大道・ブランコ・コーヒー

【東京都現代美術館告知用ポスターを大道風にアレンジして制作】

SNAKEPIPE WROTE:

11月3日は文化の日。
芸術の秋、ということで今週は芸術鑑賞の話をしてみたいと思う。

行ってきたのは東京都現代美術館
ここは周りにゆったりとした公園がある大変立地の良いリッチな美術館。(ぷっ)
設備もキレイで前からお気に入りの場所である。
企画展で興味がある時にはなるべく足を運ぶようにしている。
今回は森山大道氏とブラジルの写真家ミゲル・リオ=ブランコ氏の共同展示。
大道氏がブラジルを、ブランコ氏が日本を撮影している。
そして「ネオ・トロピカリア~ブラジルの創造力」というブラジル現代アート展も同時開催されている。
まずはブラジル現代アートから観て回ることにした。

いきなり「3階からどうぞ」と言われ、エスカレーターで昇る。
「これってまるでIKEA方式だよね」
とROCKHURRAH。
そうそう、IKEAも全部見て下さいとばかりに2階から回って歩かないと出口に出られない名づけて迷路商法!(笑)
それほど現代アートに明るいわけでもないし、ましてやブラジルのアーティストに知った名前もないためサラサラと流して観る。
色彩が鮮やかなこと、音楽も一緒に聴いてちょうだい、みたいな複合型も目立つ。
SNAKEPIPEが気に入ったのはオスジェメオスという双子が描いた絵画。
ちょっと漫画チックだけど、ポップな色に似合わない不気味さが良かった。
現代アート展にはよくあることだけど、いろんな種類の作品があるためなのか、順路が非常に分かり辛い。
係の人もきちんと説明しないし、矢印があるわけでもないので迷うことが多くちょっと不親切だなと思った。

続いてはメインの写真展。
まずは入り口に大道氏の縦位置モノクロプリントが「どうだ!」とばかりに8枚並んで展示されている。
これが素晴らしい!
いかにも大道氏の作品でとてもイイ感じだ。
期待に胸を膨らませながら会場へ。
ブラジルは極彩色で陽気なサンバの国という印象なのに、大道氏はあえて(?)全てをモノクロームで記録。
サンサンと輝く太陽に白い歯を見せるブラジリアン、という写真も見当たらない。
ラテン音楽の中にたまに息苦しくなるほど「せつない」旋律があるけれど、その雰囲気に近い気がした。
一番広くスペースを割いていたのは大きな印画紙(全紙より大きく見えた)で壁一面の人物写真。
57枚すべてが人、というのはかなり迫力があった。
大道氏は写真界のパンク、と思ってるSNAKEPIPEだけど(笑)今回の写真展に関して言えば
「ずっしりした荷物を預けられた気分」
という感じか。
とても良い写真展だったと思う。

一方日本を撮影したブラジルの写真家、ブランコ氏。
こちらは反対に全てカラー作品、サイズは6×6。
コラージュで見せる作品が数点と一枚ごとに見せる作品とが混ざっていた。
あれ?コラージュの中に使われてた写真がまた個別展示されてる!
こういう2回展示の「使い回し」、というのもアリなのかね?(笑)
ブランコ氏は「日本」ということにこだわり過ぎたような気がするな。
刀鍛冶場や浮世絵、のような写真は日本人の目から見ると「いかにも」になってしまう。
SNAKEPIPEの個人的な感想をいうと
「こんな見せ方があったんだ」
と目からウロコ的な発想や切り取りなどもっとブランコ氏らしさが欲しかった。
ちょっと残念だ。

そして最期に常設展を観る。
お馴染みの草間彌生リキテンスタインの作品には見慣れているせいか親しみを覚える。
SNAKEPIPEが非常に気になったのは「白髪一雄」という画家。
前にも観ていたのかもしれないけれど、今回観た中では一番迫力を感じた好みの画家だ。
日本でのアクションペインティング創始者とは!
猪の毛皮の上に赤黒い絵の具を塗りたくった絵が素敵だった。
もっとたくさんの作品を観てみたいな!

訳分からん、と言いながらもやっぱりアート鑑賞は楽しいね!
また面白そうな企画展に行きたいと思う。

真赤なバラにゃトゲがある

【元祖怨み系といえばこの人!梶芽衣子「怨み節」】

SNAKEPIPE WROTE:

先週のブログ「ターナー賞の歩み展」に登場した友人Mから新たな誘いがあった。
「九段下で開催している松井冬子展に行きたい」
とのこと。
それ誰?の問いに
「知らないのぉ~?」
と怪訝な顔をされてしまったSNAKEPIPE。
どうやら最近話題の日本画家で、しかもかなりの美人らしい。
スミマセン、あんまり雑誌やテレビを見ないもので。(笑)
で、ネットで検索すると出てくる出てくる!
うん、確かに本人がモデルみたいな「すごい美人」だ!
そしてその作品は「えっ、この人が描いたの?」とびっくりしてしまうほど残酷で、グロテスクな日本画。
確かに友人M、いいとこ目をつけてる!(笑)

更にMより「松井冬子の特集が再放送されるからDVDに焼いて欲しい」との依頼を受ける。
我が家は前述したようにあまりテレビを見ない家庭なのに、実はHDDレコーダーを持っているのだ。
「お任せあれ!」と簡単に引き受けたSNAKEPIPE。
録画はちゃんとできて、いざDVDに焼こうとすると
「ダビングに失敗しました」
なんだとぉー!
気を取り直してもう一回。失敗。もう一回。失敗…。
どうやらハードには問題なくても焼きこむ部分がイカれてしまったようで。
「永久保存版にするからよろしく」
というMの言葉がよぎる。
このままではMに渡すのはおろか、今後一切録画したものをDVD化することは不可能になってしまう。

ということで出かけてきましたY電機!(笑)
新しいHDDレコーダーの購入のためではなく目的はTVキャプチャである。
元々持っていたHDDレコーダーとパソコンの間にTVキャプチャをはさみ、エンコードすることでパソコンで動画編集とDVD化ができるようにしたわけ。
本当は新しいHDDレコーダーを買ったほうが楽なんだけれど、これがあると例えばビデオをDVD化することも可能!
二度と手に入らなさそうな映像も思いのまま!(笑)
帰宅後、ROCKHURRAHに接続してもらうとバッチリめでたくDVDが出来上がった!
さすが配線が得意なだけあるね!
HDDレコーダーの焼きこみ失敗という記事が意外と多かったので、パソコンでDVD焼けるタイプの人にはお薦めの方法である。
修理に出すよりも新たに購入するよりもお手頃だし、録画してた映像も消えないしね!

そして行って来たのが九段にあるギャラリーナルヤマ
九段はほとんど降りたことがない駅だけど、日本武道館やら靖国神社やら有名な建物がいっぱいある所なのね。
マンションの一室を改造してギャラリーになっているようで、想像していたよりも「こじんまり」していた。
一度に入場できるのは6名まで、と書いてあるのも納得である。
作品が「むきだし」で展示してあるので気を付けて、というような注意書きもある。
確かに額や仕切りがあるわけではなく、目の前にストンと掛けてあるのでかなり近付いて鑑賞することができる。
展示されていたのはデッサンなどを含めて7点ほど。
目の細かい絹地に描かれた細い線や、キレイにぼかされた色彩。
はみ出た内臓やうつぶせにされた死体がモチーフと書くと「おどろおどろ」しているが、実際に絵を観るとそれらは大変美しい。
日本画はほとんど観たことがないし、よく知らないSNAKEPIPEなので、手法やら技巧については勘弁して!(笑)
鉛筆で描いたデッサンをジークレープリント(複製版画らしい)やフォトグラビュール(写真製版を用いた腐蝕銅版画の一種らしい)にして14万円から30万円で販売されていた。
ナンバー付きは売り切れました、なんて書いてあったよ!すごいね。(笑)

テレビで特集されていた松井冬子の「痛みが美に変わるとき」を観て
「松井冬子が痛々しくてかわいそう」
と思ったSNAKEPIPE。
きっと心に深い傷を負い、恐らく復讐のために
「ほら、私はこんなに傷付いたのよ」
という絵を描いているんじゃないかな、と想像する。
そしてその傷は癒されないまま増殖や変身を繰り返しているような気がする。
特定の個人に向けられたメッセージなのか、男性一般、というような集合体に向けられたものなのかは不明だけど。
ネガティブなエネルギーを創造の糧にする、という姿勢はSNAKEPIPEも大きくうなずき理解できるが、
「ネガティブなままでいる」
というのはかなりストレスのたまる状態だろう。
そしてその作品が評価される、というのは画家にとって単純に嬉しい、とは言い切れないのでは?とも想像する。
それは一種の自傷行為—骨身を削り己自身を人前で暴露している行為と同等ではないかと思うから。

番組の中で東京大学教授の上野千鶴子氏と対談するシーンがあった。
上野氏は松井冬子の絵からほとんどの情報をキャッチしたようで、かなり的確な問答をしていたように思う。
「人は幸せになる権利がある」
「幸せになった松井さんの絵も観たいのよ」
なんてセリフをハキハキと語る上野氏に
「幸せになることがあれば」
と返答する松井冬子。
いつまで重たい十字架を背負って歩くつもりなんだろう?
いや、その十字架がなければ描き続けられない、ということなのかもしれない。
天に二物以上を与えられたあんなにキレイな人が不幸、なんて悲しすぎるよ!

ターナー賞の歩み展

【えっ?ターナー違い?(笑)ギルバート&ジョージ風に制作】

SNAKEPIPE WROTE:

六本木ヒルズにある森美術館で開催されている「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」を観て来たSNAKEPIPE。
長年来の友人Mからのお誘いである。
ターナー賞とは1984年よりテートブリテン(旧テートギャラリー)が主催する英国若手アーティストの登竜門として有名だそうで。
ちなみに応募条件はイギリス人、もしくはイギリスで活動する50歳未満の人、とあった。
日本の若手、というと35歳以下なんて指定がされている場合が多いので、外国では50歳以下はまだまだヤングなんだね。(笑)
そしてその名前の由来は19世紀のイギリスのロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーから取られている。
恐らく美術の教科書などで何点かの作品は観たことがある人が多いと思う。

SNAKEPIPEが何を一番に観たかったか、というとデミアン・ハーストの「牛」である。
今回の目玉であり一番話題と言っていいハーストの作品は日本初上陸とのこと。
映像はネット上でも簡単に探すことができるけれど、やっぱり現物を観たい!
「母と子、分断されて」というタイトルの2頭の牛が左右まっぷたつに切断され、ホルマリン漬けになっている作品はかなり衝撃的である。
右パーツ、左パーツを2つの強化ガラスに入れてあり、ガラスとガラスの間には少し隙間がある。
友人Mもハーストが目当てだったため、真ん中の通路に入っていいのかどうか監視員にまで聞きにいくほど。
入っていい、との答えだったため二人でガラスケースにへばりつくように鑑賞。(笑)
「すごいね、本当に真っ二つだ」
「これがタンだね」
などと言い合いながらなかなか内臓丸見えの合間から抜け出せない二人。
見入ってる間に背後から「げっこれがアート?」やら「気持ち悪い」なんて声が聞こえてくる。
友人Mとは「お金があったら買いたい作品だよね」と言い合ってたSNAKEPIPEだけど。

今回の展示は1984年から年代を追って、その代表となるアーティストの作品を一同に集めた展覧会だったので、ヴォルフガング・ティルマンスギルバート&ジョージなどSNAKEPIPEでも知ってるような作家の作品が並んでいた。
ただし「現代アート」なので首をかしげてしまう作品も多かったのは事実。
特にビデオ作品にはよく理解できない作品がほとんど。

SNAKEPIPEがとても気に入ったのはトニー・クラッグのTerris Novalisという作品。
これは測量計に動物の足を組み合わせた金属製の彫刻で、かなり大きさがある。
一見するとまるで砲台のようなデザインである。
インダストリアル好きの心をくすぐる重量感は
「ミシン用テーブルにいいかも」
とまた「部屋に持ち帰りたい」欲求へ。
どれだけ広い家じゃないとダメか、は二の次にして。(笑)

アニッシュ・カプーアの「Void #3」という空中にぽっかりと浮かんだ球体の前で眩暈を起こしそうになった。
自分が何を観て、どこにいるのか一瞬分からなくなってしまったのだ。
本当は立体物なのに、闇が目の前に迫っているように感じてしまう。
思想や理念をこね回す現代アートが多い中で、単純に「すごい」「不思議」を体験できるのは素晴らしい!
確か日本の方の「個人蔵」となっていたように記憶しているが、あの作品が家の中にあったら毎日頭ぐるぐるかも!(笑)

最後にもう一人気になった作家は「女装陶芸家」として有名な(?)グレイソン・ペリーだ。
女装した写真も展示されていて、どうやら女装姿も芸術行為に含まれているようだ。
そして陶芸作品はとてもキレイな壷。
がっ、近づいてよーく観ると描かれているのは性や暴力などのきわどいタブー系。
「All men are bastard」
のような言葉もたくさん書かれていて、遠くから観た時と近づいて観た時とで全く違う印象を持つ。
うーん、これも我が家にひとつ欲しい。(笑)

現代アートというと前述したように、理念や思想のような「難しい」と感じてしまう要素が多いけれど、SNAKEPIPE流の鑑賞法としては
「かっこいい!」
「ウチに持って帰りたい」
などの感覚的なものでいいかな、と思っている。
そして今回の展覧会は今まで全く知らなかった作家の作品が観られて楽しかった。
興味を持ったのが全て立体的な作品だったのが自分でも意外。
作りたくても作れないから尚更かな?(笑)

この展覧会にちなんで、とSNAKEPIPEが制作したのがタイトル下の画像。
有名なギルバート&ジョージの手法をマネて、更に「ターナー賞」にかけてTina Turnerの写真を使用。
えっ、ターナー違い?
こりゃまた失礼致しました!(笑)