好き好きアーツ!#10 Fernando Meirelles

【3作品のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

今回の好き好きアーツはブラジルの映画監督、フェルナンド・メイレレスについて特集してみたいと思う。
アメリカやヨーロッパの映画には馴染みがあるけれど、南米の映画監督で即答できるのはアレハンドロ・ホドロフスキくらいだろうか。
アジアの監督についても有名人くらいしか知らないし。
意外と範囲が狭いSNAKEPIPEなんだね。(笑)

簡単にフェルナンド・メイレレスについてご紹介。
フェルナンド・メイレレスは1955年サンパウロ生まれ。
消化器病学者の父と一緒にアジアや北アメリカなどに赴き、様々な文化や土地に触れる。
12歳の時にプレゼントされたムービー・カメラで映画を撮り始める。
サンパウロ大学で建築を学んだ後、テレビ局で働き、CMディレクターになる。
1997年にパウロ・リンスの本を読み、映画化する。

ということで、メイレレスはずっとテレビの広告業界にいたみたい。
映画監督としては2002年がデビューだけど、ずっと映像の仕事をしてたんだね。
これを知ってなるほど、と納得。
その頃の経験がメイレレスの映画の特徴になっているように思えるからね。
メイレレスは今まで3本の映画を監督している。
順番にまとめてみようか。
※ネタバレの部分があるかもしれないので、未見の方は気を付けて下さい。


メイレレス監督の処女作は「シティ・オブ・ゴッド」(原題:Cidade de Deus 2002年)。
前述したパウロ・リンス原作の同名小説の映画化で、リオ・デ・ジャネイロのストリートチルドレン達の実話を基に描いた作品である。
映画の印象としてはデニス・ホッパーが監督した「カラーズ」(1988年)や2pacが出演していた「ジュース」(1992年)の雰囲気に近いかな。
スラム街で生まれた子供が成功するためには悪事に手を染めるしか方法がない、という物語。
盗む、騙す、脅す、殺しても奪う。
しくじったら自分が殺されるだけの短い人生。
本当だったら小学校に通うような年齢の子供が銃を手にする。
麻薬に手を出し荒稼ぎをする。
縄張り争い、仲間割れ、殺し合い、と権力を手中に収めた後も抗争は続く。
また新たな子供達が同じことを繰り返し、その歴史は絶えることがない。

「シティ・オブ・ゴッド」が単なるギャング系の映画ではないユニークな点は、そうしたギャング達だけに目を向けたのではなく、フォトジャーナリストを目指していた子供(ブスカペ)が主役になっているところである。
子供の頃に殺された少年を撮影している場面に出会い、それ以来カメラの虜になってしまうブスカペ。
新聞社に入り下働きをするブスカペにチャンスが訪れる。
ブスカペが撮影したギャング達の集合写真が新聞の一面に採用されるのだ。
観ていてとても誇らしい気分になり、嬉しくなってしまった。(笑)
自分の撮影した写真が認められたような感じがしたからね!
最後にブスカペは感情を殺し冷酷な目で、殺害現場の撮影を続ける。
ブスカペもプロのフォトジャーナリストになったのかな、と考えさせられるシーンだった。

この映画がメイレレス監督の処女作だけれど、元CMディレクターという経歴の持ち主だけあって、スピード感のあるカットやストップモーションが新鮮だった。
CM制作って短い時間の中で鑑賞者に商品の説明をして購買意欲を高める、という職業だもんね。
その技術が生かされていたせいか、映像がとても解り易くて観客に親切な映画なんだよね。(笑)
悲惨な話の中にもユーモアを感じることができたのも、もしかしたらこのカメラワークのおかげかもしれない。
制作費が少なくても、出演者に大物俳優が起用されていなくても、こんなにパワーのある映画ができると証明してくれる監督って素晴らしい!
ロバート・ロドリゲス監督の処女作を観た時と同じくらいの衝撃を受けてしまった。
メイレレス監督に興味が湧いたので、2作目も鑑賞することにする。


2作目の「ナイロビの蜂」(原題:The Constant Gardener 2005年)はイギリス人作家ジョン・ル・カレの同名小説の映画化である。
黒人男性と白人女性が恐らく夫と思われる白人男性に見送られ、湖で車が横転するシーンから始まるこの映画。
誰がどういう状況で事故に遭遇したのかも分からない。
冒頭に映画途中の映像を持ってくるところは前述の「シティ・オブ・ゴッド」と同じ手法である。
一体あのシーンは何だろう、と考えながら鑑賞を進める。

どんな時でも自分が納得するまで物事を徹底的に追求する意志の強い女性、テッサ。
いくら個人主義が徹底している欧米諸国でも、テッサくらい正義漢丸出しで、はっきりさせないと気が済まない女性は珍しいのでは?
そのテッサに議論をふっかけられたことが元で知り合いになる主人公ジャスティン。
外交官であるジャスティンがナイロビに転勤になる時、まだ知り合って間もないテッサが「私も一緒に連れて行って欲しい」と頼む。
困惑するジャスティン。

場面はいきなり原色が鮮やかなケニアのナイロビになる。
妊娠中のテッサが映り、やっぱり一緒にナイロビに行ったんだなということが判る。
ジャスティンとテッサは結婚し、幸せな家庭を築いているように見える。
が、テッサ宛のメールを偶然見てしまったジャスティンは、テッサが自分の知らない何事かに関わっていることを知ってしまう。
スラムの医療施設を改善する救援活動を行っていたテッサは、2日の日程でナイロビからロキへ旅立つ。
ここでやっと冒頭のシーンになる。
一緒に活動をしている黒人医師アーノルドとテッサを、夫であるジャスティンが見送っていたことがようやく判る。
そして次に車が横転するシーン。
テッサは殺されていたのである。
一体テッサに何が起こったのか?
何故殺されなければいけなかったのか?
妻の死に疑惑を感じたジャスティンは、真相を究明するために調べ始める。
タイトルの「ナイロビの蜂」の意味もここで解るのである。
そこにはある巨大な陰謀が隠されていた…。

「知ったら殺される」という本当にありそうな話でとても怖かった。
どうして夫にだけでも真相を告げなかったのか、と何度も思ってしまったSNAKEPIPE。
夫にも危険が及ぶかもしれない、と考え何も言わなかったのかもしれないけれど、妻が殺害された理由に全く心当たりがない残された夫にとってはたまらないよね。
真相究明に奔走しているジャスティンが、亡き妻との楽しかった思い出を脳裏に蘇らせたり、妻の幻影と会話するシーンはせつなかった。
そしてあのラスト。
他に選択肢はなかったのだろうか?

「シティ・オブ・ゴッド」にもスラムが出てきたけれど、今回の「ナイロビの蜂」にも同じようにスラムの描写がある。
貧困で不衛生な環境なのにもかかわらず、子供たちは元気いっぱいに笑っている。
キラキラした子供たちのキレイな目。
メイレレス監督はスラムの描写が得意ね。
スラムの中で逞しく生きる人間を描きたいんだろうな。

アフリカの現状、夫婦の愛、製薬会社の陰謀などの要素が混ざり合い、「ナイロビの蜂」の映画ジャンルを特定することは難しい。
サスペンスでも、恋愛モノとして観てもいいと思うけれど、どの角度から鑑賞しても考えさせられる重厚な映画だと思う。


メイレレス監督の3作目は「ブラインドネス」(原題:Blindness 2008年)。
ポルトガルの作家ジョゼ・サラマーゴの小説「白の闇」を映画化した作品である。
こうしてみると、メイレレス監督は3作共小説を元に映画を作っているんだね。
どれも原作を読んでいないSNAKEPIPEなので、映画との相違やら表現についての言及ができないのが残念!

映画はある日本人男性が運転中に突然目が見えなくなるところから始まる。
視界に映るのは白一色だけの世界。
そしてその症状は診察をした眼科医、日本人男性の妻、運転席から男性を助けた通りすがりの人など日本人男性と関わった人々に次々と感染していく。
急激に増える感染者は施設に収容され隔離されてしまう。
感染者が増加しているのも関わらず、施設内にはビデオメッセージが流れるのみで介護の支援もなく、更に人数分の食料すら配給されなくなっている。
そんな時、感染者の中から施設内を支配しようとする男が現れる。
「王」を名乗る人物は食料を管理し、引換えに金品や女性を要求する。
服従するしかない他の感染者達。
しかしその独裁社会は長く続かず、反乱が起きる。
火が回った隔離病棟から逃げ出した感染者達は外の世界に向かうが…。

映画は3部構成になっている。
1:謎の失明疾患の感染が広がる様子
2:隔離病棟内部について
3:隔離病棟外の状況
それぞれのパートごとに恐怖が描かれているのだ。

第1部では、原因不明の失明に恐怖を感じた。
五感のどれを失っても困るけれど、SNAKEPIPEにとってはやっぱり視覚を失うことが一番怖いと思うからね。
急に見えなくなる、と想像しただけで心臓がバクバクするほど。
シャマラン監督の「ハプニング」やダニー・ボイル監督の「28日後」も同じように感染が広がっていく映画だったけれど、「ブラインドネス」は意識や感覚はそのまま残っているところが余計に性質が悪い。
失明を自覚し、受け入れて生きなくてはいけないからね。

第2部、隔離病棟のシーンで怖かったのは人間の欲。
独裁を始める「王」は支配欲、物欲、食欲、性欲とすべて「欲」が付く物を求める。
無法状態になった施設内で欲望の赴くまま行動する「王」とその仲間。
ルールのない世界ではこんな風になっちゃうんだ、と人間の卑しさを目の当たりにすることになる。
秩序や社会性を失い、本能を剥き出しにした悪知恵の働く動物になってるから手に負えないよね。
人が人として生きるとは、と考えさせられる。
隔離病棟内部の話は非常に不快だった。

第3部は隔離病棟から出た外の世界で遭遇する恐怖。
ネタがバレバレになるからここからはあまり書けないんだけどね。(笑)
スーパーマーケットの描写はまるでゾンビ映画!
ワラワラ、ヨタヨタと近寄ってくる人の群れ。
ここでも怖いのはやっぱり人間だった。
自分の生存のことしか考えない、エゴイズムしかない人間達。
ここも隔離病棟と同じ本能の世界になってたんだね。

メイレレス監督は、隔離病棟場面と最後の外の世界を得意のスラム的描写で見せた。
元々はスラムじゃないのに、スラム化しちゃった映像は非常にリアルだった。
人目を気にしなくなると、本当にあんな状態になりそうだもんね。
人から見られることを意識するのは大事なことなんだね。(笑)

「ブラインドネス」には配役の名前がなく、「最初に失明した男性」のような呼称しかないのがユニークだった。
メイレレス監督は「それまでの過去は重要ではなく、目が見えなくなるという状況下で、人物たちが現在進行形で体験することが重要」だったために役名を排除したとインタビューで答えている。
役名を指定しないことで匿名性が生まれ「誰にでも起こることですよ」と言われているような気もする。
この映画に日本人俳優が出演していて、時々日本語が使われていたので余計にそう思ったのかもしれない。
それにしてももう少し演技力のある俳優はいなかったのかな?
日本人俳優のキャスティングに少し不満を感じたSNAKEPIPEだった。

映画は何が原因で失明したのか、どうして眼科医の妻だけが感染しなかったのかなど不明のまま終わってしまう。
この映画にはいくつもの「何故?」「どうして?」が存在しているけれど、そういった謎を解明することが目的の映画ではない。
メイレレス監督は「何かしらの物事が引き金となって、人間が獣のような原始的な本性を露わにする」ことを描きたかったようだからね。

メイレレス監督の次回作は性道徳を問う問題作らしい。
きっとまた「人間の本性」について語られるんだろうな。
新作が待ち遠しいね!

好き好きアーツ!#09 Dennis Hopper

【いかにもホッパーらしい写真だよね!イージー・ライダーより】

SNAKEPIPE WROTE:  

先日「めざましテレビ」を観ていたら、「デニス・ホッパーさんハリウッド殿堂入り」なんてニュースをやっていた。
おめでとう、我らがデニス!(笑)
その時に少しだけ映像も公開されていたけれど、どうやらデニス・ホッパーはガンで余命わずかなどと言われているらしい。
ひどく痩せて痛々しくまるで別人。
病気になっていたことも知らなかったし、まさかあの「ハリウッドの反逆児」だったホッパーが殿堂入りを果たすというのもびっくりした。

思い返すとホッパーの出演、もしくは監督した映画はかなり観ているなあ。
それに「狂気からの帰還」という伝記本まで所持してるし!
自分でも意識しないまま、実はよく知っている俳優の一人のようである。
デニス・ホッパーには主演作ってほとんどないけれど、個性派俳優として記憶に残る作品が多いんだよね。
今回はそのデニス・ホッパー出演、もしくは監督した印象に残っている映画について書いてみようかな。

今回の「ハリウッド殿堂入り」の時も「イージー・ライダー」で有名なホッパーさん、と言われていたようにやっぱりホッパーと言えば「イージー・ライダー」が代表作になるのかな。
イージー・ライダー(原題:Easy Rider 1969年)はデニス・ホッパーが監督し自ら出演。
低予算作品なのに世界中で大ヒットしたインディーズ映画の先駆けである。
デニス・ホッパーの存在感はもちろんだけれど、恐らくハーレー好きなら影響を受ける人物はピーター・フォンダ演じるキャプテン・アメリカ!
バイクで自由きままな旅をする、なんて当時の若者じゃなくても皆が憧れるスタイルだと思う。
ただし現実は甘くないよ、というラストだったけど。
この映画にもドラッグがたくさん出てくるけれど、その前年に出演している「白昼の幻想(原題:The Trip 1967年)」も原題が示している通りに、LSDを飲んだ時の視覚変化を映像化したような作品だった。
この映画の監督はロジャー・コーマン。
ジャック・ニコルソンが脚本で、ピーター・フォンダと共に出演という「イージー・ライダー」につながるほとんど同じ人員で撮影。
かなり昔に観た映画なので詳しくは覚えてないけれど、ラリったまま笑い町に繰り出していた様子と万華鏡のような映像だけ記憶している。
デニス・ホッパーがどんな役だったのか忘れてるなあ。(笑)

そんなドラッグ系映画に出演してるだけじゃなくて、実生活でも薬物中毒になっていたと前述した「狂気からの帰還」に書いてあったような。
地獄の黙示録 (原題:Apocalypse Now 1979年)」の時もまだまだ中毒状態だったようで、セリフを覚えられなかったとWikipediaに書いてある。
ランブルフィッシュ (原題:Rumble Fish 1983年)」ではミッキー・ロークとマット・ディロン兄弟のアル中の父親役だった。
静かな役だったけど、妙に目がすわってて本当にアル中みたいに見えたもの。(笑)

ホッパーが完全に復帰したのは「ブルーベルベット 原題:Blue Velvet 1986年)」。
この映画はSNAKEPIPEが一番好きな映画、デヴィッド・リンチ監督作品!
この時のホッパーは狂気を孕んだフランクという人物になりきっていた。
「フランクは俺だ」と自ら売り込んだと読んだことがあるけれど、あの役をホッパー以外の人が演じるなんて考えられない。
実際にあんな人が近くにいたらとっても迷惑だけれど、映画の中の存在感は抜群である。
世界には表と裏があり、裏側ではこんなことが起こってるんだよと教えてくれる映画。
変態的世界を垣間見たい人には絶対お薦めの一本である。

「ブルーベルベット」と同じ年にホッパーはもう一本「悪魔のいけにえ2 (原題:The Texas Chainsaw Massacre 2 1986年)」に出演している。
「チェーンソーを振り回したかったから出演したのではないか」と思ってしまうほど、なんだかノリノリのホッパー。
「悪魔のいけにえ」の雰囲気とは大きく違ってコメディ要素が強い「悪魔のいけにえ2」は「良質なホーム・ムービー」とまでは言わないけれど、ちょっと笑えるホラーなので面白く観られる作品である。

ホッパーが監督した「イージー・ライダー」以外の作品も数多くある。
カラーズ 天使の消えた街(原題Colors 1988年)」はロスのギャング抗争を描いた映画で、SNAKEPIPEの大のお気に入りだった。
BGMはほとんどヒップホップ。
サントラもとても良い出来で、ホッパーの耳の良さがわかる。
ギャングを色で分ける方法は、恐らくその後の世代にかなり影響を与えたんじゃないかな。

「ハートに火をつけて (原題:Catchfire 1989年)」はジョディ・フォスター主演のサスペンス映画。
ホッパーとジョディ・フォスターということで非常に期待して観たけれど、殺人事件を目撃してしまったジョディをホッパーがかくまう程度しか覚えていない。(笑)
ジョディ・フォスターがインタビューに答えて「なんであんな映画に出ちゃったのかしら」と後悔している記事を読んだことがある。
ただこの時のジョディが(記憶が正しければ)アート関係の仕事に就いている役で、実際に出てくる現代アートがホッパーのコレクションだったはず。
ホッパーはコレクターでもあるんだよね。

「ホット・スポット(原題:The Hot Spot 1990年)」と、ここまで3年連続で作品作ってるホッパー。
すごい意欲的だったよね!
実は観たはずなのにこれもはっきり覚えてない映画。
確かジェニファー・コネリーの全裸シーンがあったような?
サントラを買ってるので、好きだったのかな。(笑)

ホッパーは俳優、監督以外にも写真を撮ったり絵を描いたりもしているアーティストである。
ホッパーが撮った写真にはとてもカッコいいのがいっぱいあるんだよね。
やっぱり欲しい写真集「OUT OF THE SIXTIES」!
ネットで検索すると値段はなんと¥18,000くらいから¥29,800までと幅があり、しかも高額ときた。
いつの日か手に入れたいものである。(弱気)

個性的で印象に残るタイプの俳優は、非常に稀有な存在だと思う。
ホッパーのような毒のある怪しい魅力のある役者には、なかなかお目にかかれないだろうな。
今回の「ハリウッド殿堂入り」で公共の場に姿を現すのは最後でしょう、とニュースはしめくくっていた。
うーん、非常に残念!

好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇 part2 –太陽と戦慄/爆発的–

【「爆発的」にちなんで作ってみました】

SNAKEPIPE WROTE:

前回の「好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–」は鳥飼先生の著作「痙攣的」の感想をまとめ、登場人物の名前の謎解き(?)に挑戦した記事である。
今回はまた別の著作を特集した第2弾を書いてみたいと思う。
ネタバレの部分があるかもしれないので未読の方は注意してください。

4冊でもご本」を書いた2007年6月からずっと探していた「太陽と戦慄」。
それ以来本屋に行っては必ず「タ行」を探していたけれど見つからない。
一読してすっかりファンになってしまった「痙攣的」より前の著作のため、どうしても読みたかったのである。
そして去年ついにネット通販にて購入。
いやあ、最近はほんとに便利になりましたなあ。(笑)
2年越しで待ちわびた「太陽と戦慄」をわくわくしながら読み進めたのである。

読み始めてほんの数ページで「やっぱり面白い!」と思う。
「粛清せよ」という曲の詩はSNAKEPIPEが大好きなザ・スターリンのよう。
導師、泉水和彦が歴代バンドメンバーの命日を覚えているとはすごい!(笑)
それにしてもこの導師の経歴が興味深い。
お金持ちの息子→戦場カメラマン→ヴェトナムで天啓を受け→導師になったとのこと。
なんだか本当にありそうな話だよね?(笑)
そして「太陽と戦慄」の中で一番SNAKEPIPEが関心を持ったのは、この導師の思想である。
もしかしたら「危険思想」になるのかな。
蜘蛛の糸」のカンダタよりもその後から「我も我も」と付いてくるその他大勢に嫌悪感を持つSNAKEPIPEは、「まさにその通り!」と導師の言葉に大きくうなずいてしまった。
いや、テロ礼賛ということではないので勘違いしないでね!(笑)

バンドの話として読んでも、もちろんミステリーとして読んでもとても面白かった。
導師の書いた詩がヒントになっているとはね!
そして最後まで犯人が判らなかったSNAKEPIPE。
えっ、鈍過ぎ?(笑)

続いて鳥飼先生2008年の著作「爆発的」について。
これは「痙攣的」の続編にあたる作品とのこと。
パラパラとページをめくっただけで「日暮百人(ひぐらしもんど)」と「藍田彪(あいだあきら)」という「痙攣的」に登場していた名前を発見!(笑)
非常に楽しみである。

「爆発的」は副題に「7つの箱の死」とあるように7つの章から成り立つ小説である。
1章ごとに色が入った曲名をタイトルに付けている。
そして章ごとに一人の現代アーティストが登場するのだが、これがまた!
「痙攣的」と同じように「もう1つの謎解き」になっているのである。
登場人物の名前が実在するミュージシャン(ノイズやアヴァンギャルド、プログレなど)からの名前のパロディであることが鳥飼先生の作品の特徴なのである。
小説内で発生する事件は小説の中で解決して犯人が誰、というのは判る。
でもこの「もう1つのミステリー」のほうには「これが正解だよ」という解答はないので、勝手に「多分こうじゃないか」と想像するほかない。(笑)
ROCKHURRAHの協力の下、夜な夜な謎解きに明け暮れたSNAKEPIPEである。
その推理を含めて感想を書いてみよう。

1.黒くぬれ!あるいは、ピクチャーズ・アバウト・ファッキング
タイトルは「Paint It Black」、ローリング・ストーンズの曲である。
わざわざ説明するほどでもないか?(笑)
画家として登場するのが須手部有美(すてべあるみ)という女性。
すてべ、すてべ。変わった苗字だ。
で、思いついたのがビッグブラックレイプマンのスティーブ・アルビニ。
須手部を「すてーぶ」、有美を「あるび」でどうだ?(笑)

ホストとして登場する相生十二男(あいおいとにお)。
これはブラックサバスのトニー・アイオミだね!
ナンバーワン・ホストの王子凡雄(おうじつねお)。
音読みすると「おうじぼんお」。
おぅじぼんぉ、おずぃぼんぉ、おずぼぉん、あっ!おずぼーん!(笑)
ということでブラックサバスのオジーオズボーンでどうだろう?
ホストクラブの名前も「サバト」だしね!
店長の虎場はブラック・ウィドウのキップ・トレバーとか?違うかな?(笑)

須手部有美が発表する、人種問題をテーマにしたアクションペインティングって本当にありそう。
それにしても性同一障害から性転換した登場人物が登場するとは驚き!
実際SNAKEPIPEにもかつて同じことを真剣に考えている友人がいたので、そんなに珍しいことじゃないのかもしれないね。

2.青い影 ないしは、ノーサイドインサイド
タイトルはプロコル・ハルムの「A Whiter Shade Of Pale(青い影)」。
前衛演劇の俳優として出口日多尊(でぐちひだたか)が登場する。
実はこの名前、ROCKHURRAHと二人で長い間考え続けた難問!
顔を合わせる度に「でぐちひだたか」「うーむ」とうなっていたのである。
ブルーと付くバンドをかたっぱしから調べようとするも、SNAKEPIPEが思いつくのは「青い三角定規」や「ジャッキー吉川とブルー・コメッツ」だったり。(笑)
日多尊を「ぴーたーそん」と読むのはどうだろうということで考えついたのが、ブルー・チアーのディッキー・ピーターソン!
無理矢理過ぎ?(笑)
ただしこのブルー・チアーにはランディ・ホールデンとレイ・ステファンズというメンバーがいるようでこれはもしかしたら堀手蘭(ほりでらん)と堀手玲(ほりでれい)なのでは?(笑)

甲本ヒロコ(こうもとひろこ)と増間正敏(ましままさとし)はブルーハーツの甲本ヒロトと真島昌利というのすぐに分かったけどね!
鳥飼先生の作品にブルーハーツというのがちょっとびっくり。

出口日多尊は能楽の融合や凝った舞台装置などを合わせた演劇という、確かに海外ウケしそうなスタイルを構築。
<ノーサイドインサイド>に出てくる機械の蜘蛛は、ラ・マシンのラ・プリンセスみたいな感じなのかな。
うーん、こんな舞台が本当にあったら観てみたいな!(笑)

3.グレイとピンクの地 もしくは、ウィッシュ・ウィー・ワー・ヒア
タイトルはキャラバンのIn the Land of Grey and Pinkとピンク・フロイドのwish you were hereのもじりね!
彫刻家として登場する是水大(これみずだい)と是水海(これみずかい)の双子ユニット、是水トゥインズ。
是水大はトゥインド、是水海はトゥインクと名乗っている、というのがヒントになった。
ピンク・フェアリーズにトゥインクと、そのまんまの名前を発見!(笑)
美術商として登場する黒眼帯の砂野半太(すなのはんた)も同じくピンク・フェアリーズのラッセル・ハンターとダンカン・サンダーソンのミックスかな?
砂だからサンド、で。
苦しい?(笑)

彫刻家として登場する久米一村(くめいっそん)。
これはピンク・フロイドのニック・メイソンね。
ニッを飛ばしてク・メ/イソンと本当に日本名にありそうな仕上がり!
このセンス、さすが!
大笑いしちゃったよ。(笑)
そして同じく彫刻家の志度場礼人(しどばれいと)は、ピンク・フロイドのシド・バレットに間違いなし!
この名前ってちょっと苦しくない?(笑)

千体もの人形というと一番初めに思いつくのはYMOの「増殖」だけど(古い?)、それが全裸のアンドロギュノスとなるとかなり迫力があるだろうね。
何年か前、秋葉原でものすごく精巧にできている美少女人形を見たことあるけれど、あんな感じじゃないかと想像する。
あれがいっぱいだったらすごいだろうなあ。
その道のマニアじゃなくても欲しくなる逸品だろうな。(笑)
これも観てみたいアートだね。

4.白日夢 さもなくば、エレクトロニック・ストーム
タイトルはホワイト・ノイズのAn Electric Stormかな?
続いては音響アートの辺根戸美留(べねとよしとめ)。
これはホワイト・ハウスのウィリアム・ベネットね!
美留を「びる」と読むと丁度いいんだよね。
ウィリアムの愛称はビルみたいだし。(笑)
辺根戸美留と共に活動していた織地創生(おりじきずお)。
この名前もかなり悩んだけれど、ある日ROCKHURRAHが
「おりじ、おーりっじ、おりっじ・・・あっ!スロッビング・グリッスル!」
と叫び、ジェネシス・P・オリッジじゃないかと言い出す。
「おりっじ」は良しとして「創生」は?
「ジェネシスは創世って意味じゃなかったっけ?」
とのこと。(笑)
なるほどね!
名前はそれでなんとかクリア(?)したとしても、バンド名にその章のカラーがついてる、という点はクリアできるのだろうか。
スロッビング・グリッスルに色はないよね?
と、またジェネシス・P・オリッジについて調べていると、ホワイト・ステインズというバンドと活動を共にしていたみたいで。
全然違うかもしれないけど、推理していくのは楽しかったな。(笑)

どうしても分からなかったのが坊屋昌巳(ぼうやまさみ)。
これは全く何も出てこなかったのがちょっと悔しい。(笑)

辺根戸美留の<エレクトロニック・ストームI>はアイソレーションタンクに入って音楽を聴く、という作品。
貴志祐介の「十三番目の人格 ISOLA」にも出てきた、閉所恐怖症の人は入ることができない子宮をイメージした装置だったはず。
立花隆が前世を知るための実験(だったと思う)で入っているのをテレビで見たことあるけど、とても怖そうだった。
ゆったりした気分にはなれそうにないけど、ちょっと経験してみたい気もするね!

5.赤い露光 でなければ、ソルジャー・ウォーク
タイトルはクロームのRed Exposure(赤い露光)とレッド・クレイオラのSoldier-Talk のもじりかな。。
政治的パフォーマンス・アートの東風村麻世(こちむらまよ)。
これはレッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンか。
東風村を「とんぷそん」と読むとあーら不思議!
ぴったりの名前が出来上がったよ!(笑)
この名前も秀逸だね!

政治家、能見(のうみ)の秘書、木出(きで)はRed Hot Chili Peppersのアンソニー・キーディスか?
団子屋の古詩庵(ふるしあん)も同じくRed Hot Chili Peppersのジョン・フルシアンテじゃなかろうか?
ぷぷぷ、フルシアンテが古詩庵!(笑)
そう考えるとコンパニオンの茶奴(ちゃやっこ)もRed Hot Chili Peppersのチャド・スミスかもしれないね!
能見は頑張って探したけど、残念ながら分からなかった。

この手の政治色の強いパフォーマンスというのがSNAKEPIPEにとっては難しい。
結局世界情勢とか政治に疎いのが原因だと思う。
そして今回の東風村麻世のパフォーマンスも解り辛かった。
もっと勉強が必要ね。(笑)

6.紫の煙 または、マシン・ヘッズ
タイトルはジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのPurple Hazeとディープ・パープルのアルバムMachine Head だね。
登場するのは映像作家の城間英一(しろまえいいち)。
これは日本のバンド、のメンバー、城間正男と宮永英一を混ぜた名前か?
そう考えるととてもすっきりまとまるんだけどね。
なんとROCKHURRAHも紫持ってたよ、だって。(笑)

城間英一の作品<マシン・ヘッズ>は映像とボディ・アートの融合になるのかな。
観に行こうと思っている森美術館の「医学と芸術展」が近いように思う。
今まで誰も観たことがない究極の映像か。
観たいような観たくないような。(笑)

7.紅王の宮殿 またの名を、デス・イン・セブン・ボクシーズ
タイトルはキング・クリムゾンのIn The Court Of The Crimson King(クリムゾン・キングの宮殿)の漢字バージョンかな。

「紅の処刑室」にあった分断された豚の標本は、ダミアン・ハーストの牛みたいで想像し易いね。
それにしても豚の血がこびりついたために出来上がった赤い部屋って・・・。
SNAEKPIEPは怖くて入れないだろうなあ。

事件は探偵、星野万太郎の推理で解決なのだろうか。
「こういう可能性もある」という示唆だから、これが絶対じゃないんだよね。(笑)
そしてもし星野万太郎の推理が正しいとしても、犯人の動機が謎なんだな。
快楽殺人の一種と言われればそうかもしれないけど。
SNAKEPIPEなりに推理してみるかな!

事件そのものの面白さに加えて、いろんなジャンルの現代アートの話、そして登場人物の名前の謎解き、と話題がいっぱいの「爆発的」はとても刺激的だった。(笑)
鳥飼先生の新作は1月22日発売予定の「このどしゃぶりに日向小町は」のよう。
「入村徹に届いた、ルビーからの謎めいた手紙」
なんて書いてあるよ!
これって「痙攣的」に登場のバンド、鉄拳のメンバーだよ!(笑)
また楽しみが増えて嬉しいな!

好き好きアーツ!#08 鳥飼否宇–痙攣的–


【現在でも充分斬新的!なCAN。一番右がダモ鈴木。クリックで音が鳴ります。】

SNAKEPIPE WROTE:

以前にも「お気に入りの作家」として記事にしたことがある鳥飼否宇
すべてを読破したわけではないけれど、中でも一番のお気に入りの作品「痙攣的 モンド氏の逆説」を読み返し改めてその面白さを実感した次第である。
「痙攣的」は全部で5章から成る小説で、それぞれが独立した短編でありながらも最後には種明かしがある連作短編である。
ただ「痙攣的」は殺人事件を扱うミステリー小説であるにも関わらず、あまり一般的ではない音楽や芸術を主題に置いた日本唯一(?)の作品なのである。
今回はその「痙攣的」の中で使われているパロディについて書いてみたいと思う。

と言ってはみたものの、どうやら鳥飼否宇が詳しい音楽の分野はジャーマン・プログレッシブ・ロック。
クラウト(酢漬けのキャベツ)ロックとも言われているそうで。
このジャンルに関するパロディを多様しているため、この手の音楽について知らない人にとっては全然分からない話になってしまう。
かくゆうSNAKEPIPEもはっきりと自分で分かったのは1名のみ!(笑)
パロディなんだな、と分からなくても充分楽しめる小説である。
が、パロディだということが分かると更に面白さ倍増。
一粒で二度おいしい、になると思う。
ミステリーファンよりもジャーマンロックファンの人にお薦めの小説といえるのかもしれないね。
SNAKEPIPE一人ではとても追いつかないので、ROCKHURRAHにも協力してもらい解読(?)してみた。
「多分こうなんじゃないか」と予測して書いているので、これが正解なのかどうかは分からないけどね!(笑)

第1章 廃墟と青空(ファウスト
音楽に関連したミステリー。
これから先に何度も漢字を変えて出演する相田彰(あいだあきら)。
これはもうそのもの、間章(音楽評論家)の「もじり」だろう。

ロック雑誌を主宰していた宇部譲(うべゆずる)。
これはロックマガジンの編集長だった 阿木譲とドイツのバンド、ファウストの仕掛け人ウーヴェ・ネテルベックを足した感じか?
ウーヴェを宇部にしちゃうのってすごい!(笑)

宇部譲がメンバー募集して作ったロックバンドの名前が「鉄拳」。
これは前述したドイツのバンド、ファウストからのものか?
ドイツ語で「ファウスト」とは「げんこつ」を意味するとのこと。
なるほどね!(笑)

宇部譲に見出されてメジャーデヴューした「ファンク・ポテト」のメンバーの名前が京都ヨシミ(みやこよしみ)。
これは「じゃがたら」の江戸アケミのパロディか?

「鉄拳」のメンバー入村徹(いりむらとおる)。
これはファウストのメンバー、ハンス・ヨアヒム・イルムラーから来てるのか?

実在する伝説となったバンドについての解説などがさらっと書いてあり、それも面白い。
ミステリーとしても「ほほう」と感心する成り行きになっていて、音楽とミステリーの融合がいい感じだ。

第2章 闇の舞踏会(CAN
現代アートに関連したミステリー。
またもや間章(音楽評論家)をもじった会田昶(あいだあきら)が登場。

キュレーターとして登場する檐木貫(ひさしぎかん)。
もう名前が「かん」なので、すでにCANをもじってる!

舞踏で登場するのは掘賀舟海(ほるがしゅうかい)。
これはCANのメンバーだったホルガー・シューカイからの引用だね。
まんまだし!(笑)

「ミサ」と呼ばれるパフォーマンスを行うのはウム鈴木(うむすずき)。
こちらもCANのメンバーであったダモ鈴木をもじったようで。
これもかなり大笑いのパロディだ。(笑)

「十牛図」を使ったパフォーマンスをするのが現代アート界のドン、伴鰤人(ばんぶりと)。
これはアメリカのミュージシャン、ドン・ヴァン・ヴリートことキャプテン・ビーフハートか!
だから牛だし、ドンなのね。(笑)

土方巽から始まる暗黒舞踏の歴史や現代アートにおける「盗用と盗作」の違いについて書いてあり、これらもなかなか興味深い。
パフォーマンスもデジタルアートも本当にありそうな作品だった。
一番笑わせてくれたのは「レディメイド」かな。傑作!
SNAKEPIPE個人的には「痙攣的」の中で一番好きな短編がこれ。

第3章 神の鞭(アモン・デュールII
イリュージョンアートに関連したミステリー。
気象学者として登場する英田暁(あいだあきら)。
この漢字で「あいだ」って読むのかな?

イリュージョニストとして栗須賀零流(くりすかれいる)という名前がある。
これはアモン・デュールIIのメンバー、クリス・カレールでは?
クリス、と区切らないで「くりすか」を苗字にしたところが秀逸!(笑)

アースワークやランドアートといった壮大なスケール感を持つ現代アートについても簡単に説明されている。
実際に目にすることがなく航空写真での作品群が多いため、抽選で1名だけご招待というこの小説の企画は本当にありそうな話だと思った。
SNAKEPIPEは怖いから、あまりこのイリュージョンアートは見たくないなあ。(笑)

第4章 電子美学(ノイ!
この章でいきなり話はイカになる。
イカを研究する研究所が舞台のミステリー。
綾鹿イカ学研究所の副所長としてまたもや愛田亮(あいだあきら)。
ここまでこの名前にこだわるのってすごい!
それにしても4回も漢字を変えながらも登場してくるので、余程気に入ってるんだろうね。

綾鹿イカ学研究所員に老田美香(ろうたみか)。
これはクラフトワーク、ノイ!のメンバーだったミヒャエル・ローターか。
ローターが老田。(笑)

老田美香と同じく研究員の砂井田(すないだ)。
これもクラフトワークのフローリアン・シュナイダーから来てるのか。
シュナイダーを「すないだ」ね。

研究所所長の名前がクラウス殿下。
クラフトワーク、ノイ!のメンバー、クラウス・ディンガーからの命名ね。
これ、やっぱり最高!(大笑い)

研究所で使われているシステムの名前が「ハローガロ」。
これはノイ!の曲名のようね。

突然話が「イカ」になってしまい、あまりの展開の唐突さに付いて行かれない読者が続出じゃないかと思う。
ただし、上にも書いたように同じ名前が出てくるため「ああ、やっぱり続いてるんだ」と確認ができるけど。
ここからの章はミステリーの本質に迫ってしまうので、あまり詳しく語るのはやめる。
SNAKEPIPEはイカ皮スーツは着たくないな。
そんな「いかがわしい」もの!(プッ)

第5章 人間解体(クラフトワーク
この章は第4章からの続きなので、イカの話である。
イカの知能指数の高さを示すお話が綴られていて、確かにイカってちょっと不思議な生物だよね。
先日も巨大なダイオウホウズキイカが発見された、なんてニュースもあったし。
謎が多い生物としてみるとミステリーにはもってこい、かな?(笑)

こんな感じで「痙攣的」はミステリーの領域だけにとどまらず、音楽やアートに興味がある鳥飼否宇の好きなモノ満載の小説でとっても面白いのである。
この作品以外にも横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した「中空」や「非在」などに登場する鳶さんとカメラマンの猫田のシリーズも面白い。
鳶さんのキャラクターは鳥飼否宇の分身かな、と勝手に想像するSNAKEPIPE。
ひょうきんでちょっととぼけたインテリで、いい味出してるんだよね。(笑)
今回特集した「痙攣的」のような「~的」シリーズも好き。
「爆発的」と「官能的」は未読なので、早く手に入れないと!(笑)

鳥飼否宇は九州大学理学部生物学科卒業、というインテリ!
ジャーマンロックのような難解な音楽を好むかと思えば、「昆虫探偵」のような作品を書く生物好きでもあるとても不思議な人だ。
現在は奄美大島在住で奄美野鳥の会の会長やってるらしい。
アドレスに「シナプス」が入ってるところが「らしい」よね。(笑)
なんと「奄美大島ツアーで夜の森の特別ガイド」もやってるみたいだから、奄美大島に行って是非とも鳥飼ガイドの説明を聞いてみたいね!