Naonシャッフル 第4夜

【エフェクトかけ過ぎの鬱陶しいプロモ映像をROCKHURRAHが作成】

ROCKHURRAH WROTE:

3年以上更新してなかったシリーズ企画「Naonシャッフル」を実に久々に書いてみよう。前回の「第3夜」にも

何とこの「Naonシャッフル」のシリーズも一年も書いてなかった事に気付いてしまった。

などと書いていたな。トホホ。

シリーズ名だけでは何なのかさっぱりわからんだろうが、簡単に言えばロックをやってる女性特集(ウチの場合は70年代から80年代のパンクやニュー・ウェイブに限定する)というような記事を思いつきで書いたのが始まり。

今どき現実にナオンなんて言葉使ってる人がいるのかどうかは不明だけど、XTC初期の名曲をパクってつけたシリーズ名だけはなかなか良し(笑)。
読みなおしてみると第1夜はニュー・ウェイブ初期に隆盛を誇ったスティッフ・レーベルの二人の歌姫特集。
第2夜は70年代リヴァプールからパンク、ニュー・ウェイブ初期にたくさんの遺産を遺したデフ・スクール&ビッグ・イン・ジャパンの歌姫特集。
第3夜はポジティブ・パンク、ゴシック方面で活躍した歌姫特集。
うんうん、さすがにROCKHURRAHらしい独自のセレクトで今どき誰も言及してないようなバンドにばかり焦点を当ててる。この微妙なバランス感がいいね(自画自賛)。

さて、今夜は何を特集してみっか?などと考えたが実は記事がアップされるのがおそらく朝か昼間。 全然ライブ的ムードも何もないんだけどね。
考えてみれば大好きだったROBINが解散して以来、ほとんどライブにも出かけてないし、19時過ぎて外にいることがないというアットホームな生活をしてるな(笑)。
かつて京都にいた頃は深夜4時に帰宅という仕事をしてたのになあ。

今回はROCKHURRAHには珍しく日本のパンク、ニュー・ウェイブ初期を飾った歌姫特集にしてみよう。

日本のパンクとかニュー・ウェイブの歴史について語るつもりは毛頭ないが、そもそも日本パンクの先駆けと称される「東京ロッカーズ」周辺のバンドが盛んだった頃のROCKHURRAHはまだ地元、北九州の住人だった。とても見てきたようには書けまっせん。
かなりヒネた自信過剰少年だったのでどうせ「俺の方がずっとパンクやけん(小倉弁)」などといきがってたに違いないよ。

日本の場合はストレートでストロングなパンクよりも、鬱屈したノイズやアヴァンギャルド、そしてテクノ系の方がずっと早く発達したという印象を持つ。今じゃなくて一番最初の時代ね。
英米からのパンクの伝来が遅れた分、リアルタイムで訪れたニュー・ウェイブと時期的に一緒になってしまった、と推察してみたが実際はどうなんだろう。
あるいは日本の住宅事情で、大声を出して歌うのも大音量で楽器をかき鳴らすのも、狭いスタジオ内くらいしか自由に練習出来ないというのも、バンドにとっては不利だったかも。ノイズやテクノだったら部屋で一人で作れるようなタイプもなくはないからね。

ROCKHURRAHもパンクのレコードを本格的に集める前の時代にペル・ユビュとかスロッビング・グリッスルとかディス・ヒートとか聴いてたし、その辺に影響を受けて短波ラジオから謎の国の放送を多重録音して、音のコラージュとか作ってたもんな。
兄が8トラックのミキサーを持ってたのに使い方がわからなくて、自分ではダブルデッキによるローファイな重ね録り(音質が非常に悪くなる)とかやってたのが懐かしい。リズムマシーンなんて持ってなかったからカシオのワンキーボード使ってバッキングの音にしてね。
何年後かにドイツのトリオがこの楽器を使ってヒットした時も「こっちの方が早かったのになあ」などと思って舌打ちしたよ。
え?個人的な思い出話なんてどうでもいい?

話を無理やり戻す(しかも上の前フリとは全然関係ない)が、割とインターナショナルな経歴の元祖ニュー・ウェイブ女性シンガーだったのがこのPhewだった。
ソロになる前はAunt Sallyというバンドをやってたな。
「ロックマガジン」の阿木譲が設立した伝説のヴァニティ・レコードよりリリースされたのが1979年の事。オリジナル盤は500枚しか出てなくて、今だったら名前検索してスチャ(マウスクリックする音)で曲を聴く事が出来るが、この当時は知ってる人も少なかったし、レコード所有者も周りにはいなかったな。
84年くらいに確か再発して、これでやっと音源を手に入れた人も多かったことだろう。

メンバーのうち3人が女性という編成、まあ多数決でガールズ・バンドと言っても差し支えなかろう。
斜めにかぶったベレー帽がトレードマークで、そういう写真が音楽雑誌の広告に載ってたから、ROCKHURRAHはどうせ美大生か何かのアート気取りシンガーだと勝手に思っていた。ベレー帽=絵描きさん=美大生という単純回路による連想なんだけど、そもそもこの発想が古いか?
事情通じゃないからPhew個人の事については何も知らないけど、音楽は聴いたというだけの通りすがりに過ぎない。

同時代には世界各国で女性によるニュー・ウェイブ・バンドもぼちぼち出てはいたが、ブレない、媚びない姿勢でひとりよがりの四畳半インディーズとは一味違ったものを作っていたのが見事。
曲によっては「暗い70年代・暗い日本」といった雰囲気も引きずっているが、この曲「すべて売り物」などはまるで和製リチャード・ヘル&ヴォイドイスみたいで文句なくカッコイイ。途中の何だかわからん「がなり声」みたいな部分も外人はよくやるが、この時代の日本のバンドでは珍しい気がする。
「日本語でこういうことやったら恥ずかしいんじゃないか」と思う以前に、原初の衝動で突き進んでいたんだろうな。
病的と言うよりは病気のような歌「フランクに」もすごい歌詞。

物を拾えば吐き気がするし
廊下を歩けば立ちくらみ
鏡を見ると耳鳴りするし
静かになるとノイローゼ気味
地下鉄乗ると気が遠くなる
紅茶を運ぶと不整脈

Aunt Sallyは当時では知る人ぞ知るようなバンドだったが、その後Phewはソロになり、これまた伝説のPASSレコードから坂本龍一との共作を発表したり、ドイツの偉大なプロデューサー、コニー・プランク+CANのメンバーという豪華アーティストがバックを務めるアルバムを出したり、大物との共演が目立つアーティストとなる。
エクスペリメンタル・ミュージック+日本の暗い歌といった路線で、この後の女性ヴォーカリストの多くに影響を与えたに違いない。

インターナショナルな経歴というと忘れちゃならないのがこのIkue Moriだろう。
イギリスでパンク・ロックが盛んになったのが1977年だが、アメリカのニューヨークではその頃はすでにパンク以降の音楽が沸き起こっていて、 音楽も人種もるつぼのような状態。などと見てきたように書いてみた。

ストレートなパンクやロックと前衛的で実験性に富んだ音楽が同じようなシーンでごっちゃになってて、ニューヨーク・パンクに対してNo Waveなどと呼ばれていたな。
そういった一派の音楽をひとまとめにして「No New York」というコンピレーション・アルバムがブライアン・イーノによって編纂されたのが1978年の事。
ジェームス・チャンス&コントーションズ、MARS、リディア・ランチがやっていたティーンエイジ・ジーザス&ザ・ジャークス、そしてDNAという4バンドによるオムニバスなんだけど、これが当時の一般的なロックとはかけ離れたノイジーでヒステリックな実験音楽の見本市みたいなシロモノ。

DNAは実験的でグチャグチャな奏法を会得したメガネ・ギタリスト、アート・リンゼイによるバンドだ。コードだのリフだのギター・ソロだのという従来のロック的ギターとは無縁の、何だかよくわからない「かき鳴らし」みたいな音が特徴。
アート・リンゼイに限らずこの系列のバンドはみんなそういう感じなんだけど、誰が最初に始めたんだろうね。
そのDNAのドラムが日本人でしかも女性というのに驚いたけど、Ikue Moriは渡米していきなりドラムも素人のままアート・リンゼイにスカウトされて、すぐにレコード・デビューも出来てしまったという稀な例だろう。舞台がアンダーグラウンドな世界であっても、これは快挙だったに違いない。それ以前に海外で活躍した日本のアーティストなんて個人的にはCANのダモ鈴木くらいしか思い浮かばないからね。

人と違う事をやって、それが誰かに認められてチャンスが舞い込んで来る。
パンクの時代は誰でもそう考えたし、実際に楽器を手に取って何かすればどこかの世界に居場所が見つかるような気がしてた。
ROCKHURRAHにとっては理想的な生き方なんだけど、残念ながら自分ではそういう生き方をしなくて、今頃になって後悔してるよ。何であの頃に世に出るような事が出来なかったんだろうなあ、と。もっと行動力があれば人生も変わってたかも知れないね。
え?それ以前に才能がなかった?

Ikue Moriはその後もアメリカに居続けてジョン・ゾーンやフレッド・フリス、ロバート・クイン、キム・ゴードンなどなど数多くの著名なミュージシャンと共演して、自分のソロ活動も続けているが、上の映像は一番若気の至りで輝いていた頃、DNAのライブより選んでみた。トンガッてるね(死語)。
一般的な音楽好きの人からすれば頭おかしい人にしか見えないアート・リンゼイのパフォーマンス、ベースはペル・ユビュの初期メンバーだったティム・ライトか?。その後ろで部族のタイコのような音をクールに叩いてるのがIkue Moriの勇姿。よくこの二人に合わせていられるよ。

割とシリアスなのが続いたから色物系もひとつ選んでみるか。
こちらもインターナショナルなフランク・チキンズ。
1970年代最後の首相だった大平総理の姪だという東大卒のインテリ、ホーキ・カズコを中心にロンドンで結成。今で言うところのDAIGOみたいな経歴か?
1983年に「We Are Ninja」という曲で突如人気となり、日本に輸入という形で紹介されたのがフランク・チキンズだ。
外人でも知ってるスシ、フジヤマ、ゲイシャ、ニンジャなどをモチーフにして海外で大人気、と書けば今の時代だったら「ありきたり」のひとことで済ませられるだろうが、それを体当たりで本気でやって日本をデフォルメした例がこれ以前には(強いて言えばYMOが先駆者なんだろうけど)たぶんなかったんじゃない?

やらない人間はバカらしいとかあまり面白くないとか、何とでも言えるが、海外でちゃんと受けた日本のパフォーマーだった事実は間違いない。
前のイクエ・モリにしろこのホーキ・カズコにしろ、とにかく深く考えずにまず海外に行って、そこから成り行きでバンドを始めただけ、という気軽さが逆に良かったのかも。

「フジヤマ・ママ」はロカビリーの女王、ワンダ・ジャクソンの曲。
ROCKHURRAHの世代ではパール・ハーバーがカヴァーしていてクラッシュの来日公演で一緒に歌っていたのが有名かな。
フランク・チキンズはこれをいかにも80年代風にやってるが、なぜか最後の方が「小原庄助さん、何で身上つぶした、朝寝朝酒朝湯が大好きで」という「会津磐梯山」の民謡になっているという妙なミクスチャー路線。外人には意味不明だろうが今どきは日本人でも知らない人が多い歌だろうな。
他にも木更津が誇る童謡「証城寺の狸囃子」や千葉のチンピラを歌った曲などもあり、和洋折衷の極みだね。

さて、今回のラストはこれまたインターナショナルな活躍をしていたThe 5.6.7.8’sだ。ある程度の年齢の人ならば思い出すに違いない「イカ天」出身のガールズ・ガレージ・ロックンロール・バンドだ。
60年代からある音楽のジャンルなのでガレージについて書いていたらキリがないし、特に詳しいわけじゃないが、ギャンギャンに歪ませたファズ・ギターとかトレモロの効いたギュンギュンな音とか、そういうので奏でる古風なロックンロールというのがひとつのスタイルだろう。
え?その擬音じゃわからない?

今どきはそんな練習あまりしないと思えるが、大昔はロックギターの基本と言ったらブルースかロックンロールか、要するにこの手のスリー・コードを延々と弾き続けてそこに自分なりのソロを展開してゆくという手法でROCKHURRAHはギターに慣れていったよ。

この手の音楽は歌なしのインストも多いし、ただ演奏だけしてても観客がつまらんから・・・という理由かどうかは全然わからないが、なぜかガールズ進出率が非常に高いジャンルなんだよね。絵的にという意味ね。現実にいるかどうかは全く不明だが、豹柄の原始人ガールみたいな衣装のこわもてお姉さんが3ピースでやってるバンドとかがガールズ・ガレージ・バンドの一般的なイメージだと思われる。ん?偏見ありすぎ?

The 5.6.7.8’sはそこまでキワモノではなくて割と正統派でオースドックス、演奏も見た目も健全な印象がある。彼女たちがイカ天以外で最も良く知られているのはクエンティン・タランティーノの映画「キル・ビル」での演奏シーンだろう。90年代には既に海外でもツアーをしていたバンドだったが、タランティーノが知ったのはたぶん偶然だったらしいので、これは降って湧いたかのようなチャンスだったんだろう。音楽を使われるだけじゃなくて演奏シーンの出演だからね。
世間が知らないところで「チッ、あたいの方が」と舌打ちしたガールズ・ガレージ・バンドも数多く存在してるに違いないよ。

書き始めた時は「インターナショナルな活躍をした」などという括りは全然考えてなかったけど、二人目のイクエ・モリを書いた時点でなぜかそういう方向に傾いてしまったの図。相変わらず竜頭蛇尾で構成力のない文章だな。
また出直してきます。
それではDo videnia(スロバキア語でさようなら)

ビザール・レインブーツ選手権!23回戦

【有名な長靴ブランドHUNTERから連想するのはこの叫び!】

SNAKEPIPE WROTE:

9月に入ってから台風の影響や長雨が続いて、すっきりとした秋晴れには恵まれていないよね。
ほとんど毎日曇りか雨。
あまりピカピカの陽射しを好まないSNAKEPIPEだけれど、洗濯物が乾かないのは困ったものだ。
そして外出の際にも「濡れても平気な服装」を考える必要があり、お洒落を楽しむというよりは、実用性を重視しなくてはいけないのが残念。
せっかくだったら、雨の日が楽しみになるようなアイテムないかなあ?
例えばレインブーツだったらどうだろう?

日本だけじゃないかもしれないけど、レインブーツといえばイギリスのブランドであるHUNTERを履いてる方、多いよね。
実はSNAKEPIPEも所持しているけれど、 制服みたいに大勢の人とお揃いになるのはかなり苦手!
前から歩いてきた人が全く同じ靴を履いていた、なんて経験はあまりしたくないなあ。(笑)

それならば!
人と被らない個性的なレインブーツを探してみようか。
どんなブーツがあるかな?

雨といえば、カエルを連想すること多いよね!
海外でも同じなのかもしれない。
左のブーツ、カエルの顔付き。
ちょっと笑ってるような口まで描いてあるよね。
子供用の長靴にはこんなタイプがいろいろあるんだけど、こちらはなんと大人用!
これはSoleM8というブランドの「”Leapfrog” Adult Frog Wellies」で、the welly shop.comで購入可能。
EU36(UK3)からEU42(UK8)までのサイズ展開なんだよね。
大体23cmから27cmといったところかな。
驚いたのが、24.5cm以上が完売という事実!
海外だと女性でも足のサイズが大きいのかもしれないけれど、男性にも人気なのかもしれないね?
こんなカエルちゃんを履いてる屈強な男性、カワイイかも。(笑)
気になるお値段は£29.99、日本円で約4,000円!
遊び用に一足買ってみたいと思わせる値段設定だね!

遊び心ではこちらも負けてないね。
「RAIN LEVEL」と縦書きされた横には水位を表す数値が書いてある。
どこまでの深さなのか試してみたくなるよね!
これは楽しい逸品。(笑)
イタリアのStefano Priovano and manufacturedがデザインしていて、お値段は€69.00、日本円で約7,800円らしい。
これ、欲しい!と思ったSNAKEPIPEだけど、残念ながらもう販売終了しているみたい。
雨の日が待ち遠しくなるアイテムだと思ったのになあ!

海外のサイトで検索すると種類が豊富なのがウエスタンブーツ型のレインブーツ。
日本でもどこかで売ってるのかな。
そんな中でも一目惚れしたのが、左のメキシカンチックな逸品!
M&F Western Productsのデザインで、サイズ展開はUS6からUS11まで。
23cmから28cmくらいまでで良いのかな。
これならほとんどの女性は大丈夫だよね!
販売しているのはCavender’sというカウボーイやカウガール御用達のショップ。
雨の日でもウエスタン魂は忘れないってことだね!(笑)
そしてこちらの商品、元は$45だったけれど現在セール中で$39.99、日本円で約4,000円!
えーっ!
そんな値段だったらSNAKEPIPEも欲しい!
パンツの裾からチラッと髑髏が見え隠れする想像するだけでも楽しい。
FREE SHIPPINGに日本も入ってるかなあ。
調べてみると海外発送は行っていない、とのこと。ショボーン!

ならば、日本でも手に入るアイテムを探さないと!
特別ビザールではないけれど、「さすが」と思った逸品として、バーバリーのレインブーツを紹介してみよう。
本体の柄は有名なバーバリー・チェックを使用し、透かしのように馬がプリントされている。
そしてカーフレザーで履口部分をグルリと覆い、ポイントとしてタッセルが付属している。
いかにも英国風のスタイリッシュなデザイン。
傘や帽子、そしてコートとのスタイリングも一瞬で頭に浮かぶよね!
意外にもトラディショナルな服装も好きなSNAKEPIPEなので、このブーツもグッと来る逸品。
お値段は日本円で約25,000円とお手頃!
とても素敵だけど、販売は終了しているみたい。
うーん、残念!

今度こそは入手可能なアイテムを探してみよう。
見つけたのは世界的に有名なイタリアのブランドであるドルチェ&ガッバーナ のレインブーツ!
こんなにシルバーでピカピカの長靴、見たことないよね。(笑)
これならほとんど誰とも被らないよ!
素材はPVC(ポリ塩化ビニル)に、メタルと書かれているのでメタルのコーティングでシルバーにしてるみたいね。
レインブーツでリングブーツのデザインはあまり見かけないし、なんといってもシルバー色だからね。(笑)
サイズはイタリアサイズの36から40まで。
23cmから25.5cmくらいになるね。
気になるお値段は$795、日本円で約80,000円!
farfetchにて絶賛発売中。
海外発送も行っているというから、個性的な逸品も手に入りやすいね!
それにしても、8万円だから濡れたり汚れたりしないように大事にしないとね。
えっ、それじゃ意味ない?(笑)

SNAKEPIPE SHOWROOM 物件10 孤立物件編

A.Masow ARCHITECTS設計の未来的なエコハウス。素晴らしいね!】

SNAKEPIPE WROTE:

引っ越したいなあ、とネットで様々な情報を見ているとワクワクしてくるSNAKEPIPE。
実際に住んでみると不便なことや不満が出てくるんだろうけど、写真や動画を見ている段階では楽しいことしか頭にない。(笑)
この部屋をこうして、ああしてと想像すると夢が広がるからね。
今回の「SNAKEPIPE SHOWROOM」も、「見てる」のと「実際」が恐らく違うと思われる物件を紹介してみよう。

最初に紹介するのはアメリカ合衆国東海岸首都ワシントンD.C.の東にあるチェサピーク湾に浮かぶ灯台! (写真①)
灯台がマイホームなんて聞いたことないよね!
この外観だけでもグッと来る!(笑)
恐らく廃墟好きにはたまらない建造物だと思うよ。
1894年に建造されたというから、およそ築120年。
恐らく外壁だと思うけど、 「歴史的建造物」と書いたプレートもあるね。(写真③)

あまり内部の写真がないんだけど、かなり傷んだ様子の階段やペンキの剥げた様子を知ることができるね。(写真②、④、⑤)
120年間何の手入れもされてこなかったのかもしれない。

5階建てで広さが1500平方フィート、換算すると約140㎡。
日本人に分かりやすいように言うと約85畳の広さとのこと。
結構な広さはあるけれど、実際に生活できる環境になっているのかな?
建物内の、例えば風呂や台所など日常生活で使用する設備についての説明もなし。(笑)
「ちょっと手を加えれば充分住めます!」
と話している不動産屋の談話が載っているけど、実際にはどの程度の修理が必要なんだろうね?

そして上陸するためには船を使うしかない状況なので、食料や物資の調達についても気になるところ。
そういった数々の難問をクリアできたら、目の前に広がる絶景を独り占めできることになるよ!(笑)(写真⑧)
お値段は$249,500、日本円で約2550万円也!
隣近所が皆無のプライベート空間を満喫できる貴重な物件。
見た瞬間に惹かれてしまったSNAKEPIPEだよ!(笑)

次も似た物件に一目惚れしてしまった。
こちらはイギリスはロンドンのテムズ川に浮かぶ要塞なんだよね。
要塞!
ミリタリー好きにはたまらない「要塞での暮らし」。
英訳すると「life in fort」か?(笑)
売りに出されてる要塞ってあまり聞かないように思うよ。
ここは1855年のナポレオン戦争でフランスからの攻撃に備えて設置されたという、非常に長い歴史のある建物なんだよね。(写真②)
建物に行くための道があるんだけど、かなりぬかるんでいて歩くのが困難な状態だよ。(写真①)
歩いている様子が動画になっているので載せてみようか。

内部はさすがに要塞なだけあって、屈強な造りになってるね。(写真③)
プールにできるような施設も完備。(写真⑤)
本来は水を貯めるためだったのかな?
そして沈みゆく太陽をテラス(?)から眺めることもできるね!(写真④)

ロンドンまでモーターボートで約50分の距離というから、アクセスも抜群!
モーターボートさえあれば、交通渋滞に巻き込まれる心配はないってことだ。
通勤時のストレスもないだろうし。(笑)
前に紹介した灯台と同じように、生活物資の調達の問題があるけれど、その点もモーターボートでクリアかな?

さて、気になるお値段はというと。
£500,000、日本円で約6650万円!
改装費用が倍以上かかるという見込みもあるようなので、簡単ではないけれど、ちょっと憧れる物件だよね!(笑)

なんだか今回の「SNAKEPIPE SHOWROOM」は高い建物に焦点を当ててるみたいなんだけど。
次に紹介するのも19階建ての高い建築だよ!

ボコボコ・ゴツゴツした不気味な形状!
下から見上げるとまるでSF映画に出てくるような建物だよね。(写真①)
ガウディが設計した「カサ・ミラ」の進化系といった感じかな?
岡本太郎じゃないけれど「なんだこれは!」と感嘆の声を上げてしまうような不思議な建造物。
一体なんだろうね?
調べてみると、これはオランダはアムステルダムにある公団住宅だったよ。
「サボテン・ハウス」を意味する「Urban Cactus」 という名前がついている。
日本で言うところの団地とはまるで印象が違うよね。(笑)
Ucx Architectsという設計事務所のデザインとのことだけど、こんなに斬新なデザインを採用するロッテルダムが羨ましいな!

フロアごとに65㎡から110㎡までの部屋があるという。
この面積だけでも充分広いのに、更に庭まであるんだって!(写真②)
各フロアにプールもあるみたいなんだけど?(写真③)
管理や掃除はどうなってるんだろうね。
全世帯で98というから、みんなで交代して掃除するのかな?(笑)

公団住宅のせいか値段や、どうしたら借りる(買う?)ことができるのかという情報を見つけることができなかったのが残念!

最後も高い建物にしてみようか。
アメリカはコネチカット州の川沿いに建つ風車を紹介してみよう。(写真①)
風車を住居に、という発想がすごいよね。
玄関の青いドア。(写真②)
上下階への移動は階段だから、ある程度の年齢までしか住めないかも!(写真③)
いや、もっと改造してエレベーターにするとか?(笑)

内部は驚くほど美しくリノベーションされているんだよね。
こう言っては失礼だけど、外観からは想像出来なかったほどの完成度の高さに驚いたSNAKEPIPE。
ここだったらすぐにでも住めそうだよね!
1967年に建造されたとは思えない程、手入れが行き届いてるもんね。

840平方フィート、78㎡というから決して広くはないけれど、3ベッドルームに1バスルーム。
まあ、一般的な日本の3LDKくらいの感じかな?
デッキ部分は新しく作られたらしい。
眺めも良いし、洗濯物がよく乾きそうだよね!(写真④)

さて、気になるお値段は?
$1,850,000、日本円で約1億9000万円!
えーーーっ?!
かなりリノベーションしたといっても、高くない?
億超えで風車かー。(笑)
どうやら値段の高さの理由は 、ニューヨークのグッゲンハイム美術館のリノベーションを手がけたこともあるFrank J. Sciame, Jrによるリノベーションが施されていたということ。
リノベーション界の有名人みたいだね。(笑)
そんな人の手にかかってるから、素敵に変身してるし、お値段もお高めということなんだろうね。
風車、ちょっと良いなと思ったけど、この値段だったら違う物件を考えたほうが良さそう。
本気で考えてたのになあ。(うそ)

トーマス・ルフ展 鑑賞

【トーマス・ルフ展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

情報収集能力に優れた長年来の友人Mからお誘いがあったのは、7月だっただろうか。
東京国立近代美術館で開催される「トーマス・ルフ展」が気になる、というのである。
全く聞いたことがないアーティスト!
ただし東京国立近代美術館に関しては、2011年の「生誕100年 岡本太郎展」や2013年の「フランシス・ベーコン展」、2014年の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」で訪れているんだよね。
そのためSNAKEPIPEやROCKHURRAH、長年来の友人Mが「好きそうな企画」を立ててくれる美術館として良い印象を持っている。
今回の「トーマス・ルフ」については謎に包まれたままだったけれど、「あの美術館の企画ならば!」と期待して待っていた。

迷走台風に続き、日本列島を通過するかもしれない大型台風の発生が予想されていた時、SNAKEPIPEとROCKHURRAH、そして友人Mは竹橋駅に集合した。
大雨になるかもしれないけれど、東京国立近代美術館は竹橋駅の目の前。
あまり影響を受けずにたどり着くことができるんだよね!
そして予想通り(?)台風のせいか来場者が非常に少ない。
天候に加えて、SNAKEPIPEと同じようにトーマス・ルフについて知らない人が多かったのも原因かもしれないね?
SNAKEPIPEが命名した「国立系」、アクティブシニア(活発なご老体)連中が皆無!
もちろん子連れのファミリーもいない!
人が少ない、とても良い環境で鑑賞できそう。(笑)

ここでトーマス・ルフについて書いてみよう。
1958年ドイツ生まれ。
1977年〜1985年、デュッセルドルフ美術アカデミーの写真学科にてベルント&ヒラ・ベッヒャーの元で写真を学ぶ。
2000年〜2006年、デュッセルドルフ美術アカデミー写真学科の教授を務める。
ドイツの現代写真芸術において重要なポストに就いている人物、とのこと。
一体どんな作品なんだろうね?

会場に入ってすぐに展示されているのは、「トーマス・ルフ展」の紹介やチケットにもプリントされていた「Porträts(ポートレート)1986-1991,1998」のシリーズ。
美術館にある説明文を抜粋して載せてみようか。

一見ありふれた証明写真は、巨大なサイズ(210×165cm)に引伸ばされると,印象が一変します。
ありふれた人物写真が,どこか不可解で不可思議な存在にすら見えてくるのは、写真というメディア独自のメカニズムのせいではないでしょうか。

そ、そお?(笑)
確かにこれだけ巨大な証明写真が並んでると迫力はあるね。
「全く同じように複数人を撮影するのは相当な技術」と書いている人もいるようだし、巨大写真というのが現代写真のフォーマットの先駆とも説明されている。
説明を聞けば「そうなのか」とも思うけど、SNAKEPIPEにはよく分からなかった、というのが正直なところかな。

「ポートレートだから、茶色のブラウスを着たチケットに載っていた人がトーマス・ルフだと思ってた!」
ROCKHURRAHが真剣な顔で言う。
いや、どう見たって女性の写真だから間違えないと思うけどね。
トーマスって女性、あまり聞かないし。(笑)

「なるほど」と思ったのは、次に展示されていたシリーズ「Häuser(ハウス)1987—1991」。
集合住宅や企業の社屋といった、ごく普通の建物をきっちり水平に固定し、「空、建物、地面」のバランスを考えて撮られている作品群。
建物写真というよりはデザイン性を感じるんだよね。
1枚だけでは分かり辛くても、明確な主題の作品が複数並ぶことで意味を解釈することができる好事例だと思った。

ROCKHURRAHから「この作品を撮影しておいて」とリクエストされる。
理由を聞いてみると「レコードジャケットに似ている物があるから」だという。
ドイツのバンド、Fehlfarbenの1stである「Monarchie und Alltag」だという。
並べてみると、どうだろう。
建物の角度、ほぼ同じだよね。
雰囲気も近い!
即座に思い出したROCKHURRAH、さすがだね!(笑)

「Häuser」シリーズからコンピュータを使用して画像の加工を始めたというトーマス・ルフは、合成写真も作成している。
実際にドイツの警察で使われていたモンタージュ写真合成機を使用して制作された「andere Porträts(アザー・ポートレート)1994—1995)」。
実在の人物のパーツを組み合わせて作り上げているから、あり得ない人物に仕上がってるんだよね。
ちょっと笑ってしまう感じ。(笑)

写真と現実の関係についての問いや、
監視社会をめぐる問題意識が浮上します。

説明文に書いてあった文章を転記してみたよ。
こういう解釈も成り立つんだろうけど、観たままで良い気がするなあ。

自ら撮影した写真を解体してパーツにしたトーマス・ルフは、他人が撮影した写真の加工を始める。
「Zeitungsfotos(ニュースペーパー・フォト)1990—1991」は、新聞や週刊誌に掲載された写真のみを抽出し、拡大した作品群。
事件や事故の内容が示されたキャプションを取り除いて、純粋に写真としてだけ提示する、というのが趣旨だという。
これは読み取る側(鑑賞者)に写真の意味を委ねるので、人それぞれ持つ感想が違ってくるだろうね。
自分の写真の解体の後は、メディアの解体を行ったということだろうか。
そして他人の写真を流用する、という手法はマルセル・デュシャンから始まる「レディ・メイド」を継承しているようにも思う。
ちなみに、「レディ・メイド」について説明しているwikipediaに次の文章があるんだけど。

レディ・メイドの根底にあるものは、美術的に無関心な領域において選択される「観念としての芸術」という考え方であり、マルセル・デュシャンによれば芸術作品において本質的なことは、それが美しいかどうかではなく、観る人の思考を促すかどうかということなのである。

非常に長い一文だけど(笑)、トーマス・ルフについての説明文にしても良い感じだよね!

トーマス・ルフの実験はまだまだ続いていく。
「zycles 2008—」は、まるでどこかのデパートの包装紙みたいだね、と3人で言い合う。
えっ、例えがおかしい?(笑)
3人が揃って同じ感想を持つ、ということはきっと70年代か80年代に見たことがある包装紙だと思うよ。(笑)
複数の曲線が自在にキャンバス上を揺らいでいる。
これは一体何を撮影してるんだろう?
美術館にあった説明文を原文のまま載せてみることにしよう。

イギリスの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831一1879)の著した電磁気学の研究書に収められていた銅版画による電磁場の図版
<それは本来,美的対象としてつくられたものではなかったが,まるでミニマルアートや抽象的なドローイングのような繊細なカーブが描かれていた>
に触発されたルフは,こうした電磁場の線図が三次元に変換するとどのように見えるのかに関心を抱き,実験的に3Dプログラムを用いて数式をコンピューター上の三次元空間で再構成しはじめた。
こうした実験を経て,ルフはさまざまなサイクロイド曲線(円が同一線上を転がるとき,この円の円周上に固定された一点が描く曲線)を仮想の三次元空間に走らせて複雑な線形構造を描き,さらにこの仮想空間をニ次元に変換した後,色を加えク口ーズアップなどのマニピュレーションを施して力ンヴァス上に出力している。

この説明でスッキリできたよね!(うそ)
読んでいるうちに余計に分からなくなってしまったね。(笑)
3Dプログラムを使用して三次元空間で描いた後、二次元に変換する工程を実際に見てみたいよね。
百聞は一見に如かず。
そうしたら多少は理解できるかも?
それにしてもサイクロイド曲線やらマニピュレーションやら、難しいカタカナ多いなあ。(笑)

SNAKEPIPEとROCKHURRAHが大好きな万・霊じゃなくて(笑)、マン・レイやモホリ=ナギが制作していたフォトグラムを、トーマス・ルフも制作しているんだよね。
「Photogram(フォトグラム)2012—」は非常に美しい作品で、3人共お気に入りになってしまった!
「テキスタイルデザインみたい」
と感想を持ったのは友人M。
「スマホの待ち受け画面にしたい!」
と言ったのはSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHは黙々と写真を撮りまくっていた。 (笑)
今回のトーマス・ルフ展は注意事項を守れば、撮影OKだったからね!

フォトグラムとは、印画紙の上に直接物を置いて、感光させる技法のことね。
トーマス・ルフは「コンピューター上のヴァーチャルな”暗室”で物体の配置と彩色を自在に操作し像をつくりあげている」らしい。
ヴァーチャルな暗室って何?(笑)
これもまた実際に制作過程を見てみたいよね!

トーマス・ルフは宇宙に対して子供の頃から興味を持っていたようで、宇宙をテーマにしたシリーズもいくつかあるんだよね。
そのうちの一つ「cassini 2008—」は、宇宙探査機cassiniが撮影した土星と衛星の写真を素材にした作品だという。

インターネット上で公開されている画像を加工して作品にしたということは、これもまた「レディ・メイド」なんだよね。
「zycles」シリーズと同じように、本来の目的である研究や探査のための写真や画像が、アートに変身するというのは面白いよね。

今年制作された作品として展示されていたのは、アメリカや日本の報道写真をスキャンして加工した「press++ 2015—」シリーズ。
これもまた「レディ・メイド」であり、更に写真を重ねて加工していく、ということでフォト・モンタージュでもあるわけだね。

読売新聞が保管していた写真を使用しているため、日本語が作品に写り込んでいるんだよね。
よくみると「読売資料館 43.6.22 保存」という日付印も押されているし。(笑)
恐らく昭和43年なんだろうね。
茨城の通信所には今でもこのパラボラアンテナあるんだろうか?
どこまでが読売新聞のリアルな写真なのか、よく分からなくなるね。
これもまた上述した「写真と現実の関係についての問い」なのかもしれないね?

「トーマス・ルフ展」は上で紹介したシリーズ以外にも、代表作とされる「Substrate 2001—」がある。
これは日本の漫画やアニメの画像を原型が分からなくなるまで加工した作品群。
意味を排除する、というのが目的のようだけど、作品はまるで抽象画!
カラフルな色彩が美しい。
説明を知る/知らないで観方が変化するのは面白かった。

他にも「nudes 1999—」「negatives 2014—」など、トーマス・ルフのシリーズが展示されている。
シリーズ毎にテーマが違うので、今回のような全貌を知る個展として鑑賞しなかったら同じアーティストの作品とは思えない程の多様性に富んでいる。
かなり見応えがある企画だったね!

トーマス・ルフを「写真家」、というのはちょっと違う気がした。
写真家であるとしても「ニュー写真家」(笑)とか「メディア・アート・フォトグラファー」(変?)とかね。
今までのいわゆる「写真家」とはまるで種類の異なるタイプだと思うし、写真はあくまでも表現の手段に過ぎないんだよね。
SNAKEPIPEはトーマス・ルフを現代アーティスト、と呼びたいと思う。

「レディ・メイド」「フォトグラム」「フォトモンタージュ」という、今まで使われてきた手法を、今風にナウくした作品群はとても楽しく鑑賞できた。
そしてやっぱりドイツのアートというのはバウハウスに代表されるように、無機的で構造的なんだなと改めて感じることができたよ!
きっとトーマス・ルフはこれからも温故知新、様々な実験を見せてくれるんだろうね!
「トーマス・ルフ展」行って良かったと思う。