SNAKEPIPE MUSEUM #55 Murugiah

20200607_top.jpg
【adobe creative cloudで紹介されたMURUGIAHの作品】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、スリランカ人アーティストを紹介しよう。
かつて南アフリカやエジプトのアーティストについて書いたことはあったけれど、インドやパキスタンといった南アジアから選出したことはなかったよね。
恐らく好みの作品はあるんだろうけれど、情報収集が難しいんだろうね。
祝!初・南アジア!(笑)
アーティストの名前はSharmelan(Sharm) Murugiah 、カタカナ表記ではシャルメラン(シャルム)・ムルギアと書いていこう。

まずはプロフィールから。

どうやらムルギアが生まれる前に両親はイギリスに移住していたようで。 
お父さんが医者とのことなので、イギリスに渡る何かしらの理由があったんだろうね。
そのためムルギアは生まれも育ちもロンドンだという。
子供の頃からバンド・デシネに親しみ、メビウスの影響を受けているとのこと。
バンド・デシネとは、フランス・ベルギーなどを中心とした地域の漫画のことね。
元々は広告に関する仕事を目指していたようだけれど、その後建築の勉強を7年間したという。
その後自らのスタジオを立ち上げ、フリーのイラストレーターとして活躍している。
2014年にはD&AD賞を受賞。
D&AD(Design & Art Direction)とは1962年にイギリスで創立された非営利団体だという。
デザイン、広告、コミュニケーション、テクノロジー、フィルムにおける独創性を促し、支援することを目的に創設されたのがD&AD賞なんだね。
アップル、タイムアウト誌、ガーディアン誌、バラエティ誌、ディズニー、ルーカスフィルム、その他多くのクライアントのために作品を作成しているという。
錚々たる大企業が名前を連ねているので、ムルギアは人気のあるアーティストなんだね。

制作している様子が分かる動画を載せてみようか。 

ムルギアの作品はデジタル・アートになるんだろうね。
iPadに描いていたし、プリントもしてたし。
これからの時代は、こうしたタイプのアートが主流になるんだろうなあ。
SNAKEPIPEも描いてみたい!って思ったよ。
そしてムルギアはもっとアジア寄りの雰囲気なのかと思っていたのに、違ったわ。(笑)
英語も完全なネイティブだしね! 

そうは言ってもやっぱり自らの出自をエッセンスにしているようで。
まるで横尾忠則か!という雰囲気の作品だよね。(笑)
両サイドにはピラミッドのような三角形が並んでいるけれど、バックには家が描かれている。
一体何を意味しているのか不明だよ。
タイトルが分かれば、少しはヒントになったんだろうけど。
分かる人がいたら教えてください!

「First Leaf Falls」を直訳すると「最初に落ちた木の葉」って感じか?
タイトルの意味は不明だけれど、右の人物は地獄の獄卒、牛頭馬頭なのかなあ。
舌で構成されているような乗り物に乗ってるんだよね。
嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれると聞くので、現在舌集めの真っ最中なのかも。(笑)
左側にある謎の物体には、ドクロや半裸体の女性など仏教的なモチーフが描かれているね。
煩悩の塔?
もしくは解脱後の穏やかな姿なのかもしれないね。

この作品もアジアの雰囲気があるよね。
タイトルは「Del」だって。
DeleteのDelなのか、アメリカ陸軍の特殊部隊Delta Forceの略か?
もしくはGuillermo del Toro(ギレルモ・デル・トロ)監督のDelなのか?
実際にムルギアはデル・トロ監督の本にイラストを描いたことがあるそうなので、タイトルにつけてあってもおかしくないかも。(笑)
着物を着たピンクの象と蓮の花の上に座る猿のほかにも、様々な動物が描かれている。
「First Leaf Falls」と合わせて、まるで村上隆のようじゃない?
以前鑑賞した「五百羅漢図展」を思い出したよ!

「The Alchemist」は2018年の作品ね。
 タイトルの「錬金術師」を知らずとも、観た瞬間からホドロフスキー監督の「ホーリー・マウンテン(原題:The Holy Mountain 1973年)」を連想するよね!
実際ムルギアが「ホドロフスキー監督の映画からインスピレーションを得ている」と答えているインタビューもあったし。
ご存知の方は多いと思うけど、ホドロフスキーはバンド・デシネの原作者としても有名!
ムルギアが幼少期からバンド・デシネを読んでいた、という話は前に書いたよね。
ホドロフスキー原作のストーリーにメビウスが絵を担当した作品はたくさんあるので、自然な流れでホドロフスキーの映画鑑賞につながったんじゃないかと推測する。
中央に描かれている人物は、きっとホドロフスキーに違いないね。(笑)
水晶の中に捕らわれている人物や、竹馬に乗っている人の存在は意味不明だよ。
きっと錬金術に関係があるんだろうな。

脳天が割れて、棒が出てるよ!
「Dreamer」というタイトルなんだけど、「夢を見ている人」という以上の意味があるように深読みしてしまうね。
東洋的な顔立ちの少女(のように見える)は、少し笑みを浮かべ安らかな表情を見せている。
何本も引かれている直線は、落下の様子を表しているのだろうか。
まるで生から死に向かうような? 
仏教的な印象を受ける作品を観た後なので、余計にそう感じてしまう。 
この作品にはたくさんの葉っぱが舞っているんだけど、先に書いた地獄っぽい作品と関係あるのかな。

今まで観てきた極彩色とは違う雰囲気の作品。
「A Rebirth: The Decomposition of Walls That Resist」は直訳すると「再生:抵抗する壁の分解」だって。
迷路の中で、輪切りにされた人物が横たわっている。
輪切りの隙間からいたるところに伸びる腕は、苦しみを叫ぶ心の声なのか。
束縛から開放されようと、抗っている様子なのかもしれない。
解釈は様々だと思うけど、心象を扱っていることに間違いなさそう。

2020年の作品「Virus」は、まさに「今」を描いているよね。
ムルギアはどんな思いを込めて、この作品を制作したのだろう。
父親が医者である話は書いたよね。
どうやら家族の中にもう一人医療従事者がいるとのこと。
ウイルスと戦う家族を心配し、ワクチンが開発されることを願って描かれた作品だという。
美しい色使いなのでマスクがなかったら、コロナに関する絵だとは気付かなかったかもしれないね。

ムルギアの作品はシュールでサイケと評されることが多いみたい。
SNAKEPIPEは色彩の美しさに目を奪われたよ!
ホドロフスキーがお気に入りということで、好みの系統が似ている点にも注目だし。
デジタル・アートの展覧会、いつか観てみたいね!

SNAKEPIPE MUSEUM #54 Michelle Avery Konczyk

【制作中の様子が分かる映像】

SNAKEPIPE WROTE:

数日前、就寝のため横になった時、SNAKEPIPEを襲ったのは猛烈な「めまい」だった。
体が180度回転するような感覚に悲鳴を上げてしまう。
SNAKEPIPEの身に一体何が起こったのか?
靴紐を結ぶためや目薬をさすためなど、頭の位置を変えることで「めまい」が起こることが判明。
早速耳鼻科に行き、検査してもらうことにする。
視界を完全に塞ぐゴーグルをあてがわれ、椅子の背もたれが少しずつ倒されていく。
「うぎゃあ〜!目が回る〜!気持ち悪い〜!」
あまり耳鼻科で叫ぶ患者はいないのではないだろうか。 
SNAKEPIPEは、ぎゃーぎゃーうるさかったけどね。(笑)
そして診断結果は「良性発作性頭位めまい症」とのこと。
簡単に言うと「耳石の移動」が原因らしい。
デスクワークなどで体が一定の状態に固定され、首(頭部)を回す運動をしていないのが良くないんだとか。
最近増えている病気とのことなので、皆様もお気を付けくだされ!
処方された薬に加え、「エプリー法」という耳石を戻すための運動を並行して行うのが一般的な治療法なんだって。
完全な治癒には少し時間がかかりそうだけど、SNAKEPIPEは頑張ります!(笑)
そしてそんな病にも負けず、今週もブログを書いているよ!

前置きが長くなったけれど、今週は「SNAKEPIPE MUSEUM」をお届けしよう。
今回紹介するのは、自らを「Watercolorist」(水彩画家)と呼ぶ「Michelle Avery Konczyk」だよ!
毎度ながら人名をカタカナ表記するのが難しいんだけどね。
ミッシェル・エイブリィ・コンチックで良いのかな。
コンチックという名前は東欧系なのかもしれないけれど、現在ミッシェルはペンシルベニア州ピッツバーグにお住まいのようだよ。
どうやらミッシェルは独学で水彩画をマスターしたらしい。
そのためなのか、アーティストにある「◯◯美術大学卒業」などの経歴が、検索しても出てこないんだよね。
何年生まれで年齢はいくつなのか、なども不明な状態。
唯一出ているのがトップに載せた制作中の動画だけなので、勘弁してね!
それでは早速作品を観ていこうか。

ミッシェルの作品は、シュールレアリスムということになるのかな。
「暗闇のない光、醜さなしの美しさはあり得ない」
この言葉を心に刻み、制作をしているというミッシェル。
この作品のタイトルである「And They Drip Red」は、直訳すると「そして彼女たちは赤く滴る」。
蓮の葉のように見える植物の上に、ゴロゴロと少女の首が転がっている。
花のように咲くはずだったのに、両頬から血を流し、固く目を閉じている。
よく観察すると、2人の少女が描かれているみたい。
もしかしたら、金髪の少女はミッシェル自身かもしれないな。
眠っているのか、それとも?
中央に佇んでいる首なしの人物には手が3本あり、1人には多く、2人分には足りない数なんだよね。
2人の少女に一体何があったんだろう。

切り取られた少女の頭部。
あらぬ方向を見つめている目には、生命の光が感じられないね。
タイトルは「Asphyxiate」、訳すと「窒息」だって。
口からはみ出しているのは、人間の指だよね?
どんな心象を描いているのか想像するのが難しいよ。
不気味だけど惹かれてしまう、ミッシェルの思惑通りかな。(笑)
作品の縁取りがアール・ヌーヴォー風で、より一層不気味さを引き立てているように感じる。

この作品もまたアール・ヌーヴォー風に縁取っているよね。
「Until You’re Nothing」は2019年の作品だという。
直訳すると「あなたがなくなるまで」だよ。
正面に座り、こちらを挑戦的に見つめるのは、恐らくミッシェル本人だろうね。
そしてその手に持つのもミッシェル自身の首。
目から出ているのは一体何だろう。
周りの植物にも目が付いているんだよね。
タイトルをヒントにすると、ミッシェルと「あなた」との間に何か嫌なことがあって、消そうとしても消せない記憶として残っているわよ、という執念を描いているのではないかと想像する。
いつまでも恨んでいるわ、あなたが消え去るまでね!
という宣言をしているのかもしれないね。
怖いなあ、ミッシェル。(笑)
ちなみに「Until You’re Nothing」は$350、日本円で約4万円で購入可能だよ!

「The Gatekeepers」は2019年の作品で、訳すと「門番たち」だね。
どうやら心に深い闇を抱えているように見えるミッシェル。
きっとタイトルにある「門」とは閉ざしている心、なんだろうね。
まるでホラー映画のワンシーンのように見える、森の様子はとても好きだよ。
この作品も購入可能で、$975、日本円で約10万5000円ほど。
縁がユニークにカットされていて、雰囲気も良いので、SNAKEPIPE MUSEUMで購入してみようか。(笑)

この写実的な作品を観てよ!
これが水彩画とは驚いちゃうよね。
2019年の作品、「Until Nothing」ってまたもや「なくなるまで」ってタイトルだけどさ。
絵だけ観てると、そこまでネガティブな感情を引き起こさないように思うけど、どうだろう。
女性にとって手というのは「年齢が出る部分」として認識されることも多いけどね。
そうして観てみると、この手の持ち主は決して若くないかもしれない。
ミッシェルの経歴が不明のため、この手がミッシェル本人かどうかも分からないんだよね。
ただ、この絵からは「今後生きていくための決意」のような、前向きな姿勢を感じるSNAKEPIPEだよ!
お値段は$1,000、日本円で約10万7000円だって。
この絵は手元に置いて、じっくり観てみたいな!

女流アーティストというのは、ネガティブな感情をエネルギーにして創作することが多いよね。
フリーダ・カーロ、(結婚前の)松井冬子、塩田千春など、ブログで取り上げたことがある女性たちは、皆どこか闇を抱えて生きているように見える。
今回特集したミッシェル・エイブリィ・コンチックにも同様の傾向が感じられて、ちょっと心配になってしまう。
トップに載せた制作中のミッシェルが、にこやかにしているので安心したよ。
更に年齢を経て、ミッシェルがどんな作品を描いていくのか。
モチーフの変化にも注目だね!

SNAKEPIPE MUSEUM #53 Caitlin McCormack

20200119 top
【この作品を見ると横溝正史の小説「悪霊島」を連想してしまう】

SNAKEPIPE WROTE:

朝の出勤前に時刻と天気予報を確認するために、テレビをつけている。
何かしらせわしなく動いているため、テレビの音を聞いている、というのが正確な言い方になるのかな。
この時間だけは民放チャンネルなんだよね。(笑)
そのためCMが入り、宣伝文句がなんとなく聞こえている状態である。
「はじめてのレース編み」という雑誌の宣伝も耳に入ったことを覚えている。
最近、レース編みやってる人いるのかなあ。
昔は電話機のカバーか応接室のガラステーブルの上に敷いたり、ドアノブのカバーとして大人気だったっけ。
などとすっかり昭和の気分に浸ってしまった。
あらっ、ウチでは今でもレースよ!というご家庭もあると思うけど、これはSNAKEPIPEのイメージだからね。(笑) 

そんなプチブル(死語!)のレース信仰をぶち壊す作品を発見したよ。
どうやら2016年にヴァニラ画廊でも作品を鑑賞することができたようで、日本でも全く知名度がないアーティストではないみたい。
今頃知ったSNAKEPIPEが遅いのかもしれないね。(笑)
早速アーティストを紹介していこう!

アーティストの名前はCaitlin McCormack、ケイトリン・マコーマックの表記で良いのかな。
そういえばマコーミックって昔、スパイス・メーカーあったよねえ。
最近聞かないなあ、と思って調べてみると、ライオンと合弁後ミツカンに販売委託、現在はユウキ食品に事業譲渡している関係で、名前がユウキMCに変わってるんだって。
どうりで聞かないと思ったよ。
って関係ない話だったので、元に戻ろう。(笑)

ケイトリン・マコーマックは1988年のアメリカ生まれ、ということは今年32歳かな。
2010年にフィラデルフィア芸術大学でイラストレーションの学士号取得。
当初はイラストレーターを目指していたようだけど、路線変更したみたいだね。
フィラデルフィアを拠点に活動している繊維アーティスト、とのこと。
繊維アーティスト、なんて呼び方初めて聞いたよ。(笑)
大学卒業後より個展を開催したり、グループ展にも参加しているみたい。
あまり詳しい情報がなかったので、これだけで許してね!
では早速作品を紹介していこうか。

マコーマックは綿素材の糸を使った、いわゆるレース編みで作品制作を行っているという。
左の作品からレース編みは想像し辛いけど、編んでることは分かるよね。
そのレース編みを接着剤で固めているらしい。
骨の標本を形にしているようだけど、お花と骨というなんとも不思議な雰囲気だよ。
「Granny」は2019年の作品で、サイズは101.6 × 71.1 cmというからかなり大きめだよね。
こんなタペストリーが部屋にあったら、印象がガラリと変わりそう。
作品は販売されていて、$3,500とのこと。
日本円で約38万5000円。 
そこまで手が出せない金額じゃないね。
どれどれ、他の作品も購入候補で考えていこうか。(笑) 

「Storm of Uncles」が気に入ってたんだけど、調べてみたら売り切れだった!
2015年の作品で、大きさが94 × 64.1 × 7.6 cmと書いてあるよ。 
奥行きが7.6cmあるということは、かなり盛り上がった厚みのある作品なのかもしれないね?
直訳すると「おじさん達の嵐」って意味不明だけど、トカゲの骨格のような謎の生物は擬人化されてるってことなのかな。
マコーマックは「時間の経過や自らの視覚的偏見による記憶の歪みを修正し、再構築することが目標」なんだとか。
分かるような分からないような言葉だよね?
例えばマコーマックが子供の頃に、親戚のおじさんが突如暴れだした時の記憶を基に作品になっている、というようなことなのか。
そうして見ると、荒れ狂ったおじさんの姿に見えなくもないよね。(笑)

「A Thing I Said (Fuck You, You Motherfucking Fuck)」という、Fから始まる放送禁止用語連発のタイトルがついている2019年の作品はいかが?
よく見ると、作品に文字がレース編みされてるじゃないの!
ちゃんと「fuck you」って書いてあるよ。(笑)
34.3 × 26.7 × 8.9 cmという小さめの作品なので、家に飾るには丁度良さそう。 
マコーマックは、それぞれのパーツをかぎ針編みしてから、何度も何度も秘密の接着剤で固めていき、最終的に硬化したパーツを縫い合わせているという。
その「秘密の接着剤」というのが非常に気になるよね。(笑)
そしてこの作品は、一体どんな状況だったのかも想像しちゃうよ。
お値段は$2,500、日本円で約27万5000円!
自宅でじっくり鑑賞しながら、ストーリーを考えるのも楽しそうだね。

アンティークの時計ケースに入った「Boy Now」という作品。
そのまま直訳すると「少年は今」なんだけどね。(笑)
2段構えなので、非常に単純に考えると上が過去の少年で、下が現在なのか。
大きくなって背中が丸まった?
開いてた口が塞がった?
快活だった子供が、現在は物思いにふける思慮深い少年に変化した、と見るのは安直過ぎるかな。(笑)
マコーマックの作品はほとんどがモノクロームなので、額やケースが変わると印象が違ってくるんだよね。
アンティーク時計のケースも、ドーム状のガラスケースも、見え方が違って良いね。
「Boy Now」は69.9 × 39.4 × 10.2 cmの大きさで、お値段は$1,700、日本円で約18万7000円だって。
東京駅近くのKITTE内にある「インターメディアテク」に、そっと置かれていても誰も気付かないかもしれないよ。
博物館に展示されている標本みたい、って意味なんだけどね。(笑)

「Chicken」は、今まで観てきた「謎の生物」とは様子が違うよね。
ほとんど人間なのに、タイトルでは「にわとり」だって。
外国では「チキン」というと、「臆病者」や「腰抜け」と言った、かなり相手をバカにしたような単語としても用いられるからね。
作品では心臓部分が透けているから、余計にそう見えるのかもしれない。
SNAKEPIPEは、この作品はマコーマック自身、つまりは自画像かなと勝手に想像する。
腕は曲がり、手先も使えない状態。
八方塞がりで出口が見えないような、陰鬱な精神状態を表しているように見えるよ。
ROCKHURRAHの解釈では、頭と心臓部分が欠落していることから、思考と運動機能が停止している様子を表現してるのではないか、という。
そしてそんな状態を人間ではなく、「チキン」と呼んでいるのではないか、と推測するらしい。
なるほど、それも説得力あるなあ!(笑)
26.7 × 34.3 × 8.9 cmという大きさで、販売価格は$1,200、日本円で約13万2000円とのこと。
マコーマックの心象を伝えているような作品、他にも紹介してみようか。

「See You All in There」は、マコーマックに珍しく黒糸を使っているんだよね。
本に絡みつくように糸が増殖し、ついには塔が立ってしまったのか。
直訳すると「これらの中に全てがある」 というタイトル、本はメタファーだろうね。
SNAKEPIPEの勝手な想像を続けると、本は記憶や人生、つまりはその人の魂を表現しているのではないか。
糸を使って心象を作品にしているので、2019年9月に鑑賞した「塩田千春展:魂がふるえる」を思い出す。
マコーマックも塩田千春と同じように、苦しみに囚われているんだろうか。
トラウマや苦しみを作品にする女性アーティストって多いんだね。
35.6 × 27.9 × 20.3 cmというサイズの「See You All in There」は$1,800、日本円で約19万8000円だって。

どの作品もアート作品としてはお手頃価格じゃないかな。
ちなみにトップに載せた作品「Morgellons」が$10,000、日本円で100万を超すんだよね。
サイズも横幅が162cmという大型作品。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!(笑)

レース編みという伝統的な手法を用いながら、アート作品を作るマコーマック。
ヨーロッパでは家庭的な要素があり、日本では先にも書いたように昭和には「ちょっとお上品」の象徴だったレースが不気味なモチーフに変身しているところがポイントかな。
どれほどまでに細かい作業なのか、そして「秘密の接着剤」の正体を知るためにも、実物をじっくり間近で鑑賞してみたいね!

SNAKEPIPE MUSEUM #52 Jody Fallon

【人間なのか動物なのか?もしくは怪物?!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回は久しぶりにSNAKEPIPE MUSEUMをお届けしよう。
最近は展覧会に赴く事が多くて、アーティストを検索する時間が取れなかったんだよね。
たまには、と検索を始めたSNAKEPIPEの琴線に触れたのがJody Fallonの作品だった。

Jody Fallon(ジョディ・ファロン)は1971年、アメリカ合衆国ペンシルベニア生まれ。
アート系の学校に行ったわけではなく、近所の暗い野原や山、森を探索しながら、孤独な感情を表現する方法を探していたという。
その後、アメリカ海兵隊として沖縄にも来ていたらしい。
兵隊経験のある画家って、他にいるのかな?
1996年から2000年の間、ファロンは重要な3人のアーティストを見つけることになる。
フランク・フラゼッタ、ポール・レア、ロン・ウィングらの作品を通して、求めていた表現手段を探し出したという。
2000年以降、週末にペンシルベニアのスタジオでSFのイラストや彫刻を、イーストストラウズバーグの博物館でフラゼッタのイラストを勉強していたという。
漫画家で芸術家のロン・ウィングに師事し、芸術と絵画の哲学を発展させ、自分のスタイルを確立したジョディ・ファロン。
地元ペンシルベニアでの個展やグループ展、ニューヨークのギャラリーで作品が展示されている。
ネットでも販売しているようで、10インチ四方(25cm)の小さな作品で$350、日本円で約36,000円とのこと。
ジョディ・ファロンは現在もペンシルベニアに住み、作品制作を続けているという。

ジョディ・ファロンが心惹かれたアーティストの一人、ポール・レアの作品がこちら。
1950年代から80年代までパルプ本の表紙デザインをしたり、PLAYBOYなどの雑誌のイラストも手がけていたという。
小説の書評を読んでから本を購入するというよりは、表紙の絵を見て興味を持つことが多いんじゃないかな。
読者の気を引く、「そそる」表紙を描くのは大変だけど面白い仕事かもしれないね。
サイエンス・フィクションの世界を支配した、とまで言われたポール・レア。
1998年に亡くなるまで、活動していたという。
ポール・レアの作品も素晴らしいので、いつかブログで特集してみようかな!(笑)

ジョディ・ファロンもきっとポール・レアの作品を観て、ワクワクしたんだろうね。
似た雰囲気の作品もあるけれど、独自のセンスが光る、ちょっと不気味な作品も紹介していこう。

怪奇小説、幻想小説の先駆者であるアメリカの小説家、H.P.ラヴクラフト全集の表紙を手がけたジョディ・ファロン。
モノクロームで描かれた不気味な怪物(?)は、ラヴクラフトの小説にふさわしいように感じるよ。
と、言いながらも、実はほとんどラヴクラフトを読んだことないんだけど。(笑)
目標にしているアーティストが得意にしていた表紙の仕事を引き受けることは、きっとジョディ・ファロンにとって特別な意味を持っていただろうね。
他にもクラシックな小説の表紙を担当しているみたい。
どれも「おどろおどろ」しくて、きっと怖いんだろうと思わせることに成功しているよ!
もし本屋で見かけたら、手に取ること間違いなしだね。(笑)

ジョディ・ファロンのHPには、シリーズ毎に作品が載っている。
「Science Fiction」のシリーズは、まさにポール・レアの後継者と言うべき作品群を観ることができる。
レトロ・フューチャーという、懐古趣味的な未来像を表す言葉の通り、懐かしさを感じてしまう作品なんだよね。
このまま小説の表紙になったり、70年代のプログレッシヴ・ロック系のアルバム・ジャケットになっているような雰囲気。
実際プログレのバンドが、どんなジャケットを使用していたのかよく分かってないんだけどね。(笑)

SNAKEPIPEの琴線に触れたジョディ・ファロンの作品は「Imaginative Realism」というシリーズなんだよね。
この言葉も相反する単語が連なっていて、想像したものをリアルに描いた作品、という意味だと理解したけど、どうだろう?
夕暮れ時なのか、逆光になった人物(?)が、大きく口を開け、叫んでいる。
植物に棘があるのか、手から血が流れているように見える。
非常に不気味な絵で、歯しか見えない黒い物体が、まるでフランシス・ベーコンが描く人物のよう。
「孤独な感情を表現する方法を探していた」という、ジョディ・ファロンの自画像なのかもしれないね?

この作品も怖いよね!
背景がオレンジ色なので、より一層ベーコンっぽく見えてくるね。
人間には見えない物体もいれば、悲しみにくれ叫んでいるように見える顔もある。
一体どんなシチュエーションなのか不明だけど、こんな青い物体に追いかけられたらさぞや恐ろしいことでしょう。(笑)
夢に出てこないことを祈るよ!

うひゃー!今度は溶けてるよ!
頭は頭蓋骨なのに、腕だけは筋肉組織やら血管が見えるようじゃない?
これも一種の「叫び」なんだろうね。
さっきまで普通に会話していたのに、ウイルスやゾンビに感染した途端、全くの別人になってしまうシーンって、ホラー映画によくあるよね。
かつては人だったのに、今はもう人間じゃない、という恐怖を表現したように見えてしまう。
ジョディ・ファロンはSFとホラー映画が好きに違いないよ。(笑)
あくまでもSNAKEPIPEの想像だけどね。

この作品を観た瞬間、ROCKHURRAHが「永井豪みたい」と言う。
ぐわっと開いた大きな口と乱杭歯。
何かを噛み砕いた後なのか、それとも腹でも刺されて口から血が流れているのか。
状況はよく分からないけれど、尋常な顔立ちではないよね。
そしてこちらが永井豪の「デビルマン」。
雰囲気似てるよね?
きっとジョディ・ファロンは、漫画やアニメも好きに違いないと推測!
永井豪の漫画は今でも海外で人気があるようで、2019年7月にはフランス政府から芸術文化勲章シュバリエを贈られていることを知りびっくり!
エロや暴力を描くことが多い永井豪は、かつて教育に不向きという理由でバッシングを受けていたと読んだことがあったからね。
時代や場所が変わると評価も変わるものなんだと改めて実感したよ。

最後はこちらの作品ね。 
24☓36インチという大きさは、61cm☓91cmなので、恐らく30号のキャンバスになるのかな。
キャンバスについて調べてみたら、Fサイズ(人物)とかPサイズ(風景)のような種類があるんだね?
高校時代、美術部に所属していたSNAKEPIPEも30号のキャンバスを使って油絵描いていたけど、どの種類だったんだろうね。(笑)
黒い頭巾をかぶった黒衣の髑髏は一体何等身あるんだ、というくらいのモデル体型。
地面にはひび割れが見えるので、後ろに積み上がった骸骨の養分を吸い込んで、地面から生えているようじゃない?
すっくと立ったその姿から邪悪な精神は垣間見えないけれど、このまま佇んでいるとは思えない。
この絵から、様々な物語が作れそうだよね!(笑)

有名な美術大学在学中から注目され、個展を開いて、卒業後は当たり前のようにアーティストになる人が多い時代。
今回紹介したジョディ・ファロンは、独学からスタートして、自ら師を探し出し教えを請い、表現を追求しているので、とても身近に感じられるタイプのアーティストなんだよね。
これからもダークで不気味な作品を発表してもらいたいと思う。
調べたところでは、恐らく日本でジョディ・ファロンについて書いている人はいないみたい。
実物を観てみたいと思うのは、日本でSNAKEPIPEだけなのかな。(笑)