時に忘れられた人々【21】情熱パフォーマンス編3

【ド派手なパフォーマンスの王者、Tenpole Tudorの勇姿】

ROCKHURRAH WROTE:

最近、ブログの記事では出番がなく、かなりのご無沙汰だったけど、久しぶりに何か書いてみるか。
何をやってたかと言うとブログをリニューアルするために奮闘・・・ってほどには大した事はしてないけど、まあそのような事を陰でやってたわけ。

ROCKHURRAH RECORDSのブログは2006年、何と10年前に始めて、その時からずっと何も変わってないんだよね。WEBの世界で10年といえばかなりの大昔、今は技術も可能性もずっと進んでるしもっと便利になっているはず。
そんな中、昔に作られたテーマ(ブログの外観や操作性)のまんまじゃいくら何でも古臭さ過ぎだったと気付いたが、あまりそういう知識もないので現状維持のままやってたのが実情。
たぶん言葉で書くほど良くはならないし、今と比べてそんなに変わったものを作るつもりもないけど、近いうちに少しリニューアルしてみるよ。

さて、今回はこれまた久しぶりだが、70〜80年代バンドの遺したちょっと意味不明なパフォーマンスを見ながら安易なコメントをしてみよう。
ちなみにこのシリーズの12というのもあるので、書きたい事の概要はわかってもらえよう。
かつてのMTVとかの時代、英米のメジャーなアーティストが作り上げた質の高い、金のかかったプロモーション・ビデオとかではなく、そこまで大ヒットが期待出来ないようなアーティストの埋もれてしまったような映像を中心にピックアップしてゆくのがROCKHURRAHの目指すところ。
では意味不明の情熱パフォーマンスを見てゆこうか。

【つるむ!】
Virgin Prunes / Walls Of Jericho

「つるむ」という言葉自体が情熱的とは言い難いし「!」マークも似合わない気がするが、気のせいか?

ヴァージン・プルーンズは1980年代初頭にデビューしたアイルランドのバンド。パンクからニュー・ウェイブに移り変わった時代、チャートの表側ではエレクトロニクス・ポップ(エレポップ)やニュー・ロマンティック、ファンカ・ラティーナなど流行の音楽が続々と生まれていたが、ちょっとアンダーグラウンドの世界でもネオ・サイケやポジティブ・パンクのような暗い音楽も同時に発達していた。
というような時代背景、 ヴァージン・プルーンズはゴシックやポジティブ・パンクと呼ばれたムーブメントの中で有名になっていった。

音だけで聴かせるようなバンドも色々とはいたけど、やはりこの手のジャンルと言えば厚塗りのやり過ぎ化粧、そして大仰なパフォーマンスといった下品な側面が最も目立つ部分だ。中でもこのプルーンズは異様さで抜きん出た存在だった。

ドギツイ化粧におばちゃんのようなスカート姿で歌うギャビン・フライデーとグッギという強烈なヴィジュアルの男2人が繰り広げる狂的な掛け合い、これはまるでホラー映画に出てくるような世界で圧倒されてしまう。パフォーマンスもアングラ劇団っぽい雰囲気で素晴らしいね。
声がまたこの姿にピッタリのいやらしさ、変態っぽく見せかけてるような無理がなく、自然体の変態なんだろうね。

このバンドをやる前の少年時代はU2のボノとも悪ガキ仲間としてつるんでいて、メンバー間も血縁関係があることから「裏U2」というような呼ばれ方もしていたな。U2の初期のアルバム・ジャケットに写ったきれいな少年もグッギの弟という深い関係。がしかし、見た目も音楽も方向性が違いすぎ。同じホームグラウンドで過ごした少年達が随分かけ離れた世界に行ってしまったもんだよ。

【舞う!】
The Icicle Works / Whisper To A Scream (Birds Fly)

舞う、とは言っても踊ったり宙を舞ってるわけでもない。舞ってるのはおびただしい量の枯れ葉みたいなものだ。情熱パフォーマンスは彼らではなく枯れ葉だという点で、すでに書き始めた事が失敗だったと気付いたよ。

アイシクル・ワークスは英国リヴァプール出身のバンドで1980年代前半にデビューした。
リヴァプールと言えば70年代半ばのデフ・スクール、後半のビッグ・イン・ジャパンなどから有名ミュージシャンが続々と登場して、彼らの周辺から実に多くのバンドが生まれ、ひしめき合っていた時代があった。それが80年代のリヴァプールの音楽シーンを盛り上げていたわけだ。
有名なところで言うとエコー&ザ・バニーメンやオーケストラル・マヌヴァース・イン・ザ・ダーク、デッド・オア・アライブ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドなどなど、みんな名前長いな。
このように音楽界のビッグネームを数多く輩出したのもリヴァプール。もう少しマイナーなものも含めるとその何十倍もニュー・ウェイブ・バンドを産出してたのがリヴァプールだったのだ。しかもどこかで誰かが関わってるという複雑な人間関係なもんで、専門書まで出ていたくらいだ。

アイシクル・ワークスはその辺のリヴァプール関係でゆくと「元どこそこのバンドにいた」などという経歴はあまりなくて誰も知らないような出身。がしかし、1983年に出たアルバムとシングルだったこの曲は結構なヒットをして、日本盤もちゃんと出ていたな。 枯れ葉だか木の幹だか知らないが、とてもウッドな感じのジャケットも有名だしメンバーも何となく林業系な見た目。そんな事実はたぶんないと思うが。

ビデオがリアルタイムの枯れ葉吹雪の中なのか映像をかぶせてるだけなのかわからないが、もし本当にこれだけ吹き荒れてる中の撮影だったら目鼻口に入ってきて大変だったろうな。花粉症の人にはとても出来ない技。

【漕ぐ!】
King Trigger / River

ROCKHURRAHは以前はかなりの分量のレコードを集めていたんだが、いわゆるマニア的な気質はあまりなくて、いつも何かテキトウに買っていた。それが後に伝説の名盤になったりして自分の先見の明に驚いたりもしたが、反対に何で買ったのか不明、というレコードもたくさん持っていた。
その時持っていた何かの情報で買ってるんだろうけど後で思い返しても何で持ってるのかわからないというシロモノ。
これは好きなタイプの音楽だったから結果的には持ってて良かったモノ、という事になるんだが、一体何を根拠に買ったものなのか?

キング・トリッガーの活躍したのはほとんど1982年の一年間限定の情報しかない。要するに一発屋だったんだろうが、この一曲だけでちゃんとしたプロモーション・ビデオが作られているのも不思議だ。何か大いに売る気があったのに頓挫してしまったバンドなのだろうか?
音楽の方はジャングルっぽいトライバルなビートに割と骨太の歌、ビッグ・カントリーやバウ・ワウ・ワウ、アダム&ジ・アンツあたりとも少しは相通じる世界なのか、個人的には心地良いタイプ。
それにしてもこの黒人女性メンバーの目つきや表情、動き。ものすごいインパクトだね。 周りのメンバーがかすんでしまうよ。まさにシャーマニック!
ビデオもタルコフスキーの「ストーカー」を思わせる地下水道で雰囲気的にはかなり良いね。「ストーカー」は眠くなってしまったが(笑)。

【浮かれる!】
Eddie Tenpole Tudor / The Hayrick Song

イングランドやスコットランド、アイルランドなどの歴史や風俗には詳しくないんだが、このプロモーションに出てくるような服装はどの時代なんだろうか?近世のペザント(農民)・ルックだと思えるが、全然根拠はないので大嘘だったらごめん。
日本でも鎌倉時代の農民と室町時代の農民の区別なんか、よほどの大河ドラマ・マニアじゃない限りわからないはず。一般的にはほとんど知られてないんじゃなかろうか?え?みんなわかる?

この民族衣装に身を包みゴキゲンに浮かれて踊っているのがエディ・テンポール・テューダーとその仲間たちだ。ウチのブログで何度も登場しているから何度も書いてるけど、もう一度おさらいしておくか。
エドワード・テューダーポールは元々はコメディアンで役者だったようだが、セックス・ピストルズの映画「グレート・ロックンロール・スインドル」に出演して注目されるようになった。映画の中でも数曲歌っているな。
その彼のバンドがテンポール・テューダーというわけだ。バンド名とソロの時の名義が若干違うけどあまり気にはならない程度。
バンドはパンクの時代から存在していたがレコード・デビューは結構遅くて、主に活動していたのは1980年代になってからだった。
パンクとテディ・ボーイ(テッズ)、そしてスコットランド民謡を取り入れたような壮大で元気の良い音楽と中世騎士などの独特なコスプレ、そしてコミカルで勢いあり過ぎなステージ・パフォーマンスで唯一無二の個性を発揮した、個人的に大好きなバンドだった。うーん、何かいつも同じような事ばかり書いてるなあ。

その彼のソロ名義で出したシングルがこの曲「The Hayrick Song」だ。
アコースティック・ギターとフィドルが印象的な音楽はこれまでのテンポール・テューダーの楽曲よりもずっとトラディショナルで、この少し前のスキッズから少し後でデビューしたポーグスあたりに通じるもの。

プロモーションでは相変わらず大げさな身振りのテューダーポールがとにかくハッピーそうに歌って踊る。この曲にこの衣装、映像は最適のマッチングだと言える。細身で手足の長いスタイルだからタータンチェックのスカートの着こなしもバッチリだね。
このド派手な身振り手振り、まさに情熱パフォーマンス大賞間違いなし。
しかし見ている分にはコミカルだが、もし近場にいたらかなり鬱陶しい存在だろうね。

以上、何だか情熱の意味がよくわからない映像ばかりをよりによって選んでしまったが、懲りずにまた色々ピックアップしてみたい。
それではスラーナグット(ゲール語で「さようなら」)。

2 Comments

  1. ROCKHURRAH

    鳥飼先生
    いつもコメント頂き、ありがとうございます。

    プルーンズの元メンバーがやっていたプリンセス・タイニーミートとかも変態で良かったですね。

    得意にしている70、80年代の音楽ネタですが、さすがに忘れてしまっている事が多くて危機感を抱いています(笑)。

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