STARS展 鑑賞

20201025 top
【STARS展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

友人Mと一緒に出かけたのは、森美術館で開催されている「STARS展」である。
これは「多様な地域や世代から高い評価を得るアーティスト6名を選び、その活動の軌跡を初期作品と最新作をつなぐかたちで紹介する」という企画物。
世界的にも有名な日本人現代アーティストというと、当然のように知った名前が並んでいることは予想できる。
そんな「超大物アーティストが一堂に会する、壮観かつ圧巻の展覧会」を鑑賞できるのは、お得な感じだよね?(笑)

午前中に用事を済ませ、六本木でランチを食べる。
少し早い時間だったせいか、レストランが空いていたのは良かった。
お腹を満たしてから、森美術館のある53階へ。
「カレーパン」の袋を持った人を多く見かけて謎だった。
帰宅後調べてみると、どうやら嵐の大野智作品展が開催されていたんだね。
「智のカレーパン付きチケット」なんていうのもあったみたい。
そういうことだったのか、と納得したよ。(笑)
エレベーター待ちの人のほとんどは嵐目的だった、ということだね。

それでは展覧会の感想をまとめていこうか。
森美術館はいつも通り、作品の撮影オッケーだったよ。
やっぱりいいね、森美術館!(笑)

会場に入ると最初に登場したのは村上隆の作品だった。
「チェリーブロッサム フジヤマ JAPAN」を背景にした「Ko²ちゃん(プロジェクト Ko²)」がお出迎え。
高さが180cmを超える、村上隆のフィギュアタイプを観るのは初めてのこと。
アニメや漫画などでは当たり前になっている女の子の、異常なまでの大きなバストや足の長さを強調したプロポーションを再現した作品である。

載せた画像は「マイ・ロンサム・カウボーイ」で、2008年にサザビーズのオークションで、約16億円で落札されたことが話題になった作品なんだよね。
2015年11月に鑑賞した「村上隆 五百羅漢図展」の感想にも同様の内容を書いているSNAKEPIPE。
実物を観ていないので感想は言えない、とも書いているね。
ついに今回、ご対面となったわけだ。(笑)
男女のキャラクターに共通して感じたのは「おちょくってる」のかな、ということ。
好き嫌いは別として、賛否両論の感想がある作品というだけで、現代アートとして成り立っているのかもしれない。
ジェフ・クーンズの「ラビット」なども同じ理由で高額になるのかな、と想像する。
SNAKEPIPE MUSEUMだったら何十億も払って、この作品買わないけどね。(笑)

続いては李禹煥(リ・ウファン)。
SNAKEPIPEは初めて聞く名前だよ。
1936年韓国慶尚南道生まれで、1956年に来日。
日本を拠点に活動しているアーティストだという。
石、木、紙、綿、鉄板、パラフィンといった〈もの〉を単体で、あるいは組み合わせて作品とする「もの派」を理論的に主導した人物とされている。
「もの派」というのは哲学や老荘思想などの影響を受けた「あるがままの世界との出会い」を目指す、作らないアートだったという。
確かに「関係項 ー 不協和音」はステンレスの棒と石が、床に固められた玉砂利に置かれている状態の作品だったからね。
なんとも静謐な空間で、日本庭園の一つである枯山水のイメージだったよ。
ステンレスという金属が使用されているところが、SNAKEPIPEの好み!

つい先月、草間彌生美術館に行ってきたばかりだけど、世界的に有名な日本人アーティストで外せないからね。
画像は、「女たちの群れは愛を待っているのに、男たちはいつも去っていってしまう」で2009年の作品である。
相変わらずタイトル長いなあ。(笑)
連なる横顔は、「わが永遠の魂」シリーズでよく見かけるモチーフだよね。
きっと何か意味があるんだろうな。
絵画以外に立体作品の展示もあり、こじんまりしていたけれど、草間彌生の過去と現在を知ることができる内容だったよ。

草間彌生ブースから次に向かうと、突然暗闇になる。
「スマートフォンを落とさないように」
と係員から注意があった。
目の前には暗い空間が広がり、その中に何やら光る物がある。
柵から身を乗り出すようにして確認すると、それらは数字だった。
なるほど!
だから「落とさないように」なんだね。(笑)
これは宮島達男の「時の海 ー 東北」プロジェクトだという。
LEDを水の中に設置し、3.11で被災した人々3000人に参加を呼びかける作品になるそうだ。
現在の参加者が719名なので、あなたも参加しませんか?という葉書が置かれていたよ。
遠くまで続いているように感じる暗い黒い海の中にある光は、海に沈んだ魂のように見える。
おごそかな気持ちになると同時に、とても美しい作品だなと思ったよ。

奈良美智の作品は今まで何度か目にしているけれど、無愛想な表情をした女の子に全く魅力を感じることがなかった。
どうして評価を受けているのか分からないアーティストなんだよね。
今回展示されていた中で、唯一「かわいい」と思ったのは、この作品。
「Lonely Moon / Voyage of the Moon」は金沢 21 世紀美術館の所蔵作品とのこと。
奈良美智の愛用品も展示されていたけれど、あまりピンとこなかったな。

最後は杉本博司だった。
杉本博司はコンセプトに基づき、写真を使用した表現で評価されているアーティストなんだよね。
SNAKEPIPEが一番最初に知ったのは「劇場」シリーズで、映画館で上映中の映画を撮影した作品だった。
映画上映時間と同じ露光時間を設定し、映画の終了でやっとシャッターを切り、一枚の写真を撮るんだよね。
長い露光時間では動いている物が写らないため、映画館の内部を撮影した写真にしか見えない。
時間を写す、というところがポイントなんだけど、難解だよね。(笑)
「Revolution 008 カリブ海、ユカタン」は、本来は横位置の写真を縦にして展示されている。
「水平線は地球の輪郭線の一部へ転換され、意識は大いなる宇宙へ放たれます」と森美術館の説明に書いてあるけど、どうだろう?
SNAKEPIPEは純粋にモノクロームのグラデーションが美しいと感じたよ。

30分ほどのビデオ作品「時間の庭のひとりごと」は、2017年に小田原に開館した「小田原文化財団 江之浦測候所」を紹介している。
この測候所に今まで2度足を運んでいる友人Mは、食い入るように映像を鑑賞していたよ。
「とても素敵な場所」と友人M のお墨付きなので、いつか行ってみたいね!(笑)

日本の現代アートを代表する面々の作品が一堂に会する展覧会は初めてかも。
名前と作品が一致し、ある程度の予備知識を持って鑑賞したため、新鮮な驚きが少なかったとも言えるかな。
感想をまとめるにあたってアーティストについて調べる機会を得た。
韓国生まれの李禹煥は日本に向かったけれど、他の面々は日本を飛び出し、海外に活動拠点を持ったり生活していることが分かった。
世界的に有名になるには、グローバルな視点が必要なんだなと改めて思ったよ。
1957年に渡米した草間彌生は先駆けということになるんだね。

次回の森美術館も楽しみにしていよう!(笑)

鴻池朋子 ちゅうがえり 鑑賞

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【会場入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSにとって特別な日が10月にある。
この日はお祝いをかねて、何かしらのイベントを計画するのが毎年恒例なんだよね。
「ここに行ってみない?」
とROCKHURRAHから提案されたのが、アーティゾン美術館の展覧会だった。
初めて聞く美術館だよ!

調べてみると2019年にブリヂストン美術館から、ART(アート)とHORIZON(ホライゾン)を合わせた造語であるアーティゾン美術館に改称したという。 
そもそもブリヂストン美術館に聞き覚えがないし、訪れたこともないんだよね。
もしかしたら今まで興味を引く展覧会がなかったのかもしれない。
アーティゾン美術館は日時指定の予約制で、WEB予約での受付と当日窓口での受付では料金が異なるという。
早い時間に予約し、ゆっくりランチを楽しむことにしようか。

当日は台風が関東地方を直撃か、という予想が外れた雨空だった。
それほど雨風は強くなかったので、展覧会の鑑賞には丁度良かったかもしれない。
日本橋から徒歩5分という案内通り、駅からそんなに遠くない場所に「BRIDGESTONE」の文字がガラス越しに見える。
そういえば高校時代は自転車通学をしていたSNAKEPIPE。
買ってもらったのは赤い車体に黒文字で「BRIDGESTONE」のロゴが入った自転車だったことを思い出す。
他の自転車より高い位置に展示され、お値段も高めだったけれど、一度の故障もなかった優秀さ!
さすがブリヂストンだな、と思ったっけ。(笑) 

ビルの建替えが2019年7月に完了し、2020年1月からオープンしたというアーティゾン美術館は、さすがに新築でピカピカ!
手指の消毒や体温測定に加え、入場は一人ずつ間隔を空けるなど、コロナ対策も行われている。
それにしても美術館のスタッフの方々が制服として着用しているのが、まるで作務衣のようで見慣れない感じ。
「こちらへ」
なんて手招きされると、美術館にいるというよりは旅館かと錯覚しちゃう。(笑)

今回は「3展覧会同時開催」として3フロアの展覧会を1枚のチケットで鑑賞できる企画だった。
「6Fからご鑑賞ください」
6F→5F→4Fと下っていくことになるんだね。
最初は鴻池朋子の「石橋財団コレクション×鴻池朋子 ちゅうがえり」。
展覧会名の前に「ジャム・セッション」という言葉が付いている。
どうやら石橋財団のアート・コレクションとのコラボ企画ということらしいけど、いまいち意味不明だよ。
それにしても鴻池朋子というアーティストは初めて聞くなあ。
少し調べてみようか。

1960年秋田県生まれ。
1985年東京藝術大学絵画科日本画専攻卒業後、玩具、雑貨などのデザインに携わる。
現在もその延長で、アニメーション、絵本、絵画、彫刻、映像、歌、影絵、手芸、おとぎ話など、様々なメディアで作品を発表している。
場所や天候を巻き込んだ、屋外でのサイトスペシフィックな作品を各地で展開し、人間の文化の原型である狩猟採集の再考、芸術の根源的な問い直しを続けている。(オフィシャルサイトより)

1960年生まれといえば今年60歳、還暦?
とてもお若い見目姿に、うそでしょーと驚いてしまう。
芸大の日本画といえば、松井冬子の先輩にあたるんだね。
国内外で数多くの展覧会に参加しているようだけど、今まで一度も出会ったことがないみたい。
一体どんな作品なんだろう?
会場入口で撮影に関しての文章があった。
「撮影禁止」と表示されている以外はすべてオッケーとのこと!
アーティゾン美術館いいねー!
バシバシ撮らせてもらおう。(笑)

会場に入ってすぐ、目に飛び込んできたのは「皮トンビ」という大型作品だった。
横12m、高さ4mという大きさは、少し離れないと全体を鑑賞することが不可能だね。
遠目から、更に近付いて鑑賞してみる。
タイトル通り、レザーを革紐でつなぎ大きな一枚の皮にしている。
その上にアクリル絵の具とクレヨンで描いているという。
この作品は瀬戸内国際芸術祭 2019で発表されたらしい。
オフィシャルサイトに載っていたその時の様子をROCKHURRAHが観て、展覧会行きを決めたらしい。
面白そうだと感じた直感は正しかったね!
瀬戸内国際芸術祭で展示されていた森の中に静かに佇むトンビ、迫力あっただろうな。
その時に観たかったな、と思う。
レザーをキャンパスとして使用する作品を観たのは、初めてじゃないかな。

「竜巻」は2020年の作品だという。
作者の趣向なのか、タイトルが作品の近くに提示されてなかったため、タイトルを知ったのは帰宅後なんだよね。
鑑賞している時点では、何を表しているのか不明だった。
複数枚の謎の黒いラインが並んでいる様は、とても好みだよ。
これらの作品は、石版石を用い伝統的な方法で制作したリトグラフ版画とのこと。
「皮トンビ」とは違った雰囲気だったね。

「ドリームハンティンググランド」も大型作品だったよ。
シナベニヤに水彩で描かれているのは、原始の森のような不思議な情景だった。
その上に毛皮が貼り付けられているんだよね。
調べてみると「クマ、オオカミ、シカ、テン他」の毛皮を使っていたようだけど、全部は確認できなかった。
色合いが美しくて、存在感があったね!

「カレワラ叙事詩」はオオカミとヒグマの毛皮を使用した作品だった。 
上の作品にも毛皮を貼り付けていたけれど、鴻池朋子は毛皮やレザーを使用することが多いみたいだね。
キャンバスに毛皮を貼り付けたといえば白髪一雄を思い出すよ。
どうやら鴻池朋子は「害獣として駆除」された獣の毛皮を入手して、作品に取り入れているらしい。
大きなヒグマの毛皮を広げ、お腹の部分にオオカミをお腹合わせに合体させているんだね。
これもいわゆるキマイラか?
タイトルの「カレワラ」は、フィンランドの民族叙事詩のことみたいね。

会場の中央に設置されていた円形の展示は、襖絵と滑り台だった。
滑り台の意味は不明だったけれど、ROCKHURRAHと共に子供さながらに滑ってみたよ。(笑)
そして襖絵を鑑賞する。
石が貼り付けられたもの、地球が描かれたもの、竜巻が描かれたものなど、いくつかのパターンがあった。
鴻池朋子が芸大の日本画出身と聞くと、襖絵は納得しちゃうね。
いわゆる日本画とは違う襖絵といえば、爆撃の様子を描いた会田誠の「たまゆら(戦争画RETURNS)」があったね。
伝統的なイメージとは、かけ離れて新鮮に映るよ。

「影絵灯篭」は自転車の車輪を組み合わせた仕掛けに、紙でつくったモチーフを吊り下げ、ライトを当てグルグル回した作品なんだよね。
次々と形を変える影絵が面白い。
どの瞬間を捉えたら良いのか迷いながら、複数回撮影する。
人間から動物に移り変わっていくかのような奇妙さ。
また人間に戻り、そして動物になる無限ループ状態なのか?
奇妙なモチーフを影絵で見せたクリスチャン・ボルタンスキーの作品を思い出す。
ボルタンスキーの場合は、風で揺らぐことで影の大きさを変化させていたね。
影絵をモーターで回す鴻池朋子の作品、とても良かったよ!

「こっ、これはっ!」
思わず声を発してしまったSNAKEPIPE。
本物のオオカミの毛皮が天井から吊り下げられているんだもん。
2015年に横浜美術館で観た「蔡國強展」を彷彿させる作品だよね。
会場の入り口に「毛皮が肌に触れる作品があります」といった注意書きがあったのは、この作品のことだったのかと納得。
この「毛皮カーテン(SNAKEPIPE命名)」をくぐらないと、通路は通れないからね。
好き嫌いは分かれるかもしれないけれど、インパクトが強かったよ。

順路を進んでいくと、まるで別の作家のような作品群が登場する。
これは様々なエピソードを、布で立体的に作った絵本なんだよね。
人から聞いた話をもとに、鴻池朋子が下絵を担当。
その下絵から話をした本人が手芸で立体絵本を制作したプロジェクトだという。
一つの絵にそれぞれ物語があるので、全部を読むことはできなかったよ。
どちらかというと他愛のない、子供時代のお話なのかな。
立体の絵本がとてもかわいらしくて、それまで観てきた作品とは全く違う雰囲気に驚く。
このシリーズは、とても女性的で一般受けしそうなんだよね。(笑)

例えば狩猟時代に男が狩りをして獲物を捕らえて帰ってくる。
獲物の皮を剥ぎ、肉を焼いて食べる。
家を守る女は毛皮で衣服を作り、肉を調理する。
人間が自然の一部として、循環の中に組み込まれ共存していた時代を、アートとして提示しているのが鴻池朋子なんじゃないか、という感想を持ったSNAKEPIPE。
そう考えると「害獣として駆除」された動物の毛皮の意味も違ってくるように思う。
何が一番の「害」なんだろうね?

鴻池朋子の作品に満足しながら5Fに降りる。
次のフロアは「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示 Cosmo-Eggs|宇宙の卵」の展示だった。
2019年に日本館のパビリオンで発表された作品の帰国展とのこと。
大きなスクリーンに映し出されるモノクロの風景映像に、音楽や効果音(?)が加わる。
会場の中央には、オレンジ色の丸いソファ(?)があり、座ることができた。
少しの間鑑賞していたけれど、あまり意味が分からなかったよ。
とても静かな空間だったね。

続いて4Fへ。
このフロアでは「石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 新収蔵作品特別展示:パウル・クレー」が展示されていた。
ここでも撮影が許可されていて驚く。
モネやルノワールの作品までオッケーとは。
ROCKHURRAH RECORDSの好みとは違うけれど、石橋財団太っ腹だよねー!
載せた画像はカンディンスキー、1924年の「自らが輝く」。
 同じ並びにはジャコメッティ、ポロックと続き、石橋財団お金持ち!(笑)

石橋財団コレクションからスポットを当てて特集されていたのが、パウル・クレーだった。
パウル・クレーといえば、ROCKHURRAH RECORDSが大好きなドイツの美術と建築に関する総合的な教育を行った学校、バウハウスで教鞭を取った人物だよね! 
今年2020年7月に鑑賞した「開校100年 きたれ、バウハウス」の記事にも書いているよ。
ROCKHURRAHと「これが一番だね!」と声を揃えたのが、1929年の作品「羊飼い」だった。
その時期は丁度、バウハウスの時代ということになるんだね。 
クレーの作品については、そこまで詳しくなかったので、今回鑑賞することができて良かった!

初めて訪れたアーティゾン美術館の3つ展覧会はボリューム満点!
これでチケット代金が1,100円とは驚きだよ。
入場者数を制限していることもあり、ゆっくり鑑賞することができたのも良かった点だね。
素敵な企画があったら、また足を運びたい美術館だよ! 

俺たちダーク村

【森の中の田舎町で繰り広げられる難解なドラマ】

ROCKHURRAH WROTE:

世間一般の流行りからすると「大変遅ればせながら」だけど、今年の春くらいからNetflixに加入して、週末になると映画やドラマを楽しんでいるROCKHURRAHとSNAKEPIPEだった。
字幕ものばかりだから平日の食事時とかには集中して観れない。 それで週末が多くなるんだけど、ドラマの続きが気になって最近では平日の夜にもなるべく時間を作るようにしている。 食事の支度や洗い物、風呂など省略出来ない部分ばかりだから、苦労はするけど頑張ってるよ。
ちなみにウチは食事や昼の弁当などインスタントなものは一切使わず、レンジで調理などはしないという方針で長年やってる家庭なので毎日、結構手間ヒマかけて作ってる。偉い?

Netflixはよその動画配信サービスにはないようなちょっとマイナーな映画とかも扱ってはいるが、誰もが言うように映画の方はタイトル数が少なくてイマイチという弱点がある。代わりにドラマが結構充実してて面白いから、今のところはそっちの方で満足してるよ。

Netflixに入ったら絶対に観るべきといわれてる大人気ドラマもちゃんと観ていて不覚にもハマってしまったが、その話はまた今度するかしないか? 
現在熱心に観ているのがドイツの「DARK」というタイムトラベル・ファミリー・ドラマだ。
darkという意味のドイツ語はdunkelだと思うが、これは原題も英語のdarkになってて世界向け仕様だな。

ドイツの一体どこよ?と問いたくなるほど森林地帯の過疎の町を舞台に繰り広げられる、タイトル通りのダークな物語。

田舎町で子供の失踪事件が発端、と聞くとあの映画やこのドラマなどを即座に思い出すだろうけど、ややこしいのは主要登場人物が何人も「これでもか?」というくらいに過去や未来に飛びまくる事。
ドイツ人の難しい名前や姓、顔を覚えるのもすぐには出来ないというのに、いくつもの時代にまたがって話が進行するから最初の方は意味不明の部分が多かったよ。
同じ人物だけど子供だったり年寄りになって登場したり、その関連性がわかってくるまでが大変。
ある時からその辺の謎が徐々に解けてゆき「これがここに繋がるんだ」という見事な展開となる。

あと少しで観終わるとは思うがまだROCKHURRAH家では進行中なので、詳しくは書けないけどね。
設定がドイツの田舎町という事で登場人物の顔やキャラクターが地味、というかあまり華がない俳優ばかりなのが惜しいところだね。
Netflixで大ヒットしたスペインのドラマ「ペーパーハウス」で、全員主人公になれるくらい際立ったキャラクターが数多く登場したのを観た後だったから、余計に地味に感じるよ。
その代わりに原発近くの荒涼とした風景、森の奥深さがとても印象的。地の果てや洞窟好きなROCKHURRAHはこんなところで暮らしたいとまで思ったよ。

さて、恒例だがタイトルにもあるしこの前置きでバレバレだけど、今回の「俺たち〜」シリーズはずばりDARKで行こう。
「暗い」とか「闇の」などという代表的な意味以外にも黒ずんだ、濃い、わかりにくい、秘した、暗愚な、陰険な、不機嫌な・・・などなど、世の中のネガティブさを一身に背負ったかのような幅広い表現に使われる言葉だとわかる。
ROCKHURRAHは思えば子供時代からそういう意味ではずっとダークな人間だったな。自分にとって一番身近な特徴かも知れないよ。

この「俺たち〜」シリーズは毎回同じ単語が曲名に含まれるものを選んで、さらに70年代パンクや80年代のニュー・ウェイブと呼ばれた音楽限定でロクでもないコメントをしてゆくだけという安直な企画だ。

そして、そんなどこにでもありそうなDARKをテーマに今回も書いてみようと思ったが、探し方が悪かったのか、思ったほどにはパンク、ニュー・ウェイブの世界はダークだらけじゃなかったのがとても意外。
毎回いくつかのYouTube動画を貼り付ける構成なんだが、全く動いてない静止画に音楽だけじゃ物足りなくて、なるべくライブやプロモなど動きのあるものを選ぶ関係で、動画がありそうにないマイナーなのは割愛しているせいもあるけどね。
世の中にダークは蔓延ってると思ってたから案外少ないなという感想だよ。

ROCKHURRAHがダークと聞いて真っ先に思い浮かぶのがこのバウハウスの名曲「Dark Entries」だ。

彼らがデビューしたのは1979年で、まだパンク以降のニュー・ウェイブがそこまで細分化されてない時代だが、80年代前半に起こるポジティブ・パンク通称ポジパンの元祖的な存在として名高い。

ポジパン、ゴシックというそれ系の一群を指す言葉がまだなかった時代、人は何と言ってたか知らないがROCKHURRAHとその仲間はこういう音楽の事をダーク・サイケと呼んでたなあ。
出どころは不明だが、暗い音楽の総称をネオ・サイケと呼んでたから、叙情派の線の細いネオ・サイケと区別するためにそう言ってたんだろう。
ちなみにネオ・サイケと呼ばれる音楽の中で60年代サイケデリックの影響を強く感じるようなのは実際は少なく、単にコード進行がマイナー調でメランコリックな曲調のものを、多くの人々はネオ・サイケと呼んでただけ。
ずっと後の時代にはこういう暗い路線のニュー・ウェイブはダーク・ウェイブと呼ばれるようになったらしいが、まあ五十歩百歩のネーミング・センスだよね。

そういうカテゴライズは大多数の人にはどうでもいいものだろうが、80年代のイギリスでも様々なバンドに影響を与えまくったのがバウハウス。
逆立てた髪とクッキリした化粧顔のピーター・マーフィーやダニエル・アッシュのヴィジュアルは後のポジパンにも受け継がれるものだし、それまでのグラム・ロックやパンクとは明らかに違う暗い曲調に魅せられた人も多かった。
決して売れ線の音楽とは言えないけれどヴィジュアルの良さもあって、バウハウスはこの手のバンドとしては異例の人気を誇り、短い活動期間でも強烈な印象を残したと言えるだろう。

たった3年ほどの活動期間で一時代を築いたバウハウスは解散、ピーター・マーフィーはジャパンのミック・カーンとちょっとの間だけダリズ・カーというユニットを組んでたな。
個人的にデヴィッド・シルビアンのヴォーカルはあまり好みじゃなかったから、ジャパンの音楽にピーター・マーフィーのキレのある声が絡むというこれは、企画モノだったとしてもなかなか良かった。
アート好きにはいちいち説明の必要もないがバウハウスの次はダリ、そして次は?と思ったらその後は凡庸にも単なるソロとなってしまって残念。
マガジンやペル・ユビュのカヴァーもナイスだしプロモでは逆さ宙吊り歌唱、と体を張ったパフォーマンスも健在だったが、時代が色々変わってゆく頃だったから、いつの間にか最前線から消えてしまったな。
一方の残りの3人はダニエル・アッシュの副業トーンズ・オン・テイルを経て、デヴィッドJとケヴィン・ハスキンスの兄弟を加えた仲良し3人組、ラブ&ロケッツを結成。
パッと見たら区別がつかないような似たようなジャケットのレコードを何枚も出して結構長く続いたはずだけど、ROCKHURRAHもその後はよく知らない。今でも仲良しなのかな?

バウハウスの初期シングル曲はアルバム未収録のものが多く、その時代に輸入盤屋がないような土地に住み、日本盤アルバムしか持ってなくてベスト盤も買わなかった人は、代表曲の多くを知らないというちょっと変わった境遇のファンになってしまう。
そんな人には出会った事ないが、その当時はそういう人もいたんだろうな。
1980年に出た2ndシングルの「Dark Entries」もシングル曲なんだが、ポール・デルヴォーの絵を使ったジャケットも美しく「夢にデルヴォー(© 府中市美術館)」などと独り言を言いたくなる。
エントリーは入場、加入、出場、入り口などの意味があるから直訳すれば闇入場。え?違うのか?
1stアルバムの邦題も「暗闇の天使(In The Flat Field)」などという意訳を超越したタイトルだったから「闇入場」でもいいじゃないかと思うが、今回のテーマであるダークというキーワードにはうってつけの曲なのではなかろうか。

バウハウスはライブも完璧に素晴らしいバンドだったから公式のライブ・ビデオが当時から出てて、ROCKHURRAHもダビングして持ってたのを何度も観たもんだった。上のビデオはその時の映像と一緒だけど観客もノリノリ、全盛期のライブ観てたら感動したに違いない。光と闇、静と動、白と黒、口にするのはたやすいけど、その辺をひっくるめてライブで表現出来る実力はさすが。

何年か前の話、MacのOSがMojaveという日本人には言いづらい愛称でリリースされた頃、目玉機能のひとつとして紹介されたのがダークモードという代物。
何のことはない、メニュー周りとかアプリケーションの背景が黒っぽくなって目が疲れないとか、黒っぽくておしゃれでカッコいいとかその程度のもので情けなくなった覚えがあるよ。そんな機能くらい最初から付けとけよと思ってしまった。
そのうちiPhoneのiOSにもその機能がついて、悪態をつきながらもROCKHURRAHもダークモードにしてるが、こんなものを目玉にしてるようじゃアップルの先行きも危ないものだ、とその頃は強く思ったもんだ。
ジョブスが亡くなってから先進性も冒険もなくなり、延長線みたいなことばかりしてて、古くからのMac好きが喝を入れたくなるのが今のアップルだ。そう思ってるのはROCKHURRAHだけではあるまい。

相変わらずその話とは何も関係ない驚きの展開になるわけだが、続いてのダーク村民はこれ、ザ・サウンドの「New Dark Age」だ。
日本ではあまり知名度ないけど、70年代末に始まったいわゆるネオ・サイケというジャンルの中では中堅以上の存在だろう。
元々、パンクの時代にアウトサイダーズというバンドをやってたエイドリアン・ボーランドがセカンド・レイヤーという2人組ユニットを79年頃始めて、そのメンバー2人がそのまんま中心となったバンドがザ・サウンドだった。
70年代後半の初期ニュー・ウェイブを熱心に漁ってた人(今はおっさんになってても)だったら「懐かしい」と喜ぶ人もいなくはないだろう。
セカンド・レイヤーはジャケットもカッコ良かったしジョイ・ディヴィジョン系列の音楽の中ではピカイチのセンスを持ってた通好みの音楽だったもんね。
その鋭敏な音楽センスを持ってたのが上のビデオ中央のぽっちゃり男だとは、その当時は思いもしなかったよ。

ザ・サウンドはエコー&ザ・バニーメンと同じコロヴァ・レーベルから1980年にデビューして、音楽誌や批評家たちから絶賛されてたバンド。ネオ・サイケという音楽を好む人達が求める理想の音、というようなソングライティングのうまさが光ってたからね。
しかし、どこの輸入盤屋でも比較的簡単に入手出来た割には実際に持ってる人や聴いた人が少ないバンドだったな。
ROCKHURRAHが下北沢の有名な古本屋&レンタルビデオ屋で働いてる頃に知り合った数人と「サウンドいいよ」などと盛り上がっていて、わずかにその周辺に広がった思い出があるけど、全世界にはその思いが伝わらなかったようだ。

1stアルバムの「I Can’t Escape Myself」や「Heyday」も文句なしだけど、ネオ・サイケという範疇に限って言えば1981年に出た2ndアルバムが、この手のジャンルの代表的な1枚にしてもいいくらい王道の出来だ。
初期のU2とか好きな人には間違いなくオススメ、などと三流レコード屋みたいなコメント(ROCKHURRAH自身がそうだったか)をしてみるが、今の時代に現在進行系みたいにこんなバンドの事を語ってる人いるんだろうか?いやない。

その2ndアルバムの最後を飾るのがこの「New Dark Age」なんだが、わざわざ動画探して貼り付けるのをためらうほど、このバンドはルックスの面でかなり難ありだった。
エイドリアン・ボーランドはデブなだけなら問題なかったが、目つきが怖くて何されるかわかったもんじゃないね。

そう、この人はこの時代はたぶんマトモで87年くらいまではコンスタントにレコードも出していた。
ザ・サウンドの後もちゃんと活動はしてるんだけど、いつの頃か精神を病んでしまい、1999年に電車に飛び込み自殺してしまった。
大多数の人は運転見合わせを恨み、運転再開後は何事もなかったかのようにすぐに忘れ去られてしまうのが飛び込み自殺。
体もバラバラになってしまうし、個人的にはこんな死に方を選ぶ人の気が知れないよ。
三回くらい自殺未遂があった末の自殺だから、この時未遂だったとしても遅かれ早かれという気はするが、何ともやりきれない末路としか言いようがないよ。

ダークと言えば思い出すのがラース・フォン・トリアー監督の数々の映画。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」がすでに20年前の映画だと知って愕然とするが、時の移り変わりは早いものですな。
ROCKHURRAHは昔からこの監督の作品を知ってたわけでなく、近年になって矢継ぎ早に旧作を観た覚えがある。
ハウス・ジャック・ビルト」をSNAKEPIPEと一緒に観たからなのか、その前なのかは覚えてないけど、主要なのは大抵観てるはず。とてもイヤな思いをする作品もあったけど引き込まれるものもあって「ドッグヴィル」や「アンチクライスト」、それに「ハウス・ジャック・ビルト」は好みのものだったな。
鬱三部作なんてのもあるくらい、この監督の作品は全体的にダークなものばかりだけど、好みのダークだったりイヤなダークだったり、ダークの種類にも色々あるって事だね。二行で四回以上もダークという言葉を使ったROCKHURRAHの神経も危ないな。

さて、重苦しいダークが続いたから違う路線もやってみるか。次の村民はこの人、スネークフィンガーの「The Man in the Dark Sedan」だよ。
元パブ・ロックの有名バンド、チリウィリ&ザ・レッドホット・ペッパーズのメンバーだったと書いても知らない人多数だろうが、そういう前歴を持つマルチ・ミュージシャンがどういう接点なのかわからないが、全米の前衛音楽集団(意味不明)レジデンツと出会い、そのサポートメンバーとなる。
チリウィリ&ザ・レッドホット・ペッパーズはイギリスのバンドにも関わらずブルースやカントリーにジャズ、ブギウギといった要素を詰め込んだアメリカ満載の音楽でROCKHURRAHはパスしたくなるような音楽だった。が、それだけの要素を詰め込むには大変に音楽的造詣が深くないと出来ないはず。
そしてレジデンツも古今東西の音楽を解体し、異常な音響工作で再構築をするのが得意(と個人的には思ってる)なバンドで、おそらく大変な音楽的造詣の深さを持ってるはず。
その両者が出会って一緒に活動してたわけだが、音楽的造詣の深さを感じさせないグンニャリした音空間に酔いしれたファンも多かろう。これぞ前衛の奥深さ(いいかげん)。

「The Man in the Dark Sedan」はスネークフィンガーのソロで1980年に出た2ndアルバムにも収録されたシングル曲。
MTVとかよりも前の時代だと思うけど、そしてこの時代にはレジデンツもスネークフィンガーも相当マイナーなアーティストだったはずだけど、なぜか立派なプロモーション・ビデオが存在していて、ラルフ・レコード(レジデンツが主催するレーベル)はちゃっかり販売してたな。

謎の奴隷みたいな集団に車をひかせて歌い跳ねるというだけのバカっぽい変な映像だが、曲もレゲエ調で一般的な意味のダーク要素は皆無。
スネークフィンガーは往年のテニス・プレイヤーだったジョン・マッケンローをちょっと思い出す不敵な顔つきだな。
周りはアングラ劇団なのか単なるエキストラなのかわからんが、ほとんどレジデンツと同じような雰囲気で、それなりに金のかかったビデオが存在してる事自体が驚き。

その後も元キャプテン・ビーフハート&マジック・バンドのメンバーなどとヴェスタル・ヴァージンズというバンドを組んで80年代後半も活躍していたが、87年のツアー中に心臓麻痺であっけなく死亡。
不謹慎なのを承知で言えば、彼の場合はやりきれない、と言うよりは好きなように生きて死んだ、という感じがする。
それもキャラクターなのかね。

今回のブログはとても時間がかかっている。
個人的にあまり時間がないのに、そして大した事も書いてないのに、書き方がまとまらなくてうなってる状態だよ。
気軽に何でも書けるような筆力があればなあ。ん?無駄な事を書かなければもっと早く終る?

で、次は初の女性村民。暗くはないけどとにかくダークという言葉がタイトルに含まれてるだけ。こんなんでいいのかダーク村?
80年代半ばにかの香織がやってたニュー・ウェイブ・カンツォーネ・バンド、ショコラータの「Nina From the Dark Moon」だ。
本場イタリアでもカンツォーネを取り入れたニュー・ウェイブなんて滅多にないと思えるから、このバンドの先進性は世界レベルだと思える。
かの香織は実家が江戸時代から続く造り酒屋の12代目跡継ぎだそうで、ショコラータのイメージとは結びつかないが、一度飲んでみたいものだ。

次もまた全然タイプの違う女性村民、リディア・ランチがやってたバンド、8・アイド・スパイ(カタカナで書くと情けない)の「Ran Away Dark」。
ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンで70年代後半に隆盛を極めたノー・ウェイブというジャンルの音楽があったが、不協和音だらけのノイジーな演奏にヒステリックなヴォーカルというバンドが多く、知らない人が聴いたらどのバンドも区別がつかないようなシロモノ。
リディア・ランチはこのノー・ウェイブの中心的な女性ヴォーカリストでティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークスというバンドで活躍してたが、その後に始めたのが8・アイド・スパイだ。
メンバーと音楽スタイルが違ってもリディア・ランチのヴォーカル・スタイルは大して変わらず、一部の人にしか受け入れられないような音楽だったな。

無駄な事を書かずに簡素にしてみたけど、やっぱりこれじゃROCKHURRAHとは言えないなあ。いつも通り、ごちゃごちゃ書いた方がしっくりくるね。

Anne Clarkと検索してもなぜか女物の時計が出てくるばかり、まるでそんな人いなかったかのような扱いで、何か情報操作でもしてるのか?などど勘ぐってみる。まあ単に検索する人がとても少ないだけか。

アン・クラークはイギリスのシンガー、というよりはポエトリー・リーディングの女流詩人というような人。
80年代前半に活躍してレコード屋でとてもよくジャケットを見かけてたものだ。
ジャケットの雰囲気からしてベルギーのレ・ディスク・デュ・クレプスキュール(というレーベルがあった)あたりの女性シンガーかと勝手に思ってて、アンテナとかアンナ・ドミノとかと同類だと決めつけてた。
そしてZTT(トレヴァー・ホーンのレーベル)のアン・ピガールと混同してて同じ人だと思ってたもんだ。
第一、ずっとアンネ・クラークだと思ってたよ。実際は勝手な思い違いだったけど、そこまで大きな違いでもなかったので良しとしよう。

アン・クラークは渋いというか地味というか、アーテリーやカーメル、ザ・ルームくらいでかろうじて知られてるレッド・フレームというレーベルから83年にデビューして、このレーベルの中では筆頭くらいの出世はしたかな。
ただ、ボーイッシュにも程があるという残念な顔つきと、かわいげがない鋭い目つきで損してたタイプ。

そのアン・クラークの一番のヒット曲がこれ、1984年に出た「Our Darkness」だ。
男女2人で楽器担当の男とちょっとぽっちゃりな女ヴォーカルというとヤズーを思い出すが、意識してるのかどうか。
このビデオでは控えめな相方デヴィッド・ハーロウは、本当はモヒカンでヤズーのヴィンス・クラークと間違えそうな見た目の男。
他にも80年代前半に活躍した女流ピアニスト、ヴァージニア・アストレイや、元ウルトラヴォックスのジョン・フォックスなどともコラボしていた模様で懐かしい。

ちょっとイントロ長すぎて歌を聴く前に飽きてしまうが、エレクトロニクスの無機質な演奏によく合うスタイルの硬質な歌声でなかなかいいではないか。
詩の朗読とエレクトロニクスというのが珍しいスタイルで、曲にノッてるのかどうかは不明だが意欲的なのは確か。あとは厳しい顔つきだけが残念だね。

最後のダーク村民はこれ。
アメリカのシカゴ出身のDA! だ!曲は1981年リリースの「Dark Rooms」だ!
誰でも読める綴りだけにどう読むのが正しいのかよくわからんけど、ディーエー!なのかダ!なのか。
アメリカのTV番組出演の映像があったが、その時は司会者が「ダー」と言ってたからそれでいいんだろうね。
日本語でこのバンドについて書いてるサイトがなさそうだけど、たぶんみんなどう読めばいいのかわからないに違いないよ。

シカゴ・パンクなんてのがあるのかどうか知らなかったけど、1970年代後半から80年代前半にかけてこのDA!は活躍してたようだ。が、ビデオ見てわかる通り、その当時のアメリカの音楽とは思えないダークな音楽性と見た目で、こりゃ生まれる場所を間違えたなあ、と残念な気持ちになるよ。
明らかにイギリスの暗い系列の音作りで、イギリスだったらもっと話題になってたかも知れない。
メンバーは少し入れ替わりがあったみたいだけど、このビデオの時はギター以外は全員女性という珍しい構成。
ベース&ヴォーカルはびっくりしたような顔のローナ・ドンリーで、スージー・スーみたいな歌声だね。
シングルを2枚しか出してない弱小バンドなのにいち早くプロモーション・ビデオまで作って、これからのやる気は充分だったんだろうな。

しかしDA! は1982年に早々と解散し、その後ローナ・ドンリーはヒップ・ディープ・トリロジーというグランジっぽいバンドを始めた。これもなかなか良いバンドで凝ったプロモまで作って、これからのやる気は充分だったはずだが、アルバム1枚しか出してないところを見ると人気出なかったんだろうね。
その後は音楽活動から遠のいて図書館司書になった模様。
そして2013年、初婚なのかどうかは不明だが53歳で結婚して、まだ新婚のうちに突然の心臓発作で死んでしまった。
うーん、事象だけを追うと報われないような一生だけど、その時々は輝いていただろうし、運命を左右するのもその時の決断だったりするから、決して不幸な死とは言えないのかもな。

ドラマの方の「DARK」はここでこの人がこの人と会うと未来がひどいものになるから、それを阻止するために奮闘する人もいれば、自分勝手な都合だけで過去や未来に飛んで運命の歯車の一部になる人もいる。
ROCKHURRAHは迷わず、自分勝手な都合で80年代に戻って人生を修正したいと思うが、どうやってもマトモで立派な人にはなってないだろうな。きっとそういう生き方がしたいんだろう。

それではBis nächstes Mal! (ドイツ語で「また今度ね」)

SNAKEPIPE SHOWROOM 物件17 独創的な病院編

【ル・ルポ脳研究所の様子がよく分かる動画】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSのブログではいくつかのカテゴリーを設け、それぞれのトピックに沿った記事を書いている。
偏り過ぎないように気を配っていたはずなのに、長い間更新していないカテゴリーもあるんだよね。
「SNAKEPIPE SHOWROOM」も同様で、前回記事にしたのが2019年1月というから、およそ1年9ヶ月ぶり!
大抵夏の暑い時に「日本から脱出したい」という理由から、逃避目的で記事にしていたんだけど。(笑)
今回は「独創的なデザインの病院」を特集してみよう!
「住宅の展示」を目的とした建築物の紹介をしていたけれど、たまには趣向を変えても良いよね?
 
最初に紹介するのは、ニューヨーク州にあるストーニ・ーブルック大学病院ね。 
アメリカの建築家バートランド・ゴールドバーグの設計によるものだという。 
ゴールドバーグは1913年生まれで、1997年に84歳で亡くなっているんだよね。
1932年にドイツのバウハウスで建築の勉強をしていた、というので納得しちゃう。
この建築にグッと来たSNAKEPIPEだからね。(笑)
中で何が行われているのかと勘ぐってしまいそうな立方体が特徴的。
まるでルービック・キューブの四隅にカバーを取り付けたようなデザインが面白い。
そのカバーにあたる部分が、一体どんな役割を果たしているのか謎だよね。
まるで秘密基地のように見えて、レトロ・フューチャーな雰囲気に興味が湧くよ。
1976年の設計だという。
病院のオープンが1980年だというから、すでに40年の月日が経過しているんだね。

病院内の様子を調べてみたけれど、内部はそこまで変わっていないのかな。
何のための施設なのか不明だけど、使い勝手が良さそうな棚だよね。(①)
キッチンにあったら嬉しい感じ?(笑)
ルービック・キューブ下には菜園があるみたいだね。(②)
もしかしたらこの野菜を使って患者用の食事を作っているとか?
入院病棟の室内(③)と個室(④)なのかな。
建築家バートランド・ゴールドバーグは「異端児的存在」などという文章も確認したので気になる存在だよ。
もう少し調べてみたいと思う建築家の一人になったね。

続いても秘密基地っぽい病院にしてみようか。
遠目から見たら、ここが病院とは思わないんじゃないかな?
これはベルギーの海辺の町、クノック・ヘイストにあるゼノ私立病院とのこと。
2007年に病院が新しい病院の設計のためのコンテストを開催し、ベルギーの建築事務所3つ(AAPROGBOUCKXB2Ai)がチームを結成、見事優勝したという。
アムステルダムの世界建築祭で権威ある賞も受賞したというから、見た目の斬新さだけが評価されているわけではないんだね。 
ルネ・マグリットのシュールな作品から着想を得た、というのも素敵じゃない?(笑)

夜の病院といえばホラー映画の定番だけど、この建物にはおどろおどろしい雰囲気は皆無だね。(①)
近未来的でスタイリッシュ!
ホラーというよりはSF映画だね。(笑)
中庭なのか、巨大な滑り台のような通路があるよ。(②)
これは恐らく車椅子対応だろうね。
オスカー・ニーマイヤー設計のニテロイ現代美術館を思い出したSNAKEPIPEだよ。
夜の正面入口付近なのかな。(③)
病気でもないのに待ち合わせ場所にしたくなる美しさじゃない?
内部にも曲線が使われていて柔らかい印象だね。(④)
外観が無機的なのに、内部は有機的で柔らかい印象なんだね。

流線型の建築をドラマチックに見せたい画像が多いため、建物の全体像がよくわからなかったんだよね。
そこで設計図を探してみたよ。
なんだか「フレミングの法則」を思い出す形!
習ったの何十年も前なのによく覚えてるわ。(笑)
マグリット・ミーツ・フレミングということなのかな。
勝手に命名させてもらっちゃったね。

この建物は一体何?
商業施設かホテルのように見えるんだけど、違うのかな。
表面はまるでピラミッド・スタッズが張り巡らされているみたいで、トゲトゲがパンクっぽい!
これは2013年にオープンした、南オーストラリア州アデレードにある南オーストラリア州保健医療研究所(SAHMRI)だという。
オーストラリアの建築事務所ウッズ・バゴットの設計によるもので、「チーズおろし金」というニックネームがついているんだって?(笑)
建物内部では、三角形の光と影が織りなす幾何学模様を楽しむことができるね。(①)
外観は本当にパンクだよね。(②)
シルバーで光っていてSNAKEPIPEの好みにぴったり!
家を建てる時は、この外壁にしようかな。(うそ)
通路もメタリックでオシャレだよね。(③)
約700人の研究者がいるらしいけど、どんな気分で仕事をしているのか聞いてみたいよ。
夕焼けに染まる研究所。(④)
この風景を日常的に目にしていたら、毎日幸福だろうな。
通勤の電車から見て、ホッとする時間になりそう。
それにしても一体どんな研究しているのか、とても気になるよね?(笑)

「これ見て!すごいよ!」
ROCKHURRAHから知らされたのは、奇っ怪なデザインの建築物。
岡本太郎だったら「なんだこれは!?」と叫ぶに違いない。(笑)
リアルな建物とは思えないほどの「ぐねぐね」具合だからね!
これは2010年にオープンしたラスベガスにあるル・ルポ脳研究所で、設計したのはフランク・ゲーリーだという。
あまり建築家の名前を知らないSNAKEPIPEだけれど、ゲーリーについて調べると、ビルバオのグッゲンハイム美術館やエルシエゴのホテル マルケス・デ・リスカルなどの作品は知っていたよ。
同じ人の手による建築だったとは、納得だね!

内部の天井を見上げた状態だろうね。(①)
方向感覚が弱いSNAKEPIPEだったら、すこし「ふらつく」かもしれない。
内側も「ぐねぐね」なんだね。(笑)
外観の金属部分のアップ。(②)
四角く切り取られた窓部分には、ガラスがはめ込まれているところと素通しの両方があることが分かるね。
微妙なバランスがたまらない!
「ぐねぐね」してはいるけれど、色合いはとてもシンプルなので、柱の黄色や椅子のカラフルさが際立っているよね。(③)
何のための部屋なのか不明だけど、赤いカーペットが美しいよ。(④)
この部屋だけで良いから、ここに住みたいくらい。(笑)
ソファがカーブしているように見えるので、恐らく壁に沿って設置されているのかな。(⑤)
待合室に見えるけど、ゆったりしていて良いね。
庭の様子なのか、途中で切れてしまったけれど、円形の中央に白いカバーがされている。(⑥)
これは恐らくピーター・アレキサンダーによる樹脂彫刻「SUGAR」のようだね。
現代アート作品も、この建物によく似合っているね。
ここも近くにあったら、様々な天候によって変化する外観を楽しみに散歩したいよ。
ラスベガスだから到底ムリだけど!(笑)

「SNAKEPIPE SHOWROOM」として、今回初めて病院を特集してみたよ!
驚きの建築が他にもたくさんあって、まだ書き足りないんだよね。
近いうちにまた第2弾も計画してみよう。
どうぞお楽しみに!