映画の殿 第18号 小さな悪の華+乙女の祈り

【4人の美少女(?)達!】

SNAKEPIPE WROTE:

映画のタイトルバックが終わった後、本編が始まる直前に、「Based on a true story」(この話は真実に基づく) という文言を見かけることが多い今日この頃。
例えばキャスリン・ビグロー監督の「ゼロ・ダーク・サーティ」や昨年日本で公開された「フォックスキャッチャー」なども、実話に元に制作された映画である。
「事実は小説よりも奇なり」ということなのか、映画関係者のネタ切れなのかは不明だけれど、よく見かけるフレーズなんだよね。
70年代には、どれくらいの作品が事実を元に制作されていたんだろう?
今日ご紹介する「小さな悪の華」(原題:Mais ne nous délivrez pas du mal )は1954年に実際にあった事件を16年後である1970年に映画化した作品なんだよね。

黒髪のアンヌとブロンドのロールは15歳。
寄宿学校に通う2人はバカンスを利用し、盗みや放火、また牧童を誘惑したり庭番の小鳥を殺害したり、悪魔崇拝儀式を取り行うなどの残酷な行為を繰り返していた。
やがて2人の行為はエスカレートし、死の危険を孕んだ破滅的な終局へ向かっていく。

反宗教的で淫靡な内容のため、製作国であるフランスではもちろんのこと、世界中で上映禁止になり、アメリカと日本でのみ上映されたという「いわくつき」の作品なんだよね。
そのため本国フランスでのトレイラーは存在せず、日本版のトレイラーをみつけたよ。(笑)
元になった事件というのがニュージーランドで起こった15歳の少女2人による母親殺害なので、「小さな悪の華」は15歳の少女2人が悪事に手を染める設定だけ類似させているんだね。
事件そのものとの接点はほとんどないと言って良いみたい。

1970年の作品のためなのか、少し画面が暗い。
2人の少女、と聞くと明るく清潔で希望に満ちた未来に心をときめかせている、バラ色の頬に屈託のない笑顔というイメージを持つけれど(えっ、持たない?)アンヌとロールにその少女像は通用しないようだ。
あらすじにもあるように盗み、放火、動物虐待と殺害、大人の男を誘っては逃げるなどのハレンチな行為(!)を繰り返す。
当時はキリスト教を冒涜し、悪魔崇拝の儀式を行うところが一番の問題だったのかもしれないけれど、現在ならば児童ポルノと言われてしまうようなシーンのほうに眉をひそめ、倫理がどうのと言う人が多いかもしれないね?

大人の男を誘っては、相手がその気になった途端に「これはお遊びよ!」とからかって逃げる2人。
「私の魅力に屈しないはずはない」という充分な自信を持っていたからこそできた「遊び」だと思うんだけど、SNAKEPIPEには彼女達の魅力が伝わってこなかったんだよね。(笑)
予告のトレイラーにも「黒髪とブロンドの美しい少女」って書いてあるんだけど、残念ながら賛成することができないんだな。
こんな単純な誘いに乗る大人の男もなあ、という感想を持ったけど、実際にロリコンはいっぱいいるからね。
SNAKEPIPEには理解し辛い部分だったね!

「小さな悪の華」の中でSNAKEPIPEが一番印象的だと感じたのは、2人の少女が並んで詩の朗読をするシーンかな。

若者は家に帰ると頭を抱えた
学問の詰まった豊かな脳みそ
狂気が流れる
防壁が必要
穴を掘れ
防壁が必要
穴を掘れ

全く意味不明の、さすがフランス、とも言えるようなポエム!
どうやらジュール・ラフォルグの詩やボードレールの詩を混ぜたものみたい。
「小さな悪の華」というタイトルもボードレールの「悪の華」から引用されていることはすぐに分かるもんね。
Digue dondaine,digue dondaine,
Digue dondaine, digue dondon!
フランス語を知らないので「ディガディガディン、ディガディガドン」と聞こえてしまう、この音の響きが特に耳に残り、時々真似をしてしまうSNAKEPIPE。(笑)
ここが「穴を掘れ」になってたんだけど、原語と訳では意味合い違うんだろうね?

少女2人が笑いながら悪事を行うところがポイントかな。
罪の意識を持って敢えて悪いことをする、という点が怖いんだよね。
悪いことと知らなかったから笑って悪事をしていた、のほうが一般的な気がするからね。(この表現は変だけど)
国によって残酷の基準や倫理、マナーや宗教が違うけれど、もう今は「小さな悪の華」を上映禁止にする国はほとんどないんじゃないかな?
様々なジャンルの映画が公開されている昨今ならば、もうフランスでも上映解禁されているかもしれないね。

続いて紹介するのも、同じ事件を題材にした「乙女の祈り」(原題:Heavenly Creatures 1994年)である。

クライストチャーチの女子高に通う内気な少女ポーリンと、イギリスからの転校生ジュリエット。
2人は親友同士になり、秘密の世界を作り上げる。
少女たちの絆があまりに強いため、周囲の大人は同性愛と見なし引き離そうとする。
2人は一緒にいるために作戦を考えるのだが…。

「乙女の祈り」は1954年に起きた事件をそのまま忠実に再現したストーリー展開をしている作品のようである。
監督は「ロード・オブ・ザ・リング」で有名なピーター・ジャクソン
ニュージーランドで起きた事件だから、同じ出身の監督が起用されたのかな?
ファンタジー色が強い人、と思っているとROCKHURRAHからは「バッド・テイスト」の監督というイメージだと言われる。
スプラッター・ホラーだって!
それが初監督作品だというから、ファンタジーとはかけ離れてるよね?
ただし「乙女の祈り」にもクリーチャーを使用しているので、そこがピーター・ジャクソンらしさになるんだろうね。
主人公であるポーリンとジュリエットが創作した小説世界を映像化した場面は、粘土細工の人型が動くという不思議な世界。
このシーンはなかなか面白かったね!

主人公ジュリエットを演じたのが、これがデビュー作となるケイト・ウィンスレット
「乙女の祈り」の時に18歳か19歳だと思うんだけど、非常に醜悪で驚いてしまう。
はっきり言って全く「乙女」に見えないんだよね。(笑)
もしこれが役作りだとしたら、大成功かも!
ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」でヒロインを演じて、世界的に有名な俳優になるとは思えないくらいの酷さ!
そう書いてはみたものの、SNAKEPIPEの「一生観ない映画」リストに「タイタニック」が入っているので、実際にヒロインだったかどうかは知らないんだけど!(笑)

もう一人の主人公であるポーリンを演じたのがメラニー・リンスキー
ぽっちゃりした体型に加えて、 何事も思い通りにならない青春時代の鬱屈した状態が表情に出ているので、こちらもかなりの醜悪ぶり!
2人の美少女が、とはキャッチフレーズできないなー! (笑)

現代では同性の恋愛について寛容になっているし、実際に結婚を認めている国もあるよね。
1954年のニュージーランドでは、まるで精神的に異常で、病気であるかのような扱いを受けてしまう2人。
時代が違っていたら、事件を起こすこともなく、ずっと2人で仲良く生きていかれたのにね。

「小さな悪の華」も「乙女の祈り」も同じ事件を題材にしているとのことだけど、印象はまるで違う。
前述したように事件そのものを再現しているのは「乙女の祈り」なので、事件について知りたい人にはお勧めかも。
SNAKEPIPEは事件そのものよりも、映画としての完成度としてみるならば「小さな悪の華」に軍配を上げる。
少女2人の秘密めいた雰囲気と残酷さがよく出ていると思うからね!

1954年の事件の犯人であるジュリエットはアン・ペリーと改名し、 ベストセラーの推理小説家になっているというオチがつく。
実際に事件の当事者が作家になるというケースは、そう多くないよね。
ましてや世間を騒がせた殺人犯人がベストセラー作家になるとは!
ジャン・ジュネや安部譲二を思い出すけれど、殺人犯人ではないからね。

同じ事件を題材に2つも映画が制作されるというのも稀だよね。
事件にも人を惹きつける魅力があったということなのか。
アン・ペリーの作品も読んでみようかな。

ROCKHURRAH紋章学 映像制作会社・ロゴ編

【印象に残る秀逸な映画会社のCM。1932年だって。カッコ良いね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで何度か書いたことがあるけれど、週に2〜3本の映画を鑑賞する習慣があるROCKHURRAH RECOREDS。
このブログでも「好き好きアーツ!」で監督別に作品を紹介したり、「映画の殿」というカテゴリーでは様々な角度から映画について語っているんだよね。
映画の内容だったりタイトルバックについてなどは書いてきているけれど、今回SNAKEPIPEが注目したのは映画本編が始まる前に流れる映画制作会社のCMやロゴについて。
実は今までにも「あ、今のカッコ良い!」と感じていたのにもかかわらず、会社名を控えておかなかったために失念してしまっている!
これからはメモっておかないと。(笑)
今日の「ROCKHURRAH紋章学」は、秀逸だと思うロゴについてまとめてみたいと思う。
映画や映像に関わる、実体がある会社ということに統一してみたよ!
では早速いってみよう!


映画制作会社のロゴを探している時に、思わず「おおっ!」と声をあげてしまったのが上の画像!
ベージュ、朱色、黒という3色に加え、構図もバッチリとロシア構成主義を意識しているのが解るんだよね。
なんと素晴らしいんでしょ!(笑)
カナダのオタワ州にある「REFORGER FILMS」という会社だということは調べられたし、実体があることもわかったんだけど、肝心のHPがないの。
貼られていたリンクが切れていたので、それ以上の情報は得られなかったよ。
こんなに素敵なロゴを使用する会社が、どんな映像を制作しているのか興味があったんだけどね。残念!


続いてのロゴもお洒落なんだよね。
魚の骨に見立てて会社名をアピールしてる。
STINK」はベルリン、ロンドン、ロスアンゼルス、サンパウロなど世界各国にオフィスを構えるグローバルな映像制作会社みたい。
さすがにこれだけのロゴを使うだけあって、センスが良い人材の宝庫なんだろうなあ。
HPには「STINK」が手がけた映画や広告、所属するクリエーター達の作品が載っていて楽しい。
実際に目にしたことがある作品はなかったけれど、さすがに面白い作品が多いんだよね。
ロゴがお洒落なら、制作している内容も良いだろうというSNAKEPIPEの予想は当たりだね!(笑)


ロゴだけで、どんな傾向が得意なのか判るのも重要なのかもしれない。
DANGER FILM COMPANY」 は、黒いスーツにサングラス姿の男が、ピストルの代わりにカメラを構えているロゴを使用している。
まるでタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」の中に登場するギャングのような出で立ちに加えて「DANGER」だもんね。
この会社がアットホームでハートウォーミングな映画や広告を制作しているとは思わないよね?(笑)
実際に制作した作品はホラーやクライム系の映画と紹介されているね。
サンフランシスコの制作会社とのこと。
いつか映画のクレジットに名前を発見することがあるかもしれないね?


続いてもすぐに傾向が判るロゴを使用している会社の紹介ね!
HORROR MOVIES UNCUT」はそのまま「ホラー映画」と会社名に使われているため、間違うことなくホラー専門と判るよね。(笑)
そして使用されているイラストも「いかにも」だしね!
HPやTwitter、tumblrなどいくつもの情報サービスを使用してホラー関係のニュースやインタビュー等を載せていることを確認したよ。
いくつかのサイトで探してみたけれど、これは制作会社ではなくて単なる「ホラー好き」な人のウェブサイトみたいだね。
今回設定していた「実体のある制作会社に限定」から外れてしまった!
しかもHPを運営しているのが誰かも不明なの。
HPは頻繁に更新しているし、かなり情報密度が濃いのにね?
「ABOUT US」という項目がないので、不明なままロゴの紹介だけで終わることにしよう。(笑)


続いてもホラーつながりでこちらのロゴを。
CRUMPLESHACK  FILMS」 は、いまにも傾きそうな掘っ立て小屋を使用したロゴなんだけど、ものすごく怖いよね。
中にはどんな人がいて、何を行っているんだろうと想像してしまう。
予想通り、この会社はホラー専門のようだね。
親会社が「DUSTIN MILLS PRODUCTIONS」で、その別ラインとして「CRUMPLESHACK FILMS」があるということみたいだね。
「The dark dirty underbelly 」、直訳すると「暗く汚い下腹部」部門が「CRUMPLESHACK FILMS」ということみたい。
きっとホラーの中でもエグい映画と想像する。
得体の知れない恐怖感は直に伝わってくるので、このロゴの使用は成功だろうね!(笑)


親元である「DUSTIN MILLS PRODUCTIONS」のロゴも素敵なので紹介してみよう。
頭部がぱっくり割れた人のイラスト、ということで良いのかしら?
こちらも「いかにも」ホラーなんだけど、コミカルでシンプルなのでステッカーやTシャツになっていても通用するよね。
実際Tシャツとして販売されているページもあったし!
ちなみにお値段は$19.99、日本円で約2400円くらいかな。
黒、赤、白という3色でなかなかお洒落なんだよね。
ちょっと欲しい。(笑)

今回の企画である「映画制作会社」もしくは「映像制作会社」のロゴや宣伝用の映像については、これからも探していこうと思う。
映画本編が始まる前にもチェックしていこう!

映画の殿 第17号 映画の中のニュー・ウェイブ03

【表紙の写真の関連性が不可解な組み合わせだな

ROCKHURRAH WROTE:

ずっと前に、続きを書くのをすっかり忘れてた企画があったのを急に思い出してしまった。「映画に使われた70年代、80年代の曲特集」という内容。
もちろんROCKHURRAHが書く記事だからパンクやニュー・ウェイブの音楽だけに限って集めてみたよ。
SNAKEPIPEが書く「映画の殿」の記事とは少し趣向が違ってて、映画の内容にはあまり肉迫しないのが特徴。

さて、今回集めてみたのはこんな3本だよ。

まずはこれ、1991年の「羊たちの沈黙」。
近年の海外TVドラマ「ハンニバル」シリーズの元祖、そして今では巷に溢れているサイコ・サスペンスと呼ばれるジャンルの元祖的な映画がこれだから、時代は古くてもこの手の映画ファンならば誰でも知ってるような作品だ。
TVシリーズではマッツ・ミケルセンが演じたハンニバル・レクター博士だが、オリジナルの映画版の方ではアンソニー・ホプキンスが強烈な印象で演じ、ハンニバルの代名詞と言えばやっぱりこちらの方だと思う。
特に拘束衣、拘束マスク(?)をつけたあのヴィジュアルは大のお気に入りで、SNAKEPIPEが時折、物マネをするほど(笑)。
アンソニー・ホプキンスは調べてみたらハンニバル以外でもケロッグ博士、ニクソン大統領、ピカソ、ヒッチコック、ハイネケン(ビール会社の社長)、プトレマイオス1世など様々な偉人を演じてる模様。ピカソはかなり似てると思うが、映画は未見。

ハンニバル・レクターが登場する映画は何作かシリーズになっているが、ROCKHURRAHはリアルタイムでは全然観てなくて、後にSNAKEPIPEの勧めで全部観ただけ。原作まで全部読んでるSNAKEPIPEとは大違いだな。

この映画で使われたらしいのがコリン・ニューマンの1stアルバム「A-Z」に収録の「Alone」という曲なんだが・・・。実はどのシーンで使われてたのか全く記憶にないんだよね。
YouTubeで探してみたが、たぶんこんなシーンでは使われてなかったような気がする。しかも途中でぶち切れ、あまり良いクリップが見つからなかったので我慢してね。ジョディ・フォスターが若い!

コリン・ニューマンは1970年代パンクの時代に活躍したワイアーのヴォーカリストだった人。大多数の人がワイヤーと表記しててたぶんそっちの方が正しいんだろうけど、ROCKHURRAHはなぜかずっとワイアーと読んでたよ。今日から急に改める気もないからこのままワイアーと呼ばせて。

ワイアーはパンクっぽい曲もあるけど、より知的でアーティスティック、ポップな面と実験的な面を併せ持った音楽性で、一味違う新しいものを求めていた若者に支持された。
それより少し後の時代に誕生したニュー・ウェイブ、ポスト・パンクへの橋渡しをしたバンドとして評価が高いね。
基本的にはワン・アイデアだけで一曲を完成させる簡素なスタイルが多かったけれど、数多くの他のミュージシャンがその音楽の切れ端からヒントを得た。alternative( 別の可能性、取って代わるもの)な音楽が誕生して発展したきっかけになったようなバンドだと思う。

分裂した後で再結成したり、後の時代も活動を続けるワイアーだが、ウチらの世代で言うとやはり初期の3枚の傑作アルバムに集約されているな。時代が目の前で変わってゆく空気感がビリビリと伝わるような音楽。
ワイアーが分裂状態になった後、80年代初頭にソロ活動を始めたコリン・ニューマンはこれまた元ワイアーの名に恥じない名曲をいくつも書いて、個人的にはとても好きなアーティストだった。
格別に特徴のあるスタイルや個性ではないけど、いそうで滅多にいないタイプの声や歌い方、これが素晴らしい。
歌詞が出てこなかったのかどうか不明だが、単に「あーーー!」という叫び声だけがメインの名曲「B」や「あーあーあー」というハミングだけで一曲モノにした傑作「Fish 1」など、今聴いても色褪せないな。文章だけだと何だか「うめき声マニア」みたいだが(笑)。

さて、次は2001年の映画「ドニー・ダーコ」だ。
これは80年代ニュー・ウェイブが効果的に使われた映画の成功例だから知ってる人も多かろう。
タイトルはヘンな響きだがそれが主人公の名前だ。
高校生ドニーを演じるのは暗い目つきのジェイク・ギレンホール、あまりさわやかさとか可愛げのない役どころだったから意外とピッタリだったのかもね。実の姉、マギー・ギレンホールが映画でも姉役で出ているな。

ドニーはある日、可愛げのない不気味なウサギ、フランクのお告げにより「世界の終わりまでの時間」を知る。
翌日、変な場所で目覚めた彼が家に戻ると、不在の間に近所で飛行機が墜落、そのエンジンが自室の屋根を突き破るというありえないような大惨事が起こっていた。ウサギに誘われて家を出なければ間違いなく死んでただろうという事態。
その後はウサギの言うがままに様々な騒動を起こしたり、転校生と恋に落ちたり、普通じゃないけど一応青春と呼べなくはない展開が色々あって、物語は世界の終わりの時まで進んでゆく・・・。
「わかりにくい」「不可解」という前評判があったが、勝手に想像したような不条理映画ではなかったな。

この映画の冒頭、主人公ドニーが自転車で峠道みたいなところを走るシーンで使われているのがエコー&ザ・バニーメンの「The Killing Moon」だ。
今の時代、このバンドについて言ってる人はあまりいないとは思うが、当時はエコバニではなくてバニーズと「通」ぶった略し方をしていたな。
1980年代に湯水のように出てきたリヴァプール発のバンドの代表格が彼らだった。これまた今では死語に近い「ネオ・サイケデリア」と呼ばれた音楽の中で最も成功したバンドのひとつでもある。

ヒネクレ者で王道嫌いなROCKHURRAHは同じリヴァプールの中では日本での人気がイマイチなティアドロップ・エクスプローズやワー!などを好んで聴いているフリをしていたが、実はバニーズにもどっぷり漬かっていた。しかし人に聞かれたらやっぱり誰も知らないようなマニアックなバンドを挙げたりする。この辺の素直になれない心理もずっと成長してないなあ。

ちなみにこの映画はバニーズのこの曲以外にもジョイ・ディヴィジョンやオーストラリアのチャーチ(多作で有名)、ティアーズ・フォー・フィアーズなど80年代音楽が使われているが、使い方のポイントがイマイチだと個人的には思う。

最後はこれ、2006年の「マリー・アントワネット」。
父親が偉大な監督、娘は七光りのように言われるのは仕方ないがフランシス・コッポラの娘、ソフィア・コッポラが監督の作品だ。

世界史に明るくない人間でも名前くらいは知ってるであろう、政略結婚でオーストリアからフランスに嫁いだマリー・アントワネットをキルスティン・ダンストが演じる。 しかしこれは歴史映画などではなく、王女になってしまった気さくな女の子が宮廷を舞台に奔放な生き様を見せるような映画で、試みとしては異色なのかも。
この手の映画としては会話も少なく、当時の最先端の宮廷ファッションや乱痴気騒ぎのパーティ・シーン、部屋でスイーツ食べながらダラダラしてるようなシーンの連続で実にライトな出来となっている。

監督の好みなのか何なのかは分からないが、この映画もパンクやニュー・ウェイブがふんだんに使われていて、しかも割とハッキリとした音量で流れるので、ROCKHURRAHにとっては音楽の部分だけは高評価だった。
せっかくの名曲なのに数秒しか使われなかったり会話でぶち切れになったり、そういう使われ方の映画が多いからね。単なるBGMでも敬意を払ってない監督が多すぎ。
上の仮面舞踏会のシーンではスージー&ザ・バンシーズの「Hong Kong Garden」がストリングスのアレンジで使われているな。他にもバウ・ワウ・ワウやアダム&ジ・アンツ、ギャング・オブ・フォーなどもまあまあ効果的に使われていて、80年代ファンならば納得出来る。

以上、タイトル画像の表紙がよくわからなかった人でも、ここまで読めば関連性が理解出来ただろう。

今回の記事には関係ないけど。
一番最後になってしまったが先週、突然世界中が悲しみにつつまれたデヴィッド・ボウイの訃報。これだけ「70年代、80年代のパンクやニュー・ウェイブ」ばかりを扱ったサイトなのにボウイについて何も思い出がないはずがない。パンクやニュー・ウェイブの誕生に最も影響を与えた一人かも知れない。
しかし本人の言葉通り、彼の音楽はいつまでも輝き続けるだろうし、知り合いのような追悼の言葉は出て来ない。
これからもROCKHURRAH RECORDSはデヴィッド・ボウイの影響を受けた一人として活動してゆくつもりだ。まるで音楽をやってる者のような語り口で偉そうだが、これがウチなりの追悼。
ではまた来週。

SNAKEPIPE MUSEUM #36 Nicholas Hlobo

【パフォーマンスしてるNicholas Hloboの動画】

SNAKEPIPE WROTE:

前回の「SNAKEPIPE MUSEUM」でも書いたけれど、最近は欧米系のアートよりも今まで観たことがないアートに関心があるんだよね。
今回は南アフリカのアーティストを紹介しようと思う。
南アフリカというと2013年に「SNAKEPIPE MUSEUM #19 Kendell Geers」を書いたことがあったっけ。
南アフリカについてほとんど知らないSNAKEPIPEは、ケンデル・ギアーズの記事の中に簡単な説明をしている。

予備知識としてWikipediaで南アフリカについて読んでみたら、アパルトヘイトは既に廃止されていること、
白人の割合が10%以下で、それ以外は有色人種であること、平均寿命が48歳(!)、更にアパルトヘイト廃止後に失業率が上がり、治安が悪化していることなどを知る。

過去に自分で調べたことなのに、読み返して「そうだったのか」と驚くSNAKEPIPEだよ。(とほほ)
ケンデル・ギアーズは南アフリカでは少数派の白人で、かなり過激な作品が特徴のアーティストだったね。
他に南アフリカを知ったといえば、「第9地区」や「チャッピー」の監督であるニール・ブロムカンプが出身地である南アフリカを舞台にしていて、その町並みや雰囲気を少しは映画で知ることができるね。
そして「チャッピー」に出演していたニンジャとヨーランディが所属しているダイ・アントワードというラップグループもケープタウン出身とのこと。
服装や髪型など、一度見たら忘れないようなスタイルのグループだったよ。
南アフリカというのは、独自の文化を生み出しているみたいだね。
今日ご紹介するニコラス・フロボも個性的な作風が特徴だよ!

最初にこの画像を見つけたROCKHURRAHが「怖い作品」と言う。
確かに現代アートの作品と聞かないと、まるでドラマ「ハンニバル」に出てきた、「どうだ」といわんばかりの殺人現場のようだよね。
コウモリの羽根のような左右の広がり、そして血のように見える赤いヒモがたくさん垂れ下がっている。
人の形に見えてしまうんだけど、違うのかな?
「Iimpundulu Zonke Ziyandilandela」という2011年の作品なんだけど、タイトルが英語じゃないので意味が解らない。(泣)
こんな犯罪めいた、不気味な作品を作っているニコラス・フロボって一体どんな人なんだろう?

ニコラス・フロボは1975年南アフリカのケープタウン生まれ。
現在はヨハネスブルグで活動しているらしいね。
2002年 Technikon Witwatersrandでテクノロジーを学ぶ。
2006年 Tollman Award for Visual Artで優勝
2009年 tandard Bank Young Artist Award
2010年 ビクター・ピンチューク財団に創設されたThe Future Generation Art Prize賞のファイナリストとなる。
調べてみると、このThe Future Generation Art Prize賞というのは、国際的に有名な現代アートの登竜門的な賞のようで、パトロンとして名を連ねているのがダミアン・ハーストやジェフ・クーンズ、更に村上隆の名前も発見してびっくりんこ!(笑)
2011年Rolex Mentor and Protégé Arts InitiativeのVISUAL ARTS部門に選出される。アニッシュ・カプーアを師匠とするコラボ作品を作る企画だったみたいだね。そしてベネツィア・ビエンナーレにも参加している。
2008年から作品は世界中で展示されているようで、テート・ギャラリーにも展示されているという。
そんな新進気鋭のニコラス・フロボ、日本での知名度はまだ低いみたいで、日本語の記事は皆無に等しかったなあ。(笑)

ニコラス・フロボは素材としてゴム製のチューブ、リボンやレースを使うことが多いようだ。
上の画像は2011年の作品「Balindile II」 で、やっぱりゴム製チューブとリボン、ホース、そして鉄材とキャンバスを使用しているという。
とても不思議な雰囲気の作品だよね。
何か意味があるんだろうけど、意味を知らなくても好きだね!(笑)

こちらも似た素材を使用した2009年の「Izithunzi」。
ゴムで圧迫され、手足を拘束されたまま放置されている人のように見えるのはSNAKEPIPEだけかしら?
やっぱり犯罪めいて見えてしまうよね。
放置プレイともいえそうだけど?(笑)

ROCKHURRAHが「これはどうしてもゴジラ対ヘドラのヘドラに見えてしまう」と言っていた作品が右上の画像。
これも上と同じ2009年の「Izithunzi」ね。
ヘドラを知らないSNAKEPIPEが検索してみたら!
確かに似てるんだよね。(笑)

南アフリカはもしかしたら想像以上に先進的な国なのかも?
まだまだ知らない国の面白いアートがたくさんありそう!
今回紹介したニコラス・フロボも是非生で鑑賞してみたいな。