ビザール・バレンタイン・ギフト選手権!43回戦

【ABCのValentine’s Day】

SNAKEPIPE WROTE:

今日はバレンタイン・デー。
コロナの影響でテレワーク中の人なども多いはずなので、例年に比べると義理チョコを購入する人が少ないのかもしれないね?
男女比が極端な職場に勤めた経験があるSNAKEPIPEには、その苦労がよく分かる。
その職場では義理チョコを渡す「しきたり」があったため、SNAKEPIPEを含む女性3人が男性50人分のチョコを用意する羽目に!
本当にバカな習慣だと思ったものよ。
今年はバレンタイン・デーが日曜日でホッとした人も多いだろうね。

今回はバレンタイン・ギフトを紹介していこう。
ROCKHURRAH RECORDSらしく、ビザールな逸品でね!(笑)

バレンタインといえば、ハートをモチーフにしたチョコやグッズが主流だよね。
これは、ハートといってもラブの形ではなく心臓そのもの!
これを渡されて喜ぶかなあ?(笑)
Anatomical Heart Pendant Realistic Oddities Pendant は米国Amazonで販売されていたようだけど、現在は手に入らない様子。
タイトルに最初から「Oddities」(奇異な)と名付けられているので、みうらじゅんが言うところの「いやげもの」系になるのかもしれない。 
かなりグロテスクなので、渡したら印象に残ること間違いなしだね!(笑)

この商品は特にバレンタイン・ギフトというわけではないかもしれない。
SNAKEPIPEが個人的に「欲しい!」と思ってしまっただけなので。
“The Angry Toaster” 2-Slot Impression Toaster with 8 Interchangeable Morning Insults Plates – 7 Browning Control Settings – Make Someone’s Morning Special  も米国Amazonで購入可能なトースターなんだよね。
プレートを替えるとことで、「EAT SHIT」「FUCK YOU」などの放送禁止用語がトーストに焼き込まれる。
ちなみに「HAPPY」バージョンもあるので、どちらにするかはお好みで。(笑)
プレゼントに最適な逸品!
お値段は$34.95、日本円で約3,700円という手頃さも良いね。 
日本への配送もできるというので、本気で考えてしまうよ。
あ、自分用にね。(笑)

アメリカのテキサス限定らしいけれど、サーロイン・ステーキがハート型になって販売されているバレンタイン・ギフトだよ!
テキサス=肉、ということなのか。
肉でハート型を作るという発想が素晴らしい!
見た瞬間に吹き出してしまったSNAKEPIPE。
ちなみにこのお肉は$23.78、日本円で約2,500円くらいだね。
手の大きさで比較すると、かなりのボリュームがありそうじゃない?
ハート型のサーロイン、きっと美味しいに違いない!(笑)

上のサーロイン・ステーキを更にバージョン・アップさせてみようか。
焼きゴテでハート・マークをプラスするのはどうだろう。
ハート型のステーキにハートの焼印。
うーん、素晴らしい!(笑)
Texas Irons USA Steak Branding Ironも米国Amazonで販売されていたようだけれど、現在は品切れ中。 
いくつものメーカーが、この手の焼きゴテを販売していて、アメリカ人のバーベキュー好き、ステーキ好きがよく分かるよね。
SNAKEPIPEはこの商品を見た時には拷問グッズかと思ってしまったんだけど。
くれぐれも間違った使い方をしないようにしましょ! (笑)

2019年12月の「ビザール・クリスマス・ギフト選手権!36回戦」では、ニコラス・ケイジがグッズになって人気を博していることを書いたよね。
あの時のニコラス・ケイジと同じように、個人的な顔写真を靴下にプリントできるサービスがあるようで。
Personalised Multi Face Socksは好きな顔写真を4枚までアップロードすると、顔部分だけを切り取ってプリントしてくれるという。
靴下のサイズも豊富なので、性別問わずオリジナルの靴下が作成できるんだね。
お値段は3,800円とのことだけれど、現在は受付終了しているみたい。
好きな相手に自分の顔をプリントした靴下をプレゼントするのはどうだろう。
両思いなら良いけれど、一方的に思っていたら迷惑行為になってしまうのか?(笑)

手作りチョコも良いけれど、お菓子を作ってみるのも楽しいかもしれない。
他の人とは差をつけて、こんなクッキー型を使用してみるのはいかが?
Kama Sutra Cookie Cuttersで、エロティックな形のクッキーができるんだって。
ただし顔をペイントしていかないと、不思議な形だけになってしまうから注意が必要だね。
くれぐれもお子様と一緒の時は、この型を使わないように。(笑)
お値段は$29.34、日本円で約3,100円。
シャレが分かる人にお勧めアイテムだね!

セクシー系が出た流れで、この商品も紹介しよう。
Fundies Underwear for Two は2人用の下着なんだよね。
写真のように男女が着ける場合はもちろんのこと、例えば二人三脚レースのような使い方もできます、とのこと。
そして「二人を一組の下着に押し込むと、真の一体感が得られたことがわかります」とも書いてあるんだけど?
この格好になる前に笑ってしまいそうだよね。(笑)
お値段は$6.99、日本円で約730円!
付き合い初めのカップルとか新婚さんを冷やかすのに最適な感じ。
実際使ったらどうなるのか興味はあるけどね!(笑)

最後はこちら! 
花束をギフトにするっていうのは、シンプルだけど素敵だよね。
って書きながら、おかしなことに気付く。
花の部分に注目すると、、、なんとこれはスナック菓子のドリトスじゃないの!
ドリトスがケチャップ味のスナックを発売し、そのキャンペーンとしてドリトス花束を販売したとのこと。
大人気となり、全て完売したという。

花束を手にした人が皆、笑顔になるのが印象的だよね!
販売されたのはカナダの限定地域のみだったということだけれど、購入できなかった人がDIYで作っているというのも面白い。 
ドリトスの宣伝効果は抜群だよね。
自作する人も皆、ドリトスを買うわけだし。(笑)
作るのも楽しそうだし、もらった人も嬉しいだろうな。
キャンペーンは2016年のことだったらしいので、現在は販売されていないのかもしれないね?

ブログネタにする時にはビザールな逸品を探してしまうSNAKEPIPEだけれど、バレンタインに関してはいたってノーマル。
美味しそうなチョコレートを毎年ROCKHURRAHに渡している。
今年は例年とは違ったチョコレートを通販にて購入!
どんな味なのかROCKHURRAHに聞いてみよう。(笑)

ふたりのイエスタデイ chapter20 /ファンカ・ラティーナ

20210207 top
【Haircut 100のアルバム「ペリカン・ウェスト」のジャケット】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週楽しみに観戦しているアメリカPGAツアー。
ほとんどの試合はアメリカ本土で開催されているけれど、選手はアメリカ人ばかりではない。
世界各国から参加していて、最近では南米の活躍が目立つ。
チリやアルゼンチンでゴルフ、というイメージはないけれど、実際に選手が活躍しているから驚いてしまうね。
南米といえば、サッカーにサルサやボサ・ノヴァ、サンバなどのラテン音楽と思ってしまうのはステレオタイプ過ぎるのかな?

80年代に流行ったニュー・ウェイブに、ラテン音楽をミックスするジャンルがあった。
ファンカ・ラティーナと呼ばれ、一世を風靡したんだよね。
ファンクとラテンをミックスさせた造語は、誰が考えたのやら?
この言葉はもしかしたら日本だけで通用している言葉だったのかもしれないけれど、当時はジャンルとして確立されていたように思う。
いくつものバンドが、ラテン要素を含んだ曲を発表していたんだよね。
ノリの良さと一緒に歌えるメロディーラインで、SNAKEPIPEも大好きだったよ!

Haircut 100の「Favorite Shirts」はファンカ・ラティーナを代表する曲と言っても過言ではない。
そしてこの曲の邦題「好き好きシャーツ」が、当ブログのカテゴリー「好き好きアーツ」の元ネタ!(笑)
2020年8月の「ふたりのイエスタデイ chapter19 /Altered Images」で、オルタード・イメージのクレアちゃんの肖像画を描いたことを書いたけれど、実はこのバンドのヴォーカルも描いていたことも思い出した。
ニック・ヘイワード(トップ画像一番左)がアイドル的な風貌で、とても人気があったからね。

軽快なギターのカッティングが印象的で、本格的なファンクでもラテンでもないけれど、ニュー・ウェイブ世代のライト・リスナー向けラテン音楽入門になったバンド、とROCKHURRAHが語っているよ。
そしてHaircut 100の特徴は、トップのレコード・ジャケットでも分かるように、白いセーターをインにして、その上からサスペンダーを使用するスタイルだったり、お坊ちゃま風の服装が多かったこと。
なんとセーターの上からのサスペンダーは、当時はROCKHURRAHも真似ていたらしいよ。(笑)
その頃ROCKHURRAHは、地元の北九州在住だったので、そういう服装を理解してくれるのは、限られた人だけだったみたい。
苦労したんだねえ、ROCKHURRAH!(涙)

良家のご子息がバンドをやってる、みたいな風貌なのにファンクっぽいノリの良い音楽だったというギャップも魅力だったんだよね。
ファンクにラテンというと、みずみずしい印象にはなりづらいのに、Haircut 100には爽やかさがある。
彼らのおかげで(?)ファンカ・ラティーナが幅広い世代に支持されて、一大ムーブメントになったのでは、とROCKHURRAHが推測しているよ。
Haircut 100は他にも「Love Plus One」(邦題:渚のラブ・プラス・ワン)などヒット曲を出している。
この邦題も非常に気になるけれど、レコード会社の人のセンスだろうね。(笑)

続いてはModren Romanceの登場だよ!
「Ay Ay Ay Ay Moosey」(邦題:今夜はアイ・ヤイ・ヤイ!)もノリノリになっちゃうダンス・チューンだよね。(笑)
そしてまた気になるのが邦題なんだけど、SNAKEPIPEとROCKHURRAHはこのタイトルで覚えてるんだよ。
当時は原題を知らなかったしね。
そして今回初めて動いている姿を観たよ。
こんな顔だったとは知らなかったね。

ファンカ・ラティーナについて書くことをROCKHURRAHに話すと、次々とバンド名が出てくるんだよね。
Blue Rondo à la Turkのような長いバンド名もスラスラ口にできる。 
若いうちに覚えたことって忘れないものだね。(笑)
曲は「Me and Mr. Sanchez」。
とても懐かしいよ!
Blue Rondo à la Turk解散後、結成されたMatt Biancoもヒットしたね。

これも長いバンド名のRip, Rig & Panic
そんなに長くないか?(笑)
この映像は、どうやらイギリスのホームドラマの中で「You’re My Kind of Climate」を演奏しているシーンらしい。
それでこんな扮装をしてるんだね。
音楽に合わせているのか、ドラマの展開のせいなのか、かなり民族音楽要素が強い。
ヴォーカルのネナ・チェリーは服装のせいはもちろんだけど、「Buffalo Stance」の頃とはまるで別人だわ!

Pigbagは、上に書いたRip, Rig & Panicと一緒に「The Pop Group」というバンドを組んでいたという。
解散後、メンバーがそれぞれバンドを作ったってことだね。
The Pop Groupは硬派なメッセージ色の強いバンドだったらしいけれど、Pigbagのヒット曲にいたっては歌詞がない!
インストゥルメンタルの「 Papa’s got a brand new pigbag」は、日本ではHONDAのCMでも使われていたっけ。
ああ、懐かしき80年代よ!(涙)

最後はアメリカのバンドにしよう。
Kid Creole & the Coconutsは音楽性はもちろんのこと、そのファッションにも注目が集まったんだよね。 
1940年代頃流行したダブダブのシルエットをした「ズート・スーツ」を身に着け、イカサマ師かチンピラかといったインチキ臭い風貌のキッドがヴォーカルだった。
ここでもまたROCKHURRAHのエピソードがあるんだけど、ズート・パンツも着ていたらしいよ!
音楽とファッションが密接に絡んでいた時代だからね。

思い出しながらツラツラと書き綴ってみたけれど、とても懐かしくなってしまったね!
どうしてファンカ・ラティーナのようなムーブメントが起きたのかは謎だけど、日本でもジュディ・オングの「魅せられて」、久保田早紀の「異邦人」や庄野真代の「飛んでイスタンブール」がヒットしたように、異国情緒ブームが起きたことがあったもんね? (古い!)
仕掛け人がいるのかもしれないけれど、世の中の流れが同じような方角を向くことってあるのかもしれない。

久しぶりにファンカ・ラティーナを聴いたら楽しくなってしまった。
さあ、踊ろう!
みんなでアイ・ヤイ・ヤイ!(笑)

映画の殿 第42号 サイコキネシス -念力-

20210131 top2
【念力で人を吹き飛ばすソッコン】

SNAKEPIPE WROTE:

Netflixを堪能している話は、前回の「映画の殿 第41号 Netflixドラマ編」で語っている。
ドラマを鑑賞することが多いけれど、映画も観てるんだよね。 
今回紹介するのは日本未公開で、Netflixだけで公開されている「サイコキネシス -念力-(原題:염력 2018年)」 という韓国映画。
今までにもポン・ジュノパク・チャヌクなどの作品をはじめ、俳優であるソン・ガンホが出演している韓国映画はかなりの本数観ている。
ROCKHURRAH RECORDSでは、韓国映画がスペイン映画の次に来たブーム、という感じかな?(笑)
タイトルだけ見るとオカルト系の話なのかなと思いながら観始めた「サイコキネシス」は、SNAKEPIPEの予想を大きく裏切ってくれた。
もちろん良い意味で、ね。(笑)
どんな映画なのか、トレイラーを載せてみよう。 

簡単にあらすじを書いておこう。

突然超人的な能力に目覚めた父親と、大切なものを守るため必死で戦う娘。
頼りない中年男はスーパーヒーローになれるのか。
すべてを賭けた戦いがいま幕を開ける。(Netflixより)

ここからは感想をまとめていこう。
ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください!

警備員として生計を立てている、しがない男やもめのシン・ソッコン。
出勤前、公園で水を飲むのが習慣のようで、その日も水を口にする。
映像だけが流れ詳しい説明がないけれど、どうやら宇宙から落ちた隕石から出た何かが混ざった水だったようで。
ソッコンは飲んだあと、「腐っている」と表現している。
その水が不思議な力を習得する原因になるんだよね。

これが主人公シン・ソッコン。
寝起きの村上龍か蛭子能収か、といった雰囲気なんだよね。(笑)
演じているのはリュ・スンリョン
この俳優が出演している他の作品は観たことないかも。
勤務先で備品をちょろまかしたりする、器の小さい男。
ひとり暮らしを良いことに布団は敷きっぱなしで部屋は荒れ放題。
こういう生活送ってる人、多いのかな?
横着して寝たままタバコを吸おうとした時、初めて自らの超能力に気付く。

 シン・ソッコンの娘、ルミ。
演じているのは、まるですっぴんの荻野目洋子かといった風貌のシム・ウギョン
両親は離婚しているので、母親と一緒に暮らしている。 
激辛チキンの店を成功させ、テレビ取材を受けるほどの人気なんだよね。
ところが、ルミの店がある商店街一帯が、再開発地域に指定されてしまう。
中国人観光客向けの免税店を作る、というのがいかにもありそうな話だよね。
立ち退きを迫る建設会社と、反対する商店街の人たちとの攻防が繰り広げられることになる。 
その攻防の真っ只中、母親が巻き込まれて死亡してしまう悲劇が起こる。

地上げ屋を雇っている建設会社の社長と部下。
利益を得るためなら何でもやる、といったズルそうな人相なんだよね。
左にいる社長は、間延びした五木ひろしといった雰囲気だよね。(笑)
社長なのに小心者。
汚れ仕事は人任せ、自分は動かないんだよね。
こういうタイプも現実にいそうだよ。

母親が死亡したことを知らされ、葬式に顔を出したシン・ソッコンとルミは何年ぶりの対面だったのやら。
ルミは父親に対して、自分を捨てた人という認識を持ち、今更父親面をされることが許せない様子。
それでもソッコンは、ルミの状況を知り、商店街の攻防に力を貸すことにする。
暴力を振るう地上げ屋に対して、超能力を使っているシーンがこれ。
見て、この顔!
思わず吹き出してしまうほどの面白さよ。(笑)
ルミの驚いた顔も良いよね。

続いての念力シーンがこれ。
リュ・スンリョンの顔芸とでも言おうか、 変顔の連発に大笑いしちゃうんだよね!(笑)
このシーンでは、手にとどまらず、膝や舌まで使って物を動かしている。
手からパワーを出すのは漫画だったり、Netflixのドラマ「ストレンジャー・シングス」でも見るけれど、ここまでおバカな方法を使うのは初めてだよ。
いや〜、最高!(笑)

おバカな顔ばかりじゃなくて、娘のために闘う決意の表情がこれ。
この時にはニコラス・ケイジに似てるな、と思ったSNAKEPIPE。
ニコラス・ケイジもおバカなキャラクターからハードボイルドな役までこなす俳優だから、雰囲気が近いのかもしれないね。
リュ・スンリョンの他の作品も観たくなったよ!

ソッコンの超能力はなんでもアリで、自分が欲したことができちゃうみたい。
人や物を投げ飛ばすし、空を飛ぶことも可能!
こんな能力あったら良いだろうね。(笑)
ルミを救うため、スーパーマンのように飛んで助けるシーンがこれ。
父と娘に絆が戻った瞬間といえるだろうね。

建設会社や地上げ屋の執拗な立ち退き話は現実的なのに、ソッコンの超能力が加わると途端に荒唐無稽になるところが秀逸だと思ったよ。
筋自体は単純なのに、強い印象を残すのはやっぱりリュ・スンリョンの顔芸のおかげだね。(笑)
ウィル・フェレルのおバカ映画が大好きなSNAKEPIPEなので、「サイコキネシス」も非常に気に入ったよ!

監督は「新感染 ファイナル・エクスプレス(原題:부산행 2016年)」のヨン・サンホ
「新感染」は鑑賞済で、電車の中というシンプルな設定なのに、スリルのある目が釘付けになる映画だったことを思い出す。
元がアニメーション監督だというので、「何でもアリ」の発想ができる人なのかなと推測する。
ソウル・ステーション/パンデミック」 はこれから鑑賞するので、とても楽しみ!
「新感染」の続編である「新感染半島 ファイナル・ステージ」もいつか観たいと思う。
楽しみが増えて嬉しいね! 

石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか 鑑賞

20210124 top

【東京都現代美術館とgggの正面を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

東京都現代美術館で開催されている石岡瑛子の「血が、汗が、涙がデザインできるか は、以前より長年来の友人Mと話題にのぼっていた展覧会だった。
別会場で同じアーティストを特集するのが最近の流行なのか、ギンザ・グラフィック・ギャラリーでも「石岡瑛子 グラフィックデザインはサバイブできるか」も開催されているんだよね。
せっかくだから両方鑑賞して、その日を「A子デー」にしようと目論む。
まずは東京都現代美術館から行くことにする。

当日は晴れていたけれど、とても風が強く寒い日だった。
駅から歩いて美術館に向かったSNAKEPIPEだけれど、友人Mは寒さのためタクシーを使ったらしい。
なんともリッチですな。
そしてSNAKEPIPEの分まで足用ホカロンを準備してくれるとは、ありがたや~!(笑)
石岡瑛子展は昨年11月から始まっているはずだけれど、会場には意外と多くのお客さんがいたよ。
会場内は一切撮影禁止!
森美術館などは動画も含めてオッケーなのに、非常に残念だよね。 
東京都現代美術館の次に向かった会場である、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)で撮影した画像を使って紹介していこう!

まずは石岡瑛子の年表を書いておこうか。

1938年 東京に生まれる
1961年 東京芸術大学美術学部卒業後、資生堂入社
1970年 独立し、パルコや角川書店の広告を担当する
1980年 ニューヨークに拠点を移す
1983年 「石岡瑛子風姿花伝EIKO by EIKO」を出版
1987年 マイルス・デイヴィス『TUTU』のジャケットデザインでグラミー賞受賞
1993年 フランシス・コッポラ「ドラキュラ」でアカデミー賞衣装デザイン賞受賞
2000年 ターセム・シン「ザ・セル」で衣装デザインを担当する。
その後、ターセム・シンの作品3本にも衣装デザインとして参加する
2002年 紫綬褒章を受ける
2012年 死去。享年73歳

駆け足で書いてみたけれど、石岡瑛子の偉業はこんなに簡単には語り尽くせないよ。
資生堂の宣伝部に所属する時に「男性と同じ仕事と待遇」を希望したというエピソードから、エネルギッシュな石岡瑛子が良く分かる。
世間をあっと言わせた仕事が前田美波里を起用したポスターで、力強い女性像を打ち出したというのが、石岡瑛子自身を象徴していたように感じる。
載せた画像はパルコの広告で、「あゝ、荒野」。
写真は藤原新也なんだよね。
アートディレクターとして強いメッセージ性のある広告作りをする石岡瑛子像が見えてくる。

かつて目にしていたであろうポスターの数々が展示されている。
沢田研二との仕事が多かったのかもしれないね。
パルコのポスター以外にも沢田研二の写真集や、日本未公開の映画「Mishima」 での美術監督、そしてザ・タイガースのレコード・ジャケットにも携わっていたようで。
石岡瑛子がポスター制作の時、仕上がった原稿に赤文字で修正箇所を指示している展示に目が釘付けになる。
モデルの目に力がない、顔の輪郭がぼやけているからシャープにするように、フォントを大きく、などの細かい指示内容が書かれているんだよね。
プロフェッショナルな仕事を垣間見た気がするよ。
グラフィックを目指す人じゃなくても、勉強になる展示なんじゃないかな。

会場にはずっと石岡瑛子の声が流れていたんだよね。
仕事をする上での信念だったり、デザインの世界で生きていくためには何が必要か、みたいな話をしていたよ。
gggではその言葉を切り取って展示していたので、撮影してみたよ。
・Timeless(時代にとらわれず)
・Originality (真似ではない)
・Revolutionary(革新的な作品作り)
この3つの言葉をマントラのように唱えていたという石岡瑛子。
アスリートのように厳しい鍛錬を自らに課し、闘っていた女性だったんだね。

ポスター類は見ていたのかもしれないけれど、石岡瑛子という存在を知らなかったSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHも同様にポスターには見覚えがあるという。
初めて石岡瑛子を認識したのは、映画の衣装デザインだった。
2000年の時点で石岡瑛子は62歳だけど、パワフルな仕事ぶりが素晴らしいね!
ターセム・シン監督の「ザ・セル(原題:The Cell 2000年」や「落下の王国(原題:The Fall 2006年)」 は、映像の美しい映画で、石岡瑛子の衣装デザインが印象的。
映画で使用された衣装も展示されていて、興味深かったよ。
撮影禁止だったのが、本当に残念でならない。
また改めてターセム・シンの映画を鑑賞したいね、と友人Mと話す。
映画にとどまらず、オペラやシルク・ドゥ・ソレイユ、オリンピックのユニフォームまでデザインしていたというから驚いた。
ビョークから仕事を依頼されたという「コクーン」のミュージック・ビデオは、シンプルなのに不思議な世界が広がっていて、強烈な印象を残していたよ。
映像が見つからなかったので載せられないのが残念!

デザインと名のつく仕事はほとんど手がけているんじゃないか、というほどありとあらゆる展示があった。
えっ、これも?と驚いたのが山本海苔のパッケージ・デザイン!
尾形光琳の描いた波をモチーフに、日本のグラフィックデザイナーの草分けであった父、石岡とみ緒が商品名の書を、妹で同業の石岡怜子がグラフィック・デザインをしたという家族総出のアートワークだったという。
父親も妹も同業者だったという事実を初めて知ったよ。
当ブログには「ROCKHURRAH紋章学」というカテゴリーがあって、デザインに関する特集記事を書いているけれど、日本のデザインについては書いていなかったからね。

東京都現代美術館の展示は素晴らしくて、友人Mと興奮気味に会場を後にする。
ランチ後、gggに向かう。
すでに現代美術館で鑑賞した作品が、撮影可能な状態で展示されているんだよね。
この違いは一体なんだろう?
納得がいかないよね。
画像は「EIKO by EIKO」。
ターセム・シンがバイブルにしていたという作品集だよ!
SNAKEPIPEも見てみたいと思い、中古価格を調べてみる。
Amazonの中古品で51,999円だって。
すぐには手が出せないなあ。

日本の広告業界において第一線で成功していたのに、マンネリを嫌い、渡米するエピソードにグッと来たSNAKEPIPE。
その時、石岡瑛子42歳なんだよね。
そしてニューヨーク大学に入っているのを美術館の年表で知る。
「年だから」
「女だから」
そんな言い訳を一切しない強い精神力と行動力!
いつまでも挑戦し続ける、パワフルな女性だったんだね。
会場に流れていた石岡瑛子の言葉、もう一度聞きたいと思う。
パワーをもらえそうで。
73歳の死は早過ぎるよ。 
2つの会場で、石岡瑛子の作品を鑑賞することができて大満足だった。
世界に通用するアートワークの創造者の実像に触れられる機会はそうそうないからね。
稀代の逸材だった石岡瑛子の3つの言葉、SNAKEPIPEも記憶しておきたいと思う。