村上隆のスーパーフラット・コレクション鑑賞

【毎度お馴染み!美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2016年になって一番初めの展覧会鑑賞記事である。
なんと2015年にも村上隆の展覧会に行ってるんだよね!
ものすごく好きなアーティストというわけじゃないのに、連続してしまうとは。(笑)
ただし今回の展覧会は、村上隆がコレクションしている作品の展示ということなので、村上隆自身の作品の展示とは違うけどね!
この展覧会に関しては、かなり前から長年来の友人Mより
「面白そうだから行こうよ」
と誘われていた。
ようやく日程調整をして、ROCKHURRAHを含めた怪しい3人組、昨年10月に鑑賞した蔡國強展以来の横浜みなとみらいに集合である。

展覧会が開催されているのは横浜美術館
この美術館は企画展も良いけれど、美術館自体のコレクションも充実していて素晴らしいんだよね!
さて、今回の企画展である「村上隆のスーパーフラット・コレクション」についての説明を聞いてみようか。

村上隆は近年、独自の眼と美意識で国内外の様々な美術品を積極的に蒐集し続けています。
村上隆にとって「スーパーフラット」とは、平面性や装飾性といった造形的な意味のみに限定されるのではなく、
時代やジャンル、既存のヒエラルキーから解放された個々の作品の並列性、枠組みを超えた活動そのものを示しており、「芸術とは何か?」という大命題に様々な角度から挑み続ける作家の活動全体(人生)を包括的に表す広範かつ動的な概念と捉えられるでしょう。

スーパーフラット、という言葉に関する説明なんだけど、ちょっと難しいよね?
ヒエラルキーとか言われても、ねえ。(笑)
一応調べたので書いてみると、ヒエラルキーとは階層制や階級制のことで、主にピラミッド型の段階的組織構造のことを指す、という。
文中にあった「ヒエラルキーからの開放」とは、高低や順位やら優劣(?)などを排除した状態、ということになるのかな?
この問題については展覧会を鑑賞し終わってから、また考察することにしようか。
まずは展覧会の概要を知るため、横浜美術館が制作した展覧会のメイキング映像を載せてみよう。

メイキングを観ただけでも、膨大な数の作品が所狭しと並べられていく様子が分かるよね。
そして実際に目にした最初の部屋には、どこに何が展示されているのか分からない程の作品が並んでいたよ。
一つ一つを丁寧に鑑賞することができないほど、メチャクチャに置かれた作品群。
最初の部屋には作品名や作者に関する表示もなかったような?
この無秩序に見える状態が、もしかしたら今回の展覧会を象徴する「スーパーフラットな部屋」なのかもしれないね。
ミクスチャーの、チャンプル状態だったからね。

ごちゃまぜだったのは最初の部屋だけで、次の部屋からはちゃんと作品名やアーティスト名が記載されていた。
これでやっと誰の作品か分かるようになって安心だね!
ここからはSNAKEPIPEが展覧会の中で気になった作品を紹介していこうかな。
フラッシュをたかなければ撮影オーケーな展覧会だったので、バシバシ撮ってきたよ!(笑)
え?最近はフラッシュたく、って言わない?ほんとー?(笑)

ヘンリー・ダーガーの作品は画集などで知っていたけれど、実物を目にしたのは初めて!
自宅で一人コツコツと描きためた作品が評価されることになるのは、ヘンリー・ダーガーの死後だったという、よくある話なんだけど。
その偏愛的な作品は、物議を醸し出すであろうロリコン系!
その異常性と芸術的な高さとのバランスが魅力的なんだよね。
淡い色彩と繊細な線画がとても美しい作品だった。
ガラスに反射して「非常口」の緑色が映り込んでしまったのが残念!

このアーティストのことは知らなかったけれど、一目観て気に入ってしまった!
ロイヤル・アート・ロッジは1996年から2008年まで複数人で活動していたカナダの現代アートグループのようで。
そのメンバーのうちの2人はまだ一緒に活動していることがHPで分かるね。
色使いの美しさとモチーフの残酷さ。
まるで子供が描いたように見えるのに実は計算された構図、というミスマッチ感覚にヤラレた!(笑)

ギョッとしてしまう彫刻の作者はジュリアン・ホーバー 。
頭部に無数の穴が開いているだけで、こんなに気味悪くなっちゃうんだね!
作者のHPはなくて、所属しているギャラリーのHPに載っている情報では、1974年フィラデルフィア生まれの女性で、2002年から個展を開催しているアーティストとのこと。
彫刻だけではなく、絵も描くし、どうやらビデオ作品も制作しているみたい。
今回の穴あき頭部の展覧会の画像をみたけれど、一つでも充分なインパクトなのに、複数の頭部が展示されている様子はまさに猟奇!
実際に目にしてみたいよね!

村上隆のコレクションすごいよね。
ダミアン・ハーストも持ってるんだもん。
これは鏡面仕上げの表面に蝶々が貼り付けられている「Dreams of Magnificence」という作品なんだけど、死骸と知った後でも「キレイ!」と感想を持ってしまう。
ダミアン・ハーストの作品に死はつきものだと思うけれど、グロく見えない美しさだった。
鏡みたいになっていたから、周りが映り込んでしまい撮影に苦労してしまう。
ただし、左に載せた作品だけの画像で見ると鏡面仕上げが分からない感じ。
実際に観るのと画像で見ることの違いがハッキリするよね。
それにしてもこの画像は、どうやって撮影したんだろう?
何か特別な撮影方法あるのかしら。
誰かやり方教えて!(笑)

ROCKHURRAHから「この作品撮影して!」とリクエストされた。
どうしたのかと尋ねると、ソニック・ユースのキム・ゴードンがプッシー・ガロアのバンド名を作品にしてるから、という。
ソニック・ユース!
なんとSNAKEPIPEと友人M、かつてソニック・ユースが新宿ロフトで行ったライブに行ってるんだよね。(笑)
2時間開始が遅れたこと、ライブ途中でSNAKEPIPEがコンタクトレンズを落としたこと、などのどうでも良いことだけを覚えていて、肝心のライブはうろ覚え!
なんでライブに行ったのかも不明だよ。(笑)

「えーーっ!」
友人Mが声を上げながら駆け寄る。
どうしたのかと思うと、この作品の作者はジェイク・アンド・ディノス・チャップマン、通称チャップマン・ブラザーズだったんだよね!
かなり過激な作品を発表しているため、作品の評価は賛否両論というイギリス人兄弟に関して、友人Mが興味津々だったことを思い出す。
日本での個展開催は難しいかもね?と言い合っていたので、一つでも作品が観られて良かった!
それにしてもやっぱり不気味な雰囲気だったね。(笑)

チャップマン・ブラザーズの後に鑑賞した作品が更に不気味だった!
ギレーヌ&シルヴァン・ステランの作品を2体撮影してみたんだけど、まるで民族学博物館などで並んでいるような、呪術で使われる人形みたいじゃない?
原始宗教とか「まじない」といった、現代アートとはあまり馴染まない単語が次々と頭に浮かんでくる。
素朴な材料を使用しているのも、余計に部族っぽいし。
非常に怖い作品で、とても気に入ってしまった!(笑)
HPにはもっとたくさんの不気味ちゃん達がいるので、気になる方はチェックしてみてね!

横浜美術館入り口にはドーンと大きなアンゼルム・キーファーの作品が「どうだ!」と言わんばかりに鎮座していたけれど、それらの作品も全て村上隆のコレクションだったことは帰宅後知った。
そうそうたる現代アートのスター達の作品群を所有している村上隆、やっぱりすごいね!
今まで知らなかったアーティストの素晴らしい作品もたくさんあって、鑑賞できて良かったと思う。

そして文頭で投げかけた「スーパーフラット」の意味は、恐らく作品の評価や金額、アーティストが有名か無名かなど、一切の垣根を取り払って
「これが好き」
「この作品、欲しい」
と村上隆が思った物をコレクションしている状態を指すのだろうと思った。
それは同時に「分かる人にだけ分かれば良いアート」といった「現代アート=難しい」という敷居の高さも取り払って、感じたまま、思うまま鑑賞すれば良いという姿勢も感じられたし。
これってSNAKEPIPEが「家に持って帰りたいと思う」作品に巡りあって、嬉しかったと思う気持ちと全く同じで、更に当ブログで展開している「SNAKEPIPE MUSEUM」の趣旨なんだよね。
実はちょっと胡散臭いと思っていた村上隆だけど、今回の展覧会で見直してしまったよ。

それにしても、村上隆は膨大なコレクションをどこに保管してるんだろうね?
これも大きな謎だ!(笑)

Gerhard Richter Painting展 鑑賞

【ゲルハルト・リヒターの真っ黒な作品に写り込んだSNAKEPIPE】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の「村上隆 五百羅漢図展 鑑賞に続き、今週も展覧会に関するブログをお届けしようと思う。
ブログは2週に渡ってるけれど、実際には2日連続で六本木に馳せ参じることになったSNAKEPIPEなんだよね。

今回鑑賞したのはワコウ・ワークス・オブ・アートで開催されているゲルハルト・リヒターの新作展!
ゲルハルト・リヒターといえば…。
2014年8月の「「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」鑑賞」の時にも「衝撃的だったアーティスト」として記事にしていたね。
サザビーズのオークションで生存する画家の中で最高額を記録した「現代絵画の最高峰」とされるリヒター。
その新作が日本で初公開だよ、とROCKHURRAHが教えてくれた。
これは是非とも行かなければ!(笑)

ワコウ・ワークス・オブ・アートは方向音痴のSNAKEPIPEでも迷わず行かれる場所にあった。
麻布警察署の裏手、といった所。
表に立っている警察官に道を聞かなくて良かった。(笑)
ワコウ・ワークスがあるピラミデビルは、バブル時代を感じさせるような懐かしい雰囲気。
こういうビルは大好き。(笑)
アート系のギャラリーが多く入っているのも良いね!

いよいよゲルハルト・リヒター展へ。
数人のお客さんが入っている。
美術館ではなく画廊のため、作品に近寄ってはいけない白線がない!
監視員もいない!(笑)
当然触ることはしないけれど、かなり近寄ってじっくり作品を観ることができるのは素晴らしいよね!


入場は無料、そして撮影もオッケーみたい。
みたい、というのは断ったわけではなくて、他の人達が撮っていたから。
当然のようにSNAKEPIPEもROCKHURRAHも撮影しちゃったよ!
リヒターの作品を実際に観たのはヤゲオ財団の時だけだったので、今回の作品はサイズが小さめだなと思った。


正面から、横からとじっくり鑑賞する。
何重にも塗り重ねられ、ものすごく絵具が厚い部分もある。
塗って、こそぎ落として、また重ねてって感じなのかな?
不調和の中の調和とでもいうのだろうか。
カラフルな洪水のハーモニー。(←陳腐な物言い)
抽象画家で「好き!」とはっきり言えるのはマーク・ロスコに続いて2人目かな!(笑)


「アラジン」という、ガラスにラッカーを使用したシリーズも日本未公開作品が展示されていたよ。
ガラスだから表面がつるつるに光っていて、その光沢がまた良いんだよね!
ただし写真に撮りたい時には反射するから難しいんだけど。
こちらも色がくっきりしていて素敵なの。
3点くらい並べて部屋に飾りたいなあ。(笑)


こちらも「アラジン」シリーズね。
緑色の辺りが反射しちゃってるけど許してね。(笑)
この色合いがまたっ!
今年83歳になるゲルハルト・リヒターだけど、今回展示されていたのって最近の作品なんだよね。
年齢や創作意欲の衰えを全く感じさせない、ほとばしるパッションを感じたね!
あはは!パッションだって!(笑)


最後は「オーバー・ペインテッド・フォト」というスナップ写真の上に油彩やエナメルで描いている作品ね。
上の画像で少しは分かるかな?
この「オーバー・ペインテッド・フォト」は、なんでもないスナップ写真を劇的にアートな作品に仕立ててしまうところがすごいの!
今年の作品も展示されていたよ!
「リヒター、やるなあ」
とROCKHURRAHと語り合っていたSNAKEPIPE。(笑)

こんなに素晴らしい展覧会を、しかも無料で企画してくれたワコウ・ワークス・オブ・アートに感謝だね!
今度は作品購入の相談に伺いますから!(うそ)

村上隆 五百羅漢図展 鑑賞

【こうやって制作してたんだ、と帰宅後知ったメイキング映像】

SNAKEPIPE WROTE:

何が良いのか分からない、ということで友人Mと意見が一致したのが、現代アートの村上隆についての見解。
どうしてサザビーズのオークションで、左の作品「マイ・ロンサム・カウボーイ」が16億もの高値で取引されたのか?
実物を見ていないのに感想を持つのはいかがなものか、とも言えるけど、メディアや雑誌で一目惚れする作品もあるわけだからね。
その逆もまた然り、という気がするよ。
結局、今まで一度も村上隆の作品を見て、ビビッと来たことがなかったんだよね。(笑)
アニメとかフィギュアなどの秋葉原系オタクアート、という認識だけだったからね。
うーん、やっぱりこのフィギュアの意味は分からないなあ…。

森美術館で村上隆の五百羅漢図展が開催されることも知っていたけれど、あまり興味を示していなかったSNAKEPIPE。
村上隆が五百羅漢を描いたとしても、やっぱりアニメっぽいんだろうな、と予想できたからね。(笑)

六本木に用事があり、友人Mと待ち合わせることになった。
「村上隆、どうする?」
意外なことに友人Mから、展覧会に行くかどうかの質問が来た。
観に行く、ということを一切考えていなかったので、これは青天の霹靂!
どうして日本よりも海外で評価されてるのか、その謎を解く鍵が今回の展覧会には隠されているかもしれない。
どこが良いのか分からないから実物を観て、それから好き嫌いを今一度考えてみようか、ということになった。
通常ならば好きで観たいから行くのに、今回は本当に何が良いのか分からないままで良いのかを確認するために展覧会に行くとは!(笑)

久しぶりの森美術館。
前回はもしかしてアンディ・ウォーホル?
確認してみると、やっぱり2014年春以来だったよ。
いつの間にか改装されていて、ちょっと戸惑う。
ミュージアムショップがなくなってる!
総合案内所が奥まったところにある!
友人Mも久しぶりに来たようで、改装後を知らなかったと言う。


今回の村上隆展のタイトルは五百羅漢図。
ちなみに五百羅漢とは、「仏教で供養尊敬を受けるに値する 500人の人々」のことらしい。
その500人は仏典編集会議の参加者だったとのこと。
釈迦の教えを残すために、弟子たちが各自の伝聞にもとづく資料を持ち寄り、聖典の編纂をした時の500人が五百羅漢ということなんだね。
そのため仏教的なモチーフが描かれている。
達磨、龍、鬼、象などが巨大なキャンバスから飛び出しそうな勢いで様々なポーズを決めているのだ。

村上隆というとすぐに思い出されるのが右のようなキャラクターだよね。
このキャラクターがあるだけで、どうしても子供向けにデザインされたお菓子のパッケージのようなイメージしか感じられなくなってしまう。
村上隆の自画像、もしくは写真もあまり観たくない作品なんだよね。(笑)
それら「好みではない」のが約半分くらいの展示数だったかな?
ということは、残りの半分は楽しく鑑賞したことになるんだね。
SNAKEPIPEは大型の作品の中の「ここ!」というような、パーツが気になることが多かったよ。


今回の展覧会で1番気に入ったのが上の作品。
千葉県民だからか、どうしても落花生のような形が好きで。
というのは嘘だけどね。(笑)
作品の右側の色使いの美しさが素晴らしかった。

左は作品をトリミングした画像なんだけど、テキスタイルのようなデザインとして見ると、例えばスカーフとかクッションカバーだったらとっても素敵だろうね?
極彩色なので、ワンピースにするには派手かも、なんて想像するのは楽しかったな。(笑)
どの作品もテカテカな光沢があって、描いているというよりはステッカーを貼ったように見えた。
最近の展覧会は撮影オッケーな場合が多くて、今回の村上隆展も全ての作品の撮影がオッケー。
スマートフォンならば動画までオッケーとは太っ腹だよね。(笑)
おかげでこうしてブログにアップしているんだけど。


サイケデリックな雰囲気の宇宙だよね!
おお!ティモシー・リアリー!オルダス・ハクスレー!(笑)
こんなグルグルのお皿あったら欲しいな。


髑髏モチーフも多く登場していたね。
ポップな髑髏、現代アートらしいということなのかな?

全て苦手だろうという予想がハズレ!
あのキャラクターだけがダメだとわかっただけでも満足だね。
世界のムラカミ、とまでは思わなかったけど。(笑)

蔡國強展 帰去来鑑賞

【帰去来展のポスターを撮影。図録の背表紙が貼られていてお洒落!】

SNAKEPIPE WROTE:

横浜美術館で開催される展覧会の誘いがあったのは夏より前のことだ。
情報をもたらしたのは、毎度お馴染みの長年来の友人M。
どんな展覧会だろう、と調べてみる。
それは中国人のアーティスト、蔡國強という人の展覧会で7月から10月まで開催されているようだ。
現代アートはよく観るけれど、中国人のアーティストってあまり知らないなあ。

ROCKHURRAHが更に調べてくれて、蔡國強の詳細が判明。
爆発アートとして有名な人だという。
以前ヤゲオ財団のコレクションを展示していた「 現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」の時に、蔡國強の作品も鑑賞してたみたいなんだよね。
ヤゲオ財団の時は爆竹で描いたドラゴンの作品だったはず。
その時に観た作品と全く同じではないけれど、一応参考として載せてみたのが上の画像ね。
とても迫力があって、その奇抜なアイデアに驚いたものだった。
今回のメインとして紹介されているのが大量の狼の立体作品。
これは一体何だろう?
確かに面白そうだよね!
真夏を避けて、少し日差しが落ち着いた頃に予定しよう、ということになった。

前回横浜美術館に行ったのは2012年5月の「マックス・エルンスト-フィギィア×スケープ」だったということは3年以上も前のことなんだね。
どうりで!
以前横浜美術館に行った時には見かけなかった建物があるんだよね。
「MARK IS みなとみらい」というみなとみらい駅直結の複合商業施設が横浜美術館の目の前にできていて驚いた。
どうやら「MARK IS」は2013年6月にオープンしてたんだって!
街が変わっているのも無理はなかろう。(笑)
友人Mも2012年3月の「松井冬子展鑑賞~世界中の子と友達になれる~」以来なので、やっぱり「MARK IS」の存在を知らなかったという。
怪しい3人組、今回は「MARK IS」に集結したのである。

「蔡國強展 帰去来」はもう少しで開催が終了という時期だったけれど、結構混雑していたように思う。
年配の女性が多かったのが意外かな。
一番最初の展示室前に「猥褻な表現が含まれていますのでご注意下さい」という内容の立て札が置かれていて、首を傾げながら入室する。
人生における「春夏秋冬」を春画をモチーフに描いた大型の作品が展示されている。
春画モチーフの部分が「猥褻」ということなのかな?
こういう議論自体がナンセンスで、観たくない人は観なければ良いだけじゃないか、と思っているSNAKEPIPEには必要のない忠告なんだよね。
会田誠の展覧会の時にも目くじら立てて抗議した客がいたらしいけど、不快だと感じたら観るのをやめて欲しい。
鑑賞者が自己責任で判断すれば済むだけの単純な話だと思うけど?
蔡國強の「春夏秋冬」はお坊さん2人か?と思ってしまうようなスキンヘッドの2人が中央に配置され、周りに花や鳥や花札が描かれた作品だった。

次の部屋に向かう。
次のタイトルも「春夏秋冬」で、今度はタイルの上に花や昆虫、魚などの立体が乗った作品だった。
この作品はそれらを全部配置した上に火薬を撒いて、火を着け燃やすことで完成させているという。
作品を作る様子がビデオを流れていたので、それを観てやっと意味が分かる。
燃えた部分が黒く煤けてるんだよね。
その黒い色合いの美しさに惹かれる。

実は最初の「春夏秋冬」を観た時には全くピンをこなかったSNAKEPIPEだったけれど、その作品を作る過程のビデオを観て急に興味が湧いてきた。
今回展示されている作品は、次に紹介する狼の大群以外は、すべて横浜美術館内で制作されたようだ。
蔡國強自身が火薬を撒いて、チャッカマンみたいなので火を着けて燃やしている様子がビデオで流れている。
火が着いた瞬間、大きな音と共に火事になったような爆発が起こる。
火薬慣れしている(?)蔡國強には普通の瞬間なのかもしれないけれど、初めて知ったSNAKEPIPEは本当に爆発させて作品を制作している様子に目が釘付け!
「危ない!下がって!火を消して!」
なんて言葉をアート作品で聞くなんて思わないもんね。
命がけのアート、観ていて笑ってしまったよ。(笑)

更に蔡國強のインタビューも興味深かった。
こちらが勝手に想像している中国人像とはかけ離れた、パンクっぽい人物なんだよね。
Search And Destroy!(笑)
爆発によってどうなるのか結果が予測できない「偶然性」を重視しているというのは面白いね。
蔡國強の火薬を使用した作品というのは、作品として展示されているのは単なる残骸で、本当はその途中経過(例えば燃えている時)が本来の、本当の意味での作品なんだろうなあ、と思った。
そのため作品だけをポンと出されても「なんだこれ?」になっちゃったのかもしれないなあ。
もしかしたらSNAKEPIPEだけが、そう感じたのかもしれないけど。

最後が今回の展覧会の目玉というべき「Head On(壁撞き)」。
99匹の狼が部屋いっぱいに展示されている。
地を這う狼、空を飛ぶ狼、壁に激突する狼。
壁の高さはベルリンの壁と同じ高さだという。
落ちてはまた立ち上がり、 空を飛び、また激突する。
99というのが道教で永遠に循環することを象徴する数字だとは知らなかったよ。
99と聞くとネーナの「ロックバルーンは99(原題:99 Luftballons)」を思い出してしまったSNAKEPIPEだけどね!(笑)

この部屋は1匹1匹じっくり観ていたくなるほどの大迫力空間だった。
SNAKEPIPEが思うところの「現代アート」というのはこういう作品なんだよね。
解説なんてなくても、唖然とするほど驚かせてくれる。
もちろん99匹なんだ、ベルリンの壁なんだ、と知ることで作品の理解度は高まるけれど、言葉がなくても圧倒的な存在感を示すことができる作品というのはすごいと思う。
1匹、狼欲しくなっちゃったよ。(笑)
友人Mは「オスの狼を発見した!」と笑っている。
下から見上げるとよく見えるからね。(笑)

蔡國強と聞いて「あの狼の!」とか「火薬の人」というようにパッと言葉出てくるインパクトを持っていることが素晴らしいよね。
まだまだ知らないアーティスト、いっぱいいるよね。

横浜美術館では常設展として「戦争と美術」が開催されていた。
横浜美術館のコレクションって素晴らしいんだよね!
今回観た中では「浜田知明」のエッチング作品が気になったよ。
97歳の現在も制作を続けているというからすごい!
他の作品も観てみたいな。
シュルレアリスムの作品が充実している横浜美術館、また別のコレクションも楽しみだね!

全てを鑑賞し終えてミュージアムショップに立ち寄る。
そこでまさか、の狼のぬいぐるみをROCKHURRAHが発見。
「うそでしょ?」
と言いながら友人Mと近寄ってみると、プレートには「蔡國強」とちゃんと明記されているじゃないの!
いやー、どうみてもただのぬいぐるみなんだけどね?(笑)
更に笑ってしまったのは、値下げされていたこと!
会期終了が迫っているからプライスダウンして売りさばこうってことなのかしら?
上の写真が問題の「蔡國強の」ぬいぐるみなんだけど、99匹の狼に似てるかな?(笑)

爆発というと「芸術は爆発だ!」の岡本太郎か「爆発的!」の鳥飼先生だよね、などとROCKHURRAHと話していると、
「あっ!ええっ!」
とROCKHURRAHが言葉になっていないような声をあげる。
何事か、と驚いていると
「鳥飼先生、なんと蔡國強展に行ってる!前日に!」
「ええっ!」
今度はSNAKEPIPEが声を上げてしまった!
ニアミスで鳥飼先生と同じ展覧会を鑑賞していたとは!
一日違っていたら美術館でお会いしていたかもね?(笑)