蔡國強展 帰去来鑑賞

【帰去来展のポスターを撮影。図録の背表紙が貼られていてお洒落!】

SNAKEPIPE WROTE:

横浜美術館で開催される展覧会の誘いがあったのは夏より前のことだ。
情報をもたらしたのは、毎度お馴染みの長年来の友人M。
どんな展覧会だろう、と調べてみる。
それは中国人のアーティスト、蔡國強という人の展覧会で7月から10月まで開催されているようだ。
現代アートはよく観るけれど、中国人のアーティストってあまり知らないなあ。

ROCKHURRAHが更に調べてくれて、蔡國強の詳細が判明。
爆発アートとして有名な人だという。
以前ヤゲオ財団のコレクションを展示していた「 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」の時に、蔡國強の作品も鑑賞してたみたいなんだよね。
ヤゲオ財団の時は爆竹で描いたドラゴンの作品だったはず。
その時に観た作品と全く同じではないけれど、一応参考として載せてみたのが上の画像ね。
とても迫力があって、その奇抜なアイデアに驚いたものだった。
今回のメインとして紹介されているのが大量の狼の立体作品。
これは一体何だろう?
確かに面白そうだよね!
真夏を避けて、少し日差しが落ち着いた頃に予定しよう、ということになった。

前回横浜美術館に行ったのは2012年5月の「マックス・エルンスト-フィギィア×スケープ」だったということは3年以上も前のことなんだね。
どうりで!
以前横浜美術館に行った時には見かけなかった建物があるんだよね。
「MARK IS みなとみらい」というみなとみらい駅直結の複合商業施設が横浜美術館の目の前にできていて驚いた。
どうやら「MARK IS」は2013年6月にオープンしてたんだって!
街が変わっているのも無理はなかろう。(笑)
友人Mも2012年3月の「松井冬子展鑑賞~世界中の子と友達になれる~」以来なので、やっぱり「MARK IS」の存在を知らなかったという。
怪しい3人組、今回は「MARK IS」に集結したのである。

「蔡國強展 帰去来」はもう少しで開催が終了という時期だったけれど、結構混雑していたように思う。
年配の女性が多かったのが意外かな。
一番最初の展示室前に「猥褻な表現が含まれていますのでご注意下さい」という内容の立て札が置かれていて、首を傾げながら入室する。
人生における「春夏秋冬」を春画をモチーフに描いた大型の作品が展示されている。
春画モチーフの部分が「猥褻」ということなのかな?
こういう議論自体がナンセンスで、観たくない人は観なければ良いだけじゃないか、と思っているSNAKEPIPEには必要のない忠告なんだよね。
会田誠の展覧会の時にも目くじら立てて抗議した客がいたらしいけど、不快だと感じたら観るのをやめて欲しい。
鑑賞者が自己責任で判断すれば済むだけの単純な話だと思うけど?
蔡國強の「春夏秋冬」はお坊さん2人か?と思ってしまうようなスキンヘッドの2人が中央に配置され、周りに花や鳥や花札が描かれた作品だった。

次の部屋に向かう。
次のタイトルも「春夏秋冬」で、今度はタイルの上に花や昆虫、魚などの立体が乗った作品だった。
この作品はそれらを全部配置した上に火薬を撒いて、火を着け燃やすことで完成させているという。
作品を作る様子がビデオを流れていたので、それを観てやっと意味が分かる。
燃えた部分が黒く煤けてるんだよね。
その黒い色合いの美しさに惹かれる。

実は最初の「春夏秋冬」を観た時には全くピンをこなかったSNAKEPIPEだったけれど、その作品を作る過程のビデオを観て急に興味が湧いてきた。
今回展示されている作品は、次に紹介する狼の大群以外は、すべて横浜美術館内で制作されたようだ。
蔡國強自身が火薬を撒いて、チャッカマンみたいなので火を着けて燃やしている様子がビデオで流れている。
火が着いた瞬間、大きな音と共に火事になったような爆発が起こる。
火薬慣れしている(?)蔡國強には普通の瞬間なのかもしれないけれど、初めて知ったSNAKEPIPEは本当に爆発させて作品を制作している様子に目が釘付け!
「危ない!下がって!火を消して!」
なんて言葉をアート作品で聞くなんて思わないもんね。
命がけのアート、観ていて笑ってしまったよ。(笑)

更に蔡國強のインタビューも興味深かった。
こちらが勝手に想像している中国人像とはかけ離れた、パンクっぽい人物なんだよね。
Search And Destroy!(笑)
爆発によってどうなるのか結果が予測できない「偶然性」を重視しているというのは面白いね。
蔡國強の火薬を使用した作品というのは、作品として展示されているのは単なる残骸で、本当はその途中経過(例えば燃えている時)が本来の、本当の意味での作品なんだろうなあ、と思った。
そのため作品だけをポンと出されても「なんだこれ?」になっちゃったのかもしれないなあ。
もしかしたらSNAKEPIPEだけが、そう感じたのかもしれないけど。

最後が今回の展覧会の目玉というべき「Head On(壁撞き)」。
99匹の狼が部屋いっぱいに展示されている。
地を這う狼、空を飛ぶ狼、壁に激突する狼。
壁の高さはベルリンの壁と同じ高さだという。
落ちてはまた立ち上がり、 空を飛び、また激突する。
99というのが道教で永遠に循環することを象徴する数字だとは知らなかったよ。
99と聞くとネーナの「ロックバルーンは99(原題:99 Luftballons)」を思い出してしまったSNAKEPIPEだけどね!(笑)

この部屋は1匹1匹じっくり観ていたくなるほどの大迫力空間だった。
SNAKEPIPEが思うところの「現代アート」というのはこういう作品なんだよね。
解説なんてなくても、唖然とするほど驚かせてくれる。
もちろん99匹なんだ、ベルリンの壁なんだ、と知ることで作品の理解度は高まるけれど、言葉がなくても圧倒的な存在感を示すことができる作品というのはすごいと思う。
1匹、狼欲しくなっちゃったよ。(笑)
友人Mは「オスの狼を発見した!」と笑っている。
下から見上げるとよく見えるからね。(笑)

蔡國強と聞いて「あの狼の!」とか「火薬の人」というようにパッと言葉出てくるインパクトを持っていることが素晴らしいよね。
まだまだ知らないアーティスト、いっぱいいるよね。

横浜美術館では常設展として「戦争と美術」が開催されていた。
横浜美術館のコレクションって素晴らしいんだよね!
今回観た中では「浜田知明」のエッチング作品が気になったよ。
97歳の現在も制作を続けているというからすごい!
他の作品も観てみたいな。
シュルレアリスムの作品が充実している横浜美術館、また別のコレクションも楽しみだね!

全てを鑑賞し終えてミュージアムショップに立ち寄る。
そこでまさか、の狼のぬいぐるみをROCKHURRAHが発見。
「うそでしょ?」
と言いながら友人Mと近寄ってみると、プレートには「蔡國強」とちゃんと明記されているじゃないの!
いやー、どうみてもただのぬいぐるみなんだけどね?(笑)
更に笑ってしまったのは、値下げされていたこと!
会期終了が迫っているからプライスダウンして売りさばこうってことなのかしら?
上の写真が問題の「蔡國強の」ぬいぐるみなんだけど、99匹の狼に似てるかな?(笑)

爆発というと「芸術は爆発だ!」の岡本太郎か「爆発的!」の鳥飼先生だよね、などとROCKHURRAHと話していると、
「あっ!ええっ!」
とROCKHURRAHが言葉になっていないような声をあげる。
何事か、と驚いていると
「鳥飼先生、なんと蔡國強展に行ってる!前日に!」
「ええっ!」
今度はSNAKEPIPEが声を上げてしまった!
ニアミスで鳥飼先生と同じ展覧会を鑑賞していたとは!
一日違っていたら美術館でお会いしていたかもね?(笑)

4 Comments

  1. 鳥飼否宇

    先月上京していたので、この展覧会行きましたよ。99匹のオオカミは壮観でしたね。あと、ヴィデオがよかった。火薬絵画の全貌が明らかになりました。

  2. SNAKEPIPE

    はい!(笑)
    本当にあの狼達は圧巻でしたよね!

    それにしても…。
    文中にも書きましたが、鳥飼先生と1日違いのニアミスだったとは!
    7日に設定したのが悔やまれてなりません。

  3. 鳥飼否宇

    ワタシのほうも翌日でも問題なかったので、残念でした。そのうちどこかでお会いできるかもですね。

  4. SNAKEPIPE

    そんな日が来たら、と想像すると楽しくなります。(笑)

    これからは作品鑑賞と共にお客さんチェックもしないと!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です