「オスカー・ニーマイヤー展」と「ここはだれの場所?」鑑賞

【地下の図書室壁にある展覧会のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「絶対観たほうが良いって!」
長年来の友人Mからの誘いは、東京都現代美術館で開催されている展覧会のことである。
「マコっちゃん、会場にいるみたいだよ!」
これもお目当ての一つだったようだ。
マコっちゃん、とは現代美術家の会田誠のこと。
全く知り合いでもなんでもないのに、勝手にニックネームで呼んでる友人M。
フランシス・ベーコンのこともベーコンさん、だしね。(笑)

おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」の展示に会田誠の作品があり、その会場内に会田誠が出現するという情報があるらしい。
アーティストご本人にお目にかかれるチャンスはなかなかないもんね!
オスカー・ニーマイヤー展」の鑑賞も目的の一つ。
暑さのため、できれば外出したくないと考えていたけれど、機会を逃して苦い涙を流したくないと一大決心をする。(大げさ)
友人MとROCKHURRAH、そしてSNAKEPIPEの怪しい3人組は今年4月の「大アマゾン展」以来約4ヶ月ぶりに集結したのである。

おいしい物を食べることが大好きな友人Mは、何かの約束をする度にグルメ情報を検索し、「お昼はココ!」と指定してくるのが常である。
今回も、 美術館に行く、と決まったすぐ後に木場近辺のグルメ情報が送られてきた。
いくつかの候補の中から、今回は夏らしくタイ料理に決定!
3人で辛い料理に舌鼓を打った後、美術館に向かったのである。

まずは「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」から鑑賞する。
会場に入ってすぐに、圧倒的な色の洪水が目に飛び込んでくる。
ヨーガン・レールの作品である。
ヨーガン・レールと聞いて懐かしい、とROCKHURRAHがつぶやく。
SNAKEPIPEは聞き覚えがなかったけれど、ヨーガン・レールは1970年代から日本でファッション・ブランドを展開しているデザイナーだったんだね。
そのヨーガン・レールが石垣島で拾った漂流物がカラー分けして展示されていたのである。
漂流物とは、言い換えればゴミ!(笑)
それを種類や色で分別して、キレイに配置するとびっくりするほどアートになっちゃうんだよね!

 
カーテンで仕切られた次の会場に入ると、驚きのあまり声が出た。
「わー!キレイ!」
天井から吊るされた色とりどりのライトは、壁が鏡になっている効果も加わり、なんとも幻想的な異空間へと誘ってくれる。
全体をみると幻想的だったけれど、ライトを構成している部品はなんだろう?と近寄ってみて更にびっくり。
前の会場にあった漂流物が使用されているんだよね!
例えばペットボトルのキャップだったり、洗剤の容器だったり。
廃品から、こんなに素敵な作品を作るなんて!(笑)
ずっと会場にいたい気分だったね。

展示会場にあった年譜でも、既に亡くなっていることは知っていたけれど、石垣島での自動車事故が原因だったとは!
70歳という年齢も、まだまだこれからだったのに、と残念に感じてしまうよね。


続いてはお目当ての会田誠の会場へ。
展示作品にクレームがつき、撤去要請が出たといういわくつき(?)の作品が左側の「会田家」と書いてある「檄」である。
2013年1月の当ブログ「会田誠展~天才でごめんなさい~」は森美術館で開催された個展を鑑賞した際の感想をまとめたものであるが、その中で

美術界の過激派として
これからもブラック・ジョークで笑わせて欲しいと思う

と書いたSNAKEPIPE。
「作品にクレームがついた」というのは、会田誠にとっては思うツボかもしれないと感じてしまう。
同じブログで

「これはダメです」という社会的な規制やルールに
対抗することで成り立っている作品が多い点が特徴

とも感想を綴っているSNAKEPIPEからすれば「それが会田誠の作風」だと思うから。
クレーム結構!批判上等!じゃないのかな?(笑)

さて、お目当ての会田誠ご本人は何処?
会場の片隅に畳敷きの作業場があり、机と座布団が置かれている。
どうやら木彫で作品を作っているようである。
友人Mと「マコっちゃんいないね」と言いながら、制作途中の木彫をじっくり眺めていると
「会田さんは今日来るのちょっと遅いみたいですよ」
よいしょ、と作業場の座布団に腰を降ろしながら男性が話しかけてくる。
どうやらその男性が会田誠のパートナー(?)で、会田誠が描いた原画の木彫を担当しているらしい。
会田誠は昨夜飲み過ぎ、家に帰れず、奥さんに叱られたため、会場入りが遅いという話を聞き、笑ってしまう。
パートナーの男性の名前を聞き忘れてしまったけれど、その方から木彫の作品に関する説明も聞くことができて良かった。
「会田誠版いろはかるた」を制作している途中で、完成した暁には会田誠の故郷である新潟で展覧会が開催される予定らしい。
「いろはかるた」は会田誠らしくブラックな内容で面白かったな!(笑)
新潟までは行かれないけれど、いつかまた森美術館あたりで個展開いてもらって、その時に鑑賞したいよね。

他にも安倍総理に扮したビデオや、気味の悪い人形がいっぱい飾ってあるアート作品だったり、食べる気を無くすような血みどろの「愛憎弁当」やシャネルのマーク入りの「ブランド弁当」など、「いかにも会田誠」ワールドが展開されていて、楽しめた。
マコっちゃんに遭遇できなかったのが残念だったね!

展覧会のハシゴをするのは久しぶりである。
同じ美術館内でのハシゴだから、そんなに大変じゃないけどね!
続いては「 オスカー・ニーマイヤー展」へと向かう。

SNAKEPIPEはカッコ良くて変わったデザインの建築物は大好きだけれど、建築家についての知識はゼロに近い。
これはどの業界についても同じことが言えると思うけれど、その世界では知らぬ人がいないくらい有名でも、業界外の人間には全く存在を知られていないというパターンだ。
オスカー・ニーマイヤーはブラジルの建築家で、その作品が世界遺産に登録されているという。

日伯外交樹立120周年を記念して、リオが生んだ
偉大な建築家の約1世紀にわたる軌跡を紹介いたします

という説明がされていたように、ブラジルと日本というのは長い歴史があるのにもかかわらず、あまり文化的な紹介はされていないように感じてしまうね。
自分でもすっかり忘れていたけれど、2008年に「大道・ブランコ・コーヒー」 というダジャレをタイトルにしたブログが、ブラジルの写真家ミゲル・リオ=ブランコ森山大道の写真展についてまとめた記事だったっけ。
あれも東京都現代美術館の企画だったよね!(笑)

ブラジルの文化に関してはそんな程度の知識しかないSNAKEPIPEなので、オスカー・ニーマイヤーの名前を聞いたのも、作品を観るのも初めて!
友人Mも知らなかったようだ。
ROCKHURRAHは昔、デザイン関係の仕事をしてした友人が持っていた本の中にオスカー・ニーマイヤーの作品があったことを記憶していたようだけれど、詳しく知っているわけではないという。

会場に入ってすぐに動画が映し出されているスクリーンがある。
空飛ぶ円盤がブラジルの空を飛び、まるでイギリスの人形劇「サンダーバード」のような海際の基地に着陸する。
中から出てきたのはオスカー・ニーマイヤー本人!
マーロン・ブランドに似て蝶!(笑)
このちょっとチープ感のある映像がとても面白くて、目が釘付けになってしまった。(笑)

次の部屋からはオスカー・ニーマイヤーが設計した建築の模型や写真が展示されている。
その建築の奇抜でユニークなデザインに度肝を抜かれてしまう。
年代を確認すると1950年代!
えー!
2011年の年末の当ブログ「ウィリアム・ブレイク版画展/メタボリズムの未来都市展」では森美術館で開催された「メタボリズムの未来都市展」について書いている。
この展覧会は日本の建築家がより良い社会、環境との共存、狭い日本の土地問題など、様々な観点から都市計画を考えた建築家達のデザインが展示されていたんだよね。

その建築運動は1960年以降だったし、建築家が空想したデザインは実現されることがなく、「こんなのどお?」という提案で終わってしまうことがほとんどだったようだ。
ところが、なんとブラジルでは奇想天外なデザインが実際に建築されていたんだね!
この差は一体何故なんだろう?
予算?
土地の広さ?
それとも民族的な考え方の違いか?(笑)

オスカー・ニーマイヤーが落書きみたいにキュキュっと描いた曲線がそのまま形になって建築物に変化してしまう映像が興味深かった。
この自由な発想とセンスは日本人には難しいレベルかもね?

オスカー・ニーマイヤーの作品の中で実際に行ってみたいなと思ったのがニテロイ現代美術館(写真上)である。
オスカー・ニーマイヤー自身がこの美術館について語っていた。
「この坂道をワクワクしながら登ることだろう」
坂道って赤い舌みたいなところね。(笑)
現代美術館だもんね、これくらい現代アートな建築の中で展示されて当然だよね!
おや?どうやらこの美術館が、会場入口で観た空飛ぶ円盤だったんだね!
だから海際に着陸したのも納得ね。

オスカー・ニーマイヤーは2012年に104歳で他界したそうだけれど、2011年の作品もクレジットされているように高齢になっても現役で活動していたようである。
そのエネルギーの源は、どうやら女性だったようで。(笑)
オスカー・ニーマイヤーのデザインの特徴である曲線は「愛する女性の体の線」を表現しているという。
アレハンドロ・ホドロスキーもそうだけど、女好きのスケベ心を忘れない(?)男性は創作活動期間が長くて、良い作品を作り続けることができるのかもしれないね?(笑)

オスカー・ニーマイヤー展も鑑賞できて良かったなあ!
まだまだ全然知らない大好きな世界がたくさんあることが分かって、次の新たな出会いが待ち遠しくなるね!

最後に常設展へ。
今回の常設展は「戦後美術クローズアップ」と題して、1945年以降の日本人アーティストの作品を展示していた。
ハーバード大学を卒業してフランス陸軍の歯科医をしていた洋画家、中原實なんて、知らなかったよ!
そんな経歴を持っているアーティストがいたなんてね!
友人Mのお気に入りの画家香月泰男の作品も展示されていて、良かった。
香月泰男の作品は記憶が間違っていなければ、国立近代美術館の常設展で観たのが最初だったはず。
山口県長門市に香月泰男美術館があるようなので、いつか行ってみたいよね!
今回の常設展で一番興味を持ったのが石井茂雄 という28歳で夭折した画家!
石井茂雄(画家)と検索しないと、野球選手がヒットしちゃうから要注意なんだよね。(笑)
この石井茂雄(画家)は、なんとヨーコ・オノの従兄弟なんだって。
上の画像のようなアングラなタッチのモノクロームの作品やフォトモンタージュの作品もあり、ものすごく好みだった。
このアーティストのことも全然知らなかった!
今回の東京都現代美術館の企画、全部良かったね。
「絶対観たほうが良いって!」という友人Mの言葉通り!
またいろんな展覧会に行ってみたいと思う。

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