アンドリュー・ワイエス展 鑑賞

20260628 top.
【東京都美術館前の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2024年10月に「田名網敬一 記憶の冒険」をご一緒した、現代アート好きの友人Hと久しぶりに待ち合わせる。
SNAKEPIPEの闘病生活前に約束していたけれど、高熱のためにキャンセルさせていただいた経緯があるよ。
およそ2年ぶりの再会になるんだね!
今回も何か展覧会を鑑賞しよう、ということで決定したのが「アンドリュー・ワイエス展」。
東京都美術館開館100周年記念として企画されているんだよね。

「ワイエス展」を提案したSNAKEPIPEには、忘れられないエピソードがある。
今から4年前に他界した、SNAKEPIPEの父親が好んでいた画家がワイエスだったから。
写真をやっていたのに、部屋に飾っていたのはワイエスとアンリ・ルソーの作品だったっけ。
ワイエスの「クリスティーナの世界」は、筋肉疾患を患い歩くことができなくなってしまったクリスティーナ・オルソンをモデルにした作品。
ワイエスは1940年から約30年に渡り、妻の紹介で知り合った別荘近くに住んでいたオルソン家の姉弟、クリスティーナとアルヴァロをモデルに描き続けたとのこと。
クリスティーナは車椅子を使用せず、腕の力だけを使い這って移動したという。
精神力の強さが表現されている作品を観ながら「グッと胸に迫るものがある」とうなずいていた父親を思い出す。
SNAKEPIPEはこの作品以外知らないので、ワイエス展を観たいと思ったんだよね!

まずはワイエスの経歴を調べてみよう。

1917 米国ペンシルベニア州に生まれる
父は著名なイラストレーター・画家の N.C.ワイエス
1920-1930 病弱だったため学校にはほとんど通わず、自宅で教育を受ける
1937 ニューヨークの マクベス・ギャラリーで初個展を開催し、作品は即日完売する
1940 ベッツィ・ジェームズと結婚
1945 父 N.C.ワイエスが鉄道事故で死去
1948 「クリスティーナの世界」を制作
1950 「クリスティーナの世界」が Museum of Modern Art に収蔵される 
アメリカを代表する写実画家として評価を確立
1963 アメリカ合衆国大統領より、大統領自由勲章を受賞
全米芸術賞受賞
1988 アメリカ政府より議会名誉黄金勲章を授与
2007 国家芸術勲章受章
2009 老衰のため91歳で逝去

画家の父親からの手ほどきで描き始め、学校に通っていないことに驚く。
才能が受け継がれていたんだね!
「クリスティーナの世界」はMOMAが所蔵している点にも注目だよ。
たくさんあり過ぎて書ききれないほど、様々な賞を受賞している有名なアーティストなんだね。

梅雨の晴れ間といった快晴の日、上野に向かう。
つい先日、国立西洋美術館で「チュルリョーニス展」と「北斎 冨嶽三十六景」を鑑賞したばかり。
上野はいつでも人が多いよね。
友人Hとは公園改札口で待ち合わせ。
かなり早く着いてしまったので、駅構内を回って散策してから、友人Hの待つ場所へ。
ここにいる、と言われた場所に友人Hの姿が見えない。
首をかしげるSNAKEPIPEに向かって、手を振っている人を確認する。
「海外からの旅行者」と思って、視線を素通りしていた人が友人Hだったとは!(笑)
華やかなお顔立ちの彼女は、外国人に見えるのも納得。
久しぶりの再会に喜びながら、会場に向かう怪しい2人組だよ!

開館時間は並んでいるだろうという予想をして、少し時間をズラしたけれど、やっぱりチケット購入で並ぶ羽目になってしまった。
予約していなかったから仕方ないね。
それでも時間は短いほうだったのかもしれないな。
会場に入ると、予想通り大勢のお客さんで賑わっている。
とても鑑賞し辛い状態で、SNAKEPIPEが苦手な牛歩だよ。(笑)
撮影については一部のみOKだったので、載せている画像は全てSNAKEPIPE撮影ではないので4649ね!

1947年の「雪の朝(Snowy Morning)」はテンペラで描かれた作品だよ。
テンペラについては「チュルリョーニス展」の時に調べてるね。
「油絵具が普及する前には主にヨーロッパで使用されていた絵具だという。
顔料に卵を混ぜた卵テンペラが代表的なテンペラ技法で、卵テンペラは経年劣化しにくい特徴がある。」と書いているよ。
冬の寒い朝、灯台の明かりが周囲を照らしている。
ひっそりした中に、照明がついた窓にクリスマスリースが飾ってあるのが見える。
つつましやかで、穏やかな家庭のぬくもりを感じるね。
色合いと構図が気に入った作品だよ!

「マザー・アーチーの教会(Mother Archie’s Church)」は1945年の作品。
教会とタイトルになければ、どこの場所なのか分からないよ。
どうやら廃墟だった校舎を教会に改築したらしい。
描かれている時は改築前の様子なのかもしれないね。
ひび割れた天井に壊れたランプとは、廃墟好きにはたまらないモチーフだよ。(笑)
この視点も写真家みたいなんだよね。
白い鳥には、どんな意味が含まれているんだろう。

ワイエスが好んで描いたオルソン家。
先に載せたクリスティーナの家だよね。
オルソン家の3階からの景色らしく、かつては煙突から住民であるクリスティーナと弟の声が聞こえていた話を「日曜美術館」で知ったよ。
タイトルは「オルソン家の終焉(End of Olsons)」で1969年の作品だよ。
クリスティーナは1968年、弟のアルヴァロはその前年に世を去っているという。
無人になったオルソン家を描いた作品になるんだね。
遠くに飛んでいる鳥を目ざとく見つけた友人Hの観察眼に感服!
「オルソン家の終焉」は、ほぼ正方形で完成となっているけれど、実際には縦の長さが倍だったみたいなんだよね。
下半分が白く塗りつぶされている展示があったので、切り取られた上半分が作品になったことが分かったよ。
トリミングされた下部分はどんなだったんだろうね?

画面中央に行儀良く「おすわり」しているのは、ワイエスの妻・ベッツィの愛犬だって。
犬種はイングリッシュ・セッターで名前はノームらしい。
ワイエスが所有していたメイン州サザン島にある灯台内部を描いた作品とのこと。
島を持っていたとは、憧れるね!(笑)
奥に灯台の階段が続き、灯台守の制服(?)が壁にかかっている。
静寂に包まれた優しい時間が感じられるよね。
ここに登場したノームが、ミュージアムショップでキャラクター扱いされていて驚く。
ノームが線で描かれプリントされたグッズを見かけて、友人Hと大笑いしてしまった。
あの静謐さが微塵も感じられなかったんだけど、ワイエス側からOK出たんだろうか。(笑)

会場を歩きながら、似た景色を思い出そうとする。
SNAKEPIPEが写真の勉強をしていた時に知った、ウォーカー・エヴァンスの写真に似ていることに気付き嬉しくなる。
まだ記憶力は衰えていないらしい。(笑)
載せた画像(左)はワイエスがオルソン家を描いた作品で、右はエヴァンスの写真作品。
三角形にとがった屋根や周りの雰囲気も似てるよね!
2010年8月のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #05 Stephen Shore」で、アメリカの写真家スティーブン・ショアーについて書いた。

「アメリカ人のノスタルジア。
ちょっとおセンチで感傷的な『アメリカ人の孤独』を垣間見ることができるような気がする」

と書いているSNAKEPIPE。
今回のワイエス展では、更に強く孤独を感じたよ。
郷愁、寂寥、喪失などの寂しさを表現する単語がいくつあっても足りないくらい。
そしてワイエスは生涯、生まれ故郷のペンシルベニア州と「オルソンハウス」があるメイン州だけで人生を過ごしたらしい。
狭く深い人間関係と毎日見慣れた風景に題材を見出す稀有なアーティストだったんだね。
父親が話していた「胸にグッと迫る」、魂を揺さぶられる感覚が理解できたように思うよ。

とても残念だったのは「クリスティーナの世界」が展示されていなかったこと。
MOMAが貸し出すことは滅多にないそうだから、ニューヨークに行って観るしかないね。(笑)
そして同行してくれた友人H、また別の企画ご一緒しましょ!

SPECTRUM 2076 AD 鑑賞

20260621 top.
【ジャイルギャラリーの入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ジャイルギャラリーで開催されている「SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体」を鑑賞してきた。
デヴィッド・リンチ好きでも有名な飯田高誉氏がキュレーションしている展覧会なので、気になっていたよ。
飯田氏の企画はとても観念的で難解だけど、好みの作品に出会える確率が高いからね!
スケジュール調整して、ROCKHURRAHと表参道に向かったのである。

ジャイルは11時オープンなので、少し間を置いてから会場へ。
いつもよりお客さんが少ないような気がする。
外国人観光客が減ってるのかもしれないね?
おかげでギャラリーは、ほぼ貸し切り状態で鑑賞することができた。
いつも通り撮影OKで良かった!
展示されていた作品を紹介していこう。

入ってすぐに展示されていたのは、森万里子の「Peace Crystal Model」。
アクリル素材のひし形立体に光が反射して美しいね。
観ていると吸い込まれそうになるよ。
飯田氏の解説によれば「天体や自然エネルギーとシンクロする生命の根源を可視化」した作品だという。
確かに「魂の入れ物」みたいだよね!
この中に宇宙や地球の誕生などの記憶が貯蓄されている、と聞いたら納得しちゃう。
森万里子は、今年の10月に森美術館で個展が予定されているので、楽しみだよ!

続いて名和晃平の「PixCell-Random (TBD) 」が6点並んでいた。
素材はミクストメディアと書かれているよ。
2020年末に鑑賞し2021年最初のブログとして書いている「名和晃平 Oracle」もジャイルギャラリーでの企画展だったね。
あの時に「欲しい!」と思った作品は、カラスやバンビが透明のビー玉のような無数の球体で覆われている「PixCell」シリーズだったっけ。
今回展示されていた作品群も、同様の「PixCell」シリーズなんだね。
観る角度や方角によって色合いが変化する。
まるでブラウン管テレビで経験したことがある「砂嵐(スノーノイズ)」みたいだよ。
この現象を知ってるだけで、「ある年代以上」という証明になっちゃうね。(笑)

目にした時には、てっきり「セクシー・ロボット」で有名な空山基の作品かと思ってしまった。
解説を読むと、1985年生まれの牧田愛の作品だったよ。
艶めかしい光を放つ機械のパーツが、まるで内蔵みたいに見えてくる。
例えていうなら映画「ブレードランナー(原題:Blade Runner 1982年)」に登場するレプリカントの内部構造を描いているようなイメージね。
この発想自体がすでに時代遅れだろうな、と感づいてるよ。
「ブレードランナー」の原作は1968年、今から50年以上前のこと。
2020年代に、わざわざ人間の内蔵を模したパーツを作らないだろうし。(笑)

山田晋也の「秩序と無秩序の『あわい』」は、和風な印象の怖い作品だった。
まるで怪談話の一コマみたいなんだよね!
手前の襖の影から、黒い窓枠の外を恐る恐る覗いているような気分。
赤黒い部分がとても不気味。
飯田氏の解説には「見えざる気配」と表現されているね。
ゲルハルト・リヒターの「ビルケナウ」に色合いが似ているせいもあって、恐ろしく感じるよ。
抽象絵画を鑑賞して、感情がざわつくのは滅多にないので、山田晋也の名前を覚えておこう。

とても興味深かったのが草野絵美のデジタル作品。
「EGO in the Shell」は「攻殻機動隊」からインスパイアされて、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」と正式にコラボした作品なんだとか。
大きなスクリーンに映し出された「アーティスト本人の成長記録」と共に、大小様々なブラウン管テレビが並んでいる。
AIで生成されている部分を含む草野絵美が映し出されている。
どれが本物の記憶(記録)か曖昧になっているところが面白いね!
草野絵美の作品を鑑賞したのは初めてのはず。
他の作品も観てみたいと思ったよ!

「50年後の未来」をテーマにした展覧会は、とても興味深かった。
近いようで遠い2076年。
どんな世界になっているのか、想像するのが怖いかも。(笑)

拡大するシュルレアリスム 鑑賞

20260614 top.
【オペラシティアートギャラリー入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

東京オペラシティアートギャラリーで開催されている「拡大するシュルレアリスム 視覚芸術から広告、ファッション、インテリアへ」を鑑賞した。
久しぶりに訪れた気がしたのは間違いではなかったようで、前回は2024年11月の「松谷武判展」だったみたい。
およそ1年半ぶりの訪問だね!
展覧会情報チェックを怠っていたけれど、シュルレアリスムという単語を見逃すわけにはいかないね!(笑)
会期が6月24日までなので、ROCKHURRAHと慌てて初台に向かったのである。

開館時間より少し前に到着すると、ちらほらお客さんが会場前に集まってきている。
10分前くらいからは入場を待つための列ができていたので、最後尾に並ぶ。
時間を少しズラすと、人が少ないのかもね。
次回は開館時間過ぎてからにしよう!
どうにも並ぶのが苦手なんだよね。(笑)

会場はタイトル通り「オブジェ」「写真」「絵画」「ファッション」「インテリア」とジャンルごとにチャプターが分かれていたよ。
展示作品の撮影は一部禁止はあるものの、それ以外は可能だった。
この「可」と「不可」はどのような基準に基づいているのか教えて欲しいよね。
では気になった作品を紹介していこう。

最初に展示されていたのは、シュルリアリスト達が瞼を閉じた証明写真だった。
真ん中に配置されているのがルネ・マグリットの作品のようだけど、証明写真のほうは作品ではないみたい。
SNAKEPIPEはこの写真に興奮したんだけどなあ。(笑)
当時の錚々たるシュルリアリストたちのライフマスクみたいで、とても気に入ったよ!
このポスターが販売されてたら絶対買うのに、残念ながらミュージアムショップでは見かけなかった。
証明写真の下に名前を載せてもらわないと誰なのか分からないんだけどね。(笑)
即答できるのはアンドレ・ブルトンとマックス・エルンストやダリくらいかな。
マン・レイが見当たらないのは、撮影してたからもね。

マン・レイの写真作品が展示されていた。
載せた作品は、「レイヨグラフ(ピストルとアルファベットのステンシル)」。
レイヨグラフとはカメラを使わずに印画紙の上に直接物を置き、光を当てて感光させることで像を浮かび上がらせる写真技法のことで、モホリ=ナギはその技法をフォトグラムと呼んでいたらしい。
マン・レイだからレイヨグラフなんだって。
今回展示されていたレイヨグラフは、展覧会の前期と後期で作品が替わったみたいだね。
フォトグラムを作品にしているアーティストで思い出すのはトーマス・ルフだよ。
あの展覧会に行ったのが10年前だったとは。(遠い目)

「第3章 絵画 視覚芸術の新たな扉」では、馴染みのあるアーティストが勢揃い!
キリコ、エルンスト、ダリなど「シュールといえばこれ!」といった大御所の作品が並んでいる。
載せたのはイブ・タンギーの「失われた鐘」で、1929年の作品だよ。
液体を撒いたような、不思議な形態が空間を漂っている。
鑑賞者によって、それぞれの物語が生まれそうな作品だね。
イブ・タンギーの作品は、2011年3月の「シュルレアリスム展」他、過去に鑑賞したことがあるけれど、観た瞬間にタンギーの作品と分かる特徴があるよね。
他には暗い色調のミロの作品が気になったよ。
2025年に東京都美術館で開催された「ミロ展」には足を運ばなかったので、こうした作品も展示されていたのかも。

「第5章 ファッション 欲望の喚起」では、マン・レイ撮影の「ローズ・セラヴィ」が気になったよ。
1921年の作品なんだね。
ローズ・セラヴィとは女装したマルセル・デュシャンの変名のこと。
載せた画像がちょっとピンボケでごめんなさい。(笑)
日本の現代アーティストである森村泰昌がパロディを作成している、別バージョンのポートレートが有名だよね。
今回展示されていた作品では、マルセル・デュシャンはまるでミュージシャンのように見えたよ。
マルセル・デュシャンの作品としては、オブジェが数点展示されていて嬉しかったよ。

エルザ・スキャパレッリの作品は2022年2月に鑑賞した「奇想のモード」で初めて鑑賞したはず。
「スキャパレッリについては、もう少し調べてみたいと思った」とその時の感想に書いているね。(笑)
今回の展覧会ではドレスやアクセサリーが展示されていた。
アクセサリーの素晴らしさに目が釘付け!
レプリカがあったらコレクションしたくなるね。

「第6章 インテリア  室内空間の変容」で気になったのは、マックス・エルンストの作品。
1974年制作の「偉大なる無知の人」は屏風のような衝立で、説明によればベッドとセットにして99点のみ限定販売される予定だったんだとか。
エルンストが亡くなってしまったため、15点のみ存在する作品だという。
初めて観たと思ったのに、2012年5月の「マックス・エルンスト-フィギィア×スケープ」でも鑑賞していたみたい。
説明文についても忘れているとは、ひどいね。(笑)
この作品も欲しくなってしまったSNAKEPIPEだよ!

「シュルレアリスム展」を鑑賞し終わり、同時開催されている寺田コレクション「幻想の景色と不思議ないきものたち」の会場に向かう。
ある作品の前で足を止める。
池田龍雄の「禽獣記シリーズ」は1958年から1959年に制作されたインクや木炭を使用したモノクロームの作品。
まるで妖怪のような異形が描かれている。
この不気味さは、どこかで見覚えがあると思ったら!
松本俊夫監督、1969年の映画「薔薇の葬列」に出てきたんだよね。
とても気になっていたアーティストの作品を鑑賞できて嬉しかったよ!

「拡大するシュルレアリスム」は、シュルレアリスムを広く浅く捉えた展覧会だった。
ダイジェスト版といった感じなので、シュルレアリスム運動を知るにはもってこいの企画展だね。
シュールと聞けば目の色を変え、今まで数々の展覧会に足を運んでいるROCKHURRAH RECORDSにとっては少し物足りなかったかも。(笑)
驚いたのは、今回の展覧会の所蔵先はほとんど日本国内だったこと。
国内にこんなにたくさんのシュルレアリスムの作品が存在していたとは。
お気に入りの作品をもう一度鑑賞できる可能性が高いことが分かり、嬉しくなったSNAKEPIPEだよ!

映画の殿 第83号 馬医編 part31

【馬医に登場する出演者の面々】

SNAKEPIPE WROTE:

韓国時代劇の巨匠と呼ばれるイ・ビョンフン監督が手掛けた「トンイ」「宮廷女官チャングムの誓い」は、話数が多いにも関わらず、熱心に鑑賞したROCKHURRAH RECORDS。
朝鮮王朝時代には詳しくなってしまい、韓国時代劇に全く違和感がない状態だよ。
イ・ビョンフン監督には代表作とされる作品が他にもあるので、今回は「トンイ」のあとに制作された「馬医(原題:마의 2012年)」をチョイス。
全50話と聞いても、もう驚かないよ。(笑)
「馬医」のあらすじを書いてみよう。

17世紀・朝鮮王朝時代-。
共に医学の道を志し、身分を超えた友情で結ばれた三人の若者、カン・ドジュン、イ・ミョンファン、チャン・インジュは互いに腕を磨き夢に向かって歩んでいた。
しかし、ある時朝廷内の陰謀による昭顕世子暗殺事件に巻き込まれ、その友情は悲しくも崩れてしまう。
イ・ミョンファンの裏切りからカン・ドジュンは世子暗殺の罪をかぶせられ処刑に…。
その後、罪人カン・ドジュンの息子として生まれたクァンヒョン。
即刻、処刑されそうになるが、女児なら処刑を免れるため、カン・ドジュンを慕う奴婢(ぬひ)ぺク・ソックが自分の娘チニョンとすりかえる。
一命を取り留めたクァンヒョンは、奴婢として牧場で育てられ、やがて腕利きの馬医へと成長をしていく…。
(テレビ愛知より)

韓国時代劇のあらすじは、いつもテレビ愛知から引用させてもらってるね。(笑)
続いてトレイラーだよ。

タイトル通り、本当に馬を診る医者なんだよね!
主役のペク・クァンヒョンを演じているのは、「秘密の森」や「シーシュポス: The Myth」などのドラマでお馴染みのチョ・スンウ。
ドラマの設定されている時代では、馬を診る医者は卑しいとされていたようで、人間用の医者とは身分が違っていたようだね。
クァンヒョンは馬と意思疎通ができる優しい心の持ち主。
どんなに辛い目に遭っても、性根がブレることがない正義の人なんだよね!
ピンチをチャンスに変えるとはよく聞く言葉だけど、まさにクァンヒョンはそういうタイプだよ。
ペク・クァンヒョンは実在の人物なんだとか。
朝鮮の医学に貢献した人だとよく分かるね。
チョ・スンウは、命を尊び、最後まで諦めずに命を救うことに努める誠実な医官役が似合っていたよ。

ペク・クァンヒョンの子供時代。
今まで鑑賞した「トンイ」や「チャングム」同様、「馬医」も子供時代からストーリーが展開するんだよね。
あらすじにあったように「すりかえ」られたおかげで命は助かったものの、奴婢として生きていくことになる。
たまたま牧場に住むことになったけれど、導かれていたのかもしれないね。
そしてこの時、後の人生に大きく関わる人物との出会いがある。
大切な思い出を胸に秘め、クァンヒョンは評判の馬医に成長していく。

クァンヒョンと入れ替わったのが、カン・チニョン。
演じているのはイ・ヨウォンで、1998年から活動しているとのこと。
数年前から韓国ドラマ鑑賞を始めたROCKHURRAH RECORDSは初見の女優みたいだよ。
チニョンは朝鮮時代の貴族階級(両班)の家系に生まれながらも、医女を目指す。
両班の出身者が医学を志すことは滅多になかったようで、医療従事者に迷惑がられながらも勉強する強い意志を持っている。

チニョンの子供時代。
「トンイ」の時と同じで、女の子なのに男の子に化けているんだよね。
いつの日か観るであろう、他のドラマにも出てくる設定かもね。(笑)
男の子に化けたヨンダルという名前だった時に、クァンヒョンに出会っている。
ヨンダルを演じていた子役がとてもかわいかったよ。
演じていたノ・ジョンウィは、ドラマ「その年、私たちは」でNJというアイドル役で出演していたんだね。
金髪になっていたけれど、ヨンダルの面影が残っていたよ!
きっと別のドラマで見かけても「ヨンダル」と言ってしまいそう。(笑)

あらすじに出てきた3人の若者のうちの一人であるイ・ミョンファン。
最初は高い志を持って医学の道を歩んでいたのに、朝廷内の陰謀に巻き込まれ、地位を守るためならどんなに汚い手も使う卑劣な人物に成り下がってしまう。
チニョンの義父であり、悪巧みを重ね首医(スイ)にまで出世する。
クァンヒョンを目の敵にして、徹底的に潰そうと企てる執念が恐ろしいほどだよ。
韓国時代劇は勧善懲悪が基本なので、悪い人はずっと悪くて、良い人はどんな目に遭っても美しい心を持ったままなんだよね。
イ・ミョンファンを演じていたソン・チャンミンには、「韓国のジャッキー・チェン」の愛称があるのを知って激しく同意!
「馬医」観てる時にも、ROCKHURRAHがジャッキー・チェンに似てるって言ってたからね。(笑)

イ・ミョンファンと同期のチャン・インジュ。
陥れられ処刑されたカン・ドジュンの子供をすり替えた現場に居合わせた医女なんだよね。
それからずっと「本当のカン・ドジュンの息子」を探し続ける。
「チャングム」の時も、「母の親友」をずっと探していて、実は近くにいたパターンだったっけ。
今回も同様で、観ているほうが「じれったく」なるんだよね。(笑)
インジュはとても芯が強く、医女としてのプライドを持って日々患者に向き合っている。
こんな看護師、今の時代にもなかなかいないだろうね。
演じていたユソンは「ムーブ・トゥ・ヘブン」に出演していたようだけど、あまり覚えていないよ。(笑)

クァンヒョンが子供時代に出会った恩師であり、インジュの師匠でもあるサアム道人。
朝鮮三大名医の一人とされる実在の人物がモデルみたいだね。
ちょっと胡散臭い雰囲気があるけれど、医術の腕は本物で、顔を見ただけで病名を言い当て治療することができる医者。
子供時代のクァンヒョンに医者として天賦の才能があることにも気付いている。
医者としてだけではなく、人として生きる道も説く仙人みたいな一面も持っているんだよね。
昔の学校の先生やお医者さんって、こんな感じだったんじゃないかな?
サアム道人の役、良い味出していたよ!
演じていたチュ・ジンモは「智異山」で観ていたみたいね。

朝鮮王朝第18代国王、 顕宗。
身分制度にこだわらず、平等と博愛の精神を持っている王様なんだよね。
しきたりを重んじる実母(大妃)から反対されても、元馬医のクァンヒョンを信じる。
王様は話が分かる、正義の人なんだよね!
この王様の治療をしたことでクァンヒョンは主治医になる。
ここも事実に基づいているとのこと。
王様に手術するなんて勇気がいることだよね。
成功して良かったよ。(笑)

他にも良い味出していたのは、クァンヒョンと牧場で一緒に生活していたキベおじさんとチャボン兄さん。
キベおじさんは「トンイ」にも「チャングム」にも出演していたイ・ヒドで、時代劇ではすっかりお馴染みになっている俳優だよ!
クァンヒョンを実の子供のように想っている心優しい人。
チャボン兄さんはおっちょこちょいで、ドラマを和ませる役割を担っている人物なんだよね。
クァンヒョンの心の拠り所にもなっていて、この2人が登場するとホッとしたSNAKEPIPEだよ。(笑)

王様の妹で、動物好きの王女。
可愛がっている猫を診てもらったことからクァンヒョンと知り合いになる。
この王女がしきたりや身分を気にせず、クァンヒョンに信頼を寄せるんだよね。
感情の起伏が激しく、地位を利用して我儘な命令を下すところが面白かった。
「馬医」の中では、ヒロインのチニョンより華があるように感じたよ。
演じていた キム・ソウンは、初めて観る女優だったのかも。
コミカルな演技が良かったので、別なドラマでも観てみたいね。

王女お付きのカン尚宮と護衛のマ武官も、ドラマ内でのお笑い担当だったよ。
王女に対してズケズケと発言したり、王女に理不尽な命令を下されて弱りきるマ武官が面白かった。
一番の傑作は、王女に見せてはいけない物を隠すためにタックルしたカン尚宮!
SNAKEPIPEは涙を流して笑ってしまった。(笑)
王女の部屋にカメラが移動すると、どんな会話が始まるのか楽しみだったよ。
カン尚宮を演じていたアン・ヨジンは、「トンイ」ではヒビン付きの尚宮を演じていて、悪事に加担してたっけ。(笑)
「馬医」では良い人役で良かった!

ペク・クァンヒョンの子供時代から始まり、30年以上の軌跡をたどる50話は見応えあったよ。
差別や暴力にも負けず、志を貫き、命の大切さを教えてくれるドラマだったね。
本来は別の身分だったけれど、馬医からスタートして王様の主治医になる下剋上ストーリーで、勧善懲悪もの!
イ・ビョンフン監督の作品にはパターンがあることが分かっているけれど、観ていると引き込まれてしまう。
ここらへんが人気の秘密なんだね!
またいつか別のドラマを観てみたいよ。