荒野の7ビリー

【ROCKHURRAHの原点?「2000人の狂人」の怖い人】

ROCKHURRAH WROTE:

今日は少し特殊なテーマではあるが、ROCKHURRAHが昔から好きだった奇声「Hee-Haw」について語ろう。いつも書くような前フリはなしね。

カタカナで書くとヒーホー、最近の日本人にはあまり馴染みがないかも知れないが、ウェスタンな映画とかでカウボーイが馬に乗る時の奇声というか、掛け声だ。

子供の頃は大の大人がなんで馬に乗る時にあんなバカっぽい掛け声なんだろうと不思議に思ったもんだが、その不思議を長じて解明する程の好事家ではなかったので、未だに不思議のままだ(いいのか)。

今回書くのはそういう映画の話ではなくて、カウ・パンク、ラスティック・ストンプ、一部のサイコビリーとかが好んで使う曲中のヒーホーについて。

そもそもこういうジャンルについて全く予備知識のない人も多い事だろうし、一般的な生活の中でこの手の音楽が偶然流れてくる確率も低いから、たいして詳しくもないんだが少しだけ説明しておくか。

簡単に言えばアメリカのカントリー&ウェスタンとかブルーグラスとかの曲調、バンジョーやフィドルにフラット・マンドリン、アコーディオンなどの生楽器構成を取り入れたパンク以降の音楽というような定義でよろしかろう。そういう楽器を全く使わなくても雰囲気さえ出てればまあOKだ。

こういう音楽ではあるがむしろヒーホーの入らない曲の方が圧倒的に多い。Oi!のバンドがどの曲でもオイオイオイと怒鳴ってるわけじゃないのと同じようなもんだろう。逆に上記ジャンルでなくてもヒーホーの掛け声が入った曲は色々とある。クラブ・ヒットとしてはおなじみのLARKS「Maggie Maggie Maggie」などなど。

そんな中でこれはカッコ良いと思ったヒーホー系の曲をあげつらってみようという趣旨だ。前置き長くなったからさっさと行こうか。

一度聴いたら忘れないおっそろしい程のダミ声とホラー・メイク、怪奇趣味で一世を風靡したサイコビリー界のルシファー・サム(?)、ディメンテッド・アー・ゴー!のこの曲から。このバンドはサイコビリーなんだけどこういうラスティックっぽい傾向もあって、ダミ声でウェスタンという東京スカンクス以降のスタイルに多大な影響を与えたはず。DVDなどを見る限り、ステージでも延々とホラーなかぶりもの&特殊メイクしっ放しで、もしかしたら金出してライブを見に行って、一度も顔を拝めないのではなかろうか、というファン泣かせのバンドだ。

メンバー全員がデブという80年代半ばのネオロカ、ラスティック・バンド。かつてはレコードが入手困難だったな。アコーディオンのスリムはブートヒル・フットタッパーズにも在籍していた事で知られる。この曲は典型的なヒーホーとは少し違っているが文句なしの名曲でヴァリエーションとして面白い。コミカルな見た目と共に人気が高いバンドだ。

迫力のないギターとヴォーカルが魅力のドイツ製カウ・パンク・トリオ。ラスティック系の楽器は一切使ってなくギターのアレンジのみでそれっぽい音楽に仕上がっているのが素晴らしい。何か似たような違うバンドもあるようだが、こっちの方が断然良い。探しに行って間違えないように。その音楽性の良さとは裏腹に独特の垢抜けないルックスがまたイイとさえ感じる。

本邦ラスティックの生みの親、AA&TOYSOXのダビすけが率いていたSIMOQUITAが誇るバンド、東京スカンクスの大傑作。ダジャレ多用の意味のない歌詞と何を言ってるか聴き取り不能の歌、いいかげんなカッコ良さに溢れていたバンドだったね。

そのAA&TOYSOXの片割れ、AKIOが率いていたのが西荻のスーパー・バンド、このレッド・ホット・ロッキン・フッドだ。オイ・スカルメイツのWATARUをはじめ、後のチャニワ、ワン・トラック・マインド、クライマックスなど在籍していたメンバーも豪華。ウッドベースをフィーチャーしたミクスチャー的なバンドだったが、この曲みたいなのも文句なくカッコいい。

元祖化粧ネオ・ロカビリーの有名バンドだが、単に好きだからロカビリーとグラム・ロック一緒にやってみました、というような安易さが大成功して実に多くのファンに支持された。冷静に見れば化粧顔が似合うのはヴォーカルのティムだけ、なんて事はどうでもいいくらいにポップなニュー・ウェイブ世代のロカビリーはカッコ良かった。この曲は彼らの中ではあまりないパターンだが、スクエアダンスとかにはちょうどいい曲。というかそんなの踊ってる日本人はあまりいないか。

最後はこの曲、ハイライナーズの最も好きな曲だ。しかもスタジオ・ヴァージョンと違ってライブはヒーホー大サービスで何度も叫んでくれる。サックスが入ったバンド編成でサイコビリー系のオムニバスとかに入ってるけど、あんまり「何とかビリー」は感じない曲が多いバンド。80年代初期のキング・カートとかと同じような雰囲気でパーティ・バンド的な陽気なノリが魅力だ。

他にも色々あったんだが長くなるからこの辺でやめておこう。  典型的なラスティックとかは曲調も楽器編成も同じような感じに聴こえてしまうから敢えて外してみたが、どんなもんだろうか。

この手の音楽は好き嫌いが非常に分かれてしまうのは仕方ないけど、ウェスタンの本場アメリカのバンドがひとつもないところがいかにも、まがい物好きのROCKHURRAHらしいと言えるだろう。

ちなみにタイトル下の画像は今回紹介した曲とは関係ないけど、ROCKHURRAHが大好きだったB級スプラッター映画の元祖、ハーシェル・ゴードン・(H.G.)ルイスの「2000人の狂人」より。人口2000人の町で住人全てが元気で陽気な南北戦争の亡霊たち、というすごい設定。そこに迷い込んだ男女が歓迎パーティのさなか、次々と陽気に生贄にされてしまうという話だ。冒頭部分や映画の中でまさにサイコでラスティックな人物(亡霊)が出てきたり、音楽も素晴らしいのでそういう傾向の人は必見の映画だろう。

この桜吹雪に見覚えがねぇとは言わせねえ!

【実写版花札!桜に幕と赤短。ROCKHURRAH制作】

SNAKEPIPE WROTE:

すっかり春めいて、恐らく今日あたりが桜の見納めかな?という季節になりました!
SNAKEPIPEとROCKHURRAHは先週、すでにお花見を済ませてしまった。
1年前に「四月バカ一代・改」として書いた、近所のガランとした公園にて、である。
少し時期が早かったのと、その公園に桜の樹が少ないせいもあって
「外でお弁当を食べる会」
になってしまった。(笑)
ま、毎年恒例のことだから良しとするか!

今年のSNAKEPIPEは昼休みをブラブラ散歩して、例年よりも多くの桜の写真を撮影。
いかにも名所という公園じゃなくて、ひっそりとした場所でほんの数本だけでも見事に満開にさせている桜を鑑賞するのが好みだ。
丁度SNAKEPIPEの理想に近い場所を発見!
ほとんど人が来ない、しかもこれ以上ないというくらい大きな桜の樹を。
観てもらうために咲いてるんじゃない。
自分で咲きたいから咲いてるんだ、といった意志の強さを感じる。
ま、これはSNAKEPIPEの勝手な考えだけど。(笑)

桜の花びらが風で舞う、桜吹雪の中で意識はうつろになる。
降っている雪を下から見上げた時なども同じだが、桜の花びらにだけ焦点を合わせていると、自分の位置が定まらなくなってくる。
ナチュラル・トリップのようなものか?
その陶然とした意識の中ではとりとめもない思考が連想ゲームをしていたり。
桜の樹といえば、やっぱり梶井基次郎だよな…樹の下にはやっぱり…。
櫻吹雪にハラハラすがり、といえば「六本木心中」、アンルイスか、古い…。
先日読んだ京極夏彦の「絡新婦の理 」の冒頭も桜吹雪の印象的なシーンがあったな…。
などなど、連想はとどまることを知らない。(笑)
今年は桜を満喫できて大満足のSNAKEPIPEである。

「花」つながりであるが、今年の年賀状は花札モチーフを使ったROCKHURRAH RECORDS。
実はSNAKEPIPE、小学生くらいの時には実家で花札遊びをしていたのである。(笑)
もちろん賭け事ではなく、本当にカードゲームとして。
ゲームも面白かったし、花札の絵も大好きだった。
そんなことが念頭にあって、ちょっと気になっていた花札を購入してみたSNAKEPIPE。
聞けばROCKHURRAHも花札で遊んだことがある、とのこと。
では早速、と始めてみたけれど二人共すっかり「遊び方」や「役」を忘れている!
まずはやり方を調べよう、とネットで検索。
すると非常によくできたフラッシュ花札ゲームをROCKHURRAHが発見!
このサイト、とても無料とは思えない程の出来!素晴らしい!(笑)
勝てないようにプログラミングされているようで、かなり苦戦してしまう。
勝てぬなら勝つまでやろう花あわせ!
丁度時間となりました。(笑)

前髪切らんかいっ!

【ご飯食べるところが見てみたい!BALZACのギターとヴォーカル】

SNAKEPIPE WROTE:

3月23日、下北沢シェルターでの「ロビンvsバルザック」に行って来た。
もちろんお目当てはロビン!
バルザックは名前だけは前から知っていたけれど、今回初見である。

漫画家T氏からライブのお誘いがあったのは1月中だったろうか。
「バルザックはどお?」
との問いに対してT氏の返答は
「バルザックはミスフィッツだよ~!」
であった。
うーん、、、
実はSNAKEPIPE、以前にROCKHURRAHからミスフィッツを聴かせてもらった時に
「SNAKEPIPEの好みとちょっと違う」
という感想を持っていたのである。
その「ちょっと違う」ミスフィッツに似てるのか…。
そいつは困ったわい。(笑)
ま、行ってみて聴いてからまた考えよう、ということで!

余談であるが、SNAKEPIPEはずっとその「見かけ」からミスフィッツをサイコビリー系バンドだと勘違いしてたのだ。
何度ROCKHURRAHから指摘されても、である。
正しくはパンクバンド、なので皆様ご注意を!(笑)

さて、ライブである。
当然のようにロビンの出番が先で、バルザックが後である。
バルザックのほうがバンド歴も長いし、知名度、人気共に高いので仕方ないか。
ほとんどの観客がバルザックのロゴ入りTシャツやら手袋やらを身に付けていて、8:2、いや、9:1くらいの割合でバルザック派が優勢である。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHは少数派のロビンファンに仲間入り!
ちなみに漫画家T氏もバルザックTシャツ着てたし。(笑)

ロビン、スタート。
開始1曲目から激しいパンチ合戦ですごい盛り上がり!
おや、隣にいたはずのROCKHURRAHが忽然と消えている。
な、なんと、いつの間にかパンチ合戦に巻き込まれているではないか!
パンチ合戦参加、おめでとう!(笑)
後で聞いてみると熱狂的な外人のロビンファンとパンチ合戦やってたとか。
2曲目からは帰ってきてたけど。

ロビンは大体10曲、約1時間程を演奏。
毎度ながらパワフルなステージを展開してくれた。
そのうちの2曲は新曲を披露。イイ感じだ!
ロビンの新譜は今年の秋頃、と告知があった。
ちょっと前作から間があり過ぎだなあ。
楽しみに待つことにしよっ!
今回はアンコールもなし、なので少し物足りない気がした。
メインがバルザックだからねー。

そしてバルザック。
うわっ、前髪長っ!
ラーメン食べられるのかな?
食べる時は髪を結んでからにするのかな?
髪の毛が口に入るんじゃないか?
などとライブとは全然違うことに考えを集中させていたSNAKEPIPE。(笑)
さすがにバンド歴15年の貫禄、演奏すごい上手い!
4、5曲目は好きな感じだったけど、全体にはやっぱり「違う」みたい。
6曲目まで聴いて途中退場。
ライブで途中退場したのは今回が初めてだな。
ROCKHURRAHのパンチ合戦やら途中退場やら、珍しい経験をしてしまった。(笑)

後でT氏からの報告があり、バルザック終了後のアンコールでロビン・ヒロシも出て「アメリカン・サイコ」を演奏したらしい。
それが観られなかったのは残念!

毎月20日はソドムの市!(うそ)

【ソドムの市のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

久しぶりにレンタルDVDでも借りに行こう、と出かけてみたけれど、「新作コーナー」には何ひとつ気になる映画がない。
ROCKHURRAHも同じだったようで、苦労して決めたのが次の2本。
1本は2人共以前に観たことがある「ソドムの市」で、監督別コーナーだったため隣に置いてあった「デカメロン」も追加。
2本だけだけど「パゾリーニ・デイ」と洒落込むことにした。(笑)

デカメロン」はボッカチオ原作の同名小説から成っている映画だ。
デカメロンは名前は知ってても読んだことがないので調べてみると、イタリア版のアラビアン・ナイトのようなお話らしい。
時は1348年(一体何百年前だ?)ペストを恐れた男女10人が邸宅の中で退屈しのぎに10人が10話ずつ、合計100話の物語を語るお話だとか。
で、今回の映画「デカメロン」ではその中から7話が収録されている。
昔々××村でこんなことがありましたとさ、みたいな寓話や笑い話である。
パゾリーニ自身が高名な画家の一番弟子、という役柄で登場。
「夢の中のほうがうまく描けるのに、何故それでも絵を描き続けるのだろう」
と自問するところが印象的だった。

ソドムの市」はマルキ・ド・サド侯爵の「ソドム百二十日あるいは淫蕩学校」が原作となっている映画で、1975年に謎の死をとげたパゾリーニの遺作でもある。
大統領、大司教、最高判事、公爵の4人の権力者が己の欲求のために欲望の館を作り、その中で行われる様々な行為について描いている作品である。
「地獄の門」「変態地獄」「糞尿地獄」「血の地獄」という4つの構成で成り立っている。(ダンテ神曲に倣っているらしい)
「地獄の門」でその館を作るまでのお話があり、「変態地獄」からは自らの実体験を話す「語り部女」に触発されながらそれぞれのテーマに沿った話が展開していく。
前述したように「変態」「糞尿」「血」の話なので、およそ考え得る限りの悪行—-背徳的で残酷なシーンが目白押しである。
時代設定を1944年のヒトラー占領下のイタリアとしたために、よりファシズム色が強くなっている。
お、この1944年というのは「4番煎じもおいしい?」「二人の情熱男の物語」の時に書いた「ハンニバル・ライジング」の時代設定と全く同じ!
ヨーロッパにおける1944年というのが、かなり重要な年だということが解りますな。
詳細は専門書に譲りますが。(笑)

「ソドムの市」はどうしても「変態映画」として認識されてしまいがちだけれど、パゾリーニ本人には
「変態・異常性欲・残虐行為を消費社会と現代の暗喩として用い、消費市場主義・快楽主義の後期資本主義社会に無理矢理適合させられている現代人の有様を描き出そう」
という主題を持っていたようである。(DVDの中より引用)
うむ、そう聞けば「成る程!」と思ってしまうSNAKEPIPE。

そしてもう一つ忘れてならないのはイタリア、という場所。
ローマ市内に世界最小の国家「ヴァチカン市国」がある国である。
カトリック教会の総本山、全市民が何かしらの聖職者というキリスト教とは切っても切れない関係にある国だ。
そのためなのかキリスト教の「7つの大罪」(傲慢 嫉妬 憤怒 怠惰 強欲 暴食 色欲)に触れる表現が多い。

「デカメロン」の中で「姦淫は大した罪ではないと神に言われた話」とか「尼僧も男性に興味津々の話」とか「僧侶が人妻をかどわかそうとする話」など、やはりキリスト教と深い関係のある話が多々登場する。
規範、規定や規律のような厳格な約束があるからこそ、破りたくなる輩が出るのか。
日本人は武士道の影響から「恥」を最も悪いことと認識する民族だが、キリスト教徒の場合は「罪」に重い意識を持つようである。
その意識の違いを文化の違いと言ってしまえばそれまでかもしれないけど。(笑)

30年以上前の映画であるが、今観ても充分衝撃的だった。
宗教的アナーキスト(こんな言葉があるのか?)パゾリーニの他の作品も観る機会を持ちたいと思った。