SNAKEPIPE MUSEUM #53 Caitlin McCormack

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【この作品を見ると横溝正史の小説「悪霊島」を連想してしまう】

SNAKEPIPE WROTE:

朝の出勤前に時刻と天気予報を確認するために、テレビをつけている。
何かしらせわしなく動いているため、テレビの音を聞いている、というのが正確な言い方になるのかな。
この時間だけは民放チャンネルなんだよね。(笑)
そのためCMが入り、宣伝文句がなんとなく聞こえている状態である。
「はじめてのレース編み」という雑誌の宣伝も耳に入ったことを覚えている。
最近、レース編みやってる人いるのかなあ。
昔は電話機のカバーか応接室のガラステーブルの上に敷いたり、ドアノブのカバーとして大人気だったっけ。
などとすっかり昭和の気分に浸ってしまった。
あらっ、ウチでは今でもレースよ!というご家庭もあると思うけど、これはSNAKEPIPEのイメージだからね。(笑) 

そんなプチブル(死語!)のレース信仰をぶち壊す作品を発見したよ。
どうやら2016年にヴァニラ画廊でも作品を鑑賞することができたようで、日本でも全く知名度がないアーティストではないみたい。
今頃知ったSNAKEPIPEが遅いのかもしれないね。(笑)
早速アーティストを紹介していこう!

アーティストの名前はCaitlin McCormack、ケイトリン・マコーマックの表記で良いのかな。
そういえばマコーミックって昔、スパイス・メーカーあったよねえ。
最近聞かないなあ、と思って調べてみると、ライオンと合弁後ミツカンに販売委託、現在はユウキ食品に事業譲渡している関係で、名前がユウキMCに変わってるんだって。
どうりで聞かないと思ったよ。
って関係ない話だったので、元に戻ろう。(笑)

ケイトリン・マコーマックは1988年のアメリカ生まれ、ということは今年32歳かな。
2010年にフィラデルフィア芸術大学でイラストレーションの学士号取得。
当初はイラストレーターを目指していたようだけど、路線変更したみたいだね。
フィラデルフィアを拠点に活動している繊維アーティスト、とのこと。
繊維アーティスト、なんて呼び方初めて聞いたよ。(笑)
大学卒業後より個展を開催したり、グループ展にも参加しているみたい。
あまり詳しい情報がなかったので、これだけで許してね!
では早速作品を紹介していこうか。

マコーマックは綿素材の糸を使った、いわゆるレース編みで作品制作を行っているという。
左の作品からレース編みは想像し辛いけど、編んでることは分かるよね。
そのレース編みを接着剤で固めているらしい。
骨の標本を形にしているようだけど、お花と骨というなんとも不思議な雰囲気だよ。
「Granny」は2019年の作品で、サイズは101.6 × 71.1 cmというからかなり大きめだよね。
こんなタペストリーが部屋にあったら、印象がガラリと変わりそう。
作品は販売されていて、$3,500とのこと。
日本円で約38万5000円。 
そこまで手が出せない金額じゃないね。
どれどれ、他の作品も購入候補で考えていこうか。(笑) 

「Storm of Uncles」が気に入ってたんだけど、調べてみたら売り切れだった!
2015年の作品で、大きさが94 × 64.1 × 7.6 cmと書いてあるよ。 
奥行きが7.6cmあるということは、かなり盛り上がった厚みのある作品なのかもしれないね?
直訳すると「おじさん達の嵐」って意味不明だけど、トカゲの骨格のような謎の生物は擬人化されてるってことなのかな。
マコーマックは「時間の経過や自らの視覚的偏見による記憶の歪みを修正し、再構築することが目標」なんだとか。
分かるような分からないような言葉だよね?
例えばマコーマックが子供の頃に、親戚のおじさんが突如暴れだした時の記憶を基に作品になっている、というようなことなのか。
そうして見ると、荒れ狂ったおじさんの姿に見えなくもないよね。(笑)

「A Thing I Said (Fuck You, You Motherfucking Fuck)」という、Fから始まる放送禁止用語連発のタイトルがついている2019年の作品はいかが?
よく見ると、作品に文字がレース編みされてるじゃないの!
ちゃんと「fuck you」って書いてあるよ。(笑)
34.3 × 26.7 × 8.9 cmという小さめの作品なので、家に飾るには丁度良さそう。 
マコーマックは、それぞれのパーツをかぎ針編みしてから、何度も何度も秘密の接着剤で固めていき、最終的に硬化したパーツを縫い合わせているという。
その「秘密の接着剤」というのが非常に気になるよね。(笑)
そしてこの作品は、一体どんな状況だったのかも想像しちゃうよ。
お値段は$2,500、日本円で約27万5000円!
自宅でじっくり鑑賞しながら、ストーリーを考えるのも楽しそうだね。

アンティークの時計ケースに入った「Boy Now」という作品。
そのまま直訳すると「少年は今」なんだけどね。(笑)
2段構えなので、非常に単純に考えると上が過去の少年で、下が現在なのか。
大きくなって背中が丸まった?
開いてた口が塞がった?
快活だった子供が、現在は物思いにふける思慮深い少年に変化した、と見るのは安直過ぎるかな。(笑)
マコーマックの作品はほとんどがモノクロームなので、額やケースが変わると印象が違ってくるんだよね。
アンティーク時計のケースも、ドーム状のガラスケースも、見え方が違って良いね。
「Boy Now」は69.9 × 39.4 × 10.2 cmの大きさで、お値段は$1,700、日本円で約18万7000円だって。
東京駅近くのKITTE内にある「インターメディアテク」に、そっと置かれていても誰も気付かないかもしれないよ。
博物館に展示されている標本みたい、って意味なんだけどね。(笑)

「Chicken」は、今まで観てきた「謎の生物」とは様子が違うよね。
ほとんど人間なのに、タイトルでは「にわとり」だって。
外国では「チキン」というと、「臆病者」や「腰抜け」と言った、かなり相手をバカにしたような単語としても用いられるからね。
作品では心臓部分が透けているから、余計にそう見えるのかもしれない。
SNAKEPIPEは、この作品はマコーマック自身、つまりは自画像かなと勝手に想像する。
腕は曲がり、手先も使えない状態。
八方塞がりで出口が見えないような、陰鬱な精神状態を表しているように見えるよ。
ROCKHURRAHの解釈では、頭と心臓部分が欠落していることから、思考と運動機能が停止している様子を表現してるのではないか、という。
そしてそんな状態を人間ではなく、「チキン」と呼んでいるのではないか、と推測するらしい。
なるほど、それも説得力あるなあ!(笑)
26.7 × 34.3 × 8.9 cmという大きさで、販売価格は$1,200、日本円で約13万2000円とのこと。
マコーマックの心象を伝えているような作品、他にも紹介してみようか。

「See You All in There」は、マコーマックに珍しく黒糸を使っているんだよね。
本に絡みつくように糸が増殖し、ついには塔が立ってしまったのか。
直訳すると「これらの中に全てがある」 というタイトル、本はメタファーだろうね。
SNAKEPIPEの勝手な想像を続けると、本は記憶や人生、つまりはその人の魂を表現しているのではないか。
糸を使って心象を作品にしているので、2019年9月に鑑賞した「塩田千春展:魂がふるえる」を思い出す。
マコーマックも塩田千春と同じように、苦しみに囚われているんだろうか。
トラウマや苦しみを作品にする女性アーティストって多いんだね。
35.6 × 27.9 × 20.3 cmというサイズの「See You All in There」は$1,800、日本円で約19万8000円だって。

どの作品もアート作品としてはお手頃価格じゃないかな。
ちなみにトップに載せた作品「Morgellons」が$10,000、日本円で100万を超すんだよね。
サイズも横幅が162cmという大型作品。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したいね!(笑)

レース編みという伝統的な手法を用いながら、アート作品を作るマコーマック。
ヨーロッパでは家庭的な要素があり、日本では先にも書いたように昭和には「ちょっとお上品」の象徴だったレースが不気味なモチーフに変身しているところがポイントかな。
どれほどまでに細かい作業なのか、そして「秘密の接着剤」の正体を知るためにも、実物をじっくり間近で鑑賞してみたいね!

SNAKEPIPE MUSEUM #52 Jody Fallon

【人間なのか動物なのか?もしくは怪物?!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回は久しぶりにSNAKEPIPE MUSEUMをお届けしよう。
最近は展覧会に赴く事が多くて、アーティストを検索する時間が取れなかったんだよね。
たまには、と検索を始めたSNAKEPIPEの琴線に触れたのがJody Fallonの作品だった。

Jody Fallon(ジョディ・ファロン)は1971年、アメリカ合衆国ペンシルベニア生まれ。
アート系の学校に行ったわけではなく、近所の暗い野原や山、森を探索しながら、孤独な感情を表現する方法を探していたという。
その後、アメリカ海兵隊として沖縄にも来ていたらしい。
兵隊経験のある画家って、他にいるのかな?
1996年から2000年の間、ファロンは重要な3人のアーティストを見つけることになる。
フランク・フラゼッタ、ポール・レア、ロン・ウィングらの作品を通して、求めていた表現手段を探し出したという。
2000年以降、週末にペンシルベニアのスタジオでSFのイラストや彫刻を、イーストストラウズバーグの博物館でフラゼッタのイラストを勉強していたという。
漫画家で芸術家のロン・ウィングに師事し、芸術と絵画の哲学を発展させ、自分のスタイルを確立したジョディ・ファロン。
地元ペンシルベニアでの個展やグループ展、ニューヨークのギャラリーで作品が展示されている。
ネットでも販売しているようで、10インチ四方(25cm)の小さな作品で$350、日本円で約36,000円とのこと。
ジョディ・ファロンは現在もペンシルベニアに住み、作品制作を続けているという。

ジョディ・ファロンが心惹かれたアーティストの一人、ポール・レアの作品がこちら。
1950年代から80年代までパルプ本の表紙デザインをしたり、PLAYBOYなどの雑誌のイラストも手がけていたという。
小説の書評を読んでから本を購入するというよりは、表紙の絵を見て興味を持つことが多いんじゃないかな。
読者の気を引く、「そそる」表紙を描くのは大変だけど面白い仕事かもしれないね。
サイエンス・フィクションの世界を支配した、とまで言われたポール・レア。
1998年に亡くなるまで、活動していたという。
ポール・レアの作品も素晴らしいので、いつかブログで特集してみようかな!(笑)

ジョディ・ファロンもきっとポール・レアの作品を観て、ワクワクしたんだろうね。
似た雰囲気の作品もあるけれど、独自のセンスが光る、ちょっと不気味な作品も紹介していこう。

怪奇小説、幻想小説の先駆者であるアメリカの小説家、H.P.ラヴクラフト全集の表紙を手がけたジョディ・ファロン。
モノクロームで描かれた不気味な怪物(?)は、ラヴクラフトの小説にふさわしいように感じるよ。
と、言いながらも、実はほとんどラヴクラフトを読んだことないんだけど。(笑)
目標にしているアーティストが得意にしていた表紙の仕事を引き受けることは、きっとジョディ・ファロンにとって特別な意味を持っていただろうね。
他にもクラシックな小説の表紙を担当しているみたい。
どれも「おどろおどろ」しくて、きっと怖いんだろうと思わせることに成功しているよ!
もし本屋で見かけたら、手に取ること間違いなしだね。(笑)

ジョディ・ファロンのHPには、シリーズ毎に作品が載っている。
「Science Fiction」のシリーズは、まさにポール・レアの後継者と言うべき作品群を観ることができる。
レトロ・フューチャーという、懐古趣味的な未来像を表す言葉の通り、懐かしさを感じてしまう作品なんだよね。
このまま小説の表紙になったり、70年代のプログレッシヴ・ロック系のアルバム・ジャケットになっているような雰囲気。
実際プログレのバンドが、どんなジャケットを使用していたのかよく分かってないんだけどね。(笑)

SNAKEPIPEの琴線に触れたジョディ・ファロンの作品は「Imaginative Realism」というシリーズなんだよね。
この言葉も相反する単語が連なっていて、想像したものをリアルに描いた作品、という意味だと理解したけど、どうだろう?
夕暮れ時なのか、逆光になった人物(?)が、大きく口を開け、叫んでいる。
植物に棘があるのか、手から血が流れているように見える。
非常に不気味な絵で、歯しか見えない黒い物体が、まるでフランシス・ベーコンが描く人物のよう。
「孤独な感情を表現する方法を探していた」という、ジョディ・ファロンの自画像なのかもしれないね?

この作品も怖いよね!
背景がオレンジ色なので、より一層ベーコンっぽく見えてくるね。
人間には見えない物体もいれば、悲しみにくれ叫んでいるように見える顔もある。
一体どんなシチュエーションなのか不明だけど、こんな青い物体に追いかけられたらさぞや恐ろしいことでしょう。(笑)
夢に出てこないことを祈るよ!

うひゃー!今度は溶けてるよ!
頭は頭蓋骨なのに、腕だけは筋肉組織やら血管が見えるようじゃない?
これも一種の「叫び」なんだろうね。
さっきまで普通に会話していたのに、ウイルスやゾンビに感染した途端、全くの別人になってしまうシーンって、ホラー映画によくあるよね。
かつては人だったのに、今はもう人間じゃない、という恐怖を表現したように見えてしまう。
ジョディ・ファロンはSFとホラー映画が好きに違いないよ。(笑)
あくまでもSNAKEPIPEの想像だけどね。

この作品を観た瞬間、ROCKHURRAHが「永井豪みたい」と言う。
ぐわっと開いた大きな口と乱杭歯。
何かを噛み砕いた後なのか、それとも腹でも刺されて口から血が流れているのか。
状況はよく分からないけれど、尋常な顔立ちではないよね。
そしてこちらが永井豪の「デビルマン」。
雰囲気似てるよね?
きっとジョディ・ファロンは、漫画やアニメも好きに違いないと推測!
永井豪の漫画は今でも海外で人気があるようで、2019年7月にはフランス政府から芸術文化勲章シュバリエを贈られていることを知りびっくり!
エロや暴力を描くことが多い永井豪は、かつて教育に不向きという理由でバッシングを受けていたと読んだことがあったからね。
時代や場所が変わると評価も変わるものなんだと改めて実感したよ。

最後はこちらの作品ね。 
24☓36インチという大きさは、61cm☓91cmなので、恐らく30号のキャンバスになるのかな。
キャンバスについて調べてみたら、Fサイズ(人物)とかPサイズ(風景)のような種類があるんだね?
高校時代、美術部に所属していたSNAKEPIPEも30号のキャンバスを使って油絵描いていたけど、どの種類だったんだろうね。(笑)
黒い頭巾をかぶった黒衣の髑髏は一体何等身あるんだ、というくらいのモデル体型。
地面にはひび割れが見えるので、後ろに積み上がった骸骨の養分を吸い込んで、地面から生えているようじゃない?
すっくと立ったその姿から邪悪な精神は垣間見えないけれど、このまま佇んでいるとは思えない。
この絵から、様々な物語が作れそうだよね!(笑)

有名な美術大学在学中から注目され、個展を開いて、卒業後は当たり前のようにアーティストになる人が多い時代。
今回紹介したジョディ・ファロンは、独学からスタートして、自ら師を探し出し教えを請い、表現を追求しているので、とても身近に感じられるタイプのアーティストなんだよね。
これからもダークで不気味な作品を発表してもらいたいと思う。
調べたところでは、恐らく日本でジョディ・ファロンについて書いている人はいないみたい。
実物を観てみたいと思うのは、日本でSNAKEPIPEだけなのかな。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #51 Hans van Bentem

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【作者本人とコスプレ彫刻作品】

SNAKEPIPE WROTE:

今回ご紹介するのはSNAKEPIPE MUSEUM初のオランダ人アーティスト!
ROCKHURRAHがオランダのバンドについて語っていたり、SNAKEPIPEもオランダのデザインで取り上げたことはあるけれど、アーティスト個人としては初めてみたい。
オランダといえば、鎖国していた江戸時代から日本とは関わりが深く、オランダからもたらされた学問など多大な影響を受けている国だよね。
画家では、ゴッホ、 レンブラント、フェルメール、モンドリアン、エッシャーなどなど上野の西洋美術館で個展が開催されるような世界的な有名どころが勢揃い!
SNAKEPIPEだったら上に挙げた画家の中では、鑑賞したいのはモンドリアンかなあ。(笑)
オランダという国についてあまり詳しくないと思っていたけれど、意外と断片的に見聞きしているみたいだね?

この方がHans van Bentem、ハンス・ファン・ベンテムと読んでいいのかな。
日本語の記事が見つからなかったので、それで堪忍してね。(笑)
間違って変換すると弁天、になってしまうので注意が必要だね! 
ハンス・ファン・ベンテムはオランダ・ハーグ出身の1965年生まれ。
現在、54歳くらいかな?
1988年、ハーグの王立美術学院を卒業。
ほう、オランダでは国立じゃなくて王立なんだね?
日本のサイトにも「デザイン留学」として紹介されている記事を読んでみたよ。
いくつかの学科があり、それぞれ課題を提出することや面接で留学の可否が決まるようで。
インテリアアーキテクチャの課題は模型の提出とテーマに沿ったドローイングの提出だって。
やっぱりデザイナーはある程度絵が描けないとダメなんだね。
製図ができれば良いのかと思っていたので、ちょっと意外だったよ。

話 を弁天さんに戻そう。
あ、ベンテムね!(笑)
ベンテム、どうやらパンクの影響を受けているようで、反骨精神を持った作品も多く見られるというので共感しちゃうよね。
1990年から大型の彫刻を制作していて、公共の場所に置かれている作品もあるという。
「Fruitface」と題された2010年の作品は、庭園の池に配置されているみたいね。
果物の顔、というと「だまし絵」のアルチンボルドを思い出すけれど、こちらは立体作品だし、頭から噴水出てるもんね。
よく観ると果物以外の、ネギとかかぼちゃも確認できるけど、まあいいか。(笑)
ちょっと不気味だけどユーモラスな作品を公共の場所に置くオランダという国は、アートに寛容なんだろうなと想像する。
子供の頃からこんな作品を目にしていたら、きっと価値観が違ってくるんじゃないかな。
もしかしたらそこらへんがデザインに秀でた人物や画家を多く排出している要因なのかもしれないね。

ベンテムの代表作はシャンデリアになるのかな。
様々なモチーフを作品にしているんだよね。
載せた画像は共産主義のシンボルとして、またはソビエト連邦の国旗にも描かれていることで有名な「鎌とハンマー」のシャンデリア。
これは皮肉なんだろうね。(笑)

こちらも同じニュアンスのカラシニコフ型のシャンデリア! 
先日の「ROCKHURRAH紋章学 ブック・デザイン編 3」でもロシア一色の記事を書いているけれど、またしてもロシア系(ソビエト連邦)モチーフを取り上げてしまったよ。
よほど好きなのかもしれないね。
ロシアといえば、先日プーチン大統領がアメリカの映画監督であるオリバー・ストーンからインタビューを受けている映像を少しだけ観たんだよね。
録画しておけば良かったと後悔するほど興味深い内容で、 プーチン大統領の頭脳のキレや会話のセンスなどを知り、人気の理由がわかったように感じたよ。
ロシア関連はもっと調べていきたいテーマだね!

話をベンテムに戻しましょう。 
つい脱線しちゃうんだよね。(笑)
ベンテムのファンとして記事を見つけたのが、なんとマドンナ!
記事に載っている画像によれば上のカラシニコフ型ではなくて、コルト型のシャンデリアを購入したみたいだね。
2017年に「収集狂時代 第7巻 Chanel編」 で、ヒールの部分がピストルになっているパンプスをマドンナが履いている情報を書いたことがあるけれど、この記事にも足元の画像が載っているよね。
ベルトのバックルにもピストルがあしらわれているのが見える。
マドンナも相当物騒アイテム好きなんだろうね。
それにしてもこんなシャンデリアを飾っておける広い家に住めて羨ましいよ。
SNAKEPIPEはカラシニコフ型を買おうかな。(笑) 

違うバージョンのライトもあるね。
はっきりわからないんだけど、顔のように見えるんだよね。
上の物騒アイテムとは違って、ユーモラスな作品。
左の奥に金ピカの骸骨がぶら下がっているのが見えるかな。
この作品も天井の梁から吊られているので、首をくくっているように見えてしまうのが怖いところ。
屋根裏みたいな場所なので特にそう感じてしまうのかも。 
鑑賞している時に、急に目の前の現れたらドキドキちゃう作品だよね。

骸骨アイテムをもうひとつ。
これは置物なのかランプなのか不明だけど、頭の上にとんがりがついている骸骨ね。
こちらは銀ピカで非常にSNAKEPIPEの好み!
イメージとしては、未開の地に建てられたトーテムポールかな。
敵方の首を取り、戦利品としてオブジェにしたような雰囲気なんだよね。
素材についても不明だし、テーマもよくわからないので勝手な想像だけど。(笑) 
パンク系のレコード・ジャケットにも使用されることが多いドクロなので、ここらへんにパンクに傾倒した嗜好が表れているのかもしれない。
オランダでパンクというと、どこらへんを聴いていたんだろうね?
ヨーロッパなので、例えばイギリスのパンクも、ほとんどリアルタイムで入っていただろうし。
ベンテムのアートを表現するのに使われる言葉が「Art for boys」(男の子のための芸術)や「Hard pop」(ハード・ポップ)だという。
ハードとポップという相反する言葉を組み合わせた表現は、デヴィッド・リンチが提唱した「Happy Violence」(幸せな暴力)に似ているよね。
どうしてもリンチに結びつけてしまうなあ。(笑)

敬愛するデヴィッド・リンチも「出たがり屋さん」の映画監督だけど、ベンテムも負けてないみたい。
一番上に載せたご本人のポートレイトをもう一度確認してね。
なんとベンテム、自分をモチーフにセルフ・ポートレイトならぬセルフ・スカルプチャー(彫刻)制作しちゃってるの。(笑)
実を言うとSNAKEPIPEが今回取り上げることにしたのは、有名なシャンデリアが目的じゃなくて、このスカルプチャーなんだよね。

これは19世紀の軍人をイメージしたコスチュームなのかな。
豪華な肩章やバッジが付いているところを見ると、かなり位が上の立場なんだろうね。
ベンテム将軍、といったところか?
5体並んでいる画像では中央に位置しているベンテム将軍。
キリッとしているし、実際にこんな軍人がいてもちっとも不思議じゃないよね。
コスプレ趣味の人も「やってみたい!」と思うタイプじゃないかな?
SNAKEPIPEもミリタリー大好きだから、やってみたいかも。

次のコスプレは、なんとゲイ!
裸に拘束具のようなベルトを巻き付け、かぶっているのは警察官の帽子?
このスタイルから思い出すのは「そうさ、YMCA!」でお馴染みのヴィレッジ・ピープル!
えっ、古い?(笑)
あのメンバーの中に似た服装の人がいたはず、と画像検索してみると、ほらいる!
一番左にいるレザージャケット着てる男性に注目。
ホースシューやバイカー・ムスタッシュと呼ばれるヒゲまでそっくりなんだよね。
1953年に公開されたマーロン・ブランドの「乱暴者 (原題:The Wild One)」に由来した、男らしさを強調するファッションということなのかな。
それにしてもベンテム、コスプレ大成功じゃない?(笑)

ベンテムの七変化は他にもあるんだけど、SNAKEPIPEがおったまげたのはコレ!
誰、このおばはん?(笑)
いやあ、ベンテムよくやるわ!
女装するにしても、このスタイルを選んだところが秀逸。
本当にどこかにいそうな感じだもん。
この画像だけ観ても意味不明だけど、本人の画像と並べると面白さ倍増だよね!
他にブッダとかピエロとか、元の素材は同じなのに衣装や化粧でまるで別人に見せるテクニックには脱帽だね!
この作品を実際に観たいよ。

日本ではオランダにあるエッシャー美術館のシャンデリアを制作したアーティスト、として紹介されているハンス・ファン・ベンテム。
他にもユニークな作品がたくさんあるのに、知名度は低めなのかな。
森美術館あたりで大規模な個展、開催して欲しいなあ!
上のベンテムおばはんと2ショット撮りたいんだよね。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #50 Pasha Setrova

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【人形はもちろん、背景もオシャレ!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のSNAKEPIPE MUSEUMはロシア出身のアーティスト、Pasha Setrovaを特集しよう。
検索していて一目惚れした作品を制作している女性だよ!
読み方はパシャ・セトロヴァで良いのかな?

現在はニューヨークで活動しているようだけど、子供時代はシベリアで遊牧民として生活していたこともあるという。
各地を転々とする生活を送っていたらしい。
アメリカに渡ったのは2011年というので、まだ8年しか経っていないんだね。
ロシアにいた頃から既に人形作家として評価されていたようだけど、詳しいプロフィールは分からなかった。
ただパシャ本人の写真は多く出回っていて、その多くは露出過多のもの。
これはSNAKEPIPEの推測だけど、ロシアよりアメリカのほうがヌードになりやすかったからアメリカに移住したのかもしれないね?(笑)
そしてそんな「見せたがり症候群」系のパシャが作る人形も、本人の嗜好が投影されたセクシーなタイプが多いんだよね。
早速紹介していこう!

まるで金子國義のイラストが人形になったようなレトロな雰囲気を持つ「Purple Winter」。
これは2014年の作品で、この時代はまだ球体関節人形ではなかったのかもしれない。
パシャの人形の特徴は、とにかくファッショナブルだということ!
ファッション雑誌の中から飛び出してきたような装いなんだよね。
人形制作だけじゃなくて、衣装に対してのこだわりが素晴らしい。
こちらの人形はスパンコールをあしらったガウンの上に毛皮のショールを付けた高級娼婦?
貴族というには化粧が「どぎつい」ので、夜の蝶を連想させる。
背丈が40インチ、およそ100cmあるというので、結構大きさがあるよ。

まるで研ナオコをモデルにしたのではないかと思ってしまう顔立ち!(笑)
「Smokey Eyes」も2014年の作品なんだよね。
見事なのは煙の表現。
毛糸のような素材を使用しているんだけど、どうやってこの形をキープしてるんだろうね?
実物を観てみたいよ。
この頃のパシャの人形は、全体的に細長い体型で、異常に長い首と手足が特徴なんだよね。
そのため人の形はしているけれど、人間ではない別の生物のように感じてしまう。
SNAKEPIPEが一目惚れしたのは人間に近くなって、カッコ良さが増した作品なんだよね!

外国のファッション雑誌を見ている気分になる一枚。
ちょっと不機嫌そうな顔立ち、長い脚を見せつけるようなポーズ。
日本人にはなかなかできない、ルーズなカッコ良さが上手く表現されているよね。
日本人がやると「だらしない」にしかならないからね。(笑)
髪の毛はドレッドヘアに見えるように毛糸が使用されている。
レザージャケットの細かい細工も秀逸で、素晴らしい!
彼女たちは「When I Close My Eyes Colour Fade To Gray」というタイトルがついている。
意訳すると「目を閉じると世界は灰色」って感じで、意味不明だけどね。(笑)
球体関節人形なので、様々なポーズを取らせることができるのも魅力!
彼女たち、欲しくなっちゃうね。(笑)

今度は双子に登場してもらいましょう。
2人共スタイルバツグン!
美しい金髪が印象的で、もし本当にこんなモデルがいたら大人気だろうね。
パシャの人形は、全体的に明よりは暗、昼間よりは夜、太陽よりは月といった雰囲気なので、健康的でスポーツが大好きな女性たちではない。
そこがSNAKEPIPEの好みにも一致するんだよね!
ミステリアスな双子も飾ってみたいな。

パシャの音楽の好みはよくわからないんだけど、人形の服装だけ見るとパンクが好きなのかもしれないと思ってしまうね。 
ショートカットで目の周りを黒く縁取った人形は、70年代オリジナルパンクを連想させる。
彼女の名前は「SELENA」。
何か辛くて悲しいことがあったから、涙で黒いラインが崩れたのか。
それとも初めからこのメイクアップにしたのか。
ビスチェにライダースジャケットを羽織り、挑戦的に見つめる視線の強さが良いね!
パシャの人形は全部欲しくなっちゃうよ。

続いてもショートカットの女性。
全身シースルーのワンピースとゴージャスなアクセサリーを身に着けている。
この画像には写っていないけど、実はバッグも揃えてあるんだよね。
細かいところまで作り込んでいて、本当に感心するよ!
実際に全身シースルーの服を着て出歩くことはないと思うけど、世界中で開催されているファッションショーに登場しても不思議ではない出来栄え。
例えばバービー人形も素敵な衣装を身に着けていると思うけど、パシャのダークなイメージとは違うよね。
そもそもバービー人形にショートカット・バージョンってあるのかな?(笑)

今度は犬と一緒にいるレザー・ワンピースの女性ね!
こんなにスタイリッシュな服装で散歩をするとは、なんともゴージャス。(笑)
犬の制作もするんだ、と驚いてしまったSNAKEPIPE。
利口そうで可愛いワンちゃんたちだよね。
パシャのサイトには数枚の画像が載っているんだけど、犬のシリーズの一番最後は、レザーの女性も首輪をして犬と一緒に四つん這いでポーズを取っている。
もしかしたら飼い主だと思っていたら、彼女も飼われていたのかしら?
そうしてみると、お揃いの青いスカーフもしてるもんね。
物語を想像するのも楽しいかもしれない。

最後はまるでドロンジョ様かキャットウーマンのようなセクシー人形ね。
かぶりものは取り外し可能なようで、仮面を外すとレトロなピンカールの黒髪が現れる。
装飾の細かさに圧倒されるよね。
パシャのページでは、好きなタイプの組み合わせで人形を購入できるシステムがあるんだよね。
今まで紹介してきたのはパシャが制作した作品だけど、例えばキャットウーマンの髪をロングにして、靴は真っ赤にして欲しいといったようなオーダーができるみたい。
洋服だけも購入可能なようなので、本当にお人形さん遊びができちゃうんだよね!

人形のサイズはオリジナルが高さ54cm、スモールタイプは43cm。
10cm小さく作るのは何故なのか不明だけど、お値段はどちらも$900、日本円で約98000円ね!
これは頭と全身の金額なので、ここにメイクアップや髪の毛、ファッションを決めて完成させて行くことになるね。
メイクアップに$80、体の彩色に$100、下着$35、靴$55、髪の毛$90、レザー・ジャケット$50、シャツ$50、レザー・スカート$50、手袋$25、帽子$45、サングラス$25。
これで総額$1505、約16万円也!
手が届かない金額じゃないんだよね。
真剣に購入を考えたくなっちゃうね!

どうやら偽物が出回っているようで、「証明書がない人形は買わないで」とパシャが訴えている。
中国で作られているようだ、とまではっきり書いてあるので間違いないだろうね。
表面だけなぞるような偽物には意味がないよ。
やっぱり買うならパシャのサイトから買うことにしよう。
さて、どの子にするかな。(笑)