【作品の前で笑顔を見せるジョン・ウォーカー】
SNAKEPIPE WROTE:
2025年6月に「形象 Keisho」展で鑑賞したドレーヌ・ル・バ(Delaine Le Bas)が、2024年度ターナー賞の最終候補に挙がっていた、と記事の中で書いているよね。
そこでふと「今年のターナー賞は?」と疑問を持ったSNAKEPIPE。
調べてみると、ニーナ・カルー(Nnena Kalu)、レネ・マティッチ(Rene Matić)、モハンマド・サーミ(Mohammed Sami)とゼイディー・チャ(Zadie Xa)がノミネートされているという。
4人の展覧会を2025年9月〜2026年2月で開催し、ターナー賞受賞者は2025年12月9日に発表されるんだとか。
今までブログに何度もターナー賞と書いてきたけれど、こうしたシステムになっていることを知らなかったよ。
勉強になりました!(笑)
1984年から始まっているターナー賞受賞者についても調べてみると、SNAKEPIPEには馴染みがないアーティストがいっぱいなんだよね。
多少はアートについて知っているつもりだったのに、面目ないなあ。
2008年6月に「ターナー賞の歩み展」を鑑賞しているにもかかわらず、である。
受賞者と候補者の一覧を調べても、知らない名前ばかりで悔しい。
それならばリストの中から、今まで知らなかった好みのアーティストを見つけてみよう!と目を輝かせる前向きなSNAKEPIPE。(笑)
1984年から確認していき、1985年の候補者のジョン・ウォーカー(John Walker)という抽象画家に目が留まる。
スコッチ・ウイスキーのジョニー・ウォーカーの創業者と同じ名前だね。(笑)
冗談はさておき、ジョン・ウォーカーの経歴を調べてみよう。
1939 イングランドのバーミンガムに生まれる 1956〜1960 バーミンガム美術学校で学ぶ 1960〜1961 ローマのブリティッシュ・スクールで学ぶ 1961〜1963 パリのアカデミー・ド・ラ・グラン・シャオミエールで学ぶ 1967〜1969 リーズ大学のグレゴリー・フェロー(研究者)を務める 1969〜1970 ハークネス・フェローシップでアメリカに渡る 1972 ヴェネツィア・ビエンナーレにイングランド代表として出展 1977〜1978 オックスフォード大学のアーティスト・イン・レジデンスを務める 1980〜 オーストラリアのメルボルンにあるビクトリア美術大学の学部長を務める 1985 ターナー賞にノミネートされる 1993〜2015 ボストン大学(Boston University)で教鞭をとる
1939年ということは、今年86歳になるんだね。
現在はボストン大学ビジュアルアーツ学部の名誉教授だという。
作品制作だけではなく、教育にも力を入れているアーティストなんだね。
ニューヨークの近代美術館(MOMA)やロンドンのテート他、多くの名だたるギャラリーで個展を開催しているんだとか。
作品が世界中の有名美術館に所蔵されていることも分かったよ。
もしかしたらSNAKEPIPEもどこかで作品を目にしているかもしれないね?
それではジョン・ウォーカーの作品を紹介してみよう!
この作品を目にした時、てっきりデヴィッド・リンチの手による絵画かと勘違いしてしまったSNAKEPIPE。
色使いやらモチーフが似た雰囲気なんだよね!
1991年に今はなき東高美術館で鑑賞したデヴィッド・リンチ展を思い出すよ。
特にどの作品が近いということはないけどね。(笑)
これはジョン・ウォーカー、1980年の「A MOROCCAN」という作品。
直訳すると「モロッコ人」になるけど、人の気配は感じないね?
作品のサイズが「10’ x 8’」なので、約305cm × 約244cmという大きさだって。
こんなに大きな絵を飾れたら素敵だろうね!
続いては1984年の作品「Untitled #11 (Alba Series),」だよ。
構図は「A MOROCCAN」とほとんど同じだね。
赤色が強くて、右側に頭蓋骨らしき白が見えるところが不気味だよ。
この作品を制作した年にターナー賞候補になっているんだね。
大きさは91.4 x 71.8 cmとのこと。
「A MOROCCAN」に比べると、小さめの作品だよ。
お値段$3,000 ( 約43万円)〜$5,000(約72万円)で取引されたらしい。
似た構図の作品を並べて鑑賞したいよ。
1996年にバーミンガム大学・アーツビル玄関ホールに設置された壁画 「The Blue Cloud」(部分)を載せてみたよ。
1994年、ジョン・ウォーカーにバーミンガム大学名誉文学博士号が授与された縁もあって、大学から依頼されたらしい。
絵の中に文字が書かれているところもリンチっぽい、と「にんまり」してしまう。(笑)
ジョン・ウォーカーが書いたのは、ウィルフレッド・オーエンとバイロン卿の詩からの一節なんだとか。
生と死、出会いと別れといったテーマが盛り込まれているという。
毎日この壁画と対面する大学生は、どんな気持ちで鑑賞するんだろう。
実物を観てみたいよ!
「The Blue Cloud」の翌年に制作された「Anger Anguish」。
ジョン・ウォーカーには抽象的なモチーフが多い中、はっきりと人物が描かれているのが珍しい。
タイトルを直訳すると「怒り・苦悩」になるので、登場している人物の心情なのかも。
画像からは読み取れないけれど、何やら文字が書かれているよね。
2分割された画面の下段に「FOR YOU」と書いてあるのだけは読めたよ。
一体何を意味しているのか不明だけど、強い感情を表現したことは分かるね。
この時ウォーカーは58歳くらいかな。
丸くなろうなんて、これっぽっちも思ってないように見えるよ。
パンクっぽくて、いいね!(笑)
ジョン・ウォーカーはずっと活動を継続していて、「Clammer’s Marks North Branch」は2003年の作品だって。
直訳すると「貝採り漁師の痕跡:ノースブランチ」とのこと。
白髪一雄を思わせる大胆な筆使いだよね。
描いた上から何度も色を重ねていくうちに、最初に描いた部分を打ち消したみたいに見えてくる。
文字もところどころ消されていて、何だか分からないよね。
山口百恵の「美・サイレント」での口パクみたいに、受け取り側が想像するしかないかも。(例えが古過ぎ)
縦約244cm × 横約213cmの大型作品は、頭じゃなくて心で感じたら良いんだろうな。
2016年の作品「Caitlin Lee」はモノクロームで、抽象化が進んでいるね。
レストランや豪邸に、展示したらオシャレだろうな。
北欧のテキスタイルにも見えてくるよ。
批評家の一人がジョン・ウォーカーを「過去50年間で際立った抽象画家のひとり」と評したというのも納得!
不思議な形で構成された作品だけど、構図と色のバランスが抜群だよね。
SNAKEPIPE MUSEUMに所蔵したくなるよ。
ジョン・ウォーカーのサイトでは、2023年に制作された作品も鑑賞することができる。
2年前なので84歳かな。
約183cm × 約168cmほどの大型作品を精力的に手掛けているみたい。
「絵を描くことに退屈を感じたら、制作をやめる」とインタビューで答えているので、いまもなお作品制作が面白く感じているんだね!
2024年12月に鑑賞した「松谷武判展」の松谷武判は1937年生まれで88歳、我らが横尾先生も1936年生まれの88歳!
現役で活動を続けている80代のアーティストがいっぱいいて嬉しいね。
今まで知らなかったジョン・ウォーカーを知ることができて良かった。
これからも温故知新で知識を広げていきたいと思ったSNAKEPIPEだよ!(笑)