
【薄明るい空をバックに看板を撮影】
SNAKEPIPE WROTE:
2024年11月の「江之浦測候所 見学」他、当ブログでは何度も登場している現代アーティストの杉本博司。
東京国立近代美術館で個展が開催されることを知ったのは、2026年2月の「アンチ・アクション 彼女たち、それぞれの応答と挑戦」を鑑賞した時にフライヤーを入手したからだよ!
「絶滅写真」なんて、物騒なタイトルがついているよ。
「これは行かねば」と頭の片隅に置いて、忘れていなかったんだよね。(笑)
ROCKHURRAHの誕生祝いとして、この展覧会鑑賞もプレゼントしたのである。
梅雨はまだ明けていないけれど、雨は降らない予報の日、竹橋に向かう。
皇居のお堀周りは、道幅がゆったりしていて散歩コースに最適だよね。
この日は人が少なめだったので、余計に歩きやすかったよ。
会場内も予想よりお客さんが少なくて、ゆっくり鑑賞することができた。
撮影に関してはすべてOK、海景シリーズにいたっては動画撮影も可能とされている。
さすが杉本博司!(笑)
鑑賞者の気持ちに寄り添ってくれてありがとう!
1975年から制作された「ジオラマ」シリーズは、アメリカ自然史博物館の展示物を撮影した作品で、杉本博司のデビュー作なんだよね。
「現場で撮影したような」仕上がりになっているところがポイントらしい。
実際に撮影された、人類創世の場面に思えたからね!
1976年、シリーズの中の一枚「Polar Bear」がMOMAに買い上げられているという。
70年代からコンセプトと作品がしっかりしている証拠だよね。
「ジオラマ」シリーズは、マルセル・デュシャンのレディ・メイドの系譜なんだろうな。
ニューヨークにある自然史博物館のジオラマとの比較もしてみたくなるね!
「劇場」シリーズを最初に観たのはいつだっただろう。
空っぽの客席と眩しい光を放つスクリーン、妙にくっきりした背景の意味が分からなかったSNAKEPIPE。
写真家だった父に尋ねると「1枚の写真に映画1本が写ってるわけよ」とニヤニヤしながら答え、「頭のいい人は考えることが違うねえ」と感心していたことを思い出す。
映画のスタートでシャッターを開き、映画終了でシャッターを切る長い露光時間をかけ、映画と時間を1枚に封じ込めている作品群なんだよね!
映画のタイトルもキャプションに加わっていた時もあったように記憶しているけれど、今回は劇場名だけが表記されていた。
載せた画像は、ディズニーの「白雪姫」が映写されていたとのこと。
廃墟と化した劇場にグッときたSNAKEPIPEだよ!
お馴染みの「海景」シリーズがズラリと横に並んでいる。
119.4 × 149.2 cmという大きさの作品が7枚とは、圧巻!
画像はROCKHURRAHが撮影してくれたパノラマ写真だよ!
「原始人の見ていた風景を、現代人も同じように見ることは可能か」
という問いから撮影された企画だという。
空と海が真っ二つという構図は、どの作品でも一緒。
シンプルな作品なのに、圧倒的な存在感とインパクトがあるんだよね!
ベンチに座ってゆったり鑑賞できるのが良かった。
今は亡き「川村記念美術館」にあったロスコ・ルームにいる時と同じ感覚になる。
ロスコ・ルームにあった作品数も7点だったはずなので、今回の展示は意識的なのかもしれない。
原始から現代まで変わらない悠久の時をしっとりと感じられたような気分になる。
ちなみに「川村記念美術館」は2030年頃六本木の国際文化会館に移転されるらしいので、またロスコ・ルームを訪問したいね。
「建築」シリーズを観たのは初めてだと思う。
1997年から制作されたのは「焦点をボカすことによって、建築が建つ前の建築家の脳内ビジョンを再現」しようとする試みだという。
クライスラービルやワールド・トレード・センターがピンぼけで撮影されている。
作品を鑑賞している時には杉本博司のコンセプトを知らなかったけれど、一目惚れしてしまった。
ROCKHURRAHも同じ感想を持ったという。
載せた作品は2002年の「バラガン邸」。
構図と形がバッチリ決まってて、カッコ良いね!
突然、クリスチャン・ディオールのドレスが登場して驚く。
何事かと思いながら進むと「観念の形」が並んでいるのを観て納得!
ドレスを「形」として捉えているんだね。
「観念の形」は「三次関数の数式を立体化した石膏」を撮影したシリーズ。
数式を具現化する作品を初めて観たのは、2023年の「ワールド・クラスルーム」だったみたい。
江之浦測候所にも「観念の形」が展示されていて、金属が放つ光に見入ったものよ。
ピカピカ光っていて美しいんだよね!(笑)
世界中の有名な人物の肖像写真が展示されている。
何百年も前に亡くなったはずの歴史上の人物まで撮影されていて、不思議だよ。
これらの写真群は「肖像」シリーズで、ロンドンにあるマダム・タッソー館の蝋人形を撮影したものだという。
杉本博司のデビュー作「ジオラマ」シリーズと同じ手法で、既存の展示物を「肖像写真のように」撮影したものなんだね。
蝋人形の精巧さに目を見張り、杉本博司がリアルタイムで撮った本物の肖像写真に見えるところにも舌を巻く。
日本の象徴だった「あの方」も蝋人形になっていたとは、びっくり!
中国のSF作家・劉慈欣(リウ・ツーシン)が2006年に発表した「三体」に夢中になったことは「映画の殿 第71号 三体 テンセント版」で熱っぽく語っているSNAKEPIPE。
雷を見ると「三体」や球状閃電を想起するようになっている。
これはROCKHURRAHも同じで、杉本博司の「放電場」を観た瞬間、頭に浮かんだのは「三体」だという。
「暗室内で人工的に放電を発生させ、その小さな雷のような光跡をとらえた」シリーズなんだとか。
この発想がまさに球状閃電だよね。(笑)
とても気に入ったので、スマホの待受画面に採用させてもらったSNAKEPIPEだよ!
観た瞬間「ロスコだ!」と思う。
赤と黒のバランスがロスコ風だけど、画面が2分割されているところは「海景」だよね。(笑)
色合いがとても美しいよ。
「Opticks(オプティクス)」は、アイザック・ニュートンが1704年に出版した「光学」に載っている分光実験を再現し、光の色を撮影したシリーズだって。
この実験をするために英語版の初版を購入した、と書かれている。
AIに値段を聞いてみたら、600万円から2500万円と幅のある答えが返ってきたよ。
歴史的な価値やコンディションによって価格が変動するためらしい。
そんなに高額な「光学」(プッ!)を購入して、実験をしたと知り、改めて杉本博司の意気込みを認識したよ!
1970年代のデビュー作から現在までの写真展示は見応え充分!
すべての作品に添えられた短歌も面白くて、笑ってしまう文章もあったよ。(笑)
タイトルの「絶滅写真」とは、デジタルに置き換わりつつある銀塩写真のことを表しているらしい。
杉本博司は確乎たるコンセプトに基づき「これを撮る」とテーマを決めてから撮影を行っている。
解説を文章化できる、写真を使った現代アートなんだよね。
コンセプトを決めるために自問自答することや能と杉本作品についての考察が図録の解説に載っていて、興味深かったよ。
載せた画像は2021年10月「The Artists」展で観た、横尾先生が描いた杉本博司の肖像。
背景を白と黒で2分割されてても良かったかも、と思ってしまうよ。(笑)
かつては写真撮影が趣味で「マイ引き伸ばし機」を持ち、自分で現像や焼付やっていたSNAKEPIPEも、今はデジタル写真しか撮っていない。
現像するまで何が写っているか分からず、ドキドキしていたあの頃が懐かしい。
レコードも同様でアナログ文化が衰退していることは非常に残念に思うよ。
「江之浦測候所」を遺作とし、この展覧会に向けて「私は銀塩写真の寿命と私の寿命とが響き合っていることに幸せを感じている」という言葉を記している、現在78歳の杉本博司。
何をおっしゃるウサギさん!(笑)
まだまだ銀塩写真を使ったコンセプチュアル・アートを見せて欲しいと思う。
「江之浦測候所」も再訪問したいね!









