SNAKEPIPE MUSEUM #69 Benjamin Mackey

20240218 03
【ツイン・ピークスのタロットカードが秀逸!】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEが仮想美術館に所蔵したいと思う作品を紹介するカテゴリー「SNAKEPIPE MUSEUM」の更新は久しぶりになるね。
今回は2017年9月に書いた「ビザール・TWIN PEAKS選手権!27回戦」に登場したBenjamin Mackeyを特集しよう!
読み方はベンジャミン・マッキーで良いのかな?
一番上に画像を載せたツイン・ピークスのタロットカードを作成したイラストレーターなんだよね。

ツイン・ピークスをこよなく愛していることが分かる、素晴らしいタロットカードだよ!

これ、本当に欲しいなあ!

こんな文章を載せているSNAKEPIPE。
タロットカード以外の作品を調べてみると、ベンジャミン・マッキーはSNAKEPIPE同様デヴィッド・リンチが大好きなことが分かる。
リンチをモデルにした作品に愛があるよね。(笑)
「ブルー・ベルベット」「イレイザー・ヘッド」や「ワイルド・アット・ハート」などほとんど全てのリンチの映画作品をポスターにしているんだよね。
恐らく「リンチ映画祭」のような企画のために描かれたみたい。
写実的というよりは、おどけた雰囲気の作品なので、ちょっともったいない感じがする。
ベンジャミン・マッキーだったら、もう少しスパイスの効いたポスターが作れたように思うけど?

この「ツイン・ピークス」のイラストは素晴らしいよね!
カイル・マクラクラン演じるクーパー捜査官を中央にして、シンメトリー構図になっている。
赤とブルーで2分割されているところがポイント!
ツイン・ピークスでは「ホワイト・ロッジ」と「ブラック・ロッジ」のように2つの世界があることが前提になっていたことを効果的に表現しているんだろうね。
テーブルの上に置かれたコーヒーとドーナツ、チェリーパイもファンにはたまらないよ!(笑)

「ピンク・フラミンゴ」の映画監督ジョン・ウォーターズを描いた作品もあったよ。
囚人服を着たジョン・ウォーターズが中央に立っているね。
手前にフラミンゴ、その後方にはディバインが見える。
そして右後方には映画「マルチプル・マニアックス」に出てきた巨大ザリガニ!
ベンジャミン・マッキーが好む題材は、SNAKEPIPEの嗜好と似てるみたいで嬉しいね。(笑)
ジョン・ウォーターズの映画は大昔に観たきりになっているので、再鑑賞したいよ。

カルト映画の代表作「ロッキー・ホラー・ショー」も描いているね。
通常は主役のティム・カリーを中心にすることが多いのに、ベンジャミン・マッキーはメガネの男を手前にしているところが珍しい。
何か特別な思い入れがあるのかも。(笑)
SNAKEPIPEは、強烈な個性があるティム・カリーがポスターになっているほうが好みだけどね!
色合いがとても美しい作品なので、ちょっと残念。

2007年4月に書いた「インダスとリアル(意味不明)」に、SNAKEPIPEが装飾を施したトイレの画像が載っている。
ポストカードを壁に貼って、小さな美術館のようにしていたんだよね!
その中の1枚に1968年のアメリカ映画「The Mini-Skirt Mob」(画像左)があったことを思い出す。
ベンジャミン・マッキーは、そのポスターのパロディ版「MONDO MONDAYS」を描いているんだね。
骸骨のポーズはほとんど同じだけれど、細かい点が描き直されていて「間違い探し」をするように見比べるのも楽しい!

大友克洋の「アキラ」もパロディになっているよ!
こちらも「Mini-Skirt〜」同様、構図は踏襲しながらも描き直されているんだね。
血のスープや人肉ミンチを作るシーンなので、ホラー映画のためのポスターだったのかもしれないね?
結構グロい。(笑)
ベンジャミン・マッキー日本文化にも興味があるようで、ウルトラマンの怪獣もシリーズとして描いているよ。
親近感が湧くね!

2022年1月に国立映画アーカイブで鑑賞した「MONDO 映画ポスターアートの最前線」も、似た傾向の作品が展示されていたね。
現役のイラストレーターが独自視点で切り取ったシーンを描いていて、興味深い展覧会だった。
もしかしたらベンジャミン・マッキーも展示されていたかもしれない、と調べてみたけれど名前はなかったよ。

雑誌や映画のフリーランス・イラストレーターとして活動しているベンジャミン・マッキー。
作成年ごとに作品をアップしているようだけど、2015年から観ていくと、どんどん失速しているように感じる。
ベンジャミン・マッキーには、トップに載せたツイン・ピークスのタロットで見せてくれたようなセンスがある作品を描き続けて欲しいと思う。
やっぱりあのタロット、買うべきだったなあ。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #68 Kirsten Stingle

20231001 11
【まるで仏像のような彫刻だね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、Kirsten Stingleという女流彫刻家を特集してみよう。
読み方はキルスティン・スティングルで良いのかな?
コロンビア大学演劇学部を卒業していて2児の母親、というくらいの情報しか確認することができなかったよ。
演劇からどうして彫刻の道を目指すことになったのかなどは不明なんだよね。
作品に興味を持ったから、他に知らなくても良いのかな。(笑)

一番最初に目にしたのがこちらの作品。
特にタイトルがついているわけではないようで、スティングルのサイトには画像Noしか載っていなかったよ。
頭に針(?)を刺した「おどけた」表情の左の女性を見て、笑っているような右の女性。
双生児のようにも見える繋がった体も気になるよね。
秀ちゃん吉ちゃん(孤島の鬼)と思ってしまうよ。(笑)
他の作品を調べてみたいと思ったきっかけになったよ!

「Awakening(覚醒)」と題された作品。
頭に載っているのはサボテン?
口にも痛そうなトゲトゲが入っているよね。
しかめっ面をする女性。
上の作品でも感じたけれど、スティングルの内面を表しているのかもしれないね。
拷問を受けているような苦しい表情、筋がたった首筋などは、直視するのをはばかるほど。
SNAKEPIPEが、自分の内面と重ねて見てしまうのかもしれないなあ。(笑)

年代物の陶器ですよ、と言われたら信じてしまいそうな古めかしい印象の作品だよね。
箱の中に入っているのはサーカスの団員かな。
箱の作品というと、ジョセフ・コーネルを思い出すね。
人形を操っているような手付きの女性はバレリーナ?
オルゴールの音色が似合いそうな雰囲気だよね。
美しさにシュールが加わって、とても好きな作品だよ!

こちらもダブル・イメージの作品なのかな。
本体と内面みたいな区分けと解釈するのは陳腐かもしれない。
手足をもぎ取られ、空を見つめる本体と、無表情な操り人形の組み合わせだから、そう感じてしまうのも無理はないよね。
ところがスティングル御本人の画像を見ると、「私はいつでもハッピー!」といった感じで明るく笑っているんだよね。
こうした内省的な作品を制作するようなタイプには見えないなあ。
人は見かけによらない、のかな。

この作品を観て、合田佐和子の「イトルビ」を思い出したSNAKEPIPE。
こんなブローチがあったら欲しいよ!
「イトルビ」も欲しいと言ってたっけ。(笑)
ブルーが垂れている、フランスの貴族みたいな帽子かぶってる真ん中のがいいなー!
勝手に「ミッシェル」と名前付けたくなるね。
何故ミッシェル?(笑)

「Journey Through Wonderland(不思議の国の旅)」というタイトルはピンとこないけれど、作品はとても素敵だね。
不気味で可愛い、相反するイメージが混ざり合っているよ。
この女性もサーカス団員、もしくはバニーガール?
骨のトナカイに引いてもらって行く先はどこだろう。
この作品から物語を作ってみたくなるね。

頭に刺さっているのはネジ?
キリキリとハンドルを回すと、ネジが少しずつ頭部に埋もれていく。
逆回しにして、ネジを抜いているところかもしれない。
周りに飛んでいるのは蝶なのかな。
この作品からイメージしたのは「ライ麦畑でつかまえて」だよ。
頭の中がお花畑みたいって思ったからね。

スティングルの作品を間近で鑑賞してみたいね。
そこまで小さな作品ではないようなので、細部までじっくり観たいよ。
会場はヴァニラ画廊でお願いします!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #67 Jane Windsor

20230813 03
【黒魔術を連想させる作品だね】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、Jane Windsorというコラージュ・アーティストについて特集してみよう。
読み方はジェーン・ウィンザーで良いのかな?
カナダで生まれ、ネバダ州の田舎で育ち、現在オレゴン州ポートランドに住んでいること程度の情報しか手に入らなかったよ。
グループ展や個展も開催しているようだけど、2019年頃から活動を始めているみたい。
もしかしたら若い女性なのかもね?

最初に目にしたのが「Maneater」と題された作品。
「マンイーター」と聞いて、80年代にヒットしたホール&オーツの曲を思い出してしまった、あなた!
SNAKEPIPEも同じだから!(笑)
作品に話を戻すと、顔は人間、体はライオン(?)で鳩の羽(?)が生えているキマイラのような生物が、微笑みながら男性の首を弄んでいる。
残酷なシーンなのに、美しく咲いた黄色いバラが周囲を彩っているんだよね。
この作品を観て、興味が湧いたよ。
まさかこの作品が、切り抜いた紙を貼り付けた、ダダさながらの手法で作成されたとは思わなかったよ!

双頭の白鳥のバックには、心臓モチーフと十字のマーク。
蓮の花のような台座に、棘のあるイバラを組み合わせ、バランスの良い構図だよね。
四隅には「北部」「南部」と書いてあるので、どこでどんな星座が見られるのかを教えてくれる星座早見表みたいだよ。
SNAKEPIPEの勝手な想像では、十字軍が位置を確認するために携帯していたようなイメージ。(笑)

「黒蜥蜴」ならぬ、「黒サソリ」なのかな?
えっ、まさかロブスターじゃないよね。
こうして提示されるとどちらなのか判断し難いことが分かって、驚き!
ジェーンの作風としては「サソリ」で間違いないはずだけどね。
美しい皿に盛り付けられた料理のように見えてしまったのが原因かも。(笑)
毒々しいモチーフを美しくまとめるセンスが素晴らしいよ。
赤と黒が入ると、アジアっぽい印象も受けるよね。

「頭痛」と題されたこちらの作品、ジェーンのサイトで販売されてるんだよね!
大きさは8×10インチなので、A4より少し小さめかな。
すぐに取り付けられる額入りで、お値段は$350、日本円で約4万円ほど。
紙を切り貼りして作成したなら、一点ものなんだろうね。
ゴシックや中世好きなら手に入れたいはず!

最後は「なぞなぞを聞いて」と題された作品にしよう。
「マンイーター」のように、下半身がライオンで天使のような羽を持つ慈悲深そうな女性。
手にしているのは金色のティアラを着けた首!
周りにいくつもの髑髏があるので、今までも同じ光景が繰り広げられたようじゃない?
「なぞなぞ」を語っているのは、首になのかネズミに対してなのかわからないね。
ちなみにこの作品、$350から値下げして$200になったところで売れたみたい。
好みの作品がお手頃価格になったら嬉しいよね!(笑)

美しさと残酷が同居している、ダーク・アートはSNAKEPIPEの好み!
ジェーンは紙を実際に切り貼りして作品制作しているらしいので、どこから素材を調達しているのか気になるよ。
2019年に東京都庭園美術館で鑑賞した「岡上淑子展」では、1950年代の「ハーパース・バザー」などの雑誌を切り取ってコラージュしてたと記憶している。
ジェーンは一体どこからインスピレーションを得ているんだろうね。
今後の活躍に期待だよ!

SNAKEPIPE MUSEUM #66 GIULIA GRILLO

20230409 07
【ジュリア、ちょっと引っ張り過ぎ!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE: 

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはイタリア人アーティストを紹介しよう。
GIULIA GRILLOという女性なんだけど、読み方はジュリア・グリロで良いのかな?
この名前で検索すると「元イタリア共和国保護大臣」という別人がヒットしちゃうんだけど、スペルは同じなんだよね。
ジュリア・グリロの経歴は詳しく載っていないようで、イタリアでグラフィック・デザインを学んだ後、ロンドン芸術大学で写真を学んだことだけは判明したよ。
早速作品を観ていこう!

ジュリア・グリロはセルフ・ポートレートの作品を発表しているアーティストなんだよね。
トップに載せた画像がアップなので分かりやすいけど、かなりの美貌の持ち主!
シュルレアリスムに影響を受けた、ちょっと不気味な雰囲気が特徴なんだよね。
「The Baking of a Cake」は2019年の作品。
「ケーキを焼くところ」ってタイトルだけど、割った卵の中身が口腔内じゃないの!
表情がうつろで、視線は「あらぬ」方角に向けられているね。

「Emotional Baggage」は2021年の作品で、訳すと「感情的なバッグ」になるのかな。
ここではバッグの装飾になっているジュリア。
いかにもイタリアっぽいポップでカラフルな演出が素敵!(笑)
黄色いレザーの手袋欲しい、などと小物にも目が行くよ。
ジュリア・グリロは「プチ・ドール」という別名を持ち、独自のキャラクターのためメイクや衣装、セットなど全てを自分で担当しているという。
実際にジュリアは小柄らしいよ。(笑)

これは、イタリアを代表する画家であるデ・キリコをモチーフにしている作品だね!
床とタイツを赤茶色にしているのも、キリコ風だし。(笑)
鮮やかなブルーとのコントラストが見事。
「The Reflection of Yourself」は「あなた自身の反映」と訳して良いのかな。
マネキンのように無表情なジュリアの顔が、無味乾燥な現代の世相を表している、なんて陳腐なことは言わないけど。(笑)
シュルレアリスムを写真で表現しているところがポイントだよね!

セルフ・ポートレートで有名なアーティストといえば、シンディ・シャーマン。
SNAKEPIPEが観たジュリア・グリロの作品の中で、シンディ・シャーマンっぽいな、と思ったのがこれ。
「Skin Hunger」ってタイトルなんだけど、自分の肌を削り取ってアイスみたいに重ねなくても!
何があったのか分からないけど、そこまで自分を追い詰めなくても良いのでは?と余計な心配をしてしまったよ。(笑)

「Precarious Affection」では、どぎついメイクを施しているジュリア。
水槽の中に手を入れてるけど?
よく見ると中にいるのはピラニアじゃないの!
しかも血が流れてるっ!
タイトルを訳すと「不安定な愛情」になるのかな。
胸につけているブローチは、心臓をモチーフにしているように見えるけど、真っ黒なんだよね。
レースをあしらったクラシカルなドレスに身を包んだ、病的な美女。
絵になるよね!

セルフ・ポートレートをシュルレアリスムで味付けしてデジタル加工した作品は、ジュリア・グリロの美しさとイマジネーションがうまくミックスされているね。
ポートレートが、ほとんどジュリアの右側からの撮影というところが少し気になったけど。(笑)
ジュリアが今後、どんな展開を見せてくれるのか楽しみだね!
そして作品は70cm×50cmの大きさの場合、$1,850日本円で25万円くらいで手に入るみたい。
いつかSNAKEPIPE MUSEUMに収蔵しよう!