Alligatoo Boogaloo展鑑賞

【Lou DonaldsonのカバーをしたGSバンド、ホワイト・キックス】

SNAKEPIPE WROTE:

ちょっと気になる展覧会があるよ、と長年来の友人Mが知らせてきたのはいつだったのだろう。
情報収集能力に優れている友人Mは、びっくりするほどのアンテナを張り巡らせているようだ。
そして「行ってみたい」「観てみたい」情報をSNAKEPIPEに知らせるのである。
ROCKHURRAHも負けない収集能力があるので、2人から様々な情報が入るSNAKEPIPEは良いご身分だよね。(笑)
2人には本当に感謝しているよ!
そして友人Mとは、できるだけ多くの展覧会や映画を鑑賞することを約束している 。
実際に自分の目で観てから感想を言うことをモットーにしているからね!

今回友人Mから「面白そう」と提案されたのが、神田にあるTETOKAで開催されている伊藤桂司佐藤ブライアン勝彦による2人展「Alligatoo Boogaloo」である。
あれ?このタイトルって有名な曲「Alligator Boogaloo」?
あっ、「Alligator(アリゲーター)」が「Alligatoo(ありがとー)」になってるわけね!(笑)
ということで今回は寺尾聰がいたGSバンド「ホワイトキックス」のバージョンを冒頭に載せてみたよ! 

ギャラリーも初めて聞く場所、2人展の2人の名前も初耳だけれど、提示された作品はなかなか面白そうだった。
左の画像がその作品なんだけど、キレイで不気味で不思議な雰囲気!
これは好みのタイプだね!(笑)
SNAKEPIPEだから蛇には目がないし。(うそ)
行ってみたいけれど、ギャラリーのオープン時間は16時からのよう。
TETOKAは「カフェとギャラリーを併設したオルタナティブスペース」とのことなので、お茶を飲んだりお酒を片手に作品鑑賞を楽しんでね、という渋谷にあるアツコ・バルー方式みたいだね。
ワンドリンク制というところも同じだし。

夕方からのオープンなので、怪しい3人組には珍しく待ち合わせ時間を18時に設定する。
夜に初めて行く場所を探しながら歩く、というのは大変なことだよね。
TETOKAのHPにはJR神田駅から徒歩5分といった簡単な説明と地図だけが載っていて、何番出口を出て左折する、といったような詳細については皆無!
自他共に認める方向音痴のSNAKEPIPEは、1人だったらきっと永遠に辿り着けないだろうね。(笑)
SNAKEPIPEより少しはマシといったレベルのROCKHURRAHにも難しいかもしれない。
ここで登場するのが方向感覚に優れた友人M!
一度行った場所は記憶しているし、初めての場所も優秀な嗅覚と抜群の勘の良さも手伝い、迷うことが少ないのである。
今回も「あっちの方向!」「2本目を左折!」 などと適切な指示を飛ばし、怪しい3人組は無事にTETOKAに到着したのである。

ガラガラと音を立てて引き戸を開ける。
引き戸がお店のドアとは、これまたレトロ!
紙の倉庫だった古屋をリノベーションしたと書いてあるけれど、どこまで手を加えたんだろう?
とてもオシャレな空間が広がっていて、近所にこんなカフェがあったら良いなと思わせる居心地の良さ。
古道具も扱っているようだけれど、どこからどこまでが売り物なのか判別できない。
本や小物が壁一面を飾っていて、雑多だけれどお店の人が好きな物を集めている感じが分かる。

「展示をご覧になるのでしたら飲み物、注文頂かなくても良いですよ」
TETOKAの女性が言う。
いえいえせっかくですから、と3人揃ってアルコールを注文。
グラスもレトロでとてもかわいい。
空きっ腹には効きますなあ。(笑)
ROCKHURRAHと友人M、そしてSNAKEPIPEという3人組は、恐らくかなり印象に残るチームなのではないだろうか。
「怪しい3人組」と命名するのも、決して間違っていないように思う。
今回はこじんまりしたギャラリーだったので、TETOKAのにこやかな女性も忘れないだろうね。(笑)
しばらく談笑した後、店内に飾られている作品を観ることにする。

右の画像を「まるでSNAKEPIPEが描いた絵のよう」と評したのは友人M。
確かに!
ここまで明確な意図の絵ではなかったけれど、友人Mの言いたいことは分かるな。
シュルレアリスムという言葉や運動について知らなかった頃、こういった雰囲気の絵を描いていたっけ。(遠い目)
油彩というのがせっかちなSNAKEPIPEには合わなかったけどね!
乾くのが遅くてイライラしちゃうんだよ。(笑)
右の作品にはシュルレアリスムも感じたけれど、きっと影響を受けているだろうなと思ったのは横尾忠則かな。
似た雰囲気の作品があったから余計にそう思ったんだけどね。

TETOKAでは「PHOTO SNS WELCOME」と最初から明記されていたので、断ることもなく撮影させて頂いた。
先日「NAVERまとめ」でも問題になった著作権の問題だけど、SNSやブログ等で取り上げるというのは、お店側から見れば宣伝だもんね。
良薬は口に苦し?あれ?
諸刃の剣?ん?
用は使い方次第で毒にも薬にもなるってことだよね。(笑)
骸骨が裸体美女に襲いかかろうとしている作品、天井近くでじっくり鑑賞できなかったのが残念!
ROCKHURRAHに頼んで、もっと近づいて撮影してもらえば良かったなあ!

上に載せた迷彩服の男の絵も戦争をテーマにしているけれど、右もアラブ系の顔を隠した戦士(?)達を記念撮影したような作品だよね。
不安とか恐怖といった暗く陰鬱な印象で、とても好きなタイプだよ。(笑)
今回の展示は伊藤桂司と佐藤ブライアン勝彦がコラボした作品と、ソロとして制作した作品とが混ざっていたようで、「コラージュ」をテーマにしているという。
意図的になのか、今までもずっとそうだったのかは不明だけれど、全ての作品にタイトルがない!
タイトルがないことは「観る人に自由を与える」ことにもなるけれど、「全くヒントがない」ということになるんだよね。(笑)
そのため右の作品の作者の意図は不明のままだよ!

ーマである「コラージュ」を全面に打ち出していたのが左の作品。
大きさはA4サイズ程度だったかな。
実は最初に載せた蛇の作品もフォト・コラージュだったんだよね。
大きさも同じようにA4ほど。
1910年代から始まるダダイズムで、多く取り入れられたのがフォト・コラージュだった。
この時代のフォト・コラージュは大変素晴らしくて、 ROCKHURRAHはマックス・エルンストのコラージュ作品をパソコンの壁紙にしているほどの大ファン!
2013年8月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #22 Hannah Hach」で取り上げたのはドイツのダダイストだったハンナ・ヘッヒ。
ハンナ・ヘッヒはフォト・コラージュが得意で、素晴らしい作品をたくさん残しているんだよね。
そのブログの中でSNAKEPIPEは書いている。

素材や材料の違いだけではなく、その時代の空気感を纏い、情熱の持ち方が作品に反映され、重要なエッセンスになっていたのではないだろうか。
特に戦争中の作品などは「これが最後になるかも」といったような切迫感を持ちながらの制作には鬼気迫るものがあったに違いないだろう。

なんだか評論家みたいな文章だよね。(笑)
ダダイズムのフォト・コラージュの魅力について考察してみたんだけどね。
今回鑑賞したフォト・コラージュには当然のように「時代の空気感」や「切迫感」はない。
そして先人達が既に素晴らしい作品を発表しているので、新たなる驚きを鑑賞者に与えるのは非常に難しいだろうと思う。
そんな困難を乗り越え(?)上手くまとまった作品だな、と感じた。
日本でもこんな作品を作る人がいるんだ、という驚きがあったよ!
あわわ、京都造形芸術大学教授に対してSNAKEPIPEが言うのは失礼だったね!(笑)
全作品数は20点程で少なめだったけれど、鑑賞できて良かった展覧会だった。

2016年のブログはこれで終わり。
今年も1年が速かったなあ!
2016年のニュースといえば…。

1:大ファンの鳥飼否宇先生が本格ミステリ大賞を受賞されたこと!
鳥飼先生、おめでとうございました!
これからも応援していきます。

2:長時間並んで伊藤若冲展を観たこと!
2015年から楽しみにしていた展覧会が、まさかあんなに大人気になるとは予想していなかった。
伊藤若冲は素晴らしかったので鑑賞できたのは嬉しかった。
残念だったのはニュースにもなった大行列!
あんな経験はもうしたくないなあ。

3:そして今回の「 Alligatoo Boogaloo展」鑑賞の後、「丸五」のとんかつを食べたこと!(笑)
「丸五」とは秋葉原にある、とんかつ好きにはお馴染みの行列ができる店として有名なのである。
美味しいお店情報も収集するのが得意な友人Mは、以前から「行きたいお店」として提案していて、今回やっとその約束が果たせたんだよね!
実はSNAKEPIPEは以前行ったことがあり、その味に感動したことがある。
「丸五」、相変わらず美味しかったなあ。
並んで待つ時間はあったけど、食べられて良かった!(笑)

4:もう一つ忘れちゃならないのは、このブログを丸10年続けていること!
毎週欠かさず10年だもんね。
自画自賛だけど、これはすごいことですよ。(笑)
2017年も相変わらず趣味の話題満載で書いて行く予定なので、よろしくお願いします!
では皆様、良いお年を!

宇宙と芸術展 鑑賞

【宇宙と芸術展のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

以前より長年来の友人Mから誘われていた企画が、森美術館で開催されている「宇宙と芸術展」であった。
7月の下旬から始まり、来年まで続いている展示のため「まだ大丈夫」と思っているうちに、いつの間にか2016年も終わりに近づいていたんだよね。(笑)
通常は午前中に展覧会を観た後でランチを楽しむスタイルだったけれど、今回は珍しくディナーの後で鑑賞することになった。
友人Mに会うのは夏以来なので、随分と久しぶりである。
話が弾み、食事の時間が長くなったよ。(笑)

夜には星空のイルミネーションを見る企画があるせいなのか、美術館のチケット売り場は長蛇の列!
まさかここにいる全員が「宇宙と芸術展」を鑑賞するわけじゃないよね?
15分も並んだだろうか、やっとチケットを手にして会場へ。
予想通り、チケット売り場の大群は「宇宙と芸術展」ではない別の何かが目的だったようで。
「宇宙と芸術展」は、そこまでの混雑はなく、ゆっくり鑑賞することができた。
海外からの人も多かったように感じたよ。

会場は4つのセクションで構成されていた。

1 : 人は宇宙をどう見てきたか?
2 : 宇宙という時空間
3 : 新しい生命観-宇宙人はいるのか?
4 : 宇宙旅行と人間の未来

といった具合に進んで行く。
全く違うジャンルを関連付けた展覧会としては、2010年に同じ森美術館で鑑賞した「医学と芸術展 MEDICINE AND ART」があったね。
この展覧会は非常に興味深い展示が多かったことを思い出す。

恐らくこの展覧会のために作ったのかなと思うような現代アート作品よりも、学術書や実用のために作られた作品のほうに興味を持ったSNAKEPIPE。
実用品のほうがより芸術的で、アートに勝ってると思った。

と感想を書いている。
なかなか気の利いたこと言ってるじゃない?(笑)
ところが今回の宇宙に関しては上記のコメントと同じようには言えなかったな。
正直なところ「宇宙」と「芸術」を同じ土俵に乗せるのには無理があると思ったんだよね。(笑)
そもそも宇宙の捉え方にも個人差があるような気がするし。
更に撮影OKの展示物が非常に少なかったことも「物足りなさ」につながっている。
そうは言っても、展覧会の撮影がオッケーになったのはつい最近のこと。
前述の「医学と芸術点」の時には撮影していないし、当然ながら1枚の写真も載せていないブログなんだよね。
それにも関わらず、未だに「面白かった」と覚えているわけだからね。(笑)

物足りない、と言いながら数点は気に入った作品があったので、紹介してみよう。
当然ながら撮影オッケーの作品でね!

ドイツ人アーティスト、ビョーン・ダーレムの作品は、夜に鑑賞して良かったみたいだね。
光が後ろのガラスに反射して、光の渦が奥行きを増して連続しているように見える。
どこまでも繋がっていく光の輪。
それはまるで永遠を表現しているかのよう。(陳腐!)
作品のタイトルはブラックホールなんだけど、 SNAKEPIPEのイメージとは違うかな。
ブラックホールは漆黒の闇だと思っていたからね。
大型の作品で、光がとても美しかった。

中国人アーティスト、ジア・アイリの作品に目を奪われる。
荒廃した風景に雷が落ちている、という非常にシンプルなモチーフなんだけど。
色合いのせいか、全く暖かみを感じない。
これが非常に好みなんだよね!(笑)
かなり大型の油絵だけど、我が家に飾りたいと思ったよ。
今まで知らなかったアーティストなので、 違う作品も鑑賞してみたいね。

この不気味な物体は一体何?
作者はパトリシア・ピッチニーニ
前述した「医学と芸術展」にも彼女の作品は出品されていたっけ。
ゲームをしている少年2人が、まるで本物の人間のように見える作品だったね。
今回鑑賞したのは、人間とアルマジロ(?)のハイブリッドのような謎の生物。
お世辞にも「かわいい」とは言えない。(笑)
2011年の東京都現代美術館で開催された「Transformation鑑賞」ではカモノハシと人間のミクスチャーを鑑賞したことも思い出した!
あの展覧会は「変身」や「変容」がテーマだったのでピッチニーニの作品が展示されているのは納得だけど、今回の宇宙ではどうだろう?
解釈でいかようにもなるってことかな?(笑)

空山基の展覧会が今年の1月から3月まで渋谷で開催されている情報は、いつも通り友人Mから知らされていた。
「ちょっと気になる」と言われていたけれど、 結局出かけなかった。
どうやらこのセクシーロボット、等身大の6分の1サイズが100体限定で2015年に販売されたらしい。
お値段は16万2千円!
今回鑑賞したのは等身大サイズ、更にお立ち台に乗っていたのでかなり背が高かったんだよね。
身長が200cmだとしても6分の1なら33cm。
自宅にミニチュア・セクシーロボットがいたら嬉しいかも!(笑)

撮影不可の作品で興味深かったのは曼荼羅。
曼荼羅の実物を間近で観たのは今回が初めてだからね!
細部まで精密に描かれているのには驚いた。
米粒くらいの大きさの人の顔がちゃんと分かる筆使いなんだよね。
「グヒヤサマージャ立体マンダラ」は、125cm四方の大きさの作品で、タイトルにあるように立体的な曼荼羅だった。
宗教的な作品というよりは、子供のおもちゃ感覚といった雰囲気で気に入ってしまった。(笑)
作品リストにも「製作:ギュメ密教大学ゲルク派学僧」と書かれているから、おもちゃじゃないんだけどね!
とてもかわいかったから、SNAKEPIPEも欲しくなってしまった作品だよ。(笑)

写真は「クリエイティブ・コモンズ表示-非営利-改変禁止2.1日本」ライセンスでライセンスされています。

圧巻だったのは最後に鑑賞したチームラボの作品「追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して咲いていく – Light in Space」。
タイトルはまるでマルセル・デュシャンの「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」みたいに長いなあ。(笑)
完全入れ替え制で、一回の上映時間が4分未満という映像作品である。
真っ暗な部屋の中、床に直接座って鑑賞する。
ここだけは動画撮影OKだったので、肘で固定して頑張って撮影したSNAKEPIPE。
飲み込まれてしまうかと思ったほどの光の洪水。
飛び立つカラスの尾から流れ落ちるような光の帯は、速度を伴って上昇していく。
鑑賞しているうちに「これは『チベット死者の書』だな」と思う。
人が死んでから再び生まれ落ちる、輪廻転生を教えてくれる「チベット死者の書」をテーマに作品化したのではないか、と感じたのである。
そう思った途端、まるで死んでからの予行練習をしている気分になっている。
圧倒的な光に包まれて死んだ後のことを想像して思わず涙が出てきてしまった。
アート作品を観て、涙を流したのは今回が初めての経験だね。(笑)
この作品を鑑賞できただけでも、来て良かった展覧会だった。

驚きの明治工藝 鑑賞

【毎度お馴染み?公園入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

テレビ番組は録画しておいて、後から鑑賞することがほとんどである。
好きな時間を選ぶことができるし、 途中で席を外す時には一時停止すれば良いし。
テレビの前に座り続けることがないので、時間を有効に使いたい人には良い方法だよね!
難点としては、実際の放映よりもかなり時期を外してから鑑賞するため、リアルタイムで観て知っていたら行かれたかもしれない美術展を逃すこともある、ということ。

没後100年 宮川香山」もその一つの例だ。
宮川香山とは、壺や椀に本物と見間違うほどの精密な生物を立体的に貼り付けた、独特の作品が有名な陶芸家である。
超絶技巧と言われるほどのリアリティ!
その宮川香山の展覧会がサントリー美術館で2016年2月24日~4月17日に開催されていたことを知ったのはつい最近のこと!
録画を溜め込み過ぎてたってことだね。
情報を事前に知っていれば出かけていたはず!
残念だけど仕方ないね。(笑)

宮川香山の実物を観たかったね、と言い合っていたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
そんな時ROCKHURRAHが気になる企画を発見してくれた。
東京藝術大学美術館で開催されている「驚きの明治工藝」 である。

細密、写実的な表現で近年人気の高い明治時代を中心とした日本の工芸作品。
この「明治工藝」の一大コレクションが台湾にあることはあまり知られていません。
しかもこれらの作品は、すべてひとりのコレクターが収集したもの。
この「宋培安コレクション」から100件以上もの名品を、日本で初めてまとめて紹介します。

展覧会の説明を転用させて頂いたよ。
どうやら戦乱のために使用されていて武具を作っていた甲冑師が、江戸中期には需要が減ってきたために、花瓶や火箸などの民具を扱うようになったという。
これが工芸品製造の始まりなんだね。
それら民具が、今回展示されているような工芸品へと更なる発展を遂げたという。
その技術は外国での評価が高く、ほとんどが輸出されていたとのこと。
「一大コレクションが台湾にある」という上の説明がよく分かるね!
さて、一体どんな驚きの逸品が拝めるのやら?(笑)

小雨は土砂降りに変わってしまい、出かける日を間違えたかと思いながら上野に向かうROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
自称「雨男」のROCKHURRAHは「ほら、やっぱり」と言っていたけれど、「和牛ひつまぶし」を食べている間に雨はやんでいた。(笑)
最初は寒いくらいに感じていたのに、雨が上がった途端に湿度が上昇!
雨も困るけど、湿度もイヤだなあ。
上野公園をゆっくり歩いて東京藝術大学美術館に向かう。
実は藝大に美術館があることを知らなかったSNAKEPIPE。
当然ながら初めて行くことになるね!

東京藝術大学の道を挟んだ向かい側に美術館はあった。
どちらかというと「こじんまり」した建物だけれど、なかなかお洒落!
チケット代金大人1300円。
一般的な展覧会と同じくらいの金額だよね。
螺旋階段を使い開催されている地下2階に降りて行く。

1番最初に展示されていたのが、今回の目玉の一つである宗儀の「自在龍」!
少し離れないと全体を把握することができない、3mの大作なんだよね。
「最初にこれか!」
ROCKHURRAHが言う。
確かにこれは、例えばLAUGHIN’ NOSEが1曲目に「Get The Glory」を演奏するような感じだもんね?
えっ、例えが分かりにくい?(笑)

東京藝術大学美術館は一部の作品を除いて、撮影オッケー!
やったー!撮りまくるぞ!(笑)

ここで少し説明をしてみよう。
上の「自在龍」というのは、写実的に製作されている上に、体節・関節を本物通りに動かすことができるんだよね!
ハンス・ベルメールの「球体関節人形」どころではない細密さを持つのが特徴で「自在置物」としてカテゴライズされているという。
えー!あの巨大な龍の胴、手足、首、尾が動くなんて!
これはすごい。
一点目からすっかり驚愕するSNAKEPIPE。

それから先も「自在置物」シリーズが展示されている。
ガラスケースの中にある「自在置物」を夢中で撮影するSNAKEPIPE。
ところが…。あとで確認するとほとんどがピンぼけ!
がーん。撮影オッケーだったのに、何の意味もないよ!
photostudioを名のる資格なし…。(しょぼーん)
仕方ないので1枚だけネットで探してきた画像を掲載させて頂こう。
明らかにトーンが違うけど、許してね!

これも「自在置物」ね。
素材が鉄なのに、ウロコのひとつひとつの細工の細かさったら!
今にも動きだしそうなほどのリアリティ。
ここまでの卓越した技術が手作業で行われているとは。
匠の技ってすごい、と改めて思う。

この「自在蛇」を動かしている動画があるので載せておこうね。

舌まで動くとはね!(笑)

SNAKEPIPEが撮ったピンぼけ写真なんだけど。(笑)
トンボや蜘蛛などの昆虫類ね。
なんとなくの影で分かるよね?
どれも10cmくらいの小ささなんだけど、全部「自在置物」なんだよね!
この小ささを動かす、というのはどれだけの技術なんだろうか?
内部の細工についての展示もあったけど、仕組みがよく分からなかったよ。
こんな置物は外国人ならず、現代人でも驚きに値するよね。

自在置物以外にも様々な工芸品があったよ。
加納夏雄の「梅竹文酒燗器 明治6年(1873)」に目を奪われる。
銀製でピカピカでとてもキレイなんだよね!
六本木ヒルズにある外国人向けの高級な「Made in Japan」 製品が並んでるお店に売っていそうな逸品!
こんな作品を今から約150年前に制作していたとは!
その時代の日本人の美意識の高さって素晴らしいね。

美意識の高さに驚いた後、グロテスクな一面も目の当たりにすることになる。
木彫の置物「髑髏に蛇」は亮之によるもの。
非常にリアリティがあるため、とても不気味な作品なんだよね。
亮之について調べてみると、泉亮之が正式な名前みたいね。
蛇と髑髏を得意とする彫刻家って、そのまんま!(笑)

泉亮之は得意とする髑髏の研究のため塚より頭蓋骨を掘り出し、寝食を忘れ研究を行ったと伝えられる。

wikipediaにこんな説明文を発見!
これは江戸川乱歩の世界じゃないの!(笑)
ロシアの皇帝に作品を買い上げられたとか、大隈重信が泉亮之の作品がついた杖を愛用していたという記事もあったので、グロテスクだけれど認知され評価されていた、ということが分かるね。
どんな作品だったんだろう?
非常に気になるよね!(笑)

不気味な作品をもう一点。
恵順の「山姥香炉」(やまんばこうろ)だよ!(笑)
置物に「山姥」をモチーフにするセンスってどうなんだろう?
更に焚いた煙が「山姥」の口から出る構造になっていることにも注目!
香炉を使う目的は人それぞれだろうけど、香りを楽しむようなアロマ風の使い方の時に、醜悪な老婆の口からの香りで癒されるのか?(笑)

遠目で観た時には、単なる風景画だと思っていたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
明治の工芸品をナメてました、スミマセン!
近寄ってみて初めてそれが天鵞絨友禅(びろーどゆうぜん)や刺繍による作品だったことが分かる。
染色について詳しくないSNAKEPIPEなので、調べてみることにする。
そもそも友禅染とは何か?
でんぷん質の防染剤を用いる手書きの染色を友禅というそうだ。
ビロードというのは表面がループ状に毛羽立った生地のため、友禅染が非常に難しいらしい。
それを明治時代に京都の西村惣左衛門が可能にして、輸出用の壁掛けが制作されたという経緯があるとのこと。

上の画像は刺繍作品なんだよね。
「瀑布図額」は無銘とされているので、職人さんの仕事の一つだったんだろうね。
迫力のある滝を刺繍糸でここまで表現するとは!
日本にはほとんど作品が残っていない、というのが残念だね。

ここ最近「生誕300年記念 若冲展」や「怖い浮世絵展」などの江戸から明治時代の展覧会を続けて鑑賞しているROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
現代アートが好みだと思っていたのに、古い時代の作品に触れてるんだね。(笑)
いやいや、温故知新という言葉通り、驚くような発見が多いからね!
江戸中期からの日本人の匠の仕事には感服してしまう。
オートメーション化が進んだ現代でも、「自在置物」を作るのは難しいんじゃないかな?

シュールな作品を好む傾向にあるROCKHURRAH RECORDSは、例えばリアルに描かれた油彩画にはそこまで反応しない。
ところが今回の工芸品のリアリティには感嘆の声をあげてしまう。
日本の職人技の世界!
「自在置物」、一つ欲しいよね。(笑)
鑑賞できて良かったなあ!

今回の展覧会は台湾の宋培安という人物のコレクションの展示とのこと。
宋培安は漢方の薬剤師で、健康薬品の販売や生命科学の講座を開設し、思想家であるカントを研究しているという人物だという。
道徳の世界へ導くためにも、美を理解する能力が必要であるというカントの精神を大切にしていることからコレクションが始まったようで。
2014年に鑑賞した「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」も台湾のヤゲオ財団のコレクションの展示だったよね。
台湾にはコレクター多いのかな。
経済的にも余裕があるってことだね。
日本の財団や美術館にも頑張ってもらって、世界に誇れるコレクション集めて欲しいよね!

トーマス・ルフ展 鑑賞

【トーマス・ルフ展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

情報収集能力に優れた長年来の友人Mからお誘いがあったのは、7月だっただろうか。
東京国立近代美術館で開催される「トーマス・ルフ展」が気になる、というのである。
全く聞いたことがないアーティスト!
ただし東京国立近代美術館に関しては、2011年の「生誕100年 岡本太郎展」や2013年の「フランシス・ベーコン展」、2014年の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」で訪れているんだよね。
そのためSNAKEPIPEやROCKHURRAH、長年来の友人Mが「好きそうな企画」を立ててくれる美術館として良い印象を持っている。
今回の「トーマス・ルフ」については謎に包まれたままだったけれど、「あの美術館の企画ならば!」と期待して待っていた。

迷走台風に続き、日本列島を通過するかもしれない大型台風の発生が予想されていた時、SNAKEPIPEとROCKHURRAH、そして友人Mは竹橋駅に集合した。
大雨になるかもしれないけれど、東京国立近代美術館は竹橋駅の目の前。
あまり影響を受けずにたどり着くことができるんだよね!
そして予想通り(?)台風のせいか来場者が非常に少ない。
天候に加えて、SNAKEPIPEと同じようにトーマス・ルフについて知らない人が多かったのも原因かもしれないね?
SNAKEPIPEが命名した「国立系」、アクティブシニア(活発なご老体)連中が皆無!
もちろん子連れのファミリーもいない!
人が少ない、とても良い環境で鑑賞できそう。(笑)

ここでトーマス・ルフについて書いてみよう。
1958年ドイツ生まれ。
1977年〜1985年、デュッセルドルフ美術アカデミーの写真学科にてベルント&ヒラ・ベッヒャーの元で写真を学ぶ。
2000年〜2006年、デュッセルドルフ美術アカデミー写真学科の教授を務める。
ドイツの現代写真芸術において重要なポストに就いている人物、とのこと。
一体どんな作品なんだろうね?

会場に入ってすぐに展示されているのは、「トーマス・ルフ展」の紹介やチケットにもプリントされていた「Porträts(ポートレート)1986-1991,1998」のシリーズ。
美術館にある説明文を抜粋して載せてみようか。

一見ありふれた証明写真は、巨大なサイズ(210×165cm)に引伸ばされると,印象が一変します。
ありふれた人物写真が,どこか不可解で不可思議な存在にすら見えてくるのは、写真というメディア独自のメカニズムのせいではないでしょうか。

そ、そお?(笑)
確かにこれだけ巨大な証明写真が並んでると迫力はあるね。
「全く同じように複数人を撮影するのは相当な技術」と書いている人もいるようだし、巨大写真というのが現代写真のフォーマットの先駆とも説明されている。
説明を聞けば「そうなのか」とも思うけど、SNAKEPIPEにはよく分からなかった、というのが正直なところかな。

「ポートレートだから、茶色のブラウスを着たチケットに載っていた人がトーマス・ルフだと思ってた!」
ROCKHURRAHが真剣な顔で言う。
いや、どう見たって女性の写真だから間違えないと思うけどね。
トーマスって女性、あまり聞かないし。(笑)

「なるほど」と思ったのは、次に展示されていたシリーズ「Häuser(ハウス)1987—1991」。
集合住宅や企業の社屋といった、ごく普通の建物をきっちり水平に固定し、「空、建物、地面」のバランスを考えて撮られている作品群。
建物写真というよりはデザイン性を感じるんだよね。
1枚だけでは分かり辛くても、明確な主題の作品が複数並ぶことで意味を解釈することができる好事例だと思った。

ROCKHURRAHから「この作品を撮影しておいて」とリクエストされる。
理由を聞いてみると「レコードジャケットに似ている物があるから」だという。
ドイツのバンド、Fehlfarbenの1stである「Monarchie und Alltag」だという。
並べてみると、どうだろう。
建物の角度、ほぼ同じだよね。
雰囲気も近い!
即座に思い出したROCKHURRAH、さすがだね!(笑)

「Häuser」シリーズからコンピュータを使用して画像の加工を始めたというトーマス・ルフは、合成写真も作成している。
実際にドイツの警察で使われていたモンタージュ写真合成機を使用して制作された「andere Porträts(アザー・ポートレート)1994—1995)」。
実在の人物のパーツを組み合わせて作り上げているから、あり得ない人物に仕上がってるんだよね。
ちょっと笑ってしまう感じ。(笑)

写真と現実の関係についての問いや、
監視社会をめぐる問題意識が浮上します。

説明文に書いてあった文章を転記してみたよ。
こういう解釈も成り立つんだろうけど、観たままで良い気がするなあ。

自ら撮影した写真を解体してパーツにしたトーマス・ルフは、他人が撮影した写真の加工を始める。
「Zeitungsfotos(ニュースペーパー・フォト)1990—1991」は、新聞や週刊誌に掲載された写真のみを抽出し、拡大した作品群。
事件や事故の内容が示されたキャプションを取り除いて、純粋に写真としてだけ提示する、というのが趣旨だという。
これは読み取る側(鑑賞者)に写真の意味を委ねるので、人それぞれ持つ感想が違ってくるだろうね。
自分の写真の解体の後は、メディアの解体を行ったということだろうか。
そして他人の写真を流用する、という手法はマルセル・デュシャンから始まる「レディ・メイド」を継承しているようにも思う。
ちなみに、「レディ・メイド」について説明しているwikipediaに次の文章があるんだけど。

レディ・メイドの根底にあるものは、美術的に無関心な領域において選択される「観念としての芸術」という考え方であり、マルセル・デュシャンによれば芸術作品において本質的なことは、それが美しいかどうかではなく、観る人の思考を促すかどうかということなのである。

非常に長い一文だけど(笑)、トーマス・ルフについての説明文にしても良い感じだよね!

トーマス・ルフの実験はまだまだ続いていく。
「zycles 2008—」は、まるでどこかのデパートの包装紙みたいだね、と3人で言い合う。
えっ、例えがおかしい?(笑)
3人が揃って同じ感想を持つ、ということはきっと70年代か80年代に見たことがある包装紙だと思うよ。(笑)
複数の曲線が自在にキャンバス上を揺らいでいる。
これは一体何を撮影してるんだろう?
美術館にあった説明文を原文のまま載せてみることにしよう。

イギリスの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831一1879)の著した電磁気学の研究書に収められていた銅版画による電磁場の図版
<それは本来,美的対象としてつくられたものではなかったが,まるでミニマルアートや抽象的なドローイングのような繊細なカーブが描かれていた>
に触発されたルフは,こうした電磁場の線図が三次元に変換するとどのように見えるのかに関心を抱き,実験的に3Dプログラムを用いて数式をコンピューター上の三次元空間で再構成しはじめた。
こうした実験を経て,ルフはさまざまなサイクロイド曲線(円が同一線上を転がるとき,この円の円周上に固定された一点が描く曲線)を仮想の三次元空間に走らせて複雑な線形構造を描き,さらにこの仮想空間をニ次元に変換した後,色を加えク口ーズアップなどのマニピュレーションを施して力ンヴァス上に出力している。

この説明でスッキリできたよね!(うそ)
読んでいるうちに余計に分からなくなってしまったね。(笑)
3Dプログラムを使用して三次元空間で描いた後、二次元に変換する工程を実際に見てみたいよね。
百聞は一見に如かず。
そうしたら多少は理解できるかも?
それにしてもサイクロイド曲線やらマニピュレーションやら、難しいカタカナ多いなあ。(笑)

SNAKEPIPEとROCKHURRAHが大好きな万・霊じゃなくて(笑)、マン・レイやモホリ=ナギが制作していたフォトグラムを、トーマス・ルフも制作しているんだよね。
「Photogram(フォトグラム)2012—」は非常に美しい作品で、3人共お気に入りになってしまった!
「テキスタイルデザインみたい」
と感想を持ったのは友人M。
「スマホの待ち受け画面にしたい!」
と言ったのはSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHは黙々と写真を撮りまくっていた。 (笑)
今回のトーマス・ルフ展は注意事項を守れば、撮影OKだったからね!

フォトグラムとは、印画紙の上に直接物を置いて、感光させる技法のことね。
トーマス・ルフは「コンピューター上のヴァーチャルな”暗室”で物体の配置と彩色を自在に操作し像をつくりあげている」らしい。
ヴァーチャルな暗室って何?(笑)
これもまた実際に制作過程を見てみたいよね!

トーマス・ルフは宇宙に対して子供の頃から興味を持っていたようで、宇宙をテーマにしたシリーズもいくつかあるんだよね。
そのうちの一つ「cassini 2008—」は、宇宙探査機cassiniが撮影した土星と衛星の写真を素材にした作品だという。

インターネット上で公開されている画像を加工して作品にしたということは、これもまた「レディ・メイド」なんだよね。
「zycles」シリーズと同じように、本来の目的である研究や探査のための写真や画像が、アートに変身するというのは面白いよね。

今年制作された作品として展示されていたのは、アメリカや日本の報道写真をスキャンして加工した「press++ 2015—」シリーズ。
これもまた「レディ・メイド」であり、更に写真を重ねて加工していく、ということでフォト・モンタージュでもあるわけだね。

読売新聞が保管していた写真を使用しているため、日本語が作品に写り込んでいるんだよね。
よくみると「読売資料館 43.6.22 保存」という日付印も押されているし。(笑)
恐らく昭和43年なんだろうね。
茨城の通信所には今でもこのパラボラアンテナあるんだろうか?
どこまでが読売新聞のリアルな写真なのか、よく分からなくなるね。
これもまた上述した「写真と現実の関係についての問い」なのかもしれないね?

「トーマス・ルフ展」は上で紹介したシリーズ以外にも、代表作とされる「Substrate 2001—」がある。
これは日本の漫画やアニメの画像を原型が分からなくなるまで加工した作品群。
意味を排除する、というのが目的のようだけど、作品はまるで抽象画!
カラフルな色彩が美しい。
説明を知る/知らないで観方が変化するのは面白かった。

他にも「nudes 1999—」「negatives 2014—」など、トーマス・ルフのシリーズが展示されている。
シリーズ毎にテーマが違うので、今回のような全貌を知る個展として鑑賞しなかったら同じアーティストの作品とは思えない程の多様性に富んでいる。
かなり見応えがある企画だったね!

トーマス・ルフを「写真家」、というのはちょっと違う気がした。
写真家であるとしても「ニュー写真家」(笑)とか「メディア・アート・フォトグラファー」(変?)とかね。
今までのいわゆる「写真家」とはまるで種類の異なるタイプだと思うし、写真はあくまでも表現の手段に過ぎないんだよね。
SNAKEPIPEはトーマス・ルフを現代アーティスト、と呼びたいと思う。

「レディ・メイド」「フォトグラム」「フォトモンタージュ」という、今まで使われてきた手法を、今風にナウくした作品群はとても楽しく鑑賞できた。
そしてやっぱりドイツのアートというのはバウハウスに代表されるように、無機的で構造的なんだなと改めて感じることができたよ!
きっとトーマス・ルフはこれからも温故知新、様々な実験を見せてくれるんだろうね!
「トーマス・ルフ展」行って良かったと思う。