草間彌生 わが永遠の魂 鑑賞

20170312 top【水玉衣装の木と看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

最近には珍しく2週連続で美術展を鑑賞してしまったSNAKEPIPE。
「行ぐぜ!Exhiibition」が続く時もあるんだよね。
「国立系か…」と二の足を踏んでいたのが新国立美術館 で開催されている「草間彌生 わが永遠の魂」展。
同美術館で開催されていたダリ展も行かなかったなあ。(笑)
「やっぱり今回は観に行こうよ」と長年来の友人Mからの誘いもあり、久しぶりに新国立美術館に向かう。

前回この美術館に来たのは2013年9月の「アメリカン・ポップ・アート展鑑賞」だったので、およそ3年半ぶり!
SNAKEPIPEが命名した「国立系(中高年の「にわか」アート好き集団)」に遭遇する率が非常に高いため、不快に感じることが多いことから敬遠してしまう美術館の一つなんだよね。
今回の草間彌生もきっと「国立系」多いだろうなあ。
覚悟を決めて行くしかないか!(大袈裟)

草間彌生についてブログに書くのは初めてだと思うけど、実は以前から展覧会には行ってるんだよね。
集大成のような素晴らしい展覧会だったのが2004年森美術館で開催された「クサマトリックス」 。
この展覧会に一緒に行ったのも友人Mだったな。
今回の展覧会との比較を話すことができて良かったよ!
そしてブログの記事にはしていなかったけれど、2013年森美術館で開催された「LOVE展」にも、草間彌生の作品が展示されていたんだよね。
その時撮影した写真がこれ!
発光した突起物に水玉模様、会場内には草間彌生本人の、抑揚のない朴訥とした朗読が聞こえるインスタレーション「愛が呼んでいる」。
誰もが一瞬で「草間彌生だ!」と分かる作品だよね。
2004年の「クサマトリックス」で鑑賞した「 水上の蛍」の時にも鏡が使用されていたけれど、この時も鏡張りの部屋でとてもキレイだったんだよね!
過去の展覧会について調べていて驚いたのが、森美術館は過去の展覧会情報をちゃんと残しておいてくれてる、ということ。
例えば映画などは配給会社が宣伝用にHPを作るんだけど、数年後に見ようとするとページ自体が削除されてるケースが多いんだよね。
過去についても知りたい場合もあるので、このような森美術館の姿勢は素晴らしいと思う。
やっぱり森美術館良いなあ!(笑)

いよいよ新国立美術館へ。
前売りチケットは購入していなかったので、まずはチケット買わないとね!
敷地内に入ってみてびっくり!
なんと美術館の敷地にある木が、すべて赤白の水玉でラッピングされてるじゃないの!
彌生カラーを全面に打ち出した演出、なかなかやるなあ。(笑)
チケット売り場は既に行列していて、彌生人気がよく分かるよね。
想像していた通り、高齢の女性が多い感じ。
今回は「国立系」と同じくらい、「本当にアート好き」な感じのオシャレな女性も目にしたので、少し安心する。

ここで今更?かもしれないけれど、草間彌生のプロフィールを簡単に紹介しておこうか。

1929年 3月22日、長野県松本市に種苗問屋の末娘として生まれる。10歳の頃より水玉と網目模様をモティーフに絵を描き始める。
1957年 渡米、シアトルでアメリカでの初個展開催。翌年ニューヨークに移る。
1959年 ニューヨークのブラタ画廊で初個展、5点のネット・ペインティングを発表。
1966年 個展「草間のピープ・ショー」で電飾と鏡を使ったインスタレーションを発表。
第33回ヴェネツィア・ビエンナーレで《ナルシスの庭》を展示。
1968年 自作自演の映画「草間の自己消滅」が第4回ベルギー国際短編映画祭に入賞、 そのほかの映画祭でも受賞。
1973年 帰国。活動拠点を東京に移す。
1983年 小説『クリストファー男娼窟』、第10回野性時代新人文学賞を受賞。
1993年 第45回ヴェネツィア・ビエンナーレで日本代表として日本館初の個展を開催。
2016年 『タイム』誌「世界で最も影響力のある100人」に選出。

「わが永遠の魂」HPから一部転用させて頂いたよ。
今回の展覧会では1968年の映画「草間の自己消滅」も観ることができたんだよね。
SNAKEPIPE個人的には、草間彌生が乗るのは馬より牛のほうが良かったように感じたけど?
そのほうが東洋っぽいんじゃないか、と思ったので。(笑)
1950年代にアメリカに渡って活動していた日本女性は、そんなに多くなかったよね。
個展を開いて評価もされて、未だに現役で活動しているとは驚きだよね!
そういえば新人文学賞を受賞した「クリストファー男娼窟」は昔読んだっけ。
あまり内容は覚えてないなあ。(笑)

HPに草間彌生からのメッセージがあったので、載せてみよう。

今ではそんなに驚かなくなったけど、髪の色がすごいよね。
現在87歳、それでも「まだまだ努力が足りない」って言ってる草間彌生。
随分昔に何かで読んだ発言では「創作意欲が湧いて湧いて困っているので、早く死にたい」 だったんだけどね。(笑)
根っからのアーティストなんだろうね。

今回の展覧会の最初の部屋が新作「わが永遠の魂」の展示だった。
2009年から描いているというシリーズ作品は、圧巻の一言!
そしてこの部屋は撮影がオッケーだったよ。
広い会場の3方の壁一面にスクエアの絵がみっしりと展示されているんだよね。
まるで南米の古代文明みたいな原始的な雰囲気もあるし、幻覚剤を使用したサイケデリック・アートのようにも見えるし。
もしくは邪心のない子供の落書きのようにも見えてしまう原色の世界に、思わず笑いがこぼれてしまう。
ファブリック・デザインにしても最高だよね、と友人Mと言いながら鑑賞。
こんな作品制作を続けている草間彌生のエネルギーとパワーに脱帽だね!

巨大な立体作品もあったね。
花と眼と水玉はインパクトあるね。
これも最初の部屋にあったので、撮影可能。
野外には巨大カボチャもあった。
ここも撮影オッケーだったんだけど、先日アメリカ、ワシントンの美術館で自撮りしようとした人がバランスを崩し、約9000万円のかぼちゃオブジェを破損した、というニュースがあったばかり。
撮影する際には気を付けないとね!(笑)

幼少時代からの作品の展示や、前述したように1960年代の映像作品も鑑賞することができた。
2017年の作品として、赤い水玉が描かれている(もしくは赤いシール?)数体のマネキンが展示されていた。
これって作品なの?と大笑いしてしまった。
水玉であればなんでも良いみたいだもんね。(笑)

物販コーナーはいつも楽しみにしているんだけど、毎度裏切られてしまう。
「わが永遠の魂」がせっかくスクエアのフォーマットなんだから、ハンカチにするとかスカーフとか。
そんな商品があったら嬉しかったのになあ。
ポストカードは販売されていたけど、クリアファイルや「ふせん」など、いつでも見かける商品ばかり。
あの手の企画する人、センスないよね。
美術館側とアーティスト側との意向もあるんだろうけど、全く購買意欲を促進しない商品作り。
困ったもんですなあ!

総合的にみると、2004年の「クサマトリックス」のほうが見応えがあったけど、「わが永遠の魂」では最新作が鑑賞できたのは良かったね。

90歳ともなると奥義を極め、100歳に至っては正に神妙の域に達するであろうか

画狂老人、葛飾北斎の言葉である。
「まだまだ努力が足りない」と話していた草間彌生にも重なる感じがするんだよね。
ここまでアートへの情熱にあふれて創作を続けているのなら、きっとこれからも新作を発表してくれるに違いないね!

カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命 鑑賞

【カッサンドル展のポスターを撮影。快晴ですな!】

SNAKEPIPE WROTE:

「この展覧会を観に行きたい」
とROCKHURRAHが言う。
なんて展覧会?
CASSANDRE?
カッサンドル、で良いのかな?
SNAKEPIPEは初耳だったけれど、ROCKHURRAHは以前より1920年代のアートに関心があったため、アーティスト名は知らなくて(読めなくて?)も作品は知っていたというのである。

カッサンドルの紹介文によると、どうやら沢木耕太郎の「深夜特急」のカバーにも、カッサンドルの代表作が使用されてるとのことだけど?
あっ、確かにこんな表紙だったよね!
知らないと言いながらも実は作品は目にしていたんだね。
トリミングされてるけど、確かにカッサンドルだ!(笑)
因みに「深夜特急」は友人の強い勧めで読んだことがあるんだけど、それより前に藤原新也を知っていたSNAKEPIPEには物足りなかったんだよね。
沢木耕太郎の著作も藤原新也にしても、ジャーナリズムを目指す人にとってはバイブルみたいな本になるんじゃないかな?
今は状況が変わってるのかもしれないけど。

ちょっと会場が遠いんだけど、と教えてもらったのが埼玉県立近代美術館
埼玉は全然知らないし、行ったことないよ。
と答えていたSNAKEPIPEだったけれど、なんと2012年12月「ベン・シャーン展 —線の魔術師—」を鑑賞した場所だったことを思い出した!
4年以上前だから忘れていても仕方あるまい。(笑)
そうだった、あの時は寒かったよねと話しながら、 北浦和に向かう。
この日は快晴、春の暖かさが感じられるでしょうという天気予報通りの気温の高さ。
少し風が強かったけれど、それでも前回の震える寒さとはまるで違っていたよ。

少し早めのランチを食べてから美術館に向かうことにする。
前回の北浦和と同じでまたもやイタリアンになってしまった。
お昼にするには早い時間なのに、いくつもの女性のグループが席を埋め尽くしているよ。
4年前のレストランでは女性の一人客が多かった、と記事にしていたんだよね。
もしかして北浦和って女性の割合が多いのかしら?(笑)

埼玉県立近代美術館は北浦和駅から徒歩3分程、しかも北浦和公園の中にあるという素晴らしい環境である。
もう少し風が穏やかだったら、お弁当を公園で食べてから鑑賞することもできたかもしれないね。
前回の北浦和は寒くて余裕がなかったけれど、今回は少し公園内を散策してみた。
3月に桜が咲いていてびっくり!
落ちている花びら見ても、桜に間違いないと思う。
とてもきれいだったね。(笑)
公園内には滝や池まであって、とても良い雰囲気。
近かったら、散歩に来たいなあ!

いよいよ「カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命」に向かう。
以前も書いたけど、埼玉県立近代美術館の通称はMOMASなんだよね。
最後のSは埼玉のS!
うーん、やっぱりダサい。(笑)
今回は常設展の鑑賞は後回しにして、元気があったら観ることにした。
現在観られる作品、というポスターにグッとこなかったからね。

展覧会の感想の前に、まずはカッサンドルについて簡単に書いてみようか。
アドルフ・ムーロン・カッサンドル(Adolphe Mouron Cassandre)は1901年ウクライナ生まれ。
本名はアドルフ・ジャン=マリー・ムーロン(Adolphe Jean-Marie Mouron)。
1915年にパリに移住し、美術を学ぶ。
バウハウスへの興味はその時に生まれたようだね。
最初はお金を稼ぐために始めたポスター制作が大評判となって、1920年代にはパリの街中にカッサンドルのポスターが貼られていた写真も展示されていたよ。
その写真を撮影していたのが、なんとアンドレ・ケルテス
その時代のパリには後に名を成す大勢のアーティストがいたからね。
さすがは憧れの1920年代だよね〜!(笑)
1925年にはポスター「Le Bucheron」が現代装飾美術産業美術国際博覧会でグランプリを獲得する。
1936年、ニューヨーク近代美術館(MOMA)にて回顧展が開催される。
1936年〜1937年ファッション誌「ハーパース・バザー」の表紙デザインを担当する。
1968年、パリのアパルトマンで拳銃自殺する。

ペンネームとして使用していたカッサンドルは、ギリシャ神話に登場する悲劇の預言者とされるカッサンドラから来ているという。
イタリアではカッサンドラを「不吉、破局」として日常的に使用している、とWikipediaに書いてあったよ。
1920年代には一世を風靡したカッサンドルが、自らの命を絶つという最期だったというのは象徴的だね。
「名は体を表す」という言葉通りになってしまったみたいだもんね。
その事実を知って非常に驚いてしまったSNAKEPIPE。
67歳になっても苦悩していたなんてね!

それでは早速カッサンドルの作品を紹介してみよう。
今回の展覧会は撮影が禁止されていたので、使用している画像は自分で撮影したものじゃないんだよね。
最近は撮影オッケーな場合が多かったので、非常に残念だったよ。

今回の展覧会は「ファッションブランド『BA-TSU』の創業者兼デザイナーである故・松本瑠樹氏が築いたコレクションを通してご紹介します」と美術館のHPに書いてあるんだよね。
BA-TSUとは、懐かしい名前だ!(笑)
70年代から始まるDCブランド・ブームの人気ブランドのうちのひとつだったよね。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHもBA-TSUの商品は持っていなかったけれど、当然のようにブランド名は知っていたよ。
そのデザイナーだった松本瑠樹氏というのは、ロシア構成主義やバウハウスに興味を持っていたようでコレクションを多数所持しているみたいだね。
カッコ良いと思う基準がROCKHURRAH RECORDSと同じ。(笑)
そう聞くとブランドとしてのBA-TSUはどんなファッションだったのか、今更ながら興味が湧いてくるよね。
もう遅いけど!
一番最初の画像は「L.M.S.The Best Way」1928年の作品。
鉄道会社用のポスターだと一目で分かるモチーフの選び方、その構図!
インダストリアル好きのSNAKEPIPEを刺激するね!(笑)

1920年代というのは様々な設備が整っていこうとしている段階だったんだろうね。
鉄道の歴史について詳しく調べたわけじゃないけど、恐らく大陸を横断する鉄道が庶民レベルになったからこそポスターになってるんじゃないかな?
左はパリ〜ブリュッセル〜アムステルダムを結ぶ鉄道である「Étoile du Nord」1927年の作品ね。

北に向かって走る、ということを示すために北極星を描いているんだね。
そして色彩の素晴らしさ!
線路を画面いっぱいに描く大胆な構図!
なんともスタイリッシュだよね。
部屋に飾りたくなっちゃうよ!
このポスターの場合はどうなのか不明だけど、カッサンドルのポスターには「1:1.618」の黄金比が使われているという記述があったんだよね。
黄金比ってなんだろう?

黄金比、と検索するとあっさり出てきたよ。

線分を a, b の長さで2つに分割するときに、
a : b = b : (a + b) が成り立つように分割したときの比a : b のことであり、
最も美しい比とされる。
近似値は1:1.618、約5:8

結局縦横比の話で、例えばパソコンのディスプレイでの解像度1920×1200などが黄金比に近くなるようだよ。
誰が最初に気付いたのか諸説あるみたいだから、ここでの言及はしないけれど、数学や幾何学とアートを融合させるというところがポイントだよね。
きっとこれはバウハウスやロシア構成主義でも行っていたんだろうな。
直感で己の感じたままに情熱で創造するアートとはまるで違うもんね。

右の画像はポーランドとアメリカの輸送船のポスター「Statendam」1928年の作品ね。
船のパーツをクローズアップで見せる手法とは、憎い演出ですな!(笑)
この色も素敵なんだよね。

インダストリアル好きのSNAKEPIPEが選ぶと、どうしても金属っぽいモチーフになってしまうよね。
今度はもう少し柔らかい雰囲気にしてみよう。
とはいっても、これもまた空輸便のポスターだね。(笑)
イタリア〜ギリシャ〜イラクから中国など世界各国に郵便が届けられることを一瞬にして分からせているんだよね。
「Air-Orient」は1921年の作品ね。
飛行機と鳩をダブらせて見せ、フォトモンタージュでエッフェル塔や南国っぽい景色で世界を表現している。
実際の手紙や品物だけじゃなくて、夢までも運んでくれそうな印象だよね。ポスターを「画家の個性を表現するためではない大衆のための芸術」と位置付けていたカッサンドル。
人が求めている物を熟知していて、それをポスターに取り入れる天才だったんだね。

カッサンドルの特徴の一つにタイポグラフィがあるんだよね。
ここまで5枚のポスターを載せてみたんだけど、それぞれ使っている書体が違うことに気付いただろうか。
カッサンドルは自ら書体を考案しているんだよね。
・ビフュール体(Bifur 1929年)
・アシエ・ノワール体(Acier Noir 1935年)
・ペニョー体(Peignot 1937年)
など、恐らく最も美しく見せるための書体を研究していたんだろうね。
右の画像「SAGA」は1927年の作品で、またもやインダストリアルになってしまったけれど、この書体と色のバランスも素晴らしいよね。
大きな木箱があることから、恐らくこれも輸送船と思われる。
カッサンドルはポスターにする前には一度油絵やグワッシュで描いてるんだよね。
その時にサインをしているみたいで、そのサインがそのままポスターになっても残っているみたい。
どのポスターにもサインがついてて、この時代の人が全員同じようにサインしていたのか、カッサンドルだけの特徴なのか不明だけど、商用のポスターとしては珍しい感じがするよね?
有名になる前からずっとサインしてるからね。(笑)

カッサンドルはファッション・ブランドとのコラボ作品も残しているんだよね。
左のトランプは、なんとエルメスとのコラボとのこと。
商品として販売していたのか、ノベルティのようなものだったのかは不明だよ。
恐らくエースや数字の書体は、自ら考案した書体なんだろうね。
そしてクラブのデザインが特徴的だよね。
カードの裏やカードのケースはどんなデザインだったんだろう?
エルメスではスカーフのデザインも行っていたようだね。

えっ!
このマークもカッサンドルだったの?
ファッション・ブランドであるイブ・サンローランのロゴ・マークのデザインなんだよね。
今でもこのマークは採用されているというから、カッサンドルの偉大な功績が分かるね。
化粧品のパッケージにも使われているというので、目にしている人は多いはず。
意外と身近なところにカッサンドルがいたんだね。(笑)

なんだか今回は画像の使用が多くなってしまったね。
最後は「ハーパース・バザー」で表紙を担当していた作品を紹介してみよう。
今回の展覧会にも作品が展示されていたんだよね。
ポスターの時と同じように、歩いている人を止めさせる効果が考えられていることが分かるね。
「あれ、なに?」と目を引くインパクトがある。
当時はどれくらいの雑誌が刊行されていたのか分からないけど、多くの雑誌の中から確実に手にとってもらうためには、目立つことだからね。
カッサンドルは広告の効果、宣伝の意味について熟知していたんだね。
その才能は生まれつきだったのかなあ。
非常に羨ましいと思うよ。(笑)

1910年代から始まるダダイズムやシュルレアリスムなどの芸術運動に興味を持つと、今から100年以上も前とは思えないような斬新でカッコ良い作品が数多く存在することを知る。
昔のほうが進んでたのかも、と思うこともしばしばあるし。
今回のカッサンドル展を鑑賞して、益々その思いが強くなったよ。
北浦和まで出かけて良かったな。(笑)

あー!タイムスリップできたら1920年代のパリに行ってみたいなあ!
アートの温故知新はこれからも続けていきたいと思う。

ワンダリング・ポジション展鑑賞

20170108 top
【会場入り口を撮影。赤と青の色彩がキレイだね!】

SNAKEPIPE WROTE:

ついに2017年がスタート!
今年もよろしくお願い申し上げます。

今年最初の「行ぐぜ!exhibition」はBankArt 1929主催の柳幸典「ワンダリング・ポジション」!
なんとこの展覧会を推薦してくれたのは、昨年本格ミステリ大賞を受賞された鳥飼否宇先生なんだよね!
当初この展覧会は2016年12月25日までの開催だったけれど、会期延長により1月7日まで鑑賞できることまで教えて頂いたのである。
これは早速行かなくては!(笑)
情報を得た翌日、1月2日に横浜へと向かったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
引きこもりが好きな2人には珍しく、素早い行動だね!
港が近い場所なので防寒対策をしたけれど、この日は驚くほどのポカポカ陽気。
マフラーや手袋が邪魔になるような気温の高さだった。
馬車道駅を降りて会場のあるBankArt Studio NYKに向かう。
ガランとした通りを地図を頼りに歩く。
SNAKEPIPEの方向音痴が少し感染してしまったROCKHURRAHと2人だから心もとない。(笑)
それでもなんとか会場に辿り着くことができた。
看板が出ているので間違っていないはずだけど、さすがに日本郵船株式会社の元倉庫だけあって殺風景な建物なんだよね。
これがなんとも好みにドンピシャ!(笑)
こんな場所で展覧会なんて入る前から期待が高まるね。

ここで少し、柳幸典について書いてみよう。(柳幸典HPより)

  • 1959 福岡県生まれ
  • 1985 武蔵野美術大学大学院造形研究科卒業(東京)
  • 1990 イエール大学大学院美術学部彫刻科(コネチカット州、ニューヘイブン、アメリカ)
  • 1993 イエール大学フェローシップ、美術学部優秀賞アジアン・カルチュラル・カウンシル、日米芸術交流プログラム第45回ベニスビエンナーレ、アペルト部門受賞
  • 1995 第6回五島記念文化財団美術新人賞
  • 2005- 広島市立大学芸術学部准教授

HPに載っている企画展への参加情報を見ると横浜美術館東京都現代美術館森美術館の名前があるんだよね。
どこかで柳幸典の作品を目にしたことがあるかもしれないけれど、アーティスト・柳幸典の名前を聞くのは今回が初めてだよ!
そんなことで現代アート好きを公言するなって?(笑)
いやいや、知っていることと体感することは別なので、これから知っていけば良いと思うし!

いよいよ会場に入る。
1月2日なので、さすがに客足はそれほど多くない。
それでも女性1人で来ている人を数人見かけて驚いてしまう。
混雑なくゆったり鑑賞できる空間と時間があるのは非常に好み!
慌てて来て良かったね!(笑)
一番最初に観たのは広い会場いっぱいに置かれた光る作品だった。
「Project Article9」というタイトルで、日本国憲法第9条を文節にして電光掲示していたのである。
意味や解釈はさておき、展示物として観て美しかった。
以前から自己流の現代アート鑑賞法について書いているSNAKEPIPEだけど、改めて言わせて頂くならば「好き!」とか「すごい!」とか「欲しい!」のような自分の好みの感覚で鑑賞すれば良いと思っているからね。
「うんちく」や「評論」は要らないと思う。
もちろん知ればより深い理解はできるだろうけど、直感的な好き嫌いで良いかな!
で、一発目の作品は「好き!」だね。(笑)
別の部屋には設計図(?)のような作品と、その設計図から制作された立体作品についての展示がされていたよ。

えっ?これで展示は終わり?
慌てて受付に駆け寄る。
「2階と3階にも展示があります。個人使用なら撮影もオッケーです」
上にも会場が続いていたんだね。
チケットと共にに手渡された会場の図面見れば分かるのに、うっかりしてたわい。(笑)
最近は撮影オッケーの展覧会もあるので嬉しいよね。
ピンぼけしないように撮らないと。(笑)

2階に向かうと、そこには国旗がたくさん展示されていた。
砂でできた国旗のようで、少しずつ崩れている。
チベットの砂曼荼羅みたいだなあ。
それにしてもチューブでつながっているのは何故?
「アリの巣みたいだよね」
と感想をもらしたROCKHURRAHが正解だったようで。
子供の頃に透明な板でアリを飼育するセットがあったみたいで、それに似てるんだって。
この国旗の作品は「Ant Farm Project」というシリーズだという。
本当にアリが中にいる(いた?)ってことなんだよね。
そのアリが移動することで国旗が崩れていく、現在進行系のアートということなのかな。
右のアメリカとロシアには政治的な意味を感じてしまうけれど、たくさんの国旗が並列している作品にはニセ国旗も数多く混ざっているようで面白かったな。(笑)
アリとは一体何の象徴なんだろうね?

同じフロアの展示では「Pacific Project」が楽しかった。
右の画像3分割されているんだけど、一番左が巨大プラモデルの制作前段階である枠、右上が設計図、右下が完成前の戦艦なんだよね。
恐らく枠にあるパーツを戦艦に取り付けることで完成するのでは?
ミニチュアの可愛らしさについても以前何かで書いたことがあると思うけれど、通常の大きさとは別の寸法になると違った印象になるのは面白いよね。
パーツの枠は高さ約3m程、戦艦が2.5mくらいかな。
巨大プラモデルには、さすがに男の子だったROCKHURRAHが大反応!
実際プラモデル作りをしていただけあって、じっくり鑑賞していたね。(笑)

「Fieldwork on Alcatraz」はアメリカにあるアルカトラズ島で制作した作品が展示されているブースだった。
アルカトラズといえば、即座に「アルカトラズからの脱出」(原題:Escape From Alcatraz 1979年)を思い出すよね!
実話が元になっている有名な脱獄映画は以前観ているよ。
「脱獄不可能」と言われていた元連邦刑務所で制作された3枚の赤い絵が、今回の展覧会のタイトルである「Wandering Position」なんだね。
直訳すると「放浪する立場」、意訳すると「揺らぐ存在意義」みたいな感じ?(笑)
アルカトラズとタイトルの相関については、人によって考え方が色々だろうね。

ついに最終フロアである3階に向かう。
「Icarus Cell」という展示は「こちらからお入り下さい」と書かれたトンネル入口から入場する。
外壁は右の画像にあるように、黒い壁が並んだ建造物なんだよね。
こわごわ中に入ってみる。
中は漆黒の闇の世界。
最初に目に入った明かりは太陽と思われる燃えるようなオレンジ色の球体だった。
タイトルにあるイカロス(イカルス)とはイカを喪失したわけではなく、イカが留守にしているわけでもない。(ぷっ)
太陽に近づき過ぎて、蝋でできた翼が溶けたため墜落死する、ギリシャ神話に登場する人物だという。
なるほど、それで太陽がここに出てくるわけね!(笑)
明るかったのは太陽が見えるところまでで、また道を進んで行くと暗闇の世界が待っている。
鏡を使った迷路みたいな感じなんだけど、あれ?
「自分の姿が写ってないっ!」
恐怖の声を上げるSNAKEPIPE。
「鏡の角度で見えないだけだよ」
冷静なROCKHURRAHの声で初めて気付く。
なあんだ、そうだったのか!(笑)
種明かしされたら納得なんだけど、暗い鏡の世界は異次元に迷い込んだようで、本来のトンネルの長さよりも長いように錯覚する。
まるで江戸川乱歩の世界だよ。
鏡の中に吸い込まれそうな感じがして、一人で歩いてたらもっと怖かっただろうな。
あまり読めなかったけど、何やら鏡に文章も書いてあったんだよね。
アトラクション型のアート作品、すごく楽しかった!
こういうタイプだけは、写真で観ても分からない作品だからね。

異空間から現実に戻ってきたはずだけれど、頭はまだぼーっとしていたようだ。
次はどっち?
何やら広い空間が見える。
柱と空間の色合いがとてもステキで、写真を撮っていた。
撮影しながら部屋に入ったSNAKEPIPEは、思わず声を上げる。

「Project God-zilla」と題された作品。
これはもう何も言葉が出ないよね。
広い空間に瓦礫の山が積まれている。
中にはギョロっとした不気味な目玉があちらこちらを眺めるように動いている。
タイトルにゴジラとあるので、この目玉はゴジラのもの?
ただし目には時々映像が映り込んでいる。
昭和の映像がいくつか確認できたんだけど、これも意味や解釈は無しにしておこうか。
全体が暗い中で、目玉だけが明るいので露出が難しかったよ。(笑)
ただ、ただ圧倒的で「すごい!」とその迫力に飲み込まれてしまったよ!

3階の2つの作品を観る(体験する)だけでも来て良かった展覧会だと思う。
2017年第1回目の鑑賞から非常に興味深かった!
これは幸先良いね。(笑)
情報教えて下さった鳥飼先生、本当にありがとうございました!

Alligatoo Boogaloo展鑑賞

【Lou DonaldsonのカバーをしたGSバンド、ホワイト・キックス】

SNAKEPIPE WROTE:

ちょっと気になる展覧会があるよ、と長年来の友人Mが知らせてきたのはいつだったのだろう。
情報収集能力に優れている友人Mは、びっくりするほどのアンテナを張り巡らせているようだ。
そして「行ってみたい」「観てみたい」情報をSNAKEPIPEに知らせるのである。
ROCKHURRAHも負けない収集能力があるので、2人から様々な情報が入るSNAKEPIPEは良いご身分だよね。(笑)
2人には本当に感謝しているよ!
そして友人Mとは、できるだけ多くの展覧会や映画を鑑賞することを約束している 。
実際に自分の目で観てから感想を言うことをモットーにしているからね!

今回友人Mから「面白そう」と提案されたのが、神田にあるTETOKAで開催されている伊藤桂司佐藤ブライアン勝彦による2人展「Alligatoo Boogaloo」である。
あれ?このタイトルって有名な曲「Alligator Boogaloo」?
あっ、「Alligator(アリゲーター)」が「Alligatoo(ありがとー)」になってるわけね!(笑)
ということで今回は寺尾聰がいたGSバンド「ホワイトキックス」のバージョンを冒頭に載せてみたよ! 

ギャラリーも初めて聞く場所、2人展の2人の名前も初耳だけれど、提示された作品はなかなか面白そうだった。
左の画像がその作品なんだけど、キレイで不気味で不思議な雰囲気!
これは好みのタイプだね!(笑)
SNAKEPIPEだから蛇には目がないし。(うそ)
行ってみたいけれど、ギャラリーのオープン時間は16時からのよう。
TETOKAは「カフェとギャラリーを併設したオルタナティブスペース」とのことなので、お茶を飲んだりお酒を片手に作品鑑賞を楽しんでね、という渋谷にあるアツコ・バルー方式みたいだね。
ワンドリンク制というところも同じだし。

夕方からのオープンなので、怪しい3人組には珍しく待ち合わせ時間を18時に設定する。
夜に初めて行く場所を探しながら歩く、というのは大変なことだよね。
TETOKAのHPにはJR神田駅から徒歩5分といった簡単な説明と地図だけが載っていて、何番出口を出て左折する、といったような詳細については皆無!
自他共に認める方向音痴のSNAKEPIPEは、1人だったらきっと永遠に辿り着けないだろうね。(笑)
SNAKEPIPEより少しはマシといったレベルのROCKHURRAHにも難しいかもしれない。
ここで登場するのが方向感覚に優れた友人M!
一度行った場所は記憶しているし、初めての場所も優秀な嗅覚と抜群の勘の良さも手伝い、迷うことが少ないのである。
今回も「あっちの方向!」「2本目を左折!」 などと適切な指示を飛ばし、怪しい3人組は無事にTETOKAに到着したのである。

ガラガラと音を立てて引き戸を開ける。
引き戸がお店のドアとは、これまたレトロ!
紙の倉庫だった古屋をリノベーションしたと書いてあるけれど、どこまで手を加えたんだろう?
とてもオシャレな空間が広がっていて、近所にこんなカフェがあったら良いなと思わせる居心地の良さ。
古道具も扱っているようだけれど、どこからどこまでが売り物なのか判別できない。
本や小物が壁一面を飾っていて、雑多だけれどお店の人が好きな物を集めている感じが分かる。

「展示をご覧になるのでしたら飲み物、注文頂かなくても良いですよ」
TETOKAの女性が言う。
いえいえせっかくですから、と3人揃ってアルコールを注文。
グラスもレトロでとてもかわいい。
空きっ腹には効きますなあ。(笑)
ROCKHURRAHと友人M、そしてSNAKEPIPEという3人組は、恐らくかなり印象に残るチームなのではないだろうか。
「怪しい3人組」と命名するのも、決して間違っていないように思う。
今回はこじんまりしたギャラリーだったので、TETOKAのにこやかな女性も忘れないだろうね。(笑)
しばらく談笑した後、店内に飾られている作品を観ることにする。

右の画像を「まるでSNAKEPIPEが描いた絵のよう」と評したのは友人M。
確かに!
ここまで明確な意図の絵ではなかったけれど、友人Mの言いたいことは分かるな。
シュルレアリスムという言葉や運動について知らなかった頃、こういった雰囲気の絵を描いていたっけ。(遠い目)
油彩というのがせっかちなSNAKEPIPEには合わなかったけどね!
乾くのが遅くてイライラしちゃうんだよ。(笑)
右の作品にはシュルレアリスムも感じたけれど、きっと影響を受けているだろうなと思ったのは横尾忠則かな。
似た雰囲気の作品があったから余計にそう思ったんだけどね。

TETOKAでは「PHOTO SNS WELCOME」と最初から明記されていたので、断ることもなく撮影させて頂いた。
先日「NAVERまとめ」でも問題になった著作権の問題だけど、SNSやブログ等で取り上げるというのは、お店側から見れば宣伝だもんね。
良薬は口に苦し?あれ?
諸刃の剣?ん?
用は使い方次第で毒にも薬にもなるってことだよね。(笑)
骸骨が裸体美女に襲いかかろうとしている作品、天井近くでじっくり鑑賞できなかったのが残念!
ROCKHURRAHに頼んで、もっと近づいて撮影してもらえば良かったなあ!

上に載せた迷彩服の男の絵も戦争をテーマにしているけれど、右もアラブ系の顔を隠した戦士(?)達を記念撮影したような作品だよね。
不安とか恐怖といった暗く陰鬱な印象で、とても好きなタイプだよ。(笑)
今回の展示は伊藤桂司と佐藤ブライアン勝彦がコラボした作品と、ソロとして制作した作品とが混ざっていたようで、「コラージュ」をテーマにしているという。
意図的になのか、今までもずっとそうだったのかは不明だけれど、全ての作品にタイトルがない!
タイトルがないことは「観る人に自由を与える」ことにもなるけれど、「全くヒントがない」ということになるんだよね。(笑)
そのため右の作品の作者の意図は不明のままだよ!

ーマである「コラージュ」を全面に打ち出していたのが左の作品。
大きさはA4サイズ程度だったかな。
実は最初に載せた蛇の作品もフォト・コラージュだったんだよね。
大きさも同じようにA4ほど。
1910年代から始まるダダイズムで、多く取り入れられたのがフォト・コラージュだった。
この時代のフォト・コラージュは大変素晴らしくて、 ROCKHURRAHはマックス・エルンストのコラージュ作品をパソコンの壁紙にしているほどの大ファン!
2013年8月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #22 Hannah Hach」で取り上げたのはドイツのダダイストだったハンナ・ヘッヒ。
ハンナ・ヘッヒはフォト・コラージュが得意で、素晴らしい作品をたくさん残しているんだよね。
そのブログの中でSNAKEPIPEは書いている。

素材や材料の違いだけではなく、その時代の空気感を纏い、情熱の持ち方が作品に反映され、重要なエッセンスになっていたのではないだろうか。
特に戦争中の作品などは「これが最後になるかも」といったような切迫感を持ちながらの制作には鬼気迫るものがあったに違いないだろう。

なんだか評論家みたいな文章だよね。(笑)
ダダイズムのフォト・コラージュの魅力について考察してみたんだけどね。
今回鑑賞したフォト・コラージュには当然のように「時代の空気感」や「切迫感」はない。
そして先人達が既に素晴らしい作品を発表しているので、新たなる驚きを鑑賞者に与えるのは非常に難しいだろうと思う。
そんな困難を乗り越え(?)上手くまとまった作品だな、と感じた。
日本でもこんな作品を作る人がいるんだ、という驚きがあったよ!
あわわ、京都造形芸術大学教授に対してSNAKEPIPEが言うのは失礼だったね!(笑)
全作品数は20点程で少なめだったけれど、鑑賞できて良かった展覧会だった。

2016年のブログはこれで終わり。
今年も1年が速かったなあ!
2016年のニュースといえば…。

1:大ファンの鳥飼否宇先生が本格ミステリ大賞を受賞されたこと!
鳥飼先生、おめでとうございました!
これからも応援していきます。

2:長時間並んで伊藤若冲展を観たこと!
2015年から楽しみにしていた展覧会が、まさかあんなに大人気になるとは予想していなかった。
伊藤若冲は素晴らしかったので鑑賞できたのは嬉しかった。
残念だったのはニュースにもなった大行列!
あんな経験はもうしたくないなあ。

3:そして今回の「 Alligatoo Boogaloo展」鑑賞の後、「丸五」のとんかつを食べたこと!(笑)
「丸五」とは秋葉原にある、とんかつ好きにはお馴染みの行列ができる店として有名なのである。
美味しいお店情報も収集するのが得意な友人Mは、以前から「行きたいお店」として提案していて、今回やっとその約束が果たせたんだよね!
実はSNAKEPIPEは以前行ったことがあり、その味に感動したことがある。
「丸五」、相変わらず美味しかったなあ。
並んで待つ時間はあったけど、食べられて良かった!(笑)

4:もう一つ忘れちゃならないのは、このブログを丸10年続けていること!
毎週欠かさず10年だもんね。
自画自賛だけど、これはすごいことですよ。(笑)
2017年も相変わらず趣味の話題満載で書いて行く予定なので、よろしくお願いします!
では皆様、良いお年を!