SNAKEPIPE MUSEUM #55 Murugiah

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【adobe creative cloudで紹介されたMURUGIAHの作品】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、スリランカ人アーティストを紹介しよう。
かつて南アフリカやエジプトのアーティストについて書いたことはあったけれど、インドやパキスタンといった南アジアから選出したことはなかったよね。
恐らく好みの作品はあるんだろうけれど、情報収集が難しいんだろうね。
祝!初・南アジア!(笑)
アーティストの名前はSharmelan(Sharm) Murugiah 、カタカナ表記ではシャルメラン(シャルム)・ムルギアと書いていこう。

まずはプロフィールから。

どうやらムルギアが生まれる前に両親はイギリスに移住していたようで。 
お父さんが医者とのことなので、イギリスに渡る何かしらの理由があったんだろうね。
そのためムルギアは生まれも育ちもロンドンだという。
子供の頃からバンド・デシネに親しみ、メビウスの影響を受けているとのこと。
バンド・デシネとは、フランス・ベルギーなどを中心とした地域の漫画のことね。
元々は広告に関する仕事を目指していたようだけれど、その後建築の勉強を7年間したという。
その後自らのスタジオを立ち上げ、フリーのイラストレーターとして活躍している。
2014年にはD&AD賞を受賞。
D&AD(Design & Art Direction)とは1962年にイギリスで創立された非営利団体だという。
デザイン、広告、コミュニケーション、テクノロジー、フィルムにおける独創性を促し、支援することを目的に創設されたのがD&AD賞なんだね。
アップル、タイムアウト誌、ガーディアン誌、バラエティ誌、ディズニー、ルーカスフィルム、その他多くのクライアントのために作品を作成しているという。
錚々たる大企業が名前を連ねているので、ムルギアは人気のあるアーティストなんだね。

制作している様子が分かる動画を載せてみようか。 

ムルギアの作品はデジタル・アートになるんだろうね。
iPadに描いていたし、プリントもしてたし。
これからの時代は、こうしたタイプのアートが主流になるんだろうなあ。
SNAKEPIPEも描いてみたい!って思ったよ。
そしてムルギアはもっとアジア寄りの雰囲気なのかと思っていたのに、違ったわ。(笑)
英語も完全なネイティブだしね! 

そうは言ってもやっぱり自らの出自をエッセンスにしているようで。
まるで横尾忠則か!という雰囲気の作品だよね。(笑)
両サイドにはピラミッドのような三角形が並んでいるけれど、バックには家が描かれている。
一体何を意味しているのか不明だよ。
タイトルが分かれば、少しはヒントになったんだろうけど。
分かる人がいたら教えてください!

「First Leaf Falls」を直訳すると「最初に落ちた木の葉」って感じか?
タイトルの意味は不明だけれど、右の人物は地獄の獄卒、牛頭馬頭なのかなあ。
舌で構成されているような乗り物に乗ってるんだよね。
嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれると聞くので、現在舌集めの真っ最中なのかも。(笑)
左側にある謎の物体には、ドクロや半裸体の女性など仏教的なモチーフが描かれているね。
煩悩の塔?
もしくは解脱後の穏やかな姿なのかもしれないね。

この作品もアジアの雰囲気があるよね。
タイトルは「Del」だって。
DeleteのDelなのか、アメリカ陸軍の特殊部隊Delta Forceの略か?
もしくはGuillermo del Toro(ギレルモ・デル・トロ)監督のDelなのか?
実際にムルギアはデル・トロ監督の本にイラストを描いたことがあるそうなので、タイトルにつけてあってもおかしくないかも。(笑)
着物を着たピンクの象と蓮の花の上に座る猿のほかにも、様々な動物が描かれている。
「First Leaf Falls」と合わせて、まるで村上隆のようじゃない?
以前鑑賞した「五百羅漢図展」を思い出したよ!

「The Alchemist」は2018年の作品ね。
 タイトルの「錬金術師」を知らずとも、観た瞬間からホドロフスキー監督の「ホーリー・マウンテン(原題:The Holy Mountain 1973年)」を連想するよね!
実際ムルギアが「ホドロフスキー監督の映画からインスピレーションを得ている」と答えているインタビューもあったし。
ご存知の方は多いと思うけど、ホドロフスキーはバンド・デシネの原作者としても有名!
ムルギアが幼少期からバンド・デシネを読んでいた、という話は前に書いたよね。
ホドロフスキー原作のストーリーにメビウスが絵を担当した作品はたくさんあるので、自然な流れでホドロフスキーの映画鑑賞につながったんじゃないかと推測する。
中央に描かれている人物は、きっとホドロフスキーに違いないね。(笑)
水晶の中に捕らわれている人物や、竹馬に乗っている人の存在は意味不明だよ。
きっと錬金術に関係があるんだろうな。

脳天が割れて、棒が出てるよ!
「Dreamer」というタイトルなんだけど、「夢を見ている人」という以上の意味があるように深読みしてしまうね。
東洋的な顔立ちの少女(のように見える)は、少し笑みを浮かべ安らかな表情を見せている。
何本も引かれている直線は、落下の様子を表しているのだろうか。
まるで生から死に向かうような? 
仏教的な印象を受ける作品を観た後なので、余計にそう感じてしまう。 
この作品にはたくさんの葉っぱが舞っているんだけど、先に書いた地獄っぽい作品と関係あるのかな。

今まで観てきた極彩色とは違う雰囲気の作品。
「A Rebirth: The Decomposition of Walls That Resist」は直訳すると「再生:抵抗する壁の分解」だって。
迷路の中で、輪切りにされた人物が横たわっている。
輪切りの隙間からいたるところに伸びる腕は、苦しみを叫ぶ心の声なのか。
束縛から開放されようと、抗っている様子なのかもしれない。
解釈は様々だと思うけど、心象を扱っていることに間違いなさそう。

2020年の作品「Virus」は、まさに「今」を描いているよね。
ムルギアはどんな思いを込めて、この作品を制作したのだろう。
父親が医者である話は書いたよね。
どうやら家族の中にもう一人医療従事者がいるとのこと。
ウイルスと戦う家族を心配し、ワクチンが開発されることを願って描かれた作品だという。
美しい色使いなのでマスクがなかったら、コロナに関する絵だとは気付かなかったかもしれないね。

ムルギアの作品はシュールでサイケと評されることが多いみたい。
SNAKEPIPEは色彩の美しさに目を奪われたよ!
ホドロフスキーがお気に入りということで、好みの系統が似ている点にも注目だし。
デジタル・アートの展覧会、いつか観てみたいね!

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