SNAKEPIPE MUSEUM #08 Michael Kenna

【世界の果てまで俺を連れてってくれるか?】

SNAKEPIPE WROTE:

今日のSNAKEPIPE MUSEUMはマイケル・ケンナを取り上げてみたいと思う。
マイケル・ケンナは風景写真家だからSNAKEPIPEが好きなのは珍しい、と思われる方も多いだろうね?
確かにマイケル・ケンナは自然写真が有名だもんね。
ただ写真の中には無機物と自然の調和、のようなモチーフもあるんだよね。
無機物も自然の一部と考えてるように感じられるのだ。
その点がSNAKEPIPEと同じ!(笑)
以前洋書で写真集を観た瞬間に「いい!」と思い、即決で買ってしまったことがある。
お値段は確か1万円近かったから高額だったのに…。
決してお金持ちとは言えないSNAKEPIPEに購入決断させるとは!
恐るべし、マイケル・ケンナ!(笑)

マイケル・ケンナは1953年イギリス生まれ。
現在はワシントン州のシアトル在住とのこと。
世界中を旅して風景を撮影している写真家である。
ハッセルブラッドの6×6カメラを使うことが多いらしい。
世界的にもかなり有名で、いくつか賞も受賞しているよう。
日本では北海道を撮影していて、写真集「HOKKAIDO」(まんま!)を出しているみたい。
撮影された特徴的なミズナラの木は「ケンナの木」としてファンが多かったとか。
ミズナラ?
おおっ!我らが鳥飼否宇先生の「樹霊」の中にも出てきたね!
残念ながらその「ケンナの木」はもう伐採されちゃったらしいけどね。

マイケル・ケンナの写真の特徴はなんといっても圧倒的な静謐感。
音のない、シーンとした世界。
人が登場しないため、未来的な印象を受ける。
それは人類が滅亡した後の終末的未来?
言うなればSFの領域になるのかもしれない。
マイケル・ケンナがいわゆる一般的な風景写真家と違うのはここなんだろうね。

燃えるような緑がキレイとか咲き誇る美しい花などという風景写真ならば、誰でもある程度の撮影はできるだろう。
そして実際に「〇〇フォトサロン」みたいなギャラリーではその手の写真展が今でもたくさん開催されているし。
撮影側も鑑賞側のどちらにとっても「最も害のない」ジャンルだろうね。
カレンダー用の写真を観ても、だいたい似た雰囲気だし。(笑)

観て癒しを感じる写真というのは人それぞれなので、上に書いたようなカレンダー的風景写真を観て清々しい気分になる人も多くいるだろう。
SNAKEPIPEだったら、と考えてみるとパッと浮かんだのは例えばマイケル・ケンナの空っぽの風景なんだよね。
なんにもなくてガラーンとした、人のいない場所。
以前取り上げたスティーブン・ショアーの時にも似たような文章を書いていたけれど、どうやらSNAEKPIPEは人がいない風景が好きなんだね。(笑)
同じように「空っぽ」の写真家とはいっても、スティーブン・ショアーの写真にはノスタルジーがあるけれど、マイケル・ケンナにはない。
人を寄せ付けない、いやそれ以上に拒絶しているような冷たさがあるんだよね。
何百年後なのか何千年後なのか分からないけど、かつて人類がいて文明があった形跡だけを撮影した写真という感じ。
だからといって世紀末的な絶望感は持たない。
一回りして、またスタートに戻ったような気分である。
これってもしかしたら輪廻転生?
はたまた雑念のない忘我の境地?(笑)
そんなことを考えながら、癒されるSNAKEPIPEなのである。

映画「BECK」観てべっくり!

【Beckのメンバー+1名紹介】

SNAKEPIPE WROTE:

ハロルド作石原作の漫画「BECK」の映画公開情報は知っていたけれど、映画館まで足を運ぶところまでには至らなかった。
日本映画を映画館で観た記憶があまりないなあ。
「BECK」は原作の漫画も全て読み、TVアニメ版も観てたことから実写版にも興味があった。
2月に入り、ついに待っていたDVDレンタル開始。
早速観てみたのである。

「BECK」は1999年から2008年まで月刊少年マガジンで連載されていた漫画。
どこにでもいる普通の高校生・田中幸雄(コユキ)は、帰国子女・南竜介(リュースケ)と偶然出会う。
リュースケは、アメリカを代表するバンド「ダイイング・ブリード」のリーダー、エディとは子供の頃からの親友であり、現在でも親交があるというスゴ腕ギタリスト。
コユキはリュースケ、そしてダイイング・ブリードの影響で、音楽に目覚めギターを習い始める。
そのリュースケがギターを担当し、千葉(ヴォーカル)、平(ベース)が加わりBECKというバンドが誕生。
そしてコユキ(ギター・ヴォーカル)と、コユキの同級生・サク(ドラム)が加入し5人編成のバンドになり、更にパワーアップ。
意外にもコユキにはヴォーカリストとして天性の素質があり、バンドは知名度を上げていく。
ライブハウスでの動員数がどんどん増え、自主制作でのCD発売、そして「フジロックフェスティバル」みたいな音楽の祭典「グレイトフルサウンド」に出場するという大きな目標を持つまでに至る。
リュースケがニューヨーク時代に起こした犯罪に関連したエピソードが加わったり、アメリカの音楽業界を牛耳る人物(レオン・サイクス)が登場したり、プロモーションなどの裏事情など本当にありそうな話が盛り込まれる。
「頑張れば道が拓けるんだ」という教訓的な部分も含まれている、サクセスストーリーである。

ROCKHURRAHは元々ハロルド作石のファンで、主要長編である「ゴリラーマン」「バカイチ」「ストッパー毒島」を所持していたらしい。
ところが肝心の「BECK」は全然読んだことがなかったとのこと。
勝手に「BECK」は少年向けの、イマドキのバンドを描いたものだと思っていたらしい。
「BECK」といえば90年代に大ヒットした、あのBeck(ROCKHURRHAが全然興味ないタイプ)を連想してしまったのも足が遠ざかる原因だったよう。
確かに本来の音楽の好みとはちょっと違うかもしれない「BECK」だけど、初めは何気なく観たアニメがとても面白かったので、コミックスも全巻揃えてしまった。(笑)
いわゆる少年熱血漫画とは違って、脇役に個性があったところが良かったね。

漫画版とTVアニメ版には大きな違いがなく、2004年から2005年にかけて放映されていたTVアニメでは「グレイトフルサウンド」の後でアメリカに旅立つところまでで完結。
アメリカでどうなるのか気になって仕方なかったから、コミックス買ったんだけどね。(笑)
今回の実写版では「グレイトフルサウンド」までの物語になっていた。

去年9月公開時のプロモーション映像を観た時から、漫画と実写のギャップのなさにびっくりしていた。
みんなすごく良く似ている!
BECKのメンバー5人は言うまでもなく、アニメや漫画の時から気になっていた脇役もかなり似て蝶!(笑)
なんで「あまりに似ている人(もしくは状態など)」を観た時に笑ってしまうんだろう?
SNAKEPIPEは最近はほとんど見なくなってしまったけど、「そっくりさん大集合」とか「ものまねグランプリ」みたいな番組が大好きだったなあ。
いつも大笑いして涙を流していたっけ。
バンドの5人については割と簡単に比較画像が観られるようなので、ROCKHURRAHブログらしく脇役の特に目を引いた3人について比較してみようか。

一番初めはコユキのギターと水泳の師匠として登場する斉藤研一。
漫画/アニメ版での斉藤さんは「元水泳五輪強化選手だったけれど挫折し夢破れる。その時の斉藤さんを慰めてくれたのがブリティッシュ・ロックだったことからギターを始める」という説明が詳しくされていた。
映画版では水泳に関する説明はほんの少ししかされていなかったので、競泳帽とゴーグルを付けた水着姿でのギター演奏(写真左)に違和感を感じるかもしれないね?
漫画/アニメ版にはもっといっぱい登場する斉藤さんだけど、映画での出演はやや少なめ。
この人がいなかったらコユキは成長できなかっただろう、と言える恩人中の恩人なんだけどね!
コユキの高校の先生を好きになっちゃうエピソードや風俗好きの部分は、映画版では完全にカットされてたのがちょっと残念。
「グレイトフルサウンド」のシーンでの水着で大はしゃぎ、に少しだけ出てたのかな。
実際に近くにいたらかなり欝陶しい人なのかもしれないけど、いい味出してるよ、斉藤さん!(笑)
カンニング竹山の起用はバッチリで、似過ぎてて大笑いしてしまった。
ギター演奏は本当に本人が弾いてたみたいだったけど、上手だったね!

次はアメリカで有名なバンド、として登場する「ダイイング・ブリード」のヴォーカル・マット。
確かにヴォーカルでスキンヘッド+サングラスって良く見かけるよね?
R.E.M.のマイケル・スタイプ 、ミッドナイト・オイルのピーター・ギャレット、日本だったらやはりこの方、サンプラザ中野くん!(笑)
軽く思い出しただけでこれだけいるんだもんね。
マット、の設定自体が割と簡単に「いかにも」な雰囲気だったのかもしれないけど、さすがに実写版も良く似ている方がキャスティングされてたね。
漫画/アニメ版と全く同じ、ステージからコユキに呼びかけ手を差し出すシーンも忠実に再現されていて、ますますマットらしさが出ていた。
あまりセリフがない役柄だから、逆に演技が難しそうだよね。

3人目はアメリカのレコード業界を牛耳るドン、レオン・サイクス。
漫画/アニメ版だと、この人の髪型ってもっこり膨らんだハート型になってるんだよね。
強力な威圧感を漂わせ、「金のためなら殺しもやる」というほどの拝金主義なのに、頭がハートというギャップ!(笑)
そんな「漫画以外有り得ないよね」と思っていたレオン・サイクスだったのに、実写版を観てたまげた人多いと思うなー!
SNAKEPIPEも一目見た瞬間に抱腹絶倒!(笑)
よくもここまでやってくれた!と拍手したくなるほどのクリソツ加減。
どこから見つけてきたんだろうねえ?
このキャスティング、最高だったね!

他にSNAKEPIPEが個人的にとても気になったキャスティングはもたいまさこ
「グレイトフル・サウンド」の創設者という設定で、なんと出演はこの左の写真一枚だけ!
いかにも時代を感じさせるようなサングラスとジャケット。
もたいまさこが髪をひっつめてない姿ってあまり見たことないSNAKEPIPEだったので、これはかなり衝撃的!
しかも漫画で出てくる創設者とも全然違うんだよね。(笑)
全く似てないのにこのインパクト!
さすがだね、もたいまさこ!(笑)

「原作が漫画」という実写映画があることは知ってたけど、ここまでこだわってキャスティングしてる映画って他にあるのかな?
読んだところでは、漫画と全く同じ洋服や靴、小物に至るまですべて調達するか、なければ作ったとのこと。
そのこだわりは完全に成功してたと思う。
もう一点、漫画と同じだった「こだわり」はコユキの歌声が聴こえなかったこと!
これはどうやらハロルド作石本人の希望によるものだったらしいね。
コユキの歌を聴いて、観客が驚愕し、目を瞠るという映像も同じ。
口をポカンと開けて、何が起こったのか分からない、というあの顔ね。(笑)
かなりいろいろな点で忠実だった実写版はとても面白かった。
「グレイトフルサウンド」以降の続編が制作されないのか気になるところである。

正直言ってBeckの目指している音楽については、それほど興味があるジャンルではないROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
恐らく実際にBeckの演奏やコユキの歌を聴いても、原作に出てくる観客のような反応を示さないだろうなあ。(笑)
読み物や鑑賞物としてはとても面白いと思うので、勘違いをして食わず嫌いをしている方にもお薦めしたい「BECK」である。

偏愛的変アイテム

【どこかに人が隠れてるよ!分かるかな?】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHのミリタリー好きにつられるようにして、いくつかのミリタリー・ショップに一緒に足を運んだり商品を購入しているSNAKEPIPE。
がっちりBUYましょう!vol.1」で書いたこともあるように、ミリタリー物はどうしてもメンズサイズが多いため、小さいサイズを探しやすい通販で購入を決めることもしばしば。
様々なミリタリー通販サイトを見ていると、たまに
「この商品、一体誰が買うんだろう?」
と不思議に感じてしまうことがある。
それなのに「品切れ」などと書かれていたりすると益々妄想は膨らんでしまう。
一体誰が、何の目的で購入したんだろう、と考え始めると止まらない。(笑)
今日はミリタリー通販サイトで見つけた謎グッズを紹介してみようか。

初めにご紹介するのは「蚊避けネット」。
もちろん蚊以外の虫全般に効果ありそうだし、実際に養蜂業の方などには
「かぶるネットなんか毎日使っとるぞね。珍しくもなんともあらへん」(どこの言葉だ?)
と言われてしまうかもしれないけど。(笑)
ただミリタリー通販サイトでいきなりこの手の画像を見つけるとちょっとウケてしまう。
恐らくジャングルを想定して作られたものだと思うけど、もし本当にジャングルだったとしたら蚊よりも強力な毒虫がいそうだし。
頭部だけ守ってもあまり意味がないような気もするしね?
体の他の部分はどう対処するんだろう?
知ってる人がいたら教えて欲しい。(笑)

さて、お次は「秋田のなまはげ」でも、「ポンキッキのムック」でも「スターウォーズのチューバッカ」でもない、「ギリースーツ」のご紹介。
まるで着ぐるみのようなこのスーツは、擬態化し相手(敵)に気付かれないように草むらなどに潜伏して狙撃するためのミリタリーグッズ。
サバイバルゲームなどでは割とポピュラーな品のようだけど、一般的にはあまり知られてないよね?
自作する人も多いみたいだけど、商品として販売もされている。
左の4種類はそれぞれ「どこに隠れるか」によって色が違っている。
ジャングル地帯、砂漠地帯、湿地帯、雪原地帯などに対応しているこのスーツ。
結構いいお値段するタイプもあるみたいだけど、ギリーだけに義理で一着持ってると便利かも?(うそ)

続いての登場は、上のギリースーツ着用の際にも大活躍するであろう、フェイスペイント用のコンパクト!
2色、3色、4色と種類があったり、作りたい迷彩のタイプによってもコンパクトが揃っているようだ。
左の写真は一般的なウッドランド迷彩を作るための豪華5色セット!
淡いピンクや黄色を程良く混ぜて、丁度良い色合いに仕上げるところがポイントなのかな?
それにしても、上のギリースーツに身をつつんだ兵士が、チマチマとコンパクトを覗きながら顔を仕上げてる図を想像すると非常におかしい!(笑)
このコンパクトを使ってるところ、動画投稿サイトにないかしら?
ものすごく観たいんだけどね!

ギリースーツ編には全く登場しなかった地帯といえば水中。
確かにあのスーツ着ては泳げないしね?
水中でのミリタリーグッズって何かあるのかな、と調べてみるとやっぱりあった!
それが左の「ミリタリー用足ひれ」。
ちゃんとタクティカルブーツ履いた上から付けてるから間違いないでしょう。(笑)
この写真からでは装着部分がどうなっているのか分り辛いんだけど、これで脱げないのか心配。
このタクティカルブーツが完全防水素材じゃないとダメなのかどうかも気になるところだ。
わざと色を赤にしてるのかも注目しちゃうよね。
そもそも「足ひれ」というのは靴を履いたままでオッケーなシロモノなのかね?
などなどダイビングの経験ないSNAKEPIPEには未知の世界。
調べてみるとどうやらアメリカ海軍特殊部隊などでも採用されているというからお墨付き商品みたいね。
これを付けて泳いでいるところを観てみたいね!(さっきと同じじゃん)

最後に登場するのは「ガスマスク」。
大抵のミリタリー通販ショップで扱っている、そういう意味では良く見かける商品なんだよね。
ただし、目の引くのは「売り切れ」となっていることが多い点。
簡単にガスマスクと言っても、本当の意味での軍放出品で「有効期限切れのため実用できません」などと断り書きがあるものから「核・化学兵器に対応」などと書かれている実用可能な物まで幅広く扱われている。
実用不可のタイプはファッションだったり、オブジェだったり、単なるコレクションだったりするんだろうね?
ショップ用とかデザイン用とかの何かしら「商売向け」のような気がする。
好きでかぶっているのはG.I.S.M.の横山SAKEVIくらいのものか?(古い!)
そして実用可能タイプを購入するのは、地下にシェルターを完備しているような、本当の意味での「備えあれば憂いなし」の方なのかも?
こちらも実際「売り切れ」になってるのがあったからびっくりだよね。
マスクに6万円使えるんだから、やっぱりお金持ちなんだね!(笑)
この手のマスクは軍物でしか手に入らないだろうから、お高いのも仕方ないか。
実用する日が来ないことを望む!
皮膚呼吸のことを考えたら、全身スーツにしないと完全防備はできないのかなあ?
その手のスーツは通販で買えるのか?
また今度調べてみたい。(笑)

時に忘れられた人々【07】グラム・ロック編 side B

【グラム集大成、とも言いがたい。さて、この曲をやってるのは誰でしょう?】

ROCKHURRAH WROTE:

二週連続で書くだけの気力がなかったので間があいてしまったが、予告通り今回はグラム・ロック編サイドBを書いてみよう。読んでない人はA面から読んでね。
グラム・ロックが流行したほんの短い間だけに音楽活動を集約させたバンドはありそうで実はあまりない。だからグラム・ロックのみで語られるバンドというのも非常に少ないわけで、この記事で取り上げたバンド達も「昔ちょっとグラムやってまして」程度のものばっかりだが、まあそれは仕方ないと思って許して。

男が女っぽい格好したり過剰なまでの化粧したり、代表的なグラム・ロックにはそういう部分が多いが、このスレイドはヴォーカルがモミアゲにヒゲ男で普通の意味でのグラムっぽさはない。がしかし、イギリス伝統のタータン・チェックを多用した衣装や派手で陽気なステージなど、グラムを感じさせる部分も多く持っていて人気があったな。
この曲はクワイエット・ライオットがカヴァーした事でハードロック&ヘヴィメタル界では有名。You Tubeとかで気軽にいつでも映像が見れるようになる前の時代では、むしろスレイドの原曲の方に馴染みがないという人が多かったのじゃなかろうか。その後はオアシスとかもカヴァーしていたな。
個人的にはスレイドはグラム・ロックの時期よりも80年代のヒット曲、スキッズやビッグ・カントリーの推進したスコットランド民謡+応援歌風の「Run Runaway」が好きだ。かくいうROCKHURRAHも応援団出身という意外な過去があるし(笑)。これは関係ないか。

70〜80年代に大活躍したロック界一のダンディ男(?)、ブライアン・フェリー率いるロキシー・ミュージックもグラム・ロック出身の大物バンドだ。後期エルヴィス・プレスリー、シャナナ、そしてゲイリー・グリッターなどに共通するキンキラのスーツに「浮浪雲(ジョージ秋山)」のような長髪リーゼント(笑)、そして非常に好き嫌いの分かれる粘着質のいやらしい声を武器に登場したのが71年。後の「大人のダンディズム」というバンドのイメージとは大違い・・・ああいやらしい。
当時のロキシー・ミュージックは見た目のインパクトも音楽も革新的。その主人公ブライアン・フェリー以上に派手だったのが後にアンビエント・ミュージックの創始者となるブライアン・イーノだ。ウィンドウズ95の起動音作曲者としても有名だが、この時代はまだグラム真っ只中。この人の異色なきらびやかさとクジャクのような衣装には誰もが圧倒される事間違いなし。
この初期ロキシー・ミュージックの名曲「Re-Make/Re-Model」は一般的なロックの世界でシンセサイザーやサックスなどのノイズ的演奏を楽曲に取り入れてヒットしたという、当時としてはかなり先駆的な作品。やっぱりイーノはいいのう。
ロキシー・ミュージックはROCKHURRAHごときが語るまでもなく、後の時代にもスタイリッシュなヒット曲を数々と出して有名になってゆくバンドなんだけど、やっぱり初期のイーノがいた頃の音楽的まとまりのなさ、キワモノっぽさが一番だと思う。
何か「初期」「当時」という表現が多いな。

グラム時代にはちょっと遅れすぎの1974年にデビューしたビー・バップ・デラックスは元々ソロ・シンガー&ギタリストだったビル・ネルソンによるバンド。デヴィッド・ボウイやクイーンといった大物がやっているような音楽的世界をよりB級に展開しただけという見方もあるけど、好きな人にとってはこのB級加減がたまらない魅力でもある。ROCKHURRAHも若年の頃、最初に自分で気に入って全部買い揃えたバンドがこのビー・バップ・デラックスなので、後の自分の音楽的人生に方向性を与えてくれた師匠のような存在だ。個人的にコックニー・レベルと共に最も思い出深い。
さて、このバンドはセミアコ・ギターの形をしたドクロというインパクトのあるジャケット「Axe Victim」でデビューしたが、初期は濃い目の化粧でグラム度も高かった。デヴィッド・ボウイやT-Rexなどと比べるとかなりマイナーな存在なのでこの初期の映像はほとんどないのが残念。ビル・ネルソンの美学に溢れた流麗なギターとメロディアスで未来的な音楽、売れる要素はたっぷりだったのに日本ではさっぱり人気なかった。しかし映像(初期とはメンバー総入れ替えとなった75年の2nd時期)を見ればわかるように70年代ヤクザが好んで着ていたような幅広襟の白いスーツにパンタロン。そしてビル・ネルソンは後のウルトラヴォックスのジョン・フォックスとも相通じるようなおばちゃん顔、ギター持ってなかったら良く見ても演歌歌手、とてもロック・ミュージシャンには見えないよ(笑)。ルックス面でかなり損をしてたバンドだなあ。これで何故にグラム特集で取り上げたの?と突っ込まれる事必至だな。単に書きたかったから。わかってくれる人もいるじゃろうて。
しかし彼らの事を書いてたらキリがないので短いコメントになってしまったが、きっと何かの形でまとめて書きたいとは思っている。

それまでロックをあまり聴いた事がない婦女子や子供でもファッションや見た目の面白さから音楽を聴くようになる。そういう通俗的な部分でグラム・ロックや後のパンクが果たした役割は大きいはず。そのグラム・ロックの中でもピカイチに金ピカだったのがこのゲイリー・グリッターだ。過剰なまでの光具合とステージ・アクション、後のロックに与えた影響云々、というよりは、にしきのあきらや西条秀樹が目指したものと見事に呼応する世界だろう。しかしゲイリー・グリッターのキワモノさもこの時代には充分カッコイイものだったのは確かで、グリッター・サウンドの継承者もいる。80年代初頭に大流行したアダム&ジ・アンツ(アダム・アント)は間違いなくニュー・ウェイブ世代のグリッターだったし、サイコビリー界の大御所クリューメンはこの曲を見事にサイコビリー風にカヴァーしている。サイコビリーがサイコビリー風にカヴァーしてるのは当たり前だが・・・。2行程度に5回もサイコビリーと書いてしまったROCKHURRAHは尋常じゃないが・・・。この映像のギンギラ衣装もすごいが、ゲイリー・グリッターはグラムが廃れた後でもずっとグラムな事やってて、「北斗の拳」もしくは「マッドマックス」の悪役みたいな衣装だったり、継続は力なりという言葉を見事に体現した類まれなロック・スターだったと言える。

有名な音楽プロデューサー、ミッキー・モストが設立したRAKレコードで、スージー・クアトロなどと共に人気だったのがこのバンド。前にA面でも書いたマイク・チャップマン&ニッキー・チン(Sweetの項)が手がけた大ヒットが「Tiger Feet」だ。見るからに軽薄そうなメンバーの振り付けはともかく、この曲の光り輝くポップさ(何じゃこの頭悪そうな表現?)は素晴らしい。圧倒される。A面B面通して今回のROCKHURRAHは圧倒されまくっているな(笑)。この曲はまたしてもサイコビリー・バンドのグリスワルズがサイコビリー風にカヴァーしている事で一部のサイコビリー界では有名。しつこい?なんかグラムのカヴァーしてるのはサイコビリーばかりのような書き方だなあ。
しかしそもそもMud、この見た目で本当にグラムなのかという疑問が生じるな。まるで池沢さとしの漫画に出てきた、スーパー・カー乗り回してるプレイボーイの御曹司みたいなヴォーカルの風貌を見てふと思った次第だ。
つまりグラムというのは音楽でもきらびやかな見た目でもなくて、我々の心の中にある固定観念なのかも知れないね。というのは大ウソだから信じないように。

2回で書き終わる予定だったグラム・ロック特集だが、まだ少し書き足りないところがあるなあ。「シルバーヘッド忘れてねー?」とか「アメリカのアリス・クーパーやニューヨーク・ドールズは?」などと不満もいっぱいだろうね。しかしこのブログの続きを熱望する人もいないだろうし書いてる本人もさすがに飽きてきた。
次をやるかどうかは未定だけど、気が向いたらまたまとめてみたいと思う。