ジョーカー 鑑賞

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【台風19号の影響により、雨が降る中で看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

世界中でヒットしている映画、と聞いて「観たい!」と思うことは少ないけれど、今回ばかりはその波に乗ってしまったROCKHURRAH RECORDS。
そう、話題作の「ジョーカー(原題:JOKER 2019年)」を鑑賞したんだよね!
ジョーカーというのは、 DCコミックス「バットマン」に登場する最強の悪役
などと知ったように書いてはみたものの、実は漫画は読んだことないんだよね。(笑)
バットマンは映画でシリーズになっているので、その中の数本を観たことがある程度。

バットマンの宿敵であるジョーカーを主役にした映画ということは、いわゆるアンチ・ヒーロー物になるよね。
例えば「羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs 1991年)」に登場するハンニバル・レクター博士のような感じかな。
正義や愛をテーマにした勧善懲悪物には、あまり興味を持たないROCKHURRAH RECORDS。
映画ランキング・トップのニュースを耳にしながらも、10月の3連休に観に行くことにしたのである。

ところが、この3連休には令和元年台風第19号(アジア名:ハギビス/Hagibis)が首都圏を直撃!
計画運休を決定した交通機関がほとんどで、なんと映画館も休館してしまった。
いつ上映が開始されるのか不明なまま、映画館のHPを何度も確認する。
連休最終日にやっと予約が取れたのである。

木場にある109シネマズ木場に行くのは初めてのことだ。
東京都現代美術館に行く時には、必ず利用している駅なのにね?
イトーヨーカドーの3階にある、ということだけどシアターが1から8まで完備されているという。
度々訪れる新宿バルト9と、そこまで変わらない規模ということになるね。
恐るべし、イトーヨーカドー!(違う?)
バルト9の場合は、シアターによってフロアが変わるけれど、109シネマズ木場はワンフロアなので、迷うこともなく、上映時間に遅れることも少ないんじゃないかな?
ただし、恐らくこの映画館ではメジャーな作品の上映しかしないだろうから、ROCKHURRAH RECORDSがお世話になる機会は少ないだろうけど。(笑)

連休中だったことも、台風の影響で遠出できなかったせいもあったのか、客入りは9割程度。
109シネマズ木場では、2つのシアターで「ジョーカー」を上映していたので、やっぱり大人気なんだね。
初めて入った劇場は、ゆったりしていて、視界良好!
この映画館、なかなか良いね!(笑)

それでは早速「ジョーカー」の感想をまとめていこうか。
まずはトレイラーをご覧あれ!
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください!

「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しいアーサー。
都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに秘かな好意を抱いている。
笑いのある人生は素晴らしいと信じ、ドン底から抜け出そうともがくアーサーはなぜ、狂気溢れる「悪のカリスマ」ジョーカーに変貌したのか?

公式HPにあるあらすじを引用させて頂いたよ。

主役であるアーサー・フレックを演じたのは、ホアキン・フェニックス。
ROCKHURRAH RECORDSでは、ホアキンと聞けば、チリのプロ・ゴルファーであるホアキン・ニーマンを連想してしまうけど?(笑)
今回の主役は、1980年代に大人気だった、俳優であるリヴァー・フェニックスの弟なんだよね。
全然似てないんだけど、本当に兄弟?
兄であるリヴァー・フェニックスは1993年に23歳という若さで急逝してしまう。
死因は麻薬の過剰摂取とのこと。
Wikipediaの記事によれば、その時一緒にいたのがホアキンだったらしい。
どんな状況だったのかは不明だけど、19歳のホアキンが辛い経験をしたことは想像できるね。
現在のホアキンは44歳で、とても健康そうに見えるよ。

映画「ジョーカー」の時のホアキンがこれ。
上の画像とはまるで別人だよね?
ヒゲで顔の輪郭が分かりづらくなっているのは確かだけど、それにしても頬はげっそりとこけてるし。
調べてみると、どうやら「ジョーカー」のために50ポンド、約23kgも減量して役作りをしたようで。
ぽっちゃりしてるピエロもいると思うけど、確かに「ジョーカー」の主役としては、不健康そうなイメージのほうが合ってるもんね。

舞台は1981年のゴッサム・シティ。
恐らく裕福な地域ではない設定なんだろうね。
その時代のニューヨークは生活水準が低く、治安が悪化していたという。
特に地下鉄は犯罪の温床とまで言われるほど、危険な場所だったそうで。
移動するのも命がけになっちゃうよね。
そんなニューヨークの状況をゴッサム・シティは踏襲しているのかな。
アーサーは、ピエロとして生計を立てている。
社会全体が不満で溢れている中、楽しげな笑いは怒りの対象になるのかもしれない。
嫌がらせや暴力を受けるアーサーは、見ていて気の毒だよ。

あらすじにもあったように、アーサーは母親の看病をしているんだよね。
母親は一歩も外出していなくて、食事も入浴も、すべてアーサーの介護が必要なようで。
アーサーの優しさがよく分かるシーンだったよね。
そんな母親の楽しみはマレー・フランクリンの番組を観ること。
アーサーもマレーのファンなんだよね。

このトーク番組で司会をしているマレー。
演じているのが、ロバート・デ・ニーロ!
辛口コメントで番組を盛り上げていく司会者役がぴったりだったね。
日本でいうなら「みのもんた」か「小倉智昭」みたいな感じか?(笑)
あまりにもハマり過ぎていて、最初デ・ニーロだと気付かなかったほど。
役作りのために体重を増減させる俳優の第一人者として、今回のホアキンの変貌ぶりはどう感じたのか聞いてみたいね?

アーサーの心の拠り所は他にもある。
同じアパートに住んでいるソフィーという女性だ。
ソフィーは、母一人子一人というシングルマザーみたい。
エレベーターで、ほんの少し言葉を交わしただけで、心を惹かれるアーサー。
他に女性との関わりがないということがよく分かるエピソードだよね。
アーサーには母親、ソフィー、そして司会者のマレーという3人が心の支えになっていたのかな。

アーサーには障害があることも、人との関わりが難しかった要因だろうね。
病名がWikipediaの解説によれば「トゥレット障害」とされているけれど、詳しくは分からないよ。
アーサーは何かしらの刺激により、突発的に笑い出す病気なんだよね。
例えばそれが怒りの感情から引き起こされても、笑いとなる。
そのため怒りながら笑っているという、非常に怖い顔が出来上がる。
竹中直人の芸で「笑いながら怒る人」があるけど、アーサーは本物なんだよね。
貧困、孤独、病気と、アーサーを取り巻く環境は良くない。

アーサーが「ジョーカー」になるきっかけとなった地下鉄の事件。
嫌なタイプの男3人なんだよね。
酔っ払って女性に絡んで、相手にされないと力づくで乱暴しようとする。
こんな男達は成敗されて当然だ、と思ってしまうよ。
一気にアーサーの怒りが爆発したのも納得しちゃう。

ブルー・スチール(原題:Blue Steel 1990年)」というキャスリン・ビグロー監督の作品に、銃を手にしたことで殺人を繰り返す男が登場する。
銃は力の象徴であり、自分自身が強くなったように感じてしまうんだろうね。
アーサーも武器を手にすることで、不満を爆発させる。
「社会の弱者だったアーサー」からの脱却ということだろうね。

ピエロの化粧に、赤いスーツ。
オレンジ色のベストに緑のシャツ、というド派手な色合いなのに、この時のアーサーにダンディズムを感じてしまったSNAKEPIPE。(笑)
自信を持ったアーサーの雰囲気が、通常のピエロとは別の人格に変えて見せているのかな。

弱者だった時のアーサーは、この長い階段をトボトボと一歩ずつ踏みしめながら歩いていた。 
赤いスーツの、「ジョーカー」に変貌したアーサーのステップったら!
階段降りる時は、転ばないように注意するSNAKEPIPEなんだけど、この時のアーサーはダンスしてたもんね。(笑)
王者は俺だ、と言わんばかりの堂々とした動き。
楽しげに笑いながらダンスしていたよね。
この時に流れていたのがゲイリー・グリッターの「Rock and Roll part 2」。
このダンス・シーンに合っていて、秀逸な選曲だったね! 

ゲイリー・グリッターは70年代、グラム・ロックの時代に大人気だった人物。
胸をはだけたギンギラのラメ衣装と、オーバーアクションが特徴!
ROCKHURRAHが書いた2011年1月の記事、「 時に忘れられた人々【07】グラム・ロック編 side B」もご参照あれ!

「心優しいアーサーが何故、悪のカリスマ・ジョーカーになったのか」とあらすじに書いてあったけれど、今回の映画を観て納得させられてしまった。
カリスマとして英雄扱いされている様子に拍手を送りたい気分になる。
世の中に一石を投じたジョーカーに陶酔する、民衆の気持ちが理解できるからね。
一度でも弱者扱いされたことがある人は、共感するんじゃないかな。
それが「ジョーカー」の人気の理由なのかもしれないね?

ホアキン・フェニックスが出演している映画は、何本か観ているようだけど、あまり印象に残っていない。
今回のホアキンは、ジョーカーが乗り移ったようで、鬼気迫る演技に圧倒されたよ。
それにしてもホアキン、タバコ吸い過ぎだよね。(笑)

「バットマン」のシリーズでジョーカーが印象的だったのは、「ダークナイト(原題:The Dark Knight 2008年)」。
以前鑑賞しているはずだけど、10年以上も前のことなので忘れてしまったよ。(笑)
「ジョーカー」との比較の意味を込めて、もう一度鑑賞することにしたんだよね。
SNAKEPIPEと同じように忘れている方のために、トレイラーを載せておこうか。 

主役のブルース・ウェインことバットマンをクリスチャン・ベールが演じている。
ベルベット・ゴールドマイン(原題:Velvet Goldmine 1998年)」では、グラム・ロックのスターに憧れている青年役だったっけ。 
またもやグラム・ロックが出てきたよ。(笑)

そしてバットマンの宿敵であるジョーカーを演じたのがヒース・レジャー。
銀行を襲う最初の登場シーンから最後まで、ずっと顔はこの化粧のまま。
その場しのぎの仲間を作るけれど、使い捨てにする。
そのため結局は一匹狼なんだよね。
頭が切れて、行動力もある異常者。
人間の性悪説を証明することが生きがいらしいので、手に負えないよ。

ジョーカーの異常性が最も良く表れていると感じたのが、看護婦に化けているシーン。
かなり不気味で強烈な印象を残してるよ。
この時のジョーカーがフィギュアになっているのを発見!(笑)
欲しいような欲しくないような逸品だけど、商品化したくなる気持ちも分かるよね。
ヒース・レジャー版のジョーカーも迫力満点!
この映画の後、亡くなっているのが非常に残念な俳優だよ。

制作年度が逆だけど、「ジョーカー」で、その成り立ちが語られ、「ダークナイト」では、その活躍(?)を鑑賞することができる。
2人の俳優が演じた、それぞれのジョーカー。
どちらも魅力的で、根強い人気があるのもうなずけるね。
ピエロを題材にした映画といえば、「気狂いピエロの決闘(原題:Balada triste de trompeta 2010年)」や「IT(原題:IT 1990年、2017年)」もあるよね。
「ジョーカー」の開始前に予告されていたのが「IT」の続編だった。
まだまだピエロを主人公にした映画が続くんだね。
やっぱりアンチ・ヒーロー物は面白い!(笑) 

「造形遺産054-067」,「HAZY HUE」未鑑賞

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【10月だというのに汗ばむほどの陽気だったよ】

SNAKEPIPE WROTE:

約2ヶ月ぶりに長年来の友人Mと待ち合わせした。
特にこれといった展覧会を思いつかなかったSNAKEPIPEは、ランチでも食べながら近況報告しようと考えていた。
ところが、友人Mからは「末広町に行かない?」という提案があった。
末広町って秋葉原と上野の中間辺りだよね?

どうやら末広町に「3331 Arts Chiyoda」というアートの複合施設があるとのこと。 
そしてこの施設、元は練成中学校という学校をリノベーションして造られているというから、興味深い!
さすがは情報収集能力に長けた友人Mだよね。
とは言っても、オープンは2010年とのことなので、SNAKEPIPEが疎いのかな。(笑)

末広町で降りて、ほんの数分で「3331Arts Chiyoda」に到着する。
まるで自分の足で歩いたように書いているけど、方向感覚に優れた友人Mのおかげで、すんなり着いたんだよね。(笑)
友人Mと一緒の時には、付いていくだけのSNAKEPIPE。
一度歩いた場所を記憶したり、地図が読める能力は、本当に羨ましい限りだよ。

元校舎に行くまでの敷地は、公園になっていて大きな木々が影を作っている。
そこまで大きな公園ではないけれど、やっぱり緑があるのは良いね!
入り口はガラスの自動ドアになっていて、カフェやミュージアムショップがあった。
この空間だけ見ると、元学校という印象はない。

2Fのギャラリーに向かおうとした時、見つけたのがこれ。
手洗い場なんだよね!
SNAKEPIPEや友人Mが小学生や中学生だった頃も、こんな感じの手洗い場だった記憶が蘇る。
蛇口の首部分にネットに入った石鹸があったっけ?
確かあれはレモン石鹸と呼ばれていたような。
調べてみると、まだ売ってるんだね!
昭和の懐かしい思い出と思ったのに、現役でいらっしゃるとは。(笑)

友人Mが「3331 Arts Chiyoda」に来たかったのは、好きな作家の展覧会があったからだという。
大原舞は1986年東京生まれのアーティスト。
2010年に武蔵野美術大学造形学部油絵科を卒業しているという。
友人Mは大原舞の作品である人形を観たことがあり、本気で購入を検討していたらしい。
この展覧会が目的だったのに、結果はこの画像の通り「CLOSED」!
出かけた月曜日は、どうやら「Gallery OUT of PLACE」の定休日だったようで。
ギャラリー前に貼ってあるDMに近付いてみると、月・火・水が定休日だって!
週3日連続休廊とは、驚き桃の木山椒の木だよね。(意味不明)

次に目指したのはKYOTO Design Lab 東京ギャラリーで開催されている「造形遺産」というタイトルの展覧会。
この企画は京都工芸繊維大学が主催しているとのこと。
国立大学だという京都工芸繊維大学、とても気になるよね。
建築やデザイン以外に、生物学や情報工学などの学部があり、大学院では繊維学について学ぶことができるらしい。
「実在する使うことも捨てることもできなくなった道路やダム、高架線などの構造物を造形遺産と呼び、それらを再生する道を提案します」
会場前まで行ってみると、ここも休み…。
一体どんなアイデアが提示されていたのか。
友人Mとがっかりしてしまう。

その隣のGallery KIDO Pressで開催されているのはJohn Currin(ジョン・カリン)の版画展だった。
ジョン・カリンは1962年生まれのニューヨークを拠点に活動している画家だという。
美術手帖の解説によると「古典的な絵画特有の技法を用いて、現代社会で論争を招くような性的タブーなイメージを取り入れた肖像画を描き、美しさとグロテクスの完璧な均衡を探求するアメリカを代表する画家のひとり」であるという。
これは楽しみ!
と思ったのも束の間、やっぱり休廊だったんだよね。
ここも月・火はやってないんだ。
月曜日に来たのが間違いだったね、と言いながら廊下を進む。

今回やっと展覧会を鑑賞できることになったのが「AKIBA TAMABI21」で開催されていた「できるだけ感情のないように(あるけど)」だった。
「アキバタマビ」の意味も分からず鑑賞したけれど、帰宅後調べることにした。
このギャラリーは多摩美術大学が運営する、若い芸術家たちのための作品発表の場だという。
原則40歳未満の多摩美術大学卒業生が企画代表者となり、作家による自己プロデュースを基本としたグループ展を年間8回開催するギャラリーとのこと。
秋葉原が近いから名前に付けたんだろうね。
作品を発表するのは多摩美関係者ではなくても良いみたい。
若手アーティスト支援が目的だという。

中学校の机と椅子をそのまま利用した展示がされていた。
懐かしかったので、友人Mと一緒に椅子に座ってみる。
とても座り心地が良い。(笑)
子供の頃は、こんな机で授業受けてたんだね。
かつて教室だった壁や、机の上に作品が展示されている。
それぞれのアーティストについて調べてみようか。

落花生をモチーフに版画作品を展示しているのは、安齋歩見。
1986年、福島県いわき市生まれだって。
落花生だけに、てっきり千葉県出身だと思ったのにね?(笑)
2009年、女子美術大学芸術学部絵画学科洋画専攻版画コースを卒業し、2014年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻版画コースも修了しているとは!
2つも美大に通っているんだね。
今回展示されていた「ピーナッツ戦争」というシリーズは、シルクスクリーン写真製版で制作されているという。
浮世絵のように、複数枚を組み合わせて一つの作品が完成しているものもあったよ。
黒が強い作品は観ていて、とても落ち着いたよ!

大坂秩加は1984年東京生まれのアーティスト。
2009年、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業し、2011年には東京藝術大学大学院美術研究科も修了しているというから、アート界のエリートってことだね。
版画、油彩、水彩など技法にこだわらずに描いているらしい。
今回の展覧会では、紙のままの作品が椅子の上に無造作に置かれていたため、湾曲していて見づらかったのが残念!
HPで他の作品を観ると、非常に面白いんだよね。
ブラックユーモアを含んだ独特の視点と、世界観を持っているアーティストみたい。
他の作品も観てみたいと思った。

結局観られたのは「AKIBA TAMABI21」の展覧会だけになってしまった。
せっかく来たのに、がっかりだね、と言いながら1Fのミュージアムショップに向かう。
3331 CUBE shop&galleryを物色していると、ふと目に留まったのは映像作品だった。
冠木佐和子というアニメーターの作品は、不思議な魅力を持っていて、その場から動けなくなるほど。
友人Mも「面白い!」と大絶賛している。
アニメ大国の日本の中でも、冠木佐和子の世界は珍しい部類に入るんじゃないかな。
載せて良いのか迷いながらも、YouTubeにアップされている菅原信介「MASTER BLASTER」のミュージックビデオを紹介させて頂こう。
アニメーションを担当しているのが冠木佐和子なんだよね。

好き嫌いが分かれるタイプの作品かもしれないね?
冠木佐和子の経歴を調べてみると、多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、アダルトビデオ制作会社に就職をしているんだよね。
そこを退職してから、再び多摩美術大学大学院に通い、修了しているという。
どうしてアダルトビデオの世界に入ったのか、不思議!
彼女自身の受け答えも変わっているので、インタビュー記事もお勧めだよ。(笑) 
こういう日本人が増えると面白い国になりそうだけどね?

今回は「鑑賞できなかった展覧会」を特集する、という今までにはなかったスタイルで書いてみたよ。
鑑賞はできなかったけれど、アーティストについて調べて、作品を検索することで新しい知識が増えたことは嬉しいね!
今後の教訓としては、展覧会の開廊(もしくは閉廊)日時を調べてから出かける、ということかな。(笑)

ニッチ用美術館 第5回

【なぜか前よりも貧相になったオープニング映像】

ROCKHURRAH WROTE:

2017年の春から始めた新企画「ニッチ用美術館」なんだが、トップ画像を動画にするのがちょっと面倒な事もあって、なかなか新しい記事が書けないでいる。要するに記事の下準備に時間がかかるってわけね。

ちなみにタイトル見ればあのTV番組のパロディなのはすぐにわかるが、何でニッチなの?という説明が毎回必要なのがさらに難点。 まあ前回までの記事の冒頭にしつこく説明が書いてあるので律儀に読んでもらえればウチの方針もわかるだろう。
で、やってる事はROCKHURRAHの得意分野、70年代パンクや80年代ニュー・ウェイブの時代のレコード・ジャケットを展示して、それをアート的視点から語ってみようという試み。
しかし語るほどアート界に詳しくないというパラドックスに満ち溢れた記事になっていて、何だかよくわからん趣向になってるな。これがROCKHURRAHの底の浅いところ。

では時間もあまりない事だし、早速第5回目の展示を見てみるか。

ROOM1 鑵詰の美学

チャプターのタイトルが第2回から、なぜか普段使わないような難しい漢字でやるようになってしまったんだが、それを考えるのが面倒になったのでまた通常の読み書きが出来るタイトルに一部戻す事にした。そこまで面倒を苦にするタイプじゃなかったんだけど、最近個人的に週末にあまりヒマがなくてね。
日常的に鑵詰と書く人はあまりいないと思うが、普通は缶詰でコトが足りるよね。自分でもこの鑵の字は書かない(書けない)なあ。
同じような意味なら罐という漢字の方がもう少しポピュラーな気がするけど、あえて一般的ではないはずの鑵にしてしまった。
止せばいいのに調べてしまったら林芙美子や泉鏡花などもこの鑵詰を使用していた模様。

ROCKHURRAH家ではほとんど缶詰を食べないので、缶切りは昔ながらの安っぽい手動のものしか使わない。フチに引っ掛けてキコキコ上下に切ってゆくタイプね。何十年使ってる?というほどの年代物だけど何も問題ないよ。
ツナ缶やフルーツ缶などプルタブで引っ張って開ける形式のが増えたからか、最近では缶切りを使えない若者が増えているという話を聞いたのがすでに何年前なのか?
実はSNAKEPIPEも瓶や缶のフタを開けるのがあまり得意ではないんだけど、これは使い方知らないわけじゃなく単に腕力なさすぎなだけ(笑)。 

ちなみにこの缶詰というシロモノ、発明されたのは19世紀初めらしいが、これを開けるための缶切りが登場するのはそれから数十年経ってからの話だと聞いた事がある。それまではかなりバカっぽい開け方をしてたんだろうな、と想像するよ。斧で叩き割る、とか大鋏でぶち切るとか、銃で撃ち抜く、とかそういう開け方したんじゃなかろうか?
開ける時の苦労を全然考えずに発明者は「缶に入れる事によって保存が出来た、ワハハ便利!」などとはしゃいでたんだろうな。

さて、このどうでもいい導入部から鑵詰、鑵入りをテーマとしたジャケットになるのはミエミエだが、それ以前にジャケット写真を展示したから見れば一目瞭然だったな。
レコードのジャケット・アートという観点からはどうかな?とは思うけど、映画のフィルムを入れる缶のような形態で発表されて音楽界を驚かせたのが、パブリック・イメージ・リミテッド(PIL)の2ndアルバム「メタル・ボックス」だ。

「(パンク)ロックは死んだ」という有名な発言でセックス・ピストルズを脱退したジョニー・ロットンが本名ジョン・ライドンに戻りスタートさせたのがPILだった。
パンク・ロック以降のニュー・ウェイブの中で、既存のジャンルに当てはまらないような音楽をポスト・パンクと後の時代には言うようになったようだが、この時代に生まれた「何と呼べばいいのかわからない音楽」はみんなが勝手に何か名付けていたような感じだった。
ジョニー・ロットンの「ロックは死んだ」発言やワイアーの「ロックでなければ何でもいい」みたいな発言は一人歩きして様々な音楽論が交わされたけど、そこまで深読みしなくても、単純に昔のようなロックをやらないという意味合いでいいんじゃなかろうかと思うよ。パンク以降に生まれた音楽は何かの影響を足したり引いたりして自分なりのスタイルを作り上げてきたわけだからね。

パンクの大スターだったジョニー・ロットンのバンド、PILはセックス・ピストルズとは全然違った方向性で初期ニュー・ウェイブの時代に衝撃を与えたのは間違いない。
その2ndアルバム、1979年に発売された本作「メタル・ボックス」は缶に入った状態で売られているという見た目のインパクトが大きく、話題性も抜群だったな。
映画のフィルム入れる缶みたいだと連想したが、実は地雷をイメージしたものだったらしい。うーん、どっちも現物を見た事ないから何とも言えないな。

缶の中身はLPではなく12インチ・シングル3枚組という構成。
LPよりも高音質だという事でパンク以降に急速に普及した12インチ・シングル。
多くのバンドが7インチと12インチの両方を同時リリースして、12インチの方には少しボーナス・トラックをつけるという手法がポピュラーになったのも70年代後半からだったね。
ROCKHURRAHはどちらかというとパンク・ロックの象徴のような7インチ・シングルに魅力を感じて、こればっかりを集めてたけど、収納場所を考えれば全部12インチで統一した方が良かったのかも。
ちなみにレコードを缶に入れて発売するというアイデア自体はPILより前にもあったようで、グラモフォンというレコード会社がすでに1971年に商品化していたようだ。
が、ROCKHURRAHの全く興味ないような古いロックのものだったので知りもしなかったよ。

後にLPレコード2枚組として発売されたけど、同じレコードでこのようにコレクターズ・アイテム盤と通常盤みたいに発売する手法もこのレコードくらいから登場したように思う。そういう意味でもPILは先駆者だったんだろうね。

収録曲の中でも有名なのがこの「Swan Lake」、訳さなくてもわかる通り「白鳥の湖」を大胆にアレンジしたPILの初期代表曲でもある。シングルの時はなぜか「Death Disco」となってたな。
「地を這うような」とよく評されるジャー・ウォブルの重低音ベースラインと金属質なキース・レヴィンのギター、そこにジョン・ライドンのグニャグニャなヴォーカルが加わったPILの音楽は当時としてはとても斬新なものだった。
こういう音楽はポスト・パンクという言葉がまだ一般的でなかった時代にはオルタナティブという括りで語られていたように記憶する。
もちろん、90年代によく言われてた「オルタナ系」とはニュアンスも違うし、この当時は「オルタネイティブ」とみんな言ってた気がするよ。
この後にイギリスの新しい音楽はよりポップになる路線とこのように従来とは違う刺激的な音楽になる路線、PILやスリッツあたりから分岐されてゆきパンクもニュー・ウェイブも多様化していった。
普通だったら売れない路線でもそこそこの知名度や評価を得る、その先駆けになったバンドとしてPILの残した功績は大きいと思うよ。

ROOM2 渺乎の美学
通常の読み書きが出来るチャプター・タイトルに戻すとさっき書いたばかりなのにまた一般的じゃない小難しい表現にしてしまう。この辺にまだ迷いが感じられるな。
渺乎と書いて「びょうこ」と読む。
大変小さいさま、という意味合いらしいが昔の物書きでもない限り、たぶん使わないだろうな。ROCKHURRAHもこんな言葉を今まで使った事がないよ。
 
狭い日本の狭い部屋を考えたら電化製品でも何でもコンパクトになってゆくのは自然の流れ、というわけで1980年代以降はずっとその傾向になってきていたのは間違いない。
特に身につけて持ち運ぶものは小型化・軽量化が必須となっているのは皆さんご存知の通り。

最近では知る人も少ないけどMD、ミニディスクが90年代に登場した時にROCKHURRAHは飛びついて購入した。
フロッピーディスクをちょっと小型にした手のひらサイズが気に入ったのと、カセットテープよりは劣化が少なそうに感じたから、録音出来るソニーのMDウォークマンを持ってたよ。
当時持ってたMacはHDDの容量がとても少なくて、音楽だの映像だのを中に貯め込む事が出来なかった。
Macで録音したレコードを波形編集ソフトで編集、それをさらにMDに録音・・・などというかなり面倒な事を喜んでやってた記憶があるよ。よほどヒマだったのかねえ? 

スマホとかは軽量化も必要だけど、より大画面でより高性能というユーザーのわがままに翻弄されて、一定の大きさから脱却出来なくなってるのが実情だね。
映画「ズーランダー」で馬鹿らしいくらいの小さな携帯電話が出てきて笑ったけど、小型化を突き詰めるとああいうギャグにしかならない。シャレで実現化するメーカーがあったら一瞬だけでも話題になるだろうね。
SFやアニメにあるように目の前の空間がディスプレイになって・・・などというのが実現するかどうかは科学知識のないROCKHURRAHにはわからないけど、もっと違う新しいテクノロジーも生まれる可能性はあるだろうね。 

さて、これもまたジャケットアートについて語る「ニッチ用美術館」の主旨とは違うけど、レコードを聴くという根本的な事をとってもニッチに展開した功績により、ここに紹介したいと思う(偉そう)。
上のジャケットだけを見ても何だかよくわからん普通の感じだが中身はこうなってるのさ。

90年代くらいを知る人ならシングル盤のCDで8センチのものがあったのを覚えているだろう。いつの間にか消えてしまって見なくなったけど、あれを彷彿とさせるこの代物は実は小さなレコード盤なんだよね。そして左上にあるのがこのミニミニ・レコードを再生するための専用プレイヤー。
実用的じゃなくても意味不明の小さいポケットがついた服とか見ると「かわいー」と気に入ってしまうSNAKEPIPEだったらこれを評価してくれるだろうか?

このレコードを聴く事だけのために作られた小型プレイヤー、そしてこの小型プレイヤーでしか再生出来ない(試してみたわけでないから詳細は不明)小型レコード。この組み合わせ以外には全く意味をなさないシロモノという点で現代アート的手法と言えるんだろうか。
とにかく「誰にでも等しく体験出来る」という事に対するアンチテーゼなのかは不明だけど、問題作なのは確かだね。ROCKHURRAHの解釈は陳腐だね。

Die Geniale Dilletanten(天才的ディレッタント)というダダイストのグループを主宰していたヴォルフガング・ミュラーによってベルリンで誕生したDie Tödliche Doris(ディー・テートリッヒェ・ドーリス)、芸術活動の一環としてバンド形式のパフォーマンスを行っていた三人組だ。
ウチのブログでも何度も書いてきたノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(ドイツのニュー・ウェイブ)の中でもとびっきりの変わり種として名高い。
このレコードのセットもコレクター心をくすぐるユニークなものだが、他の作品でも別々にリリースされた2枚のレコードを同時にかけると第3の音楽が現れる、とか音楽そのものよりも現代アート的「こけおどし」みたいなものが話題となっていたね。
日本では「致死量ドーリス」という漫画のおかげなのか、バンドの予想を超える知名度を得たけど、漫画の読者が彼らの音楽を理解出来たか(聴いたりしてたのか)どうか不明。ちなみに昔は古本屋で働いてたから買い取りやクリーニングはしてたROCKHURRAHだけど、漫画は読んだことない。

ノイズと不協和音による破壊的で即興的な演奏をするバンドは山ほどいて、個人的に心地良いノイズもあれば不快なだけのノイズもある。そういう音楽は全くダメって人の方が世の中の大多数だとは思うけど、アーティストと聴き手の波長が合ってれば(または合わなければ)どんな音楽でも最高だったり最低だったりする。ん?当たり前?
このバンドはROCKHURRAHにとってはやりたい事があまり伝わって来ない類いだったけど、何枚かはレコードも持っていた。上述の第3の音の片割れも持ってたけどもう1枚は持ってないし、同時にかける2台のプレイヤーも持ってなかったから未体験。

そう言えば大昔に下北沢のレンタル店で働いていた折、同僚の子がこのプレイヤー付きレコード・キット「Chöre & Soli」を店に持ってきて自慢していたので、見たり触ったりした記憶がある。今だったら相当に高値のレコードだと思うけど、この頃は限定1000部でも普通に手に入れる事が出来た良い時代。
仕事中だからさすがに聴いてはいないけど、内容は理解に苦しむ変なアカペラだったはず。

ビデオの方は現代アートにありそうな不穏で不気味なもの。よくわからん映像作品として鑑賞はしても、これを聴いて「さすが」などと感銘を受けるほどROCKHURRAHの心は広くないよ。

ROOM3 益荒男の美学
一般的にあまり馴染みがなく、使われない言葉だとは思うが、ある年齢以上の相撲好きの人ならばすぐに読めてしまうだろう。1980年代後半に福岡出身で益荒雄(ますらお)という人気力士がいたからだ。
などと知った風に書いてるROCKHURRAHだが、相撲に興味を持って観ていた記憶は特にないなあ。さらに同郷だからといって応援するような意識もなく、何に対しても割と薄情な青年時代だったなと思うよ。それくらいでも名前を知ってる有名人だったという事だね。

益荒男とは「強く勇ましく、りっぱな男性」だというような意味らしいけど、パンクの世界で最も強そうな見た目と言えばOi!と呼ばれた一派かな?と思ってつけたのがこのチャプター・タイトルだ。ただし「りっぱな男性」かどうかは個人差があるので不明だけどね。

ロックに詳しくない人間と友達になった事があまりないので、そういう人たちがどんな認識を持ってたのかは知らないけど、想像するとおそらくハードコア・パンクと昔のヘヴィメタルの違いなどはイマイチわからんのじゃなかろうかと思えるよ。服装やアイテムも一部共通だしね。
今の時代はファッションと聴いてる音楽がまるで一致してない場合も多数なので断言は出来ないけど、逆にオイ!については特徴が顕著でヴァリエーションが少ないから、比較的わかりやすいジャンルじゃなかろうかと推測する。
とにかく一番の特徴はスキンヘッド、坊主頭。そして裾を短くロールアップしたジーンズにドクターマーチンやゲッタグリップなどの編上げブーツ。ジーンズはなぜかベルトではなくサスペンダーで吊るすのが定番。これにMA-1を着たら大体誰でもOi!、あるいはスキンズとして見た目は通用するでしょう、という世界。
服装や使われてるアイテムから、イギリスでは工場や物流倉庫の労働者たちに支持されて、70年代後半のパンク・ロック発生のすぐ後くらいからOi!のムーブメントは一大勢力になっていった。
ネオナチとOi!の集団の見分けがつきにくいために極右思想と誤解されたり、大規模な暴動事件により色々とトラブル、紆余曲折のあったジャンルだったが、あまり難しく深い思想を語らないROCKHURRAHだから、この辺を詳しく書くのはよそう。
ニッチ用美術館の趣旨とは違うからね。

さて、そんな時代背景をいいかげんに綴ってきたが、このジャケットはOi!の有名バンド、ビジネスの1stアルバムのものだ。
1979年結成との事だけど、レコード・デビューは少し遅く、このアルバムなども1983年の発表だ。
初めて知ったのはまだROCKHURRAHが小倉に住んでた頃、福岡のKBC(この記事にも書いてる伝説のレコード屋)で見かけて気になっていたものだ。
ガラの悪そうな工場労働者のイラストは80年代最初の頃のTシャツとかでいかにもありそうなもの。
大昔に竹下通りにあった「赤富士」で買った似たようなシャツを、修学旅行のみやげで友達にもらって喜んで着ていたのを思い出す。
まだその頃のROCKHURRAH少年はロシア構成主義もプロパガンダ・アートも知らなかったけど、こういうジャケットに惹かれるのは昔も今も好みが変わってないって事だね。ぶれてないけど進歩もしてないのか。
ジャケットのデザインとしてはむしろ下に小さく写ってるメンバーの写真が邪魔だと思えるよ。 

ビジネスはエンジェリック・アップスターツとか4スキンズとかちょっとカッコいいバンド名(あくまでも個人の感想です)に比べると、イマイチありきたりな名称だし、メンバーの見た目も地味でイマイチ。
要するに失礼ながらOi!を目指す若者が「マネしたい」と思うような要素があまりないようなバンドだったな。
しかし曲はカッコ良くて好みって人も多い事だろう。「バナナ・ボート・ソング」として有名な「Day-O」をちゃんとパンクの名曲としてカヴァーするようなセンスが玄人受けするバンドだったよ。
一般的なヒットとは無縁のバンドでプロモーション・ビデオやTV出演の映像とかもないけど、数少ない動いてる映像がこれ。うーん、曲は確かに王道だけどやっぱり見た目がなあ。客の方にむしろ益荒男がいそうだよ。

ROOM4 鶯乱啼の美学
一般的には使いそうのない言葉を必死で調べてわざわざ使ったのがミエミエのタイトルだが、鶯乱啼と書いて「おうらんてい」と読むらしい。誰がどんな時に使うのかは全く想像もつかないけど、昔の書物にでも出典があったのかね?「うぐいすが激しくそこかしこでさえずるさま」などと勝手な解釈をしてみた。
これは3月の異名との事だけど、ちょっと調べただけで数十もの異なる呼び名が出てきてビックリだよ。言葉遊びなのか新しい名称を発明したのか、昔の人の言葉や表現に対するこだわりには脱帽するばかり。
ヤバい、などと全国共通で使ってる場合じゃないよ。

で、何でこのジャケットのチャプター・タイトルが鶯乱啼なの?とまともに疑問に思ってくれる人も少ないはずだが、鶯乱啼→3月→弥生→彌生という事でやっとつながった。ROCKHURRAHのこじつけもひどすぎ。
描いた人はまるで違うとは思うけど、このジャケット見たら彌生しか思いつかなかったというワケ。草間彌生以前にも水玉や南瓜を描き続けた人はいたかも知れないけど、こういう模様を世界的に有名にしたのはたぶん彌生、きっと彌生(意味不明)。

このド派手なジャケットは1980年代後半に活躍したスペースメン3というバンドの1990年に出たシングルのもの。
彼らやメンバーのソニック・ブームは同時代というよりは少し後に一部で熱狂的なファンがいて評価が高かったという記憶があるが、デビューした80年代後半の頃は「久々に登場したドサイケのバンド」という印象だった。
単語みたいに書くと意味の通じない現代人もいるかも知れないから説明するが「すんげーサイケ」とか「超サイケ」とかではなく、なぜかこの時代にはドサイケと言う表現が一部では(もしかしてROCKHURRAHの周りだけ?)使われていたのだ。ド素人とかと同じような使い方かな?
確かにスペースメン3の最初の頃は本格的にサイケデリックを志すバンドとして、80年代のお手軽なネオ・サイケなどとは一線を画する路線だった。ただし個人的な好みで言うと、一体何が素晴らしかったのかROCKHURRAHにはイマイチわかってないバンドのひとつだった。
かつてネオ・サイケとかのレコードを漁ってた頃に1〜2枚は所持していたし、その後のソニック・ブームまで持ってたから何かを感じて買ったのは間違いないんだが・・・。

なんか抑揚がなくてどこを聴いても同じような感じ、しまいには寝落ちしてしまうような音楽だという印象なんだよ。音楽に何を求めるかは個人の嗜好だとは思うけど、ドラッグ・カルチャーが基本的にはないはずの日本では根付くのが難しい種類の音楽だと感じたよ。

上の彌生ジャケットのシングル曲「Big City」はそんな彼らの中ではノイジーなファズ・ギターも入ってない、珍しく聴きやすい一曲。同時代のマンチェスター・サウンド(マッドチェスター)あたりとも通じる雰囲気で、彼らのコアなファンからはたぶんあまり評価されないような気がするよ。
全く影響は受けてないだろうし偶然なんだろうけど、スキッズのヒット曲「Charade」のB面だった「Grey Parade」みたいなフレーズが後ろの方で流れているけど、スコットランド民謡とかに原典があるのかな?

初期とは演奏のスタイルが違うせいもあるけど、やっぱり根底にあるのは「抑揚がなく、どこを聴いても同じような感じ」の金太郎飴状態。オーストラリアのサイエンティスツというドサイケなバンドもそういう路線を得意にしてたのを思い出す。
ROOM4まで書いておいて言うのも何だが、実は今回選んだジャケットのバンド、個人的に聴き狂ってたようなのがなくて、そのせいもあって筆が重いんだよね。ここまで書いてそれを打ち明けるか?
ニッチ用美術館、わずか5回目で存続の危機だね。

ROOM5 安娜の美学
「○○の美学」が思いつかなくてついに当て字に走ってしまった、というくらいに今回のは、人によっては取るに足らないチャプター・タイトルで相当に悩んでしまった。

「安娜?うーん、聞いた事ない言葉だよ」と大部分の人が思うだろうけど、これは中国語でアンナという女性名を表記する時に使う漢字のヴァリエーションのひとつらしい。
日本ではAnnaはアンナでいいけど、中国になるとなぜか漢字表記される場合もあるようだ。カタカナがない国だからそうなってしまうのかね。大して調べずに行き当たりばったり書いてるから、その使い方のルールなんかも全然わかってないんだけど。
身近な例を言うと、かつてパソコンのメインボードを中心に扱う台湾の企業(の日本拠点)で働いた時に、社員はみんな外人の名前で呼び合っていて、ジェニファーだのアンディだの、一体どこの国?と思っていたものよ。

というわけで無理やり中国語の安娜をチャプター・タイトルにしてみたが、たぶん中国要素はまるでないなあ。

さて、美術館とタイトルに付けるくらいだから一つくらいは絵画風のジャケットを展示しなきゃな、と思って選んだのがこれ、1986年にリリースされたアンナ・ドミノの2ndアルバムだ。
うーん、選んでは見たものの、この手の普通の意味での風景画や静物画を特に苦手としているROCKHURRAH。
誰かの作風(強いて言えばセザンヌにちょっと近い?)でこんなのあったかも、くらいの印象しかなく、もし美術館で展示してあっても素通りしてしまうだろうな、という感想しか持てないよ。ごめんよ安娜さん。
このジャケットだけ見ても何だかよくわからんけど、裏ジャケはこの絵の延長である部屋の内部になっていて、椅子に座ったアンナ・ドミノ本人(おそらく)の似てない姿も描かれている。
自分の方を表ジャケットにしてないのはあまり気に入ってなかったのかもね(推測)。

アンナ・ドミノはアメリカ軍人の娘として、なぜか東京の米軍関係の病院で生まれたアメリカ人だ。若い頃にイタリアやカナダ在住の経験もあり、オンタリオ芸術大学でレコーディングの技術も身につけたという、羨ましいようなインターナショナルな経歴を持つ才女なんだね。
そんな彼女が活動の拠点としてレコードを出してたのがアメリカではなく、ベルギーのLes Disques du Crépusculeという有名レーベルだった。別に詳しくは書いてないが「ニッチ用美術館 第3回」でも少し取り上げたクレプスキュール・レーベル(ポール・ヘイグの項参照)は、80年代前半くらいにオシャレなカフェなどのBGMで需要が多く、そういう雰囲気のあるアーティストを続々とリリースしていたよ。
スピログラフ(曲線の模様を描く歯車のような定規)で描かれたようなレーベル・マークも知名度が高く、クレプスキュールのレコードは日本のレコード屋で簡単に手に入るくらいに、インディーズ・レーベルとしては最も普及していたと思うよ。
イザベル・アンテナとアンナ・ドミノはその中でもレーベルの看板娘として人気になったものだ。
アンナ・ドミノはとにかく80年代的な割と鋭い眼差しの美貌と髪型やファッションで、しかも上記のようなすごい経歴の才女。いかにもフランス風美女のイザベル・アンテナと比べるとちょっとキツめの印象があって好みが分かれるところ。

1stアルバムではタキシードムーンのブレイン・L・レイニンガーや後にリヴォルティング・コックスで有名になるベルギーの奇才リュック・ヴァン・アッカー、日本でもヒットしたヴァージニア・アストレイなどが参加していたが、上のジャケットの2ndはさらに豪華・・・かどうか微妙なメンバー。
同じくタキシードムーンのスティーブン・ブラウン、アソシエイツのアラン・ランキン、ベルギーのシンセ・ポップで有名なテレックスのマルク・ムーランとダン・ラックスマンなどが参加している。
プロモーション・ビデオかと思ったら映像をバックに、スティーブン・ブラウンと共に口パクで歌うアンナ・ドミノというリアルタイムのステージだったから少し驚いたよ。それにしても一分の隙もない美貌とスタイル。
この手の音楽に興味ない人でも思わず見とれてしまうに違いない(大げさ)。

本文よりもチャプターのタイトルに悩み、苦労してしまった今回の「ニッチ用美術館」だが、いいかげんながらも何とか書く事が出来たよ。
公開するのは本日10/13なんだけど、記事を書いてたのは大型台風接近と大ニュースになっていた土曜日の話。災害アラートが何度も鳴ったり、いつ停電になるかも知れないという状況でよくも、こんな関係ないブログを書いてたもんだ。

ではまた、オゲヴヮ(ハイチ語で「さようなら」)。

ROCKHURRAH紋章学 ウォーター・ボトル編

【水筒の水、美味しそうに飲んでるね!】

SNAKEPIPE WROTE:

10月に入ったというのに、最高気温が30℃を下回らず、記録が更新されちゃったらしいじゃないの!
いい加減にしてよ、アグネス・チャン!って感じだよね。(古い)
ほんの少し出かけるだけでも、喉が乾く。
熱中症も怖いので、必ず飲み物を携帯する。
遠出の時には、何本のペットボトル(500ml)を飲み干したのか覚えていないほどだよ。
自動販売機で買えるし、携帯にも便利なペットボトルは優れものだよね!

いつの頃からか、お茶や水が販売されるようになった。
SNAKEPIPEが子供の頃には売ってなかったもんね?
お茶は急須を使って茶葉から入れるもの、水は水道水を意味していたからね。
「おーいお茶」なんて商品名で、お茶が売られていることを知った時には心底驚いた。
外国では当たり前だろうけど、日本で水の販売を知った時には、腰を抜かしたものよ。(笑)

石油の次には水の価格が高騰する、なんて噂を聞いたこともあったね。
実際水を買って飲んでいる人、多いよね。
確かに最近では水道水をそのままガブガブ飲むことも少なくなったし。
食の安全と叫ばれているせいもあるだろうけど、口に入れる物に気を配るようになったことは確かだよね。

前フリが長かったけど、今回の「ROCKHURRAH紋章学」では、水のパッケージ・デザインを特集してみよう。
最初はビザールなデザインを探していたけれど、さすがに水にビザールは少なくて。(笑)
オシャレで、水が美味しそうに見えるデザインを選んでみたよ!

最初のデザインはこちら!
FUENSANTAはスペインで1846年に創立された飲料水メーカーだという。
フエンサンタの起源は自然と結びついている、というメッセージを元に、緑の森にガラス瓶をおいたらどうなるか、というコンセプトでデザインされたという。
デザインしたのは同じくスペインのPati Nunez Associats
まるで日本酒の瓶のように見えてしまう形に、緑の葉が清涼感をもたらし、とても美味しい水なんだろうな、と想像させてくれるよね。
この水を飲んだら心も体もキレイになれそうじゃない?(笑)

続いても日本酒みたいに見えてしまう瓶の形だね。
スペイン、バスク地方で高級な水ブランドを展開しているGOROBEL。
何度もスペルを確認して検索したんだけど、このメーカーのHPを探すことができなかったんだよね。
パッケージ・デザインをしたのはIsusko、やっぱりスペインの会社みたいだね。
たおやかな曲線と、木の幹がプリントされ、そして縦書きの商品名が和風に感じる。
スペインでは栓抜き使うタイプのパッケージが多いのかな?
一度開けると、蓋ができなくて困らないのか、小さいことだけど気になってしまう。
スーパーにこんなデザインがズラリと並んでいたら、買うよりも鑑賞したくなりそうだよね。
さすがにスペイン、オシャレなデザインがたくさんあるね!

ちょっとレトロな雰囲気が残るオシャレなデザイン!
デザインしたのは、またもやスペインのSeriesNemoね。
この名前に聞き覚えがあったSNAKEPIPE。
調べてみると「ROCKHURRAH紋章学 コーヒー・パッケージ編」で紹介していたデザイン会社だったんだね。
その時にも「さすがスペイン!」と褒めちぎっていたよ。(笑)
まるでガラス瓶のように見えるけれど、素材はPETとのこと。
そして二酸化炭素排出量を削減するように最適化もされているというから、デザイン性だけではなく環境問題にも取り組んでいるということが分かるよ。
こんなペットボトルだったら、捨てるのが惜しいくらいかも。
地中海の光を捉えたウォーターグリーン色も、清潔感と体に染み込む水を連想させるよね。
いくら贔屓の国とは言っても、スペインの商品3つは連続し過ぎてるかな?(笑)

スペインからスウェーデンに行きましょ!
Ramlösaは北ヨーロッパで親しまれている、発泡性ミネラルウォーターのブランドだという。
起源はなんと1707年まで遡るというから、日本では江戸時代だね。
ヨーロッパとは水に対する歴史が違うことを、改めて認識するよ。
このパッケージ・デザインをしたのはGrowという、ブランド開発コンサルタント会社だという。
デザインだけではない専門知識により、需要を生み出し、真のビジネス価値を創造し総合的にプロデュースをする会社ということみたいだね。
Ramlösaの親会社であるカールスバーグより安価で持ち運びが容易で環境に優しく、かつプレミアムなデザインを依頼されたという。
PETボトルでこのカッティングとは!
二酸化炭素排出量を大幅に削減し、デザイン・アワードも受賞したというから大成功だよね。
このスパークリング・ウォーター飲んでみたいよ!

丸い蓋が印象的なデザイン!
こちらはイギリスで1997年に設立された精製飲料水メーカーであるPURE WATERのもの。
水源で精製および瓶詰めされ、輸送されるため、二酸化炭素排出の環境への影響を軽減しているという。 
環境に配慮しています、という文言をどのメーカーでも必ず書いているんだよね。
これがやっぱり世界レベルなんだろうな。
このデザインを担当したのはNeueというノルウエーのデザイン会社ね。
栓抜きが必要な瓶詰めの場合、こぼれないか心配だったけど、これなら大丈夫そうじゃない?
そしてこのデザインだったら醤油入れたりして、再利用できそうなところも良いよね。
えっ、ノルウエーの人だったら醤油入れないって?(笑)

最後はこちら!
今まで見たことがないデザインじゃない?
LH2Oは2005年からポルトガルのリスボンを拠点にしているデザイン会社PedritaとLusoブランドのコラボレーションで生まれたデザインとのこと。
5つの正方形と12の六角形の同一面を持ち、「3次元空間充填モジュール」と呼ばれているそうだ。
意味は正確に分からなくても、こんな積み上げ方をされたら目を引くことは間違いないよね。
手に取って、実際に飲む時はどうなんだろう?
非常に気になる一品だね!

今回は水をテーマにパッケージ・デザインを特集してみたよ!
日本のスーパーで見かけるペットボトル、どれも大差ないように感じているので、オシャレなデザインに憧れちゃうよね。
また世界の秀逸なデザイン、探していこう!