ROCKHURRAH RECORDS残暑見舞い2009

【去年に引き続き魚シリーズで制作した残暑見舞い】

SNAKEPIPE WROTE:

「立秋」を過ぎたので暦の上ではもう秋になるのかな。
そしてこの日を境に「暑中見舞い」から「残暑見舞い」になるらしいので、今年もまた残暑見舞いを制作。
去年に引き続き魚をモチーフにしてみた。
いかがざんしょ?(笑)

最近は散歩途中で大きな魚が泳いでいるのを目にする機会が多く、魚がスイスイと気持ち良さそうに泳いでいるのを目にする度に
「どうして人間は両生類として進化しなかったんだろう」
などと考え込んだりしているSNAKEPIPE。
夏だけはゾーラ族(ゼルダの伝説)とか魚人族(ワンピース)みたいに水中で生活できたら良かったのになあ!(笑)
上の写真みたいに、水中廃墟を悠々と泳いで観て回れたのにね!

まだまだ湿度が高い暑い日が続くと思うので、皆様も夏バテや熱中症に気を付けてお過ごし下さいませ!

石井聰亙の暴走~追悼:山田辰夫~

【「狂い咲きサンダーロード」のラストで見せた山田辰夫の笑顔。合掌。】

SNAKEPIPE WROTE:

「ぎゃっ」
とROCKHURRAHが叫ぶ。
何事か、と見ると震える手でパソコンを指差している。
なんとそこには俳優、山田辰夫氏死去のニュースが。
実はその26日に何年(何十年?)ぶりかで山田辰夫スクリーンデビュー作「狂い咲きサンダーロード」を観たばかり。
二人で山田辰夫について語り合ったばかりだったのである。
あまりの偶然にびっくりするのも無理はない。
そこで今回は山田辰夫追悼の意味も含めて石井聰亙監督の3本の映画についてまとめてみたい。

石井聰亙監督といえばやはり80年代、新宿だったか吉祥寺だったか忘れてしまったけれどオールナイトの映画館で鑑賞したような記憶がある。
パンクテイストと暴力的な雰囲気が夜にはぴったり合っていた。
恐らく一番初めに観たのは「爆裂都市 BURST CITY」だったと思うけれど、年代順に書いてみようかな。


「狂い咲きサンダーロード」(1980年)は80年代以降にも何度か観ているはずだけど、細かい部分についてはすっかり忘れてしまっていたSNAKEPIPE。
そんなSNAKEPIPEとは違って、さすがは地元北九州で撮影が行われていたというこの映画をROCKHURRAHは何度も鑑賞していたらしい。
石井聰亙監督も福岡出身だしね!
そんな二人で揃って鑑賞したのは今回が初めてだった。
改めて観ると、石井聰亙監督の美意識や描写のカッコ良さがよく解る。
SNAKEPIPEも写真撮影したいな、と思うような風景もたくさん出てきた。
いいなあ、この時代の北九州!(笑)

この作品は暴走族を描いた作品で、一人だけ突出してしまった主人公ジンを演じる山田辰夫が非常に印象的である。
「つっぱり」の信念を貫き通し、我が道を行くジン。
走りたいから走る、嫌なことはしたくない、と自分に正直な人間である。
その正直さが好まれたり、反感を買うことになったりする。
好まれたのは右翼団体に所属する小林稔侍演じるタケシ。
反感を買ったのは他の暴走族チーム。
最後まで自分の好きなことをしよう、と筋を通す人はなかなかいないだろうね。

山田辰夫は顔もそうだけど、なんといっても特徴的なのはその声。
いかにもチンピラ声というのだろうか、野次を飛ばすのに最も適してる声質。
実はこの映画以外の山田辰夫が演じてるのを観たことないSNAKEPIPE。
最近では話題作「おくりびと」にも出演していたみたいだけど、この手の映画はあまり得意ではないので。
「ずっと俳優やってたんだね」とROCKHURRAHと感心していたところに訃報。
53歳じゃまだまだ若いのに、非常に残念である。合掌。


続いて「爆裂都市 BURST CITY」(1982年)。
この映画も「スターリンが出てる」とか「泉谷しげるが嫌な役」などというとても簡単な感想しか覚えていない、かなり昔に観た記憶しか残っていない映画である。
この映画に関してはなんといっても当時のロックスター、ロッカーズとルースターズ(のメンバーが合わさったバンド)、そしてスターリンが実際に演奏してるシーンが観られるだけでも充分ウレシイ!
ミチロウ、若い!(笑)
ストーリーがどうの、というよりも音楽とファッションに興味がいってしまう。
ファッション、と書いてはみたけれど、この映画の中でのファッションというのがやや特殊。
これはどうやらこの当時の北九州では割と当たり前の光景だったらしいんだけど、パンクと暴走族とヤクザが全部ごっちゃになったという妙な組み合わせ。
実際に北九州で生まれ育ったROCKHURRAHによると、パンクと暴走族が友達同士でツルんでるなんてことはざらにあったみたい。
ま、結局「アウトロー」として考えればおかしくないのかな?
ただ、これは東京のパンクシーンとは当然だけど違っていて、地方都市特有の文化なのかな。

この映画には後に芥川賞作家になる元INUの町田町蔵(現在は町田康)と、同じくルポライターで作家の戸井十月がアブナイ兄弟役で出演していたり、暗黒舞踏「大駱駝艦」の麿赤児がうなじに「DEATH」と刺青してたり、若いコント赤信号室井滋の姿を観ることもできる。
80年代を知るのにはとても面白い映画かな?


そして最後は「逆噴射家族」(1984年)である。
この映画のことは以前「さて、今週のリクエストは」にも書いたことがあるけれど、主演の小林克也の大ファンであり、石井聰亙監督の作品上記2本を鑑賞した後のことだったのでとても楽しみにしていた記憶がある。
これまた以前の記憶が飛んでいたので、今回改めて観直した。

タイトル通りに家族の一人一人が「逆噴射しちゃう」という話で(簡単過ぎか?)、実は幸せそうに見えている家族にもこんなにストレスがあるんだな、と日本の病理について描いている作品である。
撮影が浦安だったようで、恐らく当時は開発が今ほど盛んではなかった殺風景さ。
うーん、どうやら石井聰亙監督は「空っぽ」な風景が好みなんだね。
若い工藤夕貴は顔が違って見えたり、狂気が宿ってくる小林克也の顔の変化など見所満載である。
SNAKEPIPEは以前から大学受験を控えている工藤夕貴のお兄さん役の俳優、有薗芳記の異常さに目を奪われていたけれど、残念ながらこの作品以外では知らないな。
原作と脚本が小林よしのりだったとは知らなかったけれど、所々で「らしさ」が出ていたような気がした。

以上石井聰亙監督初期の代表作3本について書いてきたけれど、簡単にまとめてみるならば
「テーマは暴走」
といえるのではないだろうか。
実際にバイクで暴走する場合もあれば、精神的に暴走してしまうこともある。
追い詰められて制御できなくなり、もっと先に突き抜けちゃった状態を描いているのかな。
全部80年代の作品だけで25年も経っているけれど、決して古くない映像だと思う。

調べてみると石井聰亙監督はコンスタントに作品を発表している模様。
上の3本以降については全く知らないので、今度また機会を作って鑑賞してみようかな。
暴走の先に何があるのか。
答えが見つかるかもしれないからね!(笑)

KARAOKE万歳!

【うるさい、と言われてもつい口ずさんでしまう名曲「真っ赤な太陽」より】

SNAKEPIPE WROTE:

いつの間にか梅雨も明けて、いやー毎日暑い日が続いてますな!
やっぱり夏はビール、という方多いんじゃないだろうか。
かつては夏=ビール、その後カラオケというパターンを繰り返していたなあ。
実はSNAKEPIPE、こう見えても(ネットじゃ見えないか!)大のカラオケ好きなのである。
聴く音楽とは違って、歌うということになると途端にパンクから離れてしまうのだ。
SNAKEPIPEは何故だか60年代70年代モノが大好き!
でもはっきり断っておくけれど
「決してリアルタイムじゃないからねっ!」
今回はそんなSNAKEPIPEの十八番を紹介してみよう!

少し酔った勢いでノリノリになって初めに歌うのがこれ!
美空ひばりの「真っ赤な太陽(1967年)」だ。
実はこの曲、長いフレーズがあって途中で息継ぎができなくなり、ちょっと苦しくなりながらも笑顔を絶やさずに歌い切るところがポイント。
You Tubeでジャッキー吉川がバックで演奏している映像を観てみたら、さすがは天下の美空ひばり!
その息継ぎできない箇所も楽々クリア!(笑)
それにしても美空ひばりがミニスカートなんだけど貴重映像では?

何故かSNAKEPIPEが生まれる前の懐メロが大好きで、リアルタイムでは全然知らないのに歌うと非常にしっくり来るのが「お色気歌謡」のようなジャンル。
「恋の奴隷」とか「経験」とかね!(笑)
その中でもお気に入りは森山加代子だ。
「白い蝶のサンバ(1970年)」もカラオケに行くと必ず歌ってしまう曲。
演歌とポップスが融合したようななんともいえない雰囲気が素晴らしい。(笑)
そして歌詞もちょっと「お色気」系で魅力的である。
ちょっとだけ声を裏返すようにして歌うところがポイント!

森山加代子はもう1曲、「月影のナポリ(1960年)」も十八番である。
この曲、調べてみたらイタリアのカンツォーネなんだって!
SNAKEPIPEはてっきり「どどんぱ」なのかと思ってたけど!(笑)
確かに「チンタレラ・ディ・ルナ」と歌詞に入っていて、月のことをルナと呼ぶのはどこの国なのかな、と前から疑問に感じてたんだよね。
この曲もちょっと演歌っぽく歌い上げ、最後の「見つけてぇ~!」のところで声を裏返らせるところがポイント!(さっきからこればっか)

どうも時代が古くて申し訳ないんだけど、やっぱりあの時代の曲になってしまうね。
次はザ・ピーナッツの登場だ。
「恋のバカンス(1963年)」も名曲で、SNAKEPIPEは大好き!
ただし、ザ・ピーナッツは双子でハモって歌うところを一人で歌うもんだから、途中でどっちのパートを歌ってるのか自分で分からなくなっちゃうんだけどね!
「パヤッ!パヤパヤッ!」の「恋のフーガ(1967年)」も大好き。
この曲は途中で「ルールワルワッルルルワルーワッパヤッ」と入るところがおかしい!

「恋」つながりでいくと次はこの曲かな。
「おしゃれ娘と貴族野郎」なんてキャッチコピーがついてるピンキーとキラーズの「恋の季節(1968年)」も外せない。
実はこの曲も息継ぎでない箇所があって、一続きで歌うのがしんどいフレーズがあるんだよね。(笑)
それにしても確かに山高帽をかぶってるファッションセンスはなかなかのもの!
帽子男世界一決定戦」の中に記事をいれなかったのが悔やまれる。
そうだ、この曲も途中で「ルールルルルルル~」と歌うところがあって、そこが歌ってる時にちょっと恥ずかしいんだよね。(笑)

もうちょっと時代が後になるとやっぱり山本リンダの「どうにもとまらない(1972年)」か。
振り付けを付けて歌うとこれもかなりしんどい曲である。
この曲はプレイガールぶりを発揮してる歌詞が素晴らしい!
「港で誰かに声かけて、広場で誰かとひと踊り、木陰で誰かとキスをして」
なんてやってたら忙しくて大変だよね!(笑)
それでもリンダになりきって激しく歌い上げよう!

「学園天国(1974年)」はカラオケで探すと小泉今日子、としか出てこないけれど、SNAKEPIPEの中ではやっぱりこの曲はフィンガー5だよ!
「17才」も森高じゃなくて南沙織だしね!(笑)
ま、逆にいうと小泉今日子のおかげでいつでも歌うことができる曲になったともいえるのかな。
今ではちっとも学生じゃないのに、学生に戻った気分で若返りを願いつつ歌ってみよう!

いやはや、こうして画像を並べてみるとほんとに古いなあ。(笑)
それに「歌うのが苦しい」歌が 多いなあ!
かなり年長の方の前でこの手の歌を披露すると喜ばれることが多いけれど、同年代だと知らない人がほとんど。
懐メロ・オンパレードでも良かったら、是非ご一緒にカラオケ行きましょ!(笑)

時に忘れられた人々【04】Positive Punk

【あんパン、メロンパン、えっ?ポジパン!】

ROCKHURRAH WROTE:

暑いから「背筋も凍る音楽特集」でもと思ったが、そんなに都合良く寒気がする音楽なんか転がってなかった。なので今回はズバリ、80年代半ばを席巻したポジパン特集といこう。関連性は特にないがウチで結構扱ってるジャンルだから、一度まとめて書いておきたかったというだけ。

正式名称(?)はポジティブ・パンクなんだがこの音楽には後の時代に付けられたさまざまな呼び方が存在していてゴシックだのゴスだのデス・ロックだの、傍から見たらどうでもいいようなネーミング・センス。ROCKHURRAHとしてはやはり80年代的にポジティブ・パンクのままでいいじゃないか、と言いたい。 発生についてはよくわからないが80年代ニュー・ウェイブのジャンルとして発達したネオ・サイケ、ダーク・サイケと呼ばれるような音楽が元になって82年くらいから登場し、ホラーな化粧、神秘主義(?)、奇抜な衣装など悪趣味とも取れるようなルックスだった一団を主にポジティブ・パンクと言うようだ。

この手の音楽の先駆者としてよく挙げられる、つまりロックの世界にゴシック的な要素を取り入れたのはやはりジョイ・ディヴィジョン、スージー&ザ・バンシーズあたりなんだろうが、バンシーズはともかくジョイ・ディヴィジョンについてはポジパンと言ってる人はたぶんほとんどいないだろう。音楽的には後のポジパンに多大な影響を与えたのは間違いなさそうだが、見ての通りイアン・カーティスは特に目立ったところのない地味な若者。たまに機関車の車輪のように両手をぐるぐる回すといったアクションをするのは並じゃないが、ポジパンの大きな特徴であるどぎついメイクとか、そういう要素は皆無なのだ。

ポジパンのルーツとか成り立ちとか、そういううんちく話はいくらでも見てきたように書けるけど、今回は一切抜きにしてただ過去にポジパンの範疇に引っかかっていたバンドたちを純粋に追いかけてみよう。

Bauhaus

重厚で沈んでゆく曲調とパンクの攻撃性、ホラー・・・と言うよりはもっとクラシカルな怪奇映画趣味を取り入れて従来のグラム・ロックをより文学的、芸術的に再構築して、ダークなのに割と一般的に人気があったのがこのバウハウスだろう。
ピーター・マーフィーの中性的なヴォーカル・スタイルだけでなく、バンドとしての質の高さ、見せ方が非常にうまかったな。

彼らが登場したのはまだポジパンなどの音楽が誕生する前だが、後の時代のポジパンに直接的な影響を与えたのは間違いない。
何はともあれ「裸にメッシュ・シャツ=着ない方がマシでしょう」と言えば真っ先に思い浮かぶのがやはりバウハウスかな。何かやたら「的」が多い文章だな?

Sex Gang Children

ポジパン御三家の筆頭。
ヴォーカル、アンディ・セックスギャングの角刈りリーゼントのような髪形に白塗りの化粧というスタイルはポジパンと言うよりは一部のサイコビリーに通じるものがある。
音の方は典型的なポジパンもあるが、どちらかと言うとかなり珍妙な部類に入る曲が印象的。正体不明のモンゴル調なものなど、通常のロック的な観点からは笑ってしまうようなものだし、そういうキワモノという点がポジパンの理想とする姿にピッタリ当てはまったのか、人気は高かった。

ROCKHURRAH RECORDSの商品紹介にもよく書いてる事だが「カッコいいのを通り越してカッコ悪くさえある」という境地。
本人とファンが気持ち良ければ他はどうでもいいでしょう、の世界。

Southern Death Cult

セックスギャング・チルドレンと並ぶポジパン御三家の人気バンド。
最初はサザン・デス・カルトというバンド名だったがデス・カルト→カルトとだんだんバンド名が短縮されてゆき、それにしたがってポジパンという特殊なカテゴリーから抜け出して、より汎用性の高いロックに変身していった。
後半には化粧っ気もなくなるが初期の見た目はなかなか派手でインディアン風+アダム・アント風と言うべきか、日本のウィラードなどとも近いルックスをしていた。全盛期には音楽雑誌の表紙などを飾ったりもしたろう。

気色悪くて怖そうなセックスギャングなどと比べると確かに女性受けはするな(笑)。ところが個人的にヴォーカリストのイアン・アストベリーの声がどうしても好きになれず、あまり好きじゃないバンドだった。
この曲、デス・カルト時代の「Gods Zoo」などは良かったけどね。

Alien Sex Fiend

上のふたつと比べると少し劣ると勝手にROCKHURRAHは思い込んでるが、本当は人気あるのかも。その辺のご当地人気ランキングは見てきたわけじゃないからよくわからぬ。ポジパン御三家の真打ちなのか?
当時のイギリスでポジパンの聖地だったクラブ、バッドケイヴを中心に盛り上がっていたのがこのエイリアン・セックス・フィーンドだ。

何だかタレ目でタヌキ顔のくせに顔がのっぺり長いとか、化粧や服装、レコード・ジャケットが悪趣味でドギツ過ぎ、とか思い込んでいたため個人的にこのバンドはあまり聴いていない。んが何とSNAKEPIPEは持っていたそうで「この曲聴いたことある」だって。うーん、さすがは補完し合う関係だな。
ベースがいないというやや変則的な楽器編成だが、我が高校生時代もドラムマシーンとギターのみで曲を作っていたものだ。ん?そんな話は今は関係ないか。後のマリリン・マンソンあたりの元祖と言えなくもない。今回のブログタイトル下の写真はこのバンドより採用。

Virgin Prunes

アイルランド出身のキワモノ・カルト芸術集団といった風情で上記御三家よりはずっと好きだったバンドがこのヴァージン・プルーンズだ。
特にすごい芸術的理念を持っているわけではなかろうがキリスト教の国々ではタブーとされるような表現を数多く題材としていて、その辺のこけおどしB級感覚が好きだった。
ホラー映画に出てくるおばちゃんのような女装(なぜか人形を抱いたりしている)やヴォーカルの下品なダミ声もバンドの雰囲気にピッタリだった。
ごく初期は同じダブリン出身のU2と深い関係にあり、U2のジャケットで有名になった少年もヴァージン・プルーンズの一族だそうだ。

Specimen

70年代パンクの時代にイギリス最初のインディーズ・レーベルとして誕生したRAWレーベルで活動していたUnwantedというバンドのオリーが中心となったポジパンのバンド。
プロモ見てもわかる通りポジパンというよりはグラム・ロック的な要素が強くてロッキー・ホラー・ショーを彷彿とさせるメイクや衣装。
いわゆるゴシック云々の重苦しい部分はなくて少しコミカルなところに味があり、正直言ってあまり音楽的違いのないバンド達が多かったポジパンの中では面白い存在だった。
このプロモに限って言えばギターなんかはまるでHell-RacerのChiyo-Xみたいだし、そしてここでもやはり裸に網シャツが大活躍。

Screaming Dead

これまたドラキュラ風の化粧が似合ったバンド。
ポジパンがブームだった頃でも日本では不当なまでに紹介されず、あまり世間で知られてないバンドのひとつだと言える。
化粧をしてるという以外はポジパン的ゴシック的要素はほとんどなくて、ダムド風の演奏にジェネレーションX風のヴォーカルが実に恰好良いチンピラ・バンドだった。
先のスペシメンの時にも書いた通り、様式倒れというほど画一化してしまったポジパンには面白みがなかったもんだが、このスクリーミング・デッドのように威勢の良いバンドは大好きだ。レーベルもハードコアで有名なNo Futureだったしね。たまにGSっぽいような音楽もやっていて、それがまたいいなあ。
人気なかったのでプロモが少なく、前述のドラキュラ風化粧はしてないんだが、ROCKHURRAH RECORDSで販売中なのでそっちでジャケット写真をチェックしてみて。

Ausgang

非常に派手な見た目でルックスは典型的ポジパン、申し分なし。初期はKabukiなるバンド名だったが途中で改名したようだ。見た目とは裏腹に音楽の方はちょっとバースデイ・パーティもどきのプリミティブな部分があって一般受けは難しいもの。ヴォーカルの声も妙に甲高いし、そんなわけで日本での知名度はイマイチかも。この見た目でもう少しキャッチーな音楽やってればもっと人気出たろうに、惜しい。

Cristian Death

イギリスのポジパンとはたぶん全然違う発展をしてきたはずだが、アメリカにもこういう見た目のポジパンがちゃんと同時代に存在していた。それがこのクリスチャン・デスです(突然丁寧語)。
デビュー・アルバムのなぜかフランス盤を一枚だけしか所有してないのでこのバンドがどうなったのかは全然知らないんだが、やはり栄養も違ってガタイもでかい、体力的にも優っているアメリカ、というような印象で英国バンドより力強いものを感じる。もう書くのも疲れてきたので紹介もぞんざいだな。

The Sisters Of Mercy

「ゴスの帝王」などと呼ばれていい気になってる(なわけないか?)アンドリュー・エルドリッチによる伝説のバンドだが、上記のポジパン達とは違って彼らにはほとんど化粧っ気はない。
でっかいレイバンのサングラスとシルクハットのような帽子に長髪といったスタイル、そしてドクター・アバランシェなる名前の付いたリズム・マシーンに乗せて歌うくぐもった低い声、これだけで奇跡のシングル・ヒットを連発したというところが伝説なんだが、彼らが1stアルバムを出した1985年頃にはポジパンのブームはそろそろ終わりに近づいていたような気がしないでもない。そういう意味でポジパンの最後を飾る大物といった見方も出来るかね。
このシスターズの主要メンバーで大ヒットの影に関与していたウェイン・ハッセイ(後のミッション)は個人的に好きじゃないので省略。

March Violets

レーベルも初期は一緒だったしどちらもドラム・マシーンによるバンド構成だったし、シスターズと比較される事が多かったのがこのマーチ・ヴァイオレッツだ。
そのためか意図的にシスターズと違う路線を歩まなければならなかったところがすでに不運。と言うか特に似たところはなかったんだけどね。
本当は全然違うのかも知れないけど存在感のある兄貴と不肖の弟、というような構図が勝手にROCKHURRAHの中に出来上がってしまってる。
このバンドはそういうダメな部分も含めて大好きだった。
女性ヴォーカルとやや品のないサイモンDのいやらしい声の掛け合い、そして無機質なビート、謎の宣教師みたいな風貌、ヒゲもすごい。

プロモの撮り方が差別的でヴォーカルはヒゲ男サイモンDがメインなのに映ってるのは女性ヴォーカルばかりというアンバランスさ。まるで「ワンピース」のDr.ホグバック&シンドリーちゃん状態。知らない人が見たら勘違いしそうだが、たまにチラチラ映る方がリーダーなので間違えないように。

以上、ROCKHURRAH RECORDSらしくあくまでも当時のポジパンに焦点を当てて書いてみた。正直まだ書ききれないという部分もある反面、どのバンドも違う言葉で紹介する事出来ないよ、というくらいに書いてる本人まで区別つかなくなってしまった部分もある。要するに同じような嗜好を持った者の集まりという特定の形式だから、どれも似てしまうんだよね。

今のこの時代に80年代ポジパンを追い求めてる人は少ないと思うけど全盛期には街角にもごろごろこんな奴らがいた素晴らしい時代。「時に忘れられた人々」の趣旨とすればまさにピッタリな内容じゃなかろうか。