誰がCOVERやねん3+

20120826_top【SNAKEPIPEが捏造してくれた文字通りのカヴァー・ガールズ】

ROCKHURRAH WROTE:

今回はROCKHURRAHのブログでは初となるコラボ企画を急に思いついたので、それについて書いてみよう。
世の中にいくらでも存在するので苦しい時のネタとしては便利なカヴァー・ヴァージョン企画である「誰がCOVERやねん」と、女性ミュージシャンばかりを執拗につけ狙った「Naonシャッフル」との豪華コラボレーションだ。
つまり、女性ミュージシャンの歌うカヴァー・ヴァージョン特集というわけ。
「思いついた」とか言う割には陳腐。 どこにでもありそう?
まあ取り上げるミュージシャンがひと味違うから、誰もが想像するような記事にはならないはず。

検索とかでこのページに辿り着いて、そもそもROCKHURRAHが何なのかもわからない方々にとっては意味不明だろうが、そんな企画も過去に何度かやっておったとです。
いつまでも暑いし頭もボケてるし、有無を言わさず始めようか。

Family Fodder / Sunday Girl

ファミリー・フォーダーは1979年にデビューした英国のバンドなんだが、音楽雑誌などであまり取り上げられる事がなかったので、実は書いてるROCKHURRAHもよくわからん謎のバンドだ。
大体Fodderをフォーダーと発音するらしいって事も今、調べて初めて知ったよ(←バカ)。
ROCKHURRAHは81年に出た彼らの「Greatest Hits(というほどヒットしていたとは思えないが)」を持っていた。
アクサク・マブールで有名なベルギーのクラムド・ディスクから出ていたなあ。
このレーベルはきれいでそそられるジャケットが多かった割には個人的に素通りしてきたバンドが多く、どちらかというとROCKHURRAHとは疎遠なレーベルだった。同じベルギーのクレプスキュールとかもやや苦手だったもんな。
このアルバムも割とカラフルなジャケットで目立っていた事と、ミュージシャンのクレジットにディス・ヒートやスリッツのメンバーなどが混じっていたから、予備知識もなく興味本位で買ったに過ぎない。しかしジャケット買いが好みにピッタンコの音楽で大当たりだったのは嬉しかった。

曲によって全然構成が違うので傾向も読めないんだが、かつてのプログレッシブ・ロックの一流派、カンタベリー・ミュージックを思わせるような部分もあり、時にちょっとアヴァンギャルド、時にメロディアスでポップな部分もある。
どちらかというとロックを解体してチープに再構成したような曲が多く、確かに初期ニュー・ウェイブはこういう路線が多かったなあ。女性ヴォーカルの素人っぽい歌い方も時代に合ってていい感じ。
おっと、話が逸れてしまったがファミリー・フォーダーはこのクラムド・ディスクからはたまたま出しただけのようで、英国のフレッシュ・レーベルを中心に活動していた模様。

さて、そんな彼らがカヴァーしたのがブロンディの1979年の大ヒット曲「Sunday Girl」だ。
ある程度の年齢の人ならば説明するまでもないね。
ブロンディも知らないっていう若い世代でもわかるように(そういう世代の人が読んで興味深いブログとも思えんが)一応書いておくが、ニュー・ウェイブ初期に圧倒的人気があった女性ヴォーカルのバンドだ。「ハート・オブ・グラス」や「コール・ミー」などの代表曲は世代を超えて色々なBGMとしても使われる事が多い。
ヴォーカルのデボラ(デビー)・ハリーはデヴィッド・クローネンバーグやジョン・ウォーターズ映画に俳優としても出演しているね。
ファミリー・フォーダーはそのものズバリ「Debbie Harry」などという名曲を残しているが、よほど好きだったのかね?
しかし数十行も書いた後でふと思ったんだが、このカヴァーは果たして女性ヴォーカルなのか?全体的に演奏も声も歪ませているから実は不明なんだよね。女性ヴォーカルがいるバンドだからてっきりそうだという先入観があったので、違ってたらバカなヤツだとROCKHURRAHを笑うが良い(←偉そう)。

Screamin’ Sirens / Your Good Girl’s Gonna Go Bad

ウェスタンな格好したモヒカン女がいるガールズ・バンドだったから、てっきりイギリスだろうと思ってたがアメリカだったんだね。
このバンドも同時代にはあまり情報もなかったのでずっと不明のままだが、写真を見る限りではかなり派手で威勢のいい、強そうな雰囲気。

70年代に生まれたパンクがカントリー&ウェスタンやロカビリー、ブルーグラスなどと結びついてカウパンクと呼ばれるようになった。
同じような結びつきのミクスチャー・ミュージックとしてサイコビリー(の一部分)やラスティック・ストンプがあるが、両者の厳密な違いはよくわからん。
本職カントリーやブルーグラスに匹敵する演奏力を持ったバンドもいれば、カントリー・テイストを借用しただけのインチキ音楽もあるが、どちらかと言うと自分では本格派じゃない方をカウパンクと呼んでいた。
個人的にはイカサマっぽい紛い物の方が好きなROCKHURRAHはこの手の音楽が大好きで、当ブログ「荒野の7ビリー」という記事でも特集してるほど。

スクリーミン・サイレンズもそういったカウパンクの部類に入るが、全部がそういう曲調ではないようだ。
後に本格派のカントリー世界で大成するロージー・フローレスやバングルス、ブラッド・オン・ザ・サドルで活躍したアネット Zilinskas(読めん)なども在籍していた模様で、このジャンルとしてはたぶん実力派揃い。
Miiko Watanabeなる日本人らしきベーシストもいたようだ。
このバンドを知ったのはサイコビリー系のオムニバス・アルバム「Revenge Of The Killer Pussies」だったかな?
メテオス、グアナバッツ、キング・カート、Blubbery Hellbelliesといった定番バンドに混じってエイリアン・セックス・フィーンド、ジャズ・ブッチャー、ブリリアント・コーナーズといった別ジャンルのバンドまで入っていて支離滅裂、良き時代だったなあ。

この曲はアメリカの有名なカントリー・シンガーであるタミー・ウィネットのヒット曲が元ネタなんだけど、それを感じさせないくらいにピッタリとスクリーミン・サイレンズ調にアレンジされている。
威勢がよくてやや下品、女数人集まればかしましいの公式通り、にぎやかで元気な音楽性は本当に素晴らしくて気に入っていたもんだ。
マイナーなバンドでYouTubeは一応あったものの、映像がなくて残念。

Dolly Mixture / My Rainbow Valley

ドリー・ミクスチャーは80年代初期にデビューした女性だけの3人組バンドだが、タルラー・ゴシュ(80年代半ば)、へヴンリー(80年代後半)などに受け継がれてゆく「初々しく下手っぴいガールズ・ギター・ポップ」という路線の元祖的存在だと思える。
70年代の女性ロックシンガーではあまり見かけなかった普通のかわいらしいワンピースによる楽器演奏というスタイルの元祖的存在でもあるな。
今では考えられないだろうが、この時代くらいまでは不良娘でないロック少女はかなりの少数派だったんだろうな。

彼女たちのデビューはダムドのキャプテン・センシブルがソロとして奇跡の大ヒットを飛ばしていた時代のバック・コーラス隊としてだった。
メンバーの一人はそのままキャプテンの奥さんになってしまうんだが、そのコネなのか何なのかはわからないが、まんまとレコードを出して後世に名を残す事になった。
「名を残す」などと書いてみたものの、実は同時代にはほとんど無名であり、ヒット曲も特にない状態。
後の時代になって彼女たちよりずっと有名になったミュージシャンの中に「ドリー・ミクスチャーの大ファン」と公言する人が続出、そういう人たちの働きにより再発されたり編集盤が出たりしたわけだ。
セイント・エティエンヌ、小山田圭吾、カジヒデキ、カヒミカリィなどなど、その名前を見ればどういう傾向の人に好かれていたかわかるはずだ。

さて、そのドリー・ミクスチャーがカヴァーしたのが60年代後期イギリスのバンド、ラブ・アフェアーのこの曲。
ラブ・アフェアーは後にモット・ザ・フープルに加入するモーガン・フィッシャーのルーツでもあるバンドだね。
関係ないがROCKHURRAHは大昔に下北沢で働いていた時にモーガン・フィッシャーの接客をした事があり・・・、あ、この話は前にも書いた事があったか。
とにかくモータウンあたりにも通じるような黄金のメロディ・ラインが美しい曲だから、ガールズ・グループがかわいくカヴァーしても全然違和感はないね。

Thee Headcoatees / My Boyfriend’s Learning Karate

1960年代に流行ったガレージ・ビートにパンクのフィルターを通して、よりワイルドに復活させた立役者がビリー・チャイルディッシュだ。
ミルクシェイクス、マイティ・シーザーズ、ヘッドコーツなどなど彼が関わったバンドは実に数多く存在していて、それぞれ少しずつ音楽性は違うんだけど、一貫してるのはラウドで破壊的な部分かな。
時代の流れでそういうガレージ・リヴァイバルというような動きがあったというよりは、色々な名義でレコードをリリースしまくる事によって無理やりブームのような現象に見えてしまうという力技の偉業を成し遂げたようにROCKHURRAHには思える。
パンクもそうだったが、何かが生まれる時にはそういう扇動者が必要って事だね。

そのビリー・チャイルディッシュが90年代に仕掛けたのが女性だけのガールズ・ガレージ・バンドであるヘッドコーティスだ。
その前の時代に三人組のデルモナスというガールズ・バンドがあったのだけど、それの延長線になるのがこのバンド。
バンド風にしてるけど演奏は全てビリー・チャイルディッシュのバンドの方で彼女たちはフロントで歌うだけに過ぎないというようなよくある話。
美女揃いというには語弊があるかも知れないが、とにかくムサい男がやるよりは華があるし、ガレージ・ロックンロールの中では確かに女性の進出率が高いのも事実。
プロデュースを数多くやってるチャイルディッシュだから、自分の手がけた人気ガールズ・バンドというのを捏造してみたくなっても当然だろう。
そんな彼のイメージにピッタリのヘッドコーティスはやる気なさそうな蓮っ葉なヴォーカルとガチャガチャの演奏が見事にマッチしていて、なかなか素晴らしい世界。
ROCKHURRAHの勝手な思い込みではこの手のガールズ・ガレージ・バンドは演奏も大事だが豹柄の水着着用とか、そういう見た目のインパクト勝負のバンドが多いように感じるが、彼女たちはそういう色気とは無縁のクラシカルなルックス、この辺もチャイルディッシュのこだわりなのかもね。

さて、この曲はどうやらオリジナルと言えるのかどうか不明だが、カナダ(?)のチャーリー&チャンという何だかわからんのがもっと前の時代にやってる模様。
タイトルを忘れたが西新宿のVINYLとかで売ってるガレージ系のオムニバス元ネタ集レコードのシリーズがあって、その辺に収録されていたように記憶する。音楽性もよくわからなかったROCKHURRAHたちはよく「エグエグ」と表現していたな。元ネタもYouTubeにあるので聴き比べてもらえればわかるが、これは結構忠実にカヴァーしてる模様。
イントロでは空手チョップでかわらとか木の板を割ってる音のSEが入るし「アチョー」とか「キュー・サカモト」などと意味不明のオリエンタル・ムードが大変にバカっぽいスーパー名曲。むしろヘッドコーティスの方が普通に思えてしまうのが残念。

彼女たちのレパートリーはこの手のジャンルとしては当然だがカヴァー曲が大変に多く、ROCKHURRAHが大好きなベルギーのプラスティック・ベルトランのカヴァーとかもやっている。昔のガレージとかだけのカヴァーじゃないところがいいね。

以上、今日はひとつのバンドが意外と長くなってしまったからたった4つだけなんだが、どの曲も愛聴していたので書く事が出来て嬉しいよ。
・・・の割には「よくわからん」とか「不明」とかの表現が多く、大して詳しくもないバンドを語ってしまったのがバレバレだけどな。知らなくても好きにはなれる、これでいいのだ。
企画倒れの気がしなくもないが、涼しくなればもう少し気力も充実してくると思うので、今後に期待してて下さい。

ではまた来週。

ROCKHURRAH RECORDS残暑見舞い2012

stairway2【これでちょっとは寒気がするかも?(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

いつの間にかお盆も過ぎ、8月も後半に突入だね。
それなのに、この温度と湿度…今年も暑過ぎだよー!
年々夏の時期、外に出るのが嫌になってきている。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEもインドア大好きだから、全然苦痛じゃないんだよね。
近頃はネットスーパーもあるし、本気で外出を控えようと思ったらできる環境だし。
それって引きこもり状態と同じじゃないかな!?(笑)

先日出かけたリンチの個展を鑑賞した後、ムクムクと湧いてきたのが
「絵を描きたい」
という欲求だったんだよね!
リンチの自由な線の動きやモチーフの選択には創造意欲を掻き立てられた。
中学・高校とSNAKEPIPEは美術部だったからね。(笑)
そして何十年ぶりか、で木炭とスケッチブックを購入。
リンチのリトグラフにあった太い線にインスピレーションを得て、鉛筆よりも太くて力強い線で何かを描きたいと考えたからね。
適当に木炭で絵を描いていて急に思いついた。

「今年の残暑見舞いに絵を入れてみよう!」

ROCKHURRAHから「ゴシックホラーっぽい感じが良い」とリクエストされ、出来上がったのが上の死神(?)。
その死神に似合いそうな背景写真もSNAKEPIPE撮影のもの。
なかなかゴシックな雰囲気になったね!
これに似合いそうな言葉ということで、今回はイタリア語にしてみたよ。
なんて書いてあるか読めるかな?
せっかくなのでSNAKEPIPEのサインも付けちゃおう!(笑)
ポストカード用にグラフィックを担当したのがROCKHURRAH。
やっぱりこの手の仕事、上手だなー!
SNAKEPIPEとROCKHURRAHが共同制作での残暑見舞いの完成だね。
ハタから見れば全然残暑見舞いっぽくないところが気に入っているよ。(笑)

これを機会にSNAKEPIPEはまた絵も頑張ってみようと思っている。
傑作ができたらまたご紹介させて頂こうかな。(笑)
夏バテしないように、スタミナつけて秋を待ちたいね!

田村彰英—夢の光/鋤田正義—SOUND&VISION

20120812_top【東京都写真美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「鋤田正義の展覧会があるよ!」
とROCKHURRAHがやや興奮気味に話しかけてくる。
鋤田正義って誰?(笑)
どうやら写真家のようだけど、SNAKEPIPEは全く今まで名前すら知らない方。
まずはROCKHURRAHに語ってもらいましょ。

鋤田正義の名前を知らなくても、70〜80年代のロックやパンク、ニュー・ウェイブのレコードを買い漁った人ならば、必ずどこかでこの人の写真を見た事があるに違いない。
それくらいにロックの世界では有名な写真家だ。
ROCKHURRAHもデヴィッド・ボウイ「Heroes」のレコード・ジャケットをはじめ、T-REX、イギー・ポップYMOなどなど、 数多くの ミュージシャンのジャケットや音楽雑誌などで昔から知っていた。
「ロックマガジン」や「Zoo(音楽雑誌「Doll」の前身)の表紙 とかでもこの名前は有名だったもんね。
実はロック名盤というような王道のレコードをほとんど持ってなかった、ひねくれ者のROCKHURRAHでさえ知ってるメジャーな写真家だったわけだ。
海外でここまで活躍するSUKITA恐るべしと思ったものだ。
誰でも知ってるメジャーどころのミュージシャンだけでなく、ジェームス・チャンスのコントーションズや東京ロッカーズ、また「時に忘れられた人々(ウチのブログのシリーズ記事)」も真っ青な「完全に忘れてたよ」と言いたくなるような時代の仇花ミュージシャンまで分け隔てなく、カッコ良く撮ってるところがすごい。<以上、ROCKHURRAH談>

うーん、なるほど。
展覧会が開催されるのは東京都写真美術館とのことなので、まずはHPで情報を集めることにする。
「デヴィッド・ボウイのこの写真は観たことあるよ!あっ、YMOも!」
これは是非行ってみよう!と話が弾む。
写真美術館での他の展示はなんだろう、と調べて非常に気になったのが田村彰英の展覧会。
なんと日本にある米軍基地を撮った作品が展示されてるなんて、これも絶対鑑賞しなければ!
ROCKとミリタリー好きのROCKHURRAHとSNAKEPIPEにピッタリの企画だね!

世の中はお盆休みに入っているせいか、東京の人口が普段より少ないように思える8月11日。
電車も恵比寿界隈もガランとしていて心地良い。
いつもこれくらい密度が低いと過ごし易いのになあ。(笑)
ただしいつ雨が降ってもおかしくない高い湿度は不快だね。
降るなら降ってしまえばすっきりするのに。

前回東京都写真美術館に来たのは、2011年10月「畠山直哉展 Natural Stories」なので、約1年ぶりということになるね。
もしかしたらその時と現在の東京都写真美術館のチケット販売方法違ってないかな?
前は展覧会単品と全てのフロア鑑賞券みたいな2種類だったように記憶しているんだけど、今回は3つの会場で料金が発生する展覧会を開催していたせいか、2つ以上展覧会を鑑賞したい場合の料金はお高め。
ちなみに3つの会場全てを鑑賞する場合には1名様1700円もかかる計算だよ!
こんな料金設定だと、何かしらの値引きがある人以外は来館しなくなっちゃうよ? ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは田村彰英と鋤田正義の2つ鑑賞したいので1250円也。
まずは地下会場で開催されている鋤田正義から鑑賞することにした。

あとから気付いたんだけど、鋤田正義の展覧会はこの日が初日だったのね。(笑)
時間が割と早めだったせいもあり、お客さんの入りはそこまで多くなかったので鑑賞し易いね!
値段が高めのせいだからか、お客さんの年齢もやや高め…。(笑)
はっ、その「高めの年齢層」の中にROCKHURRAHとSNAKEPIPEも入ってるってことか!(ガーン)
鋤田正義の有名な作品が70年代から80年代というのも理由なんだろうけどね。
いや、モデルが有名人だから写真がすごい、というだけじゃないよ!
ファッション雑誌に掲載されたという広告写真の素晴らしさったら!
1968年の作品とのことだけど、今観ても斬新でカッコ良いんだよね。
こういう業界からスタートしてるから、やっぱりセンスが違うんだろうね。

20120812_01鋤田正義の作品として最も有名なのは、やっぱりデヴィッド・ボウイなんだろうね。
会場入ってすぐの壁一面もボウイ。
山本寛斎デザインのコスチュームに身を包んだボウイは、両性具有の謎の美しい人物。
そして「Heros」のジャケット写真のコンタクトプリントが興味深い。
様々な表情を見せるボウイもさることながら、選択したコマに赤いダーマトグラフで印が付いているのに目が釘付け!
採用されたコマも、実際に使用されている時にはトリミングされていたとは!
せっかく6×6で撮影しているのに、残念だねえ。

他に展覧会で面白かったのが、ポスターみたいに作品を天井から床まで下げて展示していたブース。
様々なアーティストを撮影してるんだねえ。
そしてROCKHURRAHと名前当てクイズをするのも楽しかった。
さすがROCKHURRAHはほとんどのミュージシャンの名前を言い当ててたよ!
顔を見ても名前が思い出せない人がいたり、普段とは全然違う顔で写っている人を発見したりもしたけどね。
日本人と外国人の割合が半々くらいで、いかに鋤田正義が海外でも有名なのかが良く分かる。

肖像写真家、と聞いてパッと浮かぶのはナダールアウグスト・ザンダー(古い!)、ハーブ・リッツアニー・リーボヴィッツかな。
世界の著名人を撮影している、有名な写真家達だ。
日本人で世界的に有名なアーティストを撮影している人なんて今まで全く知らなかったので、今回の展覧会にはびっくりした。
鋤田正義にはもっと頑張ってもらいたいなあ。
ただ、2012年の現在、どうしても撮影したいと思えるような人物はいるんだろうか?
鋤田正義に是非聞いてみたいものだ。

20120812_02さて次は展覧会場2階で開催されている田村彰英「夢の光」展へ。
実をいうと田村彰英の名前は昔買っていたアサヒカメラなどで見かけた気がするんだけど、「代表作は何?」と聞かれても答えられないSNAKEPIPE。
あまり予備知識がないまま会場入りする。
ではここで田村彰英のプロフィールをご本人のHPから引用させて頂くことにしよう。

1947年 東京生まれ。
20歳の時に撮影した作品が、ニューヨーク近代美術館の永久保存になる。
多くの作品が東京国立近代美術館、山口県立美術館、東京都写真美術館、川崎市市民ミユージアムなどに永久保存になる。
その他多くの写真展を開催。
東京綜合写真専門学校、東京造形大学の講師として30年間歴任。
黒澤明監督作品の応援スチールとして、「影武者」「乱」「夢」「八月のラプソデイー」に参加。
アサヒカメラ、日本カメラのフォトコンテスト審査員歴任。2002年度全国高校総合文化祭,写真部門審員長担当。
2003年度日本カメラフォトコンテスト、カラースライドの部審査員担当。

東京綜合写真専門学校に在学していた時から、校長であった重森弘淹から「徹底して感性的な写真家」との高い評価を受けていたと書いてある。
40年以上続く写真活動の軌跡をたどった今回の展覧会は見ごたえ充分!
それぞれのセクションごとに感想をまとめてみようか。

『BASE』
1960年代後半から1970年代前半にかけて、国内の米軍基地を撮影したシリーズ。
航空雑誌を見てカメラマンになりたいと思い写真を始めたと語っている飛行機好きの田村彰英らしく、「BASE」の主役は飛行機だ。
確かに「大人社会科見学—横田基地日米友好祭2010—」の時に、間近に見た戦闘機は金属的な輝きと無駄のないフォルムが美しかったからね!
そしてアメリカへの憧れというのも良く分かるなあ。
モノクロームで表現されるアメリカらしい白いフェンスの写真がカッコ良い!

『家』 『道』
「家」は1967年から2年を費やして造成された宅地に家が建っていく様子を撮影したシリーズ。
「道」は1976年から5年かけて横浜横須賀道路が作られていく様子を写したシリーズとのこと。
定点観測、ということになるよね。
長い年月をかけて、何度も同じ場所を繰り返し撮影するという行為だけでもすごいのに、それを作品にしちゃうところがもっとすごい!(笑)
そしてi家」が前述したニューヨーク近代美術館のディレクターだったジョン・シャーカフスキーの目に留まることになるのである。
きっと田村彰英という人はコンセプトを考えるのも得意な人なんだろうね。
衝動だけで撮影しない写真家って、右脳と左脳の両方が発達しているんだろうなあ。

『午後』
1971年から1973年までの3年間、30回シリーズとして美術手帳に連載されていたシリーズとのこと。
今回の展覧会の中で一番SNAKEPIPEが感銘を受けたのがこのシリーズなんだよね。
モチーフの選択。
構図の決め方。
光と影のバランス。
そのどれをとっても非の打ちどころがなく、完璧としかいいようがない。
きっと写真を良く知らない人が観たら
「この写真は一体何?」
としか思わないかもしれない。
でも写真を作品として完成させたいと思って撮影をしたことがある人なら、きっとこのシリーズを観て歯ぎしりするはずだ。
SNAKEPIPEも観ていて悔しくなった。
だって、SNAKEPIPEが目指していた方向の全てが、先に撮影されていたことに気付いたからね。

『湾岸』
HouseやRoadと同じような定点観測のスタイルだけれど、ポジフィルムを使用し2枚1組で展示する方法にしたシリーズ。
2枚の写真の違いは時間的なズレの場合と、視点的なズレの両方があり、まるで間違い探しをするように鑑賞してしまった。(笑)
この撮影方法や展示方法も、いわゆる写真家の作品というよりは、現代アートに属している感じがするね。
レンズに付けたフィルターのせいなのか、カラーの色味がとてもキレイだった。
このシリーズのポストカードがあったら購入したかったなあ!

「湾岸」シリーズのプリント方法が「発色現像方式印画」と書かれているのが非常に気になる!
今まで観たことがある写真の展示で、こんな種類あったのかなあ?
「湾岸」のプリントの色味のせいなのか?
何か新しい方法なのか?
帰宅してから調べてみて納得。
結局は普通のカラー印画紙のことだったんだね。
最近はモノクロ写真の場合にもシルバー・ゼラチン・プリントって書いてあるように、いわゆる「暗室に入って現像した印画」のことを指すとのこと。
フィルムを知っている世代には当たり前のことだけど、最近はデジタルカメラを使い、プリンターで印刷する写真もあるからね。
そのための表記だったと判って愕然としちゃったよ。
これもまた時代、なのかねえ。(とほほ)

『赤陽』
8×10カメラに100年以上前に製造されたレンズを使用して風化した木造建築を撮影したシリーズ。
1989年よりスタートした元号「平成」に逆らうかのように、「赤陽」は過ぎ去った昭和へのノスタルジーだ。
少しでも昭和的な風景を残しておきたい、という記録者としての意味もあっただろう。
そして恐らく一番大きな理由は「昭和が好きだから」じゃないだろうか。

『名もなき風景のために』
撮り方によってはドキュメンタリー写真なんだろうけど、田村彰英の手にかかると単なる記録写真じゃなくて作品になってしまうから不思議だ。
カメラマンと写真家の違いがよく解る。
そして2011年に鑑賞し、残念に感じた畠山直哉にもこんな仕事をして欲しかったな、と改めて思ってしまった。

『BASE2005-2012』
デビュー作であるBASEから40年を経て、また田村彰英が基地を撮影しているシリーズ。
やっぱり好きな物は好き、という感じで戦闘機の写真が並ぶ。
うん、解るよ!だってカッコ良いもんね!(笑)
今回は6枚しか展示されていなかったので、まだシリーズとしてどうのと感想は言えないけれど、きっとまた違った切り口で魅せてくれるように思う。
どんなシリーズが出来上がるのかとても楽しみだ。

今回鑑賞した2人の写真家共、フィルムを使って撮影をしてるんだよね。
デジタルでは表現しきれない部分を再認識することができたように思う。
SNAKEPIPEもかつてはフィルムを使用し、自分で現像~焼き付けやってたからね。
金銭的な問題、省スペース化、簡略化が技術の進歩を生んだんだろうけど、お金かかっても、場所を取って面倒なことでも、残しておいたほうが良いアナログなことっていっぱいあるんだろうね。
SNAKEPIPEも昭和に戻りたくなったよ。(笑)

ROCKHURRAH紋章学 ビール・ラベル編

【進化つながりで選んだCF。よくできてるよね!】

SNAKEPIPE WROTE:

8月に入って、益々暑くなったよね。
今年の夏は例年よりも更に厳しい気がするんだけど、これはSNAKEPIPEだけが感じてることじゃないように思う。
行き帰りでの汗だく、連日の寝苦しい夜。
こうも毎日うだるような暑さが続くと、本当に体がついていかないよ~!
やっぱりこれが地球温暖化ってことなのかな?
決して年齢によるものではない、ということにしておこうか。(笑)

さて今回のブログは、カテゴリーを作っておきながら今まで1度しかROCKHURRAHが記事を書いていない「ROCKHURRAH紋章学」をSNAKEPIPEが特集してみたいと思う。
いや、別に誰が書いても良いカテゴリー分けなんだけどね!(笑)

非常に短絡的だと思うんだけど、夏といえばビールだよね!
本当の意味で喉の渇きを癒す飲み物じゃないんだけど、やっぱり夏はビールでしょ。
ということでビールのラベルで、面白そうな物を集めてみたよ。
ん?これってビザール・グッズ選手権みたいじゃない?
ま、どっちでもいいか。(笑)

初めにご紹介するのはWasatch Brew Pub & Breweryで発売しているEVOLUTIONビールだ!
直訳すると「進化ビール」とでもいったら良いのかな。(笑)
猿から人間へと進化していき、人間がビール飲んでるというラベルはなかなか面白いよね?
2006年の世界ビール・カップという大会で銀メダルを受賞している、と記事に書かれているので、ラベルの奇抜さだけじゃなくて味にも自信がある逸品のようだね。
それにしても世界ビール・カップなんて初耳。
これってよくお菓子に「モンド・セレクション受賞」なんて書いてあるのと同じようなタイプの大会なのかもね?(笑)

さてお次もかなりインパクトのあるラベルだよ!
こ、これはプロレスのミル・マスカラスのマスクじゃないの?(笑)
日本人ならマスカラスと思ってしまうだろうけど、どうやらLucha Libreというメキシコスタイルのプロレスマスクから引用されているとのこと。
マスカラスもメキシコ人とのことだから、メキシコ人レスラーにはマスク愛好家が多いのかもね?(笑)
Jose Guizarというメキシコのグラフィック・デザイナーによって作られたラベルなんだって。
黒人のキング(帝国のスタウト)、ブロンドのゴメス(ラガービール)および吸血鬼息子(レッド・エール)と3つの味が楽しめるそうだよ!
このネーミングもLucha Libreから引用されているって書いてあったよ。
これを飲めば強くなれるのかなあ?(笑)

名前が「ダークネス」という、見た目がおどろおどろしいこのラベルもかなりインパクトがあるよね?
Surly Brewing Co.というアメリカのメーカーが発売している季節商品みたいなんだよね。
ロシア皇帝スタウト、という黒ビールみたい。
そしてこのパッケージとは違って、味のほうはチョコレート、さくらんぼ、レーズン、コーヒーなどが入った、かなり甘めでフルーティ!
アルコール分も9.8%とビールにしては高めだね。
このラベルを見た瞬間にROCKHURRAHが
「MAD MASATOみたい!」
と喜んでいたよ。
サイコビリー好きの方は是非ともご賞味あれ!(笑)

では音楽つながり、ということで最後にご紹介するのはこちら!
マイケル・ジャクソンのスリラーからイメージを借用した、その名も「ゾンビール」!
うーん、このダジャレ的なネーミングはもしや、と思ったらやっぱりどうやら日本人が考えてるみたいなんだよね。
そしてそんなオヤジギャグに反応してしまうSNAKEPIPEもやっぱり日本人なんだなあ。(笑)

このビールシリーズは全6本セットになっていて、ジョージ・ハリスンとエリック・クラプトンの元妻であるPattie BoydJohnny CashKurt Cobainなどのアーティストからインスパイアされてデザインされているとのこと。
6色揃うととてもキレイで、インテリアにもなりそうだよね。
日本にはダジャレ部分はあってもオシャレなラベルはなかなか見当たらないから、こんな商品開発したら売れそうだけどね?
日本ではオシャレな商品はヒットしないかな。

世界のビールラベルをもっと調べてみたくなったよ。
もっと面白いのがたくさんありそうだよね!
ROCKHURRAH紋章学はまだまだ続くよ!