SNAKEPIPE MUSEUM #56 Charles Sheeler

20200823 08
【1940年、雑誌「フォーチューン」誌に掲載された作品「Fugue」】

SNAKEPIPE WROTE:

好みのアーティストはいないか、と検索を始める。
なかなか自分の求めるタイプは見つからないけれど、ドンピシャの作品やアーティストを発見した瞬間、歓喜する。
まるで宝物を掘り起こした気分なんだよね!(笑)

今回紹介するアーティストも、そんな検索で見つけたのである。
それは写真家であり画家のチャールズ・シーラー
まずは経歴を調べてみよう。

1883年 米国ペンシルベニア州フィラデルフィアに生まれる
1900〜03年 ペンシルベニア博物館工芸学校に通う
その後ペンシルベニア美術アカデミーに参加する
1908年 マクベスギャラリーに作品が展示される
1909年 パリを訪れた後、アメリカに帰国
5ドルでブローニーを購入し、独学で商業写真家となる
1939年 最初の妻と死別してから6年後、2度目の結婚をする
1942〜45年 メトロポリタン美術館の出版局に勤務し、
芸術作品や歴史的建造物を撮影する
1965年 死去

なんと!
写真の教科書に載っていても不思議ではないシーラーのことをシーラーなかったなんて。(プッ)
それにしても「画家では生活できないから商業写真だ!」と、すぐに切り替えるとは先見の明があるよね。
実際には写真でも絵画でもお金を稼ぐことができたようなので、良かったよ。
マルセル・デュシャンと友情を育み、1950年代にはアレン・ギンズバーグとの親交もあったらしい。
1920年代から1930年代にかけて、アメリカでプレシジョニズム(精密派)と呼ばれる絵画様式の第一人者としても名前が出てくるシーラー。
プレシジョニズムとは都市の風景や工場、倉庫、機械などの建造物を題材にして、写実的に描写する特徴を持つという。
この様式については、ものすごく興味があるよ。

検索していて最初に目に入ったのがこの画像。
インダストリアル好きの心を刺激する一枚だよ!
交差した鉄骨の向こうに見える煙突。
SNAKEPIPEが写真撮影に熱中していた頃、目指していたのはこんな風景を撮影することだったからね。
「Criss-Crossed Conveyors, River Rouge Plant, Ford Motor Company(交差コンベア、リバールージュ工場、フォードモーターカンパニー)」は1927年の作品で、フォード・モーター社の依頼により撮影されたようだね。 
近代の工場生産による技術を見せるための商業写真だったようだけど、記録写真というよりはアート作品だと思うよ。
こういう作品に巡り合うと、本当にワクワクしてくるんだよね!(笑)

他の作品も検索してみる。
工場の一部をクローズアップで撮影した作品。
「Ford Plant, River Rouge, Blast Furnace and Dust Catcher(フォード工場、リバールージュ、高炉、ダストキャッチャー)」も1927年の作品なので、撮影経緯は同じだろうね。
2010年11月に「SNAKEPIPE MUSEUM #06 Margaret Bourke-White」で特集したマーガレット・バーク=ホワイトが、雑誌「LIFE」の創刊号で表紙を担当したダムの写真を撮影したのが1936年。
シーラーはバーク=ホワイトより約10年前に、インダストリアルな写真を撮っていたことになるね。 
やっぱり1920年代は憧れだなあ!

分かるーーーっ!
煙突からの煙!
そして円筒に見える、並んだビス!
撮るわ、見たら絶対撮るわっ!
興奮気味のSNAKEPIPEはもうよだれタラタラだよ。(笑)
タイトルは「Industrial Study No.2」で1935年の作品だって。
やっぱりインダストリアルなんだね!
ちなみにこの作品、クリスティーズで$106,250、日本円で約1,120万円で落札されたらしい。
一体どんな部屋に飾られているんだろうね?

建造物を撮影するためなのか、どうしても縦位置が多くなるんだろうね。
SNAKEPIPEも縦位置が得意だったよ。
1952年に撮影された「Meta-Mold, Cedarburg, Wisconsin(メタモールド、シーダーバーグ、ウィスコンシン)」も、恐らく工場関係の写真だと思うけど、まるでパルテノン神殿みたいじゃない?(笑)  
表現が大げさか。
デヴィッド・リンチも似た雰囲気の写真を撮っていたことを思い出すね。
きっとリンチもシーラー好きだろうと想像する。
2人とも写真も撮れば絵も描くところも共通してるしね。

「Self-Portrait」と題された1923年の作品。
紙にクレヨン、ガッシュ、鉛筆で描かれているという。
この時、シーラーは40歳くらいかな?
後方に上半身がなんとなく見えているけれど、これがシーラー本人ということなんだろうね。
手前の電話機(?)がメインに見えてしまうので、最初はこれを擬人化してセルフポートレートと言ってるのかと勘違いしたのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
自画像と呼ぶには、一風変わった趣向だよね。

「American Landscape」は1930年の作品。
これは油絵なんだよね。
これぞまさにプレシジョニズムといったところなのかな。
工場を描いているのにタイトルが「アメリカの風景」というところがポイント。
シーラーにとって見慣れた風景であり、恐らく対岸からの眺めを好んでいただろうと予想する。
SNAKEPIPEも同じ場所に立ったら、佇んで煙の行方を追うだろうな。(笑)

直線と影がくっきりして、まるでイラストのようじゃない?
「Cat-walk」は1947年の作品だって。
工場のクローズアップを絵画で表現している油絵なんだよね。
大きさは24 x 20 in. (61 x 50.8 cm)というから、そこまで大型ではないよね。
これにはかなりグッと来たSNAKEPIPE。
SNAKEPIPE MUSEUMに是非所蔵したいよ!
ちなみにクリスティーズのオークションで$1,332,500、日本円で約1億4,100万円だって。
それは残念。
いいな、と思ったら億超えかー!(本気で買うつもりか?)

チャールズ・シーラーを知ることができて本当に嬉しい。
「今頃知るなんて、本当に写真の勉強してたの?」と呆れ顔の方もいるかもしれないけどね!
日本での個展などは開催されていないみたい。
川村記念美術館あたりで大回顧展やってくれないかな。
没後55年ってことでどうだろう?

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