SNAKEPIPE MUSEUM #43 Jessica Dalva

【謎の黒い線が体を覆っていく不思議な動画】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで「SNAKEPIPE MUSEUM」においてたくさんのアーティストを紹介してきた。
そのうち人形作家だけで並べてみても、その傾向は明らかだと思うけど、SNAKEPIPEは不気味な雰囲気の作品が好みなんだよね。
えっ、今更わざわざ言わなくても良い?(笑)
今回もまた、SNAKEPIPEの心を鷲掴みにした作品に出会うことができたんだよね!
早速紹介してみよう。

Jessica Laurel Louise Dalvaについて詳細を調べようとしても、本人のHPに載っている以上の情報を得ることができなかった。
その情報によれば、2009年にオーティス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインのイラストレーション学科を卒業とのこと。
日本と同じように考えた場合、美大卒業時に22歳だったとすると現在30歳くらいなのかな?
なんと本人のHPで書いてる卒業した学校、スペルミスを発見してしまった!
(誤)Otis College of Art and Desgin →(正) Otis College of Art and Design
こんなことを日本人に指摘されてしまうなんて!(笑)
もしかして国語の成績はいまひとつだった?
作品は素晴らしいので、良しとしよう。

学校卒業後は、劇場や蝋人形館などで仕事をしているようだ。
ポスター制作や舞台装置、ロゴデザインなど色んな役割で収入を得ているんだね。
そういった仕事をこなしながら、自分の作品を発表しているみたい。
日本での紹介記事が見当たらなかったので、SNAKEPIPE独自の日本語訳や解釈で記事を書いているからね。
間違っていたらごめんなさい!

驚いてしまったのが、ジェシカ・ダルヴァ(略してこう書いていこう)の居住地。
カリフォルニア州のロサンゼルスにお住まいとのこと。
作品とカリフォルニアのギャップが激しい!(笑)
SNAKEPIPEが言わんとしていることは作品を観てもらうと一目瞭然だよ。

半裸状態の女性が両腕にカラスのような黒い鳥を従えて、天を仰いでいる。
天女が纏う羽衣ならぬ、黒く薄い布は、まるで鳥の尾が長く垂れているかのよう。
それは額縁をはみ出し、より立体感を増している。
2羽の鳥が羽ばたけば、両腕を広げて一緒に空を飛べるのではないか。
もっと風よ吹け。
大きな風に乗って、高く遠い場所へ。
飛ぶことができなかった時は、谷底に転落するかもしれない。
それでも私は行くのだ。
あの空の向こうへ。
ここではない場所へ。

などと本気で考えているように想像してしまった。(また陳腐?)
女性のアップがあるので、それも載せてみよう。
目の部分がはっきり分からないんだけど、白目を剥いているように見えるんだよね。
盲いているのか。
それともシャーマンのトランスのような状態なのか。
「Eyrie, or, Clarity of Consequence」というタイトルは意味不明。(笑)
Eyrieは〔ワシなどの猛禽ががけなどの〕高いところに作る巣。
Clarityは明快。
Consequenceは成り行き。
Clarity of Consequenceでは必然、と訳して良いのかな?
鳥の巣、または必然???
SNAKEPIPEの英語力では難しいけど、これで作品の怪しい雰囲気は分かってもらえたんじゃないかな?
夜を連想させる、ゴシック調なんだよね。

ジェシカ・ダルヴァのHPには2009年から制作している作品が載っているんだけど、初期の頃はどちらかというとパペットの延長のようなあどけない表情の人形が並んでいる。
少女をモデルにしていたのかな。
決してかわいくはないけれど、そこまでの不気味さはない。
今回特集している「Hapax Legomena」は2015年の作品群で、不気味さに磨きがかかってるよね!(笑)
それにしても 「Hapax Legomena」ってどんな意味?
調べてみると「孤語」というらしい。

コーパス言語学において、ある言語で書き記されたすべてのテキスト全体なり、
特定の作家の作品群や、特定のひとつのテキストの中など、
一定の文脈の中で、1回だけ出現する単語を意味する

Wikipediaから引用してみたけど、その一回だけ出現した単語の複数形がレゴメナだという。
一回だけ出現する単語の複数形ってところで分からなくなるよね。(笑)
「Hapax Legomena」もしくは「hapax legomenon」なんて余程のことがない限り、知ることのない言葉だと思うけど、それは「ありふれた現象」だというのも驚いちゃうね。
大層な言葉だから何か特殊な例なのかと思ってたのに、言語学って難しいね。
前のタイトルといい、全体の総称としてのタイトルも含めて、かなり文学的な思考の持ち主と推察する。
スペルミスはあるけどね!(笑)

底なし沼のような黒い泥の場所で背中を向けている女性。
白い肌に複数の黒い手が重なる。
こっちへおいで。
もっと深い場所にいこう。
その白い肌を黒く染めて、仲間に入るのだ。
こっちだよ。(また出た!陳腐!)
女性の表情は半分以上隠れているけれど、恐れているようには見えない。
覚悟して、自らの意志で底なし沼に落ちることを決めたように思える。
この作品のタイトルは「Abyss」 、意味は「深淵」だった。
ROCKHURRAHは「Abyss」と聞いて、Sex Gang Childrenの「Into The Abyss」曲を連想したらしい。
さすがポジパン好き!(笑)

ジェシカ・ダルヴァの作品は鑑賞者に不安を与えるね。
SNAKEPIPEは悪夢を見そうだよ。

白い花飾りを頭に乗せた女性。
周りを囲んでいるのは羊や蛇やうさぎ。
これらは供物、という意味なのかな?
穏やかな表情で目を伏せているけれど、体の中央には黒い影がある。
まるでウイルスが、内臓を蝕み、浸蝕し尽したため、表面に発露したような。
「Viscera, or, What More Can I Give」は「内臓、あるいは、これ以上何を与えられる」というタイトルが付いてるよ。
供物を捧げ、更には内臓まで与えました。
他にも何か与えるのですか?
もう後に残るはこの生命だけです、という感じなのか。
覚悟して、死を待っている状態なのかもしれないね。
この作品を観て、思い出したのがフリーダ・カーロの「ヘンリー・フォード病院」 だよ。
傷ついた女性と、周りを囲む物体が6つ。
フリーダ・カーロの作品は解説が書いてあるので、作品の意味は分かる。
流産という実体験を元に描かれたと聞けば、この絵は一瞬にして理解できると思う。
自らの痛みや悲しみを題材にした画家というと、松井冬子も同じかもしれない。
作品制作の源流がネガティブな感情の場合、制作は苦しいのではないだろうか。
それとも作品に昇華させることで、苦しみは減っていくのかな?

またもや苦しそうな作品を選んでしまって済みません! (笑)
完全にエビ反っちゃってるよね。
白目剥いて、 手指や腕は泥だらけ。
堕ちるところまで堕ちて、それでも這って、ほんの少しでも進もうとする。
方向は定まらないけれど、がむしゃらに逃れようとする。
一体何から逃れるのか。
タイトルは「Helix」、「螺旋」である。
逃れたつもりでも螺旋をぐるぐる回っているだけ。
どこまでも続く螺旋を、永遠に悶えながら這っていくのだろうか。
評論家だったら、「これは現代を生きる人間の精神状態を表しています」なんて言うのかもしれないな。(笑)

先に「Hapax Legomena」が、決して特殊な事例ではなく「ありふれた現象」だと書いた。
それを踏まえてジェシカ・ダルヴァの作品を鑑賞すると、「この苦しい状態は誰にでもあること」と言いたいのかもしれないね?
様々なストレスにさらされ、もろくて弱い、絶望感にあふれた危うい精神状態に陥った内面を見事に表現しているからね。
ジェシカ、大丈夫かな?
他人事ながら、ちょっと心配になっちゃうよね。
とSNAKEPIPEが勝手に思ってしまったけれど、写真に写るジェシカには心の暗闇を抱えているような女性には見えなかった。
作品の販売もしているし、本人は明るく前向きなのかもしれないね。
聴いてる音楽もポジパンとかゴシックじゃなくて、ジャスティン・ビーバー大好きかもしれないしね!(笑)

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