SNAKEPIPE MUSEUM #68 Kirsten Stingle

20231001 11
【まるで仏像のような彫刻だね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMは、Kirsten Stingleという女流彫刻家を特集してみよう。
読み方はキルスティン・スティングルで良いのかな?
コロンビア大学演劇学部を卒業していて2児の母親、というくらいの情報しか確認することができなかったよ。
演劇からどうして彫刻の道を目指すことになったのかなどは不明なんだよね。
作品に興味を持ったから、他に知らなくても良いのかな。(笑)

一番最初に目にしたのがこちらの作品。
特にタイトルがついているわけではないようで、スティングルのサイトには画像Noしか載っていなかったよ。
頭に針(?)を刺した「おどけた」表情の左の女性を見て、笑っているような右の女性。
双生児のようにも見える繋がった体も気になるよね。
秀ちゃん吉ちゃん(孤島の鬼)と思ってしまうよ。(笑)
他の作品を調べてみたいと思ったきっかけになったよ!

「Awakening(覚醒)」と題された作品。
頭に載っているのはサボテン?
口にも痛そうなトゲトゲが入っているよね。
しかめっ面をする女性。
上の作品でも感じたけれど、スティングルの内面を表しているのかもしれないね。
拷問を受けているような苦しい表情、筋がたった首筋などは、直視するのをはばかるほど。
SNAKEPIPEが、自分の内面と重ねて見てしまうのかもしれないなあ。(笑)

年代物の陶器ですよ、と言われたら信じてしまいそうな古めかしい印象の作品だよね。
箱の中に入っているのはサーカスの団員かな。
箱の作品というと、ジョセフ・コーネルを思い出すね。
人形を操っているような手付きの女性はバレリーナ?
オルゴールの音色が似合いそうな雰囲気だよね。
美しさにシュールが加わって、とても好きな作品だよ!

こちらもダブル・イメージの作品なのかな。
本体と内面みたいな区分けと解釈するのは陳腐かもしれない。
手足をもぎ取られ、空を見つめる本体と、無表情な操り人形の組み合わせだから、そう感じてしまうのも無理はないよね。
ところがスティングル御本人の画像を見ると、「私はいつでもハッピー!」といった感じで明るく笑っているんだよね。
こうした内省的な作品を制作するようなタイプには見えないなあ。
人は見かけによらない、のかな。

この作品を観て、合田佐和子の「イトルビ」を思い出したSNAKEPIPE。
こんなブローチがあったら欲しいよ!
「イトルビ」も欲しいと言ってたっけ。(笑)
ブルーが垂れている、フランスの貴族みたいな帽子かぶってる真ん中のがいいなー!
勝手に「ミッシェル」と名前付けたくなるね。
何故ミッシェル?(笑)

「Journey Through Wonderland(不思議の国の旅)」というタイトルはピンとこないけれど、作品はとても素敵だね。
不気味で可愛い、相反するイメージが混ざり合っているよ。
この女性もサーカス団員、もしくはバニーガール?
骨のトナカイに引いてもらって行く先はどこだろう。
この作品から物語を作ってみたくなるね。

頭に刺さっているのはネジ?
キリキリとハンドルを回すと、ネジが少しずつ頭部に埋もれていく。
逆回しにして、ネジを抜いているところかもしれない。
周りに飛んでいるのは蝶なのかな。
この作品からイメージしたのは「ライ麦畑でつかまえて」だよ。
頭の中がお花畑みたいって思ったからね。

スティングルの作品を間近で鑑賞してみたいね。
そこまで小さな作品ではないようなので、細部までじっくり観たいよ。
会場はヴァニラ画廊でお願いします!(笑)

テート美術館展 鑑賞

20230924 top
【いつも通り国立新美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2023年8月に鑑賞した「蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる」の別会場で開催されていたのが「テート美術館展」で、「この夏に行われるビッグ・イベントを一日で消化してしまうのも惜しい」という理由により、会期が長い「テート美術館展」を先延ばしにしたんだよね!

9月になったら少しは涼しくなるだろうという予想は裏切られてしまった。
新居でのペンキや漆喰を塗り終えてから、六本木に向かう。
こんな体力が残っているうちは、まだまだ大丈夫だね。(笑)
気温が下がらず、暑さが残っている。
7月から開催している「テート美術館展」の客足は落ち着いているかと思いきや、チケット売り場には列ができていたよ。
「蔡國強展」に来た先月のほうが空いてたのかもしれない。

「テート美術館展」は、「テート・ブリテン」「テート・モダン」「テート・リバプール」「テート・セント・アイヴス」という4つのイギリス国立美術館が所蔵している7万7千点以上の作品から、「光」をテーマにした120点を観ることができるという。
撮影は一部作品を除いてオッケーとのこと。
気になる作品を撮らせてもらおう!(笑)

展覧会は7つのチャプターで構成されていた。
「Chapter1 精神的で崇高な光」で気になったのは、ウィリアム・ブレイクの作品だよ。
2011年12月に上野の国立西洋美術館で版画展を鑑賞したっけ。
今から12年も前のこととはびっくり!(笑)
今回展示されていたのは「アダムを裁く神」で、1795年の作品だって。
炎をバックにした神の姿が印象的だね。

ターナー賞でおなじみのジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの作品も4点展示されていたよ。
ほとんど抽象画のようにみえてしまう「湖に沈む夕日」は、1840年頃の作品だという。
淡い色使いと、クローズアップにした構図が特徴的。
心象絵画みたい、という感想を持ったSNAKEPIPE。
イギリス在住のアーティストに贈られるターナー賞で名前が有名だけど、ターナー自身の作品は、ほとんど知らなかったので、今回鑑賞できて良かった。

「テート美術館展」は、予想以上にお客さんが多く、展示作品の前を列になって順番に鑑賞していく人がほとんどだった。
いわゆる印象派のような落ち着いた作品は飛ばして、興味がある現代アートに近い方向まで「流し見」することにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
牛歩が苦手なんだよね!
「Chapter5 色と光」で足を止めたのがペー・ホワイトのインスタレーション「ぶら下がったかけら」。
2004年の作品だという。
色とりどりの「かけら」がキレイで、影の形も面白かったよ。

モホリ=ナギやカンディンスキーをはじめとするバウハウスに関連する作品すべてが撮影不可!
ハナヤ勘兵衛、ルイジ・ヴェロネージ 、ケペシュ・ジェルジらのフォトグラムや実験写真が素晴らしかったのに残念だよ。
マーク・ロスコも駄目だった中で、オッケーになっていたのが画像を載せたリヒター。
タイトルは相変わらず「アブストラクト・ペインティング」だね。(笑)
色合いと雰囲気が2022年7月に「ゲルハルト・リヒター展」で鑑賞した「ビルケナウ」に似ていたよ。
暗い色調に惹かれるんだよね。

左はスティーヴン・ウィラッツの「ヴィジュアル・フィールド・オートマティック No.1」で1964年の作品。
長方形の四隅に配置された赤、青、緑、黄色がランダムに発光する仕組み。
少し待って3色が光るところを撮影したよ。(笑)
コンピューター・アートの先駆け的な作品になるのかな?
右はデイヴィッド・バチェラーの「ブリック・レーンのスペクトル 2」で、2007年の作品だという。
高さが7m以上あるので、全体を鑑賞するためには、かなり後ろに下がる必要があるよ。
意味が分からなくても、印象に残る作品だね!

観ているとトリップしそうになったのがピーター・セッジリーの「カラーサイクル III 」。
動画撮影は禁止だったので、Youtubeの映像を載せようか。

頭の中がぐるぐるしてきちゃうよね。
1970年の作品なので、時代的にもサイケデリック・アート全盛だったのかも?

鑑賞するのを楽しみにしていたジェームズ・タレルの「レイマー、ブルー」は撮影禁止!
こちらもYoutubeの動画にしてみよう。

陳腐な言い方だけど、SFの世界に迷い込んだような、もしくはあの世に行ったような感覚に陥ってしまう。
隣にROCKHURRAHがいなかったら、自分の存在すら疑いたくなるほど。
なんとも言えない崇高で精神的な空気感が漂う。
こんな作品を1969年に発表しているタレル、恐るべし!
もっとタレルの作品観たいな。

2020年9月に「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を鑑賞したことを思い出した。
会場が大混雑して、チケットを購入するための行列に並んだっけ。
オラファー・エリアソンは、非常に人気があるアーティストで、今回の展示も大盛況だったよ。
恐らく鑑賞した人の全員が「キレイ」と感じて、撮影したくなる作品なんだよね。
毒気がある作品を好むSNAKEPIPEには、少し物足りないかもしれない。

会場を出て、ミュージアム・ショップに向かう。
図録とグッズをチェックするために、必ず展覧会後には立ち寄ることにしてるんだよね。
ショップに入った瞬間、SNAKEPIPEの目を釘付けにしたのが、謎のポーチ。
なんだこれは!と衝撃を受けてしまった。
説明を読むと、どうやらウィリアム・ブレイクの「善の天使と悪の天使」をモチーフにしているという。
今まで色んなグッズを目にしてきたけれど、こんなにヘンテコなのは初めてだよ!(笑)
これは絶対に欲しいと手にしていたら、ROCKHURRAHがプレゼントしてくれると言う。
ありがとう、ROCKHURRAH!本当に嬉しいよ!(笑)
レジを待つ行列に並び、他の人が何を買うのか見ていたけれど、このポーチを買う人は一人もいなかったよ。

念願だった「テート美術館展」に行かれて良かった!
イギリスの本家テートは、一体どんな雰囲気なんだろうね。
テート・モダンは入場無料だって。
一度行ってみたいよ!

好き好きアーツ!#59 HTコレクションより part3

20230917 04

【伯母が何枚も撮っていた夕日の写真】

SNAKEPIPE WROTE:

今週で最終回となる伯母の写真特集。
まるで写真家が撮影したようなショット集で締めくくってみよう。
きっと伯母本人は、たまたまシャッターを切っただけで、プロっぽく仕上げたつもりじゃないはず。
個人的な思い出の一枚だったんだろうけどね?

工場地帯を移した写真。
まるでアンドレイ・タルコフスキーの映画みたいじゃない?
恐らくバスか電車の中から撮影したように見えるよ。
インダストリアル好きのSNAKEPIPEには、グッときた一枚。

カラーのフィルムにはよくあった赤く焼けた写真。
デジタルになってからは見かけなくなったのは当たり前。
これはカメラに何かしらの光が入ったせいで、フィルムが感光したのが原因だって。
伯母は電柱をモチーフにしていることが多いんだよね。
惹かれるものがあったんだろうね。
写真的には失敗なんだろうけど、フィルムで撮影した写真ならではの味わいがある一枚だよ。

1970年代に始まる「ニュー・カラー」と呼ばれる潮流がある。
例えば2010年8月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #05 Stephen Shore」などの写真家が有名なんだよね。
色使いが独特で、初めて観ても「懐かしい」と感じてしまう写真。
影のバランスも抜群だよ。

色褪せたカラー写真を作ろうと思ってもなかなかできないよ。
伯母の写真特集は一切加工することなく、スキャンしただけの写真を載せているので、この色合いでアルバムに貼られていたんだよね。
70年代に、アメリカのディズニーランドに行ったようで、その時に撮影されたみたい。
なんとも言えないノスタルジックな一枚だよね。

ここからは、まるで写真家の藤原新也の写真集に収められているかのような写真を載せていこう。
霧の中にぼんやりと浮かぶ街並みは、まるで映画の一コマのよう。
建物の窓を開けて撮影されたみたいだね。

神々しく光を放つ雪山。
空の藍色との対比が美しい。
満州育ちの伯母やROCKHURRAHの母は、寒さに強かったみたい。
これくらいの雪なんてへっちゃらだったのかも?

自宅で咲いた花なのか。
ピンボケ具合が素晴らしいんだよね!(笑)
上の2枚と合わせると、藤原新也の写真に見えてしまうのはSNAKEPIPEだけ?
花が好きだった伯母は、何枚も写真に記録を残していた。
その中で奇跡の一枚がこれ。
伯母本人からすると、失敗作なのかもしれないけどね?

最後はこちら。
この写真も「メメント・モリ」に含まれていても違和感がない一枚だよ。
ピンボケの雲と水面に映る光が、この世とは思えない。
じっと観ていたら、写真の上下が逆さまだと気付く。
不自然な印象を持ったのは、そのせいかもしれないね?
伯母が撮りたかったのは、雲と光なので幻想的な一枚として、このまま載せておきたいよ。

映画「ブレードランナー」の中で、レプリカントと呼ばれる人造人間達が、「自分は人間だ」と証明するために写真を所持しているエピソードがある。
子供自体の写真があるから、自分は人間に間違いないと主張するんだよね。
写真の持つ重要さにショックを受けたSNAKEPIPE。

3週に渡って特集してきた伯母の写真コレクションにも、「ブレードランナー」に似た存在証明としての意義を写真に感じたんだよね。
伯母は、どんな想いで、これらの写真を撮ったのか。
写真を観ながら冥福を祈りたいと思う。

好き好きアーツ!#59 HTコレクションより part2

20230910 02
【77年3月2日に撮影されたイギリス写真】

SNAKEPIPE WROTE:

先週に引き続き、伯母が撮影した写真を紹介していこう。
今回は旅行先でのスナップ・ショット集だよ!

先週も書いたように、満州育ちだった伯母やROCKHURRAHの母は、第二の故郷として中国が大好きだった。
これは万里の長城を観光した時の写真だと思うけど、赤い帽子を手前に写した斬新なショット!
恐らく伯母が帽子の主で、一緒に旅行した友人が撮影したものと思われる。
伯母には数多くの仲間がいて、毎回複数人と共に旅していたようだった。
時間的にも金銭的にも余裕がある生活を送っていて、羨ましいよ。

漢字から、これも中国だと分かるね。
何気ない風景だけど、少年の赤色が鮮烈な印象を残す一枚。
乗り物から撮影したのか、少し高い位置に見えるよ。
いわゆる観光地ではない場所も記録したかったんだろうね。

崩れた積荷を中心にして、何事かと窓から顔を出した人物をしっかり捉えたショット。
まるでルポルタージュみたいだよ。
このまま記事にできそうだもんね。

スナップ写真のお手本になりそうな一枚。
人民服を着ている子どもたちと左隅の女性の配置が抜群なんだよね!
ピンボケだけど、写真家が撮ったような出来栄え。
この写真も素晴らしいね。

街中での撮影。
右側の丸い台に乗っている人が交通整理をしているのかもしれない。
真正面のトラック運転手に光が当たり、バッチリと撮影者である伯母を見ているように見える。
距離があるにしても、外国人を正面から撮影できる勇気がすごい!
この一枚の中に9名の人物が写っていて面白いよ。
皆様は確認できるかな?

農作業を終えたのだろうか、馬に引かせた荷台に乗っている人物を捉えたショット。
もしかしたら伯母も荷台に乗っていて、振り返ったのかもしれない。
この写真もルポライターの記事みたいで、プロっぽいよ。
コピーつけたら広告写真になったかも?

今回は伯母の写真コレクションから、人物写真をピックアップしてみたよ!
観光地に赴くことが多かった伯母だけど、何気ないスナップもたくさん撮影していて空気感が伝わる。
トップに載せたのは恐らくイギリスの近衛兵だと思われる。
撮影された日付が1977年3月2日になっていて驚く。
1977年といえば、パンクが誕生した年とされているからね!
その年に伯母がイギリスに行っていたとは羨ましい。(笑)
どんな様子だったのか話を聞いてみたかったな、と思う。