塩田千春展:魂がふるえる 鑑賞

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【どんよりした空模様がよく分かる一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

森美術館で開催されている「塩田千春展:魂がふるえる」については、長年来の友人Mから「とても良かったので行ったほうが良いよ」とお勧めされていた展覧会である。
行ってみよう、と計画していた日には、令和元年台風15号(アジア名:Faxai/ファクサイ) が関東に上陸したのである。
過去最強クラスの強い勢力を持った台風の影響で、現在でも千葉県内では復旧作業が行われているほど。
ROCKHURRAH RECORDSは、幸いにして明け方の強風を感じる程度だったため、六本木行きを決行!(大げさ)
電車も少し遅れながらではあったものの、支障をきたすことなく六本木に到着したのである。
今回のトップ画像は、あえて空が映っているものにしてみたよ。
まだちょっと怪しい雲が見えるよね。

台風の影響で、展覧会場はガラガラに空いているだろうと予想していたけれど、通常より少し少ないくらい。
例えば観光客は近くに宿泊しているだろうから、あまり天候に左右されることがないのかもね?

最初に森美術館作成のPR動画を載せておこうかな。

塩田千春という名前を今まで聞いたことがないSNAKEPIPE。
経歴について調べてみたよ。

1972年 大阪府岸和田市生まれ
?年 大阪府立港南造形高等学校卒業
?年 京都精華大学洋画科卒業
1993年 オーストラリア国立大学(ANU)キャンベラスクールオブアートに交換留学生として留学
1996年 ハンブルク美術大学(HfbK)に入学
1997年から1999年 ブラウンシュバイク美術大学(HBK)にてマリーナ・アブラモヴィッチに師事
1999年から2003年 ベルリン芸術大学(UDK)にてレベッカ・ホーンに師事
2008年 平成19年度 芸術選奨新人賞、平成19年度 咲くやこの花賞 美術部門受賞
2015年 第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展で日本代表に選出される
2010年度~ 京都精華大学客員教授

現在はベルリンを拠点に活動しているという。
それにしても一体いくつ大学に通ったんだろうね?
数えてみると5つだよ!
30歳近くまで大学生だったことになるのかな。
その間の生活費などはどうしていたのか、小さいことだけど気になってしまうよ。(笑)
それにしても、以前は確か「レベッカ・ホルン」と表記されていたように記憶してるけどね?
読み書きは変化することがあるから、まあいいか。

今回の展覧会についての説明文を森美術館のHPから載せてみよう。(一部抜粋)

ベルリンを拠点にグローバルな活躍をする塩田千春は、記憶、不安、夢、沈黙など、かたちの無いものを表現したパフォーマンスやインスタレーションで知られています。
副題の「魂がふるえる」には、言葉にならない感情によって震えている心の動きを伝えたいという作家の思いが込められています。
「不在のなかの存在」を一貫して追究してきた塩田の集大成となる本展を通して、生きることの意味や人生の旅路、魂の機微を実感していただけることでしょう。

「不在のなかの存在」なんて哲学的だわ!
一体どんな作品なんだろう?
森美術館では一部の作品を除いて、ほとんど撮影が可能なんだよね。
クレジット表記のルールを守れば、ネットへのアップもOKとのこと。
良い美術館だよね!(笑)
それでは気になった作品の感想をまとめていこう。
通常は展覧会の順路通りに作品を載せることが多いけれど、今回はなるべく作品の制作年順にしてみようかな。
理由は後ほど明らかになるであろう。

オーストラリアで留学中だった1994年の作品である。
「絵になる夢を見た」という塩田が、アクリル絵の具をかぶり、初めて身体表現に挑んだという。
そもそも自分自身が絵になるという発想が変わってるよね。(笑)
そして選んだ絵の具の色が赤というのも、血みどろのスプラッター状態にしか見えないし。
奇をてらう、というよりも死にたい気持ちを表しているように感じるんだよね。
この時塩田は22歳。
病んでいるようにみえるなあ。

1997年、ハンブルク美術大学時代の作品である。
アクリル絵の具をかぶった次には、泥水に浸かるパフォーマンス!
塩田千春、体張ってるよねえ。
泥の中で、塩田千春は何を思ったんだろう。
そしてまたこの行為も「死」を連想させるよ。
死人になりきることで、次のステップに進んだんだろうなあ。

1997年、ブラウンシュバイク美術大学在学中のパフォーマンス。
4日間断食した後、行ったのが全裸で斜面に掘った洞窟によじ登り、転げ落ちてはまた登ることを繰り返す行為だったという。
カミュの「シーシュポスの神話」を思い出すなあ。

カミュはここで、人は皆いずれは死んで全ては水泡に帰す事を承知しているにも拘わらず、それでも生き続ける人間の姿を、そして人類全体の運命を描き出した(Wikipediaより)

またもや体を張って頑張る塩田千春。
内面の苦しみを体で表現した感じなのかな。
観ているほうまで苦しくなってしまうよ。

1999年のパフォーマンス。
自宅のバスルームで泥をかぶり、拭いきれない皮膚からの記憶を表現しているという。
ドイツに住み始めて3年が経過していたらしい。
皮膚からの記憶ってなんだろう。
日本人である存在を意味しているのか。
今まで生きてきた自分自身ということなのか。
はっきりは分からないけれど、今の自分をあまり好きではない状態だったように見えるよ。

泥と皮膚というのがテーマだったようで、上の作品と同年に制作されたインスタレーション。
体の不在を表すドレスは泥にまみれ、上部に設置されたシャワーでも皮膚の記憶を洗い流すことはできない、ということらしい。
ドレスは7mもあるとのこと。
目の前に泥まみれのドレスが出現したら、かなり迫力あるだろうな。
先日鑑賞したボルタンスキーにも、日を追うごとに電球が消えていくインスタレーションがあったように、時間経過を含んだ作品なんだろうね。 

黒や赤の糸を空間全体に張り巡らせたダイナミックなインスタレーションが、塩田千春の代名詞とのこと。
その片鱗が見えたのが1996年の「意識へ戻る」なのかもしれない。
使用されている材料は黒い毛糸、ガラス管、血。
血って一体何の血よ?
毛糸に血液入のガラス管を括り付けてるのかな。
心のモヤモヤした状態を表しているように見えるよ。
毛糸はこれからずっと使用していく材料になるんだね。

2010年のパフォーマンス。
ここでも塩田千春は、血を使ってるね。
血が連想させる家族や民族、国家、宗教などの境界を壁に喩え「その壁を超えることのできない人間の存在」を表現したという。
塩田千春の言葉をそのまま書いていると、「〜できない」という表現が多いことに気付く。
ここらへんがネガティブ思考というのか。
だからこそ表現できるとも言えるのかもしれないけど?
この作品の時、塩田38歳。
まだまだ全裸で頑張ってるよ!

この作品は、フィリップ・モリス.K.K.アート・アワード2002大賞受賞作とのこと。
糸がまるで繭のように人間を包み、人が眠っている姿は莊子の「胡蝶の夢」のように、夢と現実の間にいる世界を表しているという。
分かるような分からないような文章ですな!(笑)
ドイツで3年の間に9回引っ越しをし、自分の居場所を探していたという塩田。
安寧の場所は繭の中、と夢想したんだろうか。
そしてそんな状況になっても、日本に帰ろうとは思わなかったのか。
どうしてもドイツに留まる必要があったのかな。
作品から安心感は全く得られず、SNAKEPIPEは蜘蛛の糸を連想してしまった。
絡め取られて生贄になるイメージね。(笑)

燃えるような赤色の世界。
かなり大きなインスタレーションで、枠組みだけの船がいくつあっただろう。
この船は棺か、それとも魂の容れ物か。
そこから湧き出て上へ、上へと昇っていくのは、魂ではないのだろうか。
もしくは血管なのかも?
そんな想像をしながら会場を歩く。
どこを見ても赤が目に入る。
一体どれだけの毛糸が使用されているんだろう。
ここまで糸を張り巡らせるのは大変だったろうなあ。
言葉がなくても、見た瞬間「うわっ、すごい」と感じることができる。
これこそ現代アートだなあ!

次は黒の世界ね。
燃やされた(?)椅子やピアノに黒い糸が張り巡らされている。
これはイタリアのテキスタイルメーカーであるアルカンターラ社製の糸で、見た目がゴムっぽい感じだった。
赤が生なら、黒は死なのか。
かつてこの世の生を受けていた人たちの、想念が揺らめいているようだったよ。
なんとも言えない異様な雰囲気に圧倒される。
この作業に携わったスタッフの方は、悪夢にうなされたりしなかっただろうか?

古い木枠を並べたインスタレーション。
旧ベルリンで廃棄された木枠を使用したみたいね?
一つ一つに、それぞれの家の歴史があるんだよね。
塩田千春のインスタレーションは、コツコツと小さな作業を積み重ねていった結果、巨大な作品が完成しているパターンが多いみたい。
「個」が「群」になると、存在感が増して迫力が違うんだよね。
木枠の内側に入ってみると、閉塞感で息が詰まりそうだった。
多様な記憶の洪水に飲み込まれそうになったのかもしれないね。

最後の作品も「群」物ね。
これはROCKHURRAHが動画で撮影してくれたよ!

作家名/作品名:塩田千春《集積-目的地を求めて》この写真/動画は「クリエイティブ・コモンズ表示 – 非営利 – 改変禁止 4.0 国際」ライセンスでライセンスされています
旅行かばんが赤い糸で吊るされている。
低い位置から徐々に高い位置へと連なっている。
バッグが揺れるんだよね。
まるで中に何か入っているみたい。
それは持ち主の記憶や念なのかもしれない。
まるであの世へ旅立つような印象を受けたよ。

塩田千春展はとても見応えがあった。
自分の存在とは何か、生きる目的を知るために苦しみ続けていた様子が表現されているように感じた。
作り続けながら、頭の中ではきっと様々な想いが巡っていただろうな。
かなり根気のいる作業を続けていて、努力家だなあとも思った。
こうした作品は、とても女性的に映るし、実際女性のアーティストが多いんじゃないかな。

2019年5月に鑑賞した東京都現代美術館の「百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして」で鑑賞した、手塚愛子を思い出す。
手塚愛子もドイツ在住のようで、そんなところまで似ているとはね?
ドイツは住みやすいのかなあ。
移住を考えるか?(笑)

永遠に僕のもの 鑑賞

20190908 13
【映画館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週はギンザ・グラフィック・ギャラリーで「Sculptural Type展」を鑑賞した記事を書いたよね。
文中にもあるように、実はその前に映画を鑑賞していたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
今週はその映画についてまとめてみよう。

トレイラーを載せてみたよ。
映画のタイトルは「永遠に僕のもの(原題:El Angel 2018年)」。
まずは、あらすじを書いておこうか。(Filmarks映画より)

ブロンドの巻き毛に透き通る瞳、艶やかに濡れた唇、磁器のように滑らかな白い肌。
神様が愛をこめて創ったとしか思えない美しすぎる17歳の少年、カルリートス。
彼は欲しい物は何でも手に入れ、目障りな者は誰でも殺す。
息をするように、ダンスを踊るように、ナチュラルに優雅に。
やがて新しい学校で会った、荒々しい魅力を放つラモンと意気投合したカルリートスは、二人で様々な犯罪に手を染めていく。
だが、カルリートスは、どんなに悪事を重ねても満たされない想いに気づき始める。

1971年のアルゼンチン、ブエノス・アイレスでの実話をベースにした映画なんだよね。
美少年のシリアルキラーという点も驚きの真実!
11件の殺人、17件の強盗などを犯し「死の天使」と呼ばれた、カルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチをモデルにしているという。
アルゼンチンでは有名な事件らしいけど、SNAKEPIPEは全く知らなかったよ。
シリアルキラーには精通しているつもりだったのに、失格だわ。
画像がその本人らしいんだけど、まるでアイドルだよね!
こんなに美形に生まれたのに、どうして犯罪に手を染めてしまったんだろうか。
他の道はなかったのかなあ?
カルロスには、きっと「プリズン・グルーピー」(犯罪者を崇拝する人)がたくさんいただろうな。
残忍な犯罪者だけど、画像だけ見るとファンができてもおかしくない容姿だもんね。

ペドロ・アルモドバルが、この映画をプロデュースしたと聞いて納得しちゃうよね。
同性愛者を公言しているし、監督した映画には必ずLGBT系の人物が登場する。
バッド・エデュケーション(原題:La Mala Educación 2004年)」では、女装したガエル・ガルシア・ベルナルを登場させたこともあったし。
その時の感想は「好き好きアーツ!#23 Pedro Almodóvar part2」にあるので、ご参照くだされ! 
画像は映画のプレミアに参加したメルセデス・モラーンと一緒のアルモドバル。
ロマンス・グレーで貫禄がある風貌になってるね!

それでは映画の感想をまとめていこうか。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未鑑賞の方はご注意ください

主役のカルリートス。
実在のカルロスを意識した髪型や服装のせいもあり、画像検索すると区別がつかないほど似て蝶!(笑)
愛らしい童顔で、悪事を働き、平気で嘘をつく。
盗んだペンダントを「母の若い頃の物だけど」と言ってガールフレンドに渡す。
頭の回転が速いのか、嘘が巧妙なんだよね。
恐らく最初は冒険のつもりで留守宅に侵入し、そこで戦利品を得たんだろう。
少年院に入っていたというセリフがあったので、警察に捕まったこともあるようだけど、空き巣強盗はやめられない。
精神的に子供なので、短絡的に犯行に及び、善悪の区別がつかない。
人を殺すことに、何のためらいもない。
はっ!語尾に「ない」を3回も続けてしまったよ!(笑)
ピストルをあっさり撃って、へっちゃらな顔をしている。
人間的な感情を持っていないタイプのように見えるんだよね。
相棒のラモンに対する感情だけ、表れていたようだったけど。
単独で行動している頃は、小さな盗みで満足していたけれど、泥棒仲間と一緒になると犯行がエスカレートしていく。
もしかしたら「認められたい」と気持ちがあったのかもしれないよね。
歯止めがきかなくなって、仲間から見限られてしまう始末。
裕福ではなくても、良識のある家庭で育てられているカルリートスなのにね?
好物はお母さんが作ってくれる「ミラノ風カツレツ」。
どうして道を踏み外してしまったのか、疑問が残るよ。

カルリートスのお母さん役を、アルモドバル監督作品では常連のセシリア・ロスが演じていたよ。
最近観たセシリア・ロスといえば「アイム・ソー・エキサイテッド!(原題:Los amantes pasajeros)」なので、2013年なのかな。
5年程の間に、こんなに年齢が違ってみえるとは!
カルリートスの年齢が17歳から20歳として考えると、お母さんとしては老け過ぎかな?(笑)
息子を真っ当な道に戻すことができなかったのは、とても残念だね。

カルリートスの相棒、ラモン。
女の子みたいに見えるカルリートスに対して、男臭い風貌なんだよね。
恐らく映画のタイトルである「永遠に僕のもの」は、ラモンへの気持ちを表現しているのかなと思ったSNAKEPIPEだよ。
カルリートスはラモンに一目惚れしたようで、ちょっかいを出し、わざとケンカを売ることで近づいていく。
ラモン一家は泥棒を稼業にしている家庭なんだよね。
カルリートスも参加して、荒稼ぎをしていくことになる。
お金は稼いでいるけれど、ラモンの気持ちが自分に向くことはない。
カルリートスとラモンの怪しいシーンは何回かあって、観ている方が「じれったく」なってしまった。(笑)
カルリートスの恋心を考えると、成就させてあげたくなっちゃうんだよねえ。
ラモンにはその気は全くなかったのかなあ。

ラモンのお父さん、ホセ。
カルリートスの度胸と犯罪者としての素質(?)を見抜き、行動を共にする。
殺人に手を染めることはないようで、そういった意味での常識は持ち合わせている人物。
ホセがカルリートスにピストルの撃ち方を教えなければ、カルリートスがシリアルキラーになることもなかったのかもしれないよね。
それにしてもホセの衝撃的な「はみ出た」シーン、思わず笑ってしまったよ。(笑)

ラモンの母親であり、ホセの妻アナ。
旦那が泥棒であり、息子のラモンも同行していることを当然承知しているんだよね。
犯罪一家の家庭って、本当にあるのかな。
SNAKEPIPEは未鑑賞だけど、2018年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「万引き家族」みたいな感じかな。
母親のアナは、カルリートスの美貌にクラクラしちゃったのか、ちょっかいを出そうとするんだよね。
まるでその気がないカルリートスは「ご主人に悪いよ」とお断り。(笑)
こうした機転が、カルリートスの頭の良さなんだろうね。
そう言われるとアナも引き下がるしかないもんね。

泥棒に入った家に飾ってあった絵を、カルリートスが気に入って持ち帰るシーンがある。
この絵にSNAKEPIPEも興味を持ったよ。
強烈な赤が印象的で、邪悪な雰囲気なんだよね。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなるよ。(笑)
アルモドバル監督作品には、アートが登場することが多いんだけど、今回も室内の装飾や絵画にその傾向があったね。
とは言っても、今回はアルゼンチンのルイス・オルテガが監督なんだけど。(笑)
恐らくこの監督の作品は初めてなんじゃないかな。
アルゼンチン映画で知っているのは「笑う故郷(原題:El ciudadano ilustre 2016年)」と「人生スイッチ(原題:Relatos salvajes 2014年)」くらいだもん。
「人生スイッチ」もアルモドバルが製作で関わっていたよね。

「永遠に僕のもの」は、実話を元にした映画だったけれど、クライム・ムービーというよりは、ゲイ映画として括ったほうがしっくりする感じがしたよ。
もっと強引に言ってしまえば、主人公カルリートスを演じたロレンソ・フェロのプロモーション・ビデオかな。
ちょっとぽっちゃりした幼児体型で、顔も丸くて子供のようだけど、実際には20歳だという。
「南米のディカプリオ」と噂されているらしいけど、どんな大人になっていくんだろうね。

映画館では、通常であればシリアルキラー物には興味がなさそうなのに、ロレンソ・フェロ目当てで鑑賞しているようなお客さんもいたようだったね。
男性が1人で来館している姿も目撃し、非常に気になったSNAKEPIPEだよ。
あの方々もロレンソ目的だったのかな。(笑)

モデルとなったカルロス・エドゥアルド・ロブレド・プッチは、現在67歳。
終身刑のため、服役中だという。
すでに45年以上、牢獄生活をしてるってことだよね。
どうやら同性愛者ではなかったようなので、映画で作られた設定になるみたい。
自分がモデルとなった映画が上映されていることに、どんな感想を持つのだろうか。

ペドロ・アルモドバルの新作に関するニュースがあるよ。

タイトルは「DOLOR Y GLORIA」。
アルモドバル監督の自伝的映画だという。
アントニオ・バンデラスやペネロペ・クルスの顔があるね!
日本公開はいつなんだろう?
今からとても楽しみだよ!(笑)

Sculptural Type 鑑賞

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【毎度お馴染みの構図。ggg前を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

現在銀座グラフィックギャラリー(通称ggg)で開催されているのは、デンマークのデザイン会社であるKontrapunkt(コントラプンクト)による「Sculptural Type」展である。
タイポグラフィが大好物のROCKHURRAHは目ざとく展覧会を発見。
gggには2019年2月に「ポーラ・シェア:Serious Play」の鑑賞で訪れているので、約半年ぶりになるんだね。
ポーラ・シェアの展覧会も大満足だったことを思い出す。
今回展示されているコントラプンクトってどんな会社なんだろうね?

北欧デザイン、というフレーズはいつの頃から耳に馴染むようになったんだろう。
そしてそれは「色合いが美しく、センスの良い洗練されたデザイン」と同義語になっているんじゃないかな。
一言で言えば「オシャレ!」なデザインね。(笑)
インテリアや陶磁器、ファッションに至るまで、たくさんのメーカーが日本に進出している。
様々な場所で、北欧デザインを目にする機会が増えているよね!

コントラプンクトは英語だとcounterpoint、意味は「対位法」だという。
Wikipediaで調べると、音楽理論のひとつであり、複数の旋律を、それぞれの独立性を保ちつつ互いによく調和して重ね合わせる技法である、とのこと。 
多様な個性が一つのハーモニーを形作り、世界的に有名なデザイン会社になったということなんだろうね。
1985年の設立以来、政府機関、インフラ、NGO、文化団体から大企業に至るまで、多数のブランディングを手がけ、世界中のデザイン賞も多数受賞しているコントラプンクト。

私たちにとって、タイプ(書体)デザインは彫刻のように物語る一つの形であり、しかもそのストーリーはここで終わるのではありません

今回の展覧会の主旨を、コントラプンクトのデザインディレクターで代表取締役社長のボー・リネマン氏が一言でまとめている。
彫刻のような書体って、どんなことなんだろうね?

まだ暑い東京の夏、湿度も高く蒸した銀座をgggに向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
実はこの日、映画を鑑賞した後でggg訪問、という順番になったんだよね。
鑑賞した映画については、次週感想をまとめる予定なので、お楽しみに!(笑)
前回のポーラ・シェアの時には道に迷ったSNAKEPIPEだったけれど、今回はすんなりと到着。
このギャラリーは過去にも撮影許可を確認したことがあるけれど、念の為、受付の女性に尋ねてみる。
オッケーとの返答だったので、バシバシ撮影させて頂こう!

今回の展示は、足元にあるフット・スイッチを踏むことにより、壁をスクリーンにしてフォントが現れる仕掛けがされていた。
フット・スイッチは5種類用意されていてフォントそのものを見せたり、使用例を映し出している。
コントラプンクトは、世界中からオファーを受けているようで、日本の企業のフォントも多数取り扱っているんだよね。

スポーツ・シューズで有名なアシックスタイガーのロゴも、コントラプンクトがデザインしていたとは!
丸みを帯びながらも、少しだけ縦長で、アルファベット同士が近く見えるフォント。
何気なく目にしていたので、じっくり見ていなかったことに気付く。
ロゴだけではなく、恐らくフォント全体をアシックス用に制作したんだろうね。
アシックスのHPをみると、商品名にも同じフォントが使用されているように見えたから。
それにしてもアシックスという社名が「Anima Sana in Corpore Sano(健全なる精神は健全なる身体にこそ宿るべし)」というラテン語から採用されていたという話を初めて知ったよ!

デンマークのレストラン「noma」のためにデザインされたタイプフェイス。 
これは英国の飲食業界誌が選ぶ『世界のベストレストラン50』で4年連続1位に輝いたレストランだという。
このフォントを制作するのに、かかった時間はたったの1週間だったというから驚いちゃうね。
短い時間でも有意義で価値のある仕事をした、とコントラプンクトのボー・リネマン氏が語っている記事を読んだよ。
手書きで有機的な形を作り、わざと不均等にして素朴さを出しているとのこと。
クライアントの個性やアピールポイントを、いかにフォントに表現するのか。
ものすごく重要な部分だろうね。

日本の化粧品ブランド資生堂が、2019年4月横浜みなとみらいに「資生堂グローバルイノベーションセンター」、通称S/PARKという美の複合体験施設をオープンさせたらしい。
「らしい」と書いたのは、SNAKEPIPEは全く知らなかったから!(笑)
2019年って今年のことじゃないの。
ものすごく最近の仕事ってことだったのね。
ここで使用されているフォントのデザインを請負ました、という紹介がされていたよ。
アルファベットを使用している国のデザイン会社は、漢字をどう処理するのか興味があったんだよね。
他の文字も見てみたいので、SNAKEPIPEも美の複合施設に行ったほうが良いかも。(笑)
コントラプンクトと関わるよりずっと前から使用されていた資生堂の「SHISEIDO」というロゴ・デザインの素晴らしさに、今更ながら気づいたよ。
「S」の文字が音符のように流れて斜めになったフォントは、大正時代に作成され、使用されているという。
ROCKHURRAH RECORDS憧れの1920年代はやっぱり良いね!(笑)
資生堂は、広告の世界でも中心的な存在になっている。
「美」を追求するメーカーは、やっぱりイメージ戦略ありき、なんだね。

「Danish」と名付けられたフォントが実にカッコ良かったんだよね!
アルファベットによって、次に続くフォントと「ひとつながり」に見えるような箇所もある。
右下に配置されている円形のデザイン、円形と直線のバランスが素晴らしいよね。
日本語だった場合には、直線部分を縦書きにしても面白いかもしれない。
デンマークのデザイン賞を受賞しているというのも納得!
こんなフォントを日常的に目にしているなんて羨ましい限り。(笑)
恐らく「デザイン・アワード受賞」の様子を表しているシーンだと思うんだけど、特別な説明がなかったので想像だよ。
立体的な「D」が金ピカに輝き、中央でぐるぐると回転する動画だったんだけど、静止画で失礼します。(笑)
バックには印象的な斜めに走った文字が並んでいるよね。
この斜めの雰囲気、ロシア構成主義っぽくてお気に入りだよ!

コントラプンクトは、文字を動かすという遊びも見せてくれた。
これは動画じゃないと伝わらないな。

東大阪市役所がコントラプンクトに依頼して作られたフォントの紹介ビデオなんだよね。 
今回の展覧会でも「HIGASHIOSAKA」として展示されていたよ。
隣の文字につながっていくタイプフェイスを、近畿大学と共同で開発したという。
動くことで、より一層面白さが増すよね!

展覧会でSNAKEPIPEが撮影した動画も載せておこうか。
まるで心臓の鼓動に合わせて、文字が胎動しているように見える。
文字が生きているっ!(笑)

フット・スイッチを踏むことで動きがでる、という展示方法もユニークだったし、TYPE(書体)の可能性について考えさせられる展覧会だった。
改めて周りにあるフォントを「まじまじ」と見てみたいと思っている。
日本にも「オシャレ!」で独創的なフォントがあるかもしれないよね!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #52 Jody Fallon

【人間なのか動物なのか?もしくは怪物?!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回は久しぶりにSNAKEPIPE MUSEUMをお届けしよう。
最近は展覧会に赴く事が多くて、アーティストを検索する時間が取れなかったんだよね。
たまには、と検索を始めたSNAKEPIPEの琴線に触れたのがJody Fallonの作品だった。

Jody Fallon(ジョディ・ファロン)は1971年、アメリカ合衆国ペンシルベニア生まれ。
アート系の学校に行ったわけではなく、近所の暗い野原や山、森を探索しながら、孤独な感情を表現する方法を探していたという。
その後、アメリカ海兵隊として沖縄にも来ていたらしい。
兵隊経験のある画家って、他にいるのかな?
1996年から2000年の間、ファロンは重要な3人のアーティストを見つけることになる。
フランク・フラゼッタ、ポール・レア、ロン・ウィングらの作品を通して、求めていた表現手段を探し出したという。
2000年以降、週末にペンシルベニアのスタジオでSFのイラストや彫刻を、イーストストラウズバーグの博物館でフラゼッタのイラストを勉強していたという。
漫画家で芸術家のロン・ウィングに師事し、芸術と絵画の哲学を発展させ、自分のスタイルを確立したジョディ・ファロン。
地元ペンシルベニアでの個展やグループ展、ニューヨークのギャラリーで作品が展示されている。
ネットでも販売しているようで、10インチ四方(25cm)の小さな作品で$350、日本円で約36,000円とのこと。
ジョディ・ファロンは現在もペンシルベニアに住み、作品制作を続けているという。

ジョディ・ファロンが心惹かれたアーティストの一人、ポール・レアの作品がこちら。
1950年代から80年代までパルプ本の表紙デザインをしたり、PLAYBOYなどの雑誌のイラストも手がけていたという。
小説の書評を読んでから本を購入するというよりは、表紙の絵を見て興味を持つことが多いんじゃないかな。
読者の気を引く、「そそる」表紙を描くのは大変だけど面白い仕事かもしれないね。
サイエンス・フィクションの世界を支配した、とまで言われたポール・レア。
1998年に亡くなるまで、活動していたという。
ポール・レアの作品も素晴らしいので、いつかブログで特集してみようかな!(笑)

ジョディ・ファロンもきっとポール・レアの作品を観て、ワクワクしたんだろうね。
似た雰囲気の作品もあるけれど、独自のセンスが光る、ちょっと不気味な作品も紹介していこう。

怪奇小説、幻想小説の先駆者であるアメリカの小説家、H.P.ラヴクラフト全集の表紙を手がけたジョディ・ファロン。
モノクロームで描かれた不気味な怪物(?)は、ラヴクラフトの小説にふさわしいように感じるよ。
と、言いながらも、実はほとんどラヴクラフトを読んだことないんだけど。(笑)
目標にしているアーティストが得意にしていた表紙の仕事を引き受けることは、きっとジョディ・ファロンにとって特別な意味を持っていただろうね。
他にもクラシックな小説の表紙を担当しているみたい。
どれも「おどろおどろ」しくて、きっと怖いんだろうと思わせることに成功しているよ!
もし本屋で見かけたら、手に取ること間違いなしだね。(笑)

ジョディ・ファロンのHPには、シリーズ毎に作品が載っている。
「Science Fiction」のシリーズは、まさにポール・レアの後継者と言うべき作品群を観ることができる。
レトロ・フューチャーという、懐古趣味的な未来像を表す言葉の通り、懐かしさを感じてしまう作品なんだよね。
このまま小説の表紙になったり、70年代のプログレッシヴ・ロック系のアルバム・ジャケットになっているような雰囲気。
実際プログレのバンドが、どんなジャケットを使用していたのかよく分かってないんだけどね。(笑)

SNAKEPIPEの琴線に触れたジョディ・ファロンの作品は「Imaginative Realism」というシリーズなんだよね。
この言葉も相反する単語が連なっていて、想像したものをリアルに描いた作品、という意味だと理解したけど、どうだろう?
夕暮れ時なのか、逆光になった人物(?)が、大きく口を開け、叫んでいる。
植物に棘があるのか、手から血が流れているように見える。
非常に不気味な絵で、歯しか見えない黒い物体が、まるでフランシス・ベーコンが描く人物のよう。
「孤独な感情を表現する方法を探していた」という、ジョディ・ファロンの自画像なのかもしれないね?

この作品も怖いよね!
背景がオレンジ色なので、より一層ベーコンっぽく見えてくるね。
人間には見えない物体もいれば、悲しみにくれ叫んでいるように見える顔もある。
一体どんなシチュエーションなのか不明だけど、こんな青い物体に追いかけられたらさぞや恐ろしいことでしょう。(笑)
夢に出てこないことを祈るよ!

うひゃー!今度は溶けてるよ!
頭は頭蓋骨なのに、腕だけは筋肉組織やら血管が見えるようじゃない?
これも一種の「叫び」なんだろうね。
さっきまで普通に会話していたのに、ウイルスやゾンビに感染した途端、全くの別人になってしまうシーンって、ホラー映画によくあるよね。
かつては人だったのに、今はもう人間じゃない、という恐怖を表現したように見えてしまう。
ジョディ・ファロンはSFとホラー映画が好きに違いないよ。(笑)
あくまでもSNAKEPIPEの想像だけどね。

この作品を観た瞬間、ROCKHURRAHが「永井豪みたい」と言う。
ぐわっと開いた大きな口と乱杭歯。
何かを噛み砕いた後なのか、それとも腹でも刺されて口から血が流れているのか。
状況はよく分からないけれど、尋常な顔立ちではないよね。
そしてこちらが永井豪の「デビルマン」。
雰囲気似てるよね?
きっとジョディ・ファロンは、漫画やアニメも好きに違いないと推測!
永井豪の漫画は今でも海外で人気があるようで、2019年7月にはフランス政府から芸術文化勲章シュバリエを贈られていることを知りびっくり!
エロや暴力を描くことが多い永井豪は、かつて教育に不向きという理由でバッシングを受けていたと読んだことがあったからね。
時代や場所が変わると評価も変わるものなんだと改めて実感したよ。

最後はこちらの作品ね。 
24☓36インチという大きさは、61cm☓91cmなので、恐らく30号のキャンバスになるのかな。
キャンバスについて調べてみたら、Fサイズ(人物)とかPサイズ(風景)のような種類があるんだね?
高校時代、美術部に所属していたSNAKEPIPEも30号のキャンバスを使って油絵描いていたけど、どの種類だったんだろうね。(笑)
黒い頭巾をかぶった黒衣の髑髏は一体何等身あるんだ、というくらいのモデル体型。
地面にはひび割れが見えるので、後ろに積み上がった骸骨の養分を吸い込んで、地面から生えているようじゃない?
すっくと立ったその姿から邪悪な精神は垣間見えないけれど、このまま佇んでいるとは思えない。
この絵から、様々な物語が作れそうだよね!(笑)

有名な美術大学在学中から注目され、個展を開いて、卒業後は当たり前のようにアーティストになる人が多い時代。
今回紹介したジョディ・ファロンは、独学からスタートして、自ら師を探し出し教えを請い、表現を追求しているので、とても身近に感じられるタイプのアーティストなんだよね。
これからもダークで不気味な作品を発表してもらいたいと思う。
調べたところでは、恐らく日本でジョディ・ファロンについて書いている人はいないみたい。
実物を観てみたいと思うのは、日本でSNAKEPIPEだけなのかな。(笑)