映画の殿 第09号 バッド・アス  ジャスティス・リターンズ

【Bad Assesの2人のじーさん達!勇ましい姿に応援したくなるよね!】

SNAKEPIPE WROTE:

TSUTAYAに行って何気なくDVDの背表紙や面出しされているパッケージを見ていると、ふとある一枚に目が止まった。
あれ?これダニー・トレホに似てるじゃない?
手に取ってみると、やっぱりトレホ!
そして映画のタイトルは「バッド・アス ジャスティス・リターンズ(原題:Bad Asses 2014年)」って、まさかあの「バッド・アス」の続編ーーーっ?
じっくり裏面を読んでみると、間違いない!
「うわー!大変ーーー!」
横にいたROCKHURRAHに向かって叫んでしまったSNAKEPIPE。
やっぱりあの「バッド・アス」の続編ができてたんだね。(笑)
ダニー・トレホのファンなのに、こんなビッグ・ニュースを知らなかったとはファン失格!
早速レンタルして帰ったのである。

ではここで「バッド・アス ジャスティス・リターンズ」のあらすじを書いてみようか。

かつて“バッド・アス”というヒーローとして街の悪を退治したベトナム帰還兵のフランク。
今は外出恐怖症のコンビニ店員のバーニーという親友もでき、ボクシングジムのオーナーとして平和に暮らしていた。
しかしある日、ボクシングジムの教え子が何者かにより殺されてしまう。
犯人が麻薬組織の一員だと知って怒り狂った彼は、情に厚いバーニーと最強タッグを結成し、報復を決意。
“Wバッド・アス”となった2人は組織へと乗り込んでいく!

前作「バッド・アス」のラストで念願だった警官になり、バッジを手にした時から3年が経過し、フランク・ベガはボクシングジムのオーナー兼指導者として生活してるところから話が始まるんだよね。
確か40年間もホットドッグの屋台で働いていたはずなのにね?
主演しているのがダニー・トレホだから、この設定には何の疑問も持たないけど。(笑)
マッチョな肉体、後ろで1つに結んだ黒髪、見事なタトゥーなどダニー・トレホの特徴は健在で、ファンとしては姿を見られるだけでも嬉しいのにまた主役だもんね!
強くて優しい正義漢という役どころはよく似合ってるよ。

あらすじの中に「外出恐怖症の親友」とされているバーニーを演じているのは「リーサル・ウェポン」シリーズでお馴染みのダニー・グローバー
おおっ、「Wバッド・アス」だし、「Wダニー」だにー!(笑)
病気を患い、更にメンタル的にも弱くなっているせいで外出恐怖症になっているみたい。
そのためなのか、最初は親友とは言ってもただの偏屈じーさんにしか見えない役だった。
フランク・ベガを助けるところから、キャラクターが急変!
その変化の面白さのために、偏屈じーさんを演じていたんだろうな。

SNAKEPIPEが一番喜んだのは、2人のじーさん達が戦いに挑むために気合いを入れて着替えるシーン。
フランク・ベガは「I AM A MOTHERFUCKER」Tシャツ、白いソックス、黒い帽子、ウエストポーチにウッドランド迷彩のM-65。
バーニーはアディダスの緑色のジャージ上下にプーマのスニーカー、リストバンドとヘアバンドはラスタカラーで統一!
これが2人のユニフォームであり、今から行くぜ!という武装スタイルということになる。

最近はシニアの方々も健康で活発だから、いろんな場所でアウトドアスタイルでバッチリ決めているのを見かけるけど、フランクとバーニーみたいなカッコ良いじーさんは見たことないな。
そこら辺の「ファッションだけアウトドア」系なんてへなちょこ。
特にダニー・トレホはその道の本物(?)だった人だから迫力と存在感が違うよね。(笑)

フランク・ベガは、今回も暴れる、暴れる!
前作で一番痛かったのはディスポーザーのシーンだったけど、今回はフランクが手にしている扇風機!
ひゃー!何が始まるんでしょ!
怖いよ、痛いよー!
他にもナイフの柄でグリグリ、とか「あんな場所」をプスッとかいろいろ痛いところはあるんだけどね。(笑)
正義のために悪を打つ!
ダニー・トレホには残酷シーンが似合うよね。

やってばかりじゃなくて、やられることもあるんだけど。
このシーンで注目なのは、やっぱり吊るされてる肉塊だよね。
本筋と関係ない、単なるSNAKEPIPEの興味か?(笑)
だってフランシス・ベーコンデヴィッド・リンチを思い出しちゃうからね!
冷凍庫でこんな目に遭っても、無理のない設定で回避するところはさすがダニー・トレホ!(笑)
今回はiphoneのメッセージが画面に出てきたり、アプリを使ったりする場面もあって、まさに「今」なんだなと感じたよ。
なんだか時代遅れの人みたいな言い方になってしまった。(笑)

いつの間にか製作されていた「バッド・アス2」を発見することができて良かったなあ!
我らがダニー・トレホは70歳だけど現役でアクション俳優だもんね!
ただのアクションだけじゃなくて、今回はダニー・グローバーが加わったことにより、老人ギャグとでも言うのか、シニアをネタにした笑いも含まれていたのも良かった。
どうやら「バッド・アス3」も計画されているみたいだから、とても楽しみだよ。
また「Wダニー」で頑張って欲しいよね!(笑)

「リアリティのダンス」鑑賞

【「リアリティのダンス」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

2014年4月の記事「ホドロフスキー監督来日!先行上映と講演会」にあるように、既にアレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作である「リアリティのダンス」(原題:La danza de la realidad)を鑑賞し、講演会でホドロフスキー監督を実際に見て、声を聞き、写真に収めた興奮について書いているよね。
ああ、あの夢の様な出来事っ!(笑)
ファン冥利に尽きる時間を過ごしたあの時からすでに3ヶ月が経過し、ついに「リアリティのダンス」が劇場公開されている。
SNAKEPIPEと友人Mは鑑賞済だけれど、ROCKHURRAHは未鑑賞。
そしてあの試写会と劇場公開版では、バージョンが違う可能性があるので確認のためにももう一度鑑賞したかったSNAKEPIPE。
さて、どの劇場に行こうか?

ホドロフスキー監督23年ぶりの新作!などとかなり大きく取り上げられているにも関わらず、「リアリティのダンス」を鑑賞することができる劇場の少なさを知り驚いてしまう。
渋谷のアップリンク、新宿のシネマカリテ、もしくはヒューマントラストシネマ有楽町のレイトショー、という選択肢しかないんだもん。
アップリンクは行ったことがない映画館なので、場所と座席について調べてみると、場所は東急本店の近くというから駅から遠く、座席は60席しかないようで、椅子はパイプ椅子のような一脚ずつ並べてあるタイプ!
web予約はできるけれど、狭い劇場はちょっと…。
シネマカリテも行ったことがないけれど、姉妹劇場(?)の武蔵野館には数回行ったことがある。
ここはweb予約ができず、受付開始時間前に並んで待つ昔ながらの方式を採用してるんだよね!
駅からは近いし、新宿なら他にも立ち寄りたい場所はいくつかあるけれど…できればwebで座席指定して安心したいのが本音。
最後がヒューマントラストシネマ有楽町のレイトショー。
本来であれば最初から候補にすら入らなかった選択肢である。
ところが今回は海の日のため3連休!
たまには夜のお出かけも良いか、と珍しくレイトショーに行くことにしたのである。
ゲリラ豪雨の隙間を抜けて、うまい具合に有楽町に到着したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
びしょ濡れにならないでラッキーだね!
無事に20時50分からの回に間に合ったのである。
web予約で座席指定をした時には、63席ある座席のうち6席程度しか埋まっていなかったのに、実際には8割程度が埋まるほどのお客さんでいっぱいになっている。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが予約したのは一番後ろの列の端、スクリーンから一番遠い座席である。
新作映画紹介が流れている間も、前席に人が来なかったので安心していると、かなり遅れて人がやってきてしまった!
うーん、残念。
ゆったり鑑賞できると思っていたのに。
そしてこの遅れてやってきた2人組が大迷惑なヤツらだった。
この2人組、かなり年配の男女で、男はキャップを脱ぐと白髪頭。
大きな荷物をいくつも抱え、それを横の棚に置いたかと思うと、中からガサガサとビニール袋を取り出し、個包装されたパンを並べ始めたのだ。
映画館のマナーについては散々アナウンスされているのにも関わらず、その老人は全く無視!
長い間ガサガサ音を立てながらパンを食べ、隣の連れにパンを手渡したり、会話をしている。
「最近の若者は」などと文句を言うのは老人だったはずなのに、今はSNAKEPIPEが言いたいね。
「最近の老人は!」って。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEだけじゃなくて、その老人たちの周りの人全員が大迷惑だったはず。
迷惑行為に対してはどのように対応したら良いんだろう?
ご存知の方、教えてください!

映画「リアリティのダンス」はホドロフスキー監督の自伝的小説である同名の「リアリティのダンス」を原作として製作されている。
原作を読んでいると解り易いけれど、読んでいなくても楽しめる作品である。
「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」の雰囲気とは違うので、先入観を持って鑑賞すると肩透かしを食らうかもしれない。
ホドロフスキー監督が少年時代を過ごしたチリのトコピージャを舞台に、いくつかのエピソードが語られている本作は、ホドロフスキー一家の「ホームドラマ」といえる作品だからである。
もちろんホドロフスキー監督らしい幻想的な映像は至る所に散りばめられているけどね!(笑)

自慢できる話ではないけれど、日本の政治経済についてもほとんど詳しくないSNAKEPIPEなので、世界情勢の知識などはもってのほかである。
例えば最近では、ペドロ・アルモドバル監督への興味から、多少はスペインの政権について知ったり、調べてみたりすることもあるけどね。
ホドロフスキー監督の生まれ故郷であるチリについては、ほとんど知らないんじゃないかな。
南アメリカ大陸の太平洋側に位置する細長い国で、よく見かけるのはチリ・ワインという程度。
そのためホドロフスキー監督の自伝的小説「リアリティのダンス」を読んだ時に驚いた。
チリでは詩が大流行していて、ホドロフスキー監督も詩を創作していたという。
そして詩とパフォーマンスを融合させた活動を行っていたとも書いてあるんだけど、ホドロフスキーがまだ16歳くらいの話なんだよね。(笑)
とても早熟な少年だったんだろうなあ。

映画「リアリティのダンス」は詩人になるより前、1930年代の子供時代を描いている作品である。
当時のチリは共産主義者が弾圧され、炭鉱の町であるトコピージャにはダイナマイトで手足を吹き飛ばされた炭鉱労働者がたくさんいた、などというエピソードは映画を観て初めて知る事実。
ある程度チリについて知っていたら、もう少し理解し易いかもしれない。

子供時代のホドロフスキー監督を演じるアルゼンチン出身のイェレミアス・ハースコヴィッツは、本作が映画初出演らしい。
金髪の巻き毛の時には、まるで女の子に見えてしまうほどの可愛らしさ。
たまにイザベラ・ロッセリーニに似てると感じたのはSNAKEPIPEだけだろうか?
イザベラ・ロッセリーニが「ブルー・ベルベット」の中で、黒髪のクリクリパーマのヅラをかぶっていたせいかな。(笑)
ホドロフスキー監督が映画の中で、この少年の後ろに立ち、少年だった自分の気持ちを代弁している。
ホドロフスキー監督、年取ってからのほうが良い顔になってるよね!
良い人生を送ってるからこそ、だよね。

パンフレットの中でホドロフスキー監督は、「子供時代の主観的な記憶を客観視し、再構築した」と語っている。
子供の時には広いと思っていた道が、今では狭いと感じたりするようなギャップを解消した、ということらしい。
決して良好とは言えなかった両親との関係性についても、同じように再構築し、ずっと抱えていた「わだかまり」を消したという。
これもひとつのサイコ・マジックなんだろうね?
ホドロフスキー監督が自身をセラピーした結果が、映画製作になったと言えるんじゃないかな。

これは人々の魂を癒す映画であり、
映画の中で家族を再生することで、
私の魂を癒す映画でもあった

という言葉からも解るよね!

父親役を長男であるブロンティス・ホドロフスキー、行者役をクリストバル・ホドロフスキー、アナキスト役をアダン・ホドロフスキーが演じていて、ホドロフスキー一家総出で出演しているのも注目ポイント。
今回は衣装デザインをホドロフスキー監督の妻であるパスカル・ホドロフスキーがやっているというから、本当に家内工業的作品!
「エル・トポ」の時から息子を出演させてきたから、その点は変わっていないんだよね。(笑)

最後にホドロフスキー監督は骸骨と一緒に船に乗り、モヤがかかった海を行ってしまう。
これはあの世へ、異界へと通じている航海なのか?
どんどん小さくなっていくホドロフスキー監督を見ていると、悲しくて涙が出そうになった。
23年ぶりに帰ってきたかと思ったら、これでサヨナラみたいな…。
いやだよう、まだ死なないでーーーっ!(絶叫)

と思ったら!
パンフレットに「次回作」という文字を発見!
「フアン・ソロ」(原題:Juan Solo)というホドロフスキー監督が原作で、1995年からシリーズとして刊行されたバンド・デシネを原作としたアクション映画を計画しているという。
底辺の中にいる一人の人間が犯罪に巻き込まれながら、自分が人間であることを発見していく物語とのこと。
日本でも「フアン・ソロ」は今秋出版予定とのことなので、それも楽しみ!(笑)
すでにフランス・メキシコ・日本の合作として国際共同製作の準備中であり、メキシコ撮影が決定しているという。
あと3〜5本は映画を撮りたいとも語っているようなので、期待して待っていよう!

好き好きアーツ!#26 DAVID LYNCH -「鬼才デヴィッド・リンチの新作版画/写真展」と「イメージメーカー展」

【ヒカリエで開催された版画展のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2012年7月にも渋谷ヒカリエ内にある「8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery」にてデヴィッド・リンチの「Hand of Dreams」展を鑑賞した話は「好き好きアーツ!#16 DAVID LYNCH—Hand of Dreams」に書いているね。
あれから丁度2年が経過し、またもや同じギャラリーでデヴィッド・リンチ展が開催される情報をもたらしてくれたのは、前回と同じROCKHURRAHだった!
この話を長年来の友人Mにも伝えたところ、前回は行かれなかったので是非とも今回は参加したいとの返信があった。
展覧会終了間際の土曜日、怪しい3人組は渋谷で合流したのである。

いくら方向音痴のSNAKEPIPEであっても、一度行ったことがある場所であれば多少は学習しているもの。
今回はすんなりヒカリエに着くことができた。
あとから友人Mも到着し、 早速ギャラリーへ。
さすがに土曜日の昼ごろだけあって、数人のお客さんが入場していた。

「8/ ART GALLERY/ Tomio Koyama Gallery」に行くのは今回が2回目なので、毎回同じスタイルを採っているのか不明だけれど、リンチ展の時にはいわゆる展示販売なんだよね。
だからこそ(?)の入場無料なんだと思うけど、ファンにとってはリンチの作品を鑑賞できる嬉しいチャンス!
ゆっくりと一枚一枚観ることにした。

展示作品は前回と同様、ほとんどがリトグラフ版画で、もうすでにお馴染みになっている独特の世界が繰り広げられている。
太くて強い黒い線、ROCKHURRAH RECORDSで勝手にリンチ・フォントと名付けた文字が踊り、稚拙そうに見えるけれど残酷な雰囲気。
これぞまさにリンチ・ワールド!(笑)
リトグラフ版画、一枚25万円くらいだったかな。
お金持ちになったら是非とも購入して、壁一面リンチの世界にしてみたいもんだね!

前回は展示されていなかった写真群が素晴らしかった。
工房の版画の機械と裸婦をモチーフに撮影した写真シリーズ「NUDE – ATELIER IDEM 2012」 はSNAKEPIPEが大好きなインダストリアルな背景に、まるで体外離脱したかのように見える女性が写っている作品だ。
硬質な機械と、まるで魂のような不確かな淡さを融合させた、非常に魅力的な写真だった。
お値段もリトグラフ版画よりも高めだったけど、納得しちゃうね!

リトグラフ版画を堪能した後は、昼食!
久しぶりに3人揃ったので、たまには寿司を食べようと入ったのが、ヒカリエ6階にある「恵み 渋谷ヒカリエ店」という回転寿司である。
滅多に回転寿司屋さんには行かないので、最近のハイテク寿司屋は初めての経験!(笑)
友人Mも初めてとのこと、3人でワクワクしながらタッチパネルを操作して楽しんだのである。

ここで友人Mから提案があった。
渋谷から六本木に向かい、開催されたばかりの「イメージメーカー展」に行こうと言う。
実はその展覧会にもリンチの作品が展示されていることは、ROCKHURRAHからの情報により事前に知っていたSNAKEPIPE。
せっかくだから今日はリンチ・デイにしてしまおう!
怪しい3人組、今度は六本木に参上である。

東京ミッドタウン・ガーデン内にある21_21 DESIGN SIGHT に来たのは初めてである。
ミッドタウンには何度も足を運んでいるのに、こんなに素晴らしい庭があることは知らなかった。
友人Mは六本木がテリトリーなので、庭の中にあるレストランの存在も、当然のように21_21 DESIGN SIGHTのことも知っていたとのこと。
ただし中に入るのは3人共初体験である。

21_21 DESIGN SIGHTは建築家安藤忠雄が設計したと知って、大いに納得してしまった。
外観だけでもインパクトのある建物なんだけど、中に入るともっと驚いてしまうのだ。
地下が広い!
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、地下室に憧れがあるので、余計に興奮してしまったのかもしれない。
見かけと中身のギャップは、新鮮な驚きを感じさせてくれるね!
更に驚いたのは、展示作品の撮影が許可されていること。
撮影不可の作品もあるそうだけど、それ以外は撮って良いなんてとっても素敵!(ぷっ)
リンチの作品は撮影オッケーなのかな?

「イメージメーカー展」はジャン=ポール・グード、三宅 純、ロバート・ウィルソン、 デヴィッド・ リンチ、舘鼻則孝、フォトグラファーハルらの作品が展示されていた。
お目当てのリンチは順路に従って進んですぐに見つかった。
つい今しがた渋谷で観てきたばかりのリトグラフ版画が、豪華に並んでいる。
撮影不可とは記載されていない!
やったー!
壁に張り付くように一枚一枚を撮影したけれど、背丈より高い位置に展示してあるから思うようには上手く撮れないなあ。
それでも自分でリンチの作品を撮影できるなんて感激だよね!

順路を進んで行くと、黒い壁にカラーが浮き上がっている空間に出る。
イメージをファッションや広告として扱っているアーティスト達のコーナーだった。
なんとも80年代を感じさせてくれる空間で、懐かしさと安堵感を持ってしまったよ。(笑)
中でも目を引いたのが、真ん中でくるくる回るマネキンと、その周囲を回るマネキン。
「イメージメーカー展」のHPにはもっとピントが合った写真が掲載されているけれど、回っている臨場感はSNAKEPIPE撮影の上の画像のほうが分かり易いかもしれないね?
SNAKEPIPEは写真として収めたけれど、なんとROCKHURRAHは得意の動画で撮影を敢行していたという。
ところがその様子を係員に咎められてしまった!
「あの、動画撮影はご遠慮頂きたいのですが…」
という係員の声が入って撮影終了!
禁止されているとは知らなかったので、ご勘弁を。(笑)

美術館のハシゴという珍しい体験をしてしまったけれど、一日リンチ・デイになったのは嬉しかった。
リンチの作品が同時期に2箇所で展示されるってこと自体が、そうそうないからね!
音楽や絵画、写真と個人作業に没頭しているリンチ、ホドロフスキーみたいに映画製作は23年後なんてことにならないと良いけど?(笑)

「ホドロフスキーのDUNE」鑑賞

【映画「DUNE」の分厚いストーリーボード集】

SNAKEPIPE WROTE:

ドキュメンタリー映画というジャンルについてはあまり詳しくない。
例えば70年代オリジナル・パンクについて、数十年経った後で、その時代活躍した人が「あの時は…」という感じで語るような記録としての映像は何度か鑑賞したことがある程度である。
大抵の場合は、名前も顔も知らない人ばかり出演して語っているばかりになってしまい、途中で眠くなるのがオチである。
SNAKEPIPEやROCKHURRAHが選んで観ているのが、たまたまそういうタイプの映画だっただけで、世界にはもっと感動的だったり手に汗握るようなドキュメンタリーは存在しているんだろうね。(笑)

敬愛する映画監督アレハンドロ・ホドロフスキーについては、今までに何度も当ブログに登場しているし、2014年4月22日に来日した監督の講演を聞くことができて感激した話も書いているよね。
この監督の来日は、7月12日公開予定の自伝的作品「リアリティのダンス」と、未完に終わった映画「DUNE」についてのドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」の宣伝のためだったんだよね。
「リアリティのダンス」はその講演会の時に鑑賞したけれど、「ホドロフスキーのDUNE」は6月14日から公開のため、その日をじっと待っていたSNAKEPIPE。
ついに6月に入り、お待ちかねの映画公開の日になったのである!

ホドロフスキー監督についての説明があった場合、必ず紹介されるのが「未完に終わったDUNE」について。
そうそうたるメンバーが集結し、実現していたらどんなに壮大なSF映画になったことだったろうと結ばれていることが多い。
確かにもしその映画が完成していたら、と想像すると興奮するんだよね!
サルバドール・ダリとミック・ジャガーが俳優として、ピンク・フロイドが音楽を、ギーガーが美術を担当する、なんて聞いただけでワクワクしちゃうよ。(笑)


SNAKEPIPEと同じように話だけでも興奮した人が、今回の「ホドロフスキーのDUNE」の監督、クロアチア系アメリカ人、フランク・パヴィッチである。
お蔵入りとなった「DUNE」のことを知り驚き、ドキュメンタリーを作らなきゃと思ったそうだ。(笑)
早速ホドロフスキーのエージェントにメールをすると、ホドロフスキー本人から
「パリにおいで。話をしよう」
と返信があったというからホドロフスキーも乗り気だったんだね。
ホドロフスキーと話をしたことがある人は皆「ホドロフスキーは、とてもオープンに話してくれた」と語る。
先日の講演会で、ホドロフスキーご本人を目の前にすることができたSNAKEPIPEには、それはよく解るなあ。
ホドロフスキーは相手に対峙する時、1対1で真剣に向き合っていると思うから。
もちろん話をするのに値する人物だった場合、だけどね!(笑)

「ホドロフスキーのDUNE」は都内でも、ほんの数カ所しか上映されていない。
新宿か渋谷か有楽町。
今回は初めてヒューマントラストシネマ有楽町に行ってみることにした。
有楽町駅から徒歩1分の好立地!
方向音痴のSNAKEPIPEでも迷わない、安全な場所だね。(笑)
映画上映開始から1週間が過ぎた梅雨の晴れ間を利用して、ROCKHURRAHと共に出かけたのである。

座席を予約した段階で埋まっていたのは、ほんの5、6席程度。
実際行ってみると、もう少し入って30名〜40名くらいだろうか。
およそ3/4は空席でガラガラ状態。
空いている映画館は好きだけど、このままではいつ打ち切りになってもおかしくない状況だよね。
鑑賞できて良かった〜!(笑)

予約当日の朝、何気なくヒューマントラストシネマのHPを見ていると、ラジオ番組で「ホドロフスキーのDUNE」が紹介されることになった記念に、その日の初回鑑賞をするお客さんに非売品プレスをプレゼントしてくれるという。

当日、対象回のチケットをお求めの際に劇場窓口にて
「タマフルの予習にきた」と伝えて頂ければ、
その場でプレスをプレゼント致します。

非売品のプレスが何なのか「タマフル」の意味も分からないけど、とりあえず対象回に当っているので言ってみた。
「タマフルの予約に来ました」
「予習の間違いだよ」
ROCKHURRAHに指摘されるまで気付いてなかったけど、言い間違えてたみたいね。
窓口の女性がプッと吹いていたのは、間違いを笑っていたのか!
一応キーワードらしい言葉は言ったと理解してもらえたらしく、すぐに小冊子を袋に入れて渡してくれた。
それが写真左の白いほう。
そのまま中身を確認せずバッグにしまい、鑑賞後に購入したのが右のパンフレット。
「表紙が違うだけで中身が同じ!」
気付いたのは帰宅後よ!
非売品プレス2冊にパンフレット1冊、合計3冊同じ物を所持するとは!
1冊は長年来の友人Mにプレゼントしよう。(笑)

映画はほとんどホドロフスキー監督自身が語り、その合間に当時の関係者が補足説明をする、というスタイルだった。
途中でホドロフスキー監督の愛猫が登場して、猫を抱きながら喋ってたよ。
猫好きで、いつも猫と一緒というのは以前どこかで読んだことがあるけど、それを知った時には親近感がわいたものだ。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも猫が大好きだからね!(笑)

バンド・デシネ作家のメビウス、画家のサルバドール・ダリ、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーとの出会いは、偶然にしては出来過ぎていて、フィクションみたいな逸話だった。
ホドロフスキーは精神修行や精神の拡張について真面目に取り組んでいるから、きっと偶然を呼びこむ力があるんだろう、ホドロフスキーには必然的なできごとだったんだろうなと思ってしまう。
ダリとの会話が面白かった。
ホドロフスキーをテストするかのようにクエスチョンを投げかけるダリ。
「私は砂浜でいつも時計を拾うんだけど、君はどう?」
「私は時計を拾いませんが、いつも時計を失くしています」
ほおっーーっ。
なんでしょうか、このシュールな会話はっ!
このテストでホドロフスキーは合格点をもらったようで、ダリが出演を承諾したとのこと。
ポール・エリュアールから奪ったガラ・エリュアールはのちにダリの奥方になる女性だけど、そのガラ夫人公認の愛人がいたというから驚きね。

右の写真の女性がそのダリの愛人だったアマンダ・レアね。
ブライアン・ジョーンズ、デヴィッド・ボウイ、ブライアン・フェリーなど数々のロック・スターと恋仲になったファム・ファタール的女性なんだって!
ダリとも愛人関係にあり、「DUNE」ではイルーラン姫としてキャスティングされていたらしい。
最もこれはダリが出演の条件として、アマンダを姫にするように申し入れたみたいだけどね。(笑)
アマンダも映画の中でインタビューに応えてるんだけど、その顔を見た時に
「似てる!」と思ってしまったのが Dead or Aliveのピート・バーンズ!(写真左)
活躍していた80年代とは違った顔になってるんだよね。
現在は同性婚もしているようで、かつての眼帯姿とは全然違うんだけど、昔の整形前のほうが綺麗だったように感じるのはSNAKEPIPEだけかしら?
そしてその整形後の顔がアマンダ・レアに似てるというのは、失礼にあたるのかしら?
えっ、どっちに対して?(笑)

最高のキャスト、スタッフを集めたホドロフスキーは、映画の製作のために「こんな感じの映画ですよ」というストーリーボードを製作する。
それが冒頭画像の分厚い本なんだけど、中にはメビウスが描いたスケッチやギーガーによるセットのイメージ画などが収められている。
スケッチもイメージ画像も本当に素晴らしくて、すぐに撮影開始できる状態だったことが良く解るんだよね。
映画は12時間の大作になる予定だったという。
企画は素晴らしいし、キャストやスタッフも良いんだけど、監督がホドロフスキーなのが問題だと映画会社が口を揃えたという事実を知る。
一部の人からは絶大な支持を集めたホドロフスキーだけど、やっぱり大衆には受け入れられなかったみたいだね。
当然といえばそうなんだけど、「DUNE」を完成させるには、その点がネックになったみたい。
未完に終わってしまった原因の一番は、監督がホドロフスキーだったことだったなんて、かなりショックだな…。
いやいやSNAKEPIPEよりもホドロフスキー自身が一番ショックだったろうね。

その後これまた敬愛する映画監督デヴィッド・リンチが「DUNE」を監督する。
ホドロフスキーは息子から「観なきゃダメだ」と言われ、重たい体をひきずりながら映画館に向かい、悔し涙を流しながら映画を鑑賞。
ところが観ていくうちに
「これは駄作だ!全然ダメだ!」
と感じて元気になったと言う。
デヴィッド・リンチは良い監督だから、失敗はリンチのせいではなくて製作者側の問題だろう、とも語っていたので、ホッとしてしまった。(笑)
リンチもあまり思い出したくない経験の1つだろうからね。

ホドロフスキーは300歳まで生きたいと語っていた。
まだまだやりたいことがやりきれていないんだろう。
そりゃそうだよ!
「リアリティのダンス」はまだ少年時代しか撮ってないし。
青年時代がもっと面白くなるんだもん。
是非またプロデューサーのミシェル・セドゥーと組んで「リアリティのダンス〜青年編」を作ってもらいたいからね!

「ホドロフスキーのDUNE」ではエネルギッシュなホドロフスキーを観られて良かった。
ドキュメンタリー映画、面白いな!(笑)