好き好きアーツ!#17 鳥飼否宇 part4–妄想女刑事–

20121021_top【これがTHE ROTTERS CLUBね!】

SNAKEPIPE WROTE:

ついに鳥飼否宇先生の最新作が発売された!
今か今かと待ちわびていたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
前回鳥飼先生の作品について書いたのが2011年9月のこと。
好き好きアーツ!#8 鳥飼否宇 part3 –物の怪–」としてまとめさせて頂き、鳥飼先生ご本人からコメントを頂戴する、というファン冥利に尽きる経験をさせて頂いたんだよね!
そしてまた今回の新作についても拙いながらも、ブログで感想を書いてみようと思っている。

鳥飼先生の新作のタイトルは「妄想女刑事」!
もうこのタイトルを聞いただけで、「あっち系の路線かな?」と勝手に想像してしまったSNAKEPIPE。
そう、あっち系とは先生の小説の中に登場する「増田米尊」のこと!
興奮すると頭の回転が速くなり、スラスラと推理を展開し事件を解決に導いてしまう増田教授。
SNAKEPIPEは増田米尊も大好きなんだよねー!(笑)
妄想する女ってことは、まさか増田米尊の女バージョンかいな?

新作の主人公、妄想する女の名前は宮藤希美。
日本人の女性にしては長身、痩せ型、ベビーフェイス、ショートカット。
知性と運動能力を兼ね備えている29歳、と聞くと
「ドラマに出てくる感じの女刑事」
と思ってしまうけれど、宮藤希美には黒いセルフレームのメガネと酒好きが加わる。
この2つが加わったことで「妄想女刑事」になるのである。
実はSNAKEPIPEも、ド近眼で激しい乱視のため、長い年月ハードコンタクトレンズを使用していた。
ところがハードコンタクトレンズは目にゴミが入ると激しい痛みと共に、涙がボロボロ!
化粧まで崩れてしまい、大変な思いをすることがしばしば。
ここ数年は、ほとんどコンタクトの使用を控え、メガネにしているのである。
宮藤希美と全く同じ黒いセルフレーム!(笑)
「一般人とはかけ離れたセンスのダサいフレーム」
と書かれていて、ショック!
宮藤希美とSNAKEPIPEは同じ感覚の持ち主なのかも?(笑)

その宮藤希美とコンビを組むのが、42歳の独身で、福々としたほっぺたを持つ美少女マニアの荻野正則である。
この荻野正則を表現する際に用いられたのが、七福神。
「恵比寿さま、もしくは布袋さま、あるいは大黒さまに似ている」とのこと。
確かにこの区別を付けられる人ってあまりいないよね?
20121021-01
Wikipediaで調べてみたら上の画像を発見。
ちょっと編集して並べてみたんだけど、どお?
やっぱり区別つかないなあ。(笑)

更に「マントヒヒの尻のような顔」って表現もあったから、こちらも画像検索。
ははあ、なるほど。
マントヒヒの尻っていうのは、出っ張っているんだね。
しかもその部分だけ毛がなくてむき出しでピンク色なんだ!
うーむ、こんな赤ら顔の40男で美少女マニアというのは、かなり不気味かも。(笑)
そんな荻野正則と宮藤希美がコンビを組んで事件を解決していくのである。

※注意して書いているつもりですが、万が一ネタバレになる記述があった場合はお許し下さい。

事件ファイル1 独身中年ゴシチゴ暗号事件

「マントヒヒの尻のような顔」こと荻野正則の元に、かつての同級生であり、親友でもあった福井義男から、意味不明の手紙が届くことから話が始まる。
事件ファイル名にある「ゴシチゴ」とは、「五七五」、つまり俳句のこと。
その謎の手紙は、俳句のような文章の羅列だったのである。
事件ファイル1にはたくさんの俳句や俳人の名前が登場する。
ほとんど俳句の世界について知らないSNAKEPIPEなので、自由律俳句というジャンル(?)にはびっくり。
「定型から自由になろうとすることによって成立する俳句」のことを指すらしく、感情表現が重要な世界みたいだね。
小説内に出てくる自由律俳句を読んでいると、一行だけの詩のようにも感じてしまう。
「単なる一行詩がそのまま自由律俳句となるわけではない」と、Wikipediaに注意書きされているので、難しいところだね。(笑)

鳥飼先生の作品は人名がユニークで、かつて「 好き好きアーツ!#8 鳥飼否宇 part2」では「爆発的」の登場人物の名前当てクイズに挑戦したSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
今回の作品では、人名は県名にされてることが多かったね。
荻野正則の親友は福井、福井のアパートの住民に千葉、富山、石川。
宮藤希美の先輩女性刑事の名前まで秋田汐里、と県名になってるね!

そしてとても興味深かったのが、宮藤希美のキテレツで珍妙な推理の中に横溝正史作品からインスパイアされた説を展開している点。
事件ファイル1には「獄門島」(とははっきり書かれていなかったけれど)が登場していた。
確かに「獄門島」も俳句が出てきた事件だったよね!
言うまでもなく、横溝正史のトリックをそのまま使った作品ってことじゃないので、あしからず。(笑)

宮藤希美の当てずっぽうな推理や荻野正則との会話のやり取りはとても楽しく読めたけれど、メインであるはずの(?)事件の解決はあっさりしていてびっくり!
「やだっ、解けちゃった!」という言葉が宮藤希美から飛び出す。
これがこのシリーズに必ず出てくる宮藤希美の決め台詞なのである。

事件ファイル2 通勤電車バラバラ殺人事件

JR山手線内で切断された男性の左腕が発見される。
そしてまた都営大江戸線内でバラバラ遺体が発見されるのである。
こんなニュースを聞いたら「何事か?」と耳をそばだてること間違いないだろうな。
確かに日本人は野次馬が多く、猟奇殺人事件が好きなのかも。

長野、山口、福岡、志賀、奈良、徳島、逢坂(おうさか)、若山(わかやま)、とまたもや県名を人名にした人物達が登場する。
大阪や和歌山では無理があるため、違う漢字が充てられてるのがミソ!

そして今回もまた横溝正史作品「蝶々殺人事件」を持ち出す宮藤希美。
酒を飲み、酩酊状態になったところで繰り広げるトンチンカンな迷推理も相変わらずである。

事件ファイル2で、「グランドホテル方式」とでも言うのか、昔観た「ショート・カッツ」という映画を思い出した。
注意深く読んでいかないとね!(意味深発言)

事件ファイル3 日本観光コスプレ変死事件

もうこのタイトルからして、「鳥飼先生らしい!」とニヤリ。(笑)
詳しくは書かないけれど、ベルギー人の被害者が発見された時の様子が笑ってしまうような状況なのである。
変死体なのに笑ってしまう、というこのあたりのバランスが絶妙だよね!
そしてまたこの変死事件を担当するのが、宮藤希美と荻野正則のコンビなのである。

美少女には目がない荻野正則は、美少女フィギュアをコレクションしたり、アイドルのコンサートに足を運んだりする40男。
当然のように美少女アニメにも詳しいことから、事件解決に向けたヒントを出す場面が非常に面白かった。
「ナース戦隊看護レンジャー」って、本当にありそうだもんね?(笑)
その荻野正則の趣味のせいで、コスプレさせられるハメになる宮藤希美は災難だったけど!

香川、宮崎という人物が登場する。
今回は「本陣殺人事件」が会話の中に出てくる。
エルキュール・ポアロはベルギー人だったんだっけ?
アガサ・クリスティ読んでたのは中学時代だったなあ。
懐かしい名前を目にしたよ!

今回も記憶力を試されている感じね。(笑)

事件ファイル4 先輩刑事モンペで殉職事件

今回の事件4はタイトルだけですでにいくつかの情報が入ってるよね。
「先輩刑事」「モンペ」「殉職」。
上述した中に「先輩」という言葉を使っているし、「殉職」という言葉も組み合わされていると「もしかして?」と想像してしまう。
「モンペ」だけは謎!(笑)

岡山、宮城が今回の登場人物。
こうしてみると確かに県名が苗字になってることって多いんだね。
横溝正史作品は「悪魔の手毬唄」!
市川崑監督の映画を観た時に、SNAKEPIPEが一番怖かったのは「原ひさ子」!
正座をすると腰が曲がってほとんど畳につきそうなのに、毬をつきながら歌うんだよね。
恐らく毬が弾む距離は10cmくらいだったのではないだろうか?
今でもあのシーンを思い出すと怖くなるよ。

おおっ、またもや記憶力テストだ!
実を言うとSNAKEPIPEは2回読んでから感想をまとめている。
1回目はストーリーを追うことに集中。
で、2回目になってから県名と記憶力テストについて確認しながら読んだんだよね。(笑)

事件ファイル5 世界遺産アリバイ幻視事件

アメリカ人ドキュメンタリー映画監督が、杉並区で起きた殺人事件の重要被疑者として防犯カメラに写っていた。
しかし当の本人は小笠原諸島にいた、とアリバイを主張。
そのアリバイ崩しを目的に、宮藤希美と荻野正則コンビが小笠原諸島の母島に出向くことから話が始まるのである。

母島にある「ペンション乳房山」という名前がおかしい!
英語にすれば「ペンション・ツイン・ピークス」なんだよね。(笑)
ありゃ、でも本当に「乳房山」があるとは知らなかったよ。
宮藤希美が疑問に感じた「父島で一番高い山の名前」については、SNAKEPIPEも同感だった。
調べてみると…えっ、朝立ち山?本当?(笑)

長崎、熊本とまた県名の苗字が登場。
そして横溝正史作品は「八つ墓村」である。
SNAKEPIPEが観たのは野村芳太郎監督版なので、残念ながら金田一耕助役は渥美清だったんだよね。
渥美清はやっぱり寅さんだから、なーんか違う!
SNAKEPIPEが一番馴染み深いのは、石坂浩二が演じる金田一。
石坂浩二で「八つ墓村」が観たかったなあ!

事件ファイル5の最後の最後でまた「あれ?」と思ってしまったSNAKEPIPE。
事件ファイル4までとは違う幕切れだったね。

5つの事件を通して出てきたのが「ロッターズ・クラブ」というバー。
何故だか宮藤希美が酩酊し、捜査に行き詰まった時にだけ登場する。
そのバーのバーテンダー・御園生独、がヒントになるような発言をすることで、宮藤希美の「やだっ、解けちゃった!」を聞くことになるのである。
「ロッターズ・クラブってどういう意味だろうね?」
と聞いたSNAKEPIPEに
ハットフィールド・アンド・ザ・ノースのアルバムのタイトルだったんじゃないかな」 と即答するROCKHURRAH。
さすがによく知ってるね!
SNAKEPIPEは全く知らない世界のバンドなんだな。
ハットフィールド・アンド・ザ・ノースはイギリスのプログレッシブ・ロックバンドとのこと。
鳥飼先生の作品にはジャーマン・ロックやプログレッシブ・ロックのネタが多いのもポイントなんだよね!

「妄想女刑事」はタイトル通りに、宮藤希美があるフレーズや見て感じたことから、自分の世界の中で妄想に浸っている様子が面白かった。
当てずっぽうな推理も「本当に刑事か?」と思ってしまうほど、珍妙で愉快なものが多かったし、「鳥飼先生らしい!」と吹き出しそうになるシーンも多くて楽しく読ませて頂いた。
語り手が宮藤希美本人でなかったせいもあるけれど、SNAKEPIPEには宮藤希美を想像し難かったのが残念。
SNAKEPIPEの個人的な趣味で言うと、宮藤希美よりもオギッペのほうを主役してもらったほうが好みなのかもしれないね?
でもそれだと増田米尊とキャラクターが似てしまうのかな。(笑)

好き好きアーツ!#12 鳥飼否宇 part3 –物の怪–

【観察者シリーズを並べて撮影!圧巻ですな!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のブログは「好き好きアーツ!#8 鳥飼否宇 part3」!
大ファンの作家、鳥飼先生の新作「物の怪」出版記念として第3弾を書いてみたいと思う。
「物の怪」は鳥飼先生の「観察者シリーズ」に分類される最新刊。
鳥飼先生は「~シリーズ」と、幾つかのシリーズを持っているのである。
今まで刊行されている「観察者シリーズ」については、また別の機会に特集してみたい。
今回は「物の怪」に焦点を当てた記事にしようと思っている。

ここで簡単な「観察者シリーズ」についてのご説明をしてみよう。
「観察者シリーズ」は大学の野生生物研究会というサークルに所属していたことが縁で、学校を卒業してからも15年以上(最新作ではすでに20年くらいになってるのかも)の付き合いがある4人が登場するシリーズである。
人里離れた場所でこのメンバーが遭遇する事件、というパターンがほとんど。
彼らの活躍する物語は、上の写真にある著作で知ることができる。

1人目は現在、植物写真家として活躍するネコこと猫田夏海。
メンバーの紅一点。
ただしあまり女性として扱われていない様子で、恐らく猫田自身もちょっと不満に感じているように見受けられる。
猫田の目線で物語が進むことが多く、その女性心理に共感するSNAKEPIPE。
男性作家が女性を描く場合、「んな女、いるわけないじゃん」とツッコミを入れたくなることが多い中、猫田のキャラクター設定はとても良く理解できる。
すぐに旅立てる身軽さを持つ活動的な猫田。
3人の男性との良い友人関係も羨ましいね。

2人目は猫田の大学時代の3学年上の先輩、現在は自称「観察者(ウォッチャー)」の鳶さんこと鳶山久志。
鳥や虫、植物など人間以外の生物全般に幅広い知識を持つ「生物オタク」である。
「観察者シリーズ」の由来はこの鳶さんから来てるんだよね。
このシリーズで(最終的に)謎解きをするのは、いつも鳶さん。
鋭い観察力と洞察力、豊富な知識から結論を導き出すのが得意。
生物に関する薀蓄を語り出すと止まらず、珍しい生物を観るためには一切を厭わないほどの熱中ぶりには驚かされる。
それで生活が成り立つのが羨ましいね。(笑)
猫田にはちょっと厳しい気がするのはSNAKEPIPEだけだろうか。
自分と同じくらい知識豊富になってくれよ、という先輩からの叱咤なのかもね?
「鳶さんのキャラクターは鳥飼否宇の分身かな、と勝手に想像するSNAKEPIPE。ひょうきんでちょっととぼけたインテリで、いい味出してるんだよね。」
と以前ブログに書いたことがあるが、実際鳶さんと鳥飼先生には共通点が多いのである。
東京の出版社に10年以上も勤務した後、鹿児島に移住。
移住後は野鳥や昆虫観察をしている。
ビール好き。
3月生まれ。
などなど。
あんまり羅列すると「ミザリー」みたいになるから、ここらへんでやめておくか。(笑)
恐らく同じような感想を持つ人が多かったためか、「物の怪」の表紙・折り返し部分に
「鳶山久志は分身ではない」
という趣旨の文言が書かれていて笑ってしまった。(笑)

3人目は猫田と同学年だった、現在はイラストレーター、ジンベーこと高階甚平。
昆虫や爬虫類を描くのが得意で、個展を開くと絵が完売するほど売れっ子という設定である。
このジンベーはスキンヘッドで小太り、けれどいつも奇抜なカラフルファッション、というかなり特徴のある風貌!
毎回ジンベーのファッションについては楽しみにしているSNAKEPIPE。
今回はスキンヘッド部分にサソリのタトゥー、蛍光グリーンのボアコートという出で立ち!(笑)
「観察者シリーズ」の中で、SNAKEPIPEが一番お友達になりたいのがジンベーなんだよね!
本当は佐賀県生まれなのに、何故だかベタベタの博多弁を使うところも気に入っている。
ジンベーの喋ってる箇所を声に出して読み
「博多弁ってこんな感じなの?」
と九州出身のROCKHURRAHに尋ねても
「博多弁のことはよく知らない」
と標準語で言われてしまった。(笑)

4人目は鳶さんと同学年、ということでネコやジンベーより3学年上の先輩であり、現在は西荻窪で「ネオフォビア」というバーを経営している神野先輩こと神野良。
資産家だった父親の遺産を相続し、賃貸マンション経営のかたわら趣味のバーも経営している、この人もまた羨ましいご身分の方。
バーの経営は損得勘定抜きの、完全なる趣味の世界を展開している。
置いてある酒はシングルモルトのスコッチだけ。
BGMは70年代ブリティッシュ・ロックを大音響で流すという、ほとんど神野良本人の居心地の良さだけを追求したバーなのである。
これで「ネオフォビア」(新奇恐怖)の意味が少し解った気がするね。
神野先輩の好きな世界についてはほとんど良く知らないSNAKEPIPEだけれど、そんな隠れ家的なバーにはとても興味があるなあ。
前述した元サークル仲間がバーに集まってくるのもうなずけるよね。
神野先輩だけは、事件に直接関わることがなくバー「ネオフォビア」を拠点とした連絡係のような役割を担っているようだ。
そういう意味ではもしかしたら神野先輩こそが「観察者」とも言えるよね。(笑)
そして鳥飼先生の新作「物の怪」はバー「ネオフォビア」から始まるのである。

※細心の注意を払って書いているつもりですが、万が一ネタバレになるような記載があった場合はお許し下さい。特に未読の方は注意願います。

「物の怪」には3つの短編が収録されている。
SNAKEPIPEの非常に個人的な感想をそれぞれのお話ごとに書いていこうかな!

1:眼の池
第1話に登場する物の怪は河童である。
バー「ネオフォビア」に見かけぬ客が来店し、その客が話した内容から河童に絡んだ事件について考察する話である。
河童の正体は一体何か、という鳶さんの解説が大変面白い。
そしてその博識を利用して30年前の謎もスルスルと簡単に解いてしまう。
とは言っても、その謎解きに必要な材料集めをネコにやらせる鳶さん。
突然翌日に山口県に行くことができるネコもすごいけどね!
たまにネコを褒めてくれる鳶さんの言葉があると、SNAKEPIPEまで嬉しくなってしまう。
やっぱりネコに感情移入してるのかもしれないね。(笑)
鳥飼先生の小説には自然を破壊する人間の行動や人間自体に対する怒りや悲しみを含んでいることがあるが(激しく同意!)、「眼の池」にも身勝手な人間に対する警告のような内容が入っていた。
「責任持てないならペットを飼うな!動植物はオモチャじゃないんだ!」
というメッセージを強く感じたSNAKEPIPEである。
それにしても豚って怖い動物なんだね?
トマス・ハリスの著作やパゾリーニ監督の「豚小屋」を思い出してしまったよ。(笑)

2:天の狗
第2話の舞台は立山連峰。
鳶さんとネコが天狗の謎を追う話である。
「天狗の高鼻」と呼ばれる、ロッククライミング界では有名な岩登りに挑戦しようとする大学生と、登るのをやめさせようとする山小屋主人と修験者の会話を聞くところから話が始まる。
「天狗の高鼻」には天狗がいるから危険、と聞いて鳶さんが興味を示すのだ。
修験者の持ち物についての説明が興味深い。
役行者についての本を読んだことがあったけれど、詳しくは覚えていない!(笑)
また読み返してみようかな。
この話の中でSNAKEPIPEが一番驚いたのが「タカとワシには明確な区別がない」というところ。
イーグルとホークなのに、体の大きさで呼び方が変わっていたとは知らなかった。
勉強になりました!(笑)
そしてまたトマス・ハリスを思い出してしまったよ。
ううっ、怖い!
SNAKEPIPEには犯人の動機がイマイチ解らなかったなあ。
やっぱりそういうことでいいのかしら?(←この言い回しが更に謎かも)

3:洞の鬼
第3話は瀬戸内海の小島・悪餌(おえ)島が舞台である。
悪餌島にある悪餌神社に伝わる追儺式—節分祭についての取材に訪れたネコに、やっとお待ちかねのジンベーと鳶さんが同行する。
節分、ということで今回登場する物の怪は鬼!
この小島の廃墟にアーティストが住み着いている、という本当にありそうな設定が面白い。
そしてそのアーティストの一人が行っているパフォーマンスアートについての説明の中に飴屋法水の名前を発見!
先々週のブログで丸尾末広を特集し、その中で「東京グランギニョル」について書いたSNAKEPIPEには嬉しい驚きだった。
飴屋法水が「東京グランギニョル」の主催者だったからね!
遠い過去の記憶に基づいて書いた記事と鳥飼先生の小説がリンクしているみたいだもんね!
それにしてもその手のパフォーマンスアートは非常に解り辛い。
結局は行為そのものよりも、思想を理解しないといけないアートだからね。
アーティスト本人、もしくは評論家みたいな誰かに説明を受けないと解らないアートって難しいよね。
説明聞いてもさっぱり理解できないことも多いし。(笑)
そうは言ってもアートとミステリーを融合させる鳥飼先生の小説は大好きなので、「洞の鬼」はとてもお気に入り!
小説内にSNAKEPIPEの敬愛する映画監督であるデヴィッド・リンチ監督の名前があったことも嬉しかった。
そうだ、あの映画ももう一度鑑賞し直そう!(笑)
「純真無垢」というのが良い結果を生むわけではない、という今回もまた怖いお話だった。

「物の怪」や「妖怪」と呼ばれる伝説上の生き物について、鳶さんが理論的に説明を付け解読していく3つの小説は読みごたえ充分!
「なるほど」と感心しきりで一気に読み切ってしまった。
鳶さんから、もっといろんな妖怪に対する解釈を聞いてみたい、とも思う。
でも伝説のままのほうが良いのかもしれない、とも思うし。(笑)
それにしても3つのお話共、一番怖いのは××(あえて書かないけどね)なんだなと思ったSNAKEPIPEである。

「観察者シリーズ」に登場する、前述した4人はそれぞれキャラクターが立っているので、なんだかもう知り合いのような感覚なんだよね。(笑)
また4人に会える時を楽しみに待っていようと思う。
「観察者シリーズ」ではないけれど、キャラクターが立ってる、と言えば増田米尊もいるよね!(ぷっ)
鳥飼先生、これからもずっと応援してます!

Picnic On A Frozen Beach(鳥飼否宇の稀有)

【鳥飼先生の作品をイメージしてSNAKEPIPEが制作。ハート型の水たまりが印象的】

ROCKHURRAH WROTE:

今年のゴールデン・ウィークは人並みというかROCKHURRAHとしてはかなり長い、まるまる一週間という連休が取れて久しぶりに時間を気にせずゆったりと過ごせた。
後半には近場ではあるが最近毎年恒例となっている潮干狩りに出かけたんだが、これが「熱中症に注意」などという天気予報のコメントとは大違い。おそろしい強風と予想外の寒さでとてもじゃないがゆっくりのんびり行楽を楽しむどころではなかったのだ。
去年の潮干狩りがかなりの暑さだったために(当ブログ「アサリでアッサリ機種変更!」参照)ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも「海岸は風も強くて寒くなる」とは思いつつも油断した服装で大失敗してしまった。「さ、寒い!」という感想しか出てこない。
二人ともゴアテックスや保温力抜群のミリタリーな上着を持ってるのに海岸は薄着だったわけで、肝心なところで全く活用してないなあ。
寒さで震えながら長蛇のトイレ船に並ぶROCKHURRAHはアサリもさっぱりという具合。それでも負けずに黙々と掘り続けたSNAKEPIPEはまあまあの戦果、二人合わせて何とか人並みというところか。久しぶりのアウトドア、とても楽しかったけどね。

さて、前置きとは全然関係ない事をこれから書こうと思うんだがタイトルとは少しだけ関係あるかな?今年一月の発売日に素晴らしい奇跡的な出来事があって二冊も同時に入手したというROCKHURRAH家の家宝「このどしゃぶりに日向小町は/鳥飼否宇 著」について書こうというのだ。「一月に入手して何で今頃?」とタイムリーではない展開にほとんどの人が疑問を抱くことだろう。何度かこのブログでも紹介(?)しているし、鳥飼先生自身からもコメントを頂いたという大変に光栄な出来事もあった。なのにこの遅過ぎた感想文、推敲を重ねてこの時期になったわけでもないから自分でも情けない。
前置きは長いが肝心の感想は短いかも知れないと竜頭蛇尾気質を心配しつつも何とか書いてみよう。

「このどしゃぶりに日向小町は」は鳥飼先生の長編小説で架空の都市、綾鹿市が舞台となったものだ。2003年に発表された短編「廃墟と青空」に登場した伝説のロックバンド鉄拳の元メンバーが20年ぶりに集まるという話で2004年に発表された長編「太陽と戦慄」の主人公も登場する、鳥飼先生のファンならば大喜びという内容だ。

ウチのブログを詳細に毎週読んで下さる方はほとんどいないと思えるので過去に書いた事と重複するのだが、先生の作品を未読の人のために予備知識を少しだけ。
70年代プログレッシブ・ロックを知る人ならばすぐにピンと来るこのタイトル、「太陽と戦慄」はもちろんキング・クリムゾンの傑作が原典だし「廃墟と青空」は一般的にはあまり知られてはいないがドイツの実験的音楽集団ファウストの4thアルバムの邦題そのまんま。そう(ファー)、鳥飼否宇先生と言えばミステリー界きってのプログレ&クラウト・ロック&ノイズ&アヴァンギャルド・ミュージックのマニアックな文章で有名な作家であり、それが他の作家とは決定的に違った個性なのだ、と個人的には思える。ミステリー・マニアを自負する人でもこの手の音楽に造詣が深くなければちりばめられたもう一つの謎解きは出来ないという寸法。簡単に言ってしまえばほとんどの登場人物は実在したバンド・メンバーのもじりというわけで、ミステリーのみの人なら「けったいな名前」という感想くらいしか出て来ないはずだが、この手の音楽好きの人ならニヤリと(時には爆笑)するに違いない。この辺の謎解きに関してはウチのブログのアレコレで確認してみて。

さて、その「廃墟と青空」に出てくる伝説のバンド鉄拳とは、もちろんナムコの「鉄拳シリーズ」などではなくファウスト=拳骨というドイツ語の意味を換骨(拳骨)奪胎したものだ。
その鉄拳のメンバーもファウストのメンバーをモデルにしたのは明らかで
入村徹/Hans Joachim Irmler
出家舞矢(ザッポ)/Werner "Zappi" Diermaier
橋本順子(JH)/Jean-Hervé Péron(の頭文字)
というほとんどそのまんま単刀直入なもの(笑)。
この物語の重要人物ルビーだけが本名が明らかでなく(物語の最後で明らかになるが当ブログでは言えましぇん)途中ナカオスナオなどと名乗るが単刀直入な原典ははっきり分からなかった。Rudolf Sosnaあたりか?「ル」と「スナ」のみだな(笑)。

またバンドのプロデューサーである宇部譲は実際のファウストの仕掛人であったUwe Nettelbeckと伝説の音楽雑誌「ロック・マガジン」を主宰していた阿木譲を掛け合わせたものだろうと推測がつく。ついでに鉄拳のサウンド・エンジニアだった久能来人は当然Kurt Graupner(ファウストのエンジニア)だろうか。

まあこんな人々が主要登場人物で、詳しくは鳥飼先生の傑作「痙攣的」「太陽と戦慄」「このどしゃぶりに日向小町は」という順番で読んで頂きたいのだが、かいつまんで話すならば鉄拳と言うバンドは既成の商業主義ロックを打破するためにその宇部譲が仕掛人となって集められたもの。メンバーのヴィジュアルもプロフィールも性別も不明といった徹底した秘密主義、世間とは隔離された別荘で共同生活をして音楽を創るのだがその奇行や斬新な音楽という風評が先行して一部の音楽マニアに熱狂的に迎え入れられることになる。この辺もドイツの廃校で創作活動をしたというファウストとイメージがかぶるな。この話では天才的ギタリストでジャンキーのルビーが閃き、それに他のメンバーが加わるという形式で幾多の音源が完成する。そして満を持して後に伝説となる唯一のライブが開催され、そこで殺人事件が起こる。

「廃墟と青空」はこの数年後に事件の真相が明らかになるという話だ。秘密主義に守られて正体が不明だったために、事件当時にステージから消えてしまったメンバーがどこへ行ってしまったのか?その謎に肉迫するという構成がミステリーとしても面白く、大好きな作品。「面白そう」と最初に手に取ったのはROCKHURRAHだったがSNAKEPIPEが先に読んで一度でファンになってしまった事を思い出す。

「太陽と戦慄」はまた別の時代、別のバンドの話になるので今回は書かないがロックとミステリー、そしてテロリズムがミックスされた壮大な話でROCKHURRAHは非常に高く評価している作品。

そしてやっと本作「このどしゃぶりに日向小町は」となる。
鉄拳の解散から20年経ったという時代設定のために元メンバーはみんな40代後半となっている。先に書いた天才ギタリスト、ルビーはあまりのジャンキーぶりに病院送りとなっていたわけ(何と20年も)だが、そのルビーの訃報と共に意味不明のメッセージが入村の元に届く。入村は元メンバーと共にルビー死亡の真相を解明するために手紙の送り主、アイダ・サナトリウムに潜入するというような話だ。ミステリー要素もなくはないがどちらかと言えばヴァイオレンス風味のあるサイコ・サスペンスかホラーといった趣がある。
ROCKHURRAHは最近のミステリー事情には疎いし、いわゆる推理小説というのもごく限られた作家しか読んでいない。ただし大正から戦前あたりの探偵小説は割と読んだ方で、この時代は本格的探偵小説よりもむしろ変格と呼ばれた、ある意味ミクスチャー的な一風変わった作品群が大好きだった。中でも敬愛していた作家と言えば・・・。
冒頭にルビーがサナトリウムのベッドで目覚めるくだりは鳥飼先生と同じ福岡出身の伝説的作家、夢野久作の「ドグラマグラ」を即座に思い浮かべる事が出来る。そう言えば「廃墟と青空」の冒頭もボーン、ボーンという柱時計の音。「まるでドグラマグラじゃん」とSNAKEPIPEと語り合った事を思い出す。
夢野久作はそういう探偵小説の時代にデビューしたがちゃんとした探偵が何かの事件で活躍するというような作品は(たぶん)なく、もっと自由奔放な世界で自分なりの探偵小説を開拓した作家だ。

鳥飼先生の作品は生物学やアヴァンギャルド的音楽といったマニアックな世界が重要な要素となっているが、そういうものとミステリーが融合していて独自の世界を創り上げ、そして唐突にカタストロフィが訪れるというギリギリのバランスで成り立っている。そういう意味では現代のミステリーというフィールドよりはかつての「探偵小説」という大雑把で意味不明の括りの方がしっくりくるとROCKHURRAHは個人的に感じた。全然違っていたらすみません。

余談だが「このどしゃぶりに日向小町は」の英題「It’s A Rainy Day, Sunshine Girl」
そして各章のタイトル
「ほんのちょっとばかりの痛み(It’s A Bit Of A Pain)」
「シェンパル・ブッダ(Schempal Buddah)」
「ねえ、なんでニンジン食べへんの?(Why Don’t You Eat Carrots)」
これらは全てファウストの曲名からつけられている。さらに小説中に登場する音響兵器(?)の曲名「ギギー・スマイル」や「ノー・ハーム」なども全てファウストそのまんま、ここまでこのバンドづくしの一篇を書き上げた小説はたぶん他にないだろう。海外ではマイケル・ムアコックホークウィンドのように音楽と小説が密接な関係にあるという例もあるが、この試みはおそらく本邦初と言えるはず。まさに稀有な出来事、などと書くと少し大げさかな?
ROCKHURRAHの今回のブログ・タイトルもファウストの名曲「Picnic On A Frozen River」にちなんでみたのはおわかりだろうか?え、陳腐?

それにしても「廃墟と青空」でははっきりとわからなかった鉄拳メンバーだが、今回は会話や行動により愛着のあるキャラクターとなった。その矢先に、うーむ。この人たちの話をもっと知りたくても、もう叶う事がないんだな。そう思うと寂しい気がするのはROCKHURRAHだけじゃあるまい。

以上、評論も解説も感想文も苦手なROCKHURRAHが鳥飼先生の魅力を伝えるために書いてみました。クラウト・ロックのファンでまだ未読の人がいたら是非読んでみてね。

好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇 part2 –太陽と戦慄/爆発的–

【「爆発的」にちなんで作ってみました】

SNAKEPIPE WROTE:

前回の「好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–」は鳥飼先生の著作「痙攣的」の感想をまとめ、登場人物の名前の謎解き(?)に挑戦した記事である。
今回はまた別の著作を特集した第2弾を書いてみたいと思う。
ネタバレの部分があるかもしれないので未読の方は注意してください。

4冊でもご本」を書いた2007年6月からずっと探していた「太陽と戦慄」。
それ以来本屋に行っては必ず「タ行」を探していたけれど見つからない。
一読してすっかりファンになってしまった「痙攣的」より前の著作のため、どうしても読みたかったのである。
そして去年ついにネット通販にて購入。
いやあ、最近はほんとに便利になりましたなあ。(笑)
2年越しで待ちわびた「太陽と戦慄」をわくわくしながら読み進めたのである。

読み始めてほんの数ページで「やっぱり面白い!」と思う。
「粛清せよ」という曲の詩はSNAKEPIPEが大好きなザ・スターリンのよう。
導師、泉水和彦が歴代バンドメンバーの命日を覚えているとはすごい!(笑)
それにしてもこの導師の経歴が興味深い。
お金持ちの息子→戦場カメラマン→ヴェトナムで天啓を受け→導師になったとのこと。
なんだか本当にありそうな話だよね?(笑)
そして「太陽と戦慄」の中で一番SNAKEPIPEが関心を持ったのは、この導師の思想である。
もしかしたら「危険思想」になるのかな。
蜘蛛の糸」のカンダタよりもその後から「我も我も」と付いてくるその他大勢に嫌悪感を持つSNAKEPIPEは、「まさにその通り!」と導師の言葉に大きくうなずいてしまった。
いや、テロ礼賛ということではないので勘違いしないでね!(笑)

バンドの話として読んでも、もちろんミステリーとして読んでもとても面白かった。
導師の書いた詩がヒントになっているとはね!
そして最後まで犯人が判らなかったSNAKEPIPE。
えっ、鈍過ぎ?(笑)

続いて鳥飼先生2008年の著作「爆発的」について。
これは「痙攣的」の続編にあたる作品とのこと。
パラパラとページをめくっただけで「日暮百人(ひぐらしもんど)」と「藍田彪(あいだあきら)」という「痙攣的」に登場していた名前を発見!(笑)
非常に楽しみである。

「爆発的」は副題に「7つの箱の死」とあるように7つの章から成り立つ小説である。
1章ごとに色が入った曲名をタイトルに付けている。
そして章ごとに一人の現代アーティストが登場するのだが、これがまた!
「痙攣的」と同じように「もう1つの謎解き」になっているのである。
登場人物の名前が実在するミュージシャン(ノイズやアヴァンギャルド、プログレなど)からの名前のパロディであることが鳥飼先生の作品の特徴なのである。
小説内で発生する事件は小説の中で解決して犯人が誰、というのは判る。
でもこの「もう1つのミステリー」のほうには「これが正解だよ」という解答はないので、勝手に「多分こうじゃないか」と想像するほかない。(笑)
ROCKHURRAHの協力の下、夜な夜な謎解きに明け暮れたSNAKEPIPEである。
その推理を含めて感想を書いてみよう。

1.黒くぬれ!あるいは、ピクチャーズ・アバウト・ファッキング
タイトルは「Paint It Black」、ローリング・ストーンズの曲である。
わざわざ説明するほどでもないか?(笑)
画家として登場するのが須手部有美(すてべあるみ)という女性。
すてべ、すてべ。変わった苗字だ。
で、思いついたのがビッグブラックレイプマンのスティーブ・アルビニ。
須手部を「すてーぶ」、有美を「あるび」でどうだ?(笑)

ホストとして登場する相生十二男(あいおいとにお)。
これはブラックサバスのトニー・アイオミだね!
ナンバーワン・ホストの王子凡雄(おうじつねお)。
音読みすると「おうじぼんお」。
おぅじぼんぉ、おずぃぼんぉ、おずぼぉん、あっ!おずぼーん!(笑)
ということでブラックサバスのオジーオズボーンでどうだろう?
ホストクラブの名前も「サバト」だしね!
店長の虎場はブラック・ウィドウのキップ・トレバーとか?違うかな?(笑)

須手部有美が発表する、人種問題をテーマにしたアクションペインティングって本当にありそう。
それにしても性同一障害から性転換した登場人物が登場するとは驚き!
実際SNAKEPIPEにもかつて同じことを真剣に考えている友人がいたので、そんなに珍しいことじゃないのかもしれないね。

2.青い影 ないしは、ノーサイドインサイド
タイトルはプロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale(青い影)」。
前衛演劇の俳優として出口日多尊(でぐちひだたか)が登場する。
実はこの名前、ROCKHURRAHと二人で長い間考え続けた難問!
顔を合わせる度に「でぐちひだたか」「うーむ」とうなっていたのである。
ブルーと付くバンドをかたっぱしから調べようとするも、SNAKEPIPEが思いつくのは「青い三角定規」や「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」だったり。(笑)
日多尊を「ぴーたーそん」と読むのはどうだろうということで考えついたのが、ブルー・チアーのディッキー・ピーターソン!
無理矢理過ぎ?(笑)
ただしこのブルー・チアーにはランディ・ホールデンとレイ・ステファンズというメンバーがいるようでこれはもしかしたら堀手蘭(ほりでらん)と堀手玲(ほりでれい)なのでは?(笑)

甲本ヒロコ(こうもとひろこ)と増間正敏(ましままさとし)はブルーハーツの甲本ヒロトと真島昌利というのすぐに分かったけどね!
鳥飼先生の作品にブルーハーツというのがちょっとびっくり。

出口日多尊は能楽の融合や凝った舞台装置などを合わせた演劇という、確かに海外ウケしそうなスタイルを構築。
<ノーサイドインサイド>に出てくる機械の蜘蛛は、ラ・マシンのラ・プリンセスみたいな感じなのかな。
うーん、こんな舞台が本当にあったら観てみたいな!(笑)

3.グレイとピンクの地 もしくは、ウィッシュ・ウィー・ワー・ヒア
タイトルはキャラバンのIn the Land of Grey and Pinkとピンク・フロイドのwish you were hereのもじりね!
彫刻家として登場する是水大(これみずだい)と是水海(これみずかい)の双子ユニット、是水トゥインズ。
是水大はトゥインド、是水海はトゥインクと名乗っている、というのがヒントになった。
ピンク・フェアリーズにトゥインクと、そのまんまの名前を発見!(笑)
美術商として登場する黒眼帯の砂野半太(すなのはんた)も同じくピンク・フェアリーズのラッセル・ハンターとダンカン・サンダーソンのミックスかな?
砂だからサンド、で。
苦しい?(笑)

彫刻家として登場する久米一村(くめいっそん)。
これはピンク・フロイドのニック・メイソンね。
ニッを飛ばしてク・メ/イソンと本当に日本名にありそうな仕上がり!
このセンス、さすが!
大笑いしちゃったよ。(笑)
そして同じく彫刻家の志度場礼人(しどばれいと)は、ピンク・フロイドのシド・バレットに間違いなし!
この名前ってちょっと苦しくない?(笑)

千体もの人形というと一番初めに思いつくのはYMOの「増殖」だけど(古い?)、それが全裸のアンドロギュノスとなるとかなり迫力があるだろうね。
何年か前、秋葉原でものすごく精巧にできている美少女人形を見たことあるけれど、あんな感じじゃないかと想像する。
あれがいっぱいだったらすごいだろうなあ。
その道のマニアじゃなくても欲しくなる逸品だろうな。(笑)
これも観てみたいアートだね。

4.白日夢 さもなくば、エレクトロニック・ストーム
タイトルはホワイト・ノイズのAn Electric Stormかな?
続いては音響アートの辺根戸美留(べねとよしとめ)。
これはホワイト・ハウスのウィリアム・ベネットね!
美留を「びる」と読むと丁度いいんだよね。
ウィリアムの愛称はビルみたいだし。(笑)
辺根戸美留と共に活動していた織地創生(おりじきずお)。
この名前もかなり悩んだけれど、ある日ROCKHURRAHが
「おりじ、おーりっじ、おりっじ・・・あっ!スロッビング・グリッスル!」
と叫び、ジェネシス・P・オリッジじゃないかと言い出す。
「おりっじ」は良しとして「創生」は?
「ジェネシスは創世って意味じゃなかったっけ?」
とのこと。(笑)
なるほどね!
名前はそれでなんとかクリア(?)したとしても、バンド名にその章のカラーがついてる、という点はクリアできるのだろうか。
スロッビング・グリッスルに色はないよね?
と、またジェネシス・P・オリッジについて調べていると、ホワイト・ステインズというバンドと活動を共にしていたみたいで。
全然違うかもしれないけど、推理していくのは楽しかったな。(笑)

どうしても分からなかったのが坊屋昌巳(ぼうやまさみ)。
これは全く何も出てこなかったのがちょっと悔しい。(笑)

辺根戸美留の<エレクトロニック・ストームI>はアイソレーションタンクに入って音楽を聴く、という作品。
貴志祐介の「十三番目の人格 ISOLA」にも出てきた、閉所恐怖症の人は入ることができない子宮をイメージした装置だったはず。
立花隆が前世を知るための実験(だったと思う)で入っているのをテレビで見たことあるけど、とても怖そうだった。
ゆったりした気分にはなれそうにないけど、ちょっと経験してみたい気もするね!

5.赤い露光 でなければ、ソルジャー・ウォーク
タイトルはクロームのRed Exposure(赤い露光)とレッド・クレイオラのSoldier-Talk のもじりかな。。
政治的パフォーマンス・アートの東風村麻世(こちむらまよ)。
これはレッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンか。
東風村を「とんぷそん」と読むとあーら不思議!
ぴったりの名前が出来上がったよ!(笑)
この名前も秀逸だね!

政治家、能見(のうみ)の秘書、木出(きで)はRed Hot Chili Peppersのアンソニー・キーディスか?
団子屋の古詩庵(ふるしあん)も同じくRed Hot Chili Peppersのジョン・フルシアンテじゃなかろうか?
ぷぷぷ、フルシアンテが古詩庵!(笑)
そう考えるとコンパニオンの茶奴(ちゃやっこ)もRed Hot Chili Peppersのチャド・スミスかもしれないね!
能見は頑張って探したけど、残念ながら分からなかった。

この手の政治色の強いパフォーマンスというのがSNAKEPIPEにとっては難しい。
結局世界情勢とか政治に疎いのが原因だと思う。
そして今回の東風村麻世のパフォーマンスも解り辛かった。
もっと勉強が必要ね。(笑)

6.紫の煙 または、マシン・ヘッズ
タイトルはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのPurple Hazeとディープ・パープルのアルバムMachine Head だね。
登場するのは映像作家の城間英一(しろまえいいち)。
これは日本のバンド、のメンバー、城間正男と宮永英一を混ぜた名前か?
そう考えるととてもすっきりまとまるんだけどね。
なんとROCKHURRAHも紫持ってたよ、だって。(笑)

城間英一の作品<マシン・ヘッズ>は映像とボディ・アートの融合になるのかな。
観に行こうと思っている森美術館の「医学と芸術展」が近いように思う。
今まで誰も観たことがない究極の映像か。
観たいような観たくないような。(笑)

7.紅王の宮殿 またの名を、デス・イン・セブン・ボクシーズ
タイトルはキング・クリムゾンのIn The Court Of The Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)の漢字バージョンかな。

「紅の処刑室」にあった分断された豚の標本は、ダミアン・ハーストの牛みたいで想像し易いね。
それにしても豚の血がこびりついたために出来上がった赤い部屋って・・・。
SNAEKPIEPは怖くて入れないだろうなあ。

事件は探偵、星野万太郎の推理で解決なのだろうか。
「こういう可能性もある」という示唆だから、これが絶対じゃないんだよね。(笑)
そしてもし星野万太郎の推理が正しいとしても、犯人の動機が謎なんだな。
快楽殺人の一種と言われればそうかもしれないけど。
SNAKEPIPEなりに推理してみるかな!

事件そのものの面白さに加えて、いろんなジャンルの現代アートの話、そして登場人物の名前の謎解き、と話題がいっぱいの「爆発的」はとても刺激的だった。(笑)
鳥飼先生の新作は1月22日発売予定の「このどしゃぶりに日向小町は」のよう。
「入村徹に届いた、ルビーからの謎めいた手紙」
なんて書いてあるよ!
これって「痙攣的」に登場のバンド、鉄拳のメンバーだよ!(笑)
また楽しみが増えて嬉しいな!