時に忘れられた人々【03】リヴァプール御三家

【最近話題にもならない御三家モーフィング、ROCKHURRAH制作】

ROCKHURRAH WROTE:

今回書こうとしているあまり旬じゃない人はズバリ、リヴァプール御三家の事だ。とは言ってもこれは誰でも「ああ、あの三人ね」と知ってるようなもんでもなく、リヴァプール地方のニュー・ウェイブを多少かじった事があるような人にしか通用しない御三家だと言える。

あの世界一有名なバンドを例に出すまでもなくマージービートなどという言葉があるくらいだから、リヴァプールが世界的に誇れる音楽の産地なのは音楽に疎いおやっさんでも小娘でも、何となく想像は出来るだろう。
この地は70年代以降も良質のポップ・ミュージックを生み出してきた。特に盛んだったのは70年代半ばに登場した大所帯バンド、デフ・スクール以降、俗に言う「リヴァプール・コネクション」とか「リヴァプール・ファミリー・ツリー」と呼ばれた時代・・・ん?わかりにくいかな?単純に言うなら「80年代リヴァプール」の時代だと個人的には思える。

ROCKHURRAH RECORDSのオンライン・ショップでもリヴァプール物は有名無名に関わらず色々扱ってるが、このブログでデフ・スクールやビッグ・イン・ジャパンといったバンドについて説明してると長くなり過ぎて御三家が書けなくなってしまうので残念ながら省略させて頂く。後のパンク、ニュー・ウェイブの時代に活躍した人々が多数在籍していたのが上記2つのバンドで、80年代に大活躍したプロデューサー、クライブ・ランガーやイアン・ブロウディ(キングバード)もこれらの出身。この辺が80年代リヴァプールのルーツとされる。

さて、ようやく御三家だ。その三人とはイアン・マカラック、ピート・ワイリー、ジュリアン・コープの事だ。三人が1977年にクルーシャル・スリーなるバンドを始めてすぐにやめてしまった事は割とどこにでも見てきたように書かれている。が、これは伝説的なバンドでも何でもなく、単に勢いで始めたけど、あまりウマが合わなかったから続かなかった学生バンドみたいなもんだろうと推測出来る。というわけで御三家とは言っても三人は全然別々の活動をしてゆく。

イアン・マカラックはその後のエコー&ザ・バニーメンを率いる英国一のタラコくちびるの持ち主。イアン・マッカロクと表記するのが正しいようで最近はこの呼び方になってるみたいだがROCKHURRAHは80年代通りにマカラックと呼ぶことにする。
この三人が別れても独自の道として選んだのはネオ・サイケと呼ばれるような音楽の範疇になる。
アメリカのサイケデリックとは少しニュアンスも違うんだが、簡単に言えばヴェルベット・アンダーグラウンド、ドアーズあたりから影響を受けた80年代初頭の英国を象徴するような音楽だ。どちらかと言うと暗くて内省的、生真面目な音楽が多い分野だから普通のヒットチャートではあまり受けないタイプの音楽だと言える。
その中でもエコー&ザ・バニーメンは頑張って音楽雑誌の表紙にもよく登場、ネオ・サイケの中ではかなり有名なバンドへと成長してゆく。御三家の中では日本での知名度も最も高い。

彼らの魅力はもちろんバンドとしての完成度の高さ、曲の良さもあったが、やっぱり何と言ってもイアン・マカラックのヴォーカリストとしての声の通りの良さにあったんじゃなかろうか。ものすごく特徴的なわけでもないのに彼の声はどこで聴いてもすぐにわかってしまう。まるで雛鳥みたいなツンツンの頭に古着コート、あるいは迷彩服といったスタイルで唇を除けば少女漫画に出てきそうなか細い少年っぽい風貌のイアンくんなんだが、これがソリッドで力強いエコバニの演奏に乗って歌えば天下無敵というのが80年代初頭のネオ・サイケの代表的なもの。
80年1st「クロコダイルズ」から84年4th「オーシャン・レイン」くらいまでが全盛期だったけど、似たようなもどきバンドが大量に現れ、このくらいからネオ・サイケは質も低下して面白みがないものとなってしまった。先駆者であった彼らも一緒に失速してしまい、ドラマーの事故死などもあり、エコー&ザ・バニーメンはいつの間にか消えてしまったとさ。90年代後半に復活したけどその後はどうなんだろう?ROCKHURRAHもサイケからサイコに変わってしまったので消息はよくわからない。同じような起点から始まったU2とかがより大げさなロック・バンドに変貌して面白くなくなったのと違い、彼らはいつまでも80年代ニュー・ウェイブ、80年代リヴァプールを感じさせていて欲しいもんだ。

ジュリアン・コープはこの三人の中では最年長にも関わらず、自由奔放な変人というイメージが強く、個性という点では際立っていた。彼がクルーシャル・スリーの後、いくつかのバンドを経て始めたのがティアドロップ・エクスプローズだ。
エコー&ザ・バニーメンを正統派とするならこのバンドは既成の枠に入らない変格派とも言えるネオ・サイケを持ち味にしていた。何だかニュー・ウェイブには見えないヒゲオヤジや海兵隊みたいなのがメンバーにいるしトランペットやキーボードが活躍する音楽も曲によって随分印象が違っているし、声はこもっているし、マジメなのかふざけてるのかよくわからん。極端に変というわけじゃなくて総合的にちょっと歪んでいる独特の世界が魅力だった。例えて言うなら80年代のシド・バレットというような役柄なのかね。

ティアドロップ・エクスプローズは素晴らしく良い曲も残してはいるんだがシングルで選んだ曲がよりによってこんな単調な曲か、という不可解な傾向もあり、日本での知名度はイマイチ、ジュリアン・コープの個性が完全に活かし切れてない部分も目立つバンドだった。
そんな彼が84年あたりからはソロ活動となり、本当にやりたい事を自由気儘にやった世界が素晴らしい。前述のイアン・マカラックよりもさらに80年代少女漫画に出てきそうなルックスは申し分なかったんだが、そういうカッコいい部分を敢えて売り物にせずに作った2ndアルバム「Fried」では、何と裸に亀の甲羅を背負った奇妙なジャケット。ジュリアン・コープの奇妙な個性を最も端的に表した写真かも知れない。

しかしこの亀人間の後に聖なるロックスターに鮮やかに転身して、ファンとしてはそっちの方が仰天したもんだ。亀でもロックスターになれるのか?この後のコープの活動はあまりよく知らないんだが、なぜか古墳の研究をしたり日本のロックについての本を書いたり、やっぱり興味の方向性もちょっと変。

ピート・ワイリーはジュリアン・コープの変な部分とは少し違っているが、これもやはり変人の部類に入るのは間違いない。
コープ同様にいくつかのバンドを経てたどり着いたのがWah!というバンドなんだが、Wah! Heat、 Shambeko Say Wah!、 J.F.Wah! 、Mighty Wah! などとレコード出すたびに出世魚並みに名前を変えてゆく。そしてネオ・サイケからブラック・ミュージック、果てはアフリカン指向というあまり結びつかない音楽へ傾倒していったり、初期と後期ではまるで違う事をやっている。
何やらよくわからないのだが、強い熱いメッセージがあるのは確かなようで三人の中では最も理解するのが厄介な人だ。
音楽が難解というわけではないんだがどこを弾いてるのかよくわからない抽象的とも言えるギター・プレイも少し不可解で、三人の中では日本での知名度も一番低いというのもうなずける。少しロッカー風な見た目でマカラックやコープのように女性ファンがつきそうな部分はあまりないね。

初期はカッコいい曲よりも地味な曲が目立っていたが82年くらいからいわゆるバラード的な大作名曲指向になって一気にヒットチャートを賑わせる・・・というわけでもなく、やはり不人気のまんま(日本での話)だった。名曲を作る才能は素晴らしく、ひいき目に見ればスタイル・カウンシルあたりの線で受けたかも知れないのに、やはり妙な改名マニア、ややわかりにくいメッセージゆえか。

数多くのバンドが過去の栄光よ再び、というような再結成をしている。この三人が過去のいきさつは水に流して手を取り合い、世に出る事がなかった幻のバンド、クルーシャル・スリーとして再結成してくれれば・・・うーん、今でもまだ追いかけて熱狂してくれるファンもいるのかな?

これらの文章とは全然関係ないがとりあえずROCKHURRAH一味はゴールデン・ウィークの楽しみ、REZILLOS初来日公演(ROBINが共演)に行ってきます。詳しいレポートはまたSNAKEPIPEが書いてくれるだろう。
ではまたsee you next week!

ひそやかに咲く櫻こそ美学かな

【今年の桜はこれ!「田園に死す」風にアレンジしたSNAKEPIPEの一枚】

SNAKEPIPE WROTE:

今年もお花見シーズン到来である。
毎年定着している行事であるが今年はどこに行こうか悩んでしまう。
花見といえば、とすぐに連想できるような賑やかな場所はできるだけ遠慮したい。
できれば静かに鑑賞したいと思っているからである。

結局思い出したのは、去年散々歩いたある場所。
名所でもなければ、桜並木があるわけでもない。
ほんの数本の桜がひっそり咲いているだけ。
恐らく近所の人しか知らないような穴場中の穴場である。
そこをわざわざ目指して出かける人はいるまいて。(笑)

そこへ弁当持参で行ってみた。
思っていたよりは桜鑑賞の人がちらほらいたけれど、通りすがりに余りの見事さに歩みを止めた程度の人がほとんどで、弁当まで用意してる人はさすがにいない。
静かに桜を鑑賞し、おいしくお弁当を頂いた。
うーん、イイ感じ!(笑)

写真は先日SNAKEPIPEが散歩中に撮影した、これまた「ひっそり系桜」。
まるで川からにょきっと生えているような桜にびっくり!
この桜を撮影した瞬間に
"寺山修二の「田園に死す」風に加工してみよう"
と思い付き、上の写真を制作。
季節のご挨拶、いかがでしょ?(笑)

逸品制作日誌 ピンクライダースジャケット

【ロビン用に制作したライダースとプレゼントのヒップバッグ(どちらも私用)】

SNAKEPIPE WROTE:

先週参戦したROBINのライブ前、SNAKEPIPEが行っていたのは制作であった。
ROBIN用にライダースを作っていたのである。

革は以前、革イイ!ベイビー!(中尾ミエ?)の時に書いたことがあるショッキングピンクの革を使用。
今度のROBINに着て行こうと制作を思い立ったのが2月の中旬。
材料を揃え裁断を始めたのが2月最終日。
3月からミシンを使い始めて21日に間に合わせる、という強行スケジュールである。
デザインは材料屋でジッパーを手にした瞬間に閃いていたし、前回ライダースを制作した手順を大体覚えていたので、前回よりは楽だった。
ROCKHURRAHからは
「80年代っぽいね」
と言われたが、SNAKEPIPE自身のコンセプトはサイバーパンクなんだけどね。
ってやっぱり80年代じゃん。(笑)
革質が柔らかで縫い易かったのも勝因の一つだろう。
袖部分には羊革を使い、柔らかさのバランスを取った。
ROCKHURRAHの協力があったからこそ、予定通りに完成させることができたと感謝している。
ありがとう!ROCKHURRAH!

なかなか良い出来に大満足。
薄手なのでカーディガン代わりに着用できそうである。
そして今年の誕生日プレゼントとしてROCKHURRAHからもらった手作りヒップバッグと組み合わせてみると、なんとぴったり!(笑)
コーディネイトはこうでねいと!(ぷっ)

ROBINライブまでに、と集中して制作に打ち込んでいたため、完成した後はちょっと脱力してしまった。
次は何を制作しようか、と思案中。
自分用ばっかり作ってないで、販売用を制作しないとね!

ROBIN LIVE DVD 先行発売LIVE参戦!

【お馴染みライブ告知看板と入手したDVDとオマケのシート】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年12月26日「ROBIN 4THアルバム発売記念ワンマンライブ」の時に告知されていたROBINのDVD発売記念ライブに行ってきた。
場所は渋谷CLUB CRAWL

今回は残念ながら(?)ワンマンではなく、他に3つバンドが出るとのこと。
そしてDVDの販売はライブ会場での物販かネット通販のみ、との情報を知る。
更に今回の会場で先着50名にオリジナルカッティングシートのオマケがあるらしい。
DVDは必ず手に入れたい!と思っているSNAKEPIPEなので、これは是非ともオマケ付きがいいなー!

久しぶりに会った友人達との会合もそこそこに
「オマケのために先に行ってるから!」
と早々に会場入りしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
OPEN18時、に合わせて行ったのに予定変更で30分程度待たされてしまう。
がっ、待ってる間に収穫あり。
「ファンです!」
と話しかけたROCKHURRAHのおかげでROBINのベース・YASU氏に握手してもらった!
以前のHELL-RACERの時もROCKHURRAHが写真のお願いをしてくれて記念撮影が実現したし、なかなかやってくれるなROCKHURRAH!(笑)
カメラマンのSHIGEO JONES氏も何度も行ったり来たりしてて、知り合いの人とロメロ監督の話をしてるのが聞こえた。
ホラー好きのROCKHURRAHが「俺も話に参加したい!」と言ってたのもうなずける。

そんな感じで30分の待ち時間は観察してるうちに終わり、やっと開場。
1番でDVDをGET!
オマケも手に入れることに成功!(笑)
待ってた甲斐があったね!

30分程度遅れてライブがスタート。
最初はHAT TRICKERS
メンバーだと情報を得ていたHELL-RACERのギター・CHIYO-Xが会場をウロウロしてる。
あれ、ライブに出ないのかな?
などと思っているうちにスタート。
なんとなくバンドメンバーの人数が少なくなっているような?
お客さんの入りもまだ半分以下という状態だったし、大抵の場合がそうだけどトップは難しいことが多いよね。
会場全体がまだ全然盛り上がってないし。
特に今回のHAT TRICKERSは一度もスポットライトを浴びることがなく、薄暗い赤い光にモクモクとスモークを焚く演出だったため、余計にノリにくかった。
トーンが一定になっちゃうというのかな。
ほとんど盛り上がることがなく終了。
ちょっと残念だった感じ。

2番目、LINK13。
以前はLINK13企画のライブに年に4、5度は必ず参加していたので、毎回トリを飾るLINK13を観ていたけれど、企画が終わってしまってから2年以上が経過しているため久しぶりのLINK13である。
そして千葉ルック以外の場所でLINK13を観た記憶がないため、なんだかとても新鮮に感じてしまう。
おや、登場の曲がお馴染みのROLLING STONES「悪魔を憐れむ歌」から「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」になってる。
前にもこんなことあったかな?
身長の高いベース・TEZUKA氏とギター・MITOME氏は後方からでもバッチリ確認ができる存在感。
LINK13はいつもよりも更に音のキレが良かった。
全くMCはなく曲から曲へと連続していくうちに、観客もノッてきた。
さすがだね、LINK13!
そして3曲目の後にお決まりの「後ろ向きでのTEZUKA氏へアセット」も観られて大満足。(笑)
今回のLINK13ものすごく良かった!

3番目、名古屋のバンドNEW DAWN
初めて観るバンド。
見かけがスキンヘッド集団でOi!のようだけど、音は全く違っていた。
日本語を重視したメロディアスなヘヴィメタル、とでも言おうか。
わざと逆らって長髪やめて坊主にしたような印象。
今回のセレクトはどういう基準だったのかよく分からないけれど、かなり浮いてたように思った。

そしてROBIN。
もちろんお目当てはROBINだったので、ステージ近くに移動。
バッチリ観られる良い位置を確保し安心、安心。(笑)
いよいよROBIN登場。
登場の曲が以前の曲に戻ってて良かった。(去年12月には違う曲だった)
最初の曲が「My Way」とはびっくり!
通常ならアンコールでやる曲だよ!
そして新旧織り交ぜての曲展開。
相変わらずのパンチ合戦、ものすごい盛り上がり!
前のほうで観て(聴いて)いたせいかもしれないけど、YASUのウッドベースがよく聴こえてとても迫力があった。
後で確認してみると今回の曲はほとんど発売されたDVDに収録されているもので、「発売記念」ということを意識してセレクトしてあるようだった。
そしてラストの曲は「Never Mind」。
ワンマンじゃないため、ちょっと物足りなさを感じながらも「腹八分目」ってことで納得。(笑)

やっぱりROBINのライブは汗だくになっちゃうね!(笑)
強い風の中、急に重たくなった足や冷えていく汗を感じながら渋谷に向かうROCKHURRAHとSNAKPIPE。
春はもう少し先だね!

【追記&訂正 3/23】
ROBINのライブ1曲目が「My Way」と書いてしまったけれど、「BATTLE GOES TO BLACKOUT」だったことが判明。(ROBINのHPで確認)
そうだった…。間違っていたので訂正の追記です。