で人間味のあるおばあちゃん。
ブルーノをお供に、シャンピオン探しに出かけるんだもん、元気だよね!
あてもなく、お金もなく、ブルーノの嗅覚だけが頼りなのに。
おばあちゃんは迷うことなく、今やるべきこと、できることを判断し行動していく。
この姿勢は、すごいよね!
全く年齢を感じさせないんだもん。
「女だからダメ」「年寄りだからできない」なんて言い訳を一切しない、強さに感心するよ!

そんなおばあちゃんに救いの手を差し伸べる女性3人がいる。
3人の老婆は美しい歌声を聴かせるじゃないの!
まさか、この3人は?
やっぱり冒頭のモノクローム・シーンに出ていたトリプレットだ!(笑)
いつの間にか年を取り、見かけはすっかり老人だけど、この3人におばあちゃんが加わった老婆4人チームは、なかなかどうして!
マフィアも手こずるほどなんだよね。
「ベルヴィル・ランデブー」の原題は「ベルヴィルのトリプレット」なので、主人公はトリプレットだということがわかる。
3人の老婆は、いつでも人生を楽しんでいるように見えるんだよね。

身近にある物を使ってショーを行うトリプレット。
新聞紙、冷蔵庫、掃除機を楽器代わりにするとは!
まるで大道芸人のようだけど、ROCKHURRAHに聞くとそんなスタイルのバンドは実際にいるという。
フランスのLes VRPは日用品を使用して演奏しているとのこと。
トリプレットの演奏法は、そこまで意外ではないのかもしれない。
この音楽もとてもカッコ良かったよ!

「ベルヴィル・ランデブー」の面白さに「デフォルメ」があるんだけど、マフィア達の表現がその最たるものかもしれない。
全員同じ体型と顔をしていて、背中部分が四角いんだよね。
まるで将棋の駒が歩いているようで、動きが面白かった。
ボスだけは丸い顔をしていて、背も低い。
全く威厳を感じないボスだったけれど、子分達は絶対服従しているんだよね。
そんなマフィア達を翻弄するトリプレットとおばあちゃんの4人組に拍手を贈ること間違いなし!
いくつもの映画賞を獲得したのがよく分かる、鑑賞できて良かった映画だよ。
情報をくれた友人Mに感謝だね! 

老人が活躍する映画について、2017年5月に「映画の殿 第24号 ハッスル老人」という記事を書いているSNAKEPIPE。
ハッスル自体が死語だし、老人と組み合わせた謎の熟語については良しとして。(笑)
老人Z(1991年)」は大友克洋が原作・脚本・メカデザインを手がけ、キャラクターデザインを江口寿史が担当したアニメ映画で、ブログ記事に少しだけ書いているんだよね。
「ベルヴィル・ランデブー」ではトリプレットとおばあちゃんが肉弾戦でマフィアに対抗しているけれど、「老人Z」に登場する老人達はハッキングによる頭脳戦を繰り広げる。
ハッキングできるレベルの老人が3人も同室にいる看護病棟なんて、通常はあり得ないけどね。(笑)
この老人達の活躍により物語が進行して行くところが面白い!
久しぶりに鑑賞してみて、一番懐かしく感じたのは江口寿史のキャラクターかな?

老人が主人公の映画は、弱者であるはずという思い込みが裏切られ、逆転劇が展開する様が痛快なんだろうね。
平均寿命が延びてシニアと呼ばれる人口が増えているので、将来的にはもっと老人が主役の物語が増えていくのかもしれない。

「ベルヴィル・ランデブー」の監督であるシルヴァン・ショメは、元々バンド・デシネの作家だったんだね。
アニメーション作家としての作品が他にもあるようなので、是非鑑賞してみたいと思う。

未来と芸術展 鑑賞

【未来と芸術展の紹介映像】

SNAKEPIPE WROTE:

「面白そうだから、行ってみようよ」
長年来の友人Mから誘われたのは、森美術館で2019年11月19日から開催されている「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命――人は明日どう生きるのか」である。
森美術館の企画はいつも注目しているので、SNAKEPIPEも気になっていたんだよね。
2011年12月に鑑賞した「メタボリズムの未来都市展」を彷彿させる内容なのかなと予想したけど、実際はどうだろう。
開催日の次の日、友人Mと待ち合わせたのである。

チケット購入に30分以上並んだことがある森美術館だけれど、この日はすんなり!
受付の女性が「今日はシティビューがキレイですよ」と教えてくれる。
森美術館のチケットは展覧会鑑賞に加えて、ビルの52階にある屋内展望台に入場できるセットなんだよね。
いつもはシティビューに興味を示さなかったけれど、お勧めに従い行ってみることにする。
森ビルを中心とした東京を一望することができるんだよね。
東京タワーも新国立競技場も、くっきりキレイに見えるよ!
展望台をぐるりと歩いていくと、あっ!
富士山だっ!(笑)
上に雲がかかっているけれど、山頂付近に雪がかかった様子もよく分かるね。
受付の方に教えてもらわなかったら、この景色とのご対面はなかったかも。
受付の方に感謝だね!

展望を満喫した後、いよいよ「未来と芸術展」へ。
展覧会の紹介をHPより一部抜粋させて頂こう。

本展は、「都市の新たな可能性」、「ネオ・メタボリズム建築へ」、「ライフスタイルとデザインの革新」、「身体の拡張と倫理」、「変容する社会と人間」の5つのセクションで構成し、100点を超えるプロジェクトや作品を紹介します。
AI、バイオ技術、ロボット工学、AR(拡張現実)など最先端のテクノロジーとその影響を受けて生まれたアート、デザイン、建築を通して、近未来の都市、環境問題からライフスタイル、そして社会や人間のあり方をみなさんと一緒に考える展覧会です。

アートだけではなくて、様々な分野に範囲を広げているようだね。
一体どんな展示がされているんだろう?
会場に入ると、以前観た「メタボリズム建築」に似た雰囲気の建築物の模型や写真が展示されている。

そんな建築物の中でひときわ目を引いたのがこれ!
パリを拠点にしているXTUアーキテクツの設計による「エックス・クラウド・シティ」。
まるで現代アートのオブジェみたいなんだけど、れっきとした建築の提案なんだよね。
大気汚染により、地表に住めなくなった時、雲の上の大気圏内に居住空間を作るというもの。
3Dプリンターでモジュールを作り組み立てるらしい。
垂れ下がっている植物の浄化作用を利用して環境負荷を軽減させているという。
モジュールの構造がどうなっているのか、よく分からなかったけど、実用化されたら非常にユニークだよね!
どうやって大気圏にとどまらせるのかも疑問だよ。
アイディア、ということで良いのかな?

我らが「まこっちゃん」こと会田誠も出品していたよ。
 「NEO出島」は2018年2月に「会田誠展 GROUND NO PLAN」で鑑賞している作品だったね。
霞が関や国会議事堂の上空に都市空間を作る、というもの。
会田誠は実現可能な計画を提案するというより、批判的な精神から作品を作っているようだよ。
説明文を読んで、やっと意味を理解したSNAKEPIPEなので、昨年観た時にはイマイチ、ピンとこなかったんだけどね。(笑) 

この作品だけ、作者名と作品名を記録するのを忘れていたSNAKEPIPE。
森美術館は、ほとんどの作品の撮影許可を出しているんだけど、WEBにアップする際の注意があるんだよね。
それは必ず作者名と作品名、更にライセンスに関する明記も必要なんだけど。
巨大なスクリーンに映し出される都市の様子は、色が変化していき、観ていて飽きない。
都市と色の関係については、よく分からなかったけれど美しかったよ!
もう一度行くとしたら、必ず作者名等記録しておかないとね。(笑)

ハッセル・スタジオ+EOSの作品「NASA 3Dプリンター製 住居コンペ案」は、まるでSF映画を観ているような気分になった。
火星に移住するために住居を建設する、というアイディアなんだよね。
3Dプリンターって、そんなに強度があるの?
この映像を観ていると、すぐにでも実現しそうだよ。
動画は1分なら撮影可能とのことなので、載せてみたよ!
ん?1秒過ぎてるかな?(笑)

圧倒的な美しさを誇っていたのが、この作品。
ミハエル・ハンスマイヤーの「ムカルナスの変異」ね。
観た瞬間から「すごい!」と息を呑むこと間違いなし!(笑)
円形の中に入ると、様々な長さのパイプが連なっているんだよね。
そのパイプに光が当たって、得も言われぬ美しさにうっとりするSNAKEPIPE。
シルバー色でピカピカ光る物が大好きだからね!(笑)
ハンスマイヤーはアルゴリズムアーキテクチャ技術などを使ってコンピューテーショナル・デザインを行っているという。
この作品もイスラム建築で使用される幾何学模様を参照し、コンピューターで作図した後、ロボットアームがパイプを切り組み合わせたという。
人間が出る場面は「ここからアイディアを持ってこよう」と考える部分だけ?
アートという概念を覆す制作方法だよ。
さすがに「未来と芸術展」だよね!

「未来と芸術展」のフライヤーにもなっている作品。
エコ・ロジック・スタジオがオーストリアのインスブルック大学と共同で開発したバイオ技術を使った彫刻「H.O.R.T.U.S.XL アスタキサンチンg」とのこと。
この作品にも3Dプリンターが使用され、ブロックには微細藻類ミドリムシが埋め込まれているという。
ミドリムシのせいだったのか、元々のブロックだったのかは分からないけれど、この作品は独特のにおいを放っていたんだよね。
食用になることはわかっているんだけど、あのにおいは好き嫌い分かれるだろうな。
本当はもう少しじっくり観たかったけど仕方ない。

とても美しいエイミー・カールの「インターナル・コレクション」シリーズ。
繊細なカットのドレスは、人体の組織である「神経系」や「靭帯と腱」を3D CADでデザインしたものだという。
これはもう「人体の不思議展」の世界じゃない!
あの展覧会で「神経だけ」や「血管だけ」の標本があったことを思い出す。
エイミー・カールのHPでは、このドレスを身に纏っているモデルさんがいる。
身体の内部にある組織と同じ形状の物を身に着けるということは、皮膚がサンドイッチされてるってことだよね。
なんともシュールな世界だなあ!(笑)
エイミー・カールは他にも3Dプリンターで制作した心臓の作品も展示していたね。

「未来と芸術展」での一番の話題は、もしかしたらこの作品だったのかもしれない。
この作品を手がけたのがディムート・シュトレーベ。
印象派の画家として有名なファン・ゴッホの左耳を再現したものなんだよね。
ゴッホが1888年に自ら左耳を切り落としていることは、ご存知だろうか。
失われた左耳を、ゴッホの親族のDNAを基にバイオ技術で再現したものだという。
もうそんなことができる時代になっているのね!
この作品にはマイクが付いていて「話しかけてください」と書いてある。
外国人の女性が「Hello!」とマイクに向かって話すと、ゴッホの耳が漬け込まれている液体がパイプを通して動きだしたんだよね!
SNAKEPIPEも友人Mも試してみたけれど、残念ながら耳には届かなかったようで、動きがなかったよ。

展覧会の最後に展示されていたのは巨大な作品だった。
実験音楽のような音と共に映像が流れていく。
不規則で目まぐるしい映像に酔いそうになる。
これは一体何だろう?
世界最古の遺跡とされるトルコのギョベクリ・テペ
紀元前1万年前の遺跡に残された図像などをAI解析して、抽象的な映像に変換したという。
なんとも壮大な発想じゃない!
1万年以上前の人類の記憶を、最新技術を駆使して現代に蘇らせるとは。
そしてタイトルのモノリスは、キューブリック監督の作品「2001年宇宙の旅(原題:2001: A Space Odyssey 1968年)」に登場する物体のこと。
わざわざ説明するまでもないかな?(笑)
今から50年以上も前に公開された映画の影響力が、未だに続いていることにも驚いてしまうね。
「データモノリス」と名付けられた作品は、観るというより流れを体感するアートになるのかもしれない。
ずっとその場に留まっていたい欲望に駆られたSNAKEPIPEだったよ。

他にも面白い作品はたくさんあって、かなりボリュームのある展覧会だった。
人間とAIの境界について考えさせられる展示が興味深かったな。
どこまでをアートと呼び、作者は誰になるのか。
友人Mも大満足だったとのこと。
ROCKHURRAHと一緒に、もう一度訪れようかな!(笑)