SNAKEPIPE MUSEUM #45 Sam Wolfe Connelly

20171217 top
【向こうの部屋に誰かいる!いかにもありそうな恐怖へのいざない】

SNAKEPIPE WROTE:

敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの作品の中でよく登場するのが、ドアを開けると漆黒の闇が広がっているシーン。
自分の家の中なのに、まるで異空間のように感じてしまう恐怖を表しているのである。
通称「リンチ・ブラック」と呼ばれていると聞いたことがあるよ。
ここまでの闇ではなくても、実際に自宅で似た経験をすることってあるんだよね。
日が落ちているのに、電気を点けないで部屋に入った瞬間。
もしかしたら誰かが潜んでいるかもしれない、と一瞬想像してしまうことがある。
これってSNAKEPIPEだけかなあ?(笑)

そんな日常的に感じる恐怖を描いているアーティストを発見した。
上の画像も、上述した話に近いシチュエーションだよね。
向こうの部屋に確認できる人影。
家族なのか、もしくは見知らぬ人物?
小さく「ヒッ」と声を上げてしまいそうな、ゾクッとする心理を上手く表現していると思う。

これはSam Wolfe Connellyというイラストレーター。
サム・ウルフ・コネリーでいいのかな。
1988年北バージニア州生まれの29歳。
2011年にジョージア州サバンナ芸術大学デザイン学部を卒業。
以来、イラストレーターとして活躍し、個展も開催しているという。
現在の活動拠点はニューヨークだって。
左はコナミのホラーゲーム「サイレントヒル」のポスターとのこと。
しっかりカタカナで書いてあるから分かるよね。(笑)
映画のポスターなども手がけているので、プロのイラストレーターとして成功しているんじゃないかな。
本人のインタビューによれば「家賃が払えるように仕事するだけが望み」とのこと。
恐らくはプロのイラストレーターよりアーティストになりたいように思うけど?

サム・ウルフ・コネリーは子供の頃に感じた恐怖を絵の題材に選んでいるらしい。
それがきっと一番上の画像のような隣の部屋だったり、右の画像のような窓から垂れ下がる髪の毛なんだろうね。
これらは子供じゃなくても怖いと思うけど。(笑)
右の画像では、窓枠に点滴のパックのようなものが吊り下がっているので、恐らく窓を頭にした状態で寝ている女性がいるんだろうね。
種明かしをされたら「なあんだ」と思うかもしれないけど、一瞬ギョッとする光景には間違いない。
剥がれかかった壁も意味深に思えるし、手入れされていないような雑草が、まるで髪の毛の仲間のように見えてくるのも効果的。
これがカラーの作品だったら草の緑と髪の色の違いが分かるんだろうけど、モノクローム(ちょっとセピア?)だからこそだね。

サム・ウルフ・コネリーの恐怖イメージは続く。
月明かりの中、湖に浮かぶ男性の半裸体。
これは水浴びをしているところなのか。
それとも溺死体なのか。
SNAKEPIPEには溺死体に見えてしまうよ。
だって泳ぐなら、ジーンズは脱ぐと思うし?
まるで映画の中のワンシーン。
死体かもしれない人物がいる絵に美しさを感じてしまう。
もしかしたら殺人かもしれないのに、静謐で凛とした空気まで読み取ろうとする。
2つ以上の相反する感想を持つことができる作品は大好きなんだよね!

サム・ウルフ・コネリーの作品を調べた中で、最も恐ろしいと思ったのは右の画像。
「Above My Floorboards」と題された2013年の作品なんだよね。
「これ、こわい」とROCKHURRAHに見せると、昔の心霊写真に似たものがあったような気がすると言う。
確かに100年以上前の怪奇映画の雰囲気あるよね。
右の作品は、シーツを頭から被ったように見える左の人物(?)もさることながら、階段の上に浮かんでいるように見える人の影が恐怖を倍増させてるよね。
この作品は本当に心霊写真に見えるよ。
でもこれは実は写真じゃなくて絵なんだよね。
サム・ウルフ・コネリーはカーボングラファイト鉛筆やチョークを使用して作品を制作しているという。
普通の鉛筆より硬くて黒鉛粒子が細かいけれど、紙に付着した後はあまり粒子が動かないため、紙を汚さないのが特徴とのこと。
右の作品にはモノクロ写真によくある「ほこり」まで描かれていて、「やるなあ」と思ってしまった。
SNAKEPIPEは昔、自分で写真を印画紙に焼き付けていたので、この「ほこり」みたいな糸くず状の跡には苦労していたことを思い出したよ。
細い筆(面相筆)使って、点描の要領で修復していくんだよね。
そんなモノクロ印画紙の特徴まで描きこむなんて驚いちゃうよね!

サム・ウルフ・コネリーは油絵も手がけている。
左は「Whiteout」という2014年の作品ね。
車のライトが照らし出した一瞬の光景を描いているように見える。
「今の何だった?」と運転手が走り去った後でギョッとする。
そしてきっと見間違いだった、と自分を納得させてしまうに違いない。
恐怖や面倒には巻き込まれないほうが無難だからね。
この女性がどうして裸足で、薄手のワンピースを着て外出しているのかは不明。
勝手に想像してしまうと、精神病院に入院中の女性が病室から抜け出したシーン。
どこに行くあてもないため、さまよい歩いているように見えてしまうよ。
人によって様々なストーリーが展開しそうだね。

サム・ウルフ・コネリーの不穏な空気を孕んだ、不吉で恐怖を感じる絵はとても興味深い。
まるでスナップショットを写実的に描いたように見えるけれど、選び方が上手なのかもしれない。
これからどんな作品が完成していくのか楽しみである。

インタビューの中でサム・ウルフ・コネリーが座右の銘にしている格言について語っている。
Wolves don’t lose sleep over the opinions of sheep.
直訳では「オオカミは羊の意見の上に睡眠を失うことはない」だけど、意訳としては「狼は羊に振り回されることはない」、つまりは「人目を気にせず己の道を行く」ということになるのかな。
サム・ウルフ・コネリーのスペルは違うけれど、名前にウルフが入ってるから一層本人にとって意味のある言葉なのかもしれないね?
このまま独自の表現を追求してもらいたいアーティストだね!

SNAKEPIPE MUSEUM #44 Alexa Meade

【絵画の中の人物が踊り出す!】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アートの世界では既に有名のようだけれど、その存在を全く知らなかったSNAKEPIPE。
そのため「今更何言ってるの?」と言われてしまうかもしれないけど、作品を観て驚愕してしまったので、やっぱり特集したいと思う。
是非ともSNAKEPIPE MESEUMのコレクションに加えたいからね!

実を言うと最初に観た時には、印象派のような「単なる絵画」だと思っていたSNAKEPIPEは、その仕掛けを知って腰を抜かしたのである。(大げさ)
制作過程を知ることで、この作品が「単なる絵画」じゃないことが分かる。
なんとこれは写真だったんだよね!
言葉より写真で観てもらったほうが分かり易いと思うので、こちらをご覧あれ!
上が制作中、下が完成した作品なの。
モデルに着色して、まるで絵画のようにみせている手法なのよっ!
背景も油絵みたいにペイントしてるからより一層絵画に見えてしまうんだよね。
これには驚いてしまった。

今まで例えば森村泰昌が、絵画をヒントにして自分自身が登場人物になりきる作品を発表していたり、先日の「サンシャワー:東南アジアの現代美術展鑑賞」で記事したシンガポールのアーティスト、ミン・ウォンが映画の登場人物全てを一人で演じる作品は観ている。
本物(実物)をなぞって、フェイクを制作するという手法とはタイプが違うからね!
鑑賞者に錯覚を起こさせる、「だまし絵」ならぬ「だましアート」とでも呼ぶべきか? (笑)

この作品の作者はAlexa Meade、アレクサ・ミードというアメリカ人女性。
1986年生まれというから、まだ30歳なのかな。
すでに評判になっているアーティストのようで、知らなかったSNAKEPIPEはモグリかも。(笑)
どうやら2013年にはミニ・クーパーのイベントで来日し、渋谷109の前で車とモデルにペイントするパフォーマンスを行っていたらしい…。
これは観てみたかったよね!
そしてアレクサ・ミード、美しい方なのね。
これは話題になること間違いなし、だ!(笑)

アレクサ・ミードのセルフポートレートがこれ!
アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの「半分人間」じゃなくて、「半分絵画」状態だよね。(笑)
やはりご本人も美貌に自信を持っている様子。
いやあ、確かにこの女性が仰天アートやってるアーティストなら、注目されるだろうね。
ところで、アレクサって名前ブリクサ、みたいじゃない?
またもやノイバウテンにこじつけてしまったよ。(笑)

アレクサ・ミードの作品に戻ろうか。
 「Transit」と題された右の作品は、背景まで描きこんだタイプではなく、絵画から飛び出した人物が現実世界に放り出された瞬間を捉えているんだよね。
全てを絵画に見せる作品とは違う「だましアート」で、周りの人物との対比が強調されて非常に面白いね。
これは地下鉄の中で撮影されたらしいんだけど、周りの人が注目しているところが「異次元から来た人」、つまり「異物」を見る視線になっているところも作品にプラスしているように思う。

日常に入り込んだ「異物」は、恐らく作品にすることを意識しないスナップでも、作品になってしまうよね。
左はアレクサ・ミードのモデルになった2人が横断歩道を歩いているところ。
平面(2次元)と立体(3次元)が混ざっている不思議な風景。
銅像だと思っていたら実は生きている人間だった、というのはハナ肇で観たことあるけど(古い!)、絵画だと思っていたのに動き出した、というのは初めてだからね。

上の写真で横断歩道を渡っていた2人モデルにした作品がこちら!
背景の白とマッチして面白い作品になっている。
左の男性がひざまずいているのは、これから右の女性にプロポーズするところだから。
2人の記念日が作品になるなんて、このカップルにとっては一生の思い出になるだろうね。
その時の様子はアレクサ・ミードのHPで観られるよ!
女性の返事?もちろんオッケーだよ。(笑)

最近はアートの展覧会に行っても写真に対する興味をすっかり失いつつあるSNAKEPIPEだけれど、アレクサ・ミードの作品を観て新しい写真の魅力に出会った気がして嬉しくなった。
アレクサ・ミードは写真にとどまらず、動画の作品も発表している。
それがブログ冒頭に載せた、絵画の中の人物2人がブレイクダンスする動画。
それは写真のbefore→afterを見なくても、一目瞭然で「動く絵画」を理解することができるよね。
現代アートにおける「驚き」要素を充分に堪能させてもらったよ!

アレクサ・ミードの作品の中にはゴッホにタッチが似ているものがあるな、と思っていたらゴッホの映画情報があるので紹介しておこう。

これは「ゴッホ〜最期の手紙〜」という映画で、日本公開は2017年11月3日からとのこと。
俳優が演じた実写を元に、125人の画家が実際に油絵を描き、その油絵を元にアニメーションにした作品だというので、聞いているだけで気が遠くなるほどの時間と手間がかかってる映画だよね。
描かれた油絵の数、なんと65,000枚だという。
実写版に着色したり実写を元にアニメーション化するというのは、例えばディズニー映画にもある。
この映画は「ゴッホの絵画が動いている」ように見せるために最大の努力をしているんだよね。
SNAKEPIPEは特にゴッホについて詳しくないし、興味がある画家とも思っていない。
それでも「絵画が動く映画」としては興味あるなあ!(笑)

アレクサ・ミードという世界的に有名なアーティストのことを知らなかった、ということが分かって良かったよ。
これぞソクラテスの「無知の知」ですな!
それにしてもずっと気になっているのは、アレクサ・ミードにペイントされたモデル達、どうやってあのペイントを落としたのかな?
アクリル絵の具みたいなんだけど、元に戻ったのか教えて欲しいよ。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #43 Jessica Dalva

【謎の黒い線が体を覆っていく不思議な動画】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで「SNAKEPIPE MUSEUM」においてたくさんのアーティストを紹介してきた。
そのうち人形作家だけで並べてみても、その傾向は明らかだと思うけど、SNAKEPIPEは不気味な雰囲気の作品が好みなんだよね。
えっ、今更わざわざ言わなくても良い?(笑)
今回もまた、SNAKEPIPEの心を鷲掴みにした作品に出会うことができたんだよね!
早速紹介してみよう。

Jessica Laurel Louise Dalvaについて詳細を調べようとしても、本人のHPに載っている以上の情報を得ることができなかった。
その情報によれば、2009年にオーティス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインのイラストレーション学科を卒業とのこと。
日本と同じように考えた場合、美大卒業時に22歳だったとすると現在30歳くらいなのかな?
なんと本人のHPで書いてる卒業した学校、スペルミスを発見してしまった!
(誤)Otis College of Art and Desgin →(正) Otis College of Art and Design
こんなことを日本人に指摘されてしまうなんて!(笑)
もしかして国語の成績はいまひとつだった?
作品は素晴らしいので、良しとしよう。

学校卒業後は、劇場や蝋人形館などで仕事をしているようだ。
ポスター制作や舞台装置、ロゴデザインなど色んな役割で収入を得ているんだね。
そういった仕事をこなしながら、自分の作品を発表しているみたい。
日本での紹介記事が見当たらなかったので、SNAKEPIPE独自の日本語訳や解釈で記事を書いているからね。
間違っていたらごめんなさい!

驚いてしまったのが、ジェシカ・ダルヴァ(略してこう書いていこう)の居住地。
カリフォルニア州のロサンゼルスにお住まいとのこと。
作品とカリフォルニアのギャップが激しい!(笑)
SNAKEPIPEが言わんとしていることは作品を観てもらうと一目瞭然だよ。

半裸状態の女性が両腕にカラスのような黒い鳥を従えて、天を仰いでいる。
天女が纏う羽衣ならぬ、黒く薄い布は、まるで鳥の尾が長く垂れているかのよう。
それは額縁をはみ出し、より立体感を増している。
2羽の鳥が羽ばたけば、両腕を広げて一緒に空を飛べるのではないか。
もっと風よ吹け。
大きな風に乗って、高く遠い場所へ。
飛ぶことができなかった時は、谷底に転落するかもしれない。
それでも私は行くのだ。
あの空の向こうへ。
ここではない場所へ。

などと本気で考えているように想像してしまった。(また陳腐?)
女性のアップがあるので、それも載せてみよう。
目の部分がはっきり分からないんだけど、白目を剥いているように見えるんだよね。
盲いているのか。
それともシャーマンのトランスのような状態なのか。
「Eyrie, or, Clarity of Consequence」というタイトルは意味不明。(笑)
Eyrieは〔ワシなどの猛禽ががけなどの〕高いところに作る巣。
Clarityは明快。
Consequenceは成り行き。
Clarity of Consequenceでは必然、と訳して良いのかな?
鳥の巣、または必然???
SNAKEPIPEの英語力では難しいけど、これで作品の怪しい雰囲気は分かってもらえたんじゃないかな?
夜を連想させる、ゴシック調なんだよね。

ジェシカ・ダルヴァのHPには2009年から制作している作品が載っているんだけど、初期の頃はどちらかというとパペットの延長のようなあどけない表情の人形が並んでいる。
少女をモデルにしていたのかな。
決してかわいくはないけれど、そこまでの不気味さはない。
今回特集している「Hapax Legomena」は2015年の作品群で、不気味さに磨きがかかってるよね!(笑)
それにしても 「Hapax Legomena」ってどんな意味?
調べてみると「孤語」というらしい。

コーパス言語学において、ある言語で書き記されたすべてのテキスト全体なり、
特定の作家の作品群や、特定のひとつのテキストの中など、
一定の文脈の中で、1回だけ出現する単語を意味する

Wikipediaから引用してみたけど、その一回だけ出現した単語の複数形がレゴメナだという。
一回だけ出現する単語の複数形ってところで分からなくなるよね。(笑)
「Hapax Legomena」もしくは「hapax legomenon」なんて余程のことがない限り、知ることのない言葉だと思うけど、それは「ありふれた現象」だというのも驚いちゃうね。
大層な言葉だから何か特殊な例なのかと思ってたのに、言語学って難しいね。
前のタイトルといい、全体の総称としてのタイトルも含めて、かなり文学的な思考の持ち主と推察する。
スペルミスはあるけどね!(笑)

底なし沼のような黒い泥の場所で背中を向けている女性。
白い肌に複数の黒い手が重なる。
こっちへおいで。
もっと深い場所にいこう。
その白い肌を黒く染めて、仲間に入るのだ。
こっちだよ。(また出た!陳腐!)
女性の表情は半分以上隠れているけれど、恐れているようには見えない。
覚悟して、自らの意志で底なし沼に落ちることを決めたように思える。
この作品のタイトルは「Abyss」 、意味は「深淵」だった。
ROCKHURRAHは「Abyss」と聞いて、Sex Gang Childrenの「Into The Abyss」曲を連想したらしい。
さすがポジパン好き!(笑)

ジェシカ・ダルヴァの作品は鑑賞者に不安を与えるね。
SNAKEPIPEは悪夢を見そうだよ。

白い花飾りを頭に乗せた女性。
周りを囲んでいるのは羊や蛇やうさぎ。
これらは供物、という意味なのかな?
穏やかな表情で目を伏せているけれど、体の中央には黒い影がある。
まるでウイルスが、内臓を蝕み、浸蝕し尽したため、表面に発露したような。
「Viscera, or, What More Can I Give」は「内臓、あるいは、これ以上何を与えられる」というタイトルが付いてるよ。
供物を捧げ、更には内臓まで与えました。
他にも何か与えるのですか?
もう後に残るはこの生命だけです、という感じなのか。
覚悟して、死を待っている状態なのかもしれないね。
この作品を観て、思い出したのがフリーダ・カーロの「ヘンリー・フォード病院」 だよ。
傷ついた女性と、周りを囲む物体が6つ。
フリーダ・カーロの作品は解説が書いてあるので、作品の意味は分かる。
流産という実体験を元に描かれたと聞けば、この絵は一瞬にして理解できると思う。
自らの痛みや悲しみを題材にした画家というと、松井冬子も同じかもしれない。
作品制作の源流がネガティブな感情の場合、制作は苦しいのではないだろうか。
それとも作品に昇華させることで、苦しみは減っていくのかな?

またもや苦しそうな作品を選んでしまって済みません! (笑)
完全にエビ反っちゃってるよね。
白目剥いて、 手指や腕は泥だらけ。
堕ちるところまで堕ちて、それでも這って、ほんの少しでも進もうとする。
方向は定まらないけれど、がむしゃらに逃れようとする。
一体何から逃れるのか。
タイトルは「Helix」、「螺旋」である。
逃れたつもりでも螺旋をぐるぐる回っているだけ。
どこまでも続く螺旋を、永遠に悶えながら這っていくのだろうか。
評論家だったら、「これは現代を生きる人間の精神状態を表しています」なんて言うのかもしれないな。(笑)

先に「Hapax Legomena」が、決して特殊な事例ではなく「ありふれた現象」だと書いた。
それを踏まえてジェシカ・ダルヴァの作品を鑑賞すると、「この苦しい状態は誰にでもあること」と言いたいのかもしれないね?
様々なストレスにさらされ、もろくて弱い、絶望感にあふれた危うい精神状態に陥った内面を見事に表現しているからね。
ジェシカ、大丈夫かな?
他人事ながら、ちょっと心配になっちゃうよね。
とSNAKEPIPEが勝手に思ってしまったけれど、写真に写るジェシカには心の暗闇を抱えているような女性には見えなかった。
作品の販売もしているし、本人は明るく前向きなのかもしれないね。
聴いてる音楽もポジパンとかゴシックじゃなくて、ジャスティン・ビーバー大好きかもしれないしね!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #42 Wael Shawky

【NYのMOMAで2015年に開催された個展の映像。人形の動きがすごい!】

SNAKEPIPE WROTE:

「SNAKEPIPE MUSEUM」は、SNAKEPIPEがアート作品をコレクションしているという仮想美術館である。
英語にするとバーチャル・ミュージアム、略すとバチャミか。
別に略さなくていいか。(笑)
今までかなりのアート作品を収集してきて、様々な国のアーティストを紹介してきたと思うけれど、この国はお初だね。
今回紹介するのはエジプトのアーティストだから!
エジプトというと、真っ先に思い出すのはピラミッドやツタンカーメン、ミイラなどの古代エジプト文明だよね。
古代エジプトについてもそこまで詳しくないけれど、現代のエジプトについてはもっと知らないなあ。

たまたま目にした画像は、今まで観たことがないタイプの人形だった。
キャプションに書かれているのはEgyptian Artist Wael Shawky。
エジプトのアーティスト?
ワエル・シャウキーと読んでいいのかな。

分かる範囲でシャウキーの経歴をまとめてみよう。
1971年エジプト、アレクサンドリア生まれ。
2000年にアメリカのペンシルバニア大学でMFA(修士号)取得。
映像の中でインタビューに答えるシャウキーが、とても流暢な英語を喋っている理由が分かったね。
恐らく20代前半からアメリカに留学してたことになるもんね。
その後エジプトにあるアレクサンドリア大学でBFAを完了しているというから、30代を越えても学生でいたってことかな? 
これは単なるSNAKEPIPEの推測だけど、エジプトのお金持ちというと、桁外れの大金持ちじゃないかと思うんだよね。
きっとシャウキーはお金持ちのボンボンに違いないよ。(笑)
2004年にはアメリカ・センター財団助成金も授与され、2005年以降は数々の賞をもらっているみたい。
世界中で作品を展示する機会にも恵まれているようだね。
そして冒頭に載せたように、2015年にはニューヨークのMOMAで個展を開催している。
2017年の横浜トリエンナーレにも出品予定という情報もあったので、まさに国際的に活躍している新進気鋭のアーティストなんだね!

シャウキーの作品はパペットの制作と、そのパペットを使った映像になるみたいね。
パペットと書いたけど、いわゆる操り人形のこと。
ガラスや粘土を素材にした人形なんだけど、かなり不気味な印象。
人の顔になっていないように見えるものもあるし。
どうやら設定を十字軍の遠征の時代にしているとのことなので、第1回十字軍の1095年から第9回十字軍の1272年までの間ということかな。
そのため人形の服装や装備が、当時のものを模しているんだね。
うーむ、十字軍なんて世界史の授業で聞いたことがあるくらいで、あまり詳しく分からないなあ。

Wikipediaで調べてみると

十字軍とは、中世に西ヨーロッパのキリスト教、主にカトリック教会の諸国が、聖地エルサレムをイスラム教諸国から奪還することを目的に派遣した遠征軍のことである

とのこと。
結局のところ宗教絡みのお話だったんだね。
シャウキーの映像は、その十字軍の戦いを描いているらしいんだよね。
だから右の画像の字幕が「神からのお告げを賜った」なんだね。
宗教について詳しくないSNAKEPIPEが語ることは難しいなあ。
しかも映像を観てないし!(笑)
意味について理解しなくても、人形を使ったアートという見方で良いんじゃないかな?
もちろん理解するほうが良いんだろうけど…。

人形劇というと、日本では例えば辻村ジュサブローの「新八犬伝」を思い出すけど、あの人形は顔が固定で目や口が動くわけじゃないんだよね。
目や口が動く人形といえば、やっぱり「サンダーバード」か!
操り人形だし、シャウキーと全く同じ条件だよね。
シャウキーの人形も負けないくらい良い出来で、動いている人形の表情の豊かさは見事!
「教えてくれ!真の十字架はいずこに?」
と問いかけているこの男性もさることながら、背景も素晴らしいよね?
どこからどこまでがシャウキーの手によるものなのか不明だけど、この映像は観てみたいなあ。

戦いということで、こういったシーンも登場するんだろうね。
血糊の表現や人形の表情に、残虐さがよく出ていると思う。
バービー人形を使った「SNAKEPIPE MUSEUM #40 Mariel Clayton」や、まるで犯行の戦利品として人体パーツ収集しているような作品を制作した「SNAKEPIPE MUSEUM #30 David Altmejd」などに比べると「常識的な範囲」の殺戮現場になるけどね。

どうやらシャウキーの映像作品は今まで3作作られているみたい。 
・The Horror Show  2010年 
・The Path to Cairo 2013年 
・The Secrets of Karbala  2015年 
3作ともに十字軍の話なのかは不明だけど、左は3作目からの画像のようなので
「我慢なさい、明日こそが裁きの日になるのだから」
と予言めいた字幕がついているところからみても、宗教絡みの話に間違いなさそうだね。
それにしてもこれは人間の顔なんだろうか?(笑)
十字軍や宗教関連の映像、という断片的な情報だけを仕入れて書いているけれど、シャウキーのテーマは何だろう?
実際に鑑賞しないと分からないよね。
観ても分からないかもしれないし。(笑)

冒頭のMOMAの映像の中で、生き生きとした人形たちを観ることができる。
かなり細やかな動きや表情を確認してびっくりしてしまうほど。
エジプトでは古代から彫刻技術が発達していて得意分野だとは知っていたけど、日本の人形浄瑠璃みたいな丁寧なこともできるとは!
映像は起承転結のあるストーリーではないようだけど、動いている人形を観てみたいよね。
横浜トリエンナーレでは映像作品も鑑賞できるのだろうか?
今からとても楽しみだ!(笑)