【エリ・ロタールが撮影したジェルメーヌ・クルルの肖像】
SNAKEPIPE WROTE:
今日から12月。
2024年も残すところ1ヶ月になったね。
月日の流れが速いなあ!(笑)
2024年6月のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #70 Eli Lotar」で特集した写真家エリ・ロタールは、女流写真家 Germaine Luise Krull (ジェルメーヌ・クルル)の助手だったんだよね。
今回は師匠であるジェルメーヌ・クルルについて書いてみたい。
まずは経歴を調べてみようか。
1897 ドイツ領ポーゼン(現在はポーランドのポズナン)に生まれる 1915-1917 ドイツ・ミュンヘンにある写真学校「Lehr- und Versuchsanstalt für Photographie」で学ぶ 1918 ミュンヘンで写真スタジオを開設し、著名人と親交を深める 1921 政治活動に従事し、逮捕され投獄される 1925 オランダの映画監督で共産主義者のヨリス・イヴェンスと結婚しオランダ国籍を取得 1928 写真集『Métal』を発表 1946-1966 タイのバンコクにあるオリエンタルホテルの共同経営者となる 1968 写真集『Tibetans in India』を発表する 1985 ドイツのヴェツラーで亡くなる
裕福な環境に生まれ、家族でヨーロッパ各地を巡っていたという。
父親から少年の服を着せられたことがあり、その経験が「女性の役割」に対して影響を及ぼしたのではないかと考えられているらしい。
この文章についての意味は後に明らかになるであろう。(預言者風)
ヨーロッパやアジアを股にかけて作品を発表していた女流写真家、ジェルメーヌ・クルルの作品を観ていこう!
「デ・キリコ展」のブログでも書いていたけれど、2024年の当ブログに何回も登場したジャン・コクトー!
クルルは、コクトーの肖像写真を何枚も残しているんだよね。
載せた作品は、恐らく1930年頃に撮影されたみたい。
クルルはアンドレ・ケルテスやマン・レイと並び、優れた写真家として認められていたというから、著名人の撮影も多かったんだろうね。(笑)
何度も書いていることだけど、1920年代のパリを中心としたヨーロッパは憧れの時代。
政治活動も行っていたというクルルなので、かなりラディカルな一面を持った女性だったんだろうね。
観ているだけでワクワクする、SNAKEPIPEが大好物のモチーフ!(笑)
1928年に発表された写真集「メタル」は、エッフェル塔のような近代的な構造物や機械美をテーマにした、とても男性的な作品群なんだよね。
ここで「少年の服を着せられ」た話に戻るわけ。
1920年代に20代の女性が、夢中になってシャッターを切っていたとは信じられないよ。
これは余程のインダストリアル好きに違いない!
鋼鉄の鈍い輝き、直線や曲線のフォルム、影の形に魅力を感じていただろうことがよく解るよ。
クルルの写真集が1930年代に日本でも紹介されていたことに驚いたし、感銘を受けた堀野正雄の写真も気になるよ。
1910年代から活躍しているパリのイラストレーターであるポル・ラブの肖像写真を中央に配置したフォト・コラージュは、1930年の作品だという。
手と影だけなのに、印象的だよね!
ワンピースのニコ・ロビンを思い出してしまったのはSNAKEPIPEだけ?(笑)
クルルより先輩で、ラウル・ハウスマンと共にフォト・コラージュ(フォト・モンタージュ)を始めたハンナ・ヘッヒも、同時代に活躍していたはず。
女流アーティスト同士、交流はなかったのかな?
載せた作品に話を戻すと、モデルになっているポル・ラブは、この作品の3年後に早世してしまったとのこと。
宇野亞喜良の元祖みたいな作品や、1920年代のキャバレー風のイラストが残っていて興味深いよ。
まだまだ知らないアーティストがいっぱいいるね。
20世紀初頭に活躍した、フランスの伝説的なファッションデザイナーであるポール・ポワレ。
載せた作品は、1926年にクルルがポール・ポワレに作成したアイデアとのこと。
多重露光を使用して、アップの女性とドレスを着た3人(?)の女性を重ねている。
アップの顔にシワがより、美しさを際立たせるというよりは、ギョッとしてしまうよね。(笑)
この作品がポール・ポワレに採用されたかどうかは確認できなかったよ。
クルルは商業写真でも活躍していたんだね。
1928年の写真集「メタル」は、今鑑賞してもカッコ良さが伝わるよね!
SNAKEPIPEが目指していた方向性はまさに、これ。
こんな先人がいたことを知らなかったのは幸せだったのかもしれない。
もしクルルを知っていたら、あそこまで自分の世界に熱中できなかったはずだから。
経歴に書いていない部分を補足しておこう。
クルルはタイのホテル経営を終えてから、北インドに移住し、チベット仏教のサキャ派に改宗したんだとか。
サキャ派とは、チベット仏教4大宗派の一つ、と説明があったよ。
そして最後の写真集でダライ・ラマの肖像を撮影しているという。
写真学校を卒業してから50年以上、写真に携わってきたクルルの作品をもっと鑑賞してみたい。
「メタル」は復刻版が販売されていたようだけど、現在はソールド・アウト。
どちらにしてもお値段10万円超えだったようなので、まずは貯金から始めるか。(笑)