高木由利子 カオスコスモス 壱 氷結過程 鑑賞

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【ジャイル・ギャラリーの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道のジャイル・ギャラリーで開催されている「高木由利子写真展 カオスコスモス 壱 氷結過程」が非常に気になったSNAKEPIPE。
友人Mを誘って行ってみることにする。

高木由利子ってどこかで聞いたことあるような?
自宅にある写真集などをひっくり返してみると、1990年6月に発行された「NHK趣味百科 近未来写真術」に名前があるじゃないの!
この雑誌については2021年11月に鑑賞した「M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」の中でも書いていたっけ。
この時掲載された高木由利子の作品は「ラフたち」という外国人をモデルにしたファッション・フォトのような作り込み写真だよ。
高木由利子とは、どんな人物なのか調べてみよう。

1951 東京生まれ
1969 武蔵野美術大学商業デザイン科に入学
1972 ポルトガルに渡る
1973 イギリスのTrent Polytechnicにてファッションデザインを学ぶ
1976 フリーランスのファッションデザイナーとして、8年間ロンドン、パリを中心に、モロッコ、イタリアなどを飛び回る。
モロッコにて写真に興味をもちはじめる
1985 現代アーティスト、クリストの作品Surrounding Island(Miami)などの撮影に参加。
ロンドン、パリ、インドネシア、東京にて、アーティストである友人や親しい人々のヌードを、彼らの生活空間で撮影しはじめる。
1990 オリエンタリズムのプロジェクトで東京をはじめとしてバルセロナ、イスタンブール、ロンドン、パリへの撮影旅行をする
1993-1996 ケニア、タイ、トルコ、インド撮影旅行
1996 三宅一生のプリーツ100着をインドに持ち込み2ヶ月間に渡り撮影する
1997-1999 三宅一生のプリーツ100着をKENYA、中国、モロッコに持ち込み撮影旅行をする。

ヨーガン・レールのテキスタイルを、日本、インドネシアで1年間かけて撮りおろし、作品集「ころも」が出版される。
1998-2006 「混乱する引力」ヌードのプロジェクトを、インドネシア、ハワイ島、南米、南アフリカ、日本、中国、インドで行う。

1951年生まれということは、今年71歳!
ムサビ入学後にロンドンでデザインを勉強し、デザイナーとして海外で活動していたとは驚き!
ファッションと写真が結びついた作品を作っているのは納得だよね。
SNAKEPIPEが所持している雑誌に載っているのもヌードなので、ジャイル・ギャラリーで展示されている作品とは雰囲気が全然違うよ。

では今回の展覧会をまとめてみよう。
ジャイル・ギャラリーは撮影オッケーなので嬉しいね!
撮影した写真と共に感想を書いていこうか。

「始まり」と題された作品からスタート。
高木由利子本人の文章が載っているんだけど、どうやら寒冷地で氷を作ったらしい。
「始まり」は四角い箱のような氷の中に、凍った葉(のように見える)が入っている作品。
凍っていても、葉は生きているんだろうね。
これこそ生命力!
だから始まりなのか!(陳腐)

「地上絵」と第された横幅420cmの大型作品。
年表の中に現代アーティスト、クリストの名前があったよね?
クリストの作品は、島をまるごとラッピングするような環境アートなので、俯瞰で撮影された画像で作品を知ることになる。
地上絵も同様に、遥か上空からでないと作品の全貌を知ることが出来ない点が共通してるよね。
「地上絵」のお値段、500万円だって!
オシャレなビルに飾ってあったら、より高級感が増しそう。

次の会場に入った瞬間、友人Mと同時に声がでる。
「カッコいいーーー!」
「標本箱」と第された作品群が並んでいる。
写真なのにアブストラクト、しかもモノクロームというのが斬新で。
氷の形状に加え、氷に当たる光の反射が漆黒に近い黒色に映える。
額縁もオシャレで、「標本箱」シリーズ全体をSNAKEPIPE MUSEUMに保管したくなるね。

「標本箱」全体を写したところ。
壁一面に横幅150cmの大型写真が展示され、下には高さがマチマチの立方体の上に幅38cmの小型写真が配置されている。
なんともいえない重厚さ!
大型2枚と小型3枚だとバランス良いかも。
このセットだと約200万円!(笑)
額縁も素敵だったので、全部合わせて欲しくなったよ!

「脳内過程」というタイトルのリトグラフ作品もあった。
恐らく同一図版を使用した作品に見えたけど、黒色の濃淡で印象が全く違って面白かった。
こうして並べて見せるのが良いんだろうね。
写真製版を外国人から提案された、といった文章が展示されていたよ。
高木由利子は国際派だから、様々な国の人と交流があるんだろうね。

アクリルで作られているような月に見える球体。
この素材を使って写真撮影していたんだろうね。
横から見ると、球体だと思っていた形が平面に見えてくる。
不思議な造形だよね!
先日の皆既月食に限らず、月を見上げるのが好きなSNAKEPIPEにとっては、この立体は垂涎物!
これが部屋にあったら、ずっと眺めているだろうなあ。(笑)

「すごく良かったね」と感想を言いながら、ギャラリーをあとにする。
MOMAショップをうろついて、面白い箸置きを興奮気味に買ってからエスカレーターに向かう。
吹き抜け部分に高木由利子の作品が吊るされていた。
上を見上げるように撮影。
だってほら、月は見上げるものでしょ?(笑)

観念的で難解な解説を好むジャイル・ギャラリーだけど、好みの展示が多いんだよね。
マメにチェックして、また出かけよう!

映画の殿 第53号 韓国ドラマ編 part9

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【今回は人の顔が大きめなので、どのドラマの出演者か分かりやすいね】

SNAKEPIPE WROTE:

約1ヶ月半前に「映画の殿 第52号 韓国ドラマ編 part8」を書いたばかりなのに、すでに何本かのドラマを鑑賞し終えているROCKHURRAH RECORDS。
その理由は、話数が少ないドラマが多かったことかな。
早速感想をまとめていこうか。

最初は「私の開放日誌(原題:나의 해방일지 2022年)」から。
ドラマは『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』と同じ脚本家のパク・ヘヨンが手掛けていると聞き、興味がわくよね!
一体どんなストーリーなのか、あらすじを書いてみよう。

愛が欲しい長女のギジョン、なかなか思うように動けない長男のチャンヒ、日々を淡々と過ごす無口な末っ子のミジョン。
全く違う性格の三兄妹は、単調な毎日にうんざりしていた。
そんな時、クという謎の男が現れて…。(イエモネより)

続いてトレイラーね。

ソウルまでの通勤に1時間半以上かかる郊外に暮らす三兄妹。
休日には家の畑の手伝いもする。
長い通勤時間にうんざりし、自分の思い通りにならない日々が続いたら、誰でも嫌になってくるよね。
社内で仲間外れにされたり、イジメもあるのに耐えている末っ子のミジョン。
無口で鈍感なフリをしているけれど、実は腸が煮えくり返っているとは誰も気付かない。
このドラマを観てから、SNAKEPIPEの社内にもミジョンのような女性がいることを思い出したよ。
もしかしたらストレスたまりまくっているのに、我慢してるのかもしれないね。
謎の男、クさんに対してだけは、本心を話すことができるので、最初から波長が合ってたのかもね。

SNAKEPIPEが面白いと思ったのは長女を演じたイ・エル。
嫌味ばかり言う「ひがみっぽい」性格だったのに、どんどん素敵に変貌していくんだよね。
この女優は「トッケビ」など、他のドラマでもよく見かけるけど、その時によって別人に見えるからカメレオン系なんだろうね。
注目していきたい女優の一人だね!
「開放クラブ」に入る中年男性が、「マイ・ディア・ミスター」に出てきたフゲの社長だったのが嬉しかった。
やっぱり脚本家でつながるんだね。(笑)

ドラマの終盤は少しだけ駆け足で、やや説明的になっていたのが残念な感じ。
クさんは謎のままでも良かったのでは?と思うのはSNAKEPIPEだけかな?
「今日はきっといい日になる」という標識は良かったね。
この言葉を思い出して日々を生きていこう!

「空から降る一億の星(原題:하늘에서 내리는 일억개의 별 2018年)」は長年来の友人Mから強くオススメされていたドラマなんだよね。
このドラマは今から20年前の2002年に、木村拓哉主演で放映されたドラマのリメイクだったとは全く知らずに観始めたよ。
日本のドラマってほとんど観ないからね。(笑)
本家とどこが違うのかなどは分からないので、比較できずにごめんなさい。
ではあらすじとトレイラーね!

広告デザイン会社で働くユ・ジンガンは、20歳離れた警察官の兄・ジングクと2人で暮らす29歳の独身女性。
ある日、陶芸家の親友・ペク・スンアが開く個展会場を訪れたジンガンは、怪物と呼ばれた男・キム・ムヨンと偶然出会う。
だが、会場で行われるパーティーの準備中にスンアの秘密を知ったムヨンは、その秘密を隠したいと願うスンアの望みを叶え、2人の距離は急接近していく。
一方、ジングクは、同僚が捜査する事件現場に偶然出くわすが、飛び降り自殺だと思われたその事件は、実は他殺だった。
独自で捜査を始めるジングクだったが、その事件の真実に近づくにつれ事件は思わぬ方向に進んでいく…(ホームドラマチャンネルより)

主役であるキム・ムヨンを演じたのは「元カレは天才詐欺師」で詐欺師だったソ・イングク。
顔立ちのせいか、暗い過去がある設定が良く似合っている。
ヒロインの兄ジングクを演じたのが、「ルーガル」で悪役だったパク・ソンウンだったので、優しい兄という設定に違和感があったよ。
「この人は悪人なのに」と思いながら観てしまったからね。(笑)

サスペンスを主軸にラブ・ストーリーが交錯するドラマだった。
最後はまさかの結末!
これ、本家の日本版も同じだったのかしら?
もし同じだったとしたら、変えても良かったんじゃないかと思ってしまう。
ちょっと後味が悪いラストだったからね。

続いては「グリッチ -青い閃光の記憶(原題:글리치 2022年)」を紹介しよう。
ドラマを観始めてから「あれ?」とSNAKEPIPEが気付く。
髪型が違っているけれど、主演女優は「ヴィンツェンツォ」で弁護士を演じていたチョン・ヨビンだよね?
あまりに化粧っ気なく、髪はボサボサ、服装にも気遣わないという役どころなので、別人かと思ってしまったよ。
相方には元アイドルグループ出身で、「世界で一番美しい顔」に選ばれたというナナ。
「対称的な2人がタッグを組む」というギャップを見せたかったのかもね?

突然姿を消した恋人を探すため「UFOマイナー掲示板」のオフ会に行った主人公が、旧友と再会、協力して恋人失踪の謎を追ううちに、怪しい宗教団体の真実に迫ることになる。
そこでは恐ろしい計画が進行中で……(むらたえりか氏記事より)

あらすじにあるように「UFO」と宗教団体、恋人の失踪と気になるワードが並んでいるんだよね。
このドラマは全10話と少し短めで、一体どこに着地するんだろうと思いながら鑑賞していたよ。
「セーラー」と天を仰ぐ宗教団体が出てきたあたりが面白かった!(笑)
興味をそそる要素はたくさん散りばめられているのに、振り返ってみると説明不足のためか物足りなさを感じてしまう。
ちょっと惜しいドラマだったなあ。(笑)

最後は「人間レッスン(原題:인간수업 2020年)」ね。
梨泰院クラス」や「SKYキャッスル〜上級階級の妻たち〜」に出演していたキム・ドンヒが主演を務める。
学年トップの成績を収める優等生だけど、友達がいないという設定が良く似合っていたよ。
画像一番右に写っているチョン・ダビンは、上に書いた「グリッチ」にも出演しているんだよね。
たまたま続けて観たから分かったけれど、まるで別人なんだよ!
「グリッチ」と「人間レッスン」は制作が同じだからなのかな?(笑)

学校では目立たない優等生のジス。
しかしそんな彼には売春の警護を仲介するという違法行為を行う裏の顔が。
そんな違法行為を専用のスマホで行っていたジスだったが、ある日そのスマホを何者かに奪われてしまい・・・(賢い韓ドラ生活より)

頭が良いから、自分の姿は見せずに商売ができるようなシステムを立ち上げたんだろうね。
SNAKEPIPEは商売の成り立ちに興味があったんだけど、ドラマではすでに運用が開始されているところだったね。
お金を貯めるためとはいえ、犯罪であることに間違いはない。
それでも観ているうちにジスの味方になってしまうんだよね。
ジスの父親を演じた「マイ・ディア・ミスター」のアニキのダメっぷりが最高!
あの手の役を演じたら右に出る人はいないかも。(笑)

商売の相方であるイ室長の存在感が抜群だったね。
軍隊の体験を忘れずにいるオヤジといえば、「バッド・アス」のダニー・トレホみたいじゃない?
いいよねえ、こういうタイプ!(笑)
演じたチェ・ミンス、現在60歳。
「リベラ・メ」という2000年の映画で百想芸術大賞の最優秀男子演技賞を受賞している実力派なんだね。
その映画も気になるよ。

「人間レッスン」は高校生が援助交際する、という題材なだけに最初からちょっと危ないんだよね。
そんな危ない橋を渡っているのにもかかわらず、主人公ジスの小心者ぶりに呆れてしまう。
細かいミスも多いので「やるなら徹底的にやって、できないならやめろ」と言いたくなってしまったよ。(笑)
そんな性格のジスだから、ラストの展開は予想通りかな。
「DEATH NOTE」の夜神月(やがみ ライト)とは違うからね。(笑)

今回は4本のドラマを紹介してみたよ!
「私の開放日誌」が印象に残っていて、4本の中では一番だけど、「あがめる」ってなかなか使わないし、人に命令できないよねえ?
そのセリフには共感できないんだなあ。(笑)
現在また別のドラマを視聴中なので、近い将来まとめていこう!

パラレル・マザーズ鑑賞

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【ヒューマントラストシネマ有楽町内の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバル監督の新作が始まっていることを知らせてくれたのはROCKHURRAHだった。
タイトルは「パラレル・マザーズ(原題:Madres paralelas 2021年)。
主演はペネロペ・クルスだというから期待しちゃうよね!
早速チケット予約をして、有楽町に向かったのである。

朝と日中の気温差が10℃くらいあると服装選びに困るよね。
「備えあれば憂いなし」として、少し厚着したROCKHURRAHは、途中で服を脱いでしまった。
日差しの下では暑いくらいで、11月中旬とは思えない小春日和だったよ。
選んだ映画館は有楽町駅から徒歩1分のところにあるヒューマントラストシネマ有楽町なので、道に迷うこともなく、あっさり到着。
あまり混んでいない予想をしていたのにもかかわらず、着席すると7割近く埋まっていたのには驚いた。
小さめの劇場だったので、ちょっと息苦しい感じになったよ。
客層としては年齢層はどちらかというと高めで、一人で来ている人が多かった印象だね。

まずはトレイラーを載せてみよう。

 

続いてあらすじね。

フォトグラファーのジャニスと17歳のアナは、出産を控えて入院した病院で出会う。
共に予想外の妊娠で、シングルマザーになることを決意していた二人は、同じ日に女の子を出産し、再会を誓い合って退院する。
だが、ジャニスはセシリアと名付けた娘と対面した元恋人から、「自分の子供とは思えない」と告げられる。
そして、ジャニスが踏み切ったDNAテストによって、セシリアが実の子ではないことが判明する。
アナの娘と取り違えられたのではないかと疑ったジャニスだったが、激しい葛藤の末、この秘密を封印し、アナとの連絡を絶つことを選ぶ。
それから1年後、アナと偶然に再会したジャニスは、アナの娘が亡くなったことを知らされる──。(公式サイトより)

アルモドバル監督作品に多数出演しているペネロペだけど、主演するのは「ボルベール〈帰郷〉」以来になるのかな?
ペネロペは今年48歳なので、映画の中で17歳の子と一緒に妊娠しているシーンは、ちょっとだけ無理がある設定だったかもしれない。
そうはいってもペネロペの美貌とスタイルの良さは健在で、おしゃれなファッションも似合っていたよ。
さすがにアルモドバルのミューズだね!
ジャニスという役名についての説明が面白かったよ。
ネタバレになるから書かないけれど、「ボルベール」にも似た話が出てきているので、アルモドバルが好きなんだろうね。(笑)

あらすじに出てきた17歳のアナを演じたのは、長編映画2作目だという新人のミレナ・スミット。
映画の途中でバッサリ髪を切り、イメチェンしていたよ。
とてもかわいいヘアスタイルで、よく似合っていたね。
モデルもこなしているようで、ジャージ姿もカッコ良いよね!

ペネロペ演じるジャニスの親友として登場したのがロッシ・デ・パルマだったので、嬉しくなってしまう。
80年代後半から90年代のアルモドバル作品に登場した、常連女優だからね!
「ジュリエッタ」にも出ていたようだけど、すっかり忘れているね。(笑)
かつては「ピカソの顔」と書いていたロッシだったけれど、太ったせいか顔の「いびつさ」が目立たなくなっていたよ。
フエリタ・セリーノもお婆ちゃん役で登場していたね。
アルモドバルの全盛期を支えた女優陣の登場は、安心感を与えてくれるよ。

新生児を取り違うといえば、是枝裕和監督の「そして父になる(2013年)」を思い出す。
ROCKHURRAH RECORDSでは未視聴なので、なんとも言えないけれど、カンヌ映画祭審査員賞を受賞している作品なので、アルモドバルも知っていたはずだよね?
是枝監督と似た題材を選び、アルモドバルの味付けになっていたかといえば、そこまで強い個性は感じられなかったのが残念だった。
アルモドバルらしい突飛さやギャグもなく、淡々とメロドラマが進行していったからね。

アルモドバルらしいといえば、女優たちのファッションだったり、室内装飾のカラフルさはおしゃれだった。
ペイン・アンド・グローリー」の感想にも書いているように、アルモドバル作品は視聴コンプリートを目指しているので、次回作も必ず観る予定だよ。
次はアルモドバル色を強めの、奇抜な映画に期待したいね!

Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後 鑑賞

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【Art in Box入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE: 

アーチゾン美術館で開催されている「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」に行ってみよう、とROCKHURRAHからの誘いを受ける。
アーチゾン美術館といえば、ジャム・セッションというアーティストとのコラボ企画を何度か鑑賞しているんだよね。
昨年の11月は「M式『海の幸』ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」だったっけ。
その前は10月で「鴻池朋子 ちゅうがえり」だったので、ジャム・セッションは秋口に開催されるものと思っていたSNAKEPIPE。
今年はどうなってるんだろう、と調べてみると「セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」は7月に終了していたよ。
情報を入手していなかったのは残念だね!
来年はマメにチェックしておこう。(笑)

1年ぶりのアーチゾン美術館は、「パリ・オペラ座−響き合う芸術の殿堂」が始まる前だったので、全体的に「ひっそり」したムード。
チケット料金が500円というのも納得だね。(笑)

会場に入ると、まずは美術館所蔵作品から展示が始まる。
アーチゾン美術館は、マネもモネもピカソも、ほとんどの作品が撮影オッケー!
この太っ腹には拍手を贈りたいね。(笑)

気になった作品をいくつか紹介していこう。
「馬の頭部のある静物」はポール・ゴーギャンの作品ね。
SNAKEPIPEが高校生だった頃、一人でゴーギャン展を観に行ったことがある。
今から思えば竹橋の東京国立近代美術館だったように記憶しているけど、どうだろう。
タヒチの女性を描いたポスターを買って帰ったけど、飾った覚えはないなあ。
今回観た作品は、馬の左上に中国風の人形があり、中央と右には日本の(?)うちわが飾ってあり、奇妙な印象を受ける。
特に人形の顔が不気味で、そこが気に入ったんだよね!(笑)

藤田嗣治、1940年の作品「ドルドーニュの家」。
FUJITAといえば、美術館でお目にかかるのは、女性を描いた作品がほとんどなんだよね。
今回目にした油絵は、室内をモノトーンで描いていて新鮮だよ。
壁に銃が下がっているところに、戦争の暗い影が見え隠れする。
前年から第二次世界大戦が勃発していることを思い出すね。
Wikipediaによれば、その頃日本に帰国しているようなので、もしかしたらこの作品は日本で制作されたのかもしれない。

ジャン・フォートリエという名前に聞き覚えがないよ。
「旋回する線」という作品も初めて観たかもしれない。
どうやら2014年に東京ステーションギャラリーで展覧会が開催されていたようだけど、未鑑賞。
抽象絵画に興味を持つようになったのは割と最近だからね。(笑)
少ない色で、何を意味しているのか不明な絵だけれど,抑えた色調とボールペンの試し書きみたいな線が面白いよ。
他にどんな作品を残しているのか、検索しておこう。

いよいよお目当てのマルセル・デュシャン「Art in Box」の会場へ。
企画展とは言っても、常設展の片隅に「こじんまり」と設けられている。
そして撮影可能とそうではない作品が半分ずつくらい。
会場で渡された冊子に、全ての展示作品が載っていたので、撮影できなかったものに関しては、その冊子から転載させていただくことにした。
右の画像はフルクサスという1960年代に起こった芸術運動の作品をトランクに収めたもの。
どんな内容だったのか気になるよね!

こちらもフルクサス。
30周年記念のサウンド・アンソロジーだって。
Eric Andersen、Marcel Alocco、Giuseppe Chiariらの名前がタイピングされているカセットテープ。
イベント開催のチラシなのか、悪魔みたいな人影が描かれた色紙がある。
1962年からの音源をまとめているようで、一体どんな音が奏でられていたんだろうね?

デュシャンの「グリーン・ボックス」。
通称「大ガラス」と呼ばれる「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」を制作するためのメモやスケッチ、ノート類をボール紙の箱に収めた作品だという。
1934年に、どうやって複製を作ったのか不明だけど、通常版を300部、豪華版を20部制作したとのこと。
展示されていたのは通常版だったのか?(笑)

展示されていたデュシャンの箱の中で、一番気に入ったのはこれ。
「携帯できる美術館」として、自らの作品の複製をミニチュアにしてまとめているという。
言ってみれば「デュシャン・セット」ってことだよね。(笑)
中央左に小さな便器が見えるし、髭のあるモナリザまであって、このトランクの複製があったら欲しくなっちゃうよね!

デュシャンのホワイト・ボックス。
ニューヨークの画廊と提携して出版されたという。
メモや冊子が入っているので、デュシャンが何を思ったり気に留めていたのかを知る手がかりになりそう。
コレクターなら手に入れたい逸品だろうね!
先日出かけた川村記念美術館にもデュシャンの作品あったんだよね。
箱に「ローズ・セラヴィ」と書いてあって、とても字が上手かった!
川村記念美術館の作品リストには「大ガラスと関連作品」と書いてあるよ。
意外と日本にも入ってきてるんだね。

デュシャンについて書かれた書籍の外観デザインをデュシャンが担当したもの。
デュシャンの経歴に加え、予備資料として作品目録を付けてあるんだとか。
紙がベコベコになっていて、手作り感満載の雰囲気が良かったよ!
中身を観てみたかったなあ。
土色と黒のコントラストも素敵だったよ。

箱を作品制作に取り入れるといえば、ジョゼフ・コーネルだよね!
川村記念美術館ほどの規模ではないけれど、アーチゾン美術館にもコーネル作品がいくつか並んでいたよ。
1949年の作品「見棄てられた止り木」。
鳥は飛び立ってしまったのか、姿が見えないよね。
床には鳥の羽とおぼしき物体が残されている。
分かりやすいタイプの作品だけど、コーネルの箱って可愛くて好きなんだよね!

コーネルのコラージュも展示されていた。
先程の鳥はここに登場したのかもしれないね?
「衛星の観測 I」は、スノードームのような形状のガラスに、ベラスケスの有名な「ラス・メニーナス」とハチドリが入っている。
空には宝石のような立体が浮かんでいて、これも可愛らしいよね。
他の作品もポストカードになっていたらほしい、と思ったよ。
残念ながらミュージアム・ショップが開いてなかったので販売されていたのかどうかは不明!

日本人のアーティストの作品もあったよ。
デュシャンと交流があった瀧口修造や、フルクサスのメンバーとして活動していた塩見允枝子などの作品展示もあり、「こじんまり」しているけれど、充実したコレクションだったね。
載せた山口勝弘の「ヴィトリーヌ」(1955年)も箱の作品といえるかも。
見る角度によって変化するガラスを前面に使用した作品は、紹介したコーネルのコラージュと同時代の制作なんだね。
白髪一雄が具体に参加したのも1955年なので、1950年代の日本について調べてみようと思ったよ。

アーチゾン美術館で「ご自由にどうぞ」と積まれていた「Art in Box」の冊子が素晴らしいの!
撮影できなかった作品も含めて画像が載っていて、詳しい説明まで書いてある。
この冊子は、ほとんどカタログ並のクオリティだよ。
アーチゾン美術館、ありがとう!(笑)
来年のジャム・セッションを楽しみにしよう。