ビザール・チャーチ選手権!35回戦

【チャーチが入ったタイトルの曲といえばこれかな】

SNAKEPIPE WROTE:

先日電車の中吊りに目をやると、飛び込んできたのは「BIZARRE」の文字。
ビザールと聞くとつい反応してしまうSNAKEPIPE。
それは雑誌「BRUTUS」の広告で「BIZARRE PLANTS」を特集しているというものだった。
「BRUTUS」とは、1980年から現在に至るまで刊行されている男性向けの雑誌のこと。 
「都市で生活し、時にはアウトドア・ライフをも楽しむ大人の男の雑誌」というスタンスらしいので、自宅で変わった植物を育てる、というのもアリなのかもしれない。
都会のベランダで植物に熱中する男といえば「植物男子ベランダー」を思い出すね。
田口トモロヲ主演の面白いドラマなんだけど、何故だかDVDになってないの。
こういう作品を商品化して欲しいんだけどねえ。
「BRUTUS」に話を戻すと、そんなアーバンライフを満喫するシティ派(死語の連発)の雑誌で「ビザール」なる言葉が採用されるとは意外だよ。
ビザール系の記事ならROCKHURRAH RECORDSが得意だからね。(笑)
今週は絶対、「ビザール・グッズ選手権」の記事を書こうと心に決めたSNAKEPIPEである。(おおげさ) 

「BRUTUS」への対抗意識から、記事を書くことに決めたけれど、さて題材は何にしようか?
ここで思い出したのが、先週書いた「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」で印象的だった祭壇である。
祭壇から連想したのは教会。
もしかしたらビザールな教会、あるんじゃないかな?

なんでしょうか、このカラフルな動物たちは!
これはモロッコのユスーフィーアにある教会で、スペインのアーティスト、Okuda San Miguelによって描かれたらしい。
ストリート・アーティストを支援して、古い教会を一新させるというブリティッシュ・カウンシル(英国文化振興会)によるプロジェクトだったようで。
サンミゲルのアートワークによって、教会は以前とは大きく見目姿を変えたことだろうね。(笑)
SNAKEPIPEが持つ教会のイメージは慎ましやかで清貧なんだけど、これは全く趣が違うよ。
恐らく現在も教会としての役割を果たしているようだけど、ポップな教会でも礼拝が行われるんだろうか。
いつでもカーニバルが開催されそうな雰囲気だよ。(笑)
オクダ・サンミゲルというアーティストは、こういった色とりどりの幾何学パターンを使用した作品が有名なようだね。
それにしてもどうして「オクダ」なのか、よく分からなかったよ。
本名ではないみたいなんだよね。

動物つながりで選んだのがこれ!
鳥の形をしている教会があるなんてびっくりだよね。 (笑)
インドネシアのジャワ島中部、ジャワ州の都市マゲランにあるという。
1990年に神の啓示を受けたダニエル・アラムシャなる人物が建造したという話だよ。
啓示によってこのデザインに決めたのか、調べてみたけどよく分からなかったよ。
現在は教会としての機能はなく、観光名所になっているらしい。
森の中に巨大な鳥モチーフの建造物があるなんて、廃墟マニアだけじゃなくても観てみたいもんね!
HPもあり、ツアーまで組まれているので人気がある場所みたいだよ。
ボロブドゥール遺跡の近くのようなので、ちょっと足を伸ばしてみるのも良いかも。(笑)

チキン・チャーチに続いて紹介するのは、こちらも驚きの場所にある教会だよ!
なんと地下にあるんだよね!
これはフィンランドのヘルシンキにあるテンペリアウキオ教会で、スオマライネン兄弟の設計により、1969年に完成したものだという。
岩をくりぬいて建てられていて、音響効果が抜群なのでコンサート会場にもなっているとは驚きだよね。
上からみると、あまり教会の雰囲気はないけれど、内装をみると荘厳な雰囲気がよく分かるよ。
色合いの美しさも際立っているね。
かなり有名な観光地らしく、ひっきりなしに観光客の出入りがある、なんて記事を発見したよ。
そう聞くと、ちょっと興醒めしてしまうけど、ユニークな教会であることは間違いないね。

こちらもかなり個性的な教会ね!
1400年に建造されたチェコ共和国プラハにあるKostnice Sedlecという教会なんだよね。
ここは元々墓地で、教会は墓地の中央に建てられたらしい。
1870年に教会を購入したシュヴァルツェンベルク家は木彫家フランティシェク・リントに人骨を使用した内装を依頼したという。
1万人分の人骨が使用されているという、この建造物、ゴシックだよねえ!
シュヴァルツェンベルク家の紋章まで骨で作られていて、人骨使用の意図が読めないよ。
こちらもプラハからのツアーが組まれていて、観光地になっているみたい。
フランスのカタコンベ同様、怖いもの見たさの人が多いんだね。
SNAKEPIPEもちょっと興味あるけど、悪夢にうなされるかもしれないな。(笑)

最後はこちら!
なんと、戦車の上に教会が建っているよ。
これはアメリカ、ミズーリ州出身のChris Kuksiというアーティストの作品なんだよね。
1973年生まれというから、現在46歳くらい?
「Church Tank」という作品は2007年頃から制作しているみたいだね。
4×12×10という大きさだとすると、約10cm×30cm×25cmなので、置物サイズ。
今回の特集に入れるのには少し無理があるみたいね。(笑)
バロック様式の教会と重装甲戦車を組み合わせることで、どんな印象を受けるかな。
相反するイメージのミクスチャーは、違和感があって印象に残るよね。
どんなメッセージが込められているかは分からないんだけど。
Chris KuksiのHPで、人物をゴシック調に仕上げた彫刻を見ることができる。
かなりグロテスクで、良い感じ!(笑)
ギーガーみたい、というROCKHURRAHの感想もよく分かるね。
SNAKEPIPE MUSEUMのコレクションに加えたい作品だよ!

今回はビザールな教会を集めてみたよ!
検索したのは「church」なので、別の機会に「temple」とか「shurine」のビザールも探してみようかな。
今度はどんなビザールに出会えるのか?
次回もお楽しみに!

クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime 鑑賞

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【国立新美術館前の看板を撮影。ワンパターン!】

SNAKEPIPE WROTE:

7月5日はROCKHURRAHの誕生日!
おめでとうございます!(笑)
プレゼントはもう渡してあるので、当日には何かイベントにご招待してみようかな。
現在開催されている展覧会の中で、面白そうな企画を探してみる。
せっかくなので、今まで目にしたことがない作品を鑑賞してみよう、と提案したのが国立新美術館で開催されている「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」である。
SNAKEPIPEは初耳のアーティストだけど、世界的に有名な方のようだね?

1944年 パリで生まれる
1968年 短編映画を発表
1972年 ドイツのカッセルで開かれた国際現代美術展のドクメンタに参加
1990年代以降 大規模なインスタレーションを数多く手がけるようになる
1990–91年 ICA, Nagoyaと水戸芸術館で個展を開催
2010年 「瀬戸内国際芸術祭」(香川)が開かれた折には《心臓音のアーカイブ》を豊島に開館する
2001年 ドイツでカイザーリング賞を受賞
2006年 高松宮殿下記念世界文化賞を受賞
現代のフランスを代表する作家として知られる。 (展覧会HPより抜粋)

1944年生まれというと、今年75歳。
3週間前に書いた「B29と原郷-幼年期からウォーホールまで」の横尾忠則も82歳だし、皆様年齢に負けず現役を通しているアーティストなんだね。
さて、今回のボルタンスキー、一体どんな作品を制作しているんだろうか。

自他ともに認める雨男のROCKHURRAHには珍しく、六本木に向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPEは傘をさしていなかった。
この日は風もあり、少し涼しく感じる気温。
夏生まれなのに夏が苦手なROCKHURRAHにとっては、最高のお出かけ日和だったよね。
少し早めの夕食を取り、「おめでとう」の乾杯はスパークリングワイン。
美味しいご飯の後、美術館に到着したのは18時半頃だった。
美術館によっては週末の閉館時間を遅らせているので、夜でも大丈夫なんだよね!
こんな時間から美術館に行くのは、ROCKHURRAH RECORDには珍しいことだよ。
国立新美術館前の看板を撮影するのが定番なので、同じような角度から撮影しておく。
おや?同時開催されているのはエゴン・シーレなんだ?
上野の東京都美術館では、7月10日までクリムト展やってるんだよね。
なにこれ、突然ウィーン・ブーム到来なの?(笑)
それにしてもこれで雨だったら、ヒカシューの「雨のミュージアム」がぴったりだったのになあ! 

♪エゴン・シーレのポーズを真似て、首をかしげた〜♪
TOP画像で人物の首が傾いてるの、分かるよね?(笑) 

夜のせいか、美術館内は普段よりもずっとお客さんが少ない。
館内の照明が最小限しか点いていなかったため、ガランとした空間が余計にひっそりとしている印象だよ。
受付の女性、怖くないのかな?(笑)
ボルタンスキー展は2階展示会場で開催されていた。
チケット売り場の脇に撮影に関する注意があった。
エリアによって撮影が許可されているらしい。
まずは入ってみよう!

最初に展示されていたのは「L’homme qui tousse」、「咳をする男」という1969年のビデオ作品だった。

本当に延々と咳をしているだけの作品とは!
泥をぬりたくったような顔が、まるでデヴィッド・リンチの娘、ジェニファーが監督した「サベイランス」(原題:Surveillance 2008年)に出てきたのに似てる!
世界一カルトな親子の作品!Surveillance鑑賞」で確認してちょ。
この作品を観た時、これから先の作品鑑賞に不安を感じたSNAKEPIPE。
果たしてこの予感は正しかったのだろうか?(笑)

撮影ができるエリアは、会場の終盤近くだけだったため、自分で撮影した画像以外も載せているので、よろしくね!
洋服の周りにライトを配置した作品を何点か確認したよ。
遠くから見ると矢印(↑)みたいなんだよね。
この作品で思い出したのは、オノデラユキの「古着のポートレート」。
オノデラユキについての解説を載せておこうか。 

モンマルトルのアパルトマンから見える空を背景に、約50点の古着を撮影した初期の代表作品。
古着は、クリスチャン・ボルタンスキーが1993年にパリで開催した個展「Dispersion (離散)」で展示されたもので、来館者は山積みされた古着を10フラン払って袋一杯持ち帰ることができた。
オノデラは、ボルタンスキーが大量死の象徴とした古着を、一点ずつ窓辺に立たせることで、個としての存在に引き戻し、身体なきポートレートとしてまるで空に飛び立つように軽やかに提示した。

ここでつながるとは思ってなかったのでびっくり!
実を言うとオノデラユキの作品がどうして評価されるのか不思議だったんだよね。
今になって初めて意味がわかったよ。(笑)

家に欲しくなるほど気に入った作品がこれ!
「Théâtre d’ombres」、影の劇場とでも訳すのか、 1985-1990の作品である。
インドネシアの影絵芝居「ワヤン・クリッ」のような、ぺったんこのモビールが揺れる作品で、光の当たり方で影に変化が起こる。
1つ1つのモビールが面白くて、観ていて飽きない。
どうしてこのモビールをミュージアム・ショップで販売しないのかなあ。
チープな紙製だったとしても、欲しいと思う人多いだろうけど。
毎度のことながら、ショップには似たようなアイテムが揃っていたよ。
作品の動画があったので、これも載せておこう。

祭壇をイメージしている「Monument」、モニュメントは1986年の作品で、この手の人の顔と電球を組み合わせた作品が続いている。
いくら笑顔の写真が飾られていても、これらの人達が現在も幸せに生きているようには見えないんだよね。
供養しているにも見えるし、猟奇殺人犯が勲章のごとく誇らしげに 戦利品として飾っているようにも思えてしまう。
これはきっとSNAKEPIPEがつい、シリアルキラー系に結びつけてしまうせいだろうね。

人の顔と電球で構成されている作品から感じるのは、強烈な死のイメージ。
最初にも書いたけれど、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、ボルタンスキーについて何の知識も持たないで作品鑑賞をしている。
そのためボルタンスキーが、ナチスの影に怯えた少年時代を過ごしていたことを知らなかった。
使用されているのは当時の人々の写真なのかな。
たくさんの死者に囲まれている気分がして、なんとも言えない居心地の悪さだよ。
電球のコードが人物の顔にかかっているところが、不気味さを増している。
コードまで含めて作品なんだね。

画像は実際に展示してあったのとは違うバージョンだけど、1996年の「Veroniques」(ヴェロニカ) という作品は、まるで「ツイン・ピークス」のローラ・パーマーみたいだったよ!
ローラはビニールにくるまれていたけど、こちらは薄衣で包まれている死体のようだったね。
ずっとこの調子で展覧会が進行していくんだろうか。
喜怒哀楽でいうと「哀」で、生老病死だったら間違いなく「死」なんだよね。

ずっと照明が落とされた会場を歩いていたので、カラーの大型画面が登場すると、急に目の前がパッと開けた状態になる。
3つの映像で構成される「Misterios」(ミステリオス)は2017年の作品とのこと。
大型スクリーンは撮影可能エリアに指定されているので、ROCKHURRAHがパノラマ撮影してくれたよ。
左には横たわったクジラの骨、中央にボルタンスキーが作成したラッパのようなオブジェ、右には海上の様子が映し出されている。
このラッパのオブジェが展覧会のフライヤーでも使用されていたんだけど、一体何なのか不明なんだよね。
どうやらクジラを呼ぶための装置で、「世界の起源を知る生き物とされている、鯨とのコミュニケーションを図ろうとする試み」だという。
意味が不明でも、巨大ラッパのフォルムの美しさだけで十分アートだと思ったよ!

2013年の作品「Les Esprits」 の邦題はスピリット。
魂、ということで良いみたいだね。
天井から吊るされたヴェールにプリントされた顔は100枚以上とのこと。
これもまた死者のイメージだよね。
「さまよえる霊魂を呼び起こす」と解説に書いてあるし。
撮影可能な作品だったので、何枚か撮影してみたけれど、画像からスピリットを感じることはできるかな?

「白いモニュメント、来世」は、今回の展覧会用に制作されたという。 
まあね、思いっきり漢字で「来世」って書いてあるし。(笑)
前に立った時、「プッ」と吹いてしまったSNAKEPIPE。
日本の盛り場で見かけるネオンのようで、「スナック 来世」とかありそうじゃない?
ボルタンスキーが、ウケを狙って制作したとは思えないけど、ROCKHURRAHと笑ってしまったよ。
2012年に鑑賞した「好き好きアーツ!#16 DAVID LYNCH—Hand of Dreams」では、リンチが空中に「愛」と「平和」を漢字で書いている個展を案内する動画があったことを思い出す。
何故外国人が漢字を使用すると、本人がいかに大真面目であっても、コミカルに映ってしまうのか。
不思議だよね?

「来世」を抜けたら「黄昏」が待っていたよ。
ここで撮影をしようとスマホを構えた瞬間、係員が駆け寄ってきた。
「撮影できるのは『来世』までです」
作品名を言っているのは分かるけど、言葉として捉えると変だよね。(笑)
電球が床に置かれた作品で、じっくり観ると消えている電球がある。
ははーん、これは生と死だな、と単純に想像してみた。
あとから解説を読むとその通りだったようで、毎日3つずつ電球が消えるようにしているらしい。
死に向かっている状態を表しているというのは、よく分かった。
電球しか使用していないのに、SNAKEPIPEにも分かる表現だったのは、「黄昏」に至るまでの作品展示だろうね。

ここまで死を意識させられる展覧会を鑑賞したのは初めてかもしれない。
まさにメメント・モリ(死を忘れるな)のオンパレード!
ナチス・ドイツによるホロコーストが作品の根底にあるテーマだと知らなくても、濃厚な気配や深い静寂から死の世界を垣間見た気がする。
それは錯覚だと分かっているけれど、今まで経験したことのない「ぞわぞわ」した居心地の悪さは恐怖だよ。
現代アートを鑑賞して、怖いと思うことは少ないよね。(笑)
こんな作品を制作しているボルタンスキー本人のポートレートが、笑顔だと違和感あるなあ。

ボルタンスキーがフランスを代表する現代アーティスト、というのは何故なんだろう。
強烈な印象を残すことは確かだけど、好き嫌いが分かれるアートのように感じたからね。
フランス人はよくシニカルで気取り屋と聞くし、美の意識が特殊なのかもしれないと思ったことが度々ある。
SNAKEPIPEが知っているのは、マルキ・ド・サドやアルチュール・ランボーのような文学だったり、ゴダールやトリュフォーといった映画監督の作品かな。
学生時代から親しんできたのは、フランスの古典(かな?)なんだよね。
もちろん現代アーティストの作品にも触れているはずだけど、独自の文化を持つ国というイメージがある。
その中にボルタンスキーが入ると、「すんなり」受け入れることができる気がするんだよね。
SNAKEPIPEの勝手な解釈だけど、芸術の許容範囲が広いように思うから。

ROCKHURRAHの誕生日に、「死」を意識する展覧会を鑑賞するとは。(笑)
また色んな展覧会、一緒に行こうね!

時に忘れられた人々【32】アウトドア編

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【見事に山が全然似合わない野郎ども】

ROCKHURRAH WROTE:

最近、ブログ記事以外の事ばかりやってたので、実に久々の登場となるROCKHURRAHだ。

何をやってたかと言うと、ウチのブログの引っ越しで陰ながら悪戦苦闘していたのだ。
実はここ一ヶ月以上も色々な不具合が起きてて、定期的に当ブログを読んで下さる方々からも、愛想を尽かされかねない状態のままだったのだ。
不具合の原因も特定出来ないし、そこまで試行錯誤の時間もかけていられない。
一番手っ取り早いと思ったのが同じサーバー内で新しいブログを作って、引っ越しするという計画だった。
「その方が面倒」と思われる方も多いだろうが、Wordpress自体はごく簡単にインストール&移植出来るのであまり深く考えず、気軽に作ってしまったよ。

結果として新しい方で問題となった不具合は解消されたけど、あっちをやればこっちが変、というような連鎖で思ったよりは手間取ってしまった。
見た目がほとんど変わってないので実は移転した事に気付かない人も多いだろうけど、もう新しいブログに変わってしまったので、読んで下さる方はブックマークに登録して下さい。
http://rockhurrah.com/blog/
まだ内部リンクの修正とかが全然出来てないので全然違う記事や違う画像にリンクが飛んだり、ブログ運営としては致命的な点も多いのが痛い。しかし、こっそりいつの間にか修正してると思うので、どうか愛想を尽かさないでね。

相変わらず言い訳が長かったけど、今回はこれまた久々「時に忘れられた人々」シリーズを書いてみよう。なんと、このシリーズも2年くらい書いてなかったね。

ちょっと前までは雨が降っても気温がそこまで高くない日が続いて「これくらいの気候が一番いいよね」とSNAKEPIPEと2人で喜んでたのに、当たり前だが季節的にどんどん蒸し暑くなってきて、これからが個人的には最もイヤな夏となる。

先週のSNAKEPIPEの記事でも明らかなようにROCKHURRAHは絵に書いたような雨男だ。
「ハウス・ジャック・ビルト」を観に行った新宿でも、よりによって移動中だけ土砂降りの大雨。
その後のまた別の日、約束してたSCAI THE BATHHOUSEへ横尾忠則を観に行った時の事。
出かけようとドアを開けた途端に雨降り、この日は一日中ムシムシでじっとりしていたなあ。

雨降りが嫌いか?と聞かれると嫌いなのは雨自体じゃなく、傘をさして建物に入る時や乗り物に乗る時にまた畳んで、という煩わしい行為にあるんじゃないかなと思ってるよ。どこかの窓辺で雨を眺めたり雨音を聞いたりするのはむしろ好きだからね。小林麻美みたいだな。

2、3回振っただけで水滴がほとんど落ちるという超撥水の傘を知り、これはいいと買ってみたんだけど、ケチって安物を買ってしまい撥水力は全然なし。メーカーの謳い文句やレビューに完全に騙されてしまった悔しい体験をしたのは去年の事。同時に買ったSNAKEPIPEの有名な傘は文字通りの超撥水だったので一層トホホな思いで雨が降るたびに後悔してるよ。ほんの数千円の違いなのにね。

最近では格別にそういうのに興味なさそうな人でもゴアテックス素材のアウトドア・ウェアーを着てたりして雨なんかへっちゃらな人々が街中に溢れてる状態。街中でこれだからアウトドアのメッカ、山の中はそういうブランドの見本市みたいな状態だろうと想像するよ。

ROCKHURRAHも嫌いではないんだけど、機能性衣類と言えばアウトドアよりもミリタリーの方にどうしても目が行ってしまう。ただし本格的なものはどれも高いのが当たり前の世界だから、そういう熱も最近では少し醒めてきたよ。身につけるにしても、少しでも人とかぶらないマイナーなメーカーをわざわざ探してるもんな。

読んでる人にとっては脈絡のない話かも知れないけど雨→防水→アウトドアという連想が個人的に出来上がってしまっただけ。というわけで今回は夏のレジャー・シーズンに向けてアウトドア特集にしてみよう、というお粗末な前フリだったのだ。

ROCKHURRAHが好きな70年代パンクも80年代ニュー・ウェイブもアウトドアとは無縁のイメージだけど、単に外でビデオ撮影してるだけのものをいくつか挙げて、それでアウトドア特集とはかなり無理があるのは承知で進めてみよう。

不健康そうな見た目とは裏腹にアウトドア度満点?なのがこれ、ジーザス&メリーチェインの1985年の3rdシングル「You Trip Me Up」だ。
いや、単にどこかの砂浜に楽器持ち込んでるだけの映像なんだけど革ジャン、革パンと海辺の陽光、景色との不調和がなかなかだね。VOXのファントム(という五角形っぽいギター)を砂浜に挿したりして本物のヴィンテージだとしたらもったいない。

ROCKHURRAHも大昔に社員旅行でグアムに行った時、ジーザス&メリーチェイン(あるいはシスターズ・オブ・マーシー)とほぼ同じような服装でずっと通して、周りからは違和感を持たれまくったという思い出がある。
当時は自分のスタイルが絶対こうだという事に固執し続けていて、TPOに合わせて服装を変えるなど出来なかった若かりし頃。
今でもスタイルのヴァリエーションが極端に少なくて「今日はこれ風」みたいなのが全然なくて、いつでもどこでも同じような服装をしてるな。いい事なのか悪い事なのかは抜きにしてもあの頃と比べて何も進歩してないよ。

ジーザス&メリーチェインはジム・リードとウィリアム・リードを中心とした兄弟バンドで、スコットランドのグラスゴー近郊、イースト・キルブライドというニュータウンの出身。日本で言えば千葉ニュータウンや越谷レイクタウン出身みたいなもんか?
1980年代半ばにデビューしてまたたく間に人気バンドとなった4人組だが、初期には後にプライマル・スクリームで有名になるボビー・ギレスピーもメンバーだったな。
ストレイ・キャッツのスリム・ジム・ファントムが生み出したスタンディング・ドラム。
要するに立ったまま最小のドラム・セットを叩くだけというスタイルなんだが、ロカビリーでもないボビー・ギレスピーがそれを踏襲してたのが、ニュー・ウェイブのバンドとしては目新しいところ。
そして、生音で聴いたら何でもないような甘い60年代ポップス風の曲に、なぜかギターのフィードバック・ノイズを大々的にかぶせて、ルー・リードっぽく歌うという手法により一躍話題となった。
全く相反する要素(ノイズ+ポップ)によるうまい組み合わせは、デヴィッド・リンチ監督の言う「ハッピー・ヴァイオレンス」みたいなものだろうね。

このフィードバックによる甘美なポップというスタイルは当時としては斬新だったけど、それじゃ一発芸みたいなもので飽きられるに違いない。
って事でこの手のノイジーなポップは1stアルバムの数曲しかなく、残りは大体同じパターンのフィードバック・ノイズなしの甘い曲という路線で、なんかコード進行も似たり寄ったりの曲が多いな。
ROCKHURRAHは飽きたけど女性ファンを中心に、数年間は栄光を掴んでたバンドだったという印象だ。
限定盤のシングルや編集盤なども含めてレコードはかなり出してたような記憶があるけど、やっぱり最も初期の「Upside Down」や「In A Hole」「Never Understand」が一番良かったように思えるよ。

肝心のアウトドア要素については全く触れてないけど、太陽の下に出て大丈夫なのか?と思えるようなバンドなので、不問にするか。

次のアウトドア派はこれ、キッシング・ザ・ピンクの1983年の曲「Mr. Blunt 」だ。
ブラントは「鈍い」とか「なまくら」という意味らしいが・・・。
記事の最初の方に超撥水の傘について書いたけど、ケチった方じゃなくてそれより前に使ってたのが「風に強い」というニュージーランドのブラントという傘だった。
これはむしろそれなりに高級品と言えるくらいの値段だったけど、開いた形が気に入って買ってみたもの。
形も開いたり閉じたりも申し分なかったんだけど、折りたたんだ時にやたら大きくて重い、開いた時にはとても小さい(ちょっとした雨でも濡れる)というもの。折り畳み傘の「コンパクトに畳める」という重要な要素を一切無視した、ある意味すごい商品だな。
まさにこれこそブラントの名にふさわしい。

キッシング・ザ・ピンクはロンドンの王立音楽院の学生たち、その友達のホームレスなどが参加した大所帯バンドで、80年代前半に結成。全員で一軒家に共同生活をしながらバンドとしてのキャリアを築いていったという羨ましい境遇だよ。

1stシングルがいきなりジョイ・ディヴィジョンで有名なマーティン・ハネットによるプロデュース。
その後はマガジンやヒューマン・リーグ、デュラン・デュラン、オンリー・ワンズなどの名盤を手がけた事で高名なコリン・サーストン(デヴィッド・ボウイの「Heroes」のエンジニアだった)によるプロデュースという、80年代バンドとしては夢のようにラッキーな出だしを飾った、かなり恵まれたバンドだったと思える。
日本盤も出なかったし当時の日本ではあまり話題にならず、知名度がイマイチな英国バンドだったという気がするが、本国では「The Last Film」のヒットもあり、メジャーでもそこそこいけるニュー・ウェイブ・バンドだったんだろう。

他の曲のプロモーション・ビデオやTV出演の映像を見ると、パッと見は結構モード系のいかにも英国って雰囲気なんだけど、よーく見ると格別ルックスに自信がありそうなメンバーがいなさそう。
この時期のイギリスの準メジャーなバンドは「レコード会社に着させられた」ような衣装のバンドが多くて、そのパターンだったんだろう。
キッシング・ザ・ピンクは曲によって全然違った印象があって「こういうバンド」と一言では言えないところが特色か。ヴォーカルもその時によって違うような気がする。

ROCKHURRAHは当時このバンドの事を全く知らなかったけど、「Maybe This Day 」というシングルをなぜだか買ったのを覚えている。ジャジーな雰囲気の渋い曲でヴォーカルも男だか女だかわからないけど、その当時この系統のものを探してたわけではないから個人的にはイマイチの印象しかなかったよ。
しかしこの曲が一番「らしくない」曲調だったと後になってわかったのを思い出す。懲りずに入手した「The Last Film」は全然違う感じだったからね。

さて、ビデオの曲「Mr. Blunt 」は他のビデオ映像で見る彼らとは全然違っててカジュアルな私服。
どこかの牧場で演奏しながら歩いてゆくだけの映像でこれがアウトドアなのか?と聞かれれば「うーむ」と答えるしかないシロモノ。
このちょっと前に一瞬だけ流行った、キング・トリガーの「River」とかにも通じるドラム連打の曲調と、伸びやかに歌う楽しげな雰囲気が仲良しサークルっぽいね。今どきは誰も言わないと思うが「えんがちょ」なシーンもお約束だね。

お次はこれ、当ブログの「80年代世界一周 西班牙編」でも紹介したスペインの変なデュオ、Azul y Negroだ。
スペインのエレポップ、シンセ・ポップの分野では最も早くから活動してるとの事で1981年から2016年くらいまでコンスタントに作品を発表している大ベテランだ。
しかし、前にも書いた通り、ニュー・ウェイブのバンド(ユニット)とは思えない微妙な服装のヒゲおやじとラメ系が似合う長身の男という、どうにもチグハグなルックスの二人組。

今回のビデオ「Me Estoy Volviendo Loco(自動翻訳による邦題:私は夢中です)」は1982年のヒット曲だそうだが、見ての通りゴルフ場に白塗り女を連れてきて、芝の上で踊らせながら演奏するという、ありえないようなシチュエーション。
女は新体操上がりなのかリボンを使ったようなパフォーマンスしているのだが、この歌と踊りが一体何を表してるかが全く不明。このビデオがアウトドアなのか?と聞かれれば「ファー」と答えるしかないシロモノ。

そして注目なのがやっぱりヒゲおやじの眼力、一体何が嬉しいのかわからんが絶えず表情を変えてノリノリの様子。鍵盤をパシャっと叩いて指先を上げるオーバーアクションなんてピアノならともかく、シンセサイザー演奏の時にはそうそう見られないと思うけど、それを臆面もなくやってニヤニヤしてるよ。
フラメンコに闘牛といった派手なアクションが多いスペインのお国柄だから、これでいいのか。
アウトドアと言うよりは外で出会ったら厄介な怪しいおっさんと言ったところかな。

今回のROCKHURRAHの記事は珍しくメジャーなのが多いけど、そもそもあまりマイナーなバンドにはプロモーション・ビデオもない場合が多いから仕方ないね。
で、アウトドアと言えば思い出すのがこの曲、クラッシュの1982年のヒット曲「Rock The Casbah」だ。
ROCKHURRAHと同じくらいの世代(つまり80年代が青春の人々)にとって、夏に聴いて元気が出る曲の決定版だろう。働いてた喫茶店の有線でしょっちゅうリクエストしてたのが思い出だよ。

何人か音楽や服装の好みが合う友人がいて、たまり場にしてた店だったんだけど、ROCKHURRAHはマスターに誘われてバイトを始めたのだ。
マスターが生活破綻してるような人間で朝に来ない日もしょっちゅう、ROCKHURRAHが自分で店を開けてランチタイムまで一人で切り盛りしてたなあ。今、同じ事をやれと言われてもパニックになりそうだけど、若い頃は意外とそういう順応性があったんだな。

店にはもう一人、夕方からのバイト女がいて、結構ツンケンしたタイプのヤンキー上がり、しかもどうやらジューダス・プリーストとかアイアン・メイデンだとかそういうのが好きらしい。
パンクでニュー・ウェイブなROCKHURRAHとは水と油みたいなものだけど、そのうち打ち解けてしまったのも若い頃の順応力だよ。
その人のお姉さんが有線放送で働いてて、リクエスト受付だったから、矢継ぎ早に色々リクエスト電話してたもんだ。こっちは感じの良い人だったな。

友達はそういう店をたまり場にしてて結構長居するタイプだったんだけど、彼らは遊びに来てるだけでこっちは仕事中、そしていつかは友達も帰ってしまう。そういう、一人だけ取り残されたような寂しさも青春の思い出だよ。
うーむ、思い出話ばかりになって、もはや「時に忘れられた人々」もアウトドア要素もなくなってしまった気がするが、きっと気のせいだろう。

クラッシュのこの曲はドラマーのトッパー・ヒードンによるもので、ちょうど流行っていたファンカ・ラティーナとパンクとイスラム調がうまく融合した、ノリノリの名曲だと思う。
油田の中みたいな場所で演奏してるだけなのにとにかく絵になるカッコ良さ。アーミーな出で立ちのポール・シムノンに憧れたものだ。ミック・ジョーンズに至っては虫よけキャップ(顔のあたりがヴェールになってる)みたいなのをかぶったまんまで最後にやっと脱ぐという、ちょっと損な役回り。そして肝心の作曲者、トッパーがドラムじゃないというのが物悲しい。この時は薬物中毒ですでに脱退してるんだよね。

クラッシュはこういう暑そうなビデオもあるけど、「London Calling」のようなすごく寒そうな船の上のビデオもあって、全季節対応のアウトドア野郎だと言えるね(いいかげん)。

最後のアウトドアなビデオはこれ、1981年に出たバースデイ・パーティの「Nick the Stripper」だ。

1970年代後半にボーイズ・ネクスト・ドアという名前でデビューしたオーストラリアのバンドだが、全く同じメンバーでバースデイ・パーティと改名。
オーストラリアでそれなりに成功してた頃は割とポップで普通の印象があったけど、改名後は原始的なビートとヒステリックにかき鳴らした耳障りなギター、それにかぶさるニック・ケイヴの迫力ある歌声というフリー・スタイルな音楽性に開眼した。
メジャーなヒットとは無縁となったが、80年代初頭にオルタナティブな音楽のバンド達が次々に新しいスタイルを確立した時期にもてはやされて、インディーズの世界では確固たる地位を築いた重要なバンドだった。
ROCKHURRAHが書いた記事「俺たちバーニング・メン」でも同じような事書いてるな。

ビデオはサーカスのテントのようなところから外に出たバンドの面々が瓦礫か荒れ地みたいな野外パーティの中を練り歩くというもので夜のアウトドア満喫(?)の映像だ。
この頃のニック・ケイヴはまだ野生少年みたいな若々しいルックスで「10歳までフクロオオカミに育てられた」と言っても信じる人がいそうなくらい。タイトル通りに布をまきつけたパンツ一丁で、不気味な群衆の中で踊る映像は音楽ともピッタリで好みのもの。
ローランド・ハワードはタバコ吸いすぎというくらい、いつも咥えタバコの美形ギタリスト、ベースのトレイシー・ピュウはいつもテンガロン・ハットがトレードマークのナイスガイ。健康的なバンドとはとても言えないけど、この二人ともすでにこの世を去ってしまってるのが残念だよ。

バースデイ・パーティのライブを観る事はかなわなかったけど、その後のニック・ケイヴ&バッド・シーズの来日チケットは取る事が出来て、ど迫力のライブに感動したものだった。この時はブリクサ・バーゲルト(アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン)、バリー・アダムソン(元マガジン)、ミック・ハーヴェイ(元バースデイ・パーティ)、キッド・コンゴ・パワーズ(元ガン・クラブ)といった黄金のメンツで演奏も最高だったよ。

さて、海、牧場、ゴルフ場、油田、荒れ地と巡ってきたアウトドア特集だが、やる前からわかってたように通常の意味でのアウトドアな要素は皆無だったね。選んだバンドも不健康そうなのばかり。
昔は確か夏=アウトドアというイメージが定着してたけど、実際は夏の屋外と言えば熱中症や日焼け、雷雨やデング熱やマダニなどなど、危険がいっぱいという印象があるのは確かだね。
ブームと本気でやってる人との格段の差が現れるジャンルでもあるから、自然を侮らないようにね。

それではまたレヒットラオート(ヘブライ語で「さようなら」)。

ハウス・ジャック・ビルト 鑑賞

20190623 top
【映画ポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2016年に鑑賞したヴァニラ画廊での「シリアルキラー展」の時、映画の半券を提示すると割引料金でチケットを購入できます、と告知されていた。

それは「レジェンド 狂気の美学」で、1950年代にロンドンで暗躍したクレイ兄弟の伝記映画だった。
犯罪映画とタイアップして絵画展を企画しているのか、今年2019年にも同じような記事を発見した。
今回の映画はラース・フォン・トリアー監督の「ハウス・ジャック・ビルト」だという。

ラース・フォン・トリアー監督と言えば、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した「ダンサー・イン・ザ・ダーク(原題:Dancer in the Dark 2000年)」が有名だよね。 
ニンフォマニアック(原題:Nymphomaniac 2013年)」など性に関する過激な映画もあり、話題に上りやすい監督と言えるのかな。
公開される映画について調べてみると、カンヌ国際映画祭でプレミア上映され、途中で席を立つ観客が続出したという「いわくつき」の映画とのこと。
そう聞くと俄然興味が湧いてしまうのはSNAKEPIPEだけだろうか。
映画について検索すると、不思議なポーズを決めたポスター画像が何枚も出てきて、猟奇殺人の雰囲気が漂う。
これは是非とも鑑賞しなければ!(笑)

公開は6月14日とのこと。
翌日を鑑賞日に決め、新宿のバルト9に向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
なんと、この日は土砂降りの雨!
さすが自他共に認める雨男のROCKHURRAHだよね。
統計は取ってないけど、かなりの確率で雨模様の外出になっているような?
SNAKEPIPEは長靴を履いて正解だったよ。

劇場に入る際、チケットもぎりの女性から手渡された物がある。
これは映画用ポスターのポストカード。
嬉しいプレゼントだけど、何故か2枚ともトリアー監督がポーズを決めたバージョン。
体が捻じ曲げられたポーズを取るポスターは全部で7種類はあったようだけど、なんで2枚ともトリアー監督なの?
よりによって一番人気がなさそうな(失礼!)カードを手にするとは、アンラッキーだなあ。(笑)
公開2日目で、観客の入りは約8割かな。
映画館でイヤな気分になることは避けたいので、大抵の場合は2人席を予約することにしている。
今回は前も後ろも静かな方で良かった!
それでは映画の感想をまとめていこうかな。
※ネタバレしていますので、未鑑賞の方はご注意ください。

まずは映画のトレイラーを載せておこうか。

主演がマット・ディロンなんだよね。
マット・ディロンと聞いて、少し懐かしい感じがするよ。
1980年代には「アウトサイダー(原題:The Outsiders 1983年)」や「ランブルフィッシュ(原題:Rumble Fish 1983年)」で一躍脚光を浴びた俳優だよね。
SNAKEPIPEはサントラを所持している「ドラッグストア・カウボーイ(原題:Drugstore Cowboy 1989年)」の印象が強いな。
ROCKHURRAH RECORDSでは相変わらず週に1、2本の映画を鑑賞する習慣が続いているけれど、ここ最近マット・ディロンの映画を観た記憶がないんだよ。
たまたま好みの映画に出演していないだけかもしれないんだけど。
そのためSNAKEPIPEは、2000年以前のマット・ディロンの顔しか知らないんだよね。

そんなマット・ディロンが主演のジャックを演じている。 
えっ、本当にマット・ディロンなの、と思ってしまう。
確かに今年で55歳だから顔に変化があるのも当然ね。
血飛沫を顔に浴びながら、満足気に微笑む顔は、まさにシリアルキラーそのもの!
ちょっと反抗的な悪ガキのイメージから、本物の悪党になるとはさすがだよ。(笑)

ここで「ハウス・ジャック・ビルト」のあらすじを書こうかな。 

1970年代の米ワシントン州。
建築家になる夢を持つハンサムな独身の技師ジャックはあるきっかけからアートを創作するかのように殺人に没頭する・・・。
彼の5つのエピソードを通じて明かされる、 “ジャックの家”を建てるまでのシリアルキラー12年間の軌跡。(公式HPより)

最初から殺人鬼だったわけではなく、あらすじにあるように「きっかけ」があったんだよね。 
それが「1st INCIDENT」として語られる。
親切心から車の同乗を許したのに、高飛車な態度を取られたら、頭に来るのは当たり前じゃないかな。
裕福な家柄のマダムといった装いのユマ・サーマン、「キル・ビル(原題:Kill Bill 2003年)」の頃とはイメージが全く違うね。 
高圧的で、まるでジャックの殺人欲(変な言葉だけど)を煽るような発言を繰り返す。
ここで踏みとどまるのが通常の心理状態だけど、ジャックは一線を越えてしまうんだよね。
「キル・ビル」の時に習得した必殺技を駆使すれば、最悪の事態は避けられたはずだけど、そううまくいくはずはないか。(笑)

これが最初の殺人のようだけど、ジャックには元々「人を殺したい」という欲望があったんだろうね。
真っ赤なワンボックスカーは、荷物(死体)を運ぶのに適している。
冷凍ピザ用の倉庫を買い取っている。
最初の殺人まで使用された形跡がないので、「その日が来る」のを待ち望み準備していたのでは、と想像する。

車の前で画用紙を次々をめくり、投げ捨てるシーンがはさまれる。
これってボブ・ディランのパロディだよね。

以前にも別のミュージシャンが、このパターンでビデオを撮っているのを観たことあったよ。
1965年にリリースされたという、50年以上も前のアイディアが未だに影響力を持っているとは驚き!

「ハウス・ジャック・ビルト」のあらすじにも書いてあったけれど、ジャックはアートに興味があるんだよね。
劇中にゴーギャンやバウハウスの建築など何枚もの絵画や、カナダのピアニストであるグレン・グールドの演奏シーンがはさまれる。
ジャックは建築家に憧れている建築技師、という設定なんだよね。
日本とアメリカでは基準が違うのかもしれないけど、Wikipediaによる違いはこんな感じ。
・建築士は、建築物の設計および工事監理を行う職業の資格、あるいはその資格を持った者
・建築家は、一般に建築における建物の設計や工事の監理などを職業とする専門家
似ているようだけど、建築家は建物のデザインや芸術性にこだわりを持っている、ということになるのかな。
ジャックは技師として、それなりの収入を得ているようで、前述したように車を所持し、冷凍倉庫を購入している。
更に自ら家を設計し建築するために土地まで購入するんだよね。

自分のための設計をしながらも、殺人は続いていく。
映画はジャックが誰かに己の犯罪について告白する体裁を取って進行していく。
「こんなことがあった」と語り、その時の再現が映像として流れるのである。
2番目に語った殺人事件も被害者は女性だったんだけど、この時のジャックは見るからに挙動不審者なんだよね。
突然ピンポンして訪ねた男が、最初は警察官と名乗り、会話の最中で「実は保険屋なんです」と態度を変える。
こんなジャックを信用して家に招き入れた女性にも非があるとは思うけど、後から来た本物の警察官もかなりずさんな対応だったよね。
あの時に勾留していたら、ジャック逮捕につながったのにね?

ジャックは「強迫性障害」という病気なんだよね。
潔癖症のため、掃除が行き届いていないと苦しくなるらしい。
2番目の殺人の後、この病気が起こり、何度も殺人現場に戻り、血の跡が残っていないかを確認する作業を繰り返す。
松尾スズキが出演していることから鑑賞した映画「イン・ザ・プール(2003年)」でも、強迫神経症の話があったことを思い出す。
2017年9月の「映画の殿 第26号 松尾スズキ part2」で、感想を書いているね。
何度も鍵をかけたか確認するため家に戻るような症状なんだけど、犯人が何度も現場に戻り、掃除をするというのはブラック・ジョークだよ。
思わず笑っちゃったもんね。(笑)

強迫性障害だったり、感情を表情に表すことが難しいジャックだけれど、心を奪われた女性がいるんだよね。
恐らくニックネームだと思うけど、「シンプル」と呼ばれていたよ。
「殺しよりも好き」とまで語っていたジャックだけれど、シンプルに対する態度は、とても愛する女性への接し方とは思えないほど横暴だったね。
シリアルキラーが「記念品」を欲しがる、という話を何かで読んだことあったけど、この時のジャックがまさにこの状態だったよ。
ジャックに愛されてしまったシンプルを演じたのはライリー・キーオ
なんとエルビス・プレスリーの孫娘だったよ。
ランナウェイズ(原題: The Runaways2010年)」や「マッドマックス 怒りのデス・ロード(原題:Mad Max: Fury Road 2015年)」にも出演していたようだけど、あまり覚えがないなあ。

ジャックにとって人を殺すことには、どんな意味があったんだろう?
殺害後、ジャックは死体をモデルにした写真撮影を行っているんだよね。
まるで写真用のモデルが欲しくて、犯行に及んでいるかのよう。
デヴィッド・フィンチャー監督の「セブン(原題:Seven 1995年)」やテレビ・ドラマ版「ハンニバル」では、まるで殺人アートと呼びたくなるような「絵になる殺人現場」が特徴的だったよね。
ジャックもそんな「作品」を手がけたかったのかもしれない。
額に見立てた地面の枠の中に、カラスの死骸と人間の死体を並べた様子は、 アーティストを気取っているようじゃない?
恐らくこの殺人のシーンが、アメリカではカットされたのではないかと推測するよ。
どのシーンがカットされていたのか、調べたけどよく分からなかったんだよね。

ついにジャックは家を創る。
ジャックにしか手にすることがでない素材を使い、自分のためだけの家が完成する。
これがジャックが建築家として建てた作品なんだよね。
素材集めのためにシリアルキラーになっていたのかなあ。
「ハンニバル」っぽい感じだよ。
家の床にはぽっかりと穴が空いていて、声に誘われるまま穴に落ちていくジャック。

声の主はブルーノ・ガンツ演じるウェルギなる謎の人物。
映画の冒頭から、このウェルギとジャックの会話形式により展開していたんだね。
後半になってやっとウェルギが登場し、ジャックの案内人であることが分かる。
ブルーノ・ガンツはヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩(原題:Der Himmel über Berlin 1987 年)」で天使役だったんだよね。
天使から、地獄の案内人まで演じるとは!
どうやら2019年に亡くなっているようで、本作が遺作になったのかもしれないね?

非常に印象的な船のシーン。
元ネタはドラクロワの「ダンテの小船 (地獄の町を囲む湖を横切るダンテとウェルギリウス)」のようだね。
ダンテの「神曲 地獄篇第8歌」のシーンを描いているという。 
赤い頭巾のダンテと案内人であるウェルギリウスが小舟に乗り、地獄の川を下っていく。
小舟にしがみつき、這い上がろうとする死者達の姿が生々しく、恐ろしい表情を見せているところが印象的な作品だよね。
「神曲」は読んだことがないんだけど、様々な分野に影響を与えた作品のようで、永井豪の作品もあるらしいよ。
ダンテも永井豪も、どちらも読んでみたいね!(笑)

「神曲」同様、ジャックもウェルギに先導され、地獄めぐりをしていく。
60人くらい殺したかな、などと淡々と語りながら歩くジャック。
あらすじに「シリアルキラー歴12年間の軌跡」と書かれているので、割り算だと1年間に5人を殺害した計算だね。
殺しを重ねていくうちに強迫性障害が良くなっていった、というのもブラック・ジョークか?
自分にはツキがある、と信じていたジャック。
Wikipediaによると「神曲」では、ダンテが永遠の淑女ベアトリーチェに導かれ、天界へ昇天するらしい。
ジャックはどうだろう?
運をつかむことができるのだろうか。
と、未鑑賞の方のためにボカしておこう。(笑)

劇中に何度も流れたのが、デヴィッド・ボウイの「FAME」なんだよね。 
どうしてこの曲だったのかは不明だけど、強く印象に残ったよ。

「ハウス・ジャック・ビルト」という題名は、一節ごとに歌詞が長くふくらんでいくマザーグースの積み上げ歌『This is The House That Jack Built』から付けられている

この文章を読んだ時にピンと来たSNAKEPIPE。
デヴィッド・リンチの「ワイルド・アット・ハート(原題:Wild at Heart 1990年)」では、「オズの魔法使い」のオマージュが登場していたんだよね。 
「マザーグース」も「オズの魔法使い」も児童向けの書物であり、「オズの魔法使い」の作者であるライマン・フランク・ボームは、マザー・グースの韻文を散文の小説に直した短編集を刊行しているという。
そしてリンチの「ロスト・ハイウェイ(原題:Lost Highway 1997年)」 のオープニング・テーマはデヴィッド・ボウイの「I’m Deranged」だったよね!
前述したように殺人をアート作品にしてしまう先駆的作品を監督したのがデヴィッド・フィンチャー!
おお!見事に3人のデヴィッドが揃い踏み!(笑)
もしかしたらラース・フォン・トリアーは、3人のデヴィッドからインスパイアされて、「ハウス・ジャック・ビルト」を制作したのかもしれないね?

我らが鳥飼否宇先生の「痙攣的」に、伴鰤人がサインを書いたことで「殺人アート」が成立したミステリーがあったよね。
他にも「爆発的」や「逆説的」など、鳥飼先生は現代アートや音楽をミステリーと結びつけた作品を発表されているのである。
本物の死骸や死体を素材にした写真を制作していたのは、ジョエル=ピーター・ウィトキン
こちらもジャックの先駆者ということになるのかな。
「ハウス・ジャック・ビルト」は、こういう傾向の作品が好みの方に、お勧めの映画ってことだね!(笑)