アンドリュー・ワイエス展 鑑賞

20260628 top.
【東京都美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年10月に「田名網敬一 記憶の冒険」をご一緒した、現代アート好きの友人Hと久しぶりに待ち合わせる。
SNAKEPIPEの闘病生活前に約束していたけれど、高熱のためにキャンセルさせていただいた経緯があるよ。
およそ2年ぶりの再会になるんだね!
今回も何か展覧会を鑑賞しよう、ということで決定したのが「アンドリュー・ワイエス展」。
東京都美術館開館100周年記念として企画されているんだよね。

「ワイエス展」を提案したSNAKEPIPEには、忘れられないエピソードがある。
今から4年前に他界した、SNAKEPIPEの父親が好んでいた画家がワイエスだったから。
写真をやっていたのに、部屋に飾っていたのはワイエスとアンリ・ルソーの作品だったっけ。
ワイエスの「クリスティーナの世界」は、筋肉疾患を患い歩くことができなくなってしまったクリスティーナ・オルソンをモデルにした作品。
ワイエスは1940年から約30年に渡り、妻の紹介で知り合った別荘近くに住んでいたオルソン家の姉弟、クリスティーナとアルヴァロをモデルに描き続けたとのこと。
クリスティーナは車椅子を使用せず、腕の力だけを使い這って移動したという。
精神力の強さが表現されている作品を観ながら「グッと胸に迫るものがある」とうなずいていた父親を思い出す。
SNAKEPIPEはこの作品以外知らないので、ワイエス展を観たいと思ったんだよね!

まずはワイエスの経歴を調べてみよう。

1917 米国ペンシルベニア州に生まれる
父は著名なイラストレーター・画家の N.C.ワイエス
1920-1930 病弱だったため学校にはほとんど通わず、自宅で教育を受ける
1937 ニューヨークの マクベス・ギャラリーで初個展を開催し、作品は即日完売する
1940 ベッツィ・ジェームズと結婚
1945 父 N.C.ワイエスが鉄道事故で死去
1948 「クリスティーナの世界」を制作
1950 「クリスティーナの世界」が Museum of Modern Art に収蔵される 
アメリカを代表する写実画家として評価を確立
1963 アメリカ合衆国大統領より、大統領自由勲章を受賞
全米芸術賞受賞
1988 アメリカ政府より議会名誉黄金勲章を授与
2007 国家芸術勲章受章
2009 老衰のため91歳で逝去

画家の父親からの手ほどきで描き始め、学校に通っていないことに驚く。
才能が受け継がれていたんだね!
「クリスティーナの世界」はMOMAが所蔵している点にも注目だよ。
たくさんあり過ぎて書ききれないほど、様々な賞を受賞している有名なアーティストなんだね。

梅雨の晴れ間といった快晴の日、上野に向かう。
つい先日、国立西洋美術館で「チュルリョーニス展」と「北斎 冨嶽三十六景」を鑑賞したばかり。
上野はいつでも人が多いよね。
友人Hとは公園改札口で待ち合わせ。
かなり早く着いてしまったので、駅構内を回って散策してから、友人Hの待つ場所へ。
ここにいる、と言われた場所に友人Hの姿が見えない。
首をかしげるSNAKEPIPEに向かって、手を振っている人を確認する。
「海外からの旅行者」と思って、視線を素通りしていた人が友人Hだったとは!(笑)
華やかなお顔立ちの彼女は、外国人に見えるのも納得。
久しぶりの再会に喜びながら、会場に向かう怪しい2人組だよ!

開館時間は並んでいるだろうという予想をして、少し時間をズラしたけれど、やっぱりチケット購入で並ぶ羽目になってしまった。
予約していなかったから仕方ないね。
それでも時間は短いほうだったのかもしれないな。
会場に入ると、予想通り大勢のお客さんで賑わっている。
とても鑑賞し辛い状態で、SNAKEPIPEが苦手な牛歩だよ。(笑)
撮影については一部のみOKだったので、載せている画像は全てSNAKEPIPE撮影ではないので4649ね!

1947年の「雪の朝(Snowy Morning)」はテンペラで描かれた作品だよ。
テンペラについては「チュルリョーニス展」の時に調べてるね。
「油絵具が普及する前には主にヨーロッパで使用されていた絵具だという。
顔料に卵を混ぜた卵テンペラが代表的なテンペラ技法で、卵テンペラは経年劣化しにくい特徴がある。」と書いているよ。
冬の寒い朝、灯台の明かりが周囲を照らしている。
ひっそりした中に、照明がついた窓にクリスマスリースが飾ってあるのが見える。
つつましやかで、穏やかな家庭のぬくもりを感じるね。
色合いと構図が気に入った作品だよ!

「マザー・アーチーの教会(Mother Archie’s Church)」は1945年の作品。
教会とタイトルになければ、どこの場所なのか分からないよ。
どうやら廃墟だった校舎を教会に改築したらしい。
描かれている時は改築前の様子なのかもしれないね。
ひび割れた天井に壊れたランプとは、廃墟好きにはたまらないモチーフだよ。(笑)
この視点も写真家みたいなんだよね。
白い鳥には、どんな意味が含まれているんだろう。

ワイエスが好んで描いたオルソン家。
先に載せたクリスティーナの家だよね。
オルソン家の3階からの景色らしく、かつては煙突から住民であるクリスティーナと弟の声が聞こえていた話を「日曜美術館」で知ったよ。
タイトルは「オルソン家の終焉(End of Olsons)」で1969年の作品だよ。
クリスティーナは1968年、弟のアルヴァロはその前年に世を去っているという。
無人になったオルソン家を描いた作品になるんだね。
遠くに飛んでいる鳥を目ざとく見つけた友人Hの観察眼に感服!
「オルソン家の終焉」は、ほぼ正方形で完成となっているけれど、実際には縦の長さが倍だったみたいなんだよね。
下半分が白く塗りつぶされている展示があったので、切り取られた上半分が作品になったことが分かったよ。
トリミングされた下部分はどんなだったんだろうね?

画面中央に行儀良く「おすわり」しているのは、ワイエスの妻・ベッツィの愛犬だって。
犬種はイングリッシュ・セッターで名前はノームらしい。
ワイエスが所有していたメイン州サザン島にある灯台内部を描いた作品とのこと。
島を持っていたとは、憧れるね!(笑)
奥に灯台の階段が続き、灯台守の制服(?)が壁にかかっている。
静寂に包まれた優しい時間が感じられるよね。
ここに登場したノームが、ミュージアムショップでキャラクター扱いされていて驚く。
ノームが線で描かれプリントされたグッズを見かけて、友人Hと大笑いしてしまった。
あの静謐さが微塵も感じられなかったんだけど、ワイエス側からOK出たんだろうか。(笑)

会場を歩きながら、似た景色を思い出そうとする。
SNAKEPIPEが写真の勉強をしていた時に知った、ウォーカー・エヴァンスの写真に似ていることに気付き嬉しくなる。
まだ記憶力は衰えていないらしい。(笑)
載せた画像(左)はワイエスがオルソン家を描いた作品で、右はエヴァンスの写真作品。
三角形にとがった屋根や周りの雰囲気も似てるよね!
2010年8月のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #05 Stephen Shore」で、アメリカの写真家スティーブン・ショアーについて書いた。

「アメリカ人のノスタルジア。
ちょっとおセンチで感傷的な『アメリカ人の孤独』を垣間見ることができるような気がする」

と書いているSNAKEPIPE。
今回のワイエス展では、更に強く孤独を感じたよ。
郷愁、寂寥、喪失などの寂しさを表現する単語がいくつあっても足りないくらい。
そしてワイエスは生涯、生まれ故郷のペンシルベニア州と「オルソンハウス」があるメイン州だけで人生を過ごしたらしい。
狭く深い人間関係と毎日見慣れた風景に題材を見出す稀有なアーティストだったんだね。
父親が話していた「胸にグッと迫る」、魂を揺さぶられる感覚が理解できたように思うよ。

とても残念だったのは「クリスティーナの世界」が展示されていなかったこと。
MOMAが貸し出すことは滅多にないそうだから、ニューヨークに行って観るしかないね。(笑)
そして同行してくれた友人H、また別の企画ご一緒しましょ!

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