ROCKHURRAH紋章学 スイーツ・パッケージ編

【スイーツ特集なのでこの曲をチョイスしてみたよ】

SNAKEPIPE WROTE:

先日、東京駅に立ち寄る機会があった。
せっかくなので、お菓子を買おうとネットで検索。
甘い物には目がない女子とは程遠いSNAKEPIPEは、そうした情報に疎いのである。
東京駅は広いので、あらかじめ場所を知っておかないと迷う危険があるからね!
このブログで何度も書いているけれど、SNAKEPIPEは方向音痴だから。(笑)
適当な菓子を選び、場所を特定する。
目印はユニクロで南通路沿いとのことだけど?
ユニクロはどこだ、と歩き始めた時「PRESS BUTTER SAND」の看板を発見!
ほとんど店の目の前にいたのに、それでも迷いそうになるとは。
一緒にいたROCKHURRAHにも呆れられてしまったよ。(笑)
無事に購入できて良かった。

さて、この「PRESS BUTTER SAND」、味はもちろん美味しかったんだけど、印象的だったのがパッケージなんだよね。
グレーの地色に蛍光オレンジをアクセントに使っている。
お菓子のイメージではないパッケージだよね?
パッケージ側面には、バターサンドの「縦 横 高」の数値が記載されていて、「構造解析に基づく製法」とも書かれている。
建築用語みたいじゃない?

「昔よく聴いてたレコードを思い出す」
ROCKHURRAHがレコード・ジャケットを例に挙げ、パッケージを称賛する。
どんなレコードを連想したのか教えてもらったのが、右の画像だよ。
確かにグレーのシンプルさや、オレンジ色を印象的に使用したレコード・ジャケットに近い雰囲気があるよね。
「PRESS BUTTER SAND」のパッケージは誰がデザインしたのかと調べてみると、BAKE Inc.のアートディレクター・柿﨑弓子という女性の手によるものだという。
ROCKHURRAHが挙げた例とはちょっと違うけど、テーマをインダストリアルにした、というインタビュー記事を読んで納得しちゃうね。

以前購入したことがある資生堂パーラーのお菓子も、パッケージ・デザインが美しく見惚れたものだ。
紙袋も鮮やかなブルーを使用した、ツルツルの上質な紙だったっけ。
購入する側も、贈答品として受け取る側も両方が嬉しくなるデザインで、秀逸だよね。
「PRESS BUTTER SAND」は、こうした女子向けとは違った意味で、斬新なデザインで気に入ったよ!
日本にもこんなデザインが流通しているのか、と驚いてしまった。
世界にはどんなお菓子のパッケージ・デザインがあるんだろう。
調べてみよう!

最初はこちら。
ロシアのモスクワで活動しているグラフィック・デザイナー、Anna Pavlovaの作品ね。
読み方はアンナ・パヴロワで良いと思うんだけど、有名なバレリーナと同名のため、詳細を調べるのが難しかったよ。(笑)
サーカスをイメージしたお菓子のパッケージとのことだけど、箱を開ける前からワクワクしちゃうよね。
箱を目当てに買ってしまいそうだもん。

続いてもロシアのデザイナーで、Victoria Axという名前だという。
ヴィクトリアは分かるけど、Axはなんと読むんだろうね?
これは口と舌を描いた「タンボング」と呼ばれるキャンディーなんだって。
ロシア構成主義を知り、ロシアがグラフィック・デザインに強いことは知っていたけれど、こんなにポップな商品が棚に並んでいるスーパーマーケットを想像することはなかったよ。

ロシアのデザインを続けてみよう。
パッケージ・デザインを手がけたLOCOは、世界的に優れたパッケージ・デザインを表彰するペントアワードで、2018年に金賞を受賞しているという。
そんなLOCOが「Petit Plaisir」という手作りチョコレートのブランディングからパッケージ・デザインをした作品がこちら。
まるで小舟のように見える形がかわいいよね。
色とイラストによって味が違うので、見ているだけで楽しくなるよ。
ロシアのデザイン、もっと知りたくなるね!

次はオーストラリアね。
CARPE KOKO! は高級チョコレートのブランドで、好きなチョコを選び、個数を決め、メッセージ・カードを添えてプレゼント用にラッピングしてくれるサービスがあるという。
色とりどりの美しいチョコレートだけでも素敵なのに、重箱のようなボックスと和風テイストの柄が、より一層ゴージャスさをアップしているよね!
3段になると、まるで小引き出しみたいな使い方もできそう。
自分へのご褒美で欲しくなってしまう逸品だよ!
ちなみにお値段は1段タイプで約2,900円程。
3段になると約8,700円だって。
チョコの食べ過ぎに注意だね。(笑)

最後はこちら!
メキシコのサン・ペドロにあるXOCLADはチョコレートやクッキーなどを販売しているショップだという。
中で飲食もできるようだけど、クッキー4枚が日本円で約1,360円なんだよね。
これはかなりお高め!
ジバンシィのマークが連なったような、迷路デザインは目を引いてオシャレだけど、一体どんな客層がターゲットなんだろうね?
ビンクとペパーミントグリーンも高級感があって良い感じ。
SNAKEPIPEが持っているメキシコのイメージが、良い意味で裏切られたね!(笑)

お菓子というのは、人が笑顔になる物だから、箱を開ける前から目で楽しませる工夫がされているよね。
他にも秀逸な作品があるので、第2回も書きたいよ。
次回もお楽しみに!

映画の殿 第44号 Netflixドラマ編 part2

【5つのドラマを同時に表紙にしてみたよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

2020年12月最後の記事「映画の殿 第41号 Netflixドラマ編」では、Netflixで鑑賞したドラマについて書いていたね。
あれからもずっとドラマを観続けているROCKHURRAH RECORDSの2人!
特に韓国モノには今まで縁がなかったため、面白そうなドラマを手当たり次第鑑賞している今日このごろ。
もちろんNetflix限定だけど、たくさんあるんだよね!
今年に入ってから鑑賞した韓国ドラマを、備忘録を兼ねてまとめていこう。
前述したように、2020年から観始めている韓流初心者なので「今頃観ているの?」と呆れないでね。(笑)

マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」で良い味出してた3兄弟の長男、パク・ホサン目当てで観始めたのが「刑務所のルールブック」。

2017年11月から2018年1月まで韓国で放映されていたドラマだというので、今から3年程前になるんだね。
メジャーリーグ行きが決定していた野球選手が、妹を襲おうとした男を過剰防衛で殺してしまう。
スター選手が刑務所でどんな生活を送ったのか、という内容なんだよね。
主役であるキム・ジェヒョクが、野球以外のことができないバカ、という設定が面白い。(笑)
刑務所が舞台なので、出てくるのは全員、何かしらの罪を犯している。
それぞれの人生ドラマがあるんだよね。
年齢も、犯した罪の種類も、刑期も違う男達が寝食を共にしていく。
そんな中、特に注目したのがハニャン!
ヘロリンとも呼ばれているので、お察しの通り麻薬中毒者なんだけど、出てくると笑いを誘うキャラクターなんだよね。
「刑務所のルールブック」はもう一度観たいと思うほど、大好きなドラマだよ!

タイトルの曲もカッコ良かったね。

これは本当にハングル語のラップなの?
声も良いし、とても気に入った曲だよ。

続いては友人Mからの強い勧めで観始めた「太陽を抱く月」。

2013年のドラマだというので、「今頃観たの?」と言われてしまうかもしれないね。(笑)
朝鮮王朝を舞台にした時代劇なので、抵抗がなかったわけではないけれど、観始めるとどんどん引き込まれていく。 
王宮で繰り広げられる覇権争いに巻き込まれた、不遇の少女と王の物語なんだよね。
子役の役者達の演技力に驚いてしまう。
朝鮮王朝の衣装もきらびやかで美しいんだよね!

ストーリーも面白かったけれど、SNAKEPIPEが注目したのは、世子時代から王に仕え世話をしているヒョンソンという内宮。
ずっと王を見守っている、優しい人物なんだよね。
かなりひょうきん者で、表情や動きが面白い!
琴を上手に奏でる特技もあったりして、大好きなキャラクターだよ。
この役者の他の作品も観てみたいな!

次もまた友人Mから「絶対観て!」と強く勧められた「SKYキャッスル〜上流階級の妻たち〜」。
「上流階級の話なんて、ウチではあまり興味ないんじゃない?」とROCKHURRAHから言われたけれど、一応観てみようということになった。
確かにROCKHURRAH RECORDSは上流階級とは無縁だからね。(笑)

2018年11月から2019年2月に韓国で放映され、社会現象を巻き起こすまで人気だったドラマだという。
ちなみにタイトルにある「SKY」はソウル大学、高麗大学、延世大学という韓国3大難関大学の頭文字とのこと。
そうした難関大学に入学させるために奮闘する親達の姿を描いているんだよね。
「そこまでやる?」と驚くほど徹底したお受験戦争は、「映画の殿 第41号 Netflixドラマ編」で触れた「ミセン -未生-」での就職難の前哨戦といったところか。
一流大学に入っても良い就職ができない、とされる韓国では、お受験で勝つことが第一歩になるだろうからね。
高学歴なだけで良いのか、という問いかけがドラマの主旨だったように感じたよ。
「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」で、地元のおっさん達のたまり場だった「ジョン匕の店」のママが、今回は元ヤンキーで上流階級のセレブになっていたところに大注目してしまった。(笑)

次は「梨泰院クラス」で主役だったパク・ソジュンの「花郎」を観る。 
最初に観た時の役名で覚えてしまっているため、いつまでたってもパク・セロイと呼んでしまうのは、SNAKEPIPEだけ?(笑) 

2016年12月から2017年2月まで放映されていたドラマだという。
1500年前の新羅時代を舞台に活躍した、「花郎」と呼ばれる家柄・容姿・文武共に秀でたエリート男子たちの熱い情熱と愛、眩しい成長を描く本格青春時代劇、とあらすじに書いてあるよ。
どうやら韓国のアイドル・グループが「花郎」のメンバーにいたようで、その辺りも人気の理由だったみたいだね。
「刑務所のルールブック」のハニャンが悪役で出ていたよ!
2人の男性から想いを寄せられるアロが、あまりにもヒロインらしくなくて新鮮だったね。 
パク・ソジュンがパク・セロイの髪型から長髪になっていたのもびっくりだったよ!
あっ、SNAKEPIPEが観た順番が制作順じゃないんだもんね。(笑)

「梨泰院クラス」で憎々しい演技を見せたチャン・デヒ会長が、王様の付き人として登場しているんだよね!
会長は、またもやパク・セロイと共演してたってことか。
今回の会長は、とてもひょうきんな役どころで笑わせてもらったよ。(笑)
画像は、24歳だと言い張っているシーン。
書くのを忘れていたけれど、最初に書いた「刑務所のルールブック」にも、弁護士役で登場していた会長。
韓国ドラマを続けて観ていると、俳優がかぶることが多いね。

「花郎」で好きだった音楽はこれ!
尺八みたいな音色がダンサブルになっていて良い感じだよ。

最後に紹介するのは、面白いからこれも観て、とまたもや友人Mから強力に勧められた「椿の花咲く頃」だよ。 
ジャンルについて「ロマンチック・ラブ・サスペンス・コメディ・ドラマ」とWikipediaに書いてあるんだけど、確かにそうなんだよね。(笑)

予告だけ観ていると、一体どこに「サスペンス」要素があるのかわからないけれど、あるんだよね〜、これが!
「ミセン -未生-」でドイツ語が得意なチャン・ベッキ役だったカン・ハヌルがヨンシクという名の警察官として登場する。
オンサンという田舎町を舞台に、シングルマザーのドンベクにヨンシクが一途な思いを寄せるラブストーリーと同時並行して、6年前の未解決事件が描かれるんだよね。
ヨンシクのバカっぷりと忍び寄る不穏な空気が交錯する、まさにラブとサスペンスが同居したドラマ!(笑)
ドンベク役は「ドアロック(原題:도어락 2018年)」で主役を務めたコン・ヒョジン。
「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」の3兄弟のお母さんがヨンシクのお母さんとして出ていて嬉しくなる。
前から知ってる人に再会した気分だもんね!

ストーリーも面白いけれど、一番気になったのは、オンサンに昔から住んでいるおばちゃんたち。 
みんなそれぞれ商売をしている女性たちで、家族ぐるみの付き合いをしている仲良し。
この女性たちが良い味出してるんだよね!
友人Mいわく、上下を柄物を着ている画像左のおばちゃんは、いかにも韓国の市場にいるタイプのおばちゃんだそうで。
リアリティあるらしいよ。(笑) 

今年のゴールデン・ウィークも昨年に続いて、引きこもりの休日になってしまうね。
またドラマの続きを観よう!(笑) 

SNAKEPIPE MUSEUM #60 Nicolas Bruno

20210425 11
【この作品を観て寺山修司の映画を連想してしまったSNAKEPIPE】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはNicolas Brunoを紹介しよう。
読み方はニコラス・ブルーノで良いはずだよ。
一枚の写真を観た瞬間から「好き!」と感じたんだよね。(笑)
ニコラス・ブルーノの経歴を調べてみよう。

1993 ニューヨーク州ノースポートに生まれる
2011〜 Instagramに写真の投稿を始める
2015 ニューヨーク州立大学パーチェス校において写真のBFAを取得

1993年生まれということは、現在28歳という若い写真家だね。
現在は広告写真家として雑誌で活躍しているという。
本人のサイトにも、ほとんど情報がないので、分かったのはこれくらいなんだよね。
作品の成り立ちについての情報はインタビュー記事などで確認できたので、作品と共に紹介していこう。

ニコラス・ブルーノの作品の特徴を一言で表すと「恐怖」だろうか。
安眠していたはずのベッドが、何者かに引きずられ川に沈んでいくシーン。
パニックになりながら、少しでも地上に向かい這い上がろうとする男。
襲われている男こそ、ニコラス・ブルーノ本人なんだよね。
15歳の頃から連日のように金縛りを経験し、不眠症になったというブルーノ。
そのうち「うつ病」になってしまったという。 
浅い眠りの間に見た夢をノートに記録し、それを写真にした作品なんだって。

作品作りが自らの治療になったと語るブルーノだけど、こんな夢を毎日見てたら怖いよね?
感じている恐怖を視覚化して認識し、相手にも伝えることで、恐怖に打ち勝つことができたということなのかな。
ブルーノにとっての悪夢が、作品になると魅力的に映るのは皮肉だけどね。
男女が椅子にくくりつけられ、下から伸びる白い腕がロープを掴み引っ張っている。
上の作品と同じように謎の誰かによって、水に沈んでいく恐怖だよね。
それにしても、この水たまりから腕だけ出す撮影はどうやったんだろうね?

縛られて的にされているブルーノ。
周りには、「かかし」が矢で射られ、転がっている。
自分も「かかし」と同じような目に遭うんだろうか。
頭から布をかぶせらているので、相手がどこを狙っているのか見えない。
矢を構え、弓の弦がきしむ音が聞こえてくる。
自分の鼓動も大きく聞こえてくるだろうね。
とても怖い夢で、目覚めた時には「生きている」と安堵しそう。

逃げる夢も恐怖だよね。
何者かに捉えられ、椅子に縛り付けられた状態。
またもや頭には布がかぶせられている。
追ってくる男2人に拉致されて、隙を見て逃走したというところか。
前が見えず、両腕が自由にならない状態が、金縛りを表しているよね。
ブルーノの作品は、モデルや小道具の使い方はもちろんのこと、構図の見事さや色合いなどがパーフェクト!
風変わりなセルフ・ポートレートだよね。

孤独の恐怖もあるよね。
気付いたら自分1人だけになっていた、という悪夢。
周りにあるのは骸骨?
近い将来、自分も同じ状態になるんだと見せつけられたら、 その時を待つしかない。
あがいても別の選択肢はない、と諦念する。
ブルーノは、子供時代に何かあったのかなと想像してしまうね。
小道具を多く使っていないのに、効果的な作品だよね。

男が指示を出す。
3人のうちの誰かが、この縄にかからなければならない。
どんな方法でも良いから、1人決めるように。
こうしたシチュエーションでは、「何故」や「どうして」といった疑問は省かれるのが常だ。
ブルーノは3人のうちの1人になっているのか、単なる傍観者か。
この作品も4人のモデルと縄以外は、見事に朽ちた壁以外ないのにもかかわらず、物語が完成しているところが素晴らしいよ!

ニコラス・ブルーノの最新作は「ソムニアタロット」というシリーズ。
タロットカード78枚の実写版を作成する、というもの。
小道具などの準備も大変そうだけど、面白い企画だよね。
1年間で完成させたというから、頑張ったね!
画像は「吊るされた男」だね。
ブルーノ自身が逆さ吊りになったらしいよ!
めまいが起きないか心配だった、なんてインタビューに答えてる。
根性あるなあ、ブルーノ!(笑)

こちらは「死神」。
軍旗を掲げ、白い馬にまたがる死神は、疫病をもたらす存在としてカードに描かれているらしい。
ブルーノの作品では、邪悪というよりは静寂を感じるね。
一回の撮影で3枚を目標にして完成を目指していた、と記事にあったよ。
小道具や衣装などを作り、天候に左右されながらの作品作りというと、まるで映画の撮影みたいだよね。
そう考えると、布の使い方がターセム・シン監督作品に近い雰囲気に見えてきたよ!

こんな作品が78枚展示されていたら、圧巻だよね!
どこかの美術館で企画して欲しいよ。
ニコラス・ブルーノはタロットの次に、どんなシリーズを展開するのか。
これからも注目の写真家だね! 

マーク・マンダースの不在 鑑賞

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【いつも同じ構図でスミマセン!】

SNAKEPIPE WROTE:

2019年5月に鑑賞した「百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして」 で、恐らく「はじめまして」だったオランダ人アーティスト、マーク・マンダースの作品は、今でも強く印象に残っている。

かなり犯罪めいた雰囲気で、ドラマ「ハンニバル」の殺人現場を思い出してしまう。

そんな感想を書くほど、怖い作品だったんだよね!
東京都現代美術館でマーク・マンダースの個展が開催されることを知り、ワクワクした。 
タイトルは「マーク・マンダースの不在」だって。
その意味について解説が載っているので、転用させていただこう。 

架空の芸術家として名付けた、「マーク・マンダース」という人物の自画像を「建物」の枠組みを用いて構築するというもの。
その建物の部屋に置くための彫刻やオブジェを次々と生み出しインスタレーションとして展開することで、作品の配置全体によって人の像を構築するという、きわめて大きな、そしてユニークな枠組みをもつ世界を展開しています。
タイトルにある「不在(Absence)」は、インスタレーションに見られる時間が凍結したような感覚や静寂、既に立ち去った人の痕跡、作家本人と架空の芸術家との間で明滅する主体など、マンダース作品全体の鍵語として複数の意味を担うものですが、それはまたこの建物が作家の不在においても作品として自律的に存在し続けるものの謂いでもあるでしょう。
(展覧会サイトより抜粋)

長文になってしまったけれど、マーク・マンダースというアーティストを知る手がかりになるんじゃないかな?
SNAKEPIPEが架空の美術館に展示するための作品を集めるという企画である、当ブログの「SNAKEPIPE MUSEUM」に近い発想といえるのかも。
マーク・マンダースについてもう少し調べてみよう。 

1968 オランダ生まれ
1988〜92 アーネムのHogeschool voor de Kunsten(アーネム市芸術大学)で芸術を学ぶ。
最初にグラフィック・デザイン、次に作家を目指したという。
自身のスタジオを始める
1992 アート&パブリックスペースのカテゴリーにおいてDutch Prix de Romeの2等賞を受賞
1998 サンパウロ・ビエンナーレに参加
2002 ドクメンタ11に参加
2010 Dr.A.H.ハイネケン芸術賞を受賞
2013 ヴェネツィア・ビエンナーレに参加

1968年生まれなので、現在52歳。
1986年から「建物としての自画像」というコンセプトで、彫刻やオブジェを制作しているというので、かれこれ35年間になるんだね。
80年代を経験した人ということで、同志と呼ばせてもらおう。(笑)
世界各地で個展を開催し、現在はベルギーを活動拠点にしているという。
マンダースの個展、とても楽しみだよ!

久しぶりに晴れた風の強い日、長年来の友人Mと待ち合わせる。
気温も低く、冬に逆戻りしたような寒さに驚いてしまう。
初夏を思わせる陽気の3月を経験した後だから、尚更だよ。
友人Mはあまりの寒さに3回、着替えて用心したらしい。
SNAKEPIPEも友人Mも寒がりなんだよね。(笑)
現代美術館に到着すると、入り口に観慣れない彫刻を発見!
「これ、マンマンのだよね?」
友人Mは、いつの間にかマンダースのことを「マンマン」と呼んでいるよ。(笑)
「2つの動かない頭部」というブロンズ彫刻は、表と裏で顔が違っていた。
明るい日差しを浴び、木場公園の新緑を背景にした彫刻は、とても良かったよ!

撮影を終えて、入場する。
この日は行列もなく、すんなりチケットを購入。
空いてて良かったよ!
マンダース展は、一部作品の撮影が可能とのこと。
どんな作品が待っているのかな?

マンダースの代表作とされる2010-11年の作品、「マインド・スタディ」。
遠景で観ると分かるように、ロープを張った微妙なバランスの作品なんだよね。
両腕と片足がもがれ、残った1本の足を思い切り突っ張らせて、ようやく立つことができそうだよ。
人物のアップも載せてみよう。
顔立ちは穏やかというより無表情。
恐らくマンダースは子供時代、何かしらの適応障害だったんじゃないか、と予想する。
周りに馴染めず、読書や絵を描くなど一人の時間を多く過ごしていたように思える。
孤独感や精神的に追い詰められた様子を、この作品から感じたSNAKEPIPEだよ。

2014-18年の作品「黄色と青のコンポジション」。
今回展示されていた作品に多く観られたのが、この黄色い板(?)が左目から頬に埋め込まれているもの。
何かの抑圧を意味しているのかな、と思ったのは作品が「自画像」だと知ってからだよ。
作家本人を表しているのでなければ、狂気の犯罪者になってしまうからね。

1992-93年作の「狐/鼠/ベルト」は、床に置かれた作品だった。
動物がこの状態でいるということは、恐らく死んでしまった状態だと思うけれど、とてもかわいらしかったんだよね。
どうして鼠がベルトで固定されているのか?
鼠がマンダースで、なんて想像は陳腐と言われてしまうかな。(笑)

東京都現代美術館の「ただいま/はじめまして」の展示も、薄いビニールで仕切られた空間に、ポツンと作品が展示されていたんだよね。
今回も作品ごとにビニールの仕切りがあり、次のスペースに行くまで、 どんな作品が待っているのか分からないようになっている。
ビニールを抜けて目に飛び込んできたのが、この4体の彫刻だった。
観た瞬間に「うわっ」と声を出してしまうほどの大きさと迫力!
巨大な仏像が目の前にあるような感覚だよ。
そしてこの彫刻も左目に黄色い板が埋め込まれているんだよね。

2019年に鑑賞して怖かった作品「椅子の上の乾いた像」。
東京都現代美術館が所蔵している作品なので、当然ながら東京都が購入した、ということになるんだろうね?
現在東京都民のROCKHURRAH RECORDSなので、アートに関することに税金使ってくれるなら喜んで払いますとも!と両手を挙げて賛成するよ。(笑)
そしてやっぱりこの作品は、犯罪っぽく見えたんだよね。

まるで「ブレードランナー2049」に出てきたような巨大な頭部の彫刻作品。
タイトルは「乾いた土の頭部」で、2015-16年の作品だよ。
この作品も大きさがあるので、インパクトが強いよ。
SNAKEPIPE MUSEUMに展示して、ブレード・ランナーごっこしようかな。(笑)
この作品が中庭にあったら嬉しいだろうな。
早速価格交渉してみよう!(うそ)

「wrapped in plastic」な状態の作品「黄色い鉛筆のある土の像」を観て、真っ先に頭に浮かんだのはアメリカのTVドラマ「ツイン・ピークス」のローラ・パーマー!
ビニールからはみ出たブロンドヘアは、絶対ローラだよ。(笑)
きっとマンダースも観て、ファンだったに違いないと勝手に解釈する。
そしてツイン・ピークスの迷宮のような謎に、SNAKEPIPEや友人Mと同じように喜んだだろう、と想像する。
同志、と書いたのはそんなこともあったからなんだよね!

この作品を観て「欲しい!」と2人で声を出してしまう。 
「黄色い縦のコンポジション」は、木の間に切断された頭部がはさまっている。
不気味さと美しさが混在している作品なんだよね。
「こんなブックスタンドがあったら良いのに」
友人Mがいう。
確かに、本棚にこの作品があったら素敵だろうね!
本を探す度に、ギョッとしそうだけど。(笑)

大量のドローイングは非常に気になった作品群だよ。
頭に浮かんだヴィジョンを即興で描いた、という雰囲気の作品に見えたけど?
このエリアも「かなり犯罪めいた」タッチで怖いんだよね!
「ヴァニラ画廊の『シリアルキラー展』に展示されてもおかしくないよ」
2016年に友人Mと鑑賞した、本物の(?)シリアルキラー達が描いた作品が展示されていた企画を思い出したんだよね。
マンダースも内に異常性や残虐性を秘めているんだろうか。
ドローイング群は撮影できなかったので、この作品はSNAKEPIPEの撮影じゃないのが残念!

「調査のための居住」(だったと思う)も、色鉛筆やカセットテープが床に直置きされていた、撮影禁止の作品だった。
カセットテープというところが、やっぱり同志!(笑)
TDKのカセットを見て嬉しくなってしまう。
「the cureのPornographyって書いてあるよ!」
友人Mがすかさずカセットテープを確認する。
1982年に発表されたザ・キュアーの「ポルノグラフィ」を、マンダースも聴いてたんだね!
マンダースが同時代に、似た傾向の音楽を聴き、恐らく同じように感じていただろうと思うと、より一層親近感が湧いてくる。
素晴らしい展覧会なので、ROCKHURRAHと一緒にもう一度鑑賞しよう!(笑)