映画の殿 第03号 悪魔の追跡

【2組のカップルの行方や如何に?!】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週末に映画を鑑賞する習慣はずっと続いていて、特別な用事がない限りは1週間に3本の映画を観ていることになる。
1ヶ月で約12本!
1年なら144本ということになるんだねえ。
計算してみるとその本数の多さに驚いてしまう。
それらの膨大な映画の中から、新作やカルト系を除いた琴線に触れる1本をご紹介しよう!という企画の「映画の殿」。
第3号は「悪魔の追跡」について特集してみようか。

悪魔の追跡」(原題:Race with the Devil)は1975年のアメリカ映画である。
イージー・ライダー」でキャプテン・アメリカを演じていたピーター・フォンダと「ワイルド・バンチ」や「デリンジャー」で圧倒的な存在感を見せたウォーレン・オーツが出演しているオカルト映画と聞いたら気になっちゃうよね!(笑)

YouTubeに当時の予告があったので載せておこう。

字幕なしだし、「きゃー!」みたいな絶叫だけが印象に残る映像。
さて、一体どんなお話なんだろう?

※鑑賞していない方はネタバレしてますので、ご注意下さい。

鑑賞後、一緒に観ていたROCKHURRAHと共に黙りこんでしまう。
なんとも言えないイヤーな後味の悪さ!
えっ、これで終わっちゃうの?という驚きの結末だったのである。

ロジャー(ピーター・フォンダ)とフランク(ウォーレン・オーツ)がそれぞれの妻を伴って出かけた旅行先で、悪魔崇拝者達による人身御供の儀式を目撃してしまったことから、その関係者から度重なる嫌がらせを受け続ける映画である。
あらっ、簡単に書き過ぎ?(笑)
ホラー映画などで「悪魔の○○」という邦題が付けられていることって多いけど、この映画に限っては本当にタイトルそのまんまなんだよね!
これは逆に珍しいかも?

この映画はストーリーがどうのというよりも、その嫌がらせがメインなんだよね!
儀式を目撃した後に関係者が逃げる4人を追いかけ、車の窓ガラスを割る。
割れた窓ガラスに「沈黙せよ」と書かれた警告を示すメモを残す。
ペットを殺害する。
ガラガラヘビを車内に潜ませる。
積んでいたバイクにキズを付ける。
長距離電話を全て使用不可にする。
車ごと体当たりしてきて暴走させる、などなど儀式の夜以来、心の休まる時がないほど加速する嫌がらせ。
親切そうに見える人も、結局はみんなグル!
保安官も、出会う人全てが信用できない状況だ。


その他の嫌がらせとしては、冷たい人々の視線がある。
一言も喋らず、ただ見つめるだけの人達。
それは嘲笑だったり、少し非難を含きつつ哀れみを感じているような視線である。
この視線攻撃、かなりゾッとするよー!
旅行に出た4人のうち、一番視線や雰囲気の異常さに敏感なのはロジャーの妻のケリーで、最初に視線を感じた時には「もう旅行をやめて帰ろう」と提案をしている。
ところがフランクにとっては、長年の夢であった長期旅行である。
俺は絶対に帰らない、スキーに行くんだと言って譲らない。
フランクの妻のアリスも折れて、同行することに同意してしまう。
なんでこの時に帰らなかったの?って思う人は多いと思う。
SNAKEPIPEもそう思った。
この時点なら、まだ窓ガラスを割られ、不審なメモが残っているだけだったのにね!
ただ、こんなに執拗に嫌がらせをしてくる儀式関係者が4人を無事に帰したかどうかは判らないけどね。(笑)


映画の舞台はテキサス州で、出発地点はサンアントニオ。
調べてみるとテキサス州というのはアメリカで2番目に面積の広い州とのこと。
ちなみに1番はアラスカ州だって。納得。(笑)
テキサス州を縦断した先に位置するコロラドを目指す旅というから、かなり移動距離が長いよね。
最初のキャンプ地である儀式のあった場所がどこだったのか不明だけど、きっと4人はラストまでテキサス州から出てないはず。
そしてそんなに広いテキサス州に、どれだけの数の悪魔崇拝者がいるのか謎なんだけど、4人が行く先々に悪魔崇拝の仲間がいることになってるの。
あの儀式の時に集っていたのは、多くても15人くらいだったんだけどねえ?

この粘着質タイプの追跡者というと思い出すのが「ノーカントリー」かな。
自分にとって都合が悪い相手をずっと追い詰めて殺害する。
「悪魔の追跡」の儀式関係者達も「み~た~な~!」としつこいところが似てるんだよね。(笑)
カーアクションのシーンでは、追いかけてくる運転手が見えなくて、誰が運転してるのか分からない。
これはスティーヴン・スピルバーグの「激突!」からの引用なのかしら?
追いかけられる恐怖というのは、SNAKEPIPEもよく夢の中で経験するんだけど、心臓バクバクなって本当に怖いと思う。
もしかしたらSNAKEPIPEが一番嫌なことなのかも?(笑)
そして他所の土地で邪険にされるのは「イージー・ライダー」も同じだったよね。

最終的には車の周りを儀式関係者に取り囲まれてしまう。
そこで映画は終わっちゃうんだよね。
逃げられなかったということはハッキリしてるけど、その後どうなったのかは鑑賞者にお任せ、という終わり方。
どーもすっきりしないよね。(笑)
4人を取り囲みたいなら、もっと早い段階でいくらでもチャンスがあったのにね?
その意味からも、この映画は嫌がらせによる恐怖体験を主題にしてると考えられるよ。

結局のところ4人はどうしたら良かったんだろう?
初めに警告文が来た時点でサンアントニオまで引き返せば良かったのか?
保安官に報告しなければ自宅の住所などを知られることもなかったのでは?
そもそも儀式を目撃しなかったら目的地まで楽しい旅が続いたんだろうか、など様々な疑問が湧いてくる。
それにしてもピーター・フォンダとウォーレン・オーツだったら、本当はもっとカッコ良く立ち回れたんじゃなかろうか?(笑)

これから夏休みで車で遠出しようとか、自転車で遠くまで野宿しながら出かけるなんて人も多いと思う。
そんな時、もしかしたらその土地での禁忌に触れる可能性もあるよね。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも人の気配のない場所を好む傾向があるので、この映画を教訓にしよう!
どうぞ皆様もお気を付け下さいませ!(笑)

映画の殿 第02号 オフィスキラー

【普通では、なかなか撮れない記念写真】

SNAKEPIPE WROTE:

新作映画でもカルト映画でもない、観た映画を自らの好きな視点からブログにしていこうという企画の「映画の殿」。
今まで鑑賞した映画はかなりの数になっているのにも関わらず、ほとんど記事にしてこなかったからねえ。
こんな企画を考えてくれてありがとう、ROCKHURRAH!(笑)
残念ながら、SNAKEPIPEは「映画の殿」の元ネタである「映画の友」については、全く知らないんだよね。
ま、いいか。(笑)
第2号はSNAKEPIPEが担当させて頂きましょー!

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEがDVDをレンタルするのは、皆様お馴染みのTSUTAYAである。
急に場所が変わっていたりして商品が探しにくいという難点はあるけれど、ある程度の映画は借りることができるので、度々利用している。
TSUTAYAでは埋もれた名作を「発掘良品」としてDVD化する試みがあり、毎回興味深くチェックしている。
何故だか毎回多くの人がリクエストしているにも関わらず、復刻されないのがジョン・ウォーターズ監督の「シリアル・ママ」!
SNAKEPIPEも大好きな作品なので、是非復刻して頂きたいと思っているのに、何故か毎回見送り。
版権の問題なのか、倫理規定やR指定系の線引きのせいなのか疑問だけど、もっと過激な作品はたくさんあるだろうに。
例えば、写真家シンディ・シャーマンが初監督した作品「オフィスキラー」とかね?

「オフィスキラー」(原題:OFFICE KILLER 1997年)は当然のように、「あのシンディ・シャーマンが初監督!」という情報を知った時から楽しみにしていた作品である。
2010年に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #4 Cindy Sherman」にもあるように、1996年にはシンディ・シャーマン写真展を観てるしね!
そして実はワクワクしながら観たのにも関わらず「イマイチ!」と思ってしまったSNAKEPIPE。
当時仲良くしていた友達連中も同じ感想だったな。
そのため「シンディ・シャーマンが監督した映画あったよね」程度の記憶しか残らなかった「オフィスキラー」。
16年の時を経て、急に思い立ち再び鑑賞してみたのである。

では、「オフィスキラー」のあらすじに、SNAKEPIPEの感想を交えながら書き進めていこう。
※鑑賞していない方はネタバレしてますので、ご注意下さい。

主人公は出版社で校正の仕事に就いているドリーン(写真)。
勤めて16年と答えていたので、推定年齢は40歳手前くらいというところか。
メガネをかけ、体の線を出さない落ち着いた色合いの服装で、かなり地味な印象である。
そのドリーンは、半身不随のため介護が必要な母親と二人暮らし。
食事の時以外、2階で横になっている母親は、用事がある度に耳障りなブザーでドリーンを呼び付ける。
母親は多少耳が遠くなっているようで、大声で話しかけないと聞こえないようだ。
ここ、大きなポイントね!(笑)

性格は真面目で仕事も正確にこなすドリーンだけれど、社内ではほとんど誰とも喋らず、友達と呼べるような存在も見当たらない。
「何を考えているのかわからない不気味な人」
というのが、社内での評判。
自分に自信がないせいか、いつでもおどおどしているため、気が短い人には余計に嫌われる要因になっているようだ。

ある時、ドリーンの勤めている会社では、業績不振のために大多数の社員をパート扱いにして、自宅にて勤務することが発表される。
大幅な人員削減、いわゆるリストラだよね。
社内に残るのは優秀な社員のみ。
当然のようにドリーンもリストラ組、自宅勤務になる通告を受けるのである。

ドリーンが自宅勤務になる少し前、社内にて残業をしている時にパソコンから異常音がする。
あいにく、夜の社内には人が残っていない。
唯一残っていた上司(写真右)に調査を依頼したドリーンは、全くの偶然で電源を検査していた上司を感電死させてしまう。
これは本当に事故だった。
驚いたドリーンは慌てて911(救急車手配)に電話をするけれど…。
「あなたはとても私に対して意地悪だったわね」
と感電死した上司を見下ろしながら呟き、救急用の電話を切るのである。

そしてドリーンはどうしたのか?
なんと、上司の死体を車に詰め込み、自宅の地下室に運び込むのだ。
そして何事もなかったかのように翌日も出勤するのである。
締め切りに追われていたはずの男が、無断欠勤しているので社内は大騒ぎ。
とにかくなんとしてでも締め切りに間に合わせるために、原稿をでっちあげてでも作り上げるのよ!と女社長から命令されたドリーンは、再び残業することになる。
雷の鳴る、人気のない夜の時間。
今度は女社長を殺害!
恐らく自宅勤務になり、差別を受けていながらも、残務処理には良いように使われていることへの恨みのせいだと推測する。
今までじっと耐えていたためなのか、行動し始めたら堰を切ったように次々と殺しに手を染めていくドリーン。

一体自宅に運び込んだ死体はどうなっているのか、というと…。
それが冒頭の「映画の殿」のカバー写真である。
あれは2体の死体に囲まれた写真なんだよね!
「いやだわ、マイケルズさんったらそんなこと言って」
などと、クスクス笑いながら死体と会話し、その状況を楽しむドリーン。
ドリーンはいつの間にかサイコ・キラーになってしまった。
すでにどこかのネジは緩んでいるみたい。
前述したように、母親は一人では動けないし、耳も遠いためドリーンの奇行に全く気付いていないのだ。

ここからドリーンの暴走は加速する。
そんなに手をかけてしまったら、会社に人がいなくなるんじゃないかと心配になるほど殺しまくるのである。
その代わり、殺風景だった地下室は賑やかになっていた。
「会社に出社できないなら、地下室を会社にしちゃえばいいんだ」
とでも思ったのだろうか。
電話をさせたり、メモを取らせたりして、まるでお人形遊びをしているように、死体で遊ぶのである。

死体で遊ぶ、と行為で思い出すのが坂口安吾原作の「桜の森の満開の下」である。
1975年、篠田正浩監督により映画化された作品であり、主演は監督の奥方である岩下志麻
そして山賊役が若山富三郎という豪華キャスト!
岩下志麻の美しさったら、それはそれは、びっくりしちゃうほどなんだよね。(笑)
「日本のカトリーヌ・ドヌーヴ」と勝手に呼ばせて頂き、昔から大ファンのSNAKEPIPE。
この映画は岩下志麻の妖艶な魅力が堪能できる作品なのである。
写真では小さくて判りにくいと思うけれど、このシーンは、まさに岩下志麻が首遊びをしているところ。
実際に人間の首を使って、人形遊びをする。
山賊である若山富三郎に「美男の僧侶の首が欲しい」、などと命じて首を持って来させるこわーい女性なのである。
やっぱりドリーンと同じように、どこかが麻痺しているみたいで、首を死体とは思っていない様子。
ドリーンにしても、岩下志麻演じる女にしても、鈍感になっているのは鼻だよね。
あそこまで死体がいっぱいあったら、臭いに耐えられないように思うけど?
「桜の森の満開の下」は、とてもシュールで映像の美しい作品だった。
この映画もお薦めだよ!(笑)

次々と殺人に手を染めていく女性という点では、前述した「シリアル・ママ」の雰囲気に近いよね。
「シリアル・ママ」の殺人動機は、
「レンタルビデオを巻き戻さず返す」
「労働感謝の日を過ぎたのに、白い靴を履いている」
などという非常に些細なルールを守らないこと。
怒りを覚えた普通の主婦が、制裁を加える話なのである。
ジョン・ウォーターズらしいブラック・ユーモア満載の「シリアル・ママ」には、大笑いしちゃうシーンがいっぱいあるんだよね。
裁判で自らを弁護し、無罪を勝ち取るシーンは見事だった!
そしてあの大股開きは最高だったよね。(笑)

「オフィスキラー」には、そんな笑いの要素はほとんどない。
死体はリアルな演出がされていて、かなりグロいし、死体をパーツにして遊ぶエグいシーンもある。
「もっと訳の分からないアート作品だと思ったのに、ホラーで面白い!」
とROCKHURRAHが感想をもらしたように、ホラー好きをも唸らせる出来栄え。
ヒッチコック監督「サイコ」へのオマージュと思えるシーンもあったね。(笑)
社内では鈍臭い女と思われていたドリーンが、非常に素早い動きで包丁を使うのは驚きだった。

最後にドリーンは「楽しい自分だけのオフィス」を焼き払ってしまう。
証拠隠滅の意味と、遊びに飽きたことの両方だったのかもしれない。
そしてドリーンは変装して、求人情報を頼りに次の仕事探しに向う。
変装はシンディ・シャーマンの得意分野だもんね!
別人になったドリーンは、シンディ・シャーマン本人なんじゃないかと思うような出で立ちになっていたよ。(笑)
日本で起きた実際の事件でも、変装して何年間も逃亡生活を続けていた女性が、髪型や化粧で別人に見せることができる証明をしてくれたよね。
女は化けるなー!騙されそうで怖いなー!
あ、SNAKEPIPEも性別、女だったんだ。(笑)

もう一つ気付いたこと。
やっぱりこの映画はシンディ・シャーマンらしいな、ということ。
シンディ・シャーマンは映画のスチール写真のような、擬似映画の中の登場人物に自らが成り切って作品にしたシリーズが有名だよね。
「オフィスキラー」の場面を切り取ってみると、それらはまるっきりシンディ・シャーマンの写真なんだよね。
モノクロームにして、作品っぽく加工してみたよ!




映画の中でのメールに関する問題や、警察が全く関与していないことなどは、この際突っ込まないことにしようね。(笑)
16年前には「イマイチ!」と感じたSNAKEPIPEだったけれど、今回改めて鑑賞して思ったのは
「ものすごく怖い映画!」
ということ。
きっとそれは、「本当に起こりそう」だと感じたからだと思う。
16年前には荒唐無稽で「そんなことあるわけない」と思ったのだろう。
ところが現在では「こんな人、いるかもしれない」に変化したんだろうね。
「人間」ということにこだわり、自身の作品を制作していたシンディ・シャーマンだからこそ、将来を予見してこの映画を撮ったのかもしれないね。
ここで教訓!
「大人しそうにみえる人こそ、本当はアブナイ!」

映画の殿 創刊号 レヴォリューション6

【こんな雑誌あったの覚えてるだろうか?】

ROCKHURRAH WROTE:

何と三ヶ月以上もブログをサボってしまったよ。
前は月イチくらいでは一応ROCKHURRAHも書いてたのに情けない。
この三ヶ月間、ROCKHURRAHの身にのっぴきならぬ出来事が降り掛かって、そのためやむなくSNAKEPIPEに毎回登板してもらっていた・・・なんて事は全然ないんだけどね。

久々のブログだけど、今後も全く変わる予感はしないので、今年も相変わらずよろしく。←今年初登場なので抱負、遅すぎ?

タイトルでもわかる通り一応、新境地としてシリーズ化が予定されてる記事を書いてみようか。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEはDVDなどで毎週末にいつも映画を観ている。SNAKEPIPEだけは友人Mと一緒に映画館に行ったりはするけど、ROCKHURRAHはSNAKEPIPEとだけしか映画館に行かない。
だから観た映画もほとんどは共有していて、SNAKEPIPEの方が少し多くの新作映画を観ているという状況。観てきて書けそうなものは大抵ブログに書いてくれてるし、SNAKEPIPEは「CULT映画ア・ラ・カルト」という自分の特集記事も持っている。
ん?しばらく文章書いてないうちに、何だかヘタな散文風になってないか?気のせい?
ROCKHURRAHはSNAKEPIPEのようにうまく感想を書けない体質なので、映画の事を何か書くにしても少しは違った視点でやってみようかと思いついたのが今回からのこの企画、というわけだ。

創刊号だからROCKHURRAHならではという視点、つまり映画の中で使われた音楽について少し語ってみようか。ちなみに毎回こうするという方針は現時点で決めてないから、次は全然違うテーマかもよ。

まずは2002年のドイツ映画「レヴォリューション6」について。
この映画を観たのはまるっきりの偶然。
映画通でも何でもないROCKHURRAHは公開時には当然全く知らなかったし、まだ京都に住んでた頃だな。当時、話題になったのかどうかさえ知らない。観たのは去年くらい、家の近くのTSUTAYAの「発掘良品」コーナーで偶然手に取ったのが出会いだ。
5枚で1000円とかやってて、最後の1枚が決まらないからテキトウに決めた中の1枚だと思う。

イギリスで70年代後半に起こったパンクの映像を見ると必ず若者のデモ集団と警察の小競り合い、といった(反)社会的な面を強調した場面が出てくるが、この映画の発端は80年代のドイツでのお話。GRUPPE36(グループのドイツ語)なるパンク集団のデモンストレーション・フィルムがそのままタイトルバックとなっていて、これがなかなかスタイリッシュで良い。パンクの捉え方がイギリスでも他の国でも違ってくるのは当たり前だが、ドイツの場合は何となく、より政治的な側面が強いという印象を持つ。このGRUPPE36の場合もそういうことを目指した団体のようでもあり、単なるお祭り騒ぎのデモ行為よりは少しだけ過激派のように見える。やってる事はチャチいけど、パンクはテロ組織ではないから、このくらいのイキがりがリアルなところ。
そんな若者6人組は廃墟ビルのようなところをおそらく不法占拠、アジトとしているところが羨ましい。ROCKHURRAHもこういう若者時代を過ごしたかったよ。
このまま話が進めばパンク青春映画となったんだろうが、舞台は彼らが暴れていた15年後の現代(公開時の2001年頃)となる。かつて仕掛けられたまま不発に終わった時限爆弾装置があるきっかけで再起動し、家がまるごと吹っ飛ぶような大事件となってしまう。 犯人はこのGRUPPE36達なんだが、メンバーはもう40代くらいのいい大人になってしまっている。それぞれ違う道を歩いているわけだが、それぞれがちょっとした問題を抱えていたり、成功した者もいたりイマイチのもいたり、この辺は映画的にはよくあるパターン。ところが今でも二人でつるんで、いい歳こいてまだデモ行為やスプレーによる落書きなどをやってるのもいて、これが本作の主人公。ROCKHURRAHもいまだにパンクだし(見た目は若干変わったがな)、成功もしてないし、やってる事や考え方は80年代と変わってないし進歩しない。大まかに言えば同類という事になるのかな?
時限爆弾テロ事件は大きなニュースになっているし、警察の押収物の中には当時の彼らの犯行だとバッチリわかってしまうものが含まれているらしい。こりゃヤバイという事で、バラバラになった昔の仲間がイヤイヤながらまた集結し、警察に潜入して証拠品を取り返そうという計画がこの映画の本題となる。
狙いはいいし、面白くなって当然というような話なんだが、その後があまり盛り上がらなかったりで評価しない感想も多く見受けられる。
ROCKHURRAHはこういう話は好きなんだが、もっとスリリングに出来る話を敢えてそうしなかったというような意見もあるなあ。まあ人はどうでもいいから、個人的に面白ければそれでいいか。

この映画のテーマ曲に使われていたのがROCKHURRAHも好きだったドイツのニュー・ウェイブ・バンド、フェールファーベンの「Ein Jahr (Es geht voran)」・・・と思ってビックリしたら、どうやらJan Plewkaなる人のカヴァーらしい。まさかメジャーな映画でノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(何度もしつこいがドイツのニュー・ウェイブの事)の曲がかかるとは思わなかったから、という意味のビックリだ。
フェールファーベンはドイツでも最も早くから活動してたローファイなパンク・バンド、Mittagspauseを母体とするバンドだ。このバンドはDAFの母体でもあるからノイエ・ドイッチェ・ヴェレのファンならばその名を知っていよう。そこから派生したフェールファーベン自体はドイツでは割と国民的人気を誇るビッグネームらしく、最近でもおそらく活動してるようだ。しかしそれはドイツ国内のみの話。遠く離れた日本ではどう考えてもフェールラーベン(キツネのマークでおなじみの北欧アウトドア・ブランド)の知名度以下なのは間違いない。
しかしこのバンドのヴォーカルは大好きで、巻き舌べらんめえ口調の歌い方はドイツ屈指の実力だと思う。 こちらが元歌。

この映画の感想を色々調べていたが、フェールファーベンについて言及した記事が見当たらなかったので、この辺がROCKHURRAHならではという事かな。単にここが書きたかっただけでよくぞここまで引っ張れたなあ。

この映画の原題は「Was tun, wenn’s brennt?」ということだが、「レヴォリューション6」というのは邦題だったのか。調べようと思って検索したらネコのノミ取り薬レヴォリューション6%などが出てきて、いきなりやる気をなくしてしまったニャン。タイトル付けた人は事前に調べなかったんかね?

本当はもう一作書こうと思ってたが、今回は疲れたのでちょっと短いけどここまで。シリーズ化予定しておきながら次はあるのかな?
それでは続きを乞うご期待。