時に忘れられた人々【04】Positive Punk

【あんパン、メロンパン、えっ?ポジパン!】

ROCKHURRAH WROTE:

暑いから「背筋も凍る音楽特集」でもと思ったが、そんなに都合良く寒気がする音楽なんか転がってなかった。なので今回はズバリ、80年代半ばを席巻したポジパン特集といこう。関連性は特にないがウチで結構扱ってるジャンルだから、一度まとめて書いておきたかったというだけ。

正式名称(?)はポジティブ・パンクなんだがこの音楽には後の時代に付けられたさまざまな呼び方が存在していてゴシックだのゴスだのデス・ロックだの、傍から見たらどうでもいいようなネーミング・センス。ROCKHURRAHとしてはやはり80年代的にポジティブ・パンクのままでいいじゃないか、と言いたい。 発生についてはよくわからないが80年代ニュー・ウェイブのジャンルとして発達したネオ・サイケ、ダーク・サイケと呼ばれるような音楽が元になって82年くらいから登場し、ホラーな化粧、神秘主義(?)、奇抜な衣装など悪趣味とも取れるようなルックスだった一団を主にポジティブ・パンクと言うようだ。

この手の音楽の先駆者としてよく挙げられる、つまりロックの世界にゴシック的な要素を取り入れたのはやはりジョイ・ディヴィジョン、スージー&ザ・バンシーズあたりなんだろうが、バンシーズはともかくジョイ・ディヴィジョンについてはポジパンと言ってる人はたぶんほとんどいないだろう。音楽的には後のポジパンに多大な影響を与えたのは間違いなさそうだが、見ての通りイアン・カーティスは特に目立ったところのない地味な若者。たまに機関車の車輪のように両手をぐるぐる回すといったアクションをするのは並じゃないが、ポジパンの大きな特徴であるどぎついメイクとか、そういう要素は皆無なのだ。

ポジパンのルーツとか成り立ちとか、そういううんちく話はいくらでも見てきたように書けるけど、今回は一切抜きにしてただ過去にポジパンの範疇に引っかかっていたバンドたちを純粋に追いかけてみよう。

Bauhaus

重厚で沈んでゆく曲調とパンクの攻撃性、ホラー・・・と言うよりはもっとクラシカルな怪奇映画趣味を取り入れて従来のグラム・ロックをより文学的、芸術的に再構築して、ダークなのに割と一般的に人気があったのがこのバウハウスだろう。
ピーター・マーフィーの中性的なヴォーカル・スタイルだけでなく、バンドとしての質の高さ、見せ方が非常にうまかったな。

彼らが登場したのはまだポジパンなどの音楽が誕生する前だが、後の時代のポジパンに直接的な影響を与えたのは間違いない。
何はともあれ「裸にメッシュ・シャツ=着ない方がマシでしょう」と言えば真っ先に思い浮かぶのがやはりバウハウスかな。何かやたら「的」が多い文章だな?

Sex Gang Children

ポジパン御三家の筆頭。
ヴォーカル、アンディ・セックスギャングの角刈りリーゼントのような髪形に白塗りの化粧というスタイルはポジパンと言うよりは一部のサイコビリーに通じるものがある。
音の方は典型的なポジパンもあるが、どちらかと言うとかなり珍妙な部類に入る曲が印象的。正体不明のモンゴル調なものなど、通常のロック的な観点からは笑ってしまうようなものだし、そういうキワモノという点がポジパンの理想とする姿にピッタリ当てはまったのか、人気は高かった。

ROCKHURRAH RECORDSの商品紹介にもよく書いてる事だが「カッコいいのを通り越してカッコ悪くさえある」という境地。
本人とファンが気持ち良ければ他はどうでもいいでしょう、の世界。

Southern Death Cult

セックスギャング・チルドレンと並ぶポジパン御三家の人気バンド。
最初はサザン・デス・カルトというバンド名だったがデス・カルト→カルトとだんだんバンド名が短縮されてゆき、それにしたがってポジパンという特殊なカテゴリーから抜け出して、より汎用性の高いロックに変身していった。
後半には化粧っ気もなくなるが初期の見た目はなかなか派手でインディアン風+アダム・アント風と言うべきか、日本のウィラードなどとも近いルックスをしていた。全盛期には音楽雑誌の表紙などを飾ったりもしたろう。

気色悪くて怖そうなセックスギャングなどと比べると確かに女性受けはするな(笑)。ところが個人的にヴォーカリストのイアン・アストベリーの声がどうしても好きになれず、あまり好きじゃないバンドだった。
この曲、デス・カルト時代の「Gods Zoo」などは良かったけどね。

Alien Sex Fiend

上のふたつと比べると少し劣ると勝手にROCKHURRAHは思い込んでるが、本当は人気あるのかも。その辺のご当地人気ランキングは見てきたわけじゃないからよくわからぬ。ポジパン御三家の真打ちなのか?
当時のイギリスでポジパンの聖地だったクラブ、バッドケイヴを中心に盛り上がっていたのがこのエイリアン・セックス・フィーンドだ。

何だかタレ目でタヌキ顔のくせに顔がのっぺり長いとか、化粧や服装、レコード・ジャケットが悪趣味でドギツ過ぎ、とか思い込んでいたため個人的にこのバンドはあまり聴いていない。んが何とSNAKEPIPEは持っていたそうで「この曲聴いたことある」だって。うーん、さすがは補完し合う関係だな。
ベースがいないというやや変則的な楽器編成だが、我が高校生時代もドラムマシーンとギターのみで曲を作っていたものだ。ん?そんな話は今は関係ないか。後のマリリン・マンソンあたりの元祖と言えなくもない。今回のブログタイトル下の写真はこのバンドより採用。

Virgin Prunes

アイルランド出身のキワモノ・カルト芸術集団といった風情で上記御三家よりはずっと好きだったバンドがこのヴァージン・プルーンズだ。
特にすごい芸術的理念を持っているわけではなかろうがキリスト教の国々ではタブーとされるような表現を数多く題材としていて、その辺のこけおどしB級感覚が好きだった。
ホラー映画に出てくるおばちゃんのような女装(なぜか人形を抱いたりしている)やヴォーカルの下品なダミ声もバンドの雰囲気にピッタリだった。
ごく初期は同じダブリン出身のU2と深い関係にあり、U2のジャケットで有名になった少年もヴァージン・プルーンズの一族だそうだ。

Specimen

70年代パンクの時代にイギリス最初のインディーズ・レーベルとして誕生したRAWレーベルで活動していたUnwantedというバンドのオリーが中心となったポジパンのバンド。
プロモ見てもわかる通りポジパンというよりはグラム・ロック的な要素が強くてロッキー・ホラー・ショーを彷彿とさせるメイクや衣装。
いわゆるゴシック云々の重苦しい部分はなくて少しコミカルなところに味があり、正直言ってあまり音楽的違いのないバンド達が多かったポジパンの中では面白い存在だった。
このプロモに限って言えばギターなんかはまるでHell-RacerのChiyo-Xみたいだし、そしてここでもやはり裸に網シャツが大活躍。

Screaming Dead

これまたドラキュラ風の化粧が似合ったバンド。
ポジパンがブームだった頃でも日本では不当なまでに紹介されず、あまり世間で知られてないバンドのひとつだと言える。
化粧をしてるという以外はポジパン的ゴシック的要素はほとんどなくて、ダムド風の演奏にジェネレーションX風のヴォーカルが実に恰好良いチンピラ・バンドだった。
先のスペシメンの時にも書いた通り、様式倒れというほど画一化してしまったポジパンには面白みがなかったもんだが、このスクリーミング・デッドのように威勢の良いバンドは大好きだ。レーベルもハードコアで有名なNo Futureだったしね。たまにGSっぽいような音楽もやっていて、それがまたいいなあ。
人気なかったのでプロモが少なく、前述のドラキュラ風化粧はしてないんだが、ROCKHURRAH RECORDSで販売中なのでそっちでジャケット写真をチェックしてみて。

Ausgang

非常に派手な見た目でルックスは典型的ポジパン、申し分なし。初期はKabukiなるバンド名だったが途中で改名したようだ。見た目とは裏腹に音楽の方はちょっとバースデイ・パーティもどきのプリミティブな部分があって一般受けは難しいもの。ヴォーカルの声も妙に甲高いし、そんなわけで日本での知名度はイマイチかも。この見た目でもう少しキャッチーな音楽やってればもっと人気出たろうに、惜しい。

Cristian Death

イギリスのポジパンとはたぶん全然違う発展をしてきたはずだが、アメリカにもこういう見た目のポジパンがちゃんと同時代に存在していた。それがこのクリスチャン・デスです(突然丁寧語)。
デビュー・アルバムのなぜかフランス盤を一枚だけしか所有してないのでこのバンドがどうなったのかは全然知らないんだが、やはり栄養も違ってガタイもでかい、体力的にも優っているアメリカ、というような印象で英国バンドより力強いものを感じる。もう書くのも疲れてきたので紹介もぞんざいだな。

The Sisters Of Mercy

「ゴスの帝王」などと呼ばれていい気になってる(なわけないか?)アンドリュー・エルドリッチによる伝説のバンドだが、上記のポジパン達とは違って彼らにはほとんど化粧っ気はない。
でっかいレイバンのサングラスとシルクハットのような帽子に長髪といったスタイル、そしてドクター・アバランシェなる名前の付いたリズム・マシーンに乗せて歌うくぐもった低い声、これだけで奇跡のシングル・ヒットを連発したというところが伝説なんだが、彼らが1stアルバムを出した1985年頃にはポジパンのブームはそろそろ終わりに近づいていたような気がしないでもない。そういう意味でポジパンの最後を飾る大物といった見方も出来るかね。
このシスターズの主要メンバーで大ヒットの影に関与していたウェイン・ハッセイ(後のミッション)は個人的に好きじゃないので省略。

March Violets

レーベルも初期は一緒だったしどちらもドラム・マシーンによるバンド構成だったし、シスターズと比較される事が多かったのがこのマーチ・ヴァイオレッツだ。
そのためか意図的にシスターズと違う路線を歩まなければならなかったところがすでに不運。と言うか特に似たところはなかったんだけどね。
本当は全然違うのかも知れないけど存在感のある兄貴と不肖の弟、というような構図が勝手にROCKHURRAHの中に出来上がってしまってる。
このバンドはそういうダメな部分も含めて大好きだった。
女性ヴォーカルとやや品のないサイモンDのいやらしい声の掛け合い、そして無機質なビート、謎の宣教師みたいな風貌、ヒゲもすごい。

プロモの撮り方が差別的でヴォーカルはヒゲ男サイモンDがメインなのに映ってるのは女性ヴォーカルばかりというアンバランスさ。まるで「ワンピース」のDr.ホグバック&シンドリーちゃん状態。知らない人が見たら勘違いしそうだが、たまにチラチラ映る方がリーダーなので間違えないように。

以上、ROCKHURRAH RECORDSらしくあくまでも当時のポジパンに焦点を当てて書いてみた。正直まだ書ききれないという部分もある反面、どのバンドも違う言葉で紹介する事出来ないよ、というくらいに書いてる本人まで区別つかなくなってしまった部分もある。要するに同じような嗜好を持った者の集まりという特定の形式だから、どれも似てしまうんだよね。

今のこの時代に80年代ポジパンを追い求めてる人は少ないと思うけど全盛期には街角にもごろごろこんな奴らがいた素晴らしい時代。「時に忘れられた人々」の趣旨とすればまさにピッタリな内容じゃなかろうか。

パーフェクトな千年の妄想

【今敏監督の作品には味のあるオヤジがいっぱい登場】

SNAKEPIPE WROTE:

アニメ映画、と聞いて一番初めに思い浮かべる言葉はなんだろう?
オタク?美少女キャラ?秋葉原?
どれも正解だと思うし、「ある一部の人のためのもの」と考える人も多いだろう。
しかしどんな世代の人でも、例えば「となりのトトロ」や「千と千尋の神隠し」などで有名な宮崎駿監督の作品に触れたことはあるのでは?
SNAKEPIPEもそれほど詳しくはないけれども、数本は宮崎監督作品を観ている。
アニメだったら子供時代は「ゲゲゲの鬼太郎」の大ファンだったけど!(笑)

今回は世界的に有名な宮崎監督の・・・ではなく、最近気に入っている今敏監督の作品についてまとめてみたいと思う。
SNAKEPIPEやROCKHURRAHは今まで全然知らなかったけれど、どうやら「その世界」ではかなり有名な監督のようで。
2001年には文化庁メディア芸術祭で「千と千尋の神隠し」と同時に大賞を受賞!
海外での賞もたくさん獲ってるんだって。
なるほどね!
確かに今監督の作品って「大人向き」というか、非常にリアリティがあるからね!
人の顔も「こんな人いる!」という、決して美化したり空想上の美少女とかじゃない設定に好感が持てるし。

前述したようにあまりアニメ映画には詳しくないSNAKEPIPEが一番初めに今監督の作品を観ることになったのはROCKHURRAHのおかげである。
元々ROCKHURRAHが筒井康隆の原作を読んでいたため、そのアニメ化作品を手に入れてくれたのである。
「原作は面白かったけどアニメはどうかな」というROCKHUURAの言葉を横で聞きながら観たのが「パプリカ」(2006年) である。
サイコセラピストが患者の夢の中に入っていき、治療を行う。
まるで「The Cell」だけれど、夢をよく見るSNAKEPIPEからするととても羨ましい。
「パプリカ」の中では患者が見た夢はパソコンに記録することができる仕組みになっていて、巻き戻したり進めたりして、他人と夢を共有することができるのである。
とても面白い夢を見た、と思っても充分に説明しきれない。
夢は本当に個人のためのものでしかないからだ。

治療中に患者の夢の中に入っていく時、主人公のセラピスト千葉敦子は「パプリカ」という名前の少女に変身する。
そのパプリカは空を飛んだり、絵画の中に入ったり、空間や時空を超越した活発な動きを見せる。
その場面の切り替わりの素早さは実写ではとうてい不可能!
そして夢ではよくある「つじつまが合わない」現象や、足がもつれて前に進めない様子なども非常によく表現されていてびっくりした。
背景や人の表情も素晴らしい!
すごい!こんなアニメは観たことないぞ!(笑)

アニメがあまりに面白かったので原作も読んでみたけれど、ところどころの設定は違っていてもかなり原作に忠実にアニメ化されていることが分かった。
逆に言うとアニメだからこそ忠実に再現できた、ともいえるのかな。

「パプリカ」で興味を持ち、また今監督の作品があったら観ようね、と言っていたらすぐにまたROCKHURRAHが手に入れてくれたのが「パーフェクト・ブルー」(1997年) である。
これはまた趣向が全然違っていて、B級アイドルとストーカーの話だった。

アイドルもいかにもいそうなタイプだったし、ストーカーの男も実際にいそうな顔立ちや行動を起こすためアニメというよりはドラマを見ているような感じ。
ここでもアニメだからこそ可能な表現として採用されていたのが、どこからが夢でどこまでが現実なのか分からなくなるシーン。
観ているこちらもだんだん分からなくなってくる。

この作品では「狂気」がテーマだったのかな。
ラスト近くでは本当に「人間って怖い」と思ってしまったSNAKEPIPE。
「笑い」や「正義」「戦い」のような従来のアニメとはかなり違っていて、これも大変面白かった。

続いては「妄想代理人」(2004年) 。
これはテレビ用のアニメで全13話。
「人々の内側で蠢く不安と弱さが最大限に増幅されたとき少年バットは現れる」
というキャッチコピーに示されるように、ストレスにさらされる現代人の「病み/闇」に焦点を当てている作品である。
前にタイトルは忘れてしまったけれど、作家乙一の作品でも似たような主題を読んだことがあった。
「逃げる時の言い訳」として造り出されてしまった架空の人物が独り歩きを始める。
皆が共通の「言い訳像」を持ち出すことで現実味を帯びる、というのは理解できるけれど、実在してしまったために問題が発生する。

全13話のうち、最初の5話くらいまでは一人の登場人物に焦点を当てた話で1話が完結したので、「世にも奇妙な物語」のアニメ版のような雰囲気。
ここまででも充分に見ごたえがあった。
途中で少年バットをめぐるサイドストーリーが3話入っていて、それがちょっとだけ長かったかな。
せっかく盛り上がっていた気分が少しだけ削がれたような感じで、SNAKEPIPEは1話だけで良かったのかな、と思ってしまったけど。

それにしても1話から登場しているアニメキャラクターデザイナーの鷺月子に魅力がないのが残念!
実際にいそうなタイプだけど、もし身近にいたらかなりイライラさせられるだろうな。
とても創造的な人間には見えなかったのに、ねえ?(笑)

次に観たのが「東京ゴッドファーザーズ」(2003年)。
今回はなんとホームレス3人が主人公、というこれまたあまりアニメでは有り得ない設定。
そのうちの一人はオカマだし。(笑)
簡単に言ってしまうと「ドタバタコメディ」かな。
笑いあり涙あり、のとても人間味あふれるドラマ仕立てになっている。
クリスマスに赤ん坊を拾うところから始まるストーリーで、その子供を両親に返そうとすることからいろんな事件に巻き込まれてしまう。
最後はキレイにきっちりハッピーに完結する。
大人も子供も誰もが安心して観られる、クリスマスシーズンにどうぞ、とお薦めしたくなる作品である。
3人のホームレスの性格描写、過去の話などが上手くまとまっていてこれも非常に良く出来た作品である。

最後、「千年女優」(2001年)。
なんと今度の主人公は「おばあちゃん」。
かつては銀幕の大スターだった元女優が今までの人生について語る、というストーリーである。
テーマはなんと純愛。
インタビュアーが元女優の話を、その当時が再現された設定の中に共存し体験する場面が面白い。
映画の話なら映画の中に入り、元女優が行く場所に一緒に付いて回る。
その時々に、設定通りの服装や人物に成り切って登場するインタビュアーがいい味出している。

元女優はかなり浮世離れした夢見がちな性格で、非常に女優に向いている女性である。
いつまでも「お姫様」のまま、少女のような様子で一人の男性を追い続ける。
でも現実は厳しい。
年を取らない人間はいないのは当たり前だ。
その現実に直面した元女優は
「老いた自分を見られたくない」
と女優を引退。
追い求めていた男性のことも同時に諦めてしまう。
うーん。
元女優は前述したように「夢見がちな性格」なためなのか、自分が年老いた、ということは相手の男性も同じように老いている、ということに気付いてなかったのか。
それともそのことも分かっていて、だからこそ幻想を抱き続けたかったということなのか

元女優の生まれた時から現在までを振り返る長い年月を、紙芝居のような技法で表現していたのがとても面白かった。
ん?本来は紙芝居が先でアニメが後か。
昔っぽい表現で逆行していたから新鮮だったのかな?(笑)

上にまとめてみたのはSNAKEPIPEが観た順番だけれど、実際に今監督が制作したのは
パーフェクトブルー(1997年)
千年女優(2001年)
東京ゴッドファーザーズ(2003年)
妄想代理人(2004年)
パプリカ(2006年)
である。
「サスペンス」→「恋愛ドラマ」→「コメディ」→「ドラマ(?)」→「SF」というように様々なジャンルにまたがって作品展開していることが分かる。
「妄想代理人」はどのジャンルにしたらいいのか迷ったので「ドラマ(?)」と書いてみたけど。(笑)
これだけ幅広くいろんなテーマに取り組める今監督は、とてもユニークな個性と才能を持つ器用な方なのね。

音楽に焦点を合わせてみると、今監督はなんと平沢進の大ファンらしい。
平沢進って、ほらP-MODELのっ!(笑)
「千年女優」「妄想代理人」「パプリカ」での音楽を担当している。
ヨーデル風の声がよう出るわ!(ぷっ)
そして「東京ゴッドファーザーズ」の音楽は鈴木慶一!ムーンライダース!
やっぱり80年代なのね、と思わずニヤリ。(笑)

日本が世界に誇れる文化というとやっぱりアニメ。
今監督の作品は同じ日本人として胸を張りたくなるほどSNAKEPIPEもROCKHURRAHも大ファンになってしまった。
今度はどんな世界を魅せてくれるのか。
とても楽しみである。

7月5日に生まれて

【共通点がまるでない者ども】

ROCKHURRAH WROTE:

本日7月5日はROCKHURRAHの誕生日だ。
プレゼントをくれると言うSNAKEPIPEに「その気持ちが一番嬉しいよ」などと返しながらも、いざ選ぶとなると思いっきりこだわり満載で我ながら毎年困った野郎だな。
いつもプレゼントを探しに行ってもなかなかこれというモノに出会わないんだが、今年は珍しくすんなり理想としてたのが手に入った。
帽子好きのROCKHURRAHのためにSNAKEPIPEが見立ててくれたのが中折れストローハットだ。ソフト帽もそうなんだがこの手の帽子の場合、ツバの広さと深さ、伊達さとチンピラ加減のバランスが大切。それが見事に調和した時の似合いっぷりはそんじょそこらの帽子男が逃げ出す程(大げさ)。
とにかくいい帽子が手に入って大満足。ありがとうSNAKEPIPE。

さあ、今回は何を書こうかと考えて、ありがちのテーマだが同じ日に生まれた有名人はだあれ?ってな感じで書いてゆこうと思う。最初に宣言しておくが企画倒れの可能性が非常に高い記事になりそう。実は探してみたがあまり有名な人も書けそうな人もいなかったような状態だからだ。まあ誕生日なので許してやってね。

この日が誕生日で世界的に有名だと思える人はやはりジャン・コクトーだろう。本業は詩人だと思うが小説や映画などでも著名、絵も描くし音楽もプロデュース(?)、この時代のマルチメディア・アーティストみたいなもんか。ただしROCKHURRAH、芸術だろうが何だろうが好きとか嫌いとか自分にとっての善し悪し程度はわかるが、特に造詣は深くない。だからコクトーについて語るような事は出来ない。コクトーに関する個人的な思い入れは色々あるが(過去に敬愛していたビル・ネルソンとコクトー・レーベルなど)、今回は関係ないのでそれらの話もやめておこう。コクトーの多才ぶりを示すのかどうかはわからないが、体から阿修羅のように六本の手が出てペンを持ったりタバコすったりしてる写真とか、「美女と野獣」におけるジャン・マレーのタヌキ男みたいな特殊メイクとか、この辺の紙一重の稚気は好きだな。

続いては英国のファッション・デザイナー、ポール・スミスも7月5日生まれだ。残念ながらこの人がデザインした服に興味を持った事がなくて店も一度も行った事がない。近所の古着屋でポール・スミスのジッパーが壊れていた革パンが破格値だったので買ってきて自分で修理して穿いていたのが唯一のポール・スミス体験。しかしすぐに色々な場所が破れて、そこにカーゴパンツのように革のポケット縫い付けてごまかしたりダメージ加工のようなミシン・ステッチをしたり、苦心して穿き続けたものだ。だからポール・スミスの革は破けやすい、という思い出ばかり。たまたまROCKHURRAHが買ったものが程度良くなかっただけで、実際はそんなはずはないだろうけど、皆さんもお気をつけなされ。

音楽の世界ではどうだろうか?うーん、あまりぱっとした人がいないなあ。70年代の大スター、藤圭子。この人も同じ誕生日だ。可愛らしい顔で怨み演歌というギャップが受けて大人気。後の時代では宇多田ヒカルの母親としての方が知られているようだがこの辺はROCKHURRAHは全然興味なし。同じ怨み系だったらだんぜん女囚さそりで有名な梶芽衣子の方がいい。誕生日とは全然関係ないけどね。

他も探してみたんだがさらに悲惨な結果に。80年代前半と言えばイギリスではニュー・ウェイブ真っ盛りだったが、同時代のアメリカで大人気だったバンドのひとつがヒューイ・ルイス&ザ・ニュース。そのヒューイ・ルイスも同じ誕生日だ。個人的には全くもってどうでもいいんだが、この日が誕生日の有名人となると真っ先に出てくるのが情けない。
クラッシュの初代ドラマーだったテリー・チャイムスもまた7月5日生まれだが、二代目のトッパー・ヒードンの方が有名すぎてかなり地味な印象。

ある意味上記の誰よりもTVで見た回数が多かったかも知れないがドリフの仲本工事もこの日が誕生日だ。うーん、体操出来て音楽も出来て、多才なのは確かなんだがドリフの中では地味だなあ。嫌いじゃないけどコメントする事がない。

最後となったがジョン・ミリアス監督の傑作映画「デリンジャー」で1930年代に世間を騒がせていた実在のギャング、ジョン・デリンジャー役をやっていた俳優ウォーレン・オーツも同じ誕生日だ。デリンジャーはその生き様がセンセーショナルだったために何度も映画化されたが、渋味のあるチンピラ悪党おやじという点でこのウォーレン・オーツが最もハマり役だったと思える。今回の誕生会の中でROCKHURRAHが最もシンパシーを感じるのがこのウォーレン・オーツだし、これくらい苦み走った悪オヤジになりたいものよ。(銀行は襲いません)

見せたがり症候群

【今回のライブのフライヤーでも使用されたLux Interiorの写真】

SNAKEPIPE WROTE:

6月27日、今年3月にオープンしたばかりのライブハウス「FEVER」に行ってきた。
「BACK FROM THE GRAVE &MONSTER RECORD PRESENTS
‘STAY SICK TURN BLUE ~tributo to Lux Interior(10.21.46-2.4.09)’」という 今年2月に亡くなったCrampsのヴォーカル・Lux Interiorと、THE MONSTER A GOGO’SのヴォーカルだったHIDEROW両者の追悼ライブである。
「新代田駅周辺って何もないはずなんだけど」
というROCKHURRAHの言葉通り、駅前はガランとしてコンビニが一件あるだけ!
時間前に着いて仲間と軽く飲んで行こう、なんてことは新代田駅下車ではまず無理!
駅から近いのは利点だけど、隣がスイミングスクールってどうなの?(笑)

会場はさすがにできたばかりなだけあって、とてもキレイだった。
ギャラリーのスペースもあって洒落た雰囲気。
ライブ会場もこじんまりした横長のスペース。
今回は出演バンドが多いせいか17時開場、17時30分開演というかなり早い時間からのスタート。
そのせいかスタート時にはあまりお客さんが入っていなかった。
「墓からの帰還」なんていう「いかにも」なタイトル通り、今回はかなりエグい「きわもの系」ガレージバンドが揃っていた。

「ハエの頭」のかぶりもの、スーツ姿で登場したのはFLY 。
ギター、ドラム、ヴォーカルを一人でこなすとは!
3つのことを同時にできるってすごいなあ!
しかもかなり上手い!
ただし「かぶりもの」のせいなのか、ちょっと声がこもってるね。
そしてずっと座ったまま一人で演奏してるので、どの曲も同じに聴こえてきてしまった。
ラストの2曲前になってゲストが呼ばれた。
MISS TARANTURAの登場である。
グリーンのかつら、ナチス女看守「ILSA」の服装でクネクネ踊り始めた。
そしてステージを降りたかと思うと、観客用のスペースにあったテーブルの上で寝転んだり、上に立ったりして大暴れ!
ラストの曲ではついにブラまで外して踊り狂うMISS TARANTURA。
SNAKEPIPEも含めて、ほとんどのお客さんは演奏そっちのけでMISS TARANTURAに目が釘付け!(笑)

続いての登場はBAIT ONES
豹柄のピッタリしたタイツで全身を包み、Lux Interiorのように女性物のパンプスを履き、ワインを頭から降り注ぎ客席スペースを歩きながらヴォーカルが登場。
このバンド、ドラムとベースが女性で、ギター・ヴォーカルの池田貴族似だけが男性というユニークな編成。
始まって2、3曲目くらいまではガレージ・ガレージしててカッコ良かったんだけど、なぜかこのバンドは1曲1曲が非常に長い!
そこまで伸ばさなくてもいいんじゃない、と言いたくなるようなフレーズの繰り返しを多用しているため、だんだん眠くなってきてしまった。(笑)
もっと凝縮して短く簡潔にまとめてもらったら良かったのになあ。

3番目、GO-DEVILS 。
これは女の子3人組バンドで、これまたガレージ系。
元気いっぱいの女の子、という印象かな。
結構演奏が上手かった。
途中からヴォーカルとしてプロレス用のマスクを付けたJELLY BEAN が登場。
この方、有名なイラストレーターなんだって?
あ、確かに絵は見たことあるね!(笑)
ノリノリでステージ上で歌いまくり、プロレスごっこまで始めてしまった。
ギターの女の子、バーカウンターの上に乗って演奏してたかと思うと、天井の梁をターザンのようにつたってステージまで戻る、という曲芸技を披露!
なんだろ、今日は「見世物」的なバンドが多いなあ。(笑)

続いてSPIKE 。
以前にもライブを観たことがあるバンドなので大体のところは予想できていた。
非常に上手いんだけど、どうもあの「角」が気になって仕方ない。(笑)
今回も安定したステージで、とても聴きやすかった。
ただし、ライブっていうのが「安定」していていいのかどうかは分からないけどね!
それにしてもこの日のバンドの中では「角」くらいでは全然「きわもの」には見えなくて残念だったね。(笑)

次はTHE MONSTER A GOGO’S。
これはROBINのHIROSHIが90年代に在籍してたバンドで、ヴォーカルHIDEROWが事故で亡くなってしまう、という悲劇のため解散した伝説のバンド。
そしてHIDEROWの命日である6月24日近くになると、毎年復活してライブを行っている模様。
毎年どこかで復活ライブやってるのは知っていたけれど、今回初めて観ることができた。
当然のようにギターはROBINのHIROSHI。
恐らくドラムとベースも元THE MONSTER A GOGO’Sのメンバーだと思われる。
皆バットマンを意識してアイマスクを付けていたので、はっきり分からない。
そして亡きHIDEROWの代わりにヴォーカルとして登場したのが後で何度も登場することになる東京クランプスのELOVIS
このバンドが活動していた当時のことはよく知らないけれど、かなり盛り上がってたんだろうなと想像する。
どれがオリジナル曲でどれがカヴァーなのか、などはよく分からなかったけど、とても良かったと思う。
THE MONSTER A GOGO’Sの音源はなかなか手に入りにくくて1枚しか持ってないけど、他も聴いてみたいな!
ROBINで聴き慣れてるギターとは違って、ガレージ系のサウンドだったのがとても新鮮だった。
服装もシャツにネクタイだったしね!(笑)
ここでもMISS TARANTURAが乱入してきて、かき回してくれてた。

続いてはROBIN。
まさかTHE MONSTER A GOGO’Sの次がROBINとは思ってなかった!
この展開だけはあり得ない、と予想してたのに裏切られてしまった。
いつものROBINにギターに戻ったHIROSHIは連続でステージに。
最近多い「BATTLE GOES~」からのスタート。
この日は珍しく「KING OF BOOGIE NIGHT」が途中で中断!
仕切り直してもう一回最初から演奏。
こんなの初めて観た!
それにしても今回のROBINは曲数少なかったなあ。
多分全部で6曲くらいしか演奏してないね。
そして音響がROBINのようなラウド系には向いてなかったようで、音が割れて聴こえてきたのも残念だった。
やっぱりROBINはワンマンで、音響バッチリで参戦したいね!

7番目にTOKYO CRAMPS登場!
ヴォーカルは前述したELOVIS、全身網タイツに「ひもパン」というLUXを意識した服装。
途中で網を引きちぎり、「ひもパン」一丁で歌いまくっていた。
実はあんまりCrampsの曲を知らないSNAKEPIPEなので、「聴く」というよりは「観る」に重点を置いてしまった。(笑)
あんなギリギリのところまで下がった「ひもパン」だから、SNAKEPIPEだけじゃなくてお客さんみんなもそうだったかな?
ここでは誰だか分からない女性が「女王様」として登場。
ELOVISに鞭をくれてやるシーンなどがあって、またもや「見世物」ステージになっていた。
「Bikini Girls with Machine Guns」の時にはまたもやMISS TARANTURAがビキニ姿で登場。
今回のライブは女性がステージに立つのをよく観るなあ。

ラストはSpecial JET band(futurering SEIJI WOLF)。
ゴジラのかぶりものをしたギターウルフのSEIJIの横にピンク色のライダースを着てギター持ってるのは、なんとJET BOYSのオノチン!(笑)
オノチンの脱ぎっぷりは「R.P.G.ファイナル参戦!」でも記事にしたことがあるけれど、今回もまたやってくれた。
ヴォーカルはこの日、何度も登場しているELOVIS。
声量あるし、最後まで元気いっぱいでステージを務めているのはすごいパワーだね。
そしてアンコール前の曲の途中で、またもや「ひもパン」一丁で歌っていたELOVISに刺激されたのか、いきなり下半身だけ露出させてギターを弾き始めたオノチン。
「俺も脱ぎたい」
と思ってしまったのだろうか。
ELOVIS顔負けの真っ赤な「ひもパン」だけを着けていた。
そしてアンコール「Surfin’ Bird」演奏中に事件は起こった。
興奮したオノチンが客席にダイブ!
それを受けた観客がオノチンを神輿状態でかついだまま闊歩している。
その時のオノチンはなんと両足開脚状態!(笑)
いつの間にか「ひもパン」が外れている!
数人の観客にかつがれて両足開脚になったオノチンのシルエットがどんどんSNAKEPIPEのほうに近づいて来た!
もうたまらなくなって身をよじって大笑いしてしまったSNAKEPIPE。(笑)
大爆笑モノだよ、オノチン!さすが!やってくれる!(笑)
最後の最後に本当に面白い「見世物」見せてくれて、ありがとうオノチン!

今回は2500円で8バンドの演奏に加えて女性と男性、両方のヌードショーまで見られて本当に面白いライブだった。(笑)
それにしても最初のMISS TARANTURAの衝撃が最後のオノチンで霞んでしまったのが、興味深い事実。
女性ヌードに男性ヌードが勝つとはね!(笑)