2人のデヴィッド監督作品鑑賞

【「マップ・トゥ・ザ・スターズ」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mからデヴィッド・フィンチャー監督の新作が面白そうだ、という情報を聞いたのはかなり前のことだ。
映画のタイトルは「ゴーン・ガール」だという。
すっかり忘れていた頃、映画公開前日の先行上映に行く、と友人Mから連絡があった。
さすがは情報通の友人M!
先行上映のことまで知らなかったよ。(笑)
観終わったら、映画館まで観に行ったほうが良いか、DVDになってから観ても良いと思うか教えて欲しいとお願いする。
友人Mはさすがに付き合いが長いため、SNAKEPIPEの好みを熟知してるからね!
映画は3時間近くの長い上映とのこと。
その長さの問題もあって、余計に参考意見が欲しかったのである。

そして鑑賞後に友人Mより連絡が入る。
DVDを待たないで、是非映画館で観て欲しいとのこと。
感想を語り合いたいと言う。
上映時間の長さは気にならなかったらしい。
よしそれでは、とチケット予約したのである。

観てきた感想をまとめてみようか。
まだ上映中の映画なので、ネタバレしないように書かないとね!
まずは簡単なあらすじから。(公式サイトより転記)

結婚5年目の記念日。
誰もが羨むような幸せな結婚生活を送っていたニックとエイミーの夫婦の日常が破綻する。
エイミーが突然姿を消したのだ。
リビングには争ったあとがあり、キッチンからはエイミーの大量の血液が発見されたのだ。
警察は他殺と失踪の両方の可能性を探るが、次第にアリバイが不自然な夫ニックへ疑いの目を向けていく。
新妻失踪事件によってミズーリ州の田舎町に全米の注目が集まり、暴走するメディアによってカップルの隠された素性が暴かれ、やがて事件は思いもよらない展開をみせていく。
完璧な妻、エイミーにいったい何が起こったのか?

トイレに行くこともなく無事に鑑賞し終わる。
友人Mが言うように、それほど上映時間の長さは気にならなかった。
最初に持った感想は、夫ニックを演じたベン・アフレックにぴったりの役!だった。
実はそれほどベン・アフレックについて知っているわけではないし、出演してる作品より監督している作品のほうを観ているようだ。
そのため俳優として、他の作品との演じ方に違いがあるのかは不明だけど、「ゴーン・ガール」でのベン・アフレックは「こういう男いるよね!」と信じてしまうほどのリアリテイがあって良かったと思う。
妻エイミー役の女優、ロザムンド・パイクは「美しく聡明な妻」という役どころだと思うんだけど、SNAKEPIPEもROCKHURRAHも、どうしてもこの女優さんが好きになれなくて。
友人Mも「まゆげが嫌い」だという。(笑)
「きょとん」とした上の写真をみても、愛らしいとは感じられないし、たくさんの人から愛されるような存在とは思えなかったところが、映画の真実味にマイナスだった気がする。
「あの人がまさか!」にならないんだよね。(笑)

ネタバレしないように書きたいけれど、あえてキーワードを並べるとすれば、「ステレオタイプ」と「演技」かな。
「こうあるべき」という強迫観念で上辺だけを繕う生活は、自分自身のたためじゃなくて、世間体や人の目だけを気にして生きるってことなんだろうね。
「結婚しているカップルにとっては怖い映画」のような感想をどこかで読んだけれど、この映画を観て「妻が怖い」という感想を持つ男性がいたら、「ゴーン・ガール」みたいな夫婦関係なんだろうな。(笑)
宣伝だけの情報でSNAKEPIPEが勝手にイメージしていた映画とは違っていたけれど、鑑賞して良かったかな。

もう1本気になる映画があるから観に行こうよ、と友人Mから誘われる。
デヴィッド・クローネンバーグ監督の「マップ・トゥ・ザ・スターズ」はROCKHURRAHからも「面白そうだよ」と聞かされていた映画だった。
どこの映画館にしようか調べてみると、驚くことに近くでは新宿武蔵野館しか上映していないことが判明。
武蔵野館は何度か足を運んだことがある映画館なので問題ないんだけど、渋谷や有楽町では公開されないとは!
クローネンバーグ監督の前作「コズモポリス」も確か武蔵野館での鑑賞だったっけ。
日にちを決め、友人Mと武蔵野館で待ち合わせる。

予想はしていたけれど、80席のうち埋まっていたのは30席程度。
これでも主演のジュリアン・ムーアがカンヌ国際映画祭女優賞を獲得しているためなのか「コズモポリス」の時より入りがあったのかな。(笑)
ほとんどが一人で観に来ているお客さんだったので、お付き合いではなく本当に観たいと思って来ている人なんだろうね。
では簡単にあらすじを。

ワイス家は典型的なハリウッドのセレブファミリー。
父のワイスはセレブ向けのセラピストとして、TV番組も持つ成功者。
13歳の息子ベンジーはドラッグの問題を乗り越え、超有名子役としてブレイク中。
そして母親のクリスティーは、ステージママとして息子の出演作の物色にいとまがない。
一見なんの不自由もなく、富も名声も手に入れたワイス家。
しかしこの一家には封印された秘密があった。

ワイスのセラピーをうけている落ち目の有名女優ハバナは、知人の紹介で顔に火傷の跡がある少女アガサを個人秘書として雇うことにする。
アガサ出現から、周囲の人々の歯車が狂い始める。(公式サイトより)

髪をブロンドにしたジュリアン・ムーアがマドンナに見えるんだよね。
年齢的にも近いから余計なんだろうけど。
母親も有名な女優でその子供という設定だから、いわゆる2世タレントってことになるんだね。
役を取るために必死な姿は、かなり真に迫っていたよ。

ついに役をGETした時に歌いながら踊っていたのが、バナナラマの「Na Na Hey Hey Kiss Him Goodbye(邦題:キスしてグッバイ)」だったのが懐かしかった。(笑)
恐らくオリジナルはSteam、カヴァーはシュープリームスもやってるみたいなんだけど、SNAKEPIPEにとってはバナナラマの曲!なんだよね。


火傷の跡がある不思議な少女の役を演じていたのがミア・ワシコウスカ
初めて観た女優だと思っていたら、2012年の「欲望のバージニア」で観ていたみたい。
あんまり覚えてなんだけどね。(笑)
リンチ評論家滝本誠氏はツイッターに「ミア・ワシコウスカは<あるテイスト>を求める監督にはミューズだ」 と載せている。
彼女の出演作を調べれば<あるテイスト>についてなんとなく解る気がするけど、「マップ・トゥ・ザ・スターズ」を観ただけではファンにはなれないなあ。(笑)
変わった顔の女優だな、という印象を持った。

「マップ・トゥ・ザ・スターズ」はとても簡単なキーワードで説明したい映画なんだけど、その漢字四文字を書いてしまうと完全なネタバレになってしまうので書くのはやめておこう。
どうして武蔵野館だけでしか公開されなかったのか理解できてしまった。
「ハリウッドの闇に迫る」というような謳い文句は大袈裟だし、闇を描いた作品といえばリンチの「マルホランド・ドライブ」や「インランド・エンパイア」の方に軍配が上がる。
ジョン・ウォーターズ監督が選ぶ2014年のNo.1が「マップ・トゥ・ザ・スターズ」で「大笑いするほど面白い。そしてあえて言わせてもらうが悪質。自分のヒゲよりもこの映画が好きだ」とコメントしているらしい!
SNAKEPIPEからみると、そこまで悪質とも思えなかったし、ハリウッドに限らず芸能関係ってあんな世界じゃないの?って感じだったけどね。
誰にでもお勧めはしないけれど、ジョン・ウォーターズの感想に興味を持つ人なら観ても良いのかも?

クローネンバーグ監督作品は「コズモポリス」と「マップ・トゥ・ザ・スターズ」共に劇場で鑑賞したけれど、次回作が発表されたら迷いそう。
クローネンバーグ監督作品って結構観てるんだけど、なんで観てしまうのか思い返してみると「戦慄の絆」が大好きだったからなんだよね!
次回作があの雰囲気だったら、また行くんだろうな。(笑)

今回は2人のデヴィッド、デヴィッド・フィンチャー監督とデヴィッド・クローネンバーグ監督の新作映画について書いてみたよ!
SNAKEPIPEにとって最も大事な3人目のデヴィッド、リンチ監督の作品はいつなんだろう?
まずは2016年公開の「ツイン・ピークス」を楽しみにしていよう!

ミシェル・ゴンドリーの世界一周 鑑賞

【「ムード・インディゴ うたかたの日々」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

皆様明けましておめでとうございます。
今年も趣味全開の記事を書き続けて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます!

夏の終わり頃から、長年来の友人Mより「行こうよ」と誘われていたのが、東京都現代美術館で開催されている「 ミシェル・ゴンドリーの世界一周」展であった。
そもそもミシェル・ゴンドリーについてほとんど知識のないSNAKEPIPEなので、実を言うとあまり気乗りしなかったんだよね。(笑)
Wikipediaで読む限りではミュージック・ビデオからキャリアをスタートさせ、有名なのはビョークのビデオとのこと。
細菌、じゃなくて(笑)最近はミュージック・ビデオを観る機会もないし、ビョークの音楽も聴いたことないし!
そのため鑑賞の予定は延ばし延ばしになってしまっていた。
ようやく2014年末に友人Mと都合を合わせ、久しぶりに木場に向かったのである。

どんな展示の時でも大抵はゆっくり鑑賞できる余裕のある美術館なのに、珍しく年末は人が多かった。
SNAKEPIPEが知らないだけで、ミシェル・ゴンドリーって人気あるんだね。(笑)
動画の撮影はNGだけど、それ以外は撮影して良いとのこと。
面白いのがあったら撮ろうね、と言いながら最初に入った部屋が素晴らしかった!
天井までみっちりと貼付けられているのは、1000人分のポートレイト。
ミシェル・ゴンドリーが出会った人々の似顔絵を描いたものだという。
あまりの数の多さに初めは驚き、続いて一枚一枚に目を転じると、その完成度の高さに再度驚かされる。
まるで今そこにいるかのように、生き生きとした表情をみせているのだ。
その人物の人柄や趣味などが手に取るように判る気がするんだよね。
構図や色使いなども斬新で、ものすごく好きなタイプの絵!
20ドル払って描いてもらいたかったな!(笑)
「1000 portraits」という画集になっているのが展示会場に置いてあるじゃないの!
「欲しい!」
「買って帰ろうね」
今回の展覧会には来られなかったROCKHURRAHへの良いお土産になるな、とほくそ笑むSNAKEPIPEだったけれど、残念ながらミュージアム・ショップでは既に完売してしまったとのこと。
9月から始まっていた展覧会を12月に鑑賞してるんだもんね。
仕方ない、と今回は諦める。(涙)

次の展示はミシェル・ゴンドリーが手がけたミュージック・ビデオを、音楽と共に鑑賞するコーナーだった。
入り口で渡されたヘッドホンを装着し、大きなスクリーンのある地点に立つと音が聴こえる仕組みになっている。
多くの人が1つのスクリーンに集まってしまうと、音が全く聞こえなかったり雑音が混ざった音が聞こえてしまうのが難点だったね。
ビデオは冒頭にも書いたビョークやローリング・ストーンズなど様々なアーティストの作品がミックスされて再生されている。
19のスクリーンを順路通りに歩くと、ビデオの内容も順路と平行して進んでいるようだ。
「この方法新しいよね」
と友人Mが言うけれど、2011年11月に鑑賞した「ゼロ年代のベルリン展鑑賞」でのミン・ウォンの作品「テオラマ」も複数のスクリーンでの上映だったことを思い出す。
あの時に画期的!と感じてしまったSNAKEPIPEなので、今回は驚かなかったなあ。(笑)

次は映画の撮影でよく使用されるスタジオが展示されているコーナーだった。
ワークショップとして、実際に来場者が映画を作ることもできる仕掛けになっているとのこと。
路地裏や電車の中など、簡単にシチュエーションがイメージできるような場面がいくつか設定されている。
友人Mと「こんな感じはどお?」と言い合いながら、お互いに役割を決めて撮影し合う。
その時に着ていた服装によっても違ってくるのかもしれないけど、そこまで奇想天外なアイデアはパッと浮かばないなあ。(笑)
それにしても映画の撮影には、このような場面設定に合わせて、美術の人が作ったり、小道具を揃えたりする裏方の存在が解るのが面白かった。
映画鑑賞している時には気にしていないからね。
これで少し映画の観方が変わるかも?(笑)

最後はミシェル・ゴンドリー監督の作品「ムード・インディゴ うたかたの日々」 で使用された小道具の展示だった。
冒頭にも書いたように、SNAKEPIPEはミシェル・ゴンドリーについての知識が少なくて、当然のように(?)映画も鑑賞してないんだよね。(笑)
本当は映画を鑑賞してから展覧会に行くべきだったんだろうなあ。
そうしたら「あのシーンで使われれた!」などと違う感想を持ったんだろうね。

全く勉強しないで行ってしまったけれど、小道具の面白さは充分伝わってくる。
小道具はフエルトや布で人体を表現したり、食材を作っていたりして、とても興味深かった。
映画の中ではどんな風に映っているのか分からないけれど、近付いてじっくりみると手縫いの糸が見える、手作り感満載の小道具だったんだよね。
ここでもまた小道具を手作業で創作する人の存在を感じることができた。
順番は逆になってしまうけれど、近いうちに「ムード・インディゴ」観てみよう! (笑)

好き好きアーツ!#27 鳥飼否宇 part6–迷走女刑事–

【「迷走女刑事」の中で店名として登場したソフト・マシーン】

SNAKEPIPE WROTE:

大ファンの作家、鳥飼否宇先生の新作が発売される情報をもたらしてくれたのはROCKHURRAHだった。
Kindleのような電子書籍を読むための端末が人気のご時世だからなのか、鳥飼先生の新作はハードカバーではなく新刊として文庫本で登場!
実際SNAKEPIPEも通勤電車で読むのはスマートフォンに落とした電子書籍だもんね。
でもこれって、新作じゃなくて前に発表した作品の文庫化じゃないの?
だってタイトル同じじゃない?
おや?よく読んでみると「迷走女刑事」!
2012年に発表されたのは「妄想女刑事」!
鳥飼先生のファンと言っておきながら、読み違えるとはファン失格‥‥‥。
いやいや、しょんぼりする必要なし!
鳥飼先生の新作が読めるんだもんね!(笑)

近所には本屋が何軒もあるので、発売日当日に出向けば問題なく手に入ることは分かっていたけれど、発売の情報を知ったその時にネットで予約注文した。
確実に入手できることがはっきりしないと安心できないんだよね。(笑)
あとは到着を待つのみ!楽しみだ。
お待ちかねの発売日当日。
郵便ポストにメール便が到着!
やったー!
慌ててページをめくるSNAKEPIPE。
早速読み始めたのである。

前作では妄想し、本作では恐らく(?)迷走するであろう主人公の宮藤希美と、前作でコンビを組んでいた荻野正則が居酒屋で飲んでいるシーンから小説が始まる。
キュートなルックスに似合わず酒豪の宮藤に付き合うように、下戸の荻野が烏龍茶を飲んでいる。
どうやら本作では、宮藤と荻野がペアで捜査しているのではなく、それぞれが新しい相棒を得ているという。
ここで新しい登場人物の紹介だね。
宮藤の相棒は甲賀忍者の末裔で、武芸十八般に通じているという望月暁子。
武芸十八般とは弓・馬・槍・剣・水泳・抜刀・短刀・十手・銑鋧(しゅりけん)・含針・薙刀・砲・捕手・柔・棒・鎖鎌・錑(もじり)・隠(しのび)のことらしい。

そして暁子が得意としているのが手裏剣、鎖鎌、十手とのこと!
2012年に行った明治大学の博物館で実物を観たっけ。(笑)
常にこれらの武器を携帯してるんだろうか?(笑)
宮藤と同い年だけれど、ノンキャリアのため刑事歴は宮藤より長い。
「踊る大捜査線」でもよく出てきた構図だね。
そんな叩き上げで、ルックスも男まさりの力強い女だからこそ宮藤に反感を抱いてしまうのも仕方ないのかもしれない。
本作でSNAKEPIPEが1番注目したのは彼女!
友達になりたい、というよりは見ていたいんだよね。
ネタが豊富そうで。(笑)

そして荻野の相棒になったのは、宮藤の場合と同じように荻野とは正反対の特徴を持つ三谷浩二朗。
女性に人気がありそうなルックスの新人だというから荻野は完全な引き立て役になっちゃうね。
でも実は三谷は‥‥文章にするのは差し控えておきましょ。(笑)
本作は2組のペアが難事件に挑むお話なのである。

事件ファイル1 三人の数学教師の問題

大学の数学教師の死体が河川敷で発見されるところから話が始まる。
調査をする宮藤と荻野。
テンポの良い二人の掛け合いは相変わらず面白いね!
趣味全開の荻野の発言は刑事らしくないし。(笑)

SNAKEPIPEが大注目だったのはやっぱり望月暁子だね。
灯火目付という視力の鍛錬法により、視力が3.0あるという。
いつの間にか視力が0.02くらいになっているSNAKEPIPEには信じられないよ!
灯火目付、本当に効果あるんだろうか?
今からでもやってみようか!もう遅い?(笑)

数学教師の事件なだけあって「フェルマーの最終定理」についての説明がされていたね。
「ドラゴン・タトゥーの女」で主人公リスベットが夢中になっていた問題だったことを思い出したよ。
実は最近になって理数系の面白さに気付いたSNAKEPIPE。
学生の頃から好きだったら良かったのに!
きっと「ブレイキング・バッド」を見てから、化学に興味を持つ人もいるだろうね?
えっ、動機が不純?(笑)

宮藤は自慢の妄想がなかなか発揮できない様子。
まだ本人は何が理由だったのか気付いていないんだね。(笑)
ところがヒョンなところで、またもやロッターズクラブのバーテン・御園生独、登場!
宮藤にヒントを与えてくれるのである。

めでたく事件は解決。
まさかそんなことだったとは!
「んなバカな!」と叫んでしまったSNAKEPIPE。
こんな事件は前代未聞だよ。(笑)

事件ファイル2 三枚の天狗の面の問題

代議士の子供が誘拐される事件が発生する。
ところが宮藤希美は相棒である望月暁子と共に、誘拐事件とは別の骨董品を扱う「夢幻堂」の壺盗難事件の捜索に駆り出されたのである。

この「夢幻堂」のオヤジが良い味出してるんだよね!(笑)
宮藤希美をクドミ、望月暁子をモチコと勝手に名付けてしまう。
実際に関わると面倒なタイプだろうけれど、本当は誰かに構って欲しくてたまらない孤独な老人なんだろうと推測できるよね。
この古物商で望月暁子が棒状の手裏剣に見惚れるシーンが良かったね。
あまり手裏剣に詳しくないSNAKEPIPEなので調べてみると、武術の世界での手裏剣とは棒状のタイプが一般的らしい。
忍術について勉強になるなあ。(笑)

この事件の中で最も興味を感じたのは、話の中に登場する油絵!
青系の暗い絵の具が塗り重ねられ、まるで子供の落書きのような人物や動物が描かれている絵とは?
人物が死にかけのアザラシやトドとかセイウチに見えてしまう具象画ってどんなだろう?
SNAKEPIPEが思い浮かべたのはリンチの油絵だね。
最近のリンチはリトグラフで作品を制作することが多いみたいだけど、80年代後半から90年代に描いていたのが、まさに大人の落書きのような油絵!
参考にした画像は1996年の「Dr. Howl’s Philosophy」という作品ね。
こんな雰囲気の絵だったら、観てみたいな!

事件に関しては読んでいる途中で、
「もしかしたら?」
と真相を予想したSNAKEPIPE。
そして結論は当たっていたんだけど、理由までは推理できなかった。
そして更にまさかそんなことだったとは!(笑)

事件ファイル3 三体の不明死体の問題

続いはゴミ屋敷で発見された男性の全裸死体にまつわる事件である。
確かにゴミ屋敷というのは、どこに何があるか判別できないだろうから、死体の隠し場所としては最適かも!(笑)
捜索にはものすごく時間がかかるだろうからね。
この小説の中でも、捜索は難航していて、何が物証なのかを判断するのにも苦労している様子。
こんな舞台を事件現場に設定されるとは、さすがは鳥飼先生!
何が出るかな?何が出るかな?(ごきげんようのサイコロ風)

3つ目の事件の頃には、宮藤と望月はそれなりに意気投合しているようで安心した。
お互いの役割を認識したということかもしれないけれど、1番近くで長い時間を過ごす同僚とは気持ち良く付き合えるほうが良いからね!

この事件で望月暁子が使用したのが、直径4センチほどの中央の輪に長さ35センチほどの3本の分銅鎖が付いた微塵と呼ばれる武器である。
扱い方次第では敵の骨を木っ端微塵に打ち砕く威力をも発揮することから「微塵」と名付けられたというから恐ろしいよね!
そして金剛力士像のように憤怒の表情を浮かべている記述もあったので、本当に敵に回すとロクなことがない女性なので、宮藤希美は仲良くなれて良かったよね。(笑)

事件には驚くべき真相が隠されていて、SNAKEPIPEは横溝正史を思い出したよ!

事件ファイル総括 三件の重大事件の問題

タイトル通り3つの事件の締め括りである。
もうそれぞれの事件は解決してるじゃない?
そう、もう事件は解決してるんだけどね。
宮藤希美の元にまたもやバーテン・御園生独が登場する。
そして宮藤希美は「世界の真理」を知るのである。

最後の最後まで「やられた〜!」って感じだったね。
大満足のSNAKEPIPEである。(笑)

ミステリー小説でキモになる部分は書きたくないので、核心に触れないような感想しか書けないのがもどかしいね。
鳥飼先生の魅力を充分お伝えできていない気がして残念だけど、非常に楽しい読書時間を過ごせて嬉しかったな!
そして来年、2015年1月10日にはまたまた鳥飼先生の新作が発売だよ!
死と砂時計」なんて、タイトルだけでもワクワクしちゃうよね。
早速予約しないと!(笑)

五木田智央 THE GREAT CIRCUS鑑賞

【五木田智央のネタ帳?のような壁一面を埋め尽くす作品群】

SNAKEPIPE WROTE:

先日書いた「収集狂時代」の中でマーク・ロスコについて触れた後、無性にロスコと対面したくなってしまった。
DIC川村記念美術館では、現在何の展示がされているのかROCKHURRAHが調べてくれたところによると、五木田智央という1969年生まれのアーティストの展覧会が開催されているという。
モノクロームの油絵はちょっと珍しいし、ROCKHURRAH曰く、シュルレアリズムっぽいとのこと。
3連休を利用して行ってみようか。

キレイな秋晴れの日、久しぶりの佐倉である。
車を持っていないROCKHURRAHとSNAKEPIPEはいつも電車で出かけ、川村記念美術館の送迎バスを利用して美術館に行っている。
今まで何度もその方法で行っているけれど、今回はバス停で待っている人数の多さに驚く。
今まではいてもほんの数人、時にはROCKHURRAHとSNAKEPIPEの2人だけで、バスが貸し切り状況になったこともあった。
なんと今回は補助席以外の席が全部埋まっている状態!
路線バスクラスの大型バスなのに、満席って!
しかもバスで20分以上もかかる僻地にある美術館なのに?(笑)
えっ、五木田智央ってそんなに人気あるの?
ROCKHURRAHの見立てでは、美術館目的というよりは、併設されている自然散策路の紅葉を目的にしている人が多いのではないか、と言う。
果たして本当にそうなのか?

バスを降りるとバス停近くにチケット売り場が見える。
観察していると、バスから降りた乗客がチケット売り場に並んでいる!
えーっ、やっぱりほとんどの人が五木田智央展の鑑賞のために来てるんだ!とびっくりする。
人を見た目で判断するわけじゃないけど、とても現代アートに興味があるようには見えない方がたくさんいたので。(笑)
それにしてもバスが満員だったこと、チケット売り場に人が並んでいる光景は、川村記念美術館に限っては初めて見たので驚いた。

少し時間をズラしてからチケットを購入。
美術館への道すがら、見事に紅くなった紅葉を鑑賞する。
館内に入ると、先程行列していた人達はどこにいるのか、いつも通りのゆったりした空間が広がっているので安心する。
まさかとは思うけど、自然散策路に入るために間違ってチケットを購入した人もいたのかな?
まずは常設展から鑑賞していく。

何度か来ているので、作品の配置を多少は覚えていて、前回来た時とは違う作品が展示されていることに気付く。
常設展も少し変化があるんだね!
ジョゼフ・コーネルの作品は、前回と同じようにコーネル・ルームとして単独の部屋で展示されていて嬉しくなる。
フォトモンタージュの作品と、箱の作品。
箱のオブジェはいつ見てもかわいいな!
マックス・エルンストの「石化せる森」も観られて良かった。

いよいよお待ちかねのロスコ・ルーム!
さすがに今回は途中で何度か他の客が入り、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEだけの特別鑑賞会にはならなかったのが残念。
それでもなんとも言えない重厚な空間に身を置くと、自分の存在とロスコの絵との距離感が曖昧になってきて、トリップしちゃうんだよね。
自分が絵に溶け込んでしまったような。
無我の境地ってこんな感じかもしれないね?

ロスコルームを鑑賞し終えると、1階の展示は終了である。
続いて2階へ。
入ってすぐにジャクソン・ポロック!
フランク・ステラの大型作品は、いつ観ても迫力があるね!
最後の部屋が、今回の展覧会である。

実は五木田智央という名前は川村記念美術館のHPで初めて知った。
略歴によるとサブカルチャーに多大な影響を与えたイラストレーターとのこと。
どうやらミュージシャンのイラストで有名らしいけど、見たことあるのかな?
最近は画家として活躍し、ニューヨークのメアリー・ブーン・ギャラリーでは絵が完売ってすごいよね。
日本より先に海外で認められた、いわゆる逆輸入アーティストということになるらしいよ。
五木田智央展に関しては撮影オッケーとのことなので、バシバシ撮ってみよう!

入ってすぐに飛び込んできたのは、スクエアのキャンバスに描かれたモノクロームの作品群。
どうやら全て2014年の新作らしい。
余程筆が速いのか、かなりの数が並んでいる。
サラサラと描いた感じが出ていて、ちょっと会田誠を思わせる、人をおちょくったような雰囲気を感じる。
まるでリンチの「イレイザーヘッド」を彷彿とさせる謎の生物まで発見したよ。
これ、あの赤ん坊だよね?(笑)

 既に発表されている、パロディ風の大型モノクローム作品群。
ピカソの絵画からパクった手が描かれているのを観て、笑ってしまう。
撮影した画像はピンぼけになってしまったけれど、判るかな?(笑)
他の作品も何かのパクリのように見える、どこかでみたことがあるような?
キリコやイヴ・タンギーなどの画家の影響について聞かれることが多いというのも納得だよね。
それにしても「影響」と「流用」の違いってなんだろうね?(笑)

左の画像は「Slash and Thrust」という2008年の作品である。
インタビュー記事で読んだ情報では、なんとこの絵は3時間で描いてしまったというから驚いてしまう。
かなり大型の作品だったし、描きこまれていたのにね!
ブルーを基調としたシリーズやオレンジ系の暖色のシリーズは、モノクロームに慣れた目には意外性を感じた。
何が描かれているのか判然としない具象画だから余計だったのかもしれない。
好みの問題だと思うけど、SNAKEPIPEはモノクロームの絵のほうが五木田智央らしさを感じるな!

初期の作品で、紙に墨や鉛筆で水面を描いているようなシリーズがとても良かった。
まるでリンチを思わせる黒々とした作品群は、今回の展覧会の中で1番好きだったな!
鑑賞しているうちに、五木田智央の自己破壊願望、つまり自殺願望のような衝動を感じたのは気のせいだろうか。
リンチの暴力性は完全に外に向かって放たれているため凶暴だけれど、五木田智央の場合は内側に向かう暴力なので、攻撃性は感じられない。
溜め込まれた怒りが黒色として静かに爆発している印象。
インタビューでは飄々とした雰囲気の五木田智央なので、SNAKEPIPEの思い過ごしかもしれないけどね?(笑)

「五木田智央 THE GREAT CIRCUS」を鑑賞して、パンク的な破壊衝動を強く感じたSNAKEPIPE。
実際「PUNK」というモヒカンの頭部を描いた作品もあったしね。(笑)
五木田智央が実際にはどんなジャンルの音楽を聴いたり、DJとして選曲してるのかは知らないけれど、根本にパンク魂があるような気がしてならないな。
DEATH DEATH DESTROY !って感じでこれからもG.I.S.M.っぽくいきましょー!(笑)