がっちりBUYましょう!vol.9 タクティカル・ブーツ編

【世界の平和を守るみたいな主旨で相変わらず大げさな5.11のプロモ】

ROCKHURRAH WROTE:

「がっちりBUYましょう!」のコーナーも随分久しぶりの気がする。
このコーナー、そもそもROCKHURRAHやSNAKEPIPEが買った何かを紹介(ずいぶん前に買ったようなのも含めて)するという主旨のモノなんだが・・・。
大昔のTV番組が元ネタというタイトルも古臭いし扱ってる題材も一般的でない、そして何よりROCKHURRAH家はあまり大した買い物をしないという点が致命的で、滅多に新しい記事が書けないのが難点という三重苦に満ちた企画なのだ。偶然この記事を読んで「うん、わかるわかるよ」」と同意してくれる人はほぼ皆無なんじゃなかろうかとさえ思えてくる。それでも何とか書けるものがあったら更新してやっとvol.9までこぎ着けたよ。
さて、今回はROCKHURRAH愛用のブーツについて。

自分の人生の大半はブーツを履いて過ごしていたというくらい根っからのブーツ好きなROCKHURRAH。当然、ブーツなら何でもいいというわけではなくて、こだわりを持ってさまざまなブーツを履きこなしてきた。
今ではパンクのパの字も知らないような女子でも履いてるドクター・マーチンを日本でも最も初期から履いていた一人だと豪語出来るくらいだ。

今の一文でわかり通り、ROCKHURRAHにとって一番馴染みのあるブーツはマーチンやゲッタグリップなどメイド・インUKのごつい編み上げブーツだった。これが一番好きな形だと言える。

その当時のROCKHURRAHと言えば年季の入ったマーチンに前ジッパーが壊れるまで穿き込んだリーバイスのブラック・スリム・ジーンズというのがトレードマークだったな。復刻もされたように記憶するが、今あるようなリーバイスとはたぶんちょっと違うシロモノ。股上が深いのじゃ。さらに前ジッパーが壊れて歩いててもすぐに下がってくるという恐ろしい事態になった(竹下通りを全開で歩いた経験あり)ので、取っ手の穴にゴムひもを通して、それを上のボタンに引っ掛けるというバカ情けない応急処置をして、カッコつけて歩いていたものだ(笑)。しつこく書くが最近じゃなくて1980年代の若き頃の話だからね。
当時好んで穿いてたリーバイスは当たり前のようにYKKとかリーバイスのオリジナルじゃなくてタロンのジッパーだったしな。
古着についてる外国製ジッパーはロックが効かなくなったものとかあるから要注意だね。
SNAKEPIPEと知り合ってからは彼女の影響で前ジッパーの総取替えくらいは何とか出来るようになったので、古着でたまに壊れたのを買って自分で修理とかして穿いている。当時よりは格段に技倆は上がっているはず。
ハイ、前フリがここまで。

しょっぱなから話が大きく逸れてしまったが、そういうブーツばかり履いてたという事が言いたかっただけだ。 ん?ブーツについてはあまり書いてないかな?なに、全然書いてない?

Bates Delta-8 Tactical Boots
長年ごついパンクなブーツばっかりだったROCKHURRAHだが、最近はライブに全然行かない事もあってタクティカル・ブーツばかり履いている。
ミリタリー系に興味ない人には「?」の名称だろうが、軍や警察などの特殊部隊が履いているようなブーツをタクティカル・ブーツと呼ぶ。ちなみに軍人が履いてる官給品のミリタリー・ブーツとはちょっと違うもの(最近では違いも少なくなったみたいだが)。

一般的なファッションのためだけのブーツとは大違いだが、要するに潜入だの制圧だの、そういう荒事に特化したブーツの事だ。
当然ながらソールは滑りにくくて足音がしない、長時間の着用でも疲れにくい&耐久力も優れた作りになっているのが特徴。
見た目は色々だけど、どちらかというと昔流行ったハイテク系スニーカーのハイカットに近いものがあり、今の尺度でいくとカッコ良くない系統のものが多いと思う。まず一番に機能性が来るので、これを履いておしゃれに見える人間はなかなかいないんじゃなかろうか?

やっとここまで話が進んだが、ベイツはそういうタクティカル・ブーツを作っているメーカーだ。主にバイク用のブーツ&軍用ブーツを作っていたので、その方面の人々には有名なブランドと言えるな。

ROCKHURRAHがなぜタクティカル・ブーツに興味を持つようになったのかは覚えていないが、数年前に急に思い立ってこのベイツを買った。普段履きに足が疲れなくてサイドジッパーだから簡単に脱ぎ履き出来るよのさ(ピノコ)というのが大きな理由だったと思う。
もう一つ、敢えて言うならミリタリー系どっぷりの人しか興味を示さないようなブーツでもっとおしゃれに出来ないか?という実験の意味もあった。
もっと以前に東ドイツ軍のサイドジッパー・ブーツを気に入って履いてて、これが非常に履きやすかったんだが、残念ながら履きこみすぎて底に穴が開いてしまった。それの代わりに脱ぎ履きがしやすいブーツを探しててタクティカル・ブーツに行き着いたというわけ。

ベイツはまだ値段も安く購入しやすい方で、例えばオークリーとかアディダスとかリーボックとかメレルとかもこういうタクティカル・ブーツを作っている。完璧なミリタリー系のメーカーだともっと高いから、今言ったようなブランドはまだまだ初歩用のもの。

しかし何でも手に入る東京でも、タクティカル・ブーツを存分に試着(試し履きと言うべきか?)出来て、買える店はそうそうないのは確か。
他のメーカーに興味はあっても現物を手に取ってみないとイメージ涌かないんだよなあ。ベイツの場合は中田商店あたりに行けばほぼ手に入るので「購入しやすい方」と書いたわけだ。

ROCKHURRAHも何年か前の夏、暑い時にわざわざ試着して買ったのを覚えてる。最初に見た印象は「カッコイイ」とは思わなかった。
ウチの長年の命題「パンクとミリタリーの融合」はアイテム選びを間違えると大失敗してしまう諸刃の剣だと最初からくじけそうになったよ(大げさ)。
ただしそう思っても初志貫徹で買う気の時は思い切って買ってしまう、それがROCKHURRAHというものだ。
結果としてこれは買って良かったシロモノだったと胸を張って言える。

このブーツはベイツ独自のシステムでインソールに特徴がある。外すと裏側に円形の歯車みたいな弾力のあるディスクが出てくる。
「円形じゃない歯車は滅多にないよ」という声がどこからか聞こえてきたが、それはさておき。
言葉では説明しにくいが、この歯車はゲル状のくさびのようなもの。これのポジションを変えて装着することによって靴底の反発力を調整したり歩く時のクセを補正してくれたりするという何だかすごいもの。
全部を試してみたかどうか覚えてないほどに違いについてはよくわかんが、そんな事は抜きにしてもこのクッション性の素晴らしさは抜きん出ている。ブーツが足と一体化したかのような抜群のフィット感なのだ。この履き心地にはショックを受けたよ。
ベイツのブーツよりもこのインソールだけが欲しくなってしまうほど。でも別売りはしてないんだよね。

最初はウォーキング・シューズのようで気に入らなかった見た目もそのうち気にならなくなってきた。鏡を見る以外は通常、自分の靴は真上から見下ろすもの。上から見るとそんなに違和感ないんだよね。何だかサメの一種のような戦闘的なフォルムは一般的なブーツでは得がたい迫力があるとさえ思える。
ソールのゴツゴツした雰囲気からは全然想像出来ないけど、かなり柔らかくて雨でも滑らないグリップ力も素晴らしい。
もう3年以上も乱暴に愛用しているが靴底の減りも少なく、まだまだピンピンしている。耐久性から言ってもかなりのコストパフォーマンスなのは間違いないよ。
ただひとつ残念なのはちょっとケチってゴアテックスじゃないノーマル・ヴァージョン(現在はたぶん廃版)にしたが、どしゃ降りの雨ではおそろしくびしょ濡れになってしまう。横がメッシュみたいな素材だから仕方ないけどね。参考記事
今はベイツのこのシリーズは大体ゴアテックスの内張りが付いてるから、もし次に買った時は雨の日のミッションでも大丈夫だね。

5.11 A.T.A.C.8” Shield CSA/ASTM Boot
お次はこれ、この「がっちりBUYましょう」のシリーズ記事でも何回も紹介したメーカー、5.11のタクティカル・ブーツだ。
5.11の製品はどこのミリタリー屋でも扱っているような商品ではないし馴染みない人も多いだろうが、アメリカのFBIや警察、パトロール関係で絶大な支持を受けているメーカーだ。
PMC(プライベート・ミリタリー・カンパニー)というのは民間軍事請負会社の事で平たく言えば傭兵派遣会社みたいなもんか。正規軍とは違った目的で行動するから特殊部隊と言えなくもないが、そういうのについてはROCKHURRAHのヘタな説明よりは自分で調べてもらった方が早かろう。いいかげん?
まあその辺の軍事エキスパートの人たちが装備するようなものを主に作っているのが5.11だったりブラックホークだったり、タクティカル系と呼ばれるメーカーなのだ。
前にも何回も書いたがROCKHURRAHは服装以外の軍事的なものにはあまり興味ない。しかしタクティカル系の装備について解説してるようなサイトはほとんどがマニア向けのものばかりで、ウチが書くような事とは随分温度差があるはず。
ROCKHURRAH RECORDSの主義というほどじゃないけど、パンクもミリタリーも単に雰囲気だけで済ませたくはないからある程度は深入りして、そこから自分なりに抽出したものを発信してゆきたいものだ。
あらら、ちょっと大層な事を言い過ぎたかな?

その5.11は軍事系の人が身につけるあらゆる装備を幅広く作っているメーカーなんだが、タクティカル・パンツと呼ばれる独自のカーゴ・パンツやブーツ、ソフトシェルの上着などがシロウトでも手を出しやすい分野かな。特にブーツはまだタクティカル系ブランドがあまりなかった頃から出してたから、かなりのロングセラーなのかも。
価格帯の面でもベイツと大体同じ「安いけど一応本格的」なクラスだから、この2つはある意味競合メーカーだと言える。
ベイツのブーツが軽量化と履き心地に重点を置いてるのが特色とすれば5.11のはそこまで特徴的なものはなく、総合的な完成度に重点を置いてるように感じる。全体的に丸っこいデザインが多いベイツよりは細身でスマートな印象を受ける。潜入捜査とかで使われるから街着とマッチした靴という印象にしたのかな?

5.11のブーツも試着出来て買える店は東京でも少ない。それでも他のタクティカル・ブーツよりは売ってるところも多いかな。
以前にSNAKEPIPEの誕生日にここのブーツをプレゼントしたんだが、そのお返しに同じくブーツをプレゼントしてくれたのが去年の事。同じ店で探した結果、ROCKHURRAHが選んだのが写真のCSM/ASTMブーツなのだ。カタログで見て何だかよくわからんがカッコ良く見えたので試着して、ちょうどいいのがあったから買ったわけだが、このブーツの名称CSM/ASTMというのが実はよくわからんまま購入したという始末。5.11の他のブーツのラインとは明らかに異質な気がするが。

後から調べてわかったんだが、これはアメリカ材料試験協会ASTMという安全規格に合格したものすごく安全な安全靴というようなものらしい。
軍モノにはミルスペックという規格があってその試験に合格したものしか納入出来ないが、5.11もViking Tactics(VTAC)という銃火器アクセサリーのメーカーと共同でフィールドテストした商品が出てたりする。まあプロ品質を売り物にしてるんだろうが、ミリタリーでもポリスでもなくて安全靴とは、我ながらちょっとウカツな買い物だったなあ。日本で言えば寅壱とかワークマンみたいなものか?

これは先に書いたベイツと違ってゴアテックスではないが防水透湿のライニング付きで耐油、抗血液由来病原体レイヤー搭載という凄まじいまでの安全性を発揮する、大げさな特徴を持った5.11の最高峰ブーツらしいよ。こりゃ確かに安全だわ。

ベイツのように履きやすくないしジッパーはややキツイし、重みもあるんだけど、確かに安定性は抜群でさすがにプロユースの逸品だと言える。 こちらはまだ1年ちょっとしか履いてないけど、耐久性についても全く問題ないと言える。ベイツのソールより硬いしね。

以上、今回は一般的なおしゃれな人は滅多に履かないと思えるタクティカル・ブーツについて語ってみた。何年か前にアウトドアなものとおしゃれなものが融合したような時もあったし、どこのブランドでもミリタリー ぽいものを出してた時もあった。ファッションの世界もネタ切れのような気がするから、まかり間違って空前のタクティカル・ブームになったりしたらどうしよう?

劇的ビフォ→アフターpart4

【セーラーパンツのビフォ→アフター写真。バックはもちろん海軍マークね!】

SNAKEPIPE WROTE:

調べてみてびっくり。
「劇的ビフォ→アフター」を最後に書いたのがなんと2009年の2月だったとは!
そして更に「劇的ビフォ→アフター」はムートンをリフォームした記事しか書いていなかったことも判明。
自分で書いておきながらすっかり忘れてるなんてオメデタイSNAKEPIPEだね。
今回はなんと約4年ぶりにリフォーム記事を書いてみたいと思う。

かつての服飾関連の制作意欲が少し薄れているのだろうか。
大好きだったバンド・ROBINが解散してしまい、ライブに行く機会を失ってしまったのも原因だろう。
「ライブに行くために作る」というような目的と期限の目標を立て易かったのは事実だからね。
最近はパンク系というよりはミリタリー系の服装に偏向しているせいもある。
ミリタリー系服飾は、こちらが手を加える必要のない、完成された状態でデザインされていることがほとんどだからね。
SNAKEPIPEがいじることがあるとすれば、例えばサイズを小さくすることやボタンの位置を変えるなどの修理程度かな。
大幅なデザイン変更を加えたことは今までなかったのである。

先日古着屋で見かけたのは海軍で使用されたデッドストック品。
セーラーカラーの水兵さんルックの時に穿くセーラーパンツである。
このパンツの特徴は腹部に並んだ14個のボタン!
なんだかオムツをする時みたいな、右から左から、そして最後に真ん中をボタンで留め付けて穿くんだよね。
14個もボタンをかけるのは非常に面倒だし、効率悪い気がするけど?
ただ、そのデザインがとってもカワイイ!と思って購入したのである。

ボンタンよりも太く、丈も長いのでサイドを細くして、丈を詰めてみようか。
鏡でシルエットを確認してみると…ただのフェルト素材の紺色のパンツにしか見えない!
せっかくのボタンが生かされてなくて、全然オシャレに見えない。
丈だけ詰めるのはどうか、と再び鏡で確認する。
なんだか短足でどうにもバランスが悪い。
これは困った、と頭を抱えていると
「スカートにしてみれば?」
とROCKHURRAHが提案してくれる。
そうか!その手があったか!
目の前が急にパッと明るくなり、作業にとりかかることにする。

長かった丈をロングスカート丈に切った余りを継ぎ足し、スカートにする。
かつて、ジーンズを壊してスカートを作ったことがあるけれど、その時は真ん中にレザーを付け足しアクセントにしていた。
今回は全てがフェルトで制作しているため、見方によっては非常に地味。
何かアクセントを、ということでSNAKEPIPEは考えた。
完成写真(右)に斜めに走っている直線はジッパーなのである。
なかなか良い飾りになったわい。(笑)
穿いてみると、なんだか初めからこんなデザインだったような仕上がり!
なかなかやるなあSNAKEPIPE!と自画自賛。(笑)

ミリタリー系素材を使って、大胆なデザイン変更をしたのはこれが初めて。
ちょっといい気になって、次も制作してみたのである。


「劇的ビフォ→アフター」第2弾はベレー帽。
ミリタリー・ベレー帽に何か飾りを付けてみよう、と思ったのである。
早速ミリタリー・ベレーを購入。
ここは以前も同じ帽子を買ったことがあり、そのベレーをとても気に入っているため同じタイプを…のはずがっ!
いつの間にか同じメーカーの商品が変更になっているのね。
毎年デザインを少しずつ変える場合があるから、定番商品でも別物になることってあるからね。
今回SNAKEPIPEはまんまと引っかかってしまった。
前回とは似ても似つかない帽子。
素材はもちろんのこと、パターンも違う!
サイズを調整できるように付いていたリボンもなくなってるし!
うーん、これは困った。
てっぺん辺りに装飾を加えるだけの予定だったのに、とてもそれだけでは済まないなあ。

ここでふと思い出したのが、昨年9月に訪れた福岡のSWATで購入を迷ったベレー帽!
通常ミリタリー・ベレーの素材はフェルトがほとんどだと思うけれど、SWATで見たのはタイガー・ストライプを使用したコットン素材のベレーだったんだよね。
そのたタイプはほとんど見たことがないので、すっかり気に入り試着してみたSNAKEPIPE。
かぶって正解。全然似合わなかったの。(笑)
ベレーがとても浅くて、頭の上にチョコンと乗せてるようにしかならなかったんだよね。
きっとベトナムが暑いから、フェルトをやめてコットンにしたんだろうなあ。
確かあの時「いつかコットン素材でベレー作ってみよう」と思っていなかったか?

そして今回の制作が始まったのである。
元になる素材としてフェルトのベレーを使用。
そして以前購入していたタイガー・ストライプのBDUジャケットを使い、上からかぶせることにする。
コットンだけでも良かったかもしれないけれど、フエルトをかぶり慣れているSNAKEPIPEには少しだけ心もとない感じがしたからね。
フェルトの上にコットンだからちょっと厚手になったけれど、保温性がアップして良いか?

せっかく自分で作るんだから「Binary Army」的要素を入れたいな、とてっぺん部分にはアナーキーなAをレザーで表現!
いやあ、レザーを丸く縫い付けるの、苦労したよ。(笑)
久しぶりの帽子制作は難しかったけれど、思った通りの逸品に仕上がって大満足である。

今回の「劇的ビフォ→アフター」はフェルト編になったね。(笑)
やっぱりミシンを踏むのは楽しいな。
またリフォームも、制作も続けていこうと思う。

がっちりBUYましょう!vol.8 Massif & Nike ID編

【こだわったモノ作りを強調し過ぎて全然ミリタリーっぽくないMASSIFの宣伝ページ】

ROCKHURRAH WROTE:

タイトルが長くなり過ぎて2行になるのがイヤだったから省略したけど、今回もまたまたミリタリー&タクティカル系となってしまう。 最近はライブも行かないしパンクな格好もあまりしなくなってしまったなあ。革パンだけは毎年冬になると穿くけど、これはROCKHURRAHにとってはジーンズとかよりもずっと快適だから。穿いてみた事ある人には当然わかるだろうが、サラサラの裏地がついてるから、見た目よりは動きやすいんだよね。無理して格好つけてるわけじゃないのだ。  ミリタリー系が好きだからといっても本物の◯◯軍を忠実に再現しようなんて気は全くなくて、そういうマニアとも違うから、ぱっと見にはパンクかミリタリーか、どっちつかずの得体の知れないヤツという事になる。 ある意味では独特の路線?

さて、今回紹介する持ち物は特にテーマもないんだが、そういうタクティカル系の装備(?)で買って良かったと思えるものを挙げてみよう。

Massif Army Elements™ Jacket UCP

マッシフ・マウンテン・ギアという米国オレゴン州のメーカーなんだが、名前の割にはいわゆるアウトドア・ブランドとは違って、軍隊御用達に限りなく近い商品ばかり作っているようだ。街着っぽいものもカタログには載ってるけど、よく見たら潜入捜査とか要人警護とか、そういう特殊任務の人が着そうな機能を持った服作りを得意としている感じ。ウチのブログでもしつこいくらい書いてきた5.11タクティカルと似た雰囲気だな。ただしこちらの方がずっと高級で上質、さらに5.11よりは格段にスタイリッシュなシルエットのものが多いという印象がある。5.11+アークテリクスの線を狙ったのかも。値段もかなり高級で5.11のCMみたいに泥の中にダイブしてほふく前進なんて、とてもじゃないが出来なさそう。

このメーカーは難燃性素材として名高いノーメックスをふんだんに使ったジャケットを売りものにしていて、エレメント・ジャケットもその一種だ。日本語に訳すとえーっと、成分上着。何じゃそりゃ? ノーメックスは最新の技術ではなくてデュポン社が大昔に開発したもの。MA-1の後継に当たるフライト・ジャケット、CWU-45/Pで使われて知られるようになったとミリタリー好きならば思い出すだろう。採用されたのが1973年というからかなり歴史のある素材だね。 実際に燃やしてみた事は皆無だがROCKHURRAHもパイロット用の衣服でノーメックス素材を所有している。しかしこれ、何か肌触りが非常によろしくないんだよね。ザラザラしてて体にまとわりつくいやらしさ。夏は絶対に着たくないな。耐熱性が優れてるのと着心地は別問題というわけか。 着用写真は怪人蝿男みたいで気色悪いけど加工したものなので許して。

まあこういう特殊な素材を主原料として作られたマッシフのエレメント・ジャケットは簡単に言えばノーメックスを90%使ったソフトシェル・ジャケットという位置付けになる。毎回書くのもアレなんで「ソフトシェルってなーに?」の人は自分で調べて下さい。 このエレメント・ジャケットは本国の通販サイトで見ても何と579ドルもする高級品で、日本でも扱っている数少ない販売店では7〜8万もするもの。しかしなぜかかなりの格安で手に入れてしまった。もしかして噂のパチもんか?とも思うが(ミルスペックはちゃんと本物らしく付いてたしメイド・インUSAだったが)、炎に飛び込むつもりはないので細かい事は気にしないようにしよう。細部まで丁寧な作りになってたよ。

主要な用途はエア・クルーか戦車兵か、要するに燃えるのが危ない人々ということになる。ん?燃えるのが危ないのは万人共通か? したがって迷彩は空軍の場合はABU、陸軍の場合はACUと呼ばれるデジタル迷彩になるが、ROCKHURRAHはたぶん一番普及率が高いACUにした。単に特価品はACUしかなかったから選択の余地がなかっただけだが、本国でのメインはたぶんマルチカムになるはず。ACUはすでに廃止されつつある迷彩だからなあ。ACU全盛の頃には曖昧な色合いを嫌って着ずに、こんな時期になって今さらACUとは、その辺の時代感覚のズレがさすがROCKHURRAH流と言うべきか? それらの迷彩がそもそもわからん人は当ブログの「CAMOのマイハウス」「〜2012」を読んでみてね。商品名にあるUCPとはユニバーサル・カモフラージュ・パターンの事でデジタル迷彩の総称。ACUやABU、MARPATなどはどれもUCPのヴァリエーションというわけだ。

表側はやっぱりちょっとざらついた感触で、他のソフトシェルの柔らか素材に慣れた目には着心地悪そう。しかし内側はちゃんと首の裏までフリースになってるので見た目ほどではなかった。硬くて肘を曲げるのも苦労、という事は全然ないから、購入を躊躇してる人でも安心して大丈夫。 裏側は袖のあたりまで全部総フリースとなっている。最近のタクティカル系では多い通気性とかは一切考えられてなく、脇の下のベンチレーションとかはまるで付いてない。内ポケットもなくて腰の両サイドポケット、それと右胸に縦ジッパーのポケット、左手にポケット+ペン差しのようなものが付いている。 ペン差しは袖近くにも独立して付いていて、戦車兵やエア・クルーという仕事がそこまで日常的にペンを多用してるのかとちょっと驚いた。あれば便利なのはわかるが、頻繁にペンを抜き差しするには不便だろうな。 袖のところは手首アジャスターのようなのは全くなくて、裏側にN3-Bのようなリブ(簡単に言えばトレーナーの袖みたいな感じ)が縫い込まれている。 結構手首が華奢なROCKHURRAHでさえややきついから、がっしりした体格の人は袖通すのが大変かもね。 こういう風を通しにくい袖口、そして顎のあたりまで来る高いスタンドカラーによって、このジャケットはかなりの保温性を持っている。一番の特色である難燃性や耐熱性ばかりは試してみる事は出来ないし、そういうのを試さないといけないような事態には絶対巻き込まれたくないものだ。 通常のソフトシェルでは飽き足らない珍しもの好きな人には、シルエットも非常にスマートなのでオススメ出来るよ。 製品のどこにも付いてないけどロゴマークもカッチョいい。マッシフ最高。

Nike iD SPECIAL FIELD BOOTS 

お次はこれ、スニーカー界の超メジャー・ブランドであるナイキについて。実はROCKHURRAHではなくSNAKEPIPEの持ち物だ。個人的には名のあるスニーカー、特にアメリカ・ブランドをほとんど所有した事がないし、たぶん顔つきとナイキは最も似合わないと推測されるからなあ。ROCKHURRAHよりは運動に縁のなさそうなSNAKEPIPEはヒップホップに傾倒していた時期があり、ナイキやアディダスなどにも慣れ親しんでいたそうだ。確かにジャージも似合うしな。 そんなナイキがやっているNike iDなるシステムはスニーカーのパーツや素材、色を組み合わせてカスタマイズするセミ・オーダーの事だ。 ここで偶然に割と本格的なタクティカル・ブーツを出してるのを知ったのはROCKHURRAHの方だった。 何度か書いてきた事だが、こういうスポーツ・ブランドが軍用のブーツを作るのは珍しくはなくて、アディダスのGSG9(ドイツ連邦警察特殊部隊)をはじめ、オークリーやコンバースなどもアサルト(強襲用)・ブーツを出しているし、ニュー・バランスも米軍トレーニング用シューズを作っている。ナイキがそういうのと同様に軍用ブーツを開発していたかどうかは知らないが、形を見れば紛れもなくそれ系なのは確か。 うん、これはカッコ良さそう。 ちょうど軽くて履き心地が良いブーツを探していたSNAKEPIPEにお知らせしたところ、思ったよりもずっと大反応で一目惚れした模様。ずっと本格派のミリタリーブーツを履いてたんだが、これはオールレザーでカッコ良い&高そう、しかしながらかなりの重量で足が疲れるのは確かだった。そこで軽いタクティカル・ブーツをずっと前からオススメしていたんだが、現実問題として女性サイズの本物タクティカル・ブーツは日本ではほとんど需要がないのは事実。海外サイトだと女性FBI捜査官とかもいるし小さいサイズもあるようだが、日本ではほとんどが24.5以上しか扱ってない。ところがナイキiDのものはちゃんと小さいサイズもあるようで、それだけでもSNAKEPIPEにとっては嬉しいに違いない。良かったね。

このブーツはアッパー部分やソールの色、柄、素材などを好きな組み合わせでシミュレーションしてゆき、それをオーダーすると海外で生産、一ヶ月くらいで手元に届くというシステムらしいが、実際に原宿にショップがあって、もしかしたらそこで手に入るかもと思って出かけたのが10月初旬。 迷彩柄とかもあったんだけどSNAKEPIPEが欲しいのはただの真っ黒一色のもの。ナイキiDのサイトでもやってみたけど、選ぶのは全て黒のパーツばかり。まるで全部Aボタンだけ押して一番最初の候補だけで作り上げたオーソドックスなゲーム・キャラクターみたいなもので、これだけ基本的だったら何も特注しなくても店に行けばあるんじゃなかろうかと期待したのだ。それに同じ大きさでも履き心地や微妙な幅の違いとかは実店舗で確認した方がいいしね。 で、実際に店舗で試着してサイズも素材も決めた。 が、このオーソドックス過ぎる現物は店舗には在庫がないとの事。家に帰ってオーダーするしかなさそう。

一ヶ月というから11月初旬には届く寸法。届くのを心待ちにしていたよ。ネットで調べると案外早かったという人も待たされたという人もいる。どうやら工場側の事情で出来上がりの期日に違いが出てくるらしいな。確かに小さいサイズで真っ黒一色のミリタリー・ブーツをわざわざ特注で頼む女子は少ないのかも知れぬな。 いつしか頼んだ事も忘れたある日、家にヤマト運輸の不在票があり、差出人に見慣れぬ苗字が。 「外園さん?」「一体誰だろう?」と不審がる2人だったが、そんな苗字に近い知り合いもいない。ん、待てよ。「もしかして外園じゃなくて外国?」とSNAKEPIPEがあっさりと謎解きを披露した。そう、ヤマトの配達ドライバーが英語の差出人をよく読まずに面倒だから「外国」と書いたのが、読みにくい字だったという「妄想女刑事」もビックリのオチだったわけ(笑)。しかしいくら何でもナイキを外国って・・・。しばし2人で爆笑して再配達を頼んだ。 ナイキiDが海外生産だとあらかじめ知らなかったらわからないまんまだったろうな。

届いたブーツはこちらの予想を上回るほどカッコ良くて、驚くほど柔らかくて軽い。これは素晴らしい。

オーダーのパソコン画面ではわからなかったが、現物は変なツヤがなくて、思ったよりも品が良いなあ。この手のスポーツ・ブランドはド派手な色合いやブランド・ネーム、ロゴなどが押し付けがましいほど入った商品が多くて、それがイヤだったけど、このナイキのはかかと付近にごく小さなナイキ・マークが入っただけ。見る人が見ればウチの商品だとわかるだろ、という自信がうかがえる逸品だね。

ナイキiDは注文時に好きなIDとかネームを入れられるようになっている。アップルストアの刻印サービスと同じようなものだが、これもちゃんとSNAKEPIPEと刺繍されてて、よりオーダーメイド感を味わえる。  右が着用写真。タクティカル・ブーツは足首を保護するためにクッション入りのものが多く、履き心地は良くなるものの見た目はイマイチになりやすいが、このブーツは足首も細身でシルエットも好みだよ。履いた感想は「地面で跳ねるような感じ」だそうだ。何より軽いのがいいね。大昔に流行ったフランス軍パラディウムのブーツをレザーにした雰囲気と言えばわかってくれる人もいるだろうか?

最後のオチというか何というか、今回このブーツの事を書こうと思ってナイキiDのサイトを久しぶりに覗いてみたら、どこにも載ってない。検索しまくったら「この商品は現在取り扱いがありません(11/10現在)」だとの事。単なる品切れなのか何かあってなくなってしまったのか、その辺は全然不明。まるでこんな商品は存在してなかったような扱いに謎は膨れるばかり。色んな想像をしてしまうではないか。土佐弁で言うところの「ナイキはもうないきに」という表現でよろしいか(笑)? まさに廃版スレスレのギリギリ最後のオーダーで手に入れる事が出来て本当に良かったね、SNAKEPIPE。

時に忘れられた人々【15】◯◯になりたい編2

【一段低い扱いのせいか、たぶんまだいなさそうな半魚人バンド。】

ROCKHURRAH WROTE:

前に予告した通り、今回も色んなものになりきったバンドたちを紹介してみようか。

近年は狼のかぶりものをしたバンドとかもいるくらいだから昔に比べるとずっとなりきりバンドも多いのかも知れない。しかしROCKHURRAHの場合はあくまでも70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブに焦点を絞った記事ばかりしか書かない事で一部有名なので、コスプレ・バンドのルーツも未来も全然見据えてないのは間違いない。要するに考察とか総括とかには無縁だと思っててけれ。

パンクやニュー・ウェイブ以降の時代は音楽と同様に見た目に対するこだわりを持ったバンドが数多く出現した。すぐに飽きられてしまう危険性はあるものの、話題になりやすいというメリットもあったのは事実。 確かに80年代あたり、すごく派手だったのに全く話題にもならなかったバンドは少ないからね。しかし考えてみたら全く話題にならなかったらこちらが知る事もないのか? ROCKHURRAHが特に見た目を重視してるわけじゃないが、今回のブログの趣旨が見た目なので、その辺の事情は何となくわかってね。 では第二部、行ってみようか。

Visage / Mind Of A Toy

色んなものになりきったという点では忘れちゃならないのが、1980年代初頭にブームとなったニュー・ロマンティックスというムーブメントだ。これはグラム・ロックの80年代ヴァージョンとも言えるが、特定の音楽ではなく、男性が化粧をしたり着飾ったバンド達の総称だと言える。
主流は当時の先端だったダンサブルなエレクトロニクス・ポップなんだが、シンセサイザーなどをほとんど使わないアダム&ジ・アンツのような音楽までニュー・ロマンティックスの一極にあり、要するに着飾ってさえいれば何でもこのジャンル呼ばわりされていた。 ほんの一時期で廃れるかと思いきや、後の時代まで語り継がれるようなバンドまでここから出現して、案外層が厚いのが特色。80年代にはいかに化粧バンドが多かったかがわかるね。 具体的に何かの扮装をしたバンドは少なかったけど、仮装バンドの総本山がニュー・ロマンティックスだったのは間違いない。
ヴィサージはそういうムーブメントの元祖的存在で、リッチ・キッズやマガジン、ウルトラヴォックスなどが合体したメンバーも一流、まさに音楽のブランド品みたいなもんか。

これはなりたい願望と言えるのかどうか、中心人物のスティーブ・ストレンジが操り人形という難しい役どころに果敢に挑戦している。 「あいつを操り人形にしたい」と思う人はいるだろうが、その逆だからね。
と思ったら、操り糸を切って自由になった、でいいのか?歌詞がわからないから映像で推測してるだけなんだが、野坂昭如が作詞の「おもちゃのチャチャチャ」の英国版という感じだね。
こんな少年のような映像が残ってるスティーブ・ストレンジももはや50代の美壮年。かつて同時代をくぐり抜けてきたアダム・アントもボーイ・ジョージもピート・バーンズも見る影もないおっさんになってしまったなあ。全盛期がきれいだったから余計にやりきれないね。 ROCKHURRAHやSNAKEPIPEはかっこいい爺ちゃん婆ちゃんになりたいものだ。

The Residents / Constantinople

どこから由来のものなのかは全く不明だが、日本人だったら間違いなく「ゲゲゲの鬼太郎」における目玉おやじをすぐに連想するだろう。
レジデンツは1960年代から音楽活動を続ける(デビューは70年代半ば)アメリカの実験的、前衛的な音楽集団で、そのトレードマークがこの目玉おやじのコスチュームなのだ。
ジャケット写真だけではなく本当に常にかぶりものをしていたらしく、目玉以外でもクー・クラックス・クラン(KKK=白人至上主義の秘密結社)のような三角形のずきんをかぶったり、さらに奇妙な宇宙人のようなマスクをしたり、得体の知れなさではトップクラスのバンドだと言える。◯◯になりたい!という願望とは趣旨が違うのかも知れないが、コスプレ・バンド特集でこのバンドをすっ飛ばすわけにもいかないから書いておく。

音楽性は通常のロックやポップ・ミュージックとは大きくかけ離れているグニャグニャなものだが、前衛的とは言ってもそこまで聴きにくいという部類ではない。
同じアメリカで数年遅れにデビューしたDEVOはレジデンツの路線をより大衆的にわかりやすく展開したと言えるだろう。
個人的に好きだったのはアヒルの首を持ったイラストが不気味な「Duck Stab」やナチス風刺漫画のような「Third Reich ‘N’ Roll」だった。この頃は情報も少なくてジャケット買いで失敗した事も多数だったけど、レジデンツは知って良かったバンドだったなあ。

The Damned / Love Song
ホラー映画ではなく大昔の怪奇映画の中でも、フランケンシュタインの怪物と並んで大スターなのが吸血鬼ドラキュラなのは間違いない。
そして70年代パンクの幕開けと共に登場したダムドこそが後の化粧バンド、仮装バンドの直接的な元祖なのは間違いない。 その前の時代のグラム・ロックや「ロッキー・ホラー・ショー」なども化粧で仮装だったけど、ダムドの場合は曲と見た目のインパクトが桁違いにカッコ良かったからね。まあこれは個人の好みの問題もあるけどな。
そのダムドのデイヴ・ヴァニアンは時代によって少しずつ変わってはいるけど、ずっとドラキュラ風というスタイルを貫き通している。 好きなもの、似合うものがずっと変わらないという生き方自体が偉業だと思えるが、そんな彼の代表的な映像が下のものだ。

誰が見てもドラキュラ・ルックの典型的なもの。常人がマネしようと思っても到底出来ないほどの美学だな。
これはテレビ出演の映像で楽器演奏してるフリだけだが、初期パンク・バンドの中でも最も演奏力は高いし、ライブのメチャクチャ度合いも素晴らしい野郎どもだ。横のキャプテン・センシブルのモコモコ衣装もすごいね。こんなモコモコ着てもパンクだったのはキャプテンだけだよ。 ドラキュラと言えばこの少し後のバウハウス、ピーター・マーフィーも同じ路線だったけど、全員のアグレッシブさ、派手さでダムドの方に軍配が上がるな。

The Mummies / Uncontrollable Urge
「マンスターズ」や「アダムス・ファミリー」「怪物くん」の例を出すまでもなく、ドラキュラ、フランケンシュタイン、狼男などの花形モンスターに比べ、一段低い扱いを受けているのがミイラ男や半魚人といったモンスター達だ(上記の例に出てたかどうか全然覚えてないが)。
見た目のインパクトはあるもののどう考えても顔出し一切なしだもんな。顔を売るのが仕事の俳優が好んでやる役とは言いがたい。大昔のプロレスラーにザ・マミーなるミイラ男がいたが、あれはハナから顔を隠した覆面レスラーだから正体不明な方が効果的。
というわけでショウビズの世界ではミイラ男=
①正体は大物だが顔を隠す事情があった人
②自分自身では人気になれないから素顔を捨てた人
③何となく
という事になるのか?ん、ならない? そんな損なミイラ男に果敢に挑んだのが80年代アメリカのガレージ・パンク・バンド、マミーズだ。
メンバー全員が包帯グルグル巻にしてミイラ男なんだが、特に有名バンドが覆面でやってたわけではなさそう。こういうかぶりものは誰でも考える思いつきで、そのインパクトも一瞬だね。 宴会芸みたいなもんだ。

映像ではDEVOの有名な曲を割と誰でも考えそうなアレンジでカヴァーしている。 もうこのバンド名でこの見た目だったらガレージかサイコビリーくらいしか考えられないでしょう、という音楽。見る前から想像ついてたよ。
しかし一発芸で終わるはずのこのコスチュームをずっと続けていて、レコードのアートワークなどもいかにもこだわった50年代風。あゝ永遠のB級。 これはこれでROCKHURRAHの好きな世界だよ。

Demented Are Go! / Lucky Charm
「◯◯になりたい」という願望の中には現実世界で見かける職業や制服といったものよりも、やはりどうあがいてもなれないシロモノに対する願望の方が多いような気がする。
中でもゾンビや死体といった系列は誰でも将来的にはなれるという気はするが、生きている今、自分の目では見れないというジレンマがあり、コスプレで願望を満たすしかないのは確か。
そういうゾンビ願望(?)はサイコビリーという音楽の世界ではかなりポピュラーなもので、見た目もゾンビ映画の影響(を受けたバンドが多数)、音楽の方も歪んだエグいロカビリー。なぜかやってるカヴァー曲とかもみんな似通ってしまうという特異な音楽ジャンルなのだ。
みんなもう少しオリジナリティに頭を使おうよ、と思ってしまうが、同じテーマに挑戦する競作みたいなものなのかね?
そんなサイコビリーの世界でゾンビ・メイクの元祖と言えばやっぱりディメンテッド・アー・ゴー!、このバンドを挙げないわけにはいかない。
このバンドの主人公マーク・フィリップスはいかにもワル顔で人目を引くイケメン(1980年代初頭は)だったが、選んだ世界が暴力的で病的なサイコビリー畑。地獄の底からの咆哮のようなダミ声と、他のサイコビリー・バンドよりも一歩抜きん出たゾンビ・メイクのセンスで一躍有名となった。本当に一度聴いたら忘れないだけのインパクトを持ったヴォーカルで好き嫌いは抜きにしても強烈な個性があるのは間違いなし。
さらにそんな美形を台無しにする血みどろメイクや敢えてやるか?と思える傴僂コスチューム。サイコビリーの世界でやりたい放題が流行ったのは何と言っても彼らの影響が大きいはず。

映像は初期ではなく、今年のプロモ映像だとの事。もう随分老けてしまったはずだが、今でもやっぱりこんな事やってるのか。死体メイクでの撮影の模様をコミカルに表現した面白いPVだな。単なるゾンビではなくて頭に五寸釘だよ。並の神経ではマネ出来ないね。
彼らがデビューした80年代前半と比べると特殊メイクも随分と進歩してる、と言うよりは彼ら自身のなりきりぶりが進化してるのかも知れないね。

というわけでちょっと衣装を買い揃えればなれる程度の仮装、そうとう無理しないとなれない気合の入ったコスプレまで、秋葉原文化とは全く無縁のROCKHURRAHが書いてみた。

こういったバンドはいくらでも存在してるとは思うけど、とりあえず自分の気が済んだので、今回はこれでおしまいにしよう。 ROCKHURRAH自身は何になりたいかと聞かれれば、見た目ではなく、ヒマで余裕のある趣味人になりたい。

ではまた次の登場の機会まで。